(第1の実施形態)
図1(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態における窒化物半導体を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、図1(a)に示す工程で、主面が(0001)面であるサファイア基板1(ウエハ)の上に、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約3μmのp型InGaAlN層2を形成する。ここでは、例えば500℃程度の低温で50nm程度と薄いアモルファスAlNバッファ層あるいはGaN層を形成した後に、p型InGaAlN層2を形成してもよい。また、図示しないが、p型InGaAlN層2は、p型GaN層あるいはp型AlGaNクラッド層を含んでいる。本実施形態においては、例えば、下方から順に、p型GaN層,p型(Al0.1 Ga0.9 )Nクラッド層及びp型(Al0.1 Ga0.9 )0.9 Iny0.1 N層を積層して形成されている。
続いて、p型InGaAlN層2の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるアンドープのInGaAlN活性層3を形成する。InGaAlN活性層3は、例えばInGaN量子井戸構造を含んでおり、発光ダイオードや半導体レーザの場合には、電流の注入に応じて青色あるいは青紫色の光を発光する領域である。さらに続いて、InGaAlN活性層3の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約0.5μmのn型InGaAlN層4を形成する。n型InGaAlN層4は、n型AlGaNクラッド層あるいはn型GaN層を含んでいる。以上により、p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4からなる積層部10を形成する。
上記工程において、n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。また、MOCVDによるエピタキシャル成長を行なう際には、キャリアガスとして水素ガスを用いている。as-grownの状態では、p型InGaAlN層2中においてMgが水素原子と結合しており、p型InGaAlN層2中のp型不純物が活性化されていないので、p型InGaAlN層2は高い電気抵抗を有している。
次に、図1(b)に示す工程で、窒素雰囲気下で、サファイア基板1の裏面からKrFエキシマレーザ(波長248nm)のビーム(光束)を照射する。
図2は、照射するKrFエキシマレーザの出力の時間的変化を示す図である。同図に示すように、第1段階では、例えばパルスエネルギーが50mJで、パルス幅が5msのレーザ、つまり、比較的低出力でパルス幅の大きいレーザを照射する。これにより、p型InGaAlN層2はレーザを吸収して加熱され、同層内の水素が膜中から脱離するので、p型InGaAlN層2の低抵抗化を行なう。
続いて、第2段階で、レーザのパルスエネルギーを200mJに増大させるとともに、パルス幅を10nsに縮小する。この第2段階におけるレーザの照射によって、p型InGaAlN層2のうちサファイア基板1との界面領域で膜の分解が生じる。
なお、レーザを第1,第2段階という明確に区別しうる2種類のパルスで照射するのではなく、例えばパルス幅(時間)が少しずつ増大するパルスを用いてもよい。
この工程において、レーザビーム(光束)はウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1と積層部10中の各層2,3,4との熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
そして、図1(c)に示す工程で、積層部10(p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4)からサファイア基板1を分離させる(基板分離)。その後、積層部10中のp型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4を利用した発光ダイオードや半導体レーザを形成するが、その工程では周知慣用の技術を用いることができる。
従って、本実施形態では、サファイア基板1の裏面から照射したレーザによってp型InGaAlN層2の低抵抗化を図ることができる。このとき、照射するレーザのエネルギーとパルス幅との調整によって、積層部10中の各層が高温に加熱されるのを回避することができる。したがって、積層部10中のドーパントの拡散を抑制して、ドーパントプロファイルの急峻性を維持することができる。よって、特性の良好なデバイス(発光特性の良好な発光ダイオードや半導体レーザなど)を実現することが可能となる。
また、図1(b)に示す工程の第2段階において、照射する半導体レーザのパワーエネルギーやパルス幅を変化させることにより、サファイア基板1とp型InGaAlN層2との界面でサファイア基板1を分離することができるので、低抵抗化と基板分離とを同時に行なうことが可能となる。
また、積層部10のp型InGaAlN層2とn型InGaAlN層4との双方に電極を形成することができる。絶縁性基板上に、p型InGaAlN層2,InGaAlN層3及びn型InGaAlN層4を搭載した場合には、p型InGaAlN層2又はn型InGaAlN層4のうち下方に位置するInGaAlN層にコンタクトする電極を形成するに際し、その上方に位置するInGaAlN層及びInGaAlN活性層をエッチングする必要がある。それに対し、本実施形態では、このようなエッチングプロセスを必要としないので、チップサイズの縮小と製造コストの低減とを図ることができる。
ただし、図1(c)に示す工程の後に、p型InGaAlN層2,InGaAlN層3及びn型InGaAlN層4からなる積層部10を、Si基板等の上に搭載してもよい。その場合には、基板の材料としてサファイア基板よりも熱伝導率の高いものを選択することにより、放熱性の向上を図ることができる。放熱性の向上により、例えば発光ダイオードや半導体レーザでは、高パワー動作を実現することが可能となる。
なお、従来では、サファイア基板上にInGaAlN層(GaN層)を形成する場合、アンドープでもn型になりやすいこと、p型層を上面側に形成しないと不純物の活性化が困難と考えられていたことなどから、積層部の最下部はn型層であった。しかし、本発明では、レーザ光の照射によってp型層中のp型不純物を活性化できるので、p型層が積層部の最下部にあってもよいし最上部にあってもよい。よって、積層膜中の各層の導電型を容易に選択することができる。
(第2の実施形態)
