本発明は、電子写真方式、あるいは静電記録方式の画像形成装置に関するものである。
複写機やレーザープリンタ等の電子写真方式の画像形成装置は、像担持体である感光ドラムの外周面(以下、表面と記す)を帯電手段により一様に帯電させ、該感光ドラム表面に選択的な露光をして静電潜像を形成する。そしてこの静電潜像を現像手段により現像剤であるトナーで顕像化し、該トナー像を転写手段により記録媒体に転写して画像記録を行う。トナー像を転写した後、感光ドラム表面は清掃部材によって清掃され、次回の画像形成に備える。
清掃部材としては、ゴムなどからなる弾性ブレード(クリーニングブレード)を感光ドラム表面に当接させ、感光ドラム表面を清掃するものが知られている。
帯電手段としては、ゴムなどからなる導電性の弾性ローラ(帯電ローラ)を感光ドラム表面に接触させ、帯電ローラに所定のバイアスを印加して感光ドラム表面に帯電を行う所謂、接触帯電方式が知られている。接触帯電方式では、帯電ローラと感光ドラム表面の接触部近傍の微小空隙間で生ずる放電によって感光ドラム表面を均一に帯電している。帯電ローラに印加する帯電バイアスとしては、直流電圧、あるいは直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を用いることが知られている。
上記の画像形成装置においては、画像形成装置の停止時(感光ドラムの回転停止時)にクリーニングブレードが当接していた感光ドラム表面の滑り性(摩擦係数μ)が変化してしまうことがある。つまり、クリーニングブレードが接触していない他の感光ドラム表面と比較して異なった状態に変化してしまう。これが原因で次回の画像形成時の画像上に画像ブレ(濃度変化など)となって現れてしまう場合があった。
前述の感光ドラム表面の滑り性の変化は、トナーやトナーに含まれる外添剤などの残渣が、クリーニングブレードの当接圧で感光ドラム表面に押し付けられて凝集化することにより発生する。一般的に、クリーニングブレードが当接していた部分の感光ドラム表面の摩擦係数は、クリーニングブレードが当接していない他の部分の摩擦係数よりも小さくなる方向に変動する。
そのため、次回の画像形成時に、感光ドラムが回転され、停止時の履歴によって摩擦係数が低下した部分が、再びクリーニングブレードとの当接部に回帰する。そのときに感光ドラムとクリーニングブレードとの間の摩擦力が変化し、一瞬、感光ドラムの回転速度が速くなる。その際、感光ドラムに作用する画像形成プロセスのうち、特に露光部、および転写部で画像ブレ(濃度変動など)が発生する。
クリーニングブレードとの当接によって摩擦係数が低下した感光ドラム表面は、感光ドラムに作用する画像形成プロセス、特に帯電、現像、転写、クリーニングの繰り返しによって、他の部分の感光ドラム表面の摩擦係数に同化していく。
画像ブレの発生レベルは、感光ドラムと、感光ドラムに作用する帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、クリーニングブレード等のプロセス手段の使用状況によって異なる。また、画像ブレはトナーが凝集しやすい高湿環境下で発生しやすい。また、クリーニングブレードの当接圧が高い場合にもトナーなどを感光ドラム表面に強く押し付けるため発生しやすくなる。また、感光ドラム停止後5〜10分程度以上経過した場合にトナーの凝集が進行して画像ブレが発生しやすくなる。これらの条件が重なって画像ブレレベルが悪くなると、感光ドラム表面を元の状態に回復させるまでに要する感光ドラムの回転数も多くなる。そこで、画像ブレがなくなるまでに5〜6回転程度必要となる場合があった。このような場合、通常の前回転工程(像形成前動作を実行させるために感光ドラムを所定時間回転させる工程)だけでは回復せず、画像上に複数本の画像ブレが感光ドラムの回転周期で発生してしまう。
このような現象を根本的に解決するためには、感光ドラムが停止している間にクリーニングブレードを離間させることが有効である。この場合、クリーニングブレードの当接・離間機構が複雑になる。またコストも増大するなどの課題がある。
また、感光ドラムの停止状態が一定時間を超えないよう、一定時間間隔で感光ドラムを微動させ、クリーニングブレードとの当接位置を移動させる方法がある。この場合、感光ドラムを定期的に微動させる制御が必要となる。そのために制御装置に常時電力を供給する必要があり、また電源の供給を絶たれた場合には効果がなくなってしまうという課題がある。
