本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る吸入調量弁を用いたコモンレール式燃料噴射システムの全体構成を示した図、図2は図1の吸入調量弁の断面図、図3は図2の吸入調量弁におけるスプール弁単体の側面図、図4は図3のA−A線に沿う断面図である。
本実施形態の燃料噴射システムは、自動車等の車両に搭載されるものであり、主として、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関(多気筒ディーゼルエンジン:以下エンジンと言う)用の燃料噴射システムとして知られるコモンレール式燃料噴射システム(蓄圧式燃料噴射装置)であり、図1に示すように、コモンレール1内に蓄圧された高圧燃料を、エンジンの各気筒毎に対応して搭載された複数個(本例では4個)の電磁式燃料噴射弁(インジェクタ)3を介してエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給するように構成されている。
このコモンレール式燃料噴射システムは、燃料の噴射圧力Pcに相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、エンジンの各気筒の燃焼室内に燃料を所定のタイミングで噴射供給するインジェクタ3と、電磁式の吸入調量弁6を経て加圧室内に吸入される燃料を加圧する吸入燃料調量方式の燃料供給ポンプ(以下サプライポンプと呼ぶ)5と、複数個のインジェクタ3の電磁弁4およびサプライポンプ5の吸入調量弁6を電子制御するエンジン制御ユニット(以下ECUと呼ぶ)10とを備えている。この図1では、4気筒エンジンの1つの気筒に対応するインジェクタ3のみを示し、他の気筒については図示を省略している。ここで、エンジンの出力軸(例えばクランク軸:以下クランクシャフトと言う)は、サプライポンプ5のドライブシャフトまたはカムシャフトをベルト駆動している。なお、吸入調量弁6は本発明の流量制御弁に相当する。
コモンレール1は、燃料供給配管12を介して高圧燃料を吐出するサプライポンプ5の吐出口と接続されている。また、コモンレール1から燃料タンク7へ燃料を戻すためのリリーフ配管14には、燃料タンク7に連通する燃料排出路の開口度合を調整することが可能な常閉型の減圧弁2が設置されている。この減圧弁2は、減圧弁駆動回路を介してECU10から印加される減圧弁駆動電流によって電子制御されることにより、例えば減速時またはエンジン停止時に速やかにコモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧力)を高圧から低圧へ減圧させる降圧性能に優れる電磁弁である。
減圧弁2は、コモンレール1から燃料タンク7へ燃料を還流させるための燃料還流路の開度を調整するバルブ(弁体:図示せず)、このバルブを開弁方向に駆動するソレノイドコイル(電磁コイル:図示せず)、およびバルブを閉弁方向に付勢するスプリング等のバルブ付勢手段(図示せず)を有している。そして、減圧弁2は、減圧弁駆動回路を介してソレノイドコイルに印加される減圧弁駆動電流の大きさに比例して、コモンレール1内からリリーフ配管14を経て燃料タンク7に還流される燃料の還流量(減圧弁流量)を調整して、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧力)を変更する。なお、減圧弁2の代わりに、リリーフ配管14に、コモンレール1内の燃料圧力が限界設定圧力を超えた際に開弁してコモンレール1内の燃料圧力を限界設定圧力以下に抑えるプレッシャリミッタを取り付けるようにしても良い。
エンジンの各気筒毎に対応して搭載された複数個のインジェクタ3は、コモンレール1より分岐する複数の分岐管13の下流端に接続されて、エンジンの各気筒の燃焼室内への燃料噴射を行う燃料噴射ノズル、この燃料噴射ノズル内に収容されたノズルニードル(図示せず)を開弁方向に駆動する電磁弁4、およびノズルニードルを閉弁方向に付勢するスプリング等のニードル付勢手段(図示せず)等から構成された電磁式燃料噴射弁である。
