以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第一実施形態にかかるキートップ10−1を示す図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図1(c)は図1(a)のB−B断面図である。同図に示すようにキートップ10−1は、中央に円形の貫通するキートップ挿入孔11を有するリング状形状であり、リング状のフイルム30の上面にその表面が露出するように成形樹脂製でリング状のキートップ本体20を成形して構成されている。キートップ本体20の外周からは樹脂注入用突部21が突出して設けられている。樹脂注入用突部21の外径は下記するフイルム30の外径寸法と一致し、その厚みはキートップ本体20の厚みより薄く、所定の幅寸法を有している突部形状である。フイルム30はキートップ本体20の外周から少しはみ出すようにその外径寸法をキートップ本体20の外径寸法よりも少し大きく構成し、これによってキートップ本体20から突出するつば部37を形成している。フイルム30の下面には、下記する所望の印刷が施されている。
次にこのキートップ10−1の製造方法を説明する。図2乃至図4はそれぞれキートップ10−1の製造方法を示す図である。まず図2に示すように可撓性を有する透明な合成樹脂製(この実施の形態ではポリカーボネート樹脂製)のフイルム30を用意する。このフイルム30は、キートップ本体20を成形しようとする部分の中央にキートップ挿入孔11Aを設けると共に、フイルム30の下面側のキートップ挿入孔11Aの周囲に、第一印刷層33Aと第二印刷層33Bとを印刷(多色印刷)して構成されている。第一印刷層33Aは四つの方向を示す方向支持部となる印刷層であり、また第二印刷層33Bは第一印刷層33Aの下面を覆う背景用の印刷層である。第二印刷層33Bは下記するキートップ本体20下面のフイルム30への当接面全体に設けられている。またこのフイルム30の所定位置(下記するキートップ本体20の樹脂注入用突部21に対向する位置)には小孔からなる貫通孔35が設けられている。さらにキートップ挿入孔11Aの周囲は、リング状に少し上方向に持ち上げることでその下面側につば部収納部39を設けている。このつば部収納部39はプレフォーミングによって形成しておくものであり、キートップ10−1の中央に別のキートップをその下側から挿入した際にこの別のキートップのつば部(図9のキートップ10−3のつば部38)を収納するものである。
次に図3(a),(b)に示すように前記フイルム30を第一,第二金型40,50によってその上下から挟持する。その際第一金型40とフイルム30の間にはリング状のキートップ本体形成用キャビティー41が形成される。このキートップ本体形成用キャビティー41は第一金型40にリング状の凹部を設けることで形成される。またキートップ本体形成用キャビティー41の外周には、フイルム30上面に沿う状態にてこれに接続してフイルム30との間で形成される舌片状に外方に突出する樹脂注入用キャビティー43を設けている。樹脂注入用キャビティー43の深さは下記する樹脂注入ゲート51から注入される溶融成形樹脂を前記キートップ本体形成用キャビティー41にスムーズに流し込むことができる深さ寸法であれば良く、従って前記キートップ本体形成用キャビティー41の深さに比べてその深さはかなり浅い。またキートップ本体形成用キャビティー41の中央には、フイルム30のキートップ挿入孔11A(図2(b)参照)に挿入される突起部45が形成されている。
一方第二金型50の上面形状は前記フイルム30の下面形状と略同一に形成されており、フイルム30の貫通孔35に対向する位置に樹脂注入ゲート51を設置している。
そして第二金型50の樹脂注入ゲート51から透明な溶融成形樹脂(この実施の形態ではポリカーボネート樹脂)を圧入すると、溶融成形樹脂はフイルム30に設けた貫通孔35と樹脂注入用キャビティー43を介して、キートップ本体形成用キャビティー41内に導入され、この溶融成形樹脂によってキートップ本体形成用キャビティー41及び樹脂注入用キャビティー43及び貫通孔35及び樹脂注入ゲート51内が満たされる。この実施形態における成形時の金型温度は例えば120℃、溶融樹脂温度は例えば300℃である。