また、感光ドラムが停止している間に感光ドラムを逆回転させる方法が知られている(特許文献1)。感光ドラムを逆回転させることで、クリーニングブレードとの当接部に溜まったトナーを非当接部に移動させる。これにより、クリーニングブレードの押圧によるトナーの凝集を防止しようとするものである。しかしながら、この方法を用いた場合であっても、高湿環境下に長時間放置された場合など、トナーの自重で凝集が進行する。そして、当該部分で感光ドラム表面の摩擦係数が低下してしまい、画像ブレが発生する可能性があった。
特開平08−063071号公報
そこで本発明の目的は、像担持体に当接して像担持体表面を清掃する清掃部材を備える装置において、像担持体の停止時に清掃部材が当接していた像担持体の部分に起因する画像不良を抑えることのできる画像形成装置を提供することにある。
本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、回転可能な像担持体と、前記像担持体表面と当接し、回転中の前記像担持体表面を清掃する清掃部材と、振動電圧を印加され、回転中の前記像担持体表面に接触して帯電する帯電ローラと、を有し、前記帯電ローラで帯電した前記像担持体表面に現像剤像を形成し、前記現像剤像を記録媒体に転写させた後に前記像担持体表面を前記清掃部材により清掃する前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、前記像担持体を停止状態から回転状態にさせる前回転モードと、前記前回転モードの後であって、現像剤像が形成される前記像担持体表面を帯電し像形成を行う像形成モードとを有し、前記前回転モードの場合において、少なくとも前記像担持体が停止している間に前記清掃部材と接触していた前記像担持体表面の領域が前記帯電ローラの帯電領域を通過する際には、前記帯電ローラに印加される振動電圧の前記像担持体表面の単位移動長さ当たりの振動回数が、前記像形成モードの場合において前記帯電ローラに印加される振動電圧の前記像担持体表面の単位移動長さ当たりの振動回数よりも大きくなるように、前記前回転モードの場合は、前記像形成モードの場合よりも、前記振動電圧の周波数を大きくする振動電圧の周波数の変更手段を備えることを特徴とする。
本発明に係る画像形成装置によれば、像担持体に当接して像担持体表面を清掃する清掃部材を備える装置において、像担持体の停止時に清掃部材が当接していた像担持体の部分に起因する画像不良を抑えることができる。
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。
(第1の実施例)
(1)画像形成装置全体の概略構成
図1は本発明に係る画像形成装置の一例の概略構成図である。本実施例の画像形成装置は、転写式電子写真プロセスを利用した、接触帯電方式、プロセスカートリッジ着脱方式のレーザービームプリンタである。
1は像担持体(静電潜像担持体)としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)であり、矢示の時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転する。
2は帯電部材としての帯電ローラである。帯電ローラ2は感光ドラム1の表面を所定の極性・電位に接触方式で均一に帯電処理する。帯電ローラ2による接触帯電処理については追って説明する。
3はレーザースキャナユニット(以下、スキャナユニットと記す)である。スキャナユニット3は、レーザー、ポリゴンミラー、レンズ系などを有している。ユニット3は、不図示のホストコンピュータ等から該プリンタに入力されるデジタル画像信号に応じて変調されたレーザー光Laを出力し、感光ドラム1の均一帯電処理面を走査露光する。4はスキャナユニットからのレーザー光Laを感光ドラム表面に折り返すミラーである。このレーザー光Laによる走査露光により、感光ドラム表面に画像情報に応じた潜像(静電潜像)が形成される。
