JP4830549B2 - 車両用制動装置の摩耗矯正装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車輪側回転部材の摩擦接触面に摩擦部材を押圧して制動力を得る車両用制動装置の摩耗矯正装置に関するものである。
車両用制動装置として、車輪側回転部材であるディスクロータの摩擦接触面に摩擦部材であるブレーキパッドを押圧して制動力を得る形式のディスクブレーキ装置や、車輪側回転部材であるブレーキドラムの摩擦接触面に摩擦部材であるブレーキシューを押圧して制動力を得る形式のドラムブレーキ装置が従来一般に知られている。
ところで、ディスクブレーキ装置におけるディスクロータの摩擦接触面には、ディスクロータの加工精度や車軸に対する組付け精度により、通常、全周で数十μm程度の面触れが存在する。また、このようなディスクロータの摩擦接触面にブレーキパッドが摩擦接触する際、摩擦接触面が偏摩耗してディスクロータの周方向に肉厚差が発生することがある。そして、ディスクロータの摩擦接触面に周方向の面振れや肉厚差があると、制動時にブレーキパッドがディスクロータの摩擦接触面に断続的に摩擦接触してブレーキ振動(ジャダ)が発生し、車両の乗員に不快感を与える。
一方、ドラムブレーキ装置においても、ブレーキドラムの摩擦接触面に周方向の面振れや偏摩耗があると、制動時にブレーキシューがブレーキドラムの摩擦接触面に断続的に摩擦接触して同様のブレーキ振動(ジャダ)が発生し、車両の乗員に不快感を与える。
そこで、従来、ディスクブレーキ装置におけるディスクロータの肉厚差を解消し、あるいはディスクロータの肉厚差の発生を抑止するための制御装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
ここで、特許文献1には、ディスクロータの肉厚の厚い部位を摩耗させるように、その肉厚の厚い部位に対してはブレーキパッドの押圧力を強め、肉厚の薄い部位に対してはブレーキパッドの押圧力を弱めるように作動が制御されるアクチュエータを備えた構成が開示されている。
特開2001−130393号公報
ところで、特許文献1に開示された制御装置においては、ディスクロータの回転速度に応じた周期でブレーキパッドの押圧力を増減するようにアクチュエータの作動が制御される。このため、例えば車両の速度が時速100km以下の場合においても、アクチュエータの作動回数は数十Hzに及ぶこととなり、アクチュエータには極めて高い耐久性が要求される。
そこで、本発明は、耐久性の低いアクチュエータも使用可能とし、しかも、このアクチュエータの作動により車輪側回転部材の摩擦接触面の面振れ、偏摩耗、肉厚差などを矯正できる車両用制動装置の摩耗矯正装置を提供することを課題とする。
本発明に係る車両用制動装置の摩耗矯正装置は、車輪側回転部材の摩擦接触面に摩擦部材を押圧して制動力を得る車両用制動装置の摩耗矯正装置であって、アクセルペダルが踏み込まれている車両の非制動時に随時摩擦部材をブレーキ効き始め油圧で動するためのアクチュエータを有する摩擦部材位置制御手段を備え、摩擦部材位置制御手段は、車両の加速終了時に合わせて制御を開始し車両の加速開始時に合わせて制御を終了する、車両の発進時に合わせて制御を開始し車両の発進完了時に合わせて制御を終了する、又は、車両の登坂開始時に合わせて制御を開始し車両の登坂完了時に合わせて制御を終了するように構成されていることを特徴とする。
本発明に係る車両用制動装置の摩耗矯正装置では、摩擦部材位置制御手段がアクセルペダルが踏み込まれている車両の非制動時に随時制御を開始すると、アクチュエータの作動により摩擦部材が車輪側回転部材の摩擦接触面をブレーキ効き始め油圧で押動する。このため、車輪側回転部材の摩擦接触面の高部位が摩擦部材の押圧により順次摩耗する。また、摩擦部材位置制御手段の制御開始に伴い摩擦部材が車輪側の回転部材における摩擦接触面を押動することによるブレーキ引き摺り現象は、車両の加速終了時に発生し車両の加速開始時に解消される、車両の発進時に発生し車両の発進完了時に解消される、又は、車両の登坂開始時に発生し車両の登坂完了時に解消されることとなるため、車両の減速感および加速感に関して車両の乗員に与える違和感を低減することができる。
本発明の車両用制動装置の摩耗矯正装置において、アクチュエータは、摩擦部材を押圧するために設けられたシリンダにブレーキ効き始め油圧を付与する機能を有することができる。