図3(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態における窒化物半導体を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、図3(a)に示す工程で、主面が(0001)面であるサファイア基板1(ウエハ)の上に、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約2μmのp型InGaAlN層2を形成する。ここでは、例えば500℃程度の低温で50nm程度と薄いアモルファスAlNバッファ層を形成した後に、p型InGaAlN層2を形成してもよい。また、図示しないが、p型InGaAlN層2は、p型GaN層あるいはp型AlGaNクラッド層を含んでいる。続いて、p型InGaAlN層2の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるアンドープのInGaAlN活性層3を形成する。InGaAlN活性層3は、例えばInGaN量子井戸構造を含んでおり、発光ダイオードや半導体レーザの場合には、電流の注入に応じて青色あるいは青紫色の光を発光する領域である。さらに続いて、InGaAlN活性層3の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約0.5μmのn型InGaAlN層4を形成する。n型InGaAlN層4は、n型AlGaNクラッド層あるいはn型GaN層を含んでいる。以上により、p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4からなる積層部10を形成する。
上記工程において、n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。また、MOCVDによるエピタキシャル成長を行なう際には、キャリアガスとして水素ガスを用いている。as-grownの状態では、p型InGaAlN層2中においてMgが水素原子と結合しており(活性化されていない)、その結果、p型InGaAlN層2は高い電気抵抗を有している。
次に、図3(b)に示す工程で、周知の貼り合わせ技術を用いて、n型InGaAlN層4を主面がほぼ(001)面であるSi基板5(転写用基板)に接着する。
このとき、半導体レーザを作成する場合には、へき開が容易になるように、InGaAlN層の< 1 1-2 0>方向と、Si基板の<110>方向とが平行になるように、InGaAlN層とSi基板とを互いに接着する。
次に、図3(c)に示す工程で、窒素雰囲気下で、サファイア基板1の裏面からKrFエキシマレーザ(波長248nm)のビーム(光束)を照射する。このとき、例えば第1の実施形態における図2に示すような第1,第2段階に変化させたレーザを照射することにより、第1段階でp型InGaAlN層2中の水素を脱離させてその低抵抗化を行ない、第2段階で、サファイア基板1をInGaAlN層,3,4から分離する。
なお、レーザを第1,第2段階という明確に区別しうる2種類のパルスで照射するのではなく、例えばパルス幅(時間)が少しずつ増大するパルスを用いてもよい。
この工程において、レーザビーム(光束)は、ウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1及び積層部10中の各層の熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
なお、ここで用いるKrFエキシマレーザの光密度は、600mJ/cm2 以上が望ましい。
そして、図3(d)に示す工程で、積層部10(p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4)及びSi基板5からサファイア基板1を分離させる(基板分離)。
なお、第2段階におけるレーザ光の照射によって、サファイア基板1の分離が終了した後に、Si基板5の接着を行なっても良い。
その後、積層部10中のp型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4を利用した発光ダイオードや半導体レーザを形成するが、その工程では周知慣用の技術を用いることができる。
従って、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、サファイア基板1の裏面から照射したレーザによってp型InGaAlN層2の低抵抗化を図ることができる。このとき、照射するレーザのエネルギーとパルス幅との調整によって、積層部10中の各層が高温に加熱されるのを回避することができる。したがって、積層部10中のドーパントの拡散を抑制して、ドーパントプロファイルの急峻性を維持することができる。よって、特性の良好なデバイス(発光特性の良好な発光ダイオードや半導体レーザなど)を実現することが可能となる。
また、図3(c)に示す工程の第2段階において、照射する半導体レーザのパワーエネルギーやパルス幅を変化させることにより、サファイア基板1とp型InGaAlN層2との界面でサファイア基板1を分離することができるので、低抵抗化と基板分離とを同時に行なうことが可能となる。
また、p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4からなる積層部10をSi基板5の上に搭載しているので、後に、この構造を利用して半導体レーザを作成する場合には、積層部10中の各層(特にInGaAlN活性層3)とSi基板5とのへき開面がほぼ一致するように両者の結晶方位関係を調整することにより、平坦性のよいへき開面が得られる。その結果、半導体レーザの良好な共振器が得られる。また、Si基板5の熱伝導率がサファイア基板1よりも高いことを利用して、低しきい値電流あるいは高パワー動作といった高性能半導体レーザを実現できる。
(第3の実施形態)
図4(a)〜(c)は、本発明の第3の実施形態における窒化物半導体を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、図4(a)に示す工程で、主面が(0001)面であるサファイア基板1(ウエハ)の上に、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約3μmのn型InGaAlN層4を形成する。ここでは、例えば500℃程度の低温で50nm程度と薄いアモルファスAlNバッファ層を形成した後に、n型InGaAlN層4を形成してもよい。また、図示しないが、n型InGaAlN層4は、n型GaN層あるいはn型AlGaNクラッド層を含んでいる。続いて、n型InGaAlN層4の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるアンドープのInGaAlN活性層3を形成する。InGaAlN活性層3は、例えばInGaN量子井戸構造を含んでおり、発光ダイオードや半導体レーザの場合には、電流の注入に応じて青色あるいは青紫色の光を発光する領域である。さらに続いて、InGaAlN活性層3の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約0.5μmのp型InGaAlN層2を形成する。p型InGaAlN層2は、p型AlGaNクラッド層あるいはp型GaN層を含んでいる。以上により、p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4からなる積層部10を形成する。
さらに、p型InGaAlN層2の上に、CVD法により、酸化シリコンからなる厚み約100nmの酸化膜キャップ層6を形成する。