そして、各気筒のインジェクタ3からエンジンの各気筒の燃焼室内への燃料噴射は、ノズルニードルと連動するコマンドピストンの動作制御を行う背圧制御室内の燃料圧力を増減制御する電磁弁4のソレノイドコイル(図示せず)への通電および通電停止(ON/OFF)により電子制御される。つまり、インジェクタ3の電磁弁4のソレノイドコイルが通電されてノズルニードルがノズルボデーの先端部に形成された複数個の噴射孔を開弁している間、コモンレール1内に蓄圧された高圧燃料がエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給される。これにより、エンジンが運転される。また、インジェクタ3には、余剰燃料や背圧制御室から排出された燃料を燃料系の低圧側に溢流させるためのリークポートが設けられており、インジェクタ3からのリーク燃料は、リターン配管15を介して燃料タンク7に戻される。
サプライポンプ5は、吸入した低圧燃料を加圧する圧送系統を備え、つまりポンプエレメントを備え、吸入調量弁6で、圧送系統の燃料吐出量を、各加圧室内に吸入される吸入燃料量を調整することで制御するタイプの高圧供給ポンプである。
このサプライポンプ5は、エンジンのクランクシャフトの回転に伴ってポンプ駆動軸(ドライブシャフトまたはカムシャフト)が回転することで、燃料タンク7から低圧燃料を汲み上げる周知のフィードポンプ(低圧供給ポンプ:図示せず)と、ポンプ駆動軸により回転駆動されるカム(図示せず)と、このカムに駆動されて上死点と下死点との間を往復運動するプランジャ(図示せず)と、これらのプランジャがポンプハウジングに固定されたシリンダヘッド(図示せず)内を往復摺動することにより吸入された燃料を加圧して高圧化する加圧室(プランジャ室:図示せず)と、各加圧室内の燃料圧力が所定値以上に上昇すると閉弁する吸入弁(図示せず)と、各加圧室内の燃料圧力が所定値以上に上昇すると開弁する吐出弁(図示せず)とを有している。なお、サプライポンプ5は、本発明の高圧ポンプおよび低圧ポンプに相当する。
そして、サプライポンプ5は、各プランジャがシリンダヘッド(ポンプシリンダ)内を往復摺動することで、燃料タンク7から燃料供給配管11を経て加圧室内に吸入された低圧燃料を加圧して高圧化する。なお、燃料供給配管11の途中には、燃料フィルタ8が設置されている。また、吸入弁は、各加圧室よりも燃料の流れ方向の上流側、つまりフィードポンプから1個の吸入調量弁6を経て加圧室に至る燃料吸入経路の途中に設置された逆止弁よりなる。また、吐出弁は、各加圧室よりも燃料の流れ方向の下流側、つまり加圧室から吐出口に至る燃料吐出経路の途中に設置された逆止弁よりなる。また、サプライポンプ5には、内部の燃料温度が高温にならないように、リークポートが設けられており、サプライポンプ5からのリーク燃料は、燃料還流配管16を経て燃料タンク7に戻される。
ここで、サプライポンプ5内に形成される、フィードポンプから吸入弁を経て加圧室に至る燃料吸入経路(図示せず)の途中には、加圧室内に吸入される吸入燃料量を調整する吸入調量弁6が取り付けられている。この吸入調量弁6は、図2、図3に示したように、ポンプハウジングに固定されたスリーブ状のバルブケース21と、このバルブケース21の半径方向に開口した出口側ポート22の流路開口面積を調整する弁体(以下スプール弁と言う)23と、このスプール弁23を開弁方向に駆動するリニアソレノイドアクチュエータ24と、スプール弁23を閉弁方向に付勢するリターンスプリング(弁体付勢手段)25とによって構成されている。
