JP4377093B2 - 導電性高分子用ドーパント剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スルファニル酸誘導体からなる導電性高分子用ドーパント剤に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、エレクトロニクスの発展にともなって、新しいエレクトロニクス材料が開発されている。特に機能性有機材料の分野においてめざましい技術革新が進み、導電性材料に限ってみても、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリンなどの電子共役系高分子物質に、電子受容性化合物をドーパントとしてドープした導電性高分子材料が開発され、例えば、キャパシタ電極材料、電池電極材料、帯電防止材料等として既に実用化されている例もある。
【0003】
しかしながら、これら導電性高分子物質の実用性を拡大するためには、電気伝導度のさらなる向上を図るとともに、耐熱性や耐湿性といった環境安定性が大きな課題となっている。
【0004】
これらの実用化に向けた課題に対し、とりわけ環境安定性に関して、本発明者は特開2000−204074号公報において、m-スルホベンズアミド類をドーパント剤として用いたπ共役系高分子化合物が、高導電性と高耐熱性を兼ね備える材料であることを開示している。
【0005】
すなわち、m-スルホベンズアミドでドーピングしたポリピロールでは、150℃の空気中で保持した場合でも電気伝導度の低下は極めて緩やかで、100S/cm以上の高い導電性を保ち続けることを見出している。惜しむらくは、m-スルホベンズアミドでドープしたポリピロールには、高温度に加え水分が共存した場合導電性が低下するという問題点がある。従って導電性高分子材料の実用性拡大には、高温下で水分の共存する条件すなわち高湿度下での安定性向上が不可欠といえる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、π共役系高分子化合物に、高い導電性とともに、高温・高湿度環境下においても高い導電性を維持できるドーパント剤の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、下記一般式[1]で表されるスルファニル酸誘導体からなることを特徴とする導電性高分子用ドーパント剤が提供される。
【0008】
【化2】
[1]式中、Xは対陽イオンを有するスルホン酸基であり、R1〜R9は、互いに同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基、アリール基であり、またR1〜R9の任意の2つ以上で芳香族炭化水素または脂環式炭化水素を形成してもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の導電性高分子用ドーパント剤に用いられるスルファニル酸誘導体は、下記一般式[1]で表される。
【0010】
【化3】
[1]式中、Xは対陽イオンを有するスルホン酸基であり、R1〜R9は、互いに同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基、アリール基であり、またR1〜R9の任意の2つ以上で芳香族炭化水素または脂環式炭化水素を形成してもよい。
【0011】
本発明においては、前記一般式[1]のスルホン酸基の対陽イオンが、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンおよび周期律表第VIII族の遷移金属イオンからなる群より選ばれるイオンであることが好ましい。さらには、前記一般式[1]のスルホン酸基の対陽イオンが、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよび鉄(III)イオンからなる群より選ばれるイオンであることが好ましい。
【0012】
前記一般式[1]で表わされる化合物の具体的例としては、4-ベンゾイルアミノベンゼンスルホン酸、4-ベンゾイルアミノ-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-ベンゾイルアミノ-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-ベンゾイルアミノ-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-ベンゾイルアミノ-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-ベンゾイルアミノ-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-メチルベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-メチルベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-メチルベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-メチルベンゾイルイアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(4-メチルベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(4-メチルベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(2-メチルベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(2-メチルベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2-メチルベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2-メチルベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(2-メチルベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(2-メチルベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-エチルベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-エチルベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-エチルベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-エチルベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(4-エチルベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(4-エチルベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-n-ブチルベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-n-ブチルベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-n-ブチルベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-n-ブチルベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(4-n-ブチルベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