以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1における組電池を示す斜視図である。
本実施の形態1で説明する組電池は、複数の単電池をズレ防止手段を介在させて積層し、積層方向両面からヒートシンクで加圧して一体的に保持してなるものである。すべての単電池は直列に接続されている。そして、この直列に接続するための接続手段として、電極タブ間に介在させた導電ワッシャを用い、一方、積層された電極タブの絶縁させる電極タブ間に、充電制御回路内蔵ワッシャを介在させている。
以下、具体的に説明する。
この組電池は、積層された複数個の単電池1と、単電池1と共に積層されるヒートシンク2と、単電池1間および単電池1とヒートシンク2との間に配置される高摩擦シート3(図3および4参照)と、ヒートシンク2同士を接続して積層された複数個の単電池1を積層方向の両面から加圧して一体的に保持する加圧ユニット40と、2個の単電池を直列に接続して一組の電池とみなしその電極間に介在された充電制御回路内蔵ワッシャ51を有する。
単電池1は、積層方向に直列に接続されている。単電池1から伸びる2つの電極タブのうち一方のタブは、他の単電池1のタブと嵌合して、電気的および機械的に接続される。また、他方のタブは、タブ間に配置さワッシャおよび充電制御回路内蔵ワッシャを交互に配置することにより、短絡しないように接続されている。詳細は後述する。
以下、各構成について詳細に説明する。
(単電池)
図2は2種類の単電池を示す斜視図、図3は図1に示す組電池のA−A断面図、図4は図1に示す組電池のB−B断面図である。
本実施の形態1では、単電池1は図2に示すように片側の電極タブの違いから2種類のものがある。単電池1aと、単電池1bである。
単電池1a、1bは共に、扁平型に形成された2次電池であり、たとえば、正極板、負極板およびセパレータを順に積層し、電解質としてゲルポリマーを用いた積層型の発電要素(不図示)を内部に複数含むリチウムイオン2リチウムポリマー2次電池である。
組電池においては、単電池1a、1bは、内包する発電要素の積層方向と同じ方向に積層される。
単電池1は、たとえば、三層構造のラミネートフィルムが外装に用いられている。ラミネートフィルムは、ポリアミド樹脂などの樹脂フィルムの間にアルミ箔を挟んで三層に形成されている。2枚のラミネートフィルムのうち1枚がプレス加工により扁平型に形成され、シート状のままのもう1枚と縁で熱融着により貼り合わされる。
プレス加工の際には、ラミネートフィルムは型内へ材料流入する。しかし、材料流入があっても、ラミネートフィルムの最外層は樹脂フィルムで表面摩擦係数が小さいので、ラミネートフィルムが型との摩擦により破損することはない。
貼り合わされたラミネートフィルム内には、発電要素が密閉され、正極タブおよび負極タブが引き出されている。単電池1a、1bは、それぞれ、積層方向に対して直交する方向に伸びる2つの電極タブとして、正極タブ10、14と負極タブ12、16を有する。
単電池1aは、正極タブ10および負極タブ12の一方、たとえば、正極タブ10に2つの穴部11が設けられている。そして、負極タブ12には、穴部13が1つ設けられている。
単電池1bは、単電池1aの正極タブ10の穴部11と嵌合可能な凸部15が負極タブ14に2つ設けられている。そして、正極タブ16には、単電池1bの負極タブ12と同様の穴部17が1つ設けられている。
単電池1a、1bの積層時には、単電池1aの穴部11と、単電池1bの凸部15とが嵌合される。単電池1aの正極タブ10と、単電池1bの負極タブ14が嵌合すると、図3に示すように、正極タブ10から、負極タブ14の凸部15が突き出される。これにより、単電池1a、1bは、相互に位置決めされつつ、電気的に直列接続される。
一方、単電池1aの負極タブ12および単電池1bの正極タブ16は、他のタブ12、16との間に導通ワッシャ50または充電制御回路内ワッシャ51を挟んで、位置決めピン52(図14参照)が挿通されることにより位置決めされ、固定される。