そして、吸入調量弁6は、図示しないポンプ駆動回路を介してECU10から印加されるポンプ駆動電流iによって電子制御されることにより、サプライポンプ5の加圧室内に吸入される燃料吸入量を調整するノーマリクローズタイプ(常閉型)の電磁式流量制御弁である。すなわち、吸入調量弁6は、ポンプ駆動回路を介してリニアソレノイドアクチュエータ24に印加されるポンプ駆動電流iの大きさに比例して、スプール弁23をストローク方向に移動させて、燃料吸入経路の途中に設けられたバルブケース21の出口側ポート22の流路開口面積を調整する。これにより、フィードポンプから燃料吸入経路、吸入弁を経て加圧室内に吸入される燃料吸入量が調整される。したがって、サプライポンプ5の加圧室からコモンレール1内に吐出される燃料吐出量が、エンジンの運転条件(例えばエンジン回転速度、アクセル操作量、指令噴射量等)に対応した最適値に調整され、インジェクタ3からエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給する燃料の噴射圧力Pcに相当するコモンレール1内の燃料圧力、所謂コモンレール圧力が変更される。
ここで、リニアソレノイドアクチュエータ24は、バルブケース21の図示右端部に一体的に設けられた袋筒状のステータ部(ステータコア)26、スプール弁23の図示右端部に一体的に設けられたアーマチャ部(アーマチャ、ムービングコア)27、ステータ部26の円筒状部の外周に保持された樹脂製のコイルボビン28、このコイルボビン28の外周に巻回されたソレノイドコイル29、このソレノイドコイル29の端末リード線(図示せず)に電気的に接続されたターミナル30、ソレノイドコイル29の外周側を覆う円筒状のハウジング31等から構成されている。
なお、バルブケース21のステータ部26は、ソレノイドコイル29の通電時に、磁化されて電磁石となり、スプール弁23のアーマチャ部27を吸引するための吸引部32を有している。この吸引部32は、スプール弁23を摺動可能に収容する略円筒状の収容部33に対して薄肉部34および円筒部35を介して接続されている。
そして、ソレノイドコイル29は、通電を受けることにより起磁力を発生してバルブケース21のステータ部26およびスプール弁23のアーマチャ部27を磁化することで、アーマチャ部27をストローク方向(軸線方向の図示右側)に吸引すると共に、コイルボビン28に、絶縁被膜を施した導線を複数回巻装したコイルである。このソレノイドコイル29は、コイルボビン28の一対の鍔状部間に巻装されたコイル部、およびこのコイル部より取り出された一対の端末リード線(端末線)を有している。
また、ハウジング31は、電気絶縁性に優れる樹脂材料によって一体的に形成され、ソレノイドコイル29の外周側を覆う円筒状部、およびターミナル30を保持する筒状のコネクタ部36を備えている。そして、ハウジング31の外周には、バルブケース21の外周側に形成された略円環状のフランジ部にかしめ等の手段を用いて固定された円筒状のブラケット37が設けられている。このブラケット37の外周側に形成された略円環状のフランジ部(鍔状部)は、サプライポンプ5のポンプハウジングの外壁面にスクリュー等の締結具(図示せず)を用いて締め付け固定されている。そのフランジ部には、締結具を挿通する挿通孔38が形成されている。
ここで、吸入調量弁6のバルブケース21は、スプール弁23を摺動可能に収容するシリンダ機能(収容部33)と、磁路形成のためのステータ機能(ステータ部26)とを兼ね備えている。そして、バルブケース21をステータとして機能させるために、その材質をフェライト系のステンレス鋼(SUS13)等の軟質磁性材料としている。この軟質磁性材料は、磁気特性を悪化させることから焼き入れ等の熱処理を施すことができない。しかし、バルブケース21に本来の機能であるシリンダ機能を持たせるには、耐摩耗性の向上および表面硬さの向上が要求されることから、バルブケース21のスプール孔39の孔壁面にニッケル燐メッキ等の硬化層を施している。なお、バルブケース21のスプール孔39の孔壁面は、スプール弁23を軸線方向(ストローク方向)に案内(誘導)する円筒状のガイド部を構成している。
また、バルブケース21の図示左端部は、サプライポンプ5のポンプハウジングの外壁面に設けられた嵌合凹部(図示せず)内に圧入嵌合されており、ポンプハウジングの嵌合凹部の内壁面とバルブケース21の図示左端部の外周面との間には、燃料の漏れを防止するためのOリング等のシール材40が装着されている。そして、バルブケース21の図示左端部には、フィードポンプから燃料が送り込まれる燃料溜まり部(図示せず)に連通する入口側ポート41が形成されている。