(4-n-ブチルベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-tert-ブチルベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-tert-ブチルベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-tert-ブチルベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-tert-ブチルベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(4-tert-ブチルベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(4-tert-ブチルベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-n-オクチルベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-n-オクチルベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-n-オクチルベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-n-オクチルベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(4-n-オクチルベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(4-n-オクチルベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(2,6-ジメチルベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(2,6-ジメチルベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2,6-ジメチルベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2,6-ジメチルベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(2,6-ジメチルベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(2,6-ジメチルベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(2,4,6-トリイソプロピルベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(2,4,6-トリイソプロピルベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2,4,6-トリイソプロピルベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2,4,6-トリイソプロピルベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(2,4,6-トリイソプロピルベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(2,4,6-トリイソプロピルベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-[(ビフェニル-4-カルボニル)-アミノ]-ベンゼンスルホン酸、4-[(ビフェニル-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-[(ビフェニル-4-カルボニル)-アミノ]-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-[(ビフェニル-4-カルボニル)-アミノ]-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-[(ビフェニル-4-カルボニル)-アミノ]-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-[(ビフェニル-4-カルボニル)-アミノ]-1-ナフタレンスルホン酸、4-[(ナフタレン-1-カルボニル)-アミノ]-ベンゼンスルホン酸、4-[(ナフタレン-1-カルボニル)-アミノ]-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-[(ナフタレン-1-カルボニル)-アミノ]-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-[(ナフタレン-1-カルボニル)-アミノ]-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-[(ナフタレン-1-カルボニル)-アミノ]-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-[(ナフタレン-1-カルボニル)-アミノ]-1-ナフタレンスルホン酸、4-[(ナフタレン-2-カルボニル)-アミノ]-ベンゼンスルホン酸、4-[(ナフタレン-2-カルボニル)-アミノ]-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-[(ナフタレン-2-カルボニル)-アミノ]-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-[(ナフタレン-2-カルボニル)-アミノ]-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-[(ナフタレン-2-カルボニル)-アミノ]-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-[(ナフタレン-2-カルボニル)-アミノ]-1-ナフタレンスルホン酸、4-[(アントラセン-9-カルボニル)-アミノ]-ベンゼンスルホン酸、4-[アントラセン-9-カルボニル)-アミノ]-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-[(アントラセン-9-カルボニル)-アミノ]-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-[(アントラセン-9-カルボニル)-アミノ]-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-[(アントラセン-9-カルボニル)-アミノ]-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-[(アントラセン-9-カルボニル)-アミノ]-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-メトキシベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-メトキシベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-メトキシベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-メトキシベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(4-メトキシベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(4-メトキシベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