以上のようにフイルム30を第一,第二金型40,50で挟持した際に第一金型40とフイルム30の間に形成されるキートップ本体形成用キャビティー41内に、キートップ本体形成用キャビティー41の外周に接続して設けた樹脂注入用キャビティー43とフイルム30に設けた貫通孔35を介して第二金型50に設けた樹脂注入ゲート51から溶融成形樹脂を充填するので、溶融成形樹脂の注入を、キートップ本体形成用キャビティー41を設けない第2金型50側から行うことができ、従って、樹脂注入ゲート51を接続する位置が樹脂注入用キャビティー41等によって制限されることなく、その接続位置の自由度が高くなる。なお樹脂注入ゲート51をキートップ本体20の真下の位置に接続することもできるが、そうするとフイルム30に設ける貫通孔35がキートップ本体20の真下にきてこの部分が透明なキートップ本体20と透明なフイルム30を通して外部から透けて見えてしまい、またこの部分には印刷もできないので、装飾上好ましくない。
そして溶融成形樹脂が固化した後に第一,第二金型40,50を取り外すことで、図4に示すようなフイルム30上にキートップ本体20を露出して取り付けたものが取り出せる。ここで前記フイルム30とキートップ本体20とは、何れもポリカーボネート製で同質材料なので、何ら接着材を用いなくても直接溶着して強固に固定される。またフイルム30とキートップ本体20とを異質の合成樹脂で構成し、キートップ本体20の成形時の熱と圧力だけでは両者が強固に接着しない場合は、予めフイルム30のキートップ本体20が当接する面に接着剤層を塗っておいたり、又は予め溶融成形樹脂の中に接着剤を混合すれば良い。
また第一金型40側には固化した後のキートップ本体20が直接当接しており、またキートップ本体形成用キャビティー41等の凹凸があるので、第一金型40とキートップ本体20の間には適度な固着力がある。一方第二金型50の上面にはフイルム30が当接していてキートップ本体20にはほとんど接していないので、第二金型50とキートップ本体20の間の固着力は小さい。従って第一,第二金型40,50を上下に引き離した際、キートップ10−1は第一金型40側にくっついて行き、樹脂注入ゲート51内に残っている成形樹脂は樹脂注入ゲート51の先端部分で容易に切断される。なお実際の製造では図3(a)の上下は逆転しており、第一金型40を下側に、第二金型50を上側に設置してある。
以上のようにして取り出したキートップ本体20は、図4に示すように、フイルム30上面にその表面が露出するように成形されている。キートップ本体20の外周からはフイルム30上面に沿って樹脂注入用突部21が突出している。この樹脂注入用突部21は言うまでもなく前記樹脂注入用キャビティー43部分によって形成される成形樹脂であり、フイルム30の貫通孔35まで至ってこの貫通孔35内を塞いでいる。以上により樹脂注入用突部21に対向する位置に設けたフイルム30の貫通孔35の下面が、樹脂注入ゲート51内の成形樹脂を切断した樹脂注入ゲート切断部27となる。
そして図4(a)の点線のカット線Dの部分で、キートップ本体20の周囲をカットすれば、図1に示すキートップ10−1が完成する。即ちこのときのカットによって、樹脂注入用突部21のフイルム30上の貫通孔35を含む先端側の部分をカットして取り除くと共に、キートップ10−1周囲のフイルム30をつば部37を残して取り除く。
この実施形態において樹脂注入用突部21の全部をカットせず、キートップ本体20側に位置する根元側の一部を残した状態でカットすることでこの樹脂注入用突部21を残したのは、この樹脂注入用突部21にこのキートップ10−1を装着するケース60に対する位置決めを行わせるためである。ここで図5はケース60の開口61を設けた部分を示す図であり、図5(a)はその裏面図、図5(b)はそのE−E線部分の断面図である。そして前記キートップ10−1はケース60に設けた開口61にその裏面側から挿入され、つば部37がケース60の裏面の開口61の周囲に当接することとなるが、キートップ10−1は円形なので、回転してしまう場合がある。そこで樹脂注入用突部21をケース60の裏面に設けた係合凹部63に係合させることで、その位置決めを行わせる。つまり樹脂注入用突部21は、キートップ10−1を装着するケース60への位置決め突起として利用するものである。
