JP4380183B2 - 鋼帯冷却方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、急冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置と徐冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置とにより、鋼帯を順番に冷却する冷却設備において、冷却コストの低減を図る鋼帯冷却方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋼帯を連続焼鈍炉に通して焼なまし処理を行っている。連続焼鈍炉は鋼帯を加熱する加熱帯と、加熱された鋼帯を所定温度に維持する均熱帯と、均熱帯を出た鋼帯を冷却する冷却帯を有する。
冷却帯には上流側から順に急冷帯と徐冷帯とが連設されており、急冷帯と徐冷帯はそれぞれ冷却装置を備えている。鋼帯は急冷帯と徐冷帯とを順に通って段階的に冷却されており、鋼帯の種類と材質に応じて鋼帯の冷却速度が制御され、所定の性能を有する鋼帯が生産される。
【0003】
冷却装置として、ロール冷却装置やガスジェット冷却装置(例えば、特許文献1を参照)がある。ロール冷却装置は冷却用ロールを有しており、その冷却用ロール内を冷却媒体が流れて鋼帯を冷却する。また、ガスジェット冷却装置は冷却ガスを噴出して鋼帯を冷却する。
急冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置と徐冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置とを備える冷却帯においては、鋼帯に所定の材質性能を付与すべく温度条件が予め設定されており、各ガスジェット冷却装置のガスジェットを制御し、所定の温度条件を達成している。
【0004】
また、ロール冷却装置及びガスジェット冷却装置を備える冷却帯において、鋼帯の材質性能を損なうことなく鋼帯を急速に冷却する冷却方法がある(例えば、特許文献2を参照)。この冷却方法では、ガスジェット冷却装置における鋼帯の平均冷却速度とロール冷却装置における鋼帯の平均冷却速度を、ガスジェットによる鋼帯の平均冷却速度よりもロール冷却による鋼帯の平均冷却速度が大となるように、目標冷却速度に基づいた制御を行う。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−234252号公報
【特許文献2】
特開平11−229043号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の冷却帯における各冷却装置の制御は、専ら、鋼帯に所定の材質性能を付与する観点からなされ、鋼帯の温度条件を所定範囲内に収めることを目的としており、冷却装置のランニングコストを低減し、冷却処理の効率化を図るものではない。しかしながら、各冷却装置を効率よく稼動させ、コスト低減を図ることは、現代社会において広く求められている課題である。
【0007】
特に、ガスジェット冷却装置では冷却ガスを噴出させるためにファンの消費電力が大きく、そのランニングコストも大きくなってしまう。能力を異にする急冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置と徐冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置とを備える冷却帯においては、各ガスジェット冷却装置の出力分担の割り振りの相異により、冷却帯全体におけるガスジェット冷却装置の消費電力やランニングコストが大きく変動してしまう。
【0008】
