JP4379858B2 - 加速度センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、航空機、携帯端末機器、玩具等に用いられる加速度検出用の半導体加速度センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
加速度センサは、自動車のエアーバッグ作動用の大きな衝撃力を検出する用途やブレーキ制御システムなどの車両制御用途向けの小さな加速度の検出に使用されてきた。これらの自動車用途ではX軸、Y軸の加速度を測定するため1軸もしくは2軸機能で充分であった。最近は、携帯端末機器、ロボットや人体動作の検出による各種制御等の新しい用途向けに開発、実用化が進んできている。このような新用途では空間の動きを検出することが多いためX、Y、Z軸の加速度を測定できる3軸加速度センサが要求されてきている。また、微小な加速度を検出するために高分解能で、小型・薄型であることも要求されている。
【0003】
加速度センサは可撓部の動きを電気信号に変換する方法で、ピエゾ抵抗型、静電容量型、圧電型に大別される。用途によって使い分けられるが、静止加速度の検出用途ではピエゾ抵抗型と静電容量型に絞られ、これら2つのタイプはシリコン基板に半導体技術やマイクロマシン技術により立体的な構造を形成することにより小型で高感度の加速度センサを一度に大量に製造できる。特に、ピエゾ抵抗型は構造および製造プロセスが単純であり小型・薄型で低価格化に向いた加速度センサである。
【0004】
従来の加速度センサの展開図を図6に示す。図6において加速度センサ素子1はワイヤー4で保護ケース2の端子5に接続され外部端子6に接続される。保護ケース蓋3が保護ケース2に固着密封され加速度センサ10が構成されている。加速度センサ素子のピエゾ抵抗素子の図示は省略している。図7に図6のj−j’断面を示す。加速度センサ素子1は、錘部11と支持部12、可撓部13から成っている。可撓部13のワイヤー4接続面にはピエゾ抵抗素子9が形成されている。保護ケース2に支持部12および保護ケース蓋3が接着剤7および77により固着されている。加速度センサ素子に外力が加わると、可撓部13に吊り下げられた錘部11が動き可撓部13を撓ませ、その撓み量をピエゾ抵抗素子9で感知し電圧として出力するものである。
【0005】
加速度センサ素子の拡大図を図8a)に示す。加速度センサ素子1は、錘部11を支える可撓部13、可撓部13を支える支持部12から構成され、可撓部13にはピエゾ抵抗素子9が設けられている。ピエゾ抵抗素子は端子14にパターニングされた配線(図示せず)で接続されている。外力を加速度センサ素子が受けた時の錘部と可撓部の動きを、図8a)のk−k’断面を使って図8b)からd)に示す。図8b)は外力が加わっていない状態で可撓部13はほぼ水平の状態である。このときの錘部の角部位置をA0とする。図8c)は加速度センサ素子の横方向から外力が加わったときの、錘部と可撓部の形状を模式的に表している。錘部が左右に動かされ一方の可撓部が下に、他方が上に撓みピエゾ抵抗素子の抵抗が変化してX軸方向、Y軸方向の加速度に応じた電圧として検出される。このときの錘部の角部位置をA1とする。図8d)は、加速度センサ素子の上下方向から外力が加わったときの、錘部と可撓部の形状を模式的に表している。このときの錘部の角部位置をA2とする。左右の可撓部は同一方向に撓みZ軸方向の加速度を検知することができる。可撓部の寸法や印加された加速度によって決まるが、加速度センサ素子1に1000GかかるとA0とA1の位置は約40μm、A0とA2の位置は約25μmと大きく変動することとなる。
【0006】
加速度センサ素子1の感度は、可撓部13の撓み易さで決まるため、可撓部13の長さが長く、幅が狭く、厚みが薄いほど向上するものである。そのため、高感度品では可撓部13の長さは500〜700μm、幅は80〜120μm、厚みは5〜10μmと非常に薄くなっている。このため、シリコンで形成された可撓部13は20μm程度変形すると折れてしまい、加速度センサ素子1としての機能が失われてしまう。加速度センサの感度を上げることと、測定できる加速度の上限は相反することとなる。加速度センサが携帯機器等に用いられ落下衝撃に耐えられる様にするには、加速度センサの感度を下げざるを得なかった。
【0007】