単電池1a、1bが電極タブ10、14で機械的および電気的に接続されている階層では、充電制御回路内蔵ワッシャ51により絶縁され、電極タブ10、14が接続されていない階層では、電極タブ12、16間が導通ワッシャ50で導通されるように、導通ワッシャ50と充電制御回路内蔵ワッシャ51を、交互に配置していくことで、単電池1aと単電池1bとが積層方向に直列に接続されている。
位置決めピン52は、金属棒の表面を樹脂でコーティングまたは被覆して、絶縁処理が施されている。位置決めピン52は、上下からナット53が締め付けられる。これにより、単電池1の電極タブ12、16は、導通ワッシャ50および充電制御回路内蔵ワッシャ51にしっかり挟み込まれる。したがって、電極タブ12、16間の導通または絶縁が確実となる。
(ワッシャ)
図5は、ワッシャ部分を部分拡大図である。
ワッシャは、上記の通り、導通ワッシャ50と充電制御回路内蔵ワッシャ51が有る。
(導通ワッシャ)
導通ワッシャ50は、銅などの導電性金属から形成され、その上下に接触する電極タブ16、12間を電気的に接続する。
(充電制御回路内蔵ワッシャ)
一方、充電制御回路内蔵ワッシャ51は、電圧検知ワッシャ61と、抵抗ワッシャ62からなり、2つの電圧検知ワッシャ61の間に電流制限ワッシャ62が挟まれている。
充電制御回路内蔵ワッシャ51は制御手段であり、単電池1bの正極タブ16および単電池1aの負極タブ12の間に配置されている。この場合、導通ワッシャ50は単電池1aの負極タブ12および単電池1bの正極タブ16の間に配置される。この充電制御回路内蔵ワッシャ51は、これ自体単独で単電池への充放電を制御する制御装置となる。
電圧検知ワッシャ61は、具体的には、たとえば、ツェナーダイオード、バリスター、VRD(シリコンサ一ジアブソーバー)などを使用することができる。一方、電流制限ワッシャ62は、セラミックス製の抵抗体などをワッシャ形状に加工した抵抗ワッシャである。
図6は、電圧検知ワッシャとしてツェナーダイオードを用いた場合における充電制御回路内蔵ワッシャと単電池との等価回路図である。
この等価回路図に示すように、電圧検知ワッシャ61であるツェナーダイオード61aは、直列に接続された2つの単電池1bおよび1aに対して並列に、ダイオードとしての向きが電池の電流の向きと逆方向となるように接続、配置される。また、抵抗体である電流制限ワッシャ62は、ツェナーダイオードと直列に接続される。
図7は、ツェナーダイオードの電圧−電流特性を示すグラフである。
ツェナーダイオードは、周知の通り、所定の電圧(ツェナー電圧Vz)がダイオードの逆方向に加わった場合に逆方向への電流が流れるツェナー特性を有する。
本実施の形態では、ツェナーダイオードのツェナー特性を利用して単電池への過充電を検知している。すなわち、電圧検知ワッシャ61を、2つの単電池に対してダイオードとして逆方向となるように接続することで、この2つの単電池間電圧がツェナー電圧Vz以上となったときに、自動的に電流制限ワッシャ62方向へ電流が流れ、単電池への充電電流の流れがバイパスされるようになる。
ツェナー電圧Vzは、単電池の満充電電圧となるように選択する。ここでは、2つの単電池に対して一つの充電制御回路を取り付けた構成となっているため、たとえば、単電池一つの定格電圧(満充電電圧)が4Vとした場合、ツェナー電圧Vz=4Vのものを2個直列に接続して使用している。これは、図7に示したツェナーダイオードの特性としてツェナー電圧が4〜5Vの素子が最も安定しているために、ツェナー電圧Vz=4Vのものを2個直列に接続して使用しているものである。
これにより、2直列に接続されている単電池の電極間電圧が2つのツェナーダイオードのツェナー電圧の合計値未満である場合は電極間が非導通であり、ツェナー電圧の合計値以上となった場合には電極間が導通になり電流が流れる。
電流制限ワッシャ62は、抵抗体であり、過電圧が生じた場合にこの電流制限ワッシャ62へ電流を流したときに、この抵抗体によって、短絡電流となって急激に電流が流れてツェナーダイオードなどの素子が破壊されるのを防止するために用いている。