但しキートップ10−1は、場合によっては前記樹脂注入用突部21やつば部37は必要でなく、そのような場合は、図6(a)に示すように、前記フイルム30をカットする工程において、キートップ本体20の外周にぴったり沿ってこれをカットしても良い。
図7は本発明の第二実施形態にかかるキートップ10−2を示す図であり、図7(a)はその断面図(図7(b)のF−F断面図)、図7(b)は平面図である。このキートップ10−2において、前記第一実施形態に示すキートップ10−1と同一又は相当する部分については同一符号を付す。同図に示すキートップ10−2は、略矩形状のキートップであり、略矩形状のフイルム30の上面にその表面が露出するように成形樹脂製の略矩形状のキートップ本体20を成形して構成されている。この実施形態ではフイルム30の上面に所望の印刷(第一印刷層33Aと第二印刷層33B)が施されている。即ちキートップ本体20の下面のほぼ全面にわたる背景用の第二印刷層33Bの上に、所望の文字や記号等からなる第一印刷層33Aを印刷(多色印刷)して構成されている。
次にこのキートップ10−2の製造方法を説明する。図8はキートップ10−2の製造方法を示す図である。まず可撓性を有する合成樹脂製(この実施形態ではポリカーボネート樹脂)のフイルム30を用意する。このフイルム30には、キートップ本体20を成形しようとする部分に予め第一,第二印刷層33A,33Bが印刷(多色印刷)され、またこのフイルム30の所定位置(下記するキートップ本体20の樹脂注入用突部21に対向する位置)に小孔からなる貫通孔35が設けられている。そして図8(a)に示すように前記フイルム30を第一,第二金型40,50によってその上下から挟持する。その際第一金型40とフイルム30の間にはキートップ本体形成用キャビティー41が形成される。キートップ本体形成用キャビティー41の外周には、フイルム30上面に沿う状態にてこれに接続してフイルム30との間で形成される舌片状に外方に突出する樹脂注入用キャビティー43が設けられている。一方第二金型50の上面形状は前記フイルム30の下面形状と略同一であって略平面状に形成されており、フイルム30の貫通孔35に対向する位置に樹脂注入ゲート51を設置している。
そして第二金型50の樹脂注入ゲート51から溶融成形樹脂(この実施の形態ではポリカーボネート樹脂)を圧入すると、溶融成形樹脂はフイルム30に設けた貫通孔35と樹脂注入用キャビティー43を介して、キートップ本体形成用キャビティー41内に導入され、この溶融成形樹脂によってキートップ本体形成用キャビティー41及び樹脂注入用キャビティー43及び貫通孔35及び樹脂注入ゲート51内が満たされる。そして溶融成形樹脂が固化した後に第一,第二金型40,50を取り外すことで、図8(b)に示すようなフイルム30上にキートップ本体20を露出して取り付けたものが取り出せる。この実施の形態では第二印刷層33Bに接着剤を混合しておいたり、別途接着剤層を第一,第二印刷層33A,33Bの上面に設けておくことで、フイルム30とキートップ本体20間を固着している。
この実施形態の場合も、第一金型40側には固化した後のキートップ本体20が直接当接しており、またキートップ本体形成用キャビティー41等の凹凸があるので、第一金型40とキートップ本体20との間には適度な固着力がある一方で、第二金型50の上面にはフイルム30が当接していてキートップ本体20にはほとんど接していないので第二金型50とキートップ本体20との間の固着力は小さい。従って第一,第二金型40,50を上下に引き離した際、キートップ10−2は第一金型40側にくっついて行き、樹脂注入ゲート51内に残っている成形樹脂は樹脂注入ゲート51の先端部分で容易に切断される。なお実際の製造では図8(a)の上下は逆転しており、第一金型40を下側に、第二金型50を上側に設置してある。