また、本発明の車両用制動装置の摩耗矯正装置は、回転部材としてのディスクロータおよび摩擦部材としてのブレーキパッドを備えたディスクブレーキ装置として構成してもよいし、回転部材としてのブレーキドラムおよび摩擦部材としてのブレーキシューを備えたディスクブレーキ装置として構成してもよい。
本発明に係る車両用制動装置の摩耗矯正装置では、車両の非制動時に随時、摩擦部材位置制御手段が制御を開始してアクチュエータを作動させることにより、車輪側の回転部材における摩擦接触面の高部位が摩擦部材の押圧により順次摩耗する。従って、本発明の車両用制動装置の摩耗矯正装置によれば、車輪側の回転部材における摩擦接触面の面振れ、偏摩耗、肉厚差などを矯正することができる。
ここで、アクチュエータは、摩擦部材位置制御手段による1回の制御につき、その制御開始時と制御終了時の2回だけ動作すればよいため、耐久性の低いアクチュエータの使用が可能となる。
以下、図面を参照して本発明に係る車両用制動装置の摩耗矯正装置の実施の形態を説明する。参照する図面において、図1は本発明の一実施形態における車両用制動装置としてのディスクブレーキ装置の要部構造を示す断面図、図2は図1に示したディスクブレーキ装置の油圧回路と共にその油圧回路の制御装置を示すブロック図である。
一実施形態に係る車両用制動装置の摩耗強制装置は、車両に装備された制動装置における車輪側回転部材の摩擦接触面の面振れや肉厚差などを矯正する装置であって、例えば図1に示すようなディスクブレーキ装置1に適用される。このディスクブレーキ装置1は、図示しない車軸のハブに固定されて回転する車輪側回転部材としてのディスクロータ2と、図示しない車体のサスペンションパーツ等にマウンティングブラケット(図示省略)を介して支持された浮動式のキャリパ3と、摩擦部材としてのブレーキパッドであるインナパッド4およびアウタパッド5等を備えて構成されている。
キャリパ3は、ディスクロータ2の内面側の摩擦接触面2Aに臨むシリンダ部3Aと、ディスクロータ2の外面側の摩擦接触面2Bに臨む爪部3Bと、ディスクロータ2の外周側を跨いでシリンダ部3Aと爪部3Bとを連結する連結部3Cとを有し、シリンダ部3Aには、ブレーキ系の油圧配管(図2参照)を介してブレーキ液が供給されるシリンダ室3Dが形成されている。そして、このシリンダ室3Dには、ブレーキ油圧により駆動されるピストン6がディスクロータ2の外面側の摩擦接触面2Aに直交する方向に進退自在に嵌合されている。
シリンダ室3Dの開口部付近の内壁面には、ピストン6との間をシールするゴム製のシールリング7が装着されている。また、シリンダ室3Dの開口部の周囲に配置してシリンダ部3Aとピストン6の先端部との間には、防塵用のブーツ8が装着されている。
インナパッド4は、キャリパ3のシリンダ部3Aとディスクロータ2の内面側の摩擦接触面2Aとの間に配置されている。このインナパッド4は、ピストン6に対面するバックアッププレート4Aと、ディスクロータ2の内面側の摩擦接触面2Aに対面するパッド部材4Bとが一体に接着された構造を有し、ピストン6の進出によりバックアッププレート4Aが押動されると、パッド部材4Bがディスクロータ2の内面側の摩擦接触面2Aに押圧されて摩擦接触する。
アウタパッド5は、キャリパ3の爪部3Bとディスクロータ2の外面側の摩擦接触面2Bとの間に配置されている。このアウタパッド5は、爪部3Bに対面するバックアッププレート5Aと、ディスクロータ2の外面側の摩擦接触面2Bに対面するパッド部材5Bとが一体に接着された構造を有する。そして、このアウタパッド5は、ピストン6の進出に伴なう反力でキャリパ3の爪部3Bがピストン6と反対方向に移動し、この爪部3Bによりバックアッププレート5Aが押動されると、パッド部材5Bがディスクロータ2の外面側の摩擦接触面2Bに押圧されて摩擦接触する。
このようにディスクブレーキ装置1においては、ディスクロータ2の内面側の摩擦接触面2Aにインナパッド4のパット部材4Bが摩擦接触し、ディスクロータ2の外面側の摩擦接触面2Bにアウタパッド5のパット部材5Bが摩擦接触することで制動力が得られるのであり、その際、パット部材4B,5Bが徐々に摩耗する。また、パット部材4B,5Bがいわゆるブレーキの効きの良い摩擦係数の大きい材料で構成されている場合には、ディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bも同様に摩耗する。