本発明は、上記した従来の技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、急冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置と徐冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置とを備える冷却設備において、各ガスジェット冷却装置を効率よく稼働させ、鋼帯の冷却処理コストを抑制できる鋼帯冷却方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係る鋼帯冷却方法は、冷却能力を異にする急冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置と徐冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置とが順番に鋼帯を冷却する冷却設備において、処理対象の鋼帯に応じ、各ガスジェット冷却装置が鋼帯から奪う顕熱の単位熱量当たりのランニングコストを算出し、ランニングコストが小さなガスジェット冷却装置の出力を優先的に大きくし、各ガスジェット冷却装置の入側及び出側の鋼帯温度を制御する。
【0010】
請求項1の発明によると、各ガスジェット冷却装置について、鋼帯を冷却するために必要なランニングコストを算出し、低ランニングコストのガスジェット冷却装置の出力を優先的に大きくする。そして、高ランニングコストのガスジェット冷却装置は、低ランニングコストのガスジェット冷却装置を可能な範囲内でフル稼働させても冷却できない顕熱分だけ鋼帯を冷却する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1及び図2を用いて、本実施の形態の構成を説明する。
図1は、鋼帯Bの連続焼鈍炉において、加熱帯及び均熱帯の下流に設けられた冷却設備10を示す。冷却設備10は、鋼帯Bの搬送方向に沿って連設された2つの部屋からなる急冷帯11及び徐冷帯12を有し、急冷帯11と徐冷帯12とが冷却帯を形成している。上流側の急冷帯11内及び下流側の徐冷帯12内を鋼帯Bは順番に通過している。急冷帯11には急冷冷却装置14が設置されており、徐冷帯12には徐冷冷却装置15が設置されている。
【0012】
急冷冷却装置14は従来あるガスジェット冷却装置と同様の構成を有する。すなわち、急冷冷却装置14は、急冷帯11内で鋼帯Bに向けて冷却ガスを噴出可能な複数のチャンバー18a、チャンバー18aから噴出された冷却ガスを回収して冷却可能な熱交換器19a及び熱交換器19aで冷却された冷却ガスをチャンバー18aへ送るファン20aとを備えている。徐冷冷却装置15も急冷冷却装置14と同様の構成を有し、チャンバー18b、熱交換器19b及びファン20bを有する。
【0013】
急冷帯11内には、鋼帯Bを案内する複数のロール21aが設置されている。急冷帯11と同様、徐冷帯12内にも鋼帯Bを案内する複数のロール21bが設置されている。
急冷帯11の入側、急冷帯11と徐冷帯12との中間及び徐冷帯12の出側には、温度計22a、22b、22cがそれぞれ設置されており、鋼帯Bの急冷帯入側実測温度T1、鋼帯Bの急冷帯出側実測温度T2、鋼帯Bの徐冷帯出側実測温度T3を測定可能に構成されている。なお、実測温度T2は、鋼帯Bの徐冷帯入側温度でもある。また、実測温度T1は、均熱帯における鋼帯Bの温度Tsと同じで一定しており、この温度Tsを均熱帯温度ということとする。
【0014】
冷却設備10は制御システム26を有している。制御システム26は演算部27とファン制御部30a、30bとからなっている。
演算部27はCPU28及びメモリ29とを有し、ファン制御部30a、30bとつながっている。メモリ29には、外部から入力される鋼帯Bの性状C1、冷却処理温度条件C2を記憶可能となっているとともに、CPU28における演算処理内容を制御するプログラムP1及びP2が記憶されている。なお、性状C1とは、鋼帯BのサイズD、比熱Cp、比重ρ等のデータである。条件C2とは鋼帯Bの搬送速度V、鋼帯Bの均熱帯温度Ts、鋼帯Bの徐冷帯出側目標温度Te、急冷冷却装置14及び徐冷冷却装置15を流れる冷却ガスの性状等のデータである。また、メモリ29には、ファン20a及び20bの各出力と消費電力の関係等のデータが記憶されている。
【0015】
プログラムP1は、急冷冷却装置14及び徐冷冷却装置15において冷却ガスが鋼帯Bから奪う顕熱の単位熱量当たりのランニングコストをそれぞれ算出し、低ランニングコストの冷却装置を優先的に大きな出力で運転する冷却装置Rpと決定するものである。ランニングコストの算出では、メモリ29から性状C1、条件C2、ファン20a及び20bの各出力と消費電力の関係等のデータを読み出し、これらを用いて計算する。
【0016】