用いる抵抗体としては、ツェナーダイオードに流せる定格電流に応じて決めればよく、たとえば、2個の直列に接続された単電池の電圧が8Vの場合、ツェナーダイオードの最大電流が0.1Aとすると、抵抗体は80Ωのものを用いることになる。
なお、ツェナーダイオードに代えて、バリスター、VRDなどを用いた場合でも、素子に応じた電圧電流特性が変化するものの、その作用、すなわち、2つの単電池の間の電圧値が所定値に達した時点で、電流制限ワッシャ62へ電流をバイパスさせることになる。
図8は、電圧検知ワッシャの構造を示す概略図であり、図8(A)はツェナーダイオード61aを用いた場合、図8(B)はバリスター61bまたはVRDを用いた場合である。なお、ツェナーダイオード、バリスター、VRDを、ここでは電圧検知素子と称する。
いずれの場合も、セラミックスなどをワッシャ形状に加工した絶縁支持部材66の中にツェナーダイオード61a(図8(A))、あるいはバリスター61bまたはVRD(図8(B))を埋め込み、このツェナーダイオード61a、あるいはバリスター61bまたはVRDの端子を絶縁支持部材66の両側に設けた導電ワッシャ67に接続した構造である。
なお、制御手段としては、上述したような抵抗体を用いるほかに、定電流回路を用いてもよい。
図9は、定電流回路を用いた例を説明するための等価回路図である。
定電流回路としては、図示するように、たとえば、FET(電界効果トランジスタ)61cを用いる。
ここでは、FET61cのソース(またはドレイン)とゲートを接続してドレインとソースを導電ワッシャに接続し、単電池の電極タブの間に配置している。
FET61cは内部抵抗によって、ツェナーダイオードが導通状態となったとき、すなわち、電極間電圧が単電池の満充電電圧を超えるようになった場合に、FET61cのソース−ドレイン間に電流が流れる。このとき流れる電流は、ゲート電圧に比例するため、一定の電流が電極間に流れることになる。
このようなFET61cを用いた場合に、FET自体をワッシャ形状に加工することはできないので、セラミックするなどの絶縁体66の内部にFET埋め込んでワッシャ形状とし、埋め込まれたFET61cのソース・ドレインを上下の導電ワッシャと接続する。
なお、FETを用いた場合もゲートの閾値電圧やソース・ドレイン間の電流量を調整するために、さらに抵抗体を接続してもよい。
(ヒートシンク)
図10は、2種類のヒートシンクを示す斜視図である。
ヒートシンク2には、図10に示すように、組電池の積層の最外層に配置される外層ヒートシンク2aと、単電池1と共に途中に積層される内層ヒートシンク2bとの2種類がある。
いずれのヒートシンク2a、2bも、空気等の冷媒が通り抜け可能な複数の通風孔20が形成されている。これらの通風孔20は、2枚の板材の表面にそれぞれ複数の溝を形成し、溝同士が合うように2枚の板材を貼り合わせて形成される。
外層ヒートシンク2aは、積層される単電池1の電極タブ10、12、14、16を露出するための切り欠き21が形成されている。該切り欠き21を挟んで、四隅に孔22が形成されている。孔22は、外層ヒートシンク2a間に配置され、単電池1に必要な面圧を加えるための加圧ユニット40(図11参照)を取り付けるために設けられている。
内層ヒートシンク2bには、外層ヒートシンク2aのような孔22はない。内層ヒートシンク2bは、組電池に積層されるときには、単電池1と共に加圧ユニット40による面圧により保持されている。内層ヒートシンク2bは、たとえば、図3、図4に示すように、単電池1が4枚積層されたら、その上に1枚積層されるといった具合に、単電池1間に配置される。これにより、積層の中央の単電池1の発熱も放散できる。
(高摩擦シート)
高摩擦シート3は、図3および図4に太線で示したように、単電池1間または単電池1とヒートシンク2との間に配置される。高摩擦シート3は、シリコンゴムをシート状に形成したものである。シリコンゴムは、たとえば、単電池1同士を直接積層した場合の摩擦抵抗より高い摩擦抵抗を発現する。したがって、単電池1間または単電池1とヒートシンク2との間に介在させることにより、これらの横ズレを防止する。
