JP4379901B2 - 機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、ギヤ室の内部に潤滑オイルを封入した機械駆動式過給機に係り、特にオイル漏れの防止を図った機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の内燃機関にはターボチャージャーが使用されている。内燃機関では、通常ピストンの加工行程に生じるシリンダー内の負圧によって混合気又は空気を吸入する。しかし、バルブを開いている短い時間内に十分な吸気を行うことは困難である。そこで、ポンプに混合気又は空気を積極的に押し込むことにより、シリンダーの容積効果があり、実効圧縮比、爆発圧力共に高め、出力を向上させたものがスーパーチャージャーである。
【0003】
例えば、自動車エンジン過給用としては、容積式スーパーチャージャーのルーツブロワに対し、より高過給可能なスクリュー式過給機が提案されている。このスクリュー式過給機は、図3に示すように、ケーシング1に駆動軸2を挿入し、これらと一体的なギヤ3とギヤ4がギヤ室5内で噛合しているものである。ギヤ4は雄スクリューロータ6と回転軸7で連結し、ギヤ3は雌スクリューロータ8と回転軸9で連結してある。雌雄のスクリューロータ6,8は、空気室10で互いに螺合回転するようになっている(特開平7−279678号参照)。
【0004】
この捩じれた雌雄一対のスクリューロータ6,8を螺合駆動することにより、空気を吸い込み、ねじ螺合部の容積収縮にて圧縮させて吐出するものである。このスクリュー式の過給機は過給圧力の増加時のロスは少ないが、スクリューロータの端面(圧力上昇側)における圧力変動があるため、ギヤ室5に対する考慮対策が必要である。
【0005】
更に、機械駆動式過給機における性能の確保及びオイルシールの長寿命化を狙い、クリアランスシール(又はラビリンスシール)を用いている。例えば、ギヤ室5において、回転軸7はスリーブを介してオイルシール11と軸方向のラビリンスシール12に接し、これらの間の空隙13が通路14及び逆止弁15を介して大気へ連通するようになっている。
【0006】
この従来の過給機は、吐出側がエンジン吸入系と接続連通しており、このためにエンジン吸入負圧時に、ギヤ室5における空隙13が負圧になると、逆止弁15から大気を吸入して圧力の変動をやわらげ、このギヤ室5からのオイル漏れを防止するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この機械駆動式過給機は、その回転によって、ギヤ室5の温度が上昇していき、ギヤ室5内の圧力も上昇して焼き付きを起こすことがあった。そこで、換気用の通路14を介してギヤ室5内の空気を外部へ排出して圧力を下げていた。しかし、この換気用の通路14に設けたフィルタ(図示していない)に直接潤滑オイルなどの液体がかかるのを防ぐために、防護壁を付けたりする場合もあった。この防護壁等をかいくぐり、潤滑オイル等がフィルタに直接かかってしまうと、その潤滑オイルがフィルタで目詰まりし、換気機能を喪失してしまうという問題があった。
【0008】
また、ギヤ室5の温度が上昇した際には、潤滑オイルもミスト状態になっているため、従来のような、通路14から気体を外部へ排出する方法では、空気だけでなくミスト状態の潤滑オイルも同時の排出することになり、結果としてオイル漏れを防止できないという問題があった。
【0009】
更に、特開平5−31216号に示すような圧力平衡室を機械駆動式過給機に設けて圧力差を低減させる手段も提案されているが、その装置が複雑になるという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、過給機に簡単な構成を付加することで、密閉されたギヤ室から潤滑オイル等の液体を漏らすことなく、気体だけを外部へ逃がしギヤ室の内圧を緩和することができる機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、駆動装置からギヤ室(5)内のギヤ(3,4)を介して駆動し、前記ギヤ室(5)に隔壁(16)を介して隣接する空気室(10)において相互に螺合する雌雄一対のスクリューロータ(6,8)をケーシング(1)に回転自在に支持し、該スクリューロータ(6,8