プログラムP2は、プログラムP1の決定結果に基づき、鋼帯Bの急冷帯出側目標温度Tmを算出するプログラムである。この目標温度Tmは、鋼帯Bの徐冷帯入側目標温度でもある。
プログラムP2による演算処理内容を、冷却装置Rpが徐冷冷却装置15である場合を例にとって具体的に説明する(図2を参照)。まず、プログラムP2は、プログラムP1の決定結果から冷却装置Rpが徐冷冷却装置15であるか否かを判断する(S1)。冷却装置Rpが徐冷冷却装置15であると判断したらS2へ進む。
【0017】
S2では、ファン20bを定格最大出力の95%以上で運転し、鋼帯Bが徐冷帯12出側で目標温度Teとなると仮定したとき、徐冷帯12入側で鋼帯Bが示すべき擬似目標温度Tm´を算出する。擬似目標温度Tm´の計算は、目標温度Te、鋼帯Bの比熱Cp、比重ρ、サイズD、徐冷帯12内に噴出される冷却ガス量と温度、鋼帯Bの搬送速度Vと搬送距離Lbとをメモリ29から読み出し、徐冷帯12内における冷却ガスと鋼帯Bとの間の熱伝達率αbを関数fにより計算し、熱伝達率αbを用いて徐冷帯12内で鋼帯Bから奪われる顕熱を計算し、算出した顕熱を目標温度Teに加えてなされる。
【0018】
そして、擬似目標温度Tm´と均熱帯温度Tsとを比較する(S3)。擬似目標温度Tm´が均熱帯温度Tsよりも低い場合は、目標温度Tmに擬似目標温度Tm´の値を与える(S4)。擬似目標温度Tm´が均熱帯温度Ts以上である場合は、目標温度Tmに均熱帯温度Tsの値を与える(S5)。
次に、冷却装置Rpが急冷冷却装置14である場合を説明する(図2を参照)。プログラムP2は、S1において冷却装置Rpが急冷冷却装置14であると判断したらS6へ進む。
【0019】
S6では、ファン20aを定格最大出力の95%以上で運転した場合に、急冷帯出側で鋼帯Bが示す擬似目標温度Tm″を算出する。擬似目標温度Tm″の計算は、均熱帯温度Ts、鋼帯Bの比熱Cp、比重ρ、サイズD、急冷帯11内に噴出される冷却ガス量と温度、鋼帯Bの搬送速度Vと搬送距離Laとをメモリ29から読み出し、急冷帯11内における冷却ガスと鋼帯Bとの間の熱伝達率αaを関数fにより計算し、熱伝達率αaを用いて急冷帯11内で鋼帯Bから奪われる顕熱を計算し、この顕熱を均熱帯温度Tsから引いてなされる。
【0020】
そして、算出した擬似目標温度Tm″と目標温度Teの比較を行う(S7)。擬似目標温度Tm″が目標温度Teよりも高い場合は、目標温度Tmに擬似目標温度Tm″の値を与える(S8)。また、擬似目標温度Tm″が目標温度Te以下である場合は、目標温度Tmに目標温度Teの値を与える(S9)。
ファン制御部30aは、演算部27、温度計22a、22b及びファン20aとそれぞれつながっており、ファン20aの出力を制御し、鋼帯Bの実測温度T2を制御可能に構成されている。すなわち、ファン制御部30aによるファン20aの制御は、演算部27から目標温度Tmと均熱帯温度Tsを受け取り、温度計22a、22bから受け取る実測温度T1及びT2と目標温度Tmに基づいて、ファン20aへ出力制御信号Saを送ってファン20aの出力を調整し、実測温度T2を目標温度Tmに一致させるフィードバック制御となっている。なお、目標温度Tmが均熱帯温度Tsと同じ場合、ファン制御部30aはファン20aへファン20aを停止させる出力制御信号Saを送る構成となっている。
【0021】
ファン制御部30bは、演算部27、温度計22b、22c及びファン20bとそれぞれつながっており、ファン20bの出力を制御し、鋼帯Bの実測温度T3を制御可能に構成されている。すなわち、ファン制御部30bによるファン20bの制御は、演算部27から目標温度Tmと目標温度Teとを受け取り、温度計22b、22cから受け取る実測温度T2及びT3と目標温度Teに基づいて、ファン20bへ出力制御信号Sbを送ってファン20bの出力を調整し、実測温度T3を目標温度Teと一致させるフィードバック制御となっている。なお、目標温度Tmが均熱帯温度Tsと同じ場合、ファン制御部30bはファン20bへファン20bを停止させる出力制御信号Sbを送る構成となっている。
【0022】
本実施の形態は上記のように構成されており、次に、その作用について説明する。
冷却設備10には上流の均熱帯から均熱帯温度Tsとなった鋼帯Bが連続供給されており、鋼帯Bは急冷帯11を通ってから徐冷帯12を通っている。