一方で、高摩擦シート3は、横ズレに対しては高い摩擦力を発現するが、単電池1の積層方向に対しては、ほとんど摩擦力を発現しない。したがって、高摩擦シート3は、単電池1およびヒートシンク2に対しては非接着性を有している。換言すると、高摩擦シート3は、単電池1同士、または単電池1とヒートシンク2とを恒久的に接合するものではなく、所望のときに、それらを積層方向に分離し得る性質を有する。
保持手段4は、最外層に積層される外層ヒートシンク2a(保持プレート)と、外層ヒートシンク2a間に配置される加圧ユニット40と、加圧ユニット40を外層ヒートシンク2aに取り付けるナット41とを含む。
外層ヒートシンク2aは、上述の通り、組電池の最外層に積層され、単電池1を冷却する冷却手段として機能する。その一方で、外層ヒートシンク2aは、中間に積層される単電池1および内層ヒートシンク2bに積層方向の面圧を付与しつつ保持する保持手段の一部としても機能する。保持手段の一部として、外層ヒートシンク2aは、加圧ユニット40により相互に接近される方向の力が加えられる。
加圧ユニット40は、外層ヒートシンク2aに設けられた孔22に挿通されて、ナット41により締結されている。加圧ユニット40の具体的構成は、図11および図12に示される。
図11は加圧ユニットを示す図で、図11(A)は加圧ユニットの全体構成を示す図、図11(B)はバネ保持部の構成を示す図である。また図12は図1のC−C断面図であり、図12(A)は加圧ユニットの初期状態を示す図、図12(B)は加圧ユニット2を外層ヒートシンク2a間に取り付けた様子を示す図である。
加圧ユニット40は、引っ張りコイルバネ42(弾性体)と、引っ張りコイルバネ42の両端を保持するバネ保持部43とからなる。
引っ張りコイルバネ42は、引き延ばされた状態で外層ヒートシンク2a間に取り付けられることによって、収縮しようと作用し、外層ヒートシンク2aを相互に接近させる方向の弾性力を発現する。
バネ保持部43は、本体部44と、引っ張りコイルバネ42のピッチP1よりも大きなピッチP2でねじ山が形成された螺合部45と、螺合部45から引っ張りコイルバネ42の中心に向かって伸びる突合せ部46と、本体部44から伸びて外層ヒートシンク2aに挿通される挿通部47とを含む。
本体部44は、引っ張りコイルバネ42が外れないように、これに当接する。また、本体部44は、加圧ユニット40を組電池に取り付けたときに、外層ヒートシンク2aと当接して、引っ張りコイルバネ42の伸びを定める役割も果たす。
螺合部45は、図示の通り、引っ張りコイルバネ42の端部にねじ込まれて、引っ張りコイルバネ42の内側と螺合し、これを固定する。螺合部45は、図11(B)に示すように、表面にピッチP2のねじ山が形成されている。螺合部45のピッチP2は、引っ張りコイルバネ42のピッチP1より大きい。したがって、螺合部45を図11(B)中矢印の方向にねじ込むことができる。螺合部45をねじ込むことによって、突合せ部46が、引っ張りコイルバネ42の中央に向かって進行する。
引っ張りコイルバネ42の両端から螺合部45をねじ込んでいくと、図10に示すように、両側から進行してきた突合せ部46が突き当たる。この状態で、引っ張りコイルバネ42は自然長より伸ばされ、加圧ユニット40の初期状態として、初期張力が与えられている。
挿通部47は、先端にナット41に締結可能なねじ山が形成されている。挿通部47の頭には、後述する回り止め用のスリット48が設けられている。スリット48に、マイナスドライバーを挿す等して、バネ保持部43を容易に回り止めできる。
以上のような、加圧ユニット40を、外層ヒートシンク2a間に配置すると、図12(A)に示すようになる。