(2-メトキシベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(2-メトキシベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2-メトキシベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2-メトキシベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(2-メトキシベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(2-メトキシベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-エトキシベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-エトキシベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-エトキシベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-エトキシベンゾイルイアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(4-エトキシベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(4-エトキシベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-ブトキシベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-ブトキシベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-ブトキシベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-ブトキシベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(4-ブトキシベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(4-ブトキシベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-イソプロポキシベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-イソプロポキシベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-イソプロポキシベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-イソプロポキシベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(4-イソプロポキシベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(4-イソプロポキシベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(3,5-ジメトキシベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(3,5-ジメトキシベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(3,5-ジメトキシベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(3,5-ジメトキシベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(3,5-ジメトキシベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(3,5-ジメトキシベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(2,6-ジメトキシベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(2,6-ジメトキシベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2,6-ジメトキシベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2,6-ジメトキシベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(2,6-ジメトキシベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(2,6-ジメトキシベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(2,4,6-トリメトキシベンゾイルアミノ)-ベンゼンスルホン酸、4-(2,4,6-トリメトキシベンゾイルアミノ)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2,4,6-トリメトキシベンゾイルアミノ)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(2,4,6-トリメトキシベンゾイルアミノ)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(2,4,6-トリメトキシベンゾイルアミノ)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(2,4,6-トリメトキシベンゾイルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸、4-[(ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボニル)-アミノ]-ベンゼンスルホン酸、4-[(ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボニル)-アミノ]-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-[(ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボニル)-アミノ]-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-[(ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボニル)-アミノ]-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-[(ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボニル)-アミノ]-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-[(ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボニル)-アミノ]-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-トリフルオロメチルベンゾイル)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-トリフルオロメチルベンゾイル)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-トリフルオロメチルベンゾイル)-2-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-トリフルオロメチルベンゾイル)-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-(4-トリフルオロメチルベンゾイル)-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-(4-トリフルオロメチルベンゾイル)-1-ナフタレンスルホン酸、4-(4-クロロベンゾイル)-ベンゼンスルホン酸、4-(4-クロロベンゾイル)-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-(4-クロロベンゾイル)-2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【0013】