制御システム26の演算部27に、連続焼鈍炉で処理される鋼帯Bの性状C1、冷却処理温度条件C2のデータが外部から入力され、メモリ29に記憶される。そして、演算部27のCPU28においてプログラムP1に基づく演算処理がなされ、冷却装置Rpの決定がなされる。最初に、冷却装置Rpは徐冷冷却装置15であると決定された場合、すなわち、徐冷冷却装置15の方が急冷冷却装置14よりもランニングコストが低廉であると計算された場合について述べる。
【0023】
プログラムP1の決定に従って、プログラムP2は冷却装置Rpが徐冷冷却装置15であると判断し、メモリ29から所定のデータを読み出して熱伝達率αbを計算し、熱伝達率αbから鋼帯Bの顕熱を計算して、目標温度Tmを算出する。そして、目標温度Tmと均熱帯温度Tsとが演算部27からファン制御部30aへ送られ、目標温度Tmと目標温度Teとがファン制御部30bへ送られる。
【0024】
急冷帯11内では、ファン20aが稼動してチャンバー18aから冷却ガスが噴出しており、冷却ガスが鋼帯Bを均熱帯温度Tsから目標温度Tmまで冷却する。鋼帯Bの顕熱により昇温した冷却ガスは回収されて熱交換器19aで冷却され、再び、ファン20aによりチャンバー18aから急冷帯11内へ噴出されている。
【0025】
温度計22aと22bが、鋼帯Bの実測温度T1と実測温度T2とを連続計測し、その計測値をファン制御部30aへ送っている。ここで、急冷帯11には均熱帯で均熱帯温度Tsとなった鋼帯Bが搬送されているので、実測温度T1は常に均熱帯温度Tsと一致している。ファン制御部30aは目標温度Tmと実測温度T2との差を計算して出力制御信号Saをファン20aへ送り、ファン20aの出力を調整し、ファン20aをフィードバック制御し、実測温度T2を目標温度Tmと合致させている。
【0026】
なお、プログラムP2により目標温度Tmが均熱帯温度Tsと同じ値であると算出されたときは、鋼帯Bの急冷帯入側温度と出側温度は同じでよいこととなり、ファン制御部30aはファン20aの運転する必要はないと判断し、ファン20aを停止させる出力制御信号Saを送り、ファン20aの運転を停止する。
鋼帯Bは目標温度Tmまで冷却されて急冷帯11を出、徐冷帯12へ入る。徐冷帯12内には、ファン20bが稼動してチャンバー18bから冷却ガスが噴出しており、噴出した冷却ガスは鋼帯Bを目標温度Tmから目標温度Teまで冷却する。鋼帯Bの顕熱により昇温した冷却ガスは回収されて熱交換器19bで冷却され、再び、ファン20bによりチャンバー18bから徐冷帯12内へ噴出されている。
【0027】
温度計22bと22cが、鋼帯Bの実測温度T2と実測温度T3とを連続計測し、その計測値をファン制御部30bへ送る。ここで、実測温度T2は、ファン制御部30aによるファン20aの制御によって目標温度Tmとなっている。ファン制御部30bは目標温度Teと実測温度T3との差を計算して出力制御信号Sbをファン20bへ送り、ファン20bの出力を調整し、ファン20bをフィードバック制御し、実測温度T3を目標温度Teと合致させている。
【0028】
このとき、徐冷冷却装置15のファン20bは定格最大出力の95%以上で運転されており、低ランニングコストの徐冷冷却装置15はほぼフル稼働状態に近い状態にあり、徐冷冷却装置15が冷却できない鋼帯Bの顕熱分を高ランニングコストの急冷冷却装置14が冷却している。したがって、高ランニングコストの急冷冷却装置14の運転は殆ど最小限に抑制されている。
【0029】
次に、プログラム1が冷却装置Rpは急冷冷却装置14であると決定した場合、すなわち、急冷冷却装置14の方が徐冷冷却装置15よりもランニングコストが低廉であると計算された場合について述べる。
プログラムP2は冷却装置Rpが急冷冷却装置14であると判断し、熱伝達率αaを計算し、熱伝達率αaを用いて鋼帯Bの顕熱を計算し、鋼帯Bの目標温度Tmを算出する。そして、演算部27から目標温度Tmと均熱帯温度Tsがファン制御部30aへ送られ、目標温度Tmと目標温度Teがファン制御部30bへ送られる。
【0030】
急冷帯11内では、急冷冷却装置14が鋼帯Bを均熱帯温度Tsから目標温度Tmまで冷却している。そして、温度計22aと22bが鋼帯Bの実測温度T1と実測温度T2とを計測し、その計測値をファン制御部30aへ送る。なお、ここでも、実測温度T1は均熱帯温度Tsと一致している。ファン制御部30aは目標温度Tmと実測温度T2との差からファン20aをフィードバック制御し、実測温度T2を目標温度Tmと合致させている。