ここで、ディスクロータ2の加工精度や車軸に対する組付け精度により、ディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bには、通常、全周で数十μm程度の面触れが存在する。このため、パット部材4B,5Bとの摩擦接触によりディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bが摩耗する際には、摩擦接触面2A,2Bが偏摩耗してディスクロータ2の周方向に肉厚差が発生することがある。
そこで、一実施形態の摩耗矯正装置には、ディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bの面振れ、偏摩耗、肉厚差などを矯正して低減するための摩擦部材位置制御手段が設けられている。この摩擦部材位置制御手段は、図2に示すように、アクチュエータとしての遮断バルブ10および加圧バルブ11と、これらの作動をバルブ駆動回路12を介して制御する摩擦部材位置制御装置13と、この摩擦部材位置制御装置13に検出信号を出力するアクセルストロークセンサ14および車輪速センサ15などを備えている。
遮断バルブ10は、図示しないブレーキペダルの踏込み操作に応じたブレーキ油圧を発生するマスタシリンダ16からキャリパ3(図1参照)のシリンダ室3Dにブレーキ油圧を供給するブレーキ油圧管路L1上に介設されている。この遮断バルブ10は、例えばバネ復帰式のソレノイド直動型の2位置切換弁であり、バルブ駆動回路12から出力される制御電流によりソレノイドが通電するとブレーキ油圧管路L1を遮断し、ソレノイドが非通電となるとバネ復帰してブレーキ油圧管路L1を開放する。
加圧バルブ11は、遮断バルブ10とシリンダ室3Dとの間のブレーキ油圧管路L1から分岐する制御油圧管路L2上に介設されている。この加圧バルブ11より上流側の制御油圧管路L2上には、アキュムレータ17およびモータポンプ18が順次介設されており、モータポンプ18はマスタシリンダ16のリザーバタンク19に接続されている。
この加圧バルブ11は、バルブ駆動回路12から出力される制御電流に応じて開度が可変に制御されるリニアバルブであり、遮断バルブ10がブレーキ油圧管路L1を遮断した状態では、アキュムレータ17に蓄圧された油圧から所定の制御油圧を生成し、バルブ駆動回路12からの制御電流の出力が停止されると、開度が全閉となって制御油圧管路L2を遮断する。
ここで、加圧バルブ11が生成する所定の制御油圧は、0.1〜0.2Mp程度のいわゆるブレーキ効き始め油圧であり、この制御油圧が制御油圧管路L2およびブレーキ油圧管路L1を介してシリンダ室3Dに供給されると、図1に示したピストン6が僅かに進出してインナパッド4のパッド部材4Bおよびアウタパッド5のパッド部材5Bを所定位置に保持する。すなわち、ピストン6は、ディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bの高部位を押圧して低部位に接触する位置にパッド部材4B,5Bを保持する。
ここで、摩擦部材位置制御装置13は、ECU(ElectricControl Unit)等のマイクロコンピュータのハードウェアおよびソフトウェアを利用して構成されている。この摩擦部材位置制御装置13は、バルブ駆動回路12、アクセルストロークセンサ14および車輪速センサ15との間の入出力インターフェースI/OおよびA/Dコンバータの他、プログラムおよびデータを記憶したROM(ReadOnly Memory)、入力データ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、プログラムを実行するCPU(CentralProcessing Unit)等をハードウェアとして備えている。そして、この摩擦部材位置制御装置13には、制御開始終了判定部13Aおよびバルブ制御部13Bがソフトウェアとして構成されている。
制御開始終了判定部13Aには、図示しない車両に装備されたアクセルペダルの踏込みストロークを検出するアクセルストロークセンサ14の検出信号が入力される。この制御開始終了判定部13Aは、アクセルストロークセンサ14の検出信号に基づき、車両が非制動時であるか否かを判定すると共に、車両が加速開始時にあるか否か、および車両が加速終了時にあるか否かを判定する。