上記工程では、n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。また、MOCVDによるエピタキシャル成長を行なう際には、キャリアガスとして水素ガスを用いている。as-grownの状態では、p型InGaAlN層2中においてMgが水素原子と結合しており(活性化されていない)、その結果、p型InGaAlN層2は高い電気抵抗を有している。
次に、図4(b)に示す工程で、窒素雰囲気下で、酸化膜キャップ層6の上方からKrFエキシマレーザ(波長248nm)のビーム(光束)を照射する。なお、サファイア基板1の裏面からKrFエキシマレーザ(波長248nm)のレーザを照射してもよい。
ここで、レーザの出力パワーはInGaAlN層2,3,4が分解しない程度とし、第1の実施形態における図2に示す第1段階の照射のみを行なう。つまり、比較的低出力でパルス幅の大きいレーザを照射する。これにより、p型InGaAlN層2はレーザを吸収して加熱され、同層内の水素が膜中から脱離するので、p型InGaAlN層2が低抵抗化される。
この工程において、レーザビーム(光束)は、ウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1,積層部中の各層及び酸化膜キャップ層6の熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
次に、図4(c)に示す工程で、酸化膜キャップ層6を例えばフッ酸にて除去する。その後、積層部10中のp型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4を利用した発光ダイオードや半導体レーザを形成するが、その工程では周知慣用の技術を用いることができる。
従って、本実施形態では、酸化膜キャップ層6を通して照射したレーザによってp型InGaAlN層2の低抵抗化を図ることができる。このとき、照射するレーザのエネルギーとパルス幅との調整によって、積層部10中の各層が高温に加熱されるのを回避することができる。したがって、積層部10中のドーパントの拡散を抑制して、ドーパントプロファイルの急峻性を維持することができる。よって、特性の良好なデバイス(発光特性の良好な発光ダイオードや半導体レーザなど)を実現することが可能となる。
加えて、本実施形態では、酸化膜キャップ層6を形成した後にレーザ照射を行なっているので、温度上昇による表面の面荒れ、分解といった問題が生じず、平坦な表面が形成される。
(第4の実施形態)
図5(a)〜(f)は、本発明の第4の実施形態における窒化物半導体を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、図5(a)に示す工程で、主面が(0001)面であるサファイア基板1(ウエハ)の上に、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約3μmのn型InGaAlN層4を形成する。ここでは、例えば500℃程度の低温で50nm程度と薄いアモルファスAlNバッファ層を形成した後に、n型InGaAlN層4を形成してもよい。また、図示しないが、n型InGaAlN層4は、n型GaN層あるいはn型AlGaNクラッド層を含んでいる。続いて、n型InGaAlN層4の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるアンドープのInGaAlN活性層3を形成する。InGaAlN活性層3は、例えばInGaN量子井戸構造を含んでおり、発光ダイオードや半導体レーザの場合には、電流の注入に応じて青色あるいは青紫色の光を発光する領域である。さらに続いて、InGaAlN活性層3の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約0.5μmのp型InGaAlN層2を形成する。p型InGaAlN層2は、p型AlGaNクラッド層あるいはp型GaN層を含んでいる。以上により、p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4からなる積層部10を形成する。
さらに、p型InGaAlN層2の上に、CVD法により、酸化シリコンからなる厚み約100nmの酸化膜キャップ層6を形成する。
上記工程では、n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。また、MOCVDによるエピタキシャル成長を行なう際には、キャリアガスとして水素ガスを用いている。as-grownの状態では、p型InGaAlN層2中においてMgが水素原子と結合しており(活性化されていない)、その結果、p型InGaAlN層2は高い電気抵抗を有している。
次に、図5(b)に示す工程で、窒素雰囲気下で、酸化膜キャップ層6の上方からKrFエキシマレーザ(波長248nm)のビーム(光束)を照射する。
ここで、レーザの出力パワーはInGaAlN層2,3,4が分解しない程度とし、第1の実施形態における図2に示す第1段階の照射のみを行なう。つまり、比較的低出力でパルス幅の大きいレーザを照射する。これにより、p型InGaAlN層2はレーザを吸収して加熱され、同層内の水素が膜中から脱離するので、p型InGaAlN層2が低抵抗化される。
この工程において、レーザビーム(光束)は、ウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1,積層部10中の各層及び酸化膜キャップ層6との熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
次に、図5(c)に示す工程で、酸化膜キャップ層6を例えばフッ酸にて除去する。
次に、図5(d)に示す工程で、周知の貼り合わせ技術を用いて、p型InGaAlN層2を主面がほぼ(001)面であるSi基板5(転写用基板)に接着する。
このとき、半導体レーザを作成する場合には、へき開が容易になるように、InGaAlN層の< 1 1-2 0>方向と、Si基板の<110>方向とが平行になるように、InGaAlN層とSi基板とを互いに接着する。
そして、図5(e)に示す工程で、窒素雰囲気下で、サファイア基板1の裏面側からKrFエキシマレーザ(波長248nm)のビーム(光束)を照射する。
ここで、レーザの出力パワーはInGaAlN層2,3,4が分解しない程度とし、第1の実施形態における図2に示す第2段階の照射のみを行なう。つまり、高出力でパルス幅の小さいレーザを照射する。
この工程において、レーザビーム(光束)は、ウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1,積層部10中の各層及びSi基板5との熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
なお、ここで用いるKrFエキシマレーザの光密度は、600mJ/cm2 以上が望ましい。
これにより、図5(f)に示すように、積層部10(p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4)及びSi基板5からサファイア基板1を分離させる(基板分離)。