)の駆動回転により空気を吸入し圧縮して吐出する機械駆動式過給機であって、前記スクリューロータ(8)の回転軸(9)に、該回転軸(9)の軸方向の中心線に沿って前記ギヤ(3,4)部分からの貫通孔(18)を設けると共に、該回転軸(8)の途中の外周面から前記貫通孔(18)に向けて油逃げ孔(20)開け、かつ該貫通孔(18)に連続して外部へ通気する排気孔(19)とからなる換気孔(17)と、前記排気孔(19)に取り付けたフィルタ(22)と、を備え、高速で回転する前記回転軸(9)の遠心力により、前記貫通孔(18)内において、液体の潤滑オイルを油逃げ孔(20)から吹き飛ばし、気体のみを前記換気孔(17)を通過させ、外部へ排出させるように構成したこと、を特徴とする機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構が提供される。
【0012】
上記発明の構成では、ギヤ室(5)内が高速回転の温度上昇によって圧力が上昇しても、空気等の気体を換気孔(17)から外部へ排気するので、ギヤ室(5)内の圧力を低下させることができる。なお、ギヤ室(5)の内部に封入した、ミスト状態になっている潤滑オイルは、ギヤ(3,4)部分の開口(18a)から入り、高速で回転している回転軸(9)の遠心力により、貫通孔(18)内において比重の大きい液体(潤滑オイル)と気体(空気)と分離し、液体の潤滑オイルを油逃げ孔(20)から吹き飛ばし、気体のみを換気孔(17)を通過させ、外部へ排出させることができる。
【0013】
従って、密閉されたギヤ室(5)等の内圧を、潤滑オイル等の液体を漏らすことなく、気体だけを外部へ逃がすことができる。換気孔(17)に取り付けたフィルタ(22)によって、潤滑オイル等の液体を漏らすことなく、気体だけを外部へ逃がす効果を増大させることができる。
【0014】
前記排気孔(19)の内径は、前記貫通孔(18)の内径より、細くなるように形成したものである。前記排気孔(19)と前記貫通孔(18)との連通部分には、テーパ(21)を形成してある。
【0015】
このように、換気孔(17)を構成する貫通孔(18)の内径は、ギヤ室(5)側が太くなるように形成し、回転軸(9)の遠心力により液体の潤滑オイルが、気体と分離しやすいようになっている。単に、外部へ空気を排出するだけの換気孔(17)の出口側の排気孔(19)は細くなっている。更に、ギヤ室(5)側の太い内径部分の一端に形成したテーパ(21)において、潤滑オイルが遠心力で飛ばされやすいようになっている。
【0016】
前記フィルタ(22)は、前記排気孔(19)の内径部分であって、かつ前記テーパ(21)近くに設けてある。油逃げ孔(20)を、前記貫通孔(18)の内径部分であって、かつ前記テーパ(21)近くに設けてある。フィルタ(22)は、例えば焼結金属を用いることができる。
【0017】
このように、テーパ(21)部分において潤滑オイルを分離した空気を、更にこのテーパ(21)部分近傍に設けたフィルタ(22)で分離するので、潤滑オイルが外部へ漏れることを確実に防止している。一方、分離された潤滑オイルは、テーパ(21)部分近傍に設けた油逃げ孔(20)から吹き飛ばされ、ギヤ室(5)に戻される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、図において共通の部材には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
図1は本発明の機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構を示す側断面図である。本発明の機械駆動式過給機は、図3で示したものと同様に、モータ等の駆動装置からギヤ室5内のギヤ3,4を介して駆動し、ギヤ室5に隔壁16を介して隣接する空気室10において相互に螺合する雌雄一対のスクリューロータ6,8をケーシング1に回転自在に支持したものである。
【0019】
この捩じれた雌雄一対のスクリューロータ6,8は、螺合駆動することにより、空気を吸い込み、ねじ螺合部の容積収縮にて圧縮させて吐出する。この機械駆動式過給機は過給圧力の増加時のロスは少ないが、スクリューロータ6,8の端面(圧力上昇側)における圧力変動がある。ギヤ室5には、密閉され潤滑オイル等の液体が充填してある。しかし、スクリューロータ6,8の回転により高温になったギヤ室5の内圧を緩和するために、潤滑オイル等の液体を漏らさずに、空気等の気体だけを外部へ逃がす必要がある。