5は現像装置である。この現像装置5により感光ドラム1の表面に形成された潜像がトナー像として反転現像または正規現像されて可視化される。現像装置5は、現像スリーブ6と、現像剤としてのトナーTを収容するトナーユニット(トナー容器)7と、現像スリーブ6にトナーTを塗布するトナー塗布ブレード8と、不図示のトナー攪拌棒と、を有する。トナーユニット7内のトナーTはトナー攪拌棒の回動で攪拌されて帯電する。そして、その帯電トナーが矢示の反時計方向に回転駆動される現像スリーブ6の外周面にブレード8によりトナー薄層としてコートされ、感光ドラム1との対向部である現像部に搬送される。そして現像部において現像スリーブ6に印加された現像バイアスの作用で現像スリーブ側から感光ドラム1側にトナーTが潜像に対応して選択的に移行する。これにより潜像がトナー像として現像される。
一方、給送カセット9内に収容された記録媒体(以下、記録材と記す)Pが、給送ローラ10、及び搬送ローラ11によって感光ドラム1に潜像を形成するのと同期して感光ドラムと転写ローラからなる転写帯電器12との間の転写部に供給される。そして転写部において転写帯電器12に印加されたトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスの作用でトナー像が感光ドラム1側から記録材P上に転写される。
転写部でトナー像の転写を受けた記録材Pは感光ドラム表面から分離されて定着器13へ搬送される。そして記録材Pを定着器13の定着ローラ14と加圧ローラ15間のニップ部に導入して定着ローラと加圧ローラとで挟持搬送する。その搬送過程で記録材P上の未定着トナー像に熱と圧力を与えることにより記録材面に未定着トナー像を永久固着像として定着させる。定着器13を通過した記録材Pは画像形成物(プリント)として排出口11から機外の不図示の排出トレイに排出される。
記録材分離後の感光ドラム表面は、クリーニング装置16によって感光ドラム表面上に残留した残留トナー(転写残りトナー)を除去し、繰り返して作像に供される。クリーニング装置16において、17は清掃部材としてのクリーニングブレードである。クリーニングブレード17は、感光ドラム1表面に当接して感光ドラム面から転写残りトナー等を掻き落とす。18はクリーニングブレード17が掻き落とした廃トナーを収容する廃トナー容器である。
20はプロセスカートリッジ(以下、カートリッジと記す)である。カートリッジ20は、上記の感光ドラム1と、該感光ドラムに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置5およびクリーニング装置16などのプロセス機器を一体的にカートリッジ化したものである。プリンタ本体21はカートリッジ20を取り外し可能に装着する装着手段としてのガイド部材(不図示)を有している。カートリッジ20はこのガイド部材を介してプリンタ本体21に取り外し可能に装着される。このカートリッジ方式によれば、装置のメンテナンスをサービスマンによらずにユーザー自身で行うことができ、格段に操作性を向上させることができる。
カートリッジ20がプリンタ本体21に装着されると、カートリッジがプリンタ本体21に対して機械的・電気的に接続して、プリンタ本体側の駆動機構(駆動手段)で感光ドラム1、現像スリーブ6、トナー攪拌棒などの駆動が可能となる。また、プリンタ本体側の制御回路により帯電ローラ2への帯電バイアスの印加、現像スリーブ6への現像バイアスの印加、更にはプロセス機器の1つである転写ローラ12への転写バイアスの印加などが可能となる。これによりプリント(画像形成)動作を実行できる状態となる。
図2に感光ドラム1と帯電ローラ2の制御系のブロック図を示す。
感光ドラム1としては、直径24mmのアルミシリンダ表面に感光層を形成したものを用いている。感光ドラム1は、アルミシリンダの長手両端部に設けられたドラムフランジ1aが不図示の軸受けに回転自由に保持されている。
帯電ローラ2としては、直径6mmの芯金2a上に肉厚3mmの導電性発泡ゴムローラ部2bを有し、このローラ部2bの外周に肉厚0.5mmの導電性ゴムローラ部2cを有したものを用いている。帯電ローラ2は芯金2aの両端部が不図示の軸受けに回転自由に保持され、加圧バネ30により感光ドラム表面に導電性ゴムローラ部2cを所定の押圧力をもって圧接させてある。これにより帯電ローラ2は感光ドラム1の回転に伴い従動回転する。