なお、上述した出口側ポート22は、吸入弁を介して加圧室に連通する燃料吸入経路の後半部を構成する連通路に向けて開口している。そして、出口側ポート22の入口側は、出口側に比べて流路径が小さくなっている。
また、バルブケース21は、スプール弁23が摺動するスプール孔(摺動孔)39を有している。このスプール孔39の図示右側部には、スプール弁23の内部に形成される内部流路(第2内部流路)42を介して、入口側ポート41に連通する内部流路(第1内部流路)43が形成されている。なお、内部流路43は、リターンスプリング25を収容するスプリング室としても機能する。
ここで、吸入調量弁6のスプール弁23は、内部の軸線方向に内部流路42を有する円筒状のスプール型バルブであって、その外周面にバルブケース21のスプール孔39の孔壁面に摺接する摺動部44を備えている。このスプール弁23は、摺動部44がバルブケース21の出口側ポート22の流路開口面積を変更することで、吸入弁を介して加圧室に吸入される燃料流量(燃料吸入量)が調整される。
そして、スプール弁23は、バルブケース21のスプール孔39内を摺動して出口側ポート22の流路開口面積を変更する弁体本来のバルブ機能と、磁路形成のためのアーマチャ機能(アーマチャ部27)とを兼ね備えている。そして、スプール弁23をアーマチャとして機能させるために、その材質を純鉄または低炭素鋼等の軟質磁性材料としている。この軟質磁性材料は、磁気特性を悪化させることから焼き入れ等の熱処理を施すことができない。しかし、スプール弁23として機能させるには、耐摩耗性の向上および表面硬さの向上が要求される。そこで、スプール弁23の摺動部44の外周面にニッケル燐メッキ等の硬化層を施している。
そして、スプール弁23は、バルブケース21の図示左端部の内周に圧入固定された円環状のストッパ50によって初期位置が規定されている。そして、スプール弁23は、内部流路43内に収容されたリターンスプリング25により常に付勢されている。このため、スプール弁23は、先端がストッパ50に当接する位置で、スプール弁23の閉弁側の移動範囲が規定されている。
また、スプール弁23の図示右端部には、バルブケース21のステータ部26に所定のエアギャップを介して対向するように設けられた円筒状のアーマチャ部27が一体的に形成されている。そして、スプール弁23の内部には、バルブケース21の入口側ポート41と内部流路43とを連通するように内部流路42が設けられている。この内部流路42は、図示左側部よりも図示右側部の方が内径が小さくなっており、スプール弁23が軸線方向に移動する際に内部流路43内の燃料を出し入れすることでスプール弁23の移動がし易くなっている。
そして、スプール弁23の摺動部44の外周面には、円環状の調量溝(環状流路)45、円環状の調芯溝46および複数個(2個または3個)の円環状油溝47が形成されている。調量溝45は、摺動部44のうちの隣設する2つの第1摺動部61間に位置し、スプール弁23の外径を摺動部44よりも小さくすることで設けられている。この調量溝45は、摺動部44の周方向に設けられて、調量溝45よりも流路径の小さい連通孔48を介して内部流路42に連通している。
図4に示すように、連通孔48は、スプール弁23の軸線23aに対して直交する方向に延びるとともに、スプール弁23をスプール弁23の軸線23aの方向に見たときに、連通孔48の軸線48aがスプール弁23の軸線23aからずれるようにして形成されている。換言すると、スプール弁23の軸線23aを通り且つ連通孔48の軸線48aと平行な線48bを基準線としたとき、連通孔48は、基準線48bからオフセット量(以下、連通孔オフセット量という)Ltだけオフセットして形成されている。なお、本実施形態では連通孔48は1個設けられているが、連通孔48は複数個設けてもよい。