ここで、挿通部47は、外層ヒートシンク2aの孔22に挿通されている。この状態で、一方のバネ保持部43を回り止めしながら、他方のバネ保持部43の挿通部47をナット41で締結する。すると、バネ保持部43がナット41側に引き寄せられる。これを両方のバネ保持部43で行うと、図12(B)に示すように、バネ保持部43が引っ張りコイルバネ42を保持した状態で相対的に引き離され、引っ張りコイルバネ42が外層ヒートシンク2a間に引き伸ばされた状態で保持される。
このように、外層ヒートシンク2a間の幅に合わせて、引っ張りコイルバネ42を引き伸ばすので、ナット41の締め付けトルクに関わらず、引っ張りコイルバネ42による収縮する方向の弾性力が得られる。該弾性力が外層ヒートシンク2aによる単電池1への加圧力となる。
(組み立て手順)
次に、本発明の組電池の組み立て手順を説明する。
図13〜図15は組電池の組み立て手順を示す図である。
図13に示すように、最初に、外層ヒートシンク2a上に高摩擦シート3を配置する。次に、図14に示すように、外層ヒートシンク2a上に、単電池1b、1aの順に積層する。この際、各単電池1a、1b上には高摩擦シート3を配置する。また、積層の際には、単電池1bの負極タブ14の凸部15を、単電池1aの正極タブ10の穴部11に嵌合させる。これにより、単電池1a、1bを一組とする。なお、単電池1a、1bの嵌合しないほうの電極タブ12、16は、その間に充電制御回路内蔵ワッシャ51が挟まれて、位置決めピン52が挿通される。
上記手順で、単電池1a、1bを2枚一組として複数組積層し、さらに、図14に示すように、その上に、ヒートシンク2bを積層する。ヒートシンク2b上にも、高摩擦シート3を配置する。何組かの単電池1a、1bとヒートシンク2bの積層を繰り返した後、最後に図15に示すように、外層ヒートシンク2aを積層する。外層ヒートシンク2a間に、加圧ユニット40を配置し、加圧ユニット40の引っ張りコイルバネ42が外層ヒートシンク2a間で伸びるまで、ナット41で締結する。以上の手順で、図1に示す組電池が組み上がる。
なお、本実施の形態では、縦に積層した組電池を1つだけ例示したが、これに限定されない。複数の単電池1を積層して出来た組電池を、複数個横に並べ、それらを接続することによって、より出力の高い電池モジュールとすることができる。この場合、一の組電池と他の組電池の両者に取り付けられるバスバーにより、電気的に接続する。バスバーは、たとえば、ナット53と導通ワッシャ50との間(図14参照)で、位置決めピン52に取り付けられ固定される。
本実施の形態1の組電池によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態1の組電池では、単電池の電極タブを絶縁するためのワッシャ部分に制御手段となる充電制御回路を内蔵したので、従来のように、単電池の電圧検出のための検出端子や配線を設ける必要がなくなるので、組電池の製作の際の配線作業などが不要となる。
また、本実施の形態1によれば、単電池1間および、単電池1とヒートシンク2との間に、高摩擦シート3が配置されるので、積層されている各単電池1およびヒートシンク2に振動が加わった場合でも電池がずれない。したがって、自動車などに搭載しても、その振動によって、各単電池1およびヒートシンク2のズレや、脱落を防止できる。
また、振動による単電池のズレや脱落がないので、直列または並列に接続された単電池1の電池の電極タブの破損を防止できる。
さらに、高摩擦シート3の配置により単電池1がズレないので、ズレ防止のために保持手段4により単電池1を積層の上下から加圧する加圧力を高める必要がない。したがって、強い加圧力に耐えるために単電池1の外装を強くしなくてもよいので、単電池1を軽量化できる。結果として、組電池全体を軽量化できる。
また、ズレ防止手段として高摩擦シート3を用いたので、単電池1を積層する際に、単電池1と高摩擦シート3とを交互に積層すればよく、容易に組電池を作成出来る。
また、高摩擦シート3は、単電池1に対して非接着性を有するので、単電池1の一つが故障したときでも、任意の単電池1を取り出して交換できる。
また、単電池1の電極タブ12、16に位置決めピンを挿通するための穴部13、17が設けられているので、位置決めピン52の挿通により容易に単電池1同士を位置決めできる。