【0031】
鋼帯Bは目標温度Tmまで冷却されて急冷帯11を出、徐冷帯12へ入る。徐冷帯12内では、徐冷冷却装置15が鋼帯Bを目標温度Tmから目標温度Teまで冷却している。そして、温度計22bと22cが鋼帯Bの実測温度T2と実測温度T3とを計測し、その計測値をファン制御部30bへ送る。なお、実測温度T2は目標温度Tmとなっている。ファン制御部30bは目標温度Teと実測温度T3とからファン20bの出力をフィードバック制御し、実測温度T3を目標温度Teと合致させている。
【0032】
なお、プログラムP2により目標温度Tmが目標温度Teと同じであると算出されたときは、徐冷帯入側と出側で鋼帯Bの温度は同じでよいこととなり、ファン制御部30bはファン20bの運転する必要はないと判断し、ファン20bを停止する。
このとき、急冷冷却装置14のファン20aは定格最大出力の95%以上で運転されており、低ランニングコストの急冷冷却装置14はほぼフル稼働状態に近い状態にあり、急冷冷却装置14が冷却できない鋼帯Bの顕熱分を高ランニングコストの徐冷冷却装置15が冷却している。したがって、高ランニングコストの徐冷冷却装置15の運転は殆ど最小限に抑制されている。
【0033】
なお、上記本実施の形態では、プログラムP2のS2又はS6において、ファン20a又は20bを定格最大出力の95%以上で運転すると仮定した場合の擬似目標温度Tm´又は擬似目標温度Tm″を算出するとしたが、計算の条件がファン20a又は20bの各定格最大出力の95%以上に限定されるものでないことは勿論である。この数値は、冷却設備10の稼動条件によって適宜異なる値を用いることが可能である。
【0034】
次に、本実施の形態に係る鋼帯冷却方法の作用・効果の検証試験を実施した。本検証試験では、上記実施の形態で説明したものと同様の構成を有する冷却設備を用いて、連続焼鈍炉の加熱帯と均熱帯で処理された鋼帯Bに冷却処理を施した(発明例)。
鋼帯Bの性状C1において、板厚は0.9mm、帯幅は1200mm、冷却設備内での搬送速度Vは250m/minである。また、鋼帯Bの冷却処理温度条件C2において、鋼帯Bの均熱帯温度Tsは800℃、目標温度Teは200℃となっている。
【0035】
プログラムP1は鋼帯Bの性状C1、冷却処理温度条件C2より、徐冷冷却装置を低ランニングコストの冷却装置Rpであると決定したため、徐冷冷却装置を優先的に大きな出力で運転することとした。
プログラム2により、目標温度Tmは580℃と算出された。この算出結果にしたがって、急冷冷却装置で鋼帯Bを800℃から580℃まで冷却し、徐冷冷却装置で鋼帯Bを580℃から200℃まで冷却した(図3を参照)。図3は縦軸に鋼帯Bの温度をとり、横軸に連続焼鈍炉内での鋼帯Bの位置をとってあり、各位置での鋼帯Bの温度を示している。
【0036】
そして、急冷冷却装置と徐冷冷却装置について、それぞれのファンの出力及びそれぞれの実際の消費電力コストを計測した。
また、比較のため、以下の条件で、発明例で用いたのと同じ冷却設備を用いて、連続焼鈍炉の均熱帯で800℃となった鋼帯Bに冷却処理を施した(比較例)。比較例において、800℃から200℃まで鋼帯Bを冷却するとともに、プログラムP1及びP2による演算を行わず、急冷冷却装置のファンを定格最大出力100%で運転して鋼帯Bを冷却し、急冷冷却装置で冷却できなかった鋼帯Bの顕熱を徐冷冷却装置で冷却することとした。
【0037】
比較例において、急冷冷却装置のファンを定格最大出力100%で運転すると、急冷帯出側における鋼帯Bの実測温度T2は520℃となり、徐冷冷却装置により鋼帯Bを520℃から200℃まで冷却した(図3を参照)。
比較例の急冷冷却装置と徐冷冷却装置についても、それぞれのファンの出力及びそれぞれの実際の消費電力コストを計測した。
表1に、発明例と比較例のそれぞれについて、鋼帯Bの温度、急冷冷却装置のファン出力、徐冷冷却装置のファン出力、急冷冷却装置の消費電力コスト及び徐冷冷却装置の消費電力コストを示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004380183