図2、図3に示すように、調芯溝46は、摺動部44のうちの隣設する第1、第2摺動部61、62間に位置し、スプール弁23の外径を摺動部44よりも小さくすることで設けられている。この調芯溝46は、調量溝45よりも浅く、且つ調量溝45よりも軸線方向に長く摺動部44の周方向に設けられている。そして、調芯溝46は、調芯溝46よりも流路径の小さい連通孔49を介して内部流路42に連通している。また、連通孔49は、調芯溝46に向けて2個開口している。
そして、複数個の円環状油溝47は、スプール弁23の図示左端部(先端部)または図示右端部(後端部)とバルブケース21のスプール孔39との間から燃料が浸入して、バルブケース21のスプール孔39の孔壁面とスプール弁23の摺動部44の外周面との間に油膜を形成する周溝部である。ここで、本実施例のスプール弁23の摺動部44のうちの隣設する2つの第1摺動部61の外周面とバルブケース21のスプール孔39の孔壁面との間には、調量溝45と調芯溝46とを液密的に略遮断するシール部が設けられている。また、スプール弁23の摺動部44のうちの複数の第2摺動部62の外周面とバルブケース21のスプール孔39の孔壁面との間には、バルブケース21のスプール孔39内を摺動するのに必要な所定のクリアランスが設けられている。
図1に示すECU10には、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、RAM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路、インジェクタ駆動回路(EDU)、ポンプ駆動回路、減圧弁駆動回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。そして、各種センサからのセンサ信号は、A/D変換器でA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。そして、ECU10は、図1に示したように、燃料圧力センサ(燃料圧力検出手段)55からの電圧信号や、その他の各種センサからのセンサ信号が、A/D変換器でA/D変換された後に、ECU10に内蔵されたマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
また、ECU10は、エンジンをクランキングさせた後にエンジンキーをIG位置に戻して、図示しないイグニッションスイッチがオン(IG・ON)すると、メモリ内に格納された制御プログラムまたは制御ロジックに基づいて、例えばインジェクタ3の電磁弁4およびサプライポンプ5の吸入調量弁6を電子制御するように構成されている。
ここで、マイクロコンピュータには、エンジンのクランクシャフトの回転角度を検出するためのクランク角度センサ51、アクセル開度(ACCP)を検出するためのアクセル開度センサ52、エンジン冷却水温(THW)を検出するための冷却水温センサ53、およびサプライポンプ5内に吸入されるポンプ吸入側の燃料温度(THF)を検出するための燃料温度センサ54等が接続されている。なお、ECU10は、クランク角度センサ51より出力されたNE信号パルスの間隔時間を計測することによってエンジン回転数(NE)を検出する回転数検出手段として働く。
次に、本実施例のサプライポンプ5の作用を説明する。
サプライポンプ5のポンプ駆動軸(ドライブシャフトまたはカムシャフト)がエンジンのクランクシャフトにベルト駆動されて回転すると、プランジャがシリンダヘッド内の摺動面を往復摺動する。そして、例えば上死点に位置するプランジャが下降すると、加圧室内の圧力が低下し吸入弁が開弁して、フィードポンプ→燃料溜まり部→吸入調量弁6の入口側ポート41→内部流路42→連通孔48→調量溝45→出口側ポート22→連通路→吸入弁を経て加圧室内に燃料が吸入される。そして、プランジャが下死点に達した後に、再び上昇を開始すると、加圧室内の圧力が昇圧され、吸入弁が閉弁して、加圧室内の圧力が更に上昇する。そして、加圧室内の圧力が吐出弁の開弁圧以上に上昇すると、吐出弁が開弁して、加圧室から吐出弁、燃料供給配管12を経てコモンレール1内に圧送供給される。
そして、コモンレール1内に蓄圧された高圧燃料は、インジェクタ3の電磁弁4を任意の噴射時期に駆動することで、所定のタイミングで、エンジンの各気筒の燃焼室内へ噴射供給することができる。