【0020】
図2は回転軸部分を示す拡大断面図である。
本発明の雌スクリューロータ8の回転軸9には、ギヤ室5内の空気を機械駆動式過給機の外部へ排出する換気孔17を設けてある。この換気孔17は、回転軸9の軸方向の中心線に沿って貫通孔18をギヤ4部分から駆動装置部分まで設けたものである。更に、この回転軸9のギヤ室5側の外周面に、貫通孔18に向けて油逃げ孔20を開け、かつ連通させてある。なお、図示例では、雌スクリューロータ8の回転軸9に換気孔17を設けた例を示してあるが、換気孔17はこのように雌スクリューロータ8の回転軸9に限定されず、雄スクリューロータ6の回転軸7であってもよい。
【0021】
この換気孔17は、ギヤ室5内がスクリューロータ6,8の高速回転の温度上昇によって圧力が上昇した際に、空気等の気体を機械駆動式過給機の外部へ排気させ、ギヤ室5内の圧力を低下させるものである。しかし、この換気孔17では、ギヤ室5の内部に封入した潤滑オイルが、高速で回転している回転軸9の遠心力により、ミスト状態になっている潤滑オイルは、ギヤ3,4部分の開口18aから入り、貫通孔18内において比重の大きい液体(潤滑オイル)と気体(空気)と分離する。この分離した液体の潤滑オイルを油逃げ孔20から吹き飛ばし、気体のみを換気孔17の排気孔19を通過させ、外部へ排出させることができるので、ギヤ室5内の圧力を低下させることができる。
【0022】
図2の拡大断面図に示すように、本発明の換気孔17は、出口側の排気孔19の内径が、ギヤ室5側の貫通孔18より、細くなるように形成してある。これは、油逃げ孔20を開けた貫通孔18の内径は太く形成して、回転する回転軸9の遠心力により液体の潤滑オイルが気体から分離されやすくするためである。逆に、外部へ空気を排出するが、潤滑オイルが排出しづらいように、換気孔17の出口側の排気孔19は細くなっている。
【0023】
この貫通孔18には、出口側の細い内径部分とギヤ室5側の太い内径部分との連結部分に略漏斗状にテーパ21を形成してある。これは、ギヤ室5側の太い内径部分の一端に形成したテーパ21において、潤滑オイルが遠心力で飛ばされやすくするためである。油逃げ孔20は、貫通孔18のギヤ室5側の太い内径部分であって、かつテーパ21近くに設けてある。
【0024】
焼結金属等から成るフィルタ22は、換気孔17の出口側の細い排気孔19の内径部分であって、かつテーパ21近くに設けてある。このフィルタ22は、テーパ21部分において潤滑オイルと分離した空気だけを外部へ排出させ、更に潤滑オイルが外部へ漏れることを確実に防止するものである。
【0025】
一方、分離された潤滑オイルは、テーパ21部分近傍に設けた油逃げ孔20から吹き飛ばされ、ギヤ室5に戻される。このように、本発明の機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構ではギヤ室から潤滑オイル等の液体を漏らすことなく、気体だけを外部へ逃がすことにより、ギヤ室の内圧を緩和することができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、ギヤ室5から潤滑オイル等の液体を漏らすことなく、気体だけを外部へ逃がすために、雌スクリューロータ8の回転軸9に換気孔17を軸方向に設けた実施の形態について説明してあるが、この回転軸にギヤ室5から外部に通じる換気孔17を設けることによりギヤ室の内圧を緩和するものであれば、スクリュー式過給機に限定されず、他の方式の過給機に応用することができ、そのため本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0027】
【発明の効果】
上述したように、本発明の機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構は、ギヤ室内が高速回転の温度上昇によって圧力が上昇しても、ミスト状態になっている潤滑オイルは、貫通孔のギヤ部分の開口から入り、高速で回転している回転軸の遠心力により、この貫通孔内において比重の大きい液体(潤滑オイル)と気体(空気)と分離し、液体の潤滑オイルを油逃げ孔から吹き飛ばし、気体のみを換気孔を通過させ、機械駆動式過給機の外部へ排出させることができる。そこで、ギヤ室内の圧力を低下させることができ、密閉されたギヤ室等の内圧を、潤滑オイル等の液体を漏らすことなく、気体だけを外部へ逃がすことができる。特に、換気孔に取り付けたフィルタによって、潤滑オイル等の液体を漏らすことなく、気体だけを外部へ逃がす効果を増大させることができる。