そこで、高感度で落下衝撃に耐えられる加速度センサを得るため、錘部11の動く量を5〜10μmに強制的に抑えるための規制板を設ける構造が、特開平5−41148号、特開平4−274005号、特開平8−233851号公報などに記載されている。錘部11の動きを規制した従来の加速度センサの断面構造例を図9に示す。本図は図8a)に示した加速度センサ素子1を接着剤7により保護ケース2に、また同じく接着剤71により上部規制板21とに接着し、最後に保護ケースの蓋3と保護ケース2とを接着剤77で接着して完成するものである。加速度センサ素子1の電極と保護ケース2の外部電極(いずれも図示せず)はワイヤボンドで接続されるがこれも図では省略している。この構造では加速度センサ素子1の下側の規制板は保護ケース2の内底を利用するものであり、その分薄型に向いた構造である。この構造においては、加速度センサ素子1と保護ケース2、上部規制板21とは接着剤で固着されるが、このとき可撓部13すなわちピエゾ抵抗素子9への接着剤の残留応力の影響を減らし、加速度検出特性への悪影響を抑えるために、接着剤としては硬化後でも柔らかいシリコンゴム系の樹脂を用いることが好ましいことを発明者らは見出し既に出願している。本従来例では、支持部12の4角において、加速度センサ素子裏面と保護ケース2および加速度センサ表面と上部規制板21とを接着している。直径5〜10μmの硬質プラスチック球のスペーサを接着樹脂に混合することによって、加速度センサ素子1と上部規制板21とのギャップおよび加速度センサ素子1と保護ケース2とのギャップを5〜10μmほどに制御している。
【0008】
【発明の解決しようとする課題】
上述したように錘部11の動きを5〜10μmに規制するため従来は5〜10μm径のスペーサをシリコンゴム系樹脂に混合して用いていた。ところが、シリコンゴム系樹脂は水のように流れやすく、スペーサとして硬質プラスチック球を混合したとしても、その直径が5〜10μmと非常に小さい場合には、混合後の状態でもシリコンゴム系樹脂はやはり非常に流れやすい性質を維持している。このため、塗布量を極く少量で制御することが難しく接着面積を制御することが困難であった。実際にスペーサ径を変えて混合したシリコンゴム系樹脂により2枚のシリコン基板同士を接着する模擬実験で接着面積のばらつきを評価した。その結果を表1に示す。×はばらつき大、○はばらつき小、△は両者の中間を示す。この結果よりスペーサ径として15μm以上が良好であることがわかる。しかし、これでは上記した所望のギャップ5〜10μmは得られないことになる。
【0009】
表1 スペーサ径と接着面積のばらつきの関係
Figure 0004379858
【0010】
すなわち、図10a)に示した加速度センサ素子1の支持部表面と上部規制板21の固着においては、破線で示す位置にシリコンゴム系樹脂71を塗布しても、実線で示すようにシリコンゴム系樹脂は広がっていた。広がったシリコンゴム系の樹脂の形状や面積はばらばらで、また支持部内側にはみ出しているものも多数見受けられた。4個所の接着面積を制御できず、接着樹脂の残留応力がばらつくため加速度センサの特性がばらつくという問題があった。次に、図10b)に示した加速度センサ素子1の支持部裏面と保護ケース2とを固着する場合について述べる。すなわち、同図に破線で示すシリコンゴム系樹脂7塗布位置で、加速度センサ素子1の支持部裏面と保護ケース2とが固着される。固着される支持部裏面は可撓部やピエゾ抵抗素子から離れているため、5〜10μmの硬質プラスチックを混練した樹脂の接着面積が、実線で示すように多少ばらついても、樹脂の残留応力が加速度検出特性に影響を与えることは殆どなかった。そのため、支持部裏面側の接着面積のばらつきは支持部表面側ほど、接着面積の制御は必要とならなかった。
【0011】
このように、所望の狭ギャップ長を得るためにギャップ長と同等の径を有する硬質プラスチック球をスペーサとして使用した場合には、従来技術では上部規制板と加速度センサ素子との接着において、接着面積のばらつきが大きくなり、加速度センサの特性、例えば、感度やオフセット電圧のばらつき、あるいは温度特性のばらつきなどが大きくなることが避けられなかった。