ここで、制御開始終了判定部13Aは、アクセルストロークセンサ14からの検出信号によりアクセルペダルの踏込み状態を検出すると、少なくとも車両が非制動時であるものと判定する。また、制御開始終了判定部13Aは、アクセルストロークセンサ14からの検出信号の変化により、アクセルペダルの踏込みストロークが増加する場合には車両が加速開始時にあるものと判定し、アクセルペダルの踏込みストロークが減少する場合には車両が加速終了時にあるものと判定する。
そして、この制御開始終了判定部13Aは、車両が非制動時であると判定した状態で車両が加速開始時にあると判定すると、バルブ制御部13Bにバルブの制御開始信号を出力し、また、車両が非制動時であると判定した状態で車両が加速終了時にあると判定すると、バルブ制御部13Bにバルブの制御終了信号を出力する。
バルブ制御部13Bには、制御開始終了判定部13Aからバルブの制御開始信号または制御終了信号が入力されると共に、図示しない車輪の回転速度を検出する車輪速センサ15の検出信号が入力される。このバルブ制御部13Bは、制御開始終了判定部13Aからバルブの制御開始信号が入力されると、バルブ駆動回路12から遮断バルブ10にソレノイドを通電させる制御電流を出力させるための所定の制御信号をバルブ駆動回路12に出力すると共に、バルブ駆動回路12から加圧バルブ11に制御電流を出力させるための所定の制御信号をバルブ駆動回路12に出力する。
ここで、バルブ制御部13Bは、車輪速センサ15からの検出信号に基づき、図示しない車輪の回転速度が図1に示したディスクブレーキ装置1によって周期的に変動しない範囲に収まるような制御信号をバルブ駆動回路12に出力する。これにより、バルブ駆動回路12から加圧バルブ11に出力される制御電流が調整され、加圧バルブ11が生成する制御油圧は、0.1〜0.2Mp程度のいわゆるブレーキ効き始め油圧に調整される。その結果、インナパッド4およびアウタパッド5のパッド部材4B,5Bは、ディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bの高部位を押圧して低部位に接触する位置に保持される。これにより、パッド部材4B,5Bは、ディスクロータ2の厚みが厚い部分では摩擦接触面2A,2Bを強く押圧し、ディスクロータ2の厚みが薄い部分では摩擦接触面2A,2Bに僅かに接触する。
一方、バルブ制御部13Bは、制御開始終了判定部13Aからバルブの制御終了信号が入力されると、バルブ駆動回路12から遮断バルブ10に出力される制御電流を停止するようにバルブ駆動回路12に対する所定の制御信号の出力を停止すると共に、バルブ駆動回路12から加圧バルブ11に出力される制御電流を停止するようにバルブ駆動回路12に対する所定の制御信号の出力を停止する。
以上のように構成された一実施形態の車両用制動装置の摩耗矯正装置では、図示しない車両の運転に伴ない、図2に示した遮断バルブ10および加圧バルブ11が摩擦部材位置制御装置13により図3に示すフローチャートの処理手順に沿って制御される。
まず、ステップS1では、摩擦部材位置制御装置13の制御開始終了判定部13Aがアクセルストロークセンサ14からの検出信号に応じて車両が非制動時であるか否かを判定する。この判定結果がYESであれば次のステップS2へ進むが、判定結果がNOであればステップS1の判定処理を繰り返す。
次のステップS2では、制御開始終了判定部13Aがアクセルストロークセンサ14からの検出信号の変化に応じて車両が加速終了時にあるか否かを判定する。この判定結果がYESであれば続くステップS3へ進むが、判定結果がNOであればステップS2の判定処理を繰り返す。
ステップS3では、制御開始終了判定部13Aがバルブ制御部13Bにバルブの制御開始信号を出力してバルブの制御を開始させる。これに伴い、バルブ制御部13Bがバルブ駆動回路12に所定の制御信号を出力し、バルブ駆動回路12が遮断バルブ10にソレノイドを通電させる制御電流を出力することで、遮断バルブ10がブレーキ油圧管路L1を遮断する。また、バルブ制御部13Bがバルブ駆動回路12に所定の制御信号を出力し、バルブ駆動回路12が加圧バルブ11に制御電流を出力することで、加圧バルブ11が所定の制御油圧である0.1〜0.2Mp程度のいわゆるブレーキ効き始め油圧を生成する。