なお、レーザ光の照射によって、サファイア基板1の分離が終了した後に、Si基板5の接着を行なっても良い。
その後、積層部10中のp型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4を利用した発光ダイオードや半導体レーザを形成するが、その工程では周知慣用の技術を用いることができる。
従って、本実施形態では、酸化膜キャップ層6を通して照射したレーザによってp型InGaAlN層2の低抵抗化を図ることができる。このとき、照射するレーザのエネルギーとパルス幅との調整によって、積層部10が高温に加熱されるのを回避することができる。したがって、積層部10中のドーパントの拡散を抑制して、ドーパントプロファイルの急峻性を維持することができる。よって、特性の良好なデバイス(発光特性の良好な発光ダイオードや半導体レーザなど)を実現することが可能となる。
加えて、本実施形態では、酸化膜キャップ層6を形成した後にレーザ照射を行なっているので、温度上昇による表面の面荒れ、分解といった問題が生じず、平坦な表面が形成される。
また、積層部10(p型InGaAlN層2,InGaAlN層3及びn型InGaAlN層4)がSi基板5の上に搭載されているので、後に、この構造を利用して半導体レーザを作成する場合には、InGaAlN層とSi基板とのへき開面がほぼ一致するように両者の結晶方位関係を調整することにより、平坦性のよいへき開面が得られる。その結果、半導体レーザの良好な共振器が得られる。また、Si基板5の熱伝導率がサファイア基板1よりも高いことを利用して、低しきい値電流あるいは高パワー動作といった高性能半導体レーザを実現できる。
(第5の実施形態)
図6(a)〜(c)は、本発明の第5の実施形態における窒化物半導体を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、図6(a)に示す工程で、主面が(0001)面であるサファイア基板1(ウエハ)の上に、例えばRFスパッタリングにより、スペーサ層となる厚み約100nmのZnO層13を形成し、さらに、ZnO層13の上に、例えば有機金属気相成長(MOCVD)により、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約3μmのp型InGaAlN層2を形成する。ここでは、例えば500℃程度の低温で50nm程度と薄いアモルファスAlNバッファ層を形成した後に、p型InGaAlN層2を形成してもよい。また、図示しないが、p型InGaAlN層2は、p型GaN層あるいはp型AlGaNクラッド層を含んでいる。続いて、p型InGaAlN層2の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるアンドープのInGaAlN活性層3を形成する。InGaAlN活性層3は、例えばInGaN量子井戸構造を含んでおり、発光ダイオードや半導体レーザの場合には、電流の注入に応じて青色あるいは青紫色の光を発光する領域である。さらに続いて、InGaAlN活性層3の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約0.5μmのn型InGaAlN層4を形成する。n型InGaAlN層4は、n型AlGaNクラッド層あるいはn型GaN層を含んでいる。n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。以上により、p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4からなる積層部10を形成する。
上記工程では、n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。また、MOCVDによるエピタキシャル成長を行なう際には、キャリアガスとして水素ガスを用いている。as-grownの状態では、p型InGaAlN層2中においてMgが水素原子と結合しており(活性化されていない)、その結果、p型InGaAlN層2は高い電気抵抗を有している。
次に、図6(b)に示す工程で、窒素雰囲気下で、図2に示すと同様の方法により、サファイア基板1の裏面からKrFエキシマレーザ(波長248nm)のビーム(光束)を照射する。
このとき、図2に示すような第1段階では、例えばパルスエネルギーが50mJで、パルス幅が5msのレーザ、つまり、比較的低出力でパルス幅の大きいレーザを照射する。これにより、p型InGaAlN層2はレーザを吸収して加熱され、同層内の水素が膜中から脱離するので、p型InGaAlN層2が低抵抗化される。ただし、このレーザ出力では、ZnO層13は分解または融解しない。
続いて、第2段階で、レーザのパルスエネルギーを200mJに増大させるとともに、パルス幅を10nsに縮小する。この第2段階におけるレーザの照射によって、p型InGaAlN層2のうちサファイア基板1との界面領域で膜の分解が生じる。
なお、レーザを第1,第2段階という明確に区別しうる2種類のパルスで照射するのではなく、例えばパルス幅(時間)が少しずつ増大するパルスを用いてもよい。
この工程において、レーザビーム(光束)はウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1及び積層部10中の各層の熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
そして、図6(c)に示す工程で、積層部10(p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4)及びZnO層13からサファイア基板1を分離させる(基板分離)。その後、積層部10中のp型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4を利用した発光ダイオードや半導体レーザを形成するが、その工程では周知慣用の技術を用いることができる。
本実施形態では、図6(b)に示す工程の第1段階(図2参照)において、照射されるレーザのエネルギーによっては、ZnO層13が分解又は融解することがない。一方、ZnO層13及びp型InGaAlN層2で吸収された光が熱として伝導することにより、p型InGaAlN層2が加熱され、水素の脱離によるp型InGaAlN層2が低抵抗化される。すなわち、上記第1の実施形態と同様の効果を発揮することができる。
しかも、本実施形態においては、上記第1の実施形態の効果に加えて、以下の効果を発揮することができる。
ZnO層13のバンドギャップ(禁制帯幅)は、3.27eVであり、n型InGaAlN層4の最下部を構成するGaN層のバンドギャップ(3.39eV)よりも小さい。したがって、本実施形態では、図6(b)に示す工程中の第2段階において、サファイア基板1の裏面に照射されたレーザ光が、主にZnO層13で吸収されて各InGaAlN層2,3,4にはわずかしか到達しない。したがって、ZnO層13全体あるいはZnO層13のうちサファイア基板1との界面付近の領域で結晶の分解又は融解が生じるので、低い光パワー密度で積層部10及びZnO層13からサファイア基板1を分離することができる。