なお、サプライポンプ5の加圧室内から吐出弁、燃料供給配管12を経てコモンレール1内に吐出される燃料の吐出量は、ECU10によって吸入調量弁6のソレノイドコイル29に印加するポンプ駆動電流iを制御することにより、吸入調量弁6のスプール弁23のストローク量、つまり燃料吸入経路、特に出口側ポート22の流路開口面積を調整することによって、フィードポンプから吸入調量弁6、吸入弁を経て加圧室内に吸入される燃料の吸入量を調整することで制御される。
すなわち、ECU10からのポンプ駆動信号によって吸入調量弁6を、エンジン回転数(Ne)、アクセル開度(ACCP)および指令噴射量(Q)等に応じて電子制御することによって、ポンプ駆動回路を介して吸入調量弁6のソレノイドコイル29に印加されるポンプ駆動電流iの大きさに比例して、加圧室内に吸入される燃料の吸入量が調整される。これにより、加圧室内より吐出される燃料の吐出量を変更することによって、エンジンの各気筒毎に対応して搭載されたインジェクタ3の噴射孔からエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射される燃料の噴射圧力Pcに相当するコモンレール圧力を、運転者の要求通り(例えばアクセル操作量:アクセル開度)に制御することが可能となる。
また、吸入調量弁6における連通孔48から流出する燃料によってスプール弁23に旋回力(以下、スプール弁旋回力という)Frotが発生し、バルブケース21のスプール孔39内をスプール弁23がその軸線23aを中心にして旋回するようになる。これによって、スプール弁23とバルブケース21との接触面が刷新され、バルブケース21のスプール孔39の孔壁面とスプール弁23の摺動部44の外周面とが常に同じ位置で摩耗することを抑制できるので、スプール弁23およびバルブケース21の偏摩耗を防止し、スプール弁23およびバルブケース21の磨耗を低減して、スプール弁23の作動不良を防止することができる。その結果、コモンレール圧力の制御性の悪化や噴射量の変化などによる、有害排出物の増加、ドライバビリティの悪化、エンジンノイズの増加等を抑制することができる。
次に、スプール弁23の旋回を任意の状態で発生させるための、ハード面の設計手法について説明する。
ここで、スプール弁23が旋回する際にバルブケース21とスプール弁23との間に発生する摩擦力を旋回摩擦力Ffr、連通孔48の上流側の圧力を連通孔前圧Pfeed、連通孔48の下流側の圧力を連通孔後圧Psuc、(Pfeed−Psuc)を連通孔圧力損失という。
図5に示すように、連通孔圧力損失(Pfeed−Psuc)が大きくなるほどスプール弁旋回力Frotが大きくなり、また、連通孔オフセット量Ltが大きくなるほどスプール弁旋回力Frotが大きくなる。そして、連通孔圧力損失(Pfeed−Psuc)および通孔オフセット量Ltを、図5に斜線で示す旋回可能設計域に設計することにより、スプール弁旋回力Frotが旋回摩擦力Ffrよりも大きくなってスプール弁23が旋回する。
また、図6に示すように、吸入調量弁6を経て加圧室内に吸入される燃料の量(以下、送油量という)Qscvは、ポンプ駆動電流iの増加に伴って増加する。そして、スプール弁23を旋回させるために必要な送油量を旋回開始送油量Qtとし、ポンプ駆動電流iが設定ポンプ駆動電流itのときの送油量Qscvを設定送油量Qscv・itとしたとき、Qt=Qscv・itであれば、Qt≧Qscv・itとなる領域、すなわち図6に斜線で示す領域で、スプール弁23が旋回可能となる。
また、Qt≧Qscv・itとなるエンジン運転領域は、図7に斜線で示す領域、すなわちエンジン始動時および高負荷運転時の領域となる。なお、図7の縦軸は、エンジンの各気筒の燃焼室内に噴射される燃料の量、すなわち噴射量Qinjであり、図7の横軸はエンジン回転数Neである。
ハード面の設計を行うにあたり、まず、旋回開始送油量Qtを決定する。この旋回開始送油量Qtを決定することにより、スプール弁23が旋回するエンジン運転領域、すなわち図7に斜線で示す領域を決定することができる。