これらの中では、4-ベンゾイルアミノベンゼンスルホン酸が好ましい。
【0014】
一般式[1]で表わされるスルファニル酸誘導体は、スルファニル酸類と安息香酸類とを脱水縮合する方法、スルファニル酸類と安息香酸塩化物類とを脱塩化水素縮合する方法、ベンズアミド類を適当なスルホン化剤と接触させスルホン化する方法などにより製造することができる。
【0015】
前記の脱塩化水素反応を用いた合成反応において、反応条件は特に限定されない。例えば、原料を構成するスルファニル酸類と、安息香酸塩化物類との反応比率は、通常1:1〜1:5(モル比)の範囲で行われる。また、反応溶媒を使用する場合には、原料であるスルファニル酸類と、安息香酸塩化物を溶解し、かつ溶媒自体がアミド化されないものであればよく、例えばジエチルエーテル、四塩化炭素、ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ピリジン、トリエチルアミン、ジブチルエーテル等を挙げることができる。
【0016】
反応に際しては、反応により生成する塩化水素の捕捉剤として3級アミン類を共存させることが好ましく、安息香酸塩化物1モルに対して1〜10モルの範囲で添加する。3級アミン類としては、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンを例示することができる。
【0017】
反応温度は適当な反応速度を示し、急激な発熱による副反応の進行が避けられ、かつ原料であるスルファニル酸類と、安息香酸塩化物類および生成物が分解しない温度であれば、特に限定されず、通常0〜150℃で行われる。このような、反応条件を採用することによって、高い収率で、スルファニル酸誘導体を合成することができる。得られたスルファニル酸誘導体は、核磁気共鳴スペクトル、質量分析スペクトルにより構造を同定することができる。
【0018】
本発明に係わるスルファニル酸誘導体は、電子共役系高分子物質にドーピングするドーパント剤として有用であり、長期間に亘って導電性を発現する導電性高分子材料を与える。電子共役系高分子物質としては、電子共役系の分子構造を有する高分子化合物であればいずれをも使用することができ、具体的には例えば、下記一般式[2]で表されるピロール系、一般式[3]で表されるチオフェン系、一般式[4]で表されるアニリン系のうち少なくとも1つを繰り返し単位として構成された共役系高分子を挙げることができる。
【0019】
【化4】
上式中、R10およびR11は互いに同一でも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1〜20の直鎖状、環状、分岐状のアルキル基またはアルコキシ基である。また、*は繰り返し単位の結合位置を示す([3]式、[4]式も同様)。
【0020】
【化5】
上式中、R12およびR13は互いに同一でも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1〜20の直鎖状、環状、分岐状のアルキル基またはアルコキシ基である。
【0021】
【化6】
上式中、R14〜R17は互いに同一でも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1〜20の直鎖状、環状、分岐状のアルキル基またはアルコキシ基である。
【0022】
電子共役系高分子物質としては、上記一般式[2]、[3]、[4]のいずれか1つを繰り返し単位として構成される共役高分子が好ましく、特に、一般式[2]を繰り返し単位として構成されるポリピロール系の共役高分子が好ましい。
【0023】
電子共役系高分子物質に、本発明のスルファニル酸誘導体をドーピングする方法としては、該化合物の溶液に浸漬する方法、該化合物を支持電解質として電解酸化重合する方法、該化合物の遷移金属塩を用いて化学酸化重合する方法等の一般的に用いられる方法が使用できる。
【0024】
浸漬法によるドーピングにおいて、スルファニル酸誘導体を溶解する際の溶媒としては、溶解力のある溶媒であればいずれをも使用することができ、例えば、水、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル等を使用することができる。
【0025】
電解酸化重合法においては、支持電解質としてスルファニル酸誘導体と、前記高分子物質の繰り返し単位を構成し得る単量体とからなる溶液に、所定の電流あるいは電位を印加することによりドーピングされる。繰り返し単位を構成し得る単量体としては、例えば、ピロール、チオフェン、アニリン、trans-1,2-ジ(2-チエニル)エチレン、trans-1,2-ジ(2−チエニル)ブタジエン、3,4-エチレンジオキシチオフェン等が挙げられる。
【0026】
電解酸化重合反応に使用される溶媒としては、スルファニル酸誘導体を溶解し、かつ繰り返し単位を構成し得る単量体を溶解するものであればよく、例えば、水、ジメチルフォルムアミド、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレングリコール、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル等が挙げられる。電解酸化重合は、通常、−100〜150℃の温度範囲、好ましくは0〜50℃の温度範囲で行うことができ、定電流電解法、定電位電解法のいずれの方法であってもよい。また、電解酸化重合は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
【0027】
化学酸化重合法でのドーピングでは、スルファニル酸誘導体の共役塩基を配位子とする遷移金属錯体と、電子共役系の分子構造を有する高分子化合物を形成する繰り返し単位となる単量体とを溶媒中で接触させることで、重合とともにドーピングが行われる。遷移金属錯体を構成する中心金属としては、例えば鉄、コバルト、ルテニウム等を挙げることができ、これらの中でも特に鉄が好ましい。遷移金属錯体は、通常単量体1モルに対して1〜100モルの量で使用される。
【0028】
繰り返し単位を構成し得る単量体としては、前記と同様、ピロール、チオフェン、アニリン、trans-1,2-ジ(2-チエニル)エチレン、trans-1,2-ジ(2-チエニル)ブタジエン、3,4-エチレンジオキシチオフェン等を使用することができる。反応で使用される溶媒は、上記遷移金属錯体ならびに単量体を溶解するものであればよく、例えば、水、ジメチルフォルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレングリコール等を挙げることができる。重合温度は0〜50℃が好ましく、反応時間は1〜48時間が好ましい。また、重合は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが望ましい。
【0029】