【0039】
表1において、各ファン出力は定格最大出力に対する百分率を用いて示されている。各消費電力コストは、比較例における急冷冷却装置及び徐冷冷却装置の総消費電力コストを基準値の100とし、基準値に対する相対値により示されている。
発明例では、高ランニングコストの急冷冷却装置のファンは定格最大出力66%で運転され、低ランニングコストの徐冷冷却装置のファンは定格最大出力89%で運転されている。なお、発明例において、徐冷冷却装置のファンの出力を定格最大出力89%に抑えて運転したのは次の理由による。すなわち、冷却設備内で鋼帯Bの安定した搬送を確保する必要があり、鋼帯Bの実測温度T2の上限値が規制され、徐冷冷却装置のファンを定格最大出力89%以下で運転せざるを得なかったからである。発明例における急冷冷却装置及び徐冷冷却装置の各消費電力コストはそれぞれ52.9及び30.9となり、総消費電力コストは83.8であった。
【0040】
一方、比較例では、高ランニングコストの急冷冷却装置のファンは定格最大出力100%で運転され、低ランニングコストの徐冷冷却装置のファンは定格最大出力76%で運転されている。そして、急冷冷却装置及び徐冷冷却装置の各消費電力コストはそれぞれ73.0及び27.0となり、総消費電力コストは100であった。
【0041】
すなわち、比較例に対して発明例は、低ランニングコストの徐冷冷却装置のファン出力を優先的に大きくして運転し、高ランニングコストの急冷冷却装置のファンは補完的に運転しているにすぎない。このため、高ランニングコストの急冷冷却装置のファンの運転は最小限に抑制され、総消費電力コストも抑制されている。すなわち、比較例の総消費電力コストに対して発明例の総消費電力コストは16.2%低減されている。
【0042】
【発明の効果】
本発明は、上記のような鋼帯冷却方法であるので、急冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置と徐冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置とを備える冷却設備において、各ガスジェット冷却装置を効率よく稼働させ、鋼帯の冷却処理コストを抑制できる鋼帯冷却方法を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る冷却設備の構成図である。
【図2】プログラムP2の流れ図である。
【図3】鋼帯の温度変化図である。
【符号の説明】
10 冷却設備
11 急冷帯
12 徐冷帯
14 急冷冷却装置
15 徐冷冷却装置
18a、18b チャンバー
19a、19b 熱交換器
20a、20b ファン
21a、21b ロール
22a、22b、22c 温度計
26 制御システム
27 演算部
28 CPU
29 メモリ
30a、30b ファン制御部
B 鋼帯
C1 鋼帯性状
Cp 鋼帯の比熱
ρ 鋼帯の比重
D 鋼帯のサイズ
C2 冷却処理温度条件
V 鋼帯の搬送速度
P1、P2 プログラム
T1 急冷帯入側実測温度
T2 急冷帯出側実測温度
T3 徐冷帯出側実測温度
Ts 急冷帯入側温度(均熱帯温度)
Tm 急冷帯出側目標温度(徐冷帯入側目標温度)
Tm´、Tm″ 擬似目標温度
Te 徐冷帯出側目標温度
Sa、Sb 出力制御信号

Claims (1)

  1. 冷却能力を異にする急冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置と徐冷冷却装置を構成するガスジェット冷却装置とが順番に鋼帯を冷却する冷却設備において、
    処理対象の鋼帯に応じ、各ガスジェット冷却装置が鋼帯から奪う顕熱の単位熱量当たりのランニングコストを算出し、
    ランニングコストが小さなガスジェット冷却装置の出力を優先的に大きくし、各ガスジェット冷却装置の入側及び出側の鋼帯温度を制御することを特徴とする鋼帯冷却方法。
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JP4490804B2 (ja) * 2004-12-27 2010-06-30 新日本製鐵株式会社 連続焼鈍炉における鋼板の冷却方法

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