清掃部材としては、支持板金17a上にゴムブレード17bを形成したクリーニングブレード17を用いている。そして感光ドラム1の回転方向(移動方向)に対してカウンター方向となるようにゴムブレード17bの自由端縁部を感光ドラム表面に当接した。感光ドラム1表面においてクリーニングブレード17との接触部(接触領域)と、帯電ローラ2との接触部との距離Lは、感光ドラム表面に沿って15mmである。
32はプリンタ本体21(図1)に設けられた本体駆動ギアである。本体駆動ギア32は感光ドラム1の一方のドラムフランジ1aと一体的に結合している。
33はプリンタ本体21に設けられた駆動手段としてのメインモーター(以下、モーターと記す)である。モーター33の出力軸33aには駆動伝達ギア34が設けられており、この駆動伝達ギアが本体駆動ギア32と噛み合っている。モーター33は、ギア34を矢示の反時計方向に回転駆動させてギア32と共に感光ドラム1を時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動させる。
35はプリンタ本体21に設けられた電源としての帯電バイアス印加用電源(以下、高圧電源と記す)である。高圧電源35は帯電ローラ2の芯金2aに不図示の接点バネを介して直流電圧、あるいは直流電圧に交流電圧を重畳した所定の振動電圧(以下、帯電バイアスと記す)を印加する。その帯電バイアスは帯電ローラ2を介して感光ドラム1表面に印加される。そして帯電ローラ2が従動回転することにより感光ドラム1表面を均一に帯電処理する。この高圧電源35は帯電バイアスの周波数を変更可能なように構成されている。図示していないが、例えば発振器によって発生された周波数を分周する分周器の分周比を切り替え可能に構成することで帯電バイアスの周波数を変更することができる。
36はプリンタ本体21に設けられた制御部である。制御部36はCPUやROMおよびRAMなどのメモリを有しており、また駆動制御部36aと、変更手段としての周波数変更制御部36bなどを有している。駆動制御部36aは、メモリに記憶されているプリント動作シーケンスに従ってモーター33の駆動、および上記の各種プロセス機器を制御する。周波数変更制御部36bは、プリント動作シーケンスに従って高圧電源35を制御して帯電バイアスの振動回数を変更する。
(2)帯電ローラ2の印加する振動電圧の振動回数を制御することの説明
次に、画像形成装置のプリント動作シーケンス制御を図3および図4を参照しながら説明する。図3はプリント動作シーケンスのフローチャート、図4はそのプリント動作のシーケンスチャートである。
装置がプリント信号を受け取るとプリント動作シーケンスに応じて画像形成が開始される(S1)。
(S2)では、プリント動作シーケンスの前回転モードが実行される。すなわち制御部36aがモーター33を起動して感光ドラム1の前回転を行う。ここで、前回転とは、プリント前動作を実行させるために感光ドラム1を停止状態から回転状態にし、所定時間回転駆動させる工程をいう。したがって前回転工程では、感光ドラム1の停止時(画像形成開始前)にクリーニングブレード17と当接していた感光ドラムの表面の接触領域P1が帯電ローラ2の帯電領域を通過することになる。ここで、帯電領域とは、帯電ローラ2と感光ドラム表面とが対向している領域を指し、帯電領域において帯電ローラ2により感光ドラムは帯電させられる。
制御部36bは高圧電源35をオンすると共に高圧電源を制御して帯電バイアスの感光ドラム表面の単位移動長さ当たりの帯電バイアスの振動回数を変更する。すなわち周波数変更制御部36bは、電源35の分周器を制御して該分周器の分周比を変更後の振動回数に応じた分周比に設定する。電源35は、帯電ローラ2へ変更された振動回数に応じた帯電バイアスの印加を開始する。
本実施例では、感光ドラム1は表面の周速度100mm/secで回転駆動させた。また、電源35が帯電ローラ2に印加する帯電バイアスは−600Vの直流電圧に周波数1140Hz、ピーク間電圧1.9kVppの正弦交流電圧を重畳させたものとした。この時、感光ドラム表面の単位移動長さ当たりの帯電バイアスの振動回数は、1140(Hz)/100(mm/sec)=11.4(回/mm)である。この状態で1.2秒間前回転を行った。