また、積層部10中の各InGaAlN層2,3,4がほとんど融解しないことから、各InGaAlN層2,3,4中に結晶欠陥やクラックが発生するのを抑制することができる。すなわち、積層部10全体の厚みを5μm以下にしても、積層部10中の各層各InGaAlN層2,3,4の結晶性を良好に維持しつつ、サファイア基板1を分離させることができる。さらに、積層部10全体の厚みは5μm程度と薄いので、エピタキシャル成長後、基板冷却時に積層部10中の各層とサファイア基板1との熱膨張係数の差によって生じる基板の反りを低減することができる。したがって、平坦なSi基板などとの接着を容易にかつ均一に再現性良く行なうことが可能となる。
ここで、低い光パワー密度とは、例えばKrFエキシマレーザのレーザ光を使用した場合、GaN層とサファイア基板とが直接接している場合に、GaN層が互いに分離する閾値パワー密度が約600mJ/cm2 であるので、これより小さい値の光パワー密度のことをいう。
なお、スペーサ層としてZnO層13に代えてアモルファスのMgOを用いることができる。その場合、光を照射したときにMgOの分解で生じたMgがドーパントとなるので、積層部の最下部がp型層になるように調整することが容易となる。
(第6の実施形態)
図7(a)〜(c)は、本発明の第6の実施形態における窒化物半導体を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、図7(a)に示す工程で、主面が(0001)面であるサファイア基板1(ウエハ)の上に、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、厚み約2μmのn型GaN層9を形成する。ここでは、例えば500℃程度の低温で50nm程度と薄いアモルファスAlNバッファ層を形成した後に、n型GaN層9を形成してもよい。また、n型GaN層9とサファイア基板1との間に半絶縁性GaN層がさらに設けられていてもよい。続いて、n型GaN層9の上に、厚み約0.2μmのp型GaN層8を形成した後、p型GaN層8の上に、厚み約0.5μmのn型Al0.1 Ga0.9 N層7を形成する。以上により、n型Al0.1 Ga0.9 N層7,p型GaN層8及びn型GaN層9からなる積層部11を形成する。
さらに、n型Al0.1 Ga0.9 N層7の上に、CVD法により、酸化シリコンからなる厚み約100nmの酸化膜キャップ層6を形成する。
上記工程において、n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。また、MOCVDによるエピタキシャル成長を行なう際には、キャリアガスとして水素ガスを用いている。as-grownの状態では、p型InGaAlN層2中においてMgが水素原子と結合しており(活性化されていない)、その結果、p型InGaAlN層2は高い電気抵抗を有している。
次に、図7(b)に示す工程で、窒素雰囲気下で、酸化膜キャップ層6の上方からYAGレーザの第三次高調波(波長355nm,エネルギー3.49eVに相当)のビーム(光束)を照射する。これにより、p型GaN層8における水素の脱離を生じさせて、p型GaN層8中のp型不純物を選択的に活性化して低抵抗化する。なお、サファイア基板1の裏面からYAGレーザの第三次高調波のレーザを照射してもよい。
このとき、Al0.1 Ga0.9 N層の禁制帯幅E1は、3.57eVであるために、照射したレーザのエネルギーはn型Al0.1 Ga0.9 N層7では吸収されずに、禁制帯幅E0が約3.39eVであるp型GaN層8によってほとんど吸収される。レーザの出力パワーは、p型GaN層8における水素の脱離が生じるのに必要な程度であり、第1の実施形態における図2に示す第1段階の照射のみを行なう。つまり、比較的低出力でパルス幅の小さいレーザを照射する。
この工程において、レーザビーム(光束)は、ウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1,積層部11中の各層及び酸化膜キャップ層6の熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
次に、図7(c)に示す工程で、酸化膜キャップ層6を例えばフッ酸にて除去する。その後、n型GaN層9をコレクタ領域とし、p型GaN層8をベース領域とし、n型Al0.1 Ga0.9 N層7をエミッタ領域とするヘテロ接合型バイポーラトランジスタ(HBT)を形成するが、その工程では周知慣用の技術を用いることができる。
なお、図7(b)に示す工程において照射される光を水銀灯の365nm輝線(エネルギー3.4eV相当)としても、同輝線はAl0.1 Ga0.9 N層7を通過して、p型GaN層8で吸収されるので、本実施形態と同様の効果が得られる。
本実施形態では、酸化膜キャップ層6を通して照射したレーザによってp型GaN層8の低抵抗化を図ることができる。このとき、照射するレーザのエネルギーとパルス幅との調整によって、積層部11中の各層(特にAl0.1 Ga0.9 N層7)が高温に加熱されるのを回避することができるので、ヘテロバイポーラトランジスタ中の各層(特にエミッタ領域)における不純物濃度プロファイルを急峻に維持しつつ、高濃度p型ベース領域を実現することが可能となる。
また、キャップ層を形成した後にレーザ照射を行なっているので、温度上昇によるn型Al0.1 Ga0.9 N層7の表面荒れ、分解といった不具合を回避することができ、表面の平坦なヘテロバイポーラトランジスタが可能となる。
なお、pGaN層8中のp型不純物の活性化後に、サファイア基板1の裏面からKrFエキシマレーザ(248nm)を照射し、サファイア基板1を分離する工程を含んでも良い。
(第7の実施形態)
図8(a)〜(d)は、本発明の第7の実施形態における窒化物半導体を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、図8(a)に示す工程で、主面が(0001)面であるサファイア基板1(ウエハ)の上に、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、厚み約0.5μmのn型Al0.1 Ga0.9 N層7を形成する。ここでは、例えば500℃程度の低温で50nm程度と薄いアモルファスAlNバッファ層を形成した後に、n型Al0.1 Ga0.9 N層7を形成してもよい。また、n型Al0.1 Ga0.9 N層7とサファイア基板1との間に半絶縁性GaN層がさらに設けられていてもよい。続いて、n型Al0.1 Ga0.9 N層7の上に、厚み0.2μmのp型GaN層8と、厚み約2μmのn型GaN層9とを順次形成する。以上により、n型Al0.1 Ga0.9 N層7,p型GaN層8及びn型GaN層9からなる積層部11を形成する。
上記工程において、n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。また、MOCVDによるエピタキシャル成長を行なう際には、キャリアガスとして水素ガスを用いている。as-grownの状態では、p型InGaAlN層2中においてMgが水素原子と結合しており(活性化されていない)、その結果、p型InGaAlN層2は高い電気抵抗を有している。