【0012】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、大きな衝撃力に対して錘の動きを抑制する規制板を設置した構造の加速度センサにおいて、加速度センサ素子と上部規制板とを接着するシリコンゴム系樹脂の接着面積のばらつきに起因する加速度検出特性のばらつきを抑え、ギャップを小さくし高耐衝撃性、高性能を実現した小型・薄型の加速度センサを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の加速度センサは、チップ中央に錘部、周辺に支持部があり両者を薄肉の可撓部で接続し、可撓部上に複数個のピエゾ抵抗素子から成る加速度検出部を配した加速度センサ素子に、錘部の過度な変位を抑制する上部規制板と下部規制板を有する加速度センサであって、上部規制板側の支持部表面に偶数個の凹部を設け、凹部深さd1と上部規制板と錘部の間隔gの和(d1+g)の直径を有する球形スペーサを混練したシリコンゴム系樹脂を該凹部に塗布し、加速度センサ素子と上部規制板とを固着することが望ましい。
【0014】
加速度センサ素子と上部規制板との固着個所において、支持部表面側に凹部を設けることによって大きな直径の球形スペーサを使用できるようにしたものである。シリコンゴム系樹脂の接着面積ばらつきが小さくなる、スペーサ径15μm以上の硬質プラスチック球を用いた場合、球スペーサ径15μm、支持部の凹部深さd1を10〜15μmとすれば、所定のギャップgを5〜10μmとすることができる。これによって、樹脂接着面積をコントロールすることが容易にでき、残留応力を最小とすることができる。偶数個所に凹部を設けることで、可撓部に加わる接着応力を均一にすることができ、加速度検出特性への影響を最小限に抑えることができる。
【0015】
本発明の加速度センサは、支持部表面に設けた凹部の深さd1が、球形スペーサ径の0.3以上0.9以下であることが望ましい。
【0016】
凹部深さd1は球形スペーサの径より浅いことが必要である。しかし、あまり浅いとシリコンゴム系樹脂が溢れ、接着面積のばらつきとなってしまう。また、d1が球形スペーサ径の0.9以上に深くなると、樹脂量が多くなるため樹脂の残留応力の影響を考慮する必要が出てくる。そのため、凹部深さd1は球形スペーサ径の0.3から0.9の範囲にすることが好ましいものである。
【0017】
本発明の加速度センサは、支持部表面に設けた凹部の深さd1が、可撓部厚みと同等であることが望ましい。
【0018】
加速度センサ素子の製造方法の安定化、高効率化などの観点からSOIウエハが一般に使われている。SOIウエハとはSilicon on insulatorの略で、表面側のシリコン単結晶層、中間にあるシリコン酸化膜層および裏面側にあるシリコンベース基板からなる。高感度な加速度センサではSOI層として5〜10μm、シリコンベース基板の厚さは約400〜600μmのものが通常用いられる。加速度センサ素子は、例えばマイクロマシン技術の1つであるディープドライエッチング技術を用いてSOI層に可撓部、錘部および支持部を、裏面側のシリコンベース基板に錘部および支持部をそれぞれ所定形状で所定位置に形成する。支持部表面の凹部深さを可撓部厚さと同等にすることによって、製造プロセスの簡略化を図ることができる。すなわち、同一のフォトマスクに可撓部と凹部パターンの両方を入れることで、SOI層に可撓部を形成するときに同時に凹部も形成でき、新たに工程を追加する必要はない。
【0019】
本発明の加速度センサは、支持部表面に設けた凹部は、支持部の内側端部から5μm以上離れて形成されていることが望ましい。
【0020】
少なくとも支持部表面の内側端部側に他の支持部表面と同一高さの土手を残して凹部を形成したものである。このような凹部の配置とすることによって、塗布した樹脂が支持部内側に流れ込むことを防止でき特性への影響も防止できる効果がある。樹脂が支持部内側に流れ込むと接着個所が変わるため、残留応力の影響が接着個所によって変わるためである。凹部の土手幅を5μm以上とすることで、支持部表面に上部規制板を接着するとき、接着剤が横方向(土手方向)に与える力によって、土手が壊れることを防ぐことができる。
【0021】
本発明の加速度センサは、支持部表面に設けられた凹部の少なくとも1辺の一部位が支持枠外側に開放されていることが望ましい。
【0022】
支持部表面に設けられた凹部にシリコンゴム系接着剤を塗布し上部規制板を固着した時、接着剤の量が僅かでも多いと支持部と上部規制板の間に樹脂が流れ込んでしまうことがある。5から10μm程度のギャップgでは毛細管現象も働き、樹脂の面積つまり接着面積がばらつく要因にもなる。凹部の少なくとも一辺の一部もしくは辺全域を支持部外側に切り欠くことで、溢れた樹脂を支持部外側側面に逃すことが可能となり、支持部内側への樹脂の流れ込みも確実に抑えることができる。凹部の一辺が支持部外側に重なるように凹部を形成することで、工程を増やすことなく凹部の一辺を切り欠くことができる。もしくは凹部面積を大きくして、ウェファから加速度センサ素子を切り離す際、凹部の一部を切り代にして切り欠くこともできる。