(S3)では、周波数変更制御部36bは高圧電源35の帯電バイアスの周波数を800Hzに切り替える。すなわち帯電バイアスの周波数を1140Hzから800Hzに変更する。電源35は変更された周波数に応じた帯電バイアスを帯電ローラ2に印加し、これからトナー像が形成がされる感光ドラム1の領域について帯電を行う。ここで帯電ローラに印加されるバイアスは、前回転時(前回転モード)に印加されたバイアスと区別するため、画像形成中(像形成モード)に印加される帯電バイアスと呼ぶ。この時、感光ドラム1の停止時にクリーニングブレード17と当接していた感光ドラム表面の接触領域P1が帯電領域を通過した回数は2回である。また、感光ドラム表面の単位移動長さ当たりの帯電バイアスの振動回数は、800(Hz)/100(mm/sec)=8(回/mm)である。
(S4)では、スキャナユニット等の準備を待って画像印字を開始する。すなわち、スキャナユニット3で感光ドラム表面に潜像を形成する。そして感光ドラム表面の潜像を現像装置5によりトナー像へ現像する。さらに感光ドラム表面のトナー像を転写ローラ11により記録材Sに転写する。
(S5)では、画像形成が終了する。そして所定の後回転を行う。ここで、後回転とは、記録材Sが1枚であるときの画像形成が終了した後、或いは複数の記録材Sのうち最後の記録材Sの画像形成が終了した後もしばらくの間モーター33の駆動を継続させて感光ドラム1を回転駆動させ、所定の後動作を実行させる工程をいう。
そして、後回転の終了後に引き続き感光ドラム1を回転駆動させ、感光ドラム表面に残留している残渣トナーなどをクリーニングブレード17で除去して感光ドラム表面をクリーニングする(クリーニング工程)。
(S6)では、制御部36aはモーター33を停止し、周波数変更制御部36bは電源35をオフする。これにより感光ドラム1の駆動が停止され、帯電ローラ2への帯電バイアスの印加が停止されて、一連のプリント動作シーケンスに応じた画像形成が終了する(S7)。
(3)帯電ローラ2に印加する振動電圧の振動回数を制御することの作用
帯電手段として、感光ドラム1に当接させた帯電ローラ2に振動電圧を印加し、帯電ローラ2と感光ドラム1の接触領域近傍の微小空隙間で生ずる放電によって感光ドラム表面を均一に帯電する方法については既に説明している。
ところで、本発明者は、帯電ローラ2と感光ドラム1の当接部近傍の微小空隙間で生ずる放電現象が、感光ドラム表面の摩擦係数低下の回復に大きく寄与することに着目した。すなわち、放電領域では帯電ローラ表面と感光ドラム表面との間を加速された電子が飛び交っている。この電子がクリーニングブレード17との接触領域P1の感光ドラム表面に形成されたトナーなどの残渣による凝集物に衝突すると、その凝集物の凝集が解され、次回のクリーニング時のクリーニングが容易になる。これによって感光ドラム表面の摩擦係数低下の回復が促進されるのである。
ここで、本実施例によれば、感光ドラム1の前回転中に感光ドラム表面の単位移動長さ当たりの振動電圧の振動回数を高くしている。このように振動電圧の振動回数を高くすることで、感光ドラム表面に形成されたトナーなどの残渣による凝集物に対して、電子の衝突回数、衝突密度を高めることが可能となる。これにより、感光ドラム表面の低下した摩擦係数を通常の摩擦係数に回復させることを促進させることが可能となった。
次に、感光ドラム1の前回転中に帯電ローラ2に印加する帯電バイアスの周波数、および印加時間と画像ブレ発生レベルとの関係について説明する。前述の構成に対して、感光ドラム1の前回転中に帯電ローラ2に印加する帯電バイアスの周波数を下記のように変えて実験を行なった。具体的に帯電バイアスの周波数は、800Hz(画像形成中と同じ振動回数)、1000Hz(画像形成中に対して125%の振動回数)、1140Hz(画像形成中に対して140%の振動回数)とした。また、前回転中、画像印字中ともに帯電ローラ2に印加する帯電バイアスの周波数を1140Hzとした場合の印加時間を次の通りとした。それぞれの帯電バイアスの印加時間をそれぞれ示す。0.5秒(停止時にクリーニングブレードと接触していた感光ドラム1の表面が帯電領域を1回通過する時間)、1.2秒(同2回通過する時間)、2.7秒(同4回通過する時間)、4.2秒(同6回通過する時間)である。そしてこれらの場合の画像ブレのレベルを表1にまとめた。