そして、加圧バルブ11により生成されたいわゆるブレーキ効き始め油圧が制御油圧管路L2およびブレーキ油圧管路L1を介してシリンダ室3Dに供給されることにより、図1に示したピストン6が僅かに進出してインナパッド4のパッド部材4Bおよびアウタパッド5のパッド部材5Bをディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bの高部位を押圧して低部位に接触する位置に保持する。このため、ディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bの高部位がパッド部材4B,5Bの押圧により順次摩耗する。
続くステップS4では、制御開始終了判定部13Aがアクセルストロークセンサ14からの検出信号の変化に応じて車両が加速開始時にあるか否かを判定する。この判定結果がYESであれば続くステップS5へ進むが、判定結果がNOであればステップS4の判定処理を繰り返す。
ステップS5では、制御開始終了判定部13Aがバルブ制御部13Bにバルブの制御終了信号を出力してバルブの制御を終了させる。これに伴い、バルブ制御部13Bがバルブ駆動回路12に対する制御信号の出力を停止し、バルブ駆動回路12が遮断バルブ10に対するソレノイド通電用の制御電流の出力を停止することで、遮断バルブ10がブレーキ油圧管路L1を開放する。また、バルブ制御部13Bがバルブ駆動回路12に対する所定の制御信号の出力を停止し、バルブ駆動回路12が加圧バルブ11に対する制御電流の出力を停止することで、加圧バルブ11が所定の制御油圧の生成を停止して制御油圧管路L2を遮断する。
その結果、図2に示すマスタシリンダ16からブレーキ油圧管路L1を介してキャリパ3(図1参照)のシリンダ室3Dにブレーキ油圧を供給可能となり、通常のブレーキ操作に応じてディスクブレーキ装置1が作動するようになる。そして、このような摩擦部材位置制御装置13による一連の処理は、車両の運転中、図示しないアクセルペダルが踏み込まれている車両の非制動時において、アクセルペダルの踏込みストロークが減少する車両の加速終了時に際して繰り返し実行される。
図4は摩擦部材位置制御装置13の制御開始時から制御終了時に至る間における加圧バルブ11が生成する制御油圧と、この制御油圧に応じてディスクロータ2の摩擦接触面2A,2B(図1参照)に押圧されるパッド部材4B,5Bが受けるパッド押圧反力の時間変化を示している。
ここで、加圧バルブ11は、摩擦部材位置制御装置13の制御開始時に所定の制御油圧を生成するように作動し、摩擦部材位置制御装置13の制御終了時に制御油圧の生成を停止するように作動する。そして、この加圧バルブ11が制御油圧を生成している摩擦部材位置制御装置13の制御開始時から制御終了時に至る間においては、パッド部材4B,5Bがディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bの高部位を押圧して受ける反力が脈動的に変化する。
このように、一実施形態の車両用制動装置の摩耗矯正装置では、車両の非制動時の加速終了時に摩擦部材位置制御装置13が制御を開始すると、遮断バルブ10がブレーキ油圧管路L1を遮断すると共に、加圧バルブ11が制御油圧であるブレーキ効き始め油圧を生成する。そして、このブレーキ効き始め油圧が制御油圧管路L2およびブレーキ油圧管路L1を介してキャリパ3のシリンダ室3Dに供給されることにより、インナパッド4のパッド部材4Bおよびアウタパッド5のパッド部材5Bがディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bの高部位を押圧して低部位に接触する位置に押動されて保持される。その結果、ディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bの高部位がパッド部材4B,5Bの押圧により順次摩耗する。
従って、一実施形態の車両用制動装置の摩耗矯正装置によれば、ディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bの面振れ、偏摩耗、肉厚差など矯正することができ、例えば、摩擦部材位置制御装置13の1回の制御につき、ディスクロータ2の肉厚差を2〜3μm程度減少させることができる。
また、図4に示したように、アクチュエータとしての加圧バルブ11は、摩擦部材位置制御装置13の1回の制御につき、その制御開始時と制御終了時との2回だけ動作すればよいため、耐久性の低い加圧バルブ11(アクチュエータ)の使用が可能となる。