【0023】
本発明の加速度センサは、支持部に設けられた凹部の総面積が、支持部面積の1/20以上1/10以下であることが望ましい。
【0024】
支持部に設けられた凹部の開口部形状は四角に限られることは無く、丸から多角形や不定形の形状でも良い。しかし、偶数個設けられた個々の凹部の面積と形状は同じであることが好ましい。同一面積でも正方形と長方形では可撓部に与える接着剤の応力が異なることがあるため、好ましくない。偶数個設けられた凹部の総面積(総開口面積)が支持部表面積の1/20以上あれば、支持部と上部規制板の接着強度は充分確保できる。また、異常な衝撃力が加わっても支持部と上部規制板が剥がれることもない。同様、1/10以下とすることで、接着剤の応力の影響を最小限にすることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の加速度センサの実施例について図1から図4を用いて説明する。説明を判りやすくするため、従来例と同一の部品には同じ符号を用いている。図1は、本発明の加速度センサの展開図、図2は図1のB−B’断面図である。図3は図1に示した加速度センサ素子100の斜視図、図4は図1の展開図における上部規制板21の固着位置を示している。図1において加速度センサ素子100はワイヤー4で保護ケース2の端子5に接続され外部端子6に接続される。規制板21を加速度センサ素子100の支持部上面の4角部に形成した凹部120において、硬質プラスチック球が混練された接着剤71を用いて固着する。また、加速度センサ素子100の支持部12の下面も硬質プラスチック球が混練された接着剤7を用いて保護ケース2に固着し、錘部11の下面方向の動きは保護ケース2の内底によって規制する構造とした。最後に保護ケース蓋3を低融点ガラスやエポキシ樹脂などの接着剤77を用いて保護ケース2に固着密封して加速度センサを形成した。
【0026】
ピエゾ抵抗素子9や加速度センサ素子100の製造方法および加速度センサ素子100の寸法関係を簡単に説明する。約600μm厚のシリコンベース基板に1μmのシリコン酸化層と10μm程度のSOI層を有するSOIウエハを使用した。フォトレジストでパターニングを行いSOI層にボロンを1〜3x1018原子/cm打ち込みピエゾ抵抗素子9を作製、ピエゾ抵抗素子9に接続する配線を、金属スパッタ−、ドライエッチング装置を用いて形成した。SOI層に可撓部13と錘部11、支持部12をフォトリソとディープドライエッチング装置を用いて形成した。シリコン酸化層がエッチングストッパーとなるため、エッチングされるのはSOI層のみである。このSOI層のドライエッチング時に図3に示したように、支持部12の4つの角部に凹部120を同時に形成している。ピエゾ素子面を下にしてSOIウエハをダミー基板に、熱伝導の高い金属粉末を樹脂に混練したもの等を用いて接着した。SOIウエハのシリコンベース基板約600μmをドライエッチング技術により錘部11を形成するには、SFと酸素を導入したプラズマ内で行うため、被加工物の冷却が重要である。可撓部13と錘部11、支持部12が形成されたウエハがダミー基板に接着された状態で、ウエハを切断機でチップに分離したのち、溶剤を用い接着樹脂を溶かし加速度センサ素子100をダミー基板から取り外した。高感度な加速度センサを得るため、可撓部13の寸法は長さ700μm、幅110μm、厚み10μmと非常に薄く平板なものとなっている。錘部11は、一辺の長さを1000μm、支持部12の幅は450μmとし、加速度センサ素子100の外観形状は3mm角で厚み約0.6mmとしている。
【0027】
支持部12表面に形成した4箇所の凹部は図3に示したように、略正方形で支持部外側の二辺を切り欠いた構造とした。支持部12の内側端部側には他の支持部表面と同一高さのSOI層部分を所定幅で残して形成した。4箇所の凹部の総面積(開口部総面積)は、支持部表面の面積の1/15とした。また、図4に示したようにプラスチック球を混練した樹脂71を支持部12に形成した凹部120内に塗布して上部規制板21と固着した。この時に用いたプラスチック球は直径が15μmのものであり、凹部深さは10μmであるから、上部規制板21と加速度センサ素子100とのギャップは5μmである。また、加速度センサ素子100と保護ケース2との固着に用いたものと同じ直径が20μmのプラスチック球を上部規制板21との接着樹脂に混合すれば、ギャップは10μmとできた。
【0028】