前回転中に帯電ローラ2に印加する帯電バイアスの振動回数を、画像形成中に対して125%以上、好ましくは140%以上にすることで、画像ブレのレベルを改善する効果が得られた。
また、帯電バイアスの印加時間を、少なくとも1回は停止時にクリーニングブレード17と当接していた感光ドラムの接触領域P1が帯電領域を通過する時間、好ましくは2回以上通過する時間にすることで、画像ブレの発生レベルを改善する効果が得られた。
なお、前回転中、画像印字中ともに帯電ローラ2に印加する帯電バイアスの周波数を1140Hzとした比較例2の場合には、画像ブレのレベルは良好である。しかし高い周波数を印加し続けたことによって、感光ドラム表面の磨耗が促進され、感光ドラム1の耐久寿命が若干短くなるが、本実施例のように前回転中の一部のみに高い周波数を印加した場合では比較例1と同様の寿命を達成することができた。
本実施例によれば、上記のように感光ドラム1の停止時に感光ドラム表面にクリーニングブレード17が当接していることに起因する画像ブレの発生を低減でき、長期にわたって高画質の画像を得ることができる。
参考例
(参考例)
本参考例においては第1の実施例と共通する部材・部分には同一符号を付して再度の説明を省略する。
本参考例の画像形成装置の特徴とするところは、感光ドラム表面の単位移動長さ当たりの振動電圧の振動回数を変更する手法として、感光ドラム1の駆動速度を変更する方法を用いたところにある。感光ドラム1の回転速度を変更する方法の場合には、第1の実施例で説明した効果に加え、感光ドラムの回転速度が遅い場合にクリーニングブレード17によるクリーニング性能が向上する効果も得ることができた。
図5に本参考例に係る画像形成装置の感光ドラム1と帯電ローラ2の制御系のブロック図を示す。
本参考例においては、駆動手段であるモーター40として回転速度を変更可能なものを用いている。制御部41は変更手段としての回転速度変更制御部41aと、高圧電源制御部41bなどを有している。電源である帯電バイアス印加用電源(高圧電源)42として振動回数を固定した振動電圧を帯電ローラ2に印加するものを用いている。制御部41aは、プリント動作シーケンスに従ってモーター40の駆動、および各種プロセス機器を制御する。高圧電源制御部41bは、プリント動作シーケンスに従って高圧電源42を制御する。上記のモーター40と、制御部41と、電源42以外の装置、部材は第1の実施例と同じものである。
次に、画像形成装置のプリント動作シーケンス制御を図6および図7を参照しながら説明する。図6はプリント動作シーケンスのフローチャート、図7はそのプリント動作のシーケンスチャートである。
図6において(S11)は実施例1の(S1)と、(S14)は実施例1の(S4)と、(S15)は実施例1の(S5)と、それぞれ同じあるため、再度の説明を省略する。
(S12)では、制御部41bは電源42をオンする。電源42は帯電ローラ2へ所定の振動回数に応じた帯電バイアスの印加を開始する。制御部41aはモーター40を起動すると共にモーターの駆動を制御して感光ドラム1の回転速度を変更する。モーター40は、出力軸40aに設けられた駆動ギア34と本体駆動ギア32を介して感光ドラム1を上記の変更された駆動速度で回転駆動する。感光ドラム1はモーター40により回転駆動されて前回転を行う。したがって第1の実施例と同様、前回転工程では、感光ドラム1の停止している間にクリーニングブレード17と接触していた感光ドラム表面の接触領域P1が帯電ローラ2の帯電領域を通過することになる。
本参考例では、感光ドラム1は表面の周速度70mm/secで回転駆動させた。また、帯電ローラ2に印加する帯電バイアスは−600Vの直流電圧に周波数800Hz、ピーク間電圧1.9kVppの正弦交流電圧を重畳させたものとした。この時、感光ドラム1表面の単位移動長さ当たりの振動電圧の振動回数は、800(Hz)/70(mm/sec)=11.4(回/mm)である。この状態で1.2秒間前回転を行った。