次に、図8(b)に示す工程で、例えば張り合わせ技術を用いて、主面が(001)面であるSi基板5をn型GaN層9に接着する。
次に、図8(c)に示す工程で、窒素雰囲気下で、サファイア基板1の裏面からYAGレーザの第三次高調波(波長355nm,エネルギー3.49eVに相当)のビーム(光束)を、第1の実施形態と同様に、出力及び時間を2段階に変化させて照射する。
このとき、図2に示す第1段階に相当する段階では、p型GaN層8における水素の脱離を生じさせて、p型GaN層8中のp型不純物を選択的に活性化して低抵抗化する。Al0.1 Ga0.9 N層の禁制帯幅E1は、3.57eVであるために、照射したレーザのエネルギーはn型Al0.1 Ga0.9 N層7では吸収されずに、禁制帯幅E0が約3.39eVであるp型GaN層8によってほとんど吸収される。レーザの出力パワーは、p型GaN層8における水素の脱離が生じるのに必要な程度であり、第1の実施形態における図2に示す第1段階と同様に、比較的低出力でパルス幅の大きいレーザを照射する。
続いて、第2段階で、エネルギーの大きなKrFエキシマレーザ(248nm,エネルギー5eVに相当))を用いて、第1段階よりもレーザのパワー密度を上げ、パルス幅を小さくする。この第2段階におけるレーザの照射によって、n型Al0.1 Ga0.9 N層7のうちサファイア基板1との界面領域で膜の分解が生じる。
この工程において、レーザビーム(光束)はウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1,n型Al0.1 Ga0.9 N層7,各GaN層8,9及びSi基板5の熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
そして、KrFレーザの照射により、図8(d)に示すように、サファイア基板1が積層部11(n型Al0.1 Ga0.9 N層7,各GaN層8,9及びSi基板5)から分離される。つまり、Si基板5の上に、n型GaN層9,p型GaN層8及びn型Al0.1 Ga0.9 N層7を順に積層してなる構造が得られる。
その後、n型GaN層9をコレクタ領域とし、p型GaN層8をベース領域とし、n型Al0.1 Ga0.9 N層7をエミッタ領域とするヘテロ接合型バイポーラトランジスタ(HBT)を形成するが、その工程では周知慣用の技術を用いることができる。
図9は、第7の実施形態の製造工程によって形成されるヘテロ接合型バイポーラトランジスタの構造を示す断面図である。
同図に示すように、このヘテロ接合型バイポーラトランジスタは、n型GaN層9(コレクタ層)の下面に接触するTi膜及びこれを被覆するAl膜からなる裏面電極21と、p型GaN層8(ベース層)の上に形成され、p型GaN層8に接触するNi膜及びこれを被覆するAu膜からなるベース電極22と、n型Al0.1 Ga0.9 N層7をパターニングして形成されたエミッタ層23と、エミッタ層23の上に設けられ、エミッタ層23に接触するTi膜及びこれを被覆するAl膜からなるエミッタ電極24とを備えている。つまり、図9に示す構造により、npn型のバイポーラトランジスタが構成されている。
なお、図8(c)に示す工程の第1段階において照射される光を水銀灯の365nm輝線(エネルギー3.4eV相当)としても、同輝線はAl0.1 Ga0.9 N層7を通過して、p型GaN層8で吸収されるので、本実施形態と同様の効果が得られる。
また、レーザ光の照射によってサファイア基板1の分離を行なってから、Si基板5の接着を行なってもよい。
本実施形態では、サファイア基板1の裏面から照射したレーザによってp型GaN層8の低抵抗化を図ることができる。このとき、照射するレーザのエネルギーとパルス幅との調整によって、n型GaN層9が高温に加熱されるのを回避することができるので、エミッタ領域における不純物濃度プロファイルの急峻なヘテロバイポーラトランジスタを実現することが可能となる。
また、Si基板5等の放熱の良好な基板をn型GaN層9に接着することにより、ヘテロバイポーラトランジスタの高パワー動作が可能となる。
さらに、本実施形態のヘテロ接合型バイポーラトランジスタによると、ベース電極でのコンタクト抵抗が低減し、ベース抵抗が小さく高周波特性の優れたヘテロ接合型バイポーラトランジスタが得られる。
(第8の実施形態)
図11(a)〜(d)は、本発明の第8の実施形態における窒化物半導体を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、図11(a)に示す工程で、主面が(0001)面であるサファイア基板1(ウエハ)の上に、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約3μmのn型InGaAlN層4を形成する。ここでは、例えば500℃程度の低温で50nm程度と薄いアモルファスAlNバッファ層(又はGaNバッファ層)を形成した後に、n型InGaAlN層2を形成してもよい。また、図示しないが、n型InGaAlN層4は、n型GaN層あるいはn型AlGaNクラッド層を含んでいる。続いて、n型InGaAlN層4の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるアンドープのInGaAlN活性層3を形成する。InGaAlN活性層3は、例えばInGaN量子井戸構造を含んでおり、発光ダイオードや半導体レーザの場合には、電流の注入に応じて青色あるいは青紫色の光を発光する領域である。さらに続いて、InGaAlN活性層3の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約0.5μmのp型InGaAlN層2を形成する。p型InGaAlN層2は、p型AlGaNクラッド層あるいはp型GaN層を含んでいる。以上により、p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4からなる積層部10を形成する。
上記工程では、n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。また、MOCVDによるエピタキシャル成長を行なう際には、キャリアガスとして水素ガスを用いている。as-grownの状態では、p型InGaAlN層2中においてMgが水素原子と結合しており(活性化されていない)、その結果、p型InGaAlN層2は高い電気抵抗を有している。
次に、図11(b)に示す工程で、窒素雰囲気下で、上方からp型InGaAlN層2にKrFエキシマレーザ(波長248nm)のビーム(光束)を照射する。
ここで、レーザのパワー密度,パルス幅は、InGaAlN層2,3,4が分解しない程度とし、第1の実施形態における図2に示す第1段階の照射のみを行なう。つまり、比較的低出力でパルス幅の大きいレーザを照射する。これにより、p型InGaAlN層2はレーザを吸収して加熱され、同層内の水素が膜中から脱離するので、p型InGaAlN層2が低抵抗化される。