上述の本発明では、凹部の深さは可撓部の厚さ、すなわちSOI層の厚さに等しくすることで一度のフォトエッチング工程で済ませられるという効果がある。しかし、可撓部や支持部などと凹部とを別々の工程で形成してもよい。この場合には、凹部の深さも任意に選べる為、プラスチック球は種々の直径のものを選ぶことができる。また、支持部の内側端部には所定幅にSOI層を残こすことによって、樹脂の塗布位置精度を上げることができた。
【0029】
実施した他の凹部形状の例を図5に示す。同図a)は、凹部121として支持部外側の二辺を切り欠きSOI層を全てドライエッチングで除去したもの、d)は凹部の一辺を切り欠いた構造である。いずれの凹部形状においても、シリコンゴム系樹脂の接着面積はほぼ凹部の開口面積と同じで、ばらつきもほとんど無視できる程度でしかなかった。
【0030】
接着面積のばらつきを低減できたため、従来の凹部を有しない加速度センサと比べ、感度のばらつきは10ポイント、オフセット電圧のばらつきは23ポイント低減できた。ばらつきは最大感度と最小感度を示した加速度センサの値の差を平均感度で除して百分率で求めている。従来と本発明のばらつきの百分率の差をポイントと表現したものである。オフセット電圧も同様である。評価に用いた加速度センサの数は、各々100個である。また、加速度センサを1mの高さから10cmの厚みの杉板上に自然落下させ耐衝撃性を評価した。自然落下させた加速度センサに10G程度の加速度を加え出力の有無で判断した。いずれの加速度センサとも自然落下後も出力は得られた。支持部表面に凹部を設けシリコンゴム系樹脂の接着面積を制御することで、耐衝撃性は得られ加速度検出特性も向上させられることが実証された。
【0031】
以上、実施例により説明したように、直径が15μm以上のプラスチック球をスペーサとして使用しながら、加速度センサ素子と上部規制板とのギャップを小さくすることができるため、高耐衝撃性を確保しながら、加速度センサ素子と上部規制板の接着において、接着面積のばらつきを小さくコントロールすることができるため残留応力の特性への影響を許容範囲におさえ、高性能を実現することができた。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、大きな衝撃力に対して錘の動きを抑制する規制板を設置した構造の加速度センサにおいて、加速度センサ素子と規制板とのギャップを小さくし耐衝撃性を高めた構造において、特性への影響を最小限に抑え、小型・薄型で高性能な加速度センサを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加速度センサの展開図である。
【図2】本発明の加速度センサの断面図である。
【図3】本発明の加速度センサ素子の斜視図である。
【図4】本発明の加速度センサ素子と上部規制板の接着位置を示す正面図である。
【図5】本発明の他の凹部形状を示す正面図である。
【図6】従来の加速度センサの展開図である。
【図7】従来の加速度センサの断面図である。
【図8】加速度センサ素子と錘部と可撓部の動きを説明する図である。
【図9】従来の規制板付き加速度センサ素子部の断面図である。
【図10】従来の規制板付き加速度センサの接着樹脂の塗布位置を示す正面図である。
【符号の説明】
1,100 加速度センサ素子、2 保護ケース、3 保護ケース蓋、
4 ワイヤー、5 端子、6 外部端子、7,71,77 接着剤、
9 ピエゾ抵抗素子、11 錘部、12 支持部、13 可撓部、
21 規制板、120,121 凹部。

Claims (2)

  1. チップ中央に錘部、周辺に支持部があり両者を薄肉の可撓部で接続し、可撓部上に複数個のピエゾ抵抗素子から成る加速度検出部を配した加速度センサ素子に、錘部の過度な変位を抑制する上部規制板と下部規制板を有する加速度センサであって、上部規制板側の支持部表面に偶数個で少なくとも1辺の一部位が支持枠外側に開放され、可撓部厚みと同等の深さd1を有する凹部を設け、凹部深さd1と上部規制板と錘部の間隔gの和(d1+g)の直径を有する球形スペーサを混練したシリコンゴム系樹脂を該凹部に塗布し、加速度センサ素子と上部規制板とを固着してなることを特徴とする加速度センサ。
  2. 支持部表面に設けた凹部は、支持部の内側端部から5μm以上離れて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
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