この様にして得られる本発明のスルファニル酸誘導体をドーピングした電子共役系高分子物質は、高い導電性と共に、高温・高湿度環境下においても高い導電性を維持できるので、固体コンデンサー、帯電防止フィルム、電磁波シールド材、導電性接着剤、導電性塗料、配線材料、二次電池用電極材料、表示材料、過電流保護素子、半導体素子等に好適に用いることができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
200mlの4つ口フラスコにスルファニル酸17.3gとピリジン150mlを加え混合した。この混合物を攪拌しながら、滴下ロートから塩化ベンゾイル17.6gをゆっくりと滴下した。その後、シリコンオイルバスで内温を70℃にまで加温し、反応液が均一になってから、さらに2時間攪拌を行った。その後、反応液を室温まで冷却したところ、白色固体が析出した。この固形成分を桐山ロート(ろ紙 No.5B)でろ別した。得られたろ滓を室温で12時間真空乾燥した結果、33.5gの固形成分が得られた。
【0032】
この固形成分全量を500mlのビーカーに入れ、ここに濃硫酸100mlを加えて、攪拌、溶解した後、濃硫酸溶液を氷で冷却しながら100gの氷を加えて酸析した。析出した白色固体成分をグラスフィルター(G3)でろ別した後、ろ滓をアセトン100mlで洗浄し、室温で12時間真空乾燥した。その結果、11.0gの4-ベンゾイルアミノベンゼンスルホン酸が得られた。
【0033】
得られた化合物の同定をFD−マススペクトル(m/z=277)および1H-NMRで行った結果、目的物が得られたことが確認できた。
7.44(2H,t)
7.51(1H,d)
7.91(4H,m)
7.95(2H,d)
【0034】
(実施例2)
実施例1と同様に合成した4-ベンゾイルアミノベンゼンスルホン酸27.7gを500mlのビーカー中で純水200mlに溶解した。ここに、炭酸ナトリウムを加え、水溶液のpHを7に調整した。エバポレーターで水を減圧留去した後、2日間真空乾燥し、4-ベンゾイルアミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩25.1gを得た。
【0035】
(実施例3)
200mlビーカーに硝酸鉄(III)9水和物61gを入れ、純水100mlに溶解した。これに、15%アンモニア水を加え、水溶液のpHを12とした。この時、水酸化鉄(III)が生成し褐色固体が得られた。この褐色固体を桐山ロート(No.5B)でろ過し、水洗を3回繰り返した後、1晩真空下で乾燥した。
【0036】
実施例1と同様に合成した4-ベンゾイルアミノベンゼンスルホン酸27.7gを純水500mlに溶解した水溶液を調整し、これに得られた水酸化鉄全量を加えて6時間攪拌した。水溶液中の不溶物をろ別した後、ろ液をエバポレーションし溶媒を留去した。さらに真空下で1晩乾燥し、トリス−(4-ベンゾイルアミノベンゼンスルホニル)鉄(III)塩12.4gを得た。
【0037】
(実施例4)
実施例1で得られた4-ベンゾイルアミノベンゼンスルホン酸5.54gとピロール1.34gを純水200mlに溶解し電解酸化重合反応用溶液を調製した。この溶液に窒素ガスを約15分間バブリングし窒素置換した後、4cm四方のステレンス(sus304)板2枚を1cm間隔で浸漬し作用極および対極とした。
【0038】
浸漬した2枚のステレンス電極を用い定電流(1.25mA/cm2)で40分間通電し、電解酸化重合を行った。電極上に生成したポリピロールフィルムを純水、アセトンで洗浄した後、電極から剥離し、真空中で12時間乾燥した。得られたフィルムの電気伝導度を四探針法で測定した結果、75S/cmであった。
【0039】
生成したポリピロールフィルムを空気中、150℃の高温下で8時間保持した後、電気伝導度を四探針法で測定した結果、67S/cmであった。
【0040】
一方、重合で得られたポリピロールフィルムを90℃の純水中に8時間浸漬した。次いでポリピロールフィルムを純水中より取り出し、真空乾燥した後に電気伝導度を四探針法で測定した結果、154S/cmであった。
【0041】
(実施例5)
実施例2で得られた4-ベンゾイルアミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩5.98gとピロール1.34gを純水200mlに溶解し電解酸化重合反応用溶液を調製した。この溶液に窒素ガスを約15分間バブリングし窒素置換した後、4cm四方のステレンス(sus304)板2枚を1cm間隔で浸漬し作用極および対極とした。
【0042】
浸漬した2枚のステレンス電極を用い定電流(1.25mA/cm2)で40分間通電し、電解酸化重合を行った。電極上に生成したポリピロールフィルムは純水、アセトンで洗浄した後、電極から剥離し、真空中で12時間乾燥した。得られたフィルムの電気伝導度を四探針法で測定した結果、87S/cmであった。
【0043】
生成したポリピロールフィルムを空気中、150℃の高温下で7.5時間保持した後、電気伝導度を四探針法で測定した結果、80S/cmであった。
【0044】
一方、重合で得られたポリピロールフィルムを90℃の純水中に浸漬し、7.5時間保持した。次いでポリピロールフィルムを純水中より取り出し、真空乾燥した後に電気伝導度を四探針法で測定した結果、115S/cmであった。
【0045】
(実施例6)
実施例3で得られたトリス−(4-ベンゾイルアミノベンゼンスルホニル)鉄(III)塩1.4gを100mlガラス容器中で純水50mlに溶解した。この水溶液にピロール0.13gを加え攪拌を開始した。ピロールを加えてから数秒後に黒色固体が析出しはじめた。攪拌をさらに1晩継続した後、黒色固体を桐山ロート(No.5A)でろ別した。得られた固体をアセトン10mlで洗浄した後、真空下で1晩乾燥し、重合体41mgを得た。
【0046】
得られたポリピロール重合体10mgを、赤外スペクトルサンプル成型用の錠剤成型器に仕込み、200kg/cmの荷重で5分間処理したところ、直径1cm、厚さ180μmの円盤状の板を得ることができた。得られた円盤状の板の電気伝導度を四探針法で測定した結果、43S/cmであった。
【0047】
円盤状のポリピロール板を空気中、150℃の高温下で7.5時間保持した後、電気伝導度を四探針法で測定した結果、18S/cmであった。
【0048】
一方、円盤状のポリピロール板を90℃の純水中に浸漬し、7.5時間保持した。次いで円盤状のポリピロール板を純水中より取り出し、真空乾燥した後に電気伝導度を四探針法で測定した結果、61S/cmであった。
【0049】
【発明の効果】
本発明に係わるスルファニル酸誘導体を導電性高分子物質にドーピングして得られた導電性高分子材料は、高い電気伝導度、耐熱性、耐熱水性を兼ね備えた材料となる。それにより、導電性高分子材料は、キャパシタ電極材料、電池電極材料等として利用することができる。
Claims (4)
- 前記一般式[1]において、スルホン酸基の対陽イオンが、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンおよび周期律表第VIII族の遷移金属イオンからなる群より選ばれるイオンであることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子用ドーパント剤。
- 前記一般式[1]において、スルホン酸基の対陽イオンが、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、鉄(III)イオンからなる群より選ばれるイオンであることを特徴とする請求項2に記載の導電性高分子用ドーパント剤。
- 前記一般式[1]において、R1〜R10が水素原子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性高分子用ドーパント剤。
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