また、電極タブ14に設けられた凸部15と他の電極タブ10に設けられた穴部11とが嵌合するので、容易に単電池1同士の位置決めができる。また、嵌合により容易に電気的接続が行えるので、積層時に単電池1の重ねる向きを間違えることがなく、組み立てが容易となる。
また、保持手段4が加圧手段および冷却手段として機能するので、単電池1に適切な面圧を加えつつ、該単電池1が発生する熱を放散できる。
また、外層ヒートシンク2a間に取り付けられた加圧ユニット40により外層ヒートシンク2a間が近接されて単電池1を加圧できるので、組電池内部に加圧手段を組み込むことができ、組電池を小型化できる。
また、発電要素の積層方向と同じ方向に単電池が積層されているので、安定的に電流が得られる。
また、単電池1が偏平型電池であるので、組電池の厚さを薄くできる。
以上、本発明を適用した実施の形態1を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。本実施の形態1では組電池を、単電池の一方側の電極タブに相対する凹凸を設けて嵌合させることにより接合し、他方側の電極タブをワッシャを介して接合することとしているため、2つの単電池に対して一つの充電制御回路を取り付けた構成としている。しかしながら、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、たとえば、両側ともワッシャを介して接合し、一つひとつの単電池に対して充電制御回路内蔵ワッシャを取り付けた構成としてもよい。
また、2つ以上の単電池を直列に接続した一組として、その一組の単電池群に対して充電制御回路内蔵ワッシャを取り付ける構成としてもよい。特に、二つ以上複数の単電池を一組として用いることで、一つの単電池の電圧より閾値電圧が高い電圧の電圧検知素子を用いることができるようになる。
なお、上記実施の形態では、ズレ防止手段として高摩擦シート3を用いていたが、これに限定されない。
ズレ防止手段は、単電池1またはヒートシンク2に塗布された粘着性液体から構成されてもよい。ここで、粘着性液体とは、たとえば、ウレタン系接着剤、ラバー液などである。ズレ防止手段として、粘着性液体を採用すれば、単電池1を積層する際に、単電池1の外装表面に粘着性液体を塗布すればよく、容易に組電池を作成できる。
また、ズレ防止手段は、単電池1の外装表面の面粗度を粗くすることにより構成されてもよい。単電池1の外相表面の面粗度を高くする方法としては、サンドブラスト方、レーザーピーニング法、あるいはなどを用いることができる。もちろんサンドペーパーなどによる研磨によっても作成可能である。ズレ防止手段として、単電池1の外装表面の面粗度を粗くすることを採用すれば、順次単電池1を積層しただけで、それらのズレを防止できる。
また、上記実施の形態では、単電池1aの正極タブ10に穴部11を、単電池1bの負極タブ14に凸部15を、それぞれ、形成していたが、これに限定されない。穴部および凸部を設ける電極タブを正負逆転してもよい。また、凸部15に嵌合する穴部11に代えて、凹部を電極タブに形成してもよい。
また、上記実施の形態では、単電池1の一方の側に伸びる電極タブを凸部15および穴部11の嵌合により接続し、他方の側を充電制御回路内蔵ワッシャ51および導通ワッシャ50により接続していたが、これに限定されない。両側を嵌合により接続し、または絶縁/導通ワッシャにより接続してもよい。または、これらによらず、電極タブを超音波溶接により接合してもよい。
また、上記実施の形態では、高摩擦シート3をシリコンゴムだけで形成していたが、これに限定されない。たとえば、PET(ポリエチレンテレフタラート)からなる基材上にシリコンゴムを配置したものでもよい。このように、基材を設けることによって、高摩擦シート3の剛性が向上し、ヒートシンク2および単電池1表面上に配置する際の作業性が向上する。