【0028】
また、本発明では、回転軸の軸方向中心部分の排気孔にフィルタを設置することで、遠心力で潤滑オイルなどの液体が外周方向に飛散することにより、フィルタに液滴が付着することを防止するので、フィルタを気体のみが通過することにより、潤滑オイルの減少が大幅に改善され、メンテナンスフリーを可能にすることができる、等の優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構を示す側断面図である。
【図2】回転軸の部分拡大断面図である。
【図3】従来の機械駆動式過給機におけるギヤ室を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
3 ギヤ
4 ギヤ
5 ギヤ室
6 雄スクリューロータ
7 回転軸
8 雌スクリューロータ
9 回転軸
10 空気室
16 隔壁
17 換気孔
18 貫通孔
19 排気孔
20 油逃げ孔
21 テーパ
22 フィルタ
Claims (6)
- 駆動装置からギヤ室(5)内のギヤ(3,4)を介して駆動し、前記ギヤ室(5)に隔壁(16)を介して隣接する空気室(10)において相互に螺合する雌雄一対のスクリューロータ(6,8)をケーシング(1)に回転自在に支持し、該スクリューロータ(6,8)の駆動回転により空気を吸入し圧縮して吐出する機械駆動式過給機であって、
前記スクリューロータ(8)の回転軸(9)に、該回転軸(9)の軸方向の中心線に沿って前記ギヤ(3,4)部分からの貫通孔(18)を設けると共に、該回転軸(8)の途中の外周面から前記貫通孔(18)に向けて油逃げ孔(20)開け、かつ該貫通孔(18)に連続して外部へ通気する排気孔(19)とからなる換気孔(17)と、
前記排気孔(19)に取り付けたフィルタ(22)と、を備え、
高速で回転する前記回転軸(9)の遠心力により、前記貫通孔(18)内において、液体の潤滑オイルを油逃げ孔(20)から吹き飛ばし、気体のみを前記換気孔(17)を通過させ、外部へ排出させるように構成したこと、
を特徴とする機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構。 - 前記排気孔(19)の内径が、前記貫通孔(18)の内径より、細くなるように形成したものであること、
を特徴とする請求項1の機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構。 - 前記排気孔(19)と前記貫通孔(18)との連通部分に、テーパ(21)を形成したものであること、
を特徴とする請求項1又は2の機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構。 - 前記フィルタ(22)を、前記排気孔(19)の内径部分であって、かつ前記テーパ(21)近くに設けたこと、
を特徴とする請求項1、2又は3の機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構。 - 前記油逃げ孔(20)を、前記貫通孔(18)の内径部分であって、かつ前記テーパ(21)近くに設けたこと、
を特徴とする請求項1、2、3又は4の機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構。 - 前記フィルタ(22)が、焼結金属であること、
を特徴とする請求項1、2、3、4又は5の機械駆動式過給機における回転軸の気液分離機構。
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- 2000-05-16 JP JP2000143024A patent/JP4379901B2/ja not_active Expired - Lifetime
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