(S13)では、制御部41aはモーター40の駆動を制御して感光ドラム1表面の周速度を100mm/secに切り替えて駆動する。すなわち感光ドラム1表面の周速度を70mm/secから100mm/secに変更する。この時、感光ドラム1の停止時にクリーニングブレード17と当接していた感光ドラム表面の接触領域P1が帯電領域を通過した回数は2回である。また、感光ドラム表面の単位移動長さ当たりの帯電バイアスの振動回数は、800(Hz)/100(mm/sec)=8(回/mm)である。このように、(S13)ではトナー像がこれから形成される感光ドラム1の領域について帯電を行う際の、感光ドラム1の周速を変更している。ここで、トナー像がこれから形成される感光ドラム1の領域について帯電を行う際の、感光ドラム1の周速は、前回転中(前回転モード)における感光ドラムの駆動速度と区別するため、画像形成中(像形成モード)における感光ドラムの駆動速度と呼ぶ。
(S16)では、制御部41aはモーター40を停止し、制御部40bは電源42をオフする。これにより感光ドラム1の回転が停止され、帯電ローラ2への帯電バイアスの印加が停止されて、一連のプリント動作シーケンスに応じた画像形成が終了する(S17)。
ここで、感光ドラム1の駆動開始時の感光ドラム表面の周速度、および周速度を切り替えるまでの時間と画像ブレの発生レベルとの関係について説明する。上述の構成に対して、感光ドラム1の回転開始時即ち前回転中の感光ドラム表面の周速度をそれぞれ示す。70mm/sec(画像形成中に対して140%の振動回数)、80mm/sec(画像形成中に対して125%の振動回数)、100mm/sec(画像形成中と同じ)としている。そしてそれぞれの周速度で駆動する時間を「停止時にクリーニングブレードと当接していた感光ドラム表面が帯電領域を1回通過する時間」、「同2回通過する時間」、「同3回通過する時間」になるように設定した場合の画像ブレの発生レベルを表2にまとめた。
前回転中の感光ドラム表面の単位移動長さ当たりの振動電圧の振動回数を、画像印字中に対して125%以上、好ましくは140%以上にすることで、画像ブレのレベルを改善する効果が得られた。
また、前記振動回数となる感光ドラム表面の周速度での駆動時間を、少なくとも1回は停止時にクリーニングブレード17と当接していた感光ドラム表面の接触領域P1が帯電領域を通過する時間、好ましくは2回以上通過する時間にする。これにより画像ブレのレベルを改善する効果が得られた。
また、回転開始時の感光ドラム1の回転速度を遅くしたことにより、クリーニングブレード17によるクリーニング性能が向上し、第1の実施例よりも大きな改善効果を得ることができた。
なお、前回転モードの全部の時間において、帯電ローラ2に印加される周波数を大きくする、又は感光ドラム1の回転速度を遅くするといった変更動作を行う必要はない。即ち、前回転モードであっても、感光ドラム1が停止している間にクリーニングブレード17と接触していた領域が帯電領域を通過する際のみにおいて、変更動作を行ってもよい。
また、変更動作は当該領域が帯電領域を複数回(2回以上)通過することでより高い効果を得ることができるが、本発明はこれに限られるものではない。即ち、当該領域が帯電領域を通過する際に変更動作を少なくとも一回行っておくことで、変更動作をまったく行わないものよりも画像ブレ等の問題の発生を低減することができる。
また、実施例1、参考例では帯電ローラを帯電部材の例として説明したが、本発明はこれに限られるものではない。即ち、非接触のコロナ放電器を用いた場合であっても、感光ドラムの駆動速度を遅くする等の変更動作により、当該領域に多くの電子を飛ばすことができ、トナー等の残渣の凝集体の凝集を解し、クリーニング性を良くすることができる。
画像形成装置の一例の概略構成図。
第1の実施例に係る画像形成装置の感光ドラムと帯電ローラの制御系のブロック図。
第1の実施例に係るプリント動作シーケンスのフローチャート。
第1の実施例に係るプリント動作のシーケンスチャート。
参考例に係る画像形成装置の感光ドラムと帯電ローラの制御系のブロック図。
参考例に係るプリント動作シーケンスのフローチャート。
参考例に係るプリント動作のシーケンスチャート。
1 ・・・ 感光ドラム
2 ・・・ 帯電ローラ
7 ・・・ 現像装置
T ・・・ トナー
17 ・・・ クリーニングブレード
20 ・・・ プロセスカートリッジ
35 ・・・ 高圧電源
36 ・・・ 制御部
36a ・・・ 駆動制御部
36b ・・・ 周波数変更制御部
41 ・・・ 制御部
41a ・・・ 駆動速度変更制御部
41b ・・・ 高圧電源制御部
42 ・・・ 高圧電源