以上のようにして取り出した図8(b)に示すキートップ本体20は、フイルム30上面にその表面が露出するように成形されており、またキートップ本体20の外周からはフイルム30上面に沿って樹脂注入用突部21が突出している。この樹脂注入用突部21はフイルム30の貫通孔35まで至ってこの貫通孔35内を塞いでいる。
そして図8(b)のキートップ本体20の外周に沿ってフイルム30をカットすれば、図7に示すキートップ10−2が完成する。このキートップ10−2の場合、樹脂注入用突部21はキートップ本体20側に位置する根元からカットされて取り除かれている。
図9は前記図1に示す構造のキートップ10−1と図7に示す構造のキートップ10−2とそれ以外のキートップ10−3とを用いて構成されるキートップ板70を示す図であり、図9(a)は斜視図、図9(b)は分解斜視図である。同図に示すようにキートップ板70は、可撓性を有する取付板80上に、前記キートップ10−1と同一構造のものを一個と、前記キートップ10−2と外形は少しずつ異なるが同一構造のものを十九個と、円形で外周にフイルムからなるつば部38を突出して設けたキートップ10−3とを、接着剤などによって取り付けて構成されている。キートップ10−3はキートップ10−1のキートップ挿入孔11内にその下側から挿入された状態で取付板80上に設置される。取付板80は可撓性を有する板材であり、透光性のある合成ゴムや合成樹脂フイルム等によって構成される。なおこのキートップ板70を製造する場合、例えば一個一個のキートップ10−1,10−2,10−3を取付板80に接着していっても良い。
また他の実施形態として、一枚のフイルム30に同時に多数のキートップ10−1及び/又は10−2を成形し、キートップ10−3をキートップ10−1のキートップ挿入孔11内に挿入した状態で、このフイルム30を取付板80上に貼り付けた後にレーザカットや機械的カットによってフイルム30だけをカットして不要なフイルム30を取り除いても良い。また以下の第三実施形態においても同様のものを説明するが、各キートップ10−1及び/又は10−2をキートップ10−1及び/又は10−2の周囲のフイルム30の一部を切り欠いて、それによってできるフイルム30による連結片で相互に連結したものを、キートップ10−3を別途キートップ10−1のキートップ挿入孔11内に挿入した状態で、取付板80上に取り付けても良い。
なおキートップ10−1,10−2,10−3の下面は、成形樹脂が突出しない略平面状形状なので、取付板80に取り付けてもその全体の厚みは図10に示すような従来例と比べて厚くならず、またその下面から成形樹脂が突出しないので取付板80に面接触によって容易に取り付けることができる。
図11は本発明の第三実施形態にかかるキートップ10−4を示す図であり、図11(a)はその断面図(図11(b)のG−G断面図)、図11(b)は平面図である。このキートップ10−4において、前記第一,第二実施形態に示すキートップ10−1,2と同一又は相当する部分については同一符号を付す。同図に示すキートップ10−4も前記第二実施形態のキートップ10−2と同様に、略矩形状のキートップであり、略矩形状のフイルム30の上面にその表面が露出するように成形樹脂製の略矩形状のキートップ本体20を成形して構成されている。この実施形態ではフイルム30の下面に所望の印刷(第一印刷層33Aと第二印刷層33B)が施されている。即ちフイルム30の下面に所望の文字や記号等からなる第一印刷層33Aとフイルム30の下面のほぼ全面にわたる背景用の第二印刷層33Bとを印刷(多色印刷)して構成されている。そしてこのキートップ10−4においては、フイルム30をキートップ本体20の外周から少しはみ出すようにその外径寸法をキートップ本体20の外径寸法よりも少し大きく構成し、これによってキートップ本体20から突出するつば部37を形成し、同時にキートップ本体20の外周の略180°対向する位置からはつば部37の上面に至る樹脂注入用突部21とガス抜き用突部23とが突出して設けられている。樹脂注入用突部21及びガス抜き用突部23の先端はつば部37の外周辺と一致し、その厚みはキートップ本体20の厚みより薄く、所定の幅寸法を有している。