この工程において、レーザビーム(光束)は、ウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1,積層部10中の各層の熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
次に、図11(c)に示す工程で、p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4の各一部をエッチングして、n型InGaAlN層4のうちn側オーミック電極に対するコンタクト領域となる部分を露出させるとともに、p型InGaAlN層2のうちp側オーミック電極に対するコンタクト領域となる部分を他の部分よりも突出させるようにp型InGaAlN層2をパターニングする。
次に、図11(d)に示す工程で、基板上に、例えばNi/Au膜を堆積した後、Ni/Au膜をパターニングしてp型InGaAlN層2のうち突出している部分の上に、半導体レーザのp側オーミック電極15を形成する。続いて、N2 あるいはO2 雰囲気中で600℃程度の温度での熱処理を行なうことにより、p側オーミック電極15とp型InGaAlN層2とのコンタクト抵抗を低減する。さらに、基板上に、例えばTi/Al膜を堆積した後、Ti/Al膜をパターニングして半導体レーザのn型InGaAlN層4のうち露出している部分の上に、n側オーミック電極17を形成する。その後、チップ劈開工程などの周知慣用の技術を用いて、半導体レーザを形成することができる。
なお、図11(d)に示す積層部10中のp型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4を利用して発光ダイオードを形成することもできる。
従って、本実施形態では、レーザの照射によってp型InGaAlN層2の低抵抗化を図るとともに、p型InGaAlN層2とp側オーミック電極15とのコンタクト抵抗の低減を図ることができる。p型InGaAlN層2の低抵抗化の際には、照射するレーザのエネルギーとパルス幅との調整によって、積層部10中の各層が高温に加熱されるのを回避することができる。したがって、積層部10中のドーパントの拡散を抑制して、ドーパントプロファイルの急峻性を維持することができる。よって、オーミック電極とのコンタクト抵抗の低減による消費電力の小さい、かつ、特性の良好なデバイス(発光特性の良好な発光ダイオードや低しきい値電流を有する半導体レーザなど)を実現することが可能となる。
(第9の実施形態)
図12(a)〜(d)は、本発明の第9の実施形態における窒化物半導体を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、図12(a)に示す工程で、主面が(0001)面であるサファイア基板1(ウエハ)の上に、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約3μmのn型InGaAlN層4を形成する。ここでは、例えば500℃程度の低温で50nm程度と薄いアモルファスAlNバッファ層(又はGaNバッファ層)を形成した後に、n型InGaAlN層4を形成してもよい。また、図示しないが、n型InGaAlN層4は、n型GaN層あるいはn型AlGaNクラッド層を含んでいる。続いて、n型InGaAlN層4の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるアンドープのInGaAlN活性層3を形成する。InGaAlN活性層3は、例えばInGaN量子井戸構造を含んでおり、発光ダイオードや半導体レーザの場合には、電流の注入に応じて青色あるいは青紫色の光を発光する領域である。さらに続いて、InGaAlN活性層3の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約0.5μmのp型InGaAlN層2を形成する。p型InGaAlN層2は、p型AlGaNクラッド層あるいはp型GaN層を含んでいる。以上により、p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4からなる積層部10を形成する。
上記工程では、n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。また、MOCVDによるエピタキシャル成長を行なう際には、キャリアガスとして水素ガスを用いている。as-grownの状態では、p型InGaAlN層2中においてMgが水素原子と結合しており(活性化されていない)、その結果、p型InGaAlN層2は高い電気抵抗を有している。
次に、図12(b)に示す工程で、窒素雰囲気下で、上方からp型InGaAlN層2にKrFエキシマレーザ(波長248nm)のビーム(光束)を照射する。
ここで、レーザのパワー密度,パルス幅は、p型InGaAlN層2が分解又は変質する程度とし、第1の実施形態における図2に示す第1段階及び第2段階の照射を共に行なう。これにより、p型InGaAlN層2はレーザを吸収して加熱され、同層内の水素が膜中から脱離するとともに、p型InGaAlN層2が分解され又は変質して、N組成率の小さい低抵抗GaN層16が形成される。また、低抵抗GaN層16の表面部には、Nをほとんど含まない金属Ga層が薄く形成されている。
この工程において、レーザビーム(光束)は、ウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1,積層部10中の各層の熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
次に、図12(c)に示す工程において、HCl等の酸を用いて、低抵抗GaN層16の表面部をエッチングする。つまり、図12(b)に示す工程で、p型InGaAlN層2が分解又は変質して低抵抗GaN層16に変化する際に形成された比較的高抵抗の金属Ga層を除去する。エッチング後の低抵抗GaN層16には表面荒れが残っている。
次に、図12(d)に示す工程で、低抵抗GaN層16,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN4の各一部をエッチングして、n型InGaAlN層4のうちn側オーミック電極に対するコンタクト領域となる部分を露出させるとともに、低抵抗GaN層16のうちp側オーミック電極に対するコンタクト領域となる部分を他の部分よりも突出させるように低抵抗GaN層16をパターニングする。その後、周知慣用の技術を用いて、半導体レーザや発光ダイオードを形成することができる。
図13は、第9の実施形態の製造工程によって形成される半導体レーザの構造を示す断面図である。この構造は、以下の処理によって形成される。
図12(d)に示す工程の後で、基板上に、例えばNi/Au膜を堆積した後、Ni/Au膜をパターニングして低抵抗GaN層16のうち突出している部分の上に、半導体レーザのp側オーミック電極15を形成する。続いて、N2 あるいはO2 雰囲気中で600℃程度の温度での熱処理を行なうことにより、p側オーミック電極15と低抵抗GaN層16とのコンタクト抵抗を低減する。特に、低抵抗GaN層16に表面荒れが存在していることにより、低抵抗GaN層16とp側オーミック電極15との接触面積が増大するので、コンタクト抵抗の低減効果が顕著になる。