さらに、摩擦部材位置制御装置13は、車両の加速終了時に合わせて制御を開始し、車両の加速開始時に合わせて制御を終了するように構成されているため、摩擦部材位置制御装置13の制御開始に伴いパッド部材4B,5Bがディスクロータ2の摩擦接触面2A,2Bの高部位を押圧することによるブレーキ引き摺り現象は、車両の加速終了時に発生し、車両の加速開始時にはブレーキ引き摺り現象が解消されることとなる。従って、車両の減速感および加速感に関して車両の乗員に与える違和感を低減することができる。
本発明に係る車両用制動装置の摩耗矯正装置は、前述した一実施形態に限定されるものではない。例えば、摩擦部材位置制御装置13は、車輪速センサ、車速センサ、車両の加速度センサ等の検出信号に基づき、車両の発進時に合わせて制御を開始し、車両の発進完了時に合わせて制御を終了するように構成してもよい。この場合、摩擦部材位置制御装置13の制御開始に伴うブレーキ引き摺り現象は車両の発進時に発生し、車両の発進完了時にはブレーキ引き摺り現象が解消されることとなるため、車両の減速感および加速感に関して車両の乗員に与える違和感を低減することができる。
また、摩擦部材位置制御装置13は、車両の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜角センサ(あるいは路面の勾配を検出する勾配センサ)の検出信号に基づき、車両の登坂開始時に合わせて制御を開始し、車両の登坂完了時に合わせて制御を終了するように構成してもよい。この場合、摩擦部材位置制御装置13の制御開始に伴うブレーキ引き摺り現象は車両の登坂開始時に発生し、車両の登坂完了時にはブレーキ引き摺り現象が解消されることとなるため、車両の減速感および加速感に関して車両の乗員に与える違和感を低減することができる。
図1は本発明の一実施形態における車両用制動装置としてのディスクブレーキ装置の要部構造を示す断面図である。 図1に示したディスクブレーキ装置の油圧回路と共にその油圧回路の制御装置を示すブロック図である。 図2に示した摩擦部材位置制御装置の処理手順を示すフローチャートである。 図2に示した摩擦部材位置制御装置の制御開始時から制御終了時に至る間における加圧バルブが生成する制御油圧と、パッド部材が受けるパッド押圧反力の時間変化を示すグラフである。
符号の説明
1…ディスクブレーキ装置(車両用制動装置)、2…ディスクロータ(車輪側回転部材)、3…キャリパ、3D…シリンダ室、4…インナパッド(摩擦部材)、5…アウタパッド(摩擦部材)、6…ピストン、10…遮断バルブ(アクチュエータ)、11…加圧バルブ(アクチュエータ)、12…バルブ駆動回路、13…摩擦部材位置制御装置、14…アクセルストロークセンサ、15…車輪速センサ、17…アキュムレータ、18…モータポンプ。

Claims (4)

  1. 車輪側回転部材の摩擦接触面に摩擦部材を押圧して制動力を得る車両用制動装置の摩耗矯正装置であって、
    アクセルペダルが踏み込まれている車両の非制動時に随時前記摩擦部材をブレーキ効き始め油圧で動するためのアクチュエータを有する摩擦部材位置制御手段を備え、
    前記摩擦部材位置制御手段は、車両の加速終了時に合わせて制御を開始し車両の加速開始時に合わせて制御を終了する、車両の発進時に合わせて制御を開始し車両の発進完了時に合わせて制御を終了する、又は、車両の登坂開始時に合わせて制御を開始し車両の登坂完了時に合わせて制御を終了するように構成されていること、
    を特徴とする車両用制動装置の摩耗矯正装置。
  2. 前記アクチュエータは、前記摩擦部材を押圧するために設けられたシリンダに前記ブレーキ効き始め油圧を付与する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用制動装置の摩耗矯正装置。
  3. 前記車輪側回転部材としてのディスクロータおよび前記摩擦部材としてのブレーキパッドを備えたディスクブレーキ装置として構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制動装置の摩耗矯正装置。
  4. 前記車輪側回転部材としてのブレーキドラムおよび前記摩擦部材としてのブレーキシューを備えたドラムブレーキ装置として構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制動装置の摩耗矯正装置。
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