次にこのキートップ10−4の製造方法を説明する。図12はキートップ10−4の製造方法を示す図であり、図12(a)は第一,第二金型40,50によってフイルム30を挟持した状態を示す概略断面図(図12(b)のI−I断面部分の概略矢視図)、図12(b)は金型40,50内のキャビティーの状態を示す平断面図(図12(a)のH−H断面部分の平断面図)である。同図に示すようにこの実施形態においては、二個のキャビティーによって同時に二個のキートップ10−4,10−4を成形する。即ちまず可撓性を有する合成樹脂製(この実施形態ではポリカーボネート樹脂)のフイルム30を用意する。このフイルム30には、二つのキートップ本体20を成形しようとする部分に予め第一,第二印刷層33A,33Bが印刷(多色印刷)され、またこのフイルム30の所定位置(下記する二つのキートップ本体20から突出する樹脂注入用突部21が接続する部分)に小孔からなる一つの貫通孔35が設けられている。そして図12(a)に示すように前記フイルム30は第一,第二金型40,50によってその上下から挟持される。その際第一金型40とフイルム30の間には図12(b)に示すように二つのキートップ本体形成用キャビティー41,41が形成される。同時に各キートップ本体形成用キャビティー41,41の外周には、それぞれ樹脂注入用キャビティー43とガス抜き用キャビティー47とが形成される。ここで樹脂注入用キャビティー43とガス抜き用キャビティー47は、何れもフイルム30上面に沿う状態にてキートップ本体形成用キャビティー41に接続してフイルム30との間で舌片状に外方に突出するように形成される。また樹脂注入用キャビティー43とガス抜き用キャビティー47とは、キートップ本体形成用キャビティー41の略180°対向する位置に設けられている。そして両キートップ本体形成用キャビティー41から突出する樹脂注入用キャビティー43,43は、それらの先端部分が接続されており、この接続部分に前記フイルム30の貫通孔35が位置している。一方第二金型50の上面形状は前記フイルム30の下面形状と略同一であって略平面状に形成されており、フイルム30の貫通孔35に対向する位置に貫通孔35内に挿入される樹脂注入ゲート51を設置している。樹脂注入ゲート51は一ヶ所である。
また第一金型40には、前記ガス抜き用キャビティー47に接続するように、ガス抜き穴48が設けられている。ガス抜き穴48内には、これを略塞ぐ内径寸法形状のガス抜きピン49が上下動自在に収納されている。ガス抜きピン49はガス抜き穴48を略塞ぐが、両者間には微小な隙間があり、この隙間からガスを抜くように構成している。ガス抜き穴48は、図12(b)に示す両ガス抜き用キャビティー47の部分の第一金型40側に設けられている。即ちガス抜き穴48は二ヶ所にある。
そして第二金型50の樹脂注入ゲート51から溶融成形樹脂(この実施の形態ではポリカーボネート樹脂)を圧入すると、溶融成形樹脂はフイルム30に設けた一つの貫通孔35と二つの樹脂注入用キャビティー43,43を介して、二つのキートップ本体形成用キャビティー41,41内に導入され、この溶融成形樹脂によってキートップ本体形成用キャビティー41,41及び樹脂注入用キャビティー43,43及びガス抜き用キャビティー47,47及び貫通孔35及び樹脂注入ゲート51内が満たされる。これらキートップ本体形成用キャビティー41,41及び樹脂注入用キャビティー43,43内に溶融成形樹脂が充填される際、これらキャビティー内にあった空気は、ガス抜き用キャビティー47,47を介してガス抜き穴48とガス抜きピン49との間の隙間から排気される。本実施形態においてはキートップ本体形成用キャビティー41にガス抜き用キャビティー47を接続したので、樹脂注入ゲート51から樹脂注入用キャビティー43を介してキートップ本体形成用キャビティー41内に充填されていく溶融成形樹脂の流れがスムーズになり、このため樹脂注入用キャビティー43とキートップ本体形成用キャビティー41内に成形した成形樹脂にウェルドは生じなくなって成形されるキートップ10−4の強度を強く保てる。また溶融成形樹脂冷却時の収縮による引けはガス抜き用キャビティー47内に生じるようになり、キートップ本体20には引けによる凹部が生じなくなる。