さらに、基板上に、例えばTi/Al膜を堆積した後、Ti/Al膜をパターニングしてn型InGaAlN層4のうち露出している部分の上に、半導体レーザのn側オーミック電極17を形成する。その後、チップ劈開工程などの周知慣用の技術を用いて、半導体レーザを形成することができる。
なお、図13に示す低抵抗GaN層16,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4を利用して、発光ダイオードを形成することもできる。
従って、本実施形態では、レーザの照射によってp型InGaAlN層2を分解又は変質させて低抵抗GaN層16を形成しているので、オーミック電極15とのコンタクト抵抗の低減を図ることができる。
p型InGaAlN層2の分解又は変質によって形成された低抵抗GaN層16とオーミック電極との接触抵抗が小さい理由は、今のところ明確に把握されているわけではない。しかし、この接触抵抗の低減作用は以下のように推測することが可能である。第1に、上述のように、低抵抗GaN層16の表面荒れによってオーミック電極とのコンタクト面積が増大するためと考えられる。第2に、GaN層の組成が化学量論的組成からずれることによって禁制帯幅(バンドギャップ)が小さくなり、導体である電極とのオーミック接触における抵抗が小さくなると考えられる。
よって、オーミック電極とのコンタクト抵抗の低減による消費電力の小さいデバイス(発光特性の良好な発光ダイオードや低しきい値電流を有する半導体レーザなど)を実現することが可能となる。
(第10の実施形態)
図14(a)〜(d)は、本発明の第10の実施形態における窒化物半導体を用いた半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、図14(a)に示す工程で、主面が(0001)面であるサファイア基板1(ウエハ)の上に、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約3μmのp型InGaAlN層2を形成する。ここでは、例えば500℃程度の低温で50nm程度と薄いアモルファスAlNバッファ層(又はGaNバッファ層)を形成した後に、p型InGaAlN層2を形成してもよい。また、図示しないが、p型InGaAlN層2は、p型GaN層あるいはp型AlGaNクラッド層を含んでいる。 続いて、p型InGaAlN層2の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるアンドープのInGaAlN活性層3を形成する。InGaAlN活性層3は、例えばInGaN量子井戸構造を含んでおり、発光ダイオードや半導体レーザの場合には、電流の注入に応じて青色あるいは青紫色の光を発光する領域である。さらに続いて、InGaAlN活性層3の上に、組成が(Alx Ga1-x )y In1-y N(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される厚み約0.5μmのn型InGaAlN層4を形成する。n型InGaAlN層4は、n型AlGaNクラッド層あるいはn型GaN層を含んでいる。以上により、p型InGaAlN層2,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4からなる積層部10を形成する。
上記工程において、n型層の形成時にはSiが、p型層の形成時にはMgが、それぞれドーパントとして添加されている。また、MOCVDによるエピタキシャル成長を行なう際には、キャリアガスとして水素ガスを用いている。as-grownの状態では、p型InGaAlN層2中においてMgが水素原子と結合しており、p型InGaAlN層2中のp型不純物が活性化されていないので、p型InGaAlN層2は高い電気抵抗を有している。
次に、図14(b)に示す工程で、窒素雰囲気下で、サファイア基板1の裏面からKrFエキシマレーザ(波長248nm)のビーム(光束)を照射する。
ここで、レーザのパワー密度,パルス幅は、p型InGaAlN層2が分解する程度とし、第1の実施形態における図2に示す第1段階及び第2段階の照射を共に行なう。これにより、p型InGaAlN層2はレーザを吸収して加熱され、同層内の水素が膜中から脱離するとともに、p型InGaAlN層2が分解され又は変質して、N組成率の小さい低抵抗GaN層16が形成される。また、低抵抗GaN層16の表面部には、Nをほとんど含まない金属Ga層が薄く形成されている。
この工程において、レーザビーム(光束)は、ウエハ面内をスキャンするように照射され、ウエハ全体は、サファイア基板1,積層部10中の各層の熱膨張係数の差による膜中ストレスを緩和するために、500℃程度に加熱されている。この加熱温度は、基板上の各層の特性の劣化や大きな変形を招かない範囲でストレス緩和の機能を発揮するためには、400℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましい。
そして、図14(c)に示す工程で、積層部10(低抵抗GaN層16,InGaAlN活性層3及びn型InGaAlN層4)からサファイア基板1を分離させる(基板分離)。その後、HCl等の酸を用いて低抵抗GaN層16の表面部をエッチングする。つまり、図14(b)に示す工程で、p型InGaAlN層2が分解又は変質して低抵抗GaN層16に変化する際に形成された金属Ga層を除去する。エッチング後の低抵抗GaN層16には表面荒れが残っている。
次に、図14(d)に示す工程で、低抵抗GaN層16の上に、例えばNi/Au膜を堆積した後、Ni/Au膜をパターニングして、発光ダイオードのp側オーミック電極15を形成する。続いて、N2 あるいはO2 雰囲気中で600℃程度の温度での熱処理を行なうことにより、p側オーミック電極15と低抵抗GaN層16とのコンタクト抵抗を低減する。特に、低抵抗GaN層16に表面荒れが存在していることにより、低抵抗GaN層16とp側オーミック電極15との接触面積が増大するので、コンタクト抵抗の低減効果が顕著になる。
さらに、n型InGaAlN層4の下面上に、例えばTi/Al膜を堆積して、発光ダイオードのn側オーミック電極17を形成する。
従って、本実施形態においても、第9の実施形態と同様に、レーザの照射によってp型InGaAlN層2を分解又は変質させて低抵抗GaN層16を形成しているので、第9の実施形態と同様の作用により、p側オーミック電極15とのコンタクト抵抗の低減を図ることができる。よって、オーミック電極とのコンタクト抵抗の低減による消費電力の小さいデバイス(発光ダイオードや低しきい値電流を有する半導体レーザなど)を実現することが可能となる。
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、単結晶基板としてサファイア基板を用いたが、本発明における単結晶基板はこれに限定されるものではなく、単結晶基板としてSiC基板,MgO基板,LiGaO2 基板,LiGax Al1-x O2 (0≦x≦1)混晶基板,LiAlO2 基板などを用いることができる。
また、転写用基板としては、Si基板の他に、GaAs基板,GaP基板,InP基板などを用いることができる。