次に、連通孔48の総通路面積(以下、連通孔総通路面積という)St、および連通孔オフセット量Ltを仮決めする。なお、連通孔48が複数個の場合は、全ての連通孔48の通路面積の合計が連通孔総通路面積Stとなる。
次に、仮決めした連通孔総通路面積Stと連通孔オフセット量Lt等に基づいて、スプール弁旋回力Frotを求める。求めたスプール弁旋回力Frotが旋回摩擦力Ffrより大きければ、仮決めした連通孔総通路面積Stや連通孔圧力損失(Pfeed−Psuc)等に基づいて、送油量Qscvを求める。
そして、求めた送油量Qscvが最初に決定した旋回開始送油量Qtよりも大きければ、スプール弁23が旋回可能であるため、仮決めした連通孔総通路面積Stや連通孔オフセット量Ltを採用する。
一方、求めた送油量Qscvが最初に決定した旋回開始送油量Qt以下であれば、スプール弁23が旋回不可能であるため、送油量Qscvが最初に決定した旋回開始送油量Qtよりも大きくなるまで上記の検討を繰り返し行う。具体的には、連通孔総通路面積Stを大きくして送油量Qscvを増加させる。
以上のようにしてハード面の設計を行うことにより、エンジン始動時および高負荷運転時にスプール弁23を確実に旋回させることができる。
次に、スプール弁23を任意の領域で旋回させるための制御について説明する。前述したように、ハード面の設計により、エンジン始動時および高負荷運転時にスプール弁23を旋回させることができるが、以下述べる制御は、エンジン始動時および高負荷運転時以外の領域で、所定の条件が成立したときにスプール弁23を旋回させるものである。
図8はECU10のCPUが実行するプログラムの流れ図であり、前回所定の条件が成立してスプール弁23を旋回させる制御を行った後に車両が所定距離走行し(ステップ10がYES)、且つ旋回開始条件が成立したときに(ステップ20がYES)、ステップ30〜ステップ50にてスプール弁23を旋回させる制御を実行する。因みに、エンジン回転数Neおよび噴射量Qinjが共に所定の範囲にあるときに、旋回開始条件が成立する。
そして、送油量Qscvを算出し(ステップ30)、算出した送油量Qscvが旋回開始送油量Qt以下であれば(ステップ40がNO)、スプール弁23が旋回不可能であるため、噴射圧力Pcを所定量上昇させることにより(ステップ50)、送油量Qscvを増加させる。因みに、噴射圧力Pcを上昇させることにより、インジェクタ3からのリーク燃料の量およびサプライポンプ5からのリーク燃料の量が増加するため、噴射量Qinjが同一であっても、燃料リーク量が増加した分だけ送油量Qscvが増加する。
ステップ50にて噴射圧力Pcを上昇させた後、ステップ30にて再度送油量Qscvを算出し、算出した送油量Qscvをステップ40にて旋回開始送油量Qtと比較する。そして、算出した送油量Qscvが旋回開始送油量Qtよりも大きくなるまでステップ30〜ステップ50を繰り返し実行する。
以上の制御により、エンジン始動時および高負荷運転時以外の領域で、所定の条件が成立したときにスプール弁23を確実に旋回させることができる。
なお、所定の条件が成立したときには、噴射圧力Pcが高くなって噴射率が高くなるため、エンジンノイズが増加する恐れがある。そこで、ステップ20の旋回開始条件としては、エンジンノイズの増加があまり問題にならないエンジン回転数Neおよび噴射量Qinjの範囲を設定するのが望ましい。
(他の実施形態)
上記実施形態では、ソレノイドコイル29への通電停止時に全閉、つまり出口側ポート22の流路開口面積が最小となるノーマリクローズタイプ(常閉型)の吸入調量弁6を用いたが、ソレノイドコイル29への通電停止時に全開、つまり出口側ポート22の流路開口面積が最大となるノーマリオープンタイプ(常開型)の吸入調量弁6を用いてもよい。
また、上記実施形態では、燃料の送油量を調整するために吸入調量弁6を用いる例を示したが、本発明の吸入調量弁6は、潤滑油や作動油等のオイル、水等の液体、あるいは空気、排気ガス等の気体の流量を調整する用途にも用いることができる。