またこの実施形態によれば、第二金型50に設けた一つの樹脂注入ゲート51から複数(この実施形態では二組)のキートップ本体形成用キャビティー41及びこれに接続される樹脂注入用キャビティー43に同時に溶融成形樹脂を充填するように構成したので、少ない樹脂注入ゲート51によって多数のキートップ本体20を同時に効率的に成形できる。従って特にフイルム30に成形しようとする複数のキートップ本体20が相互に接近している場合でも、樹脂注入ゲート51の設置スペースを取ることに困ることがなくなる。また樹脂注入ゲート51数が減ることで、ランナー量の低減が図れ、製品にならないロスの樹脂の低減が図れる。
そして溶融成形樹脂が固化した後に第一,第二金型40,50を取り外せば、図13に示すようなフイルム30上に二つのキートップ本体20を露出して取り付けたものが取り出せる。この実施形態では、キートップ本体20とフイルム30とが同一のポリカーボネート樹脂製なので、両者は直接熱溶着して固着することができる。なおキートップ本体20とフイルム30とが異種の樹脂からなる場合は、両者が直接熱融着しない場合もあるので、このような場合は別途接着剤層を両者間に介在させることで両者を固着しても良い。
この実施形態の場合も、第一金型40側には固化した後のキートップ本体20が直接当接しており、またキートップ本体形成用キャビティー41等の凹凸があるので、第一金型40とキートップ本体20との間には適度な固着力がある一方で、第二金型50の上面にはフイルム30が当接していてキートップ本体20にはほとんど接していないので第二金型50とキートップ本体20との間の固着力は小さい。従って第一,第二金型40,50を上下に引き離した際、キートップ10−4は第一金型40側にくっついて行き、樹脂注入ゲート51内に残っている成形樹脂は樹脂注入ゲート51の先端部分で容易に切断される。なお実際の製造では図12(a)の上下は逆転しており、第一金型40を下側に、第二金型50を上側に設置してある。
以上のようにして取り出した図13に示す二つのキートップ本体20は、フイルム30上面にその表面が露出するように成形されており、またキートップ本体20の外周からはフイルム30上面に沿って樹脂注入用突部21とガス抜き用突部23とが突出している。二本の樹脂注入用突部21はフイルム30の貫通孔35の上部で接続され、この接続部分が貫通孔35を塞いでいる。
そして図13の各キートップ本体20の外周に沿ってフイルム30をカットすれば、図11に示すキートップ10−4が完成する。このキートップ10−4の場合、キートップ本体20の外周から少しはみ出すつば部37と、つば部37の上面に至る樹脂注入用突部21及びガス抜き用突部23(それらの根元部分)とが突出して設けられている。即ち残っている樹脂注入用突部21とガス抜き用突部23は、キートップ本体20側に位置する樹脂注入用突部21とガス抜き用突部23の根元側の一部である。
図14乃至図16はフイルム30によって一体に連結される複数のキートップ10−4の製造方法を示す図である。即ちまず図14に示すように、一枚のフイルム30を用意する。フイルム30の所定位置には複数(9個)の小孔からなる貫通孔35が設けられている。次にこのフイルム30を図12(a)に示すような第一,第二金型40,50によって挟持し、第二金型50に設けた各樹脂注入ゲート51(フイルム30の各貫通孔35に対向する位置に設置してある)から第一,第二金型40,50によって形成されている各樹脂注入用キャビティー43及びキートップ本体形成用キャビティー41内に溶融成形樹脂を注入する。その後第一,第二金型40,50を取り外せば、図15に示すように、一枚のフイルム30上に複数(20個)のキートップ本体20を成形したものが製造される。各キートップ本体20には、樹脂注入用突部21とガス抜き用突部23とが一対ずつ接続されている。
そして各キートップ本体20の周囲のフイルム30を、図16に示すように、各キートップ本体20間が前記一枚のフイルム30に連結されるように細帯状の連結部31を残した状態でカットする。このとき図16に示すように各キートップ10−4は、少なくとも二本の連結部31によって少なくとも異なる二つのキートップ10−4に連結されている。
図17は前記図16に示す構造の複数のキートップ10−4とそれとは別のキートップ10−5とを用いて構成されるキートップ板70Aの分解斜視図である。なおこのキートップ板70Aにおいて、前記図9に示すキートップ板70と同一部分には同一符号を付す。図17に示すようにキートップ板70Aは、可撓性を有する取付板80上に、前記図16に示す複数の一体のキートップ10−4と、円形の成形品からなるキートップ10−5とを、接着剤などによって取り付けて構成される。そのときキートップ10−5は、このキートップ10−5に設けたキートップ挿入穴101に一つのキートップ10−4をその下側から挿入した状態で取付板80上に取り付けられる。取付板80は可撓性を有する板材であり、透光性のある合成ゴムや合成樹脂フイルム等によって構成される。この実施形態においては、複数のキートップ10−4がフイルム30からなる連結部31によって相互に連結されているので、取付板80への各キートップ10−4の取り付けが容易になる。また連結部31には上下方向(キートップ10−4の押圧方向)に向かって十分な可撓性があるので、各キートップ10−4の上下方向への押圧動作は独立する。
なおこの実施形態の場合も、キートップ10−4,10−5の下面は、成形樹脂が突出しない略平面状形状なので、取付板80に取り付けてもその全体の厚みは図10に示す従来例と比べて厚くならず、またその下面から成形樹脂が突出しないので取付板80に面接触によって容易に取り付けることができる。
ところで上記第三実施形態では、図12(a)に示すように、第一金型40側にガス抜き用キャビティー47に接続するガス抜き穴48を接続したが、よりスムーズにガス抜き用キャビティー47からガス抜きを行うためには、図18に示すように、第二金型50側にもガス抜き穴58を設ければ良い。その場合もこのガス抜き穴58内には、これを略塞ぐ内径寸法形状のガス抜きピン59が上下動自在に収納され、両者間の微小な隙間からガスを抜くようにする。この場合、ガス抜き穴58に対向するフイルム30の面に、開口36を設け、開口36を介してガス抜き穴58側に空気を抜く。
さらに第一金型40側に設けたガス抜き穴48及びガス抜きピン49を省略し、第二金型50側に設けたガス抜き穴58及びガス抜きピン59のみとしても良い。第一金型40側にガス抜き穴48を設けるスペースが取れないような場合は特に有効である。
ところで上記実施形態において、第一,第二印刷層33A,33Bをフイルム30の下面側、即ちキートップ本体20を成形しない面側に設けたのは、以下の理由による。即ち図12においてもし第二印刷層33Bをフイルム30のキートップ本体形成用キャビティー41側に設けておくと、樹脂注入ゲート51の近傍部分にある第二印刷層33Bの端部表面に、樹脂注入ゲート51から吐出してキートップ本体形成用キャビティー41内に流入したばかりの高温高圧の溶融成形樹脂が高速で直接触れることとなり、第二印刷層33Bやフイルム30の材質によっては、第二印刷層33Bの端部が押し流されてしまい、その表示が破壊されてしまう恐れがあった(なお第二印刷層33Bの樹脂注入ゲート51の吐出口から離れている部分や、第一印刷層33Aは問題ない)。そこでこの実施形態では第一,第二印刷層33A,33Bをフイルム30の下面側、即ちキートップ本体20を成形しない面側に設けたのである。なお第一印刷層33Aは樹脂注入ゲート51の吐出口から離れているので、フイルム30の上面側に設けても何ら問題ない。また印刷層(第二印刷層33B)をフイルム30の上面側、即ちキートップ本体20を成形する面側に設ける場合は、この印刷層は、樹脂注入ゲート51の吐出口の近傍を除く部分、即ち樹脂注入ゲート51の吐出口から流入する高温高圧の溶融成形樹脂によってこの印刷層が破壊される部分を除く部分、に設けるようにすれば良い。