基材を採用する場合、基材に接着剤を塗布し、単電池1またはヒートシンク2上に接着してもよい。この場合、高摩擦シート3は、基材側では単電池1またはヒートシンク2と接着するが、シリコンゴム側では接着しない。これにより、所望のときに、積層上下の単電池1同士、または単電池1とヒートシンク2とを分離できる。
[実施の形態2]
実施の形態2で説明する組電池は、フレームに4個の単電池をその幅方向に配列し、このフレームを24枚積層して電池ユニットを構成し、この電池ユニットを積層方向両面からヒートシンクで加圧して一体的に保持してなるものである。組電池ユニットは96個の単電池を有しているが、すべての単電池はフレームやヒートシンクに設けられた接続手段によって直列に接続されている。そして、この直列に接続するための接続手段として、電極タブ間に介在させた導電ワッシャを用い、一方、積層された電極タブの絶縁させる電極タブ間に、充電制御回路内蔵ワッシャを介在させている。
実施の形態2の組電池は概略以上のような構造となっているが、以下にこの組電池の構造とその製造手順を図面に基づいて詳細に説明する。
(組電池の構造)
図16は本発明にかかる組電池の外観を示す斜視図、図17は図16に示した組電池の主要な構成要素の積層状態を示す図16A−A方向の模式的な部分断面図、図18は図17の一部拡大断面図、図19は図16に示した組電池のバスバーと通しボルトとの接続関係を示す図、図20は図16に示した組電池を構成する単電池相互間の接続状態を模式的に示す図である。
図16に示すとおり、本実施の形態2における組電池100は、板形状のフレームがその厚み方向に複数個積層されてなる電池ユニット200を、保持手段として機能するヒートシンク300、350でその積層方向の両面から挟んで加圧し一体的に保持したものである。
図示されていないフレームは4個の扁平状の単電池を並列に配置するため4箇所の保持部を有している。組電池100はフレームが24枚積層され、積層方向6枚おきに内層ヒートシンク325が介挿される。したがって、組電池100は4個並列に配置された単電池がそれぞれ24個ずつ積層されており、合計96個の単電池を有している。
ヒートシンク300および350は両ヒートシンクを連結する6個の加圧ユニットをナット310A〜310Fで取り付けることによって固定する。加圧ユニットは引っ張りコイルばねの両端にナット310A〜310Fで固定されるシャフトを取り付けたものであり、これをヒートシンク300および350間に取り付けることによって電池ユニット200を構成するすべての単電池に対して積層方向に適切な面圧を与えている。
組電池100の積層構造は図17および図18に示すとおりである。フレーム210(充電制御回路内蔵ワッシャ埋め込みフレーム)の一端部には充電制御回路内蔵ワッシャ212が埋め込まれ、フレーム210の周囲には単電池214の周縁部216を支持する周縁支持部218が形成されている。フレーム210において周縁支持部218によって囲まれているフレーム210の中央部分は開口され、積層方向に隣接する要素(ヒートシンク350および単電池224)と単電池214の外装面とが直接接触するようになっている。フレーム210の他端部には単電池214の電極タブ215Bを、積層方向に隣接する単電池224の電極タブ225Bと超音波溶接するための開口部217Aが設けられている。単電池214の電極タブ215Aは充電制御回路内蔵ワッシャ212と接触している。なお、充電制御回路内蔵ワッシャ212の厚みは、フレーム210の厚みよりも厚く単電池214の厚みよりも薄くしてある。つまり、充電制御回路内蔵ワッシャ212の厚みはフレーム210と単電池214の厚みの間となるようにしている。組電池100を構成するすべての充電制御回路内蔵ワッシャ埋め込みフレームはこのような厚み関係の充電制御回路内蔵ワッシャを使用している。
フレーム220(導通ワッシャ埋め込みフレーム)の一端部には導通ワッシャ222が埋め込まれ、フレーム220の周囲にはフレーム210と同様の周縁支持部228が形成され、また、周縁支持部228によって囲まれているフレーム220の中央部分は開口されている。フレーム220の他端部にはフレーム210と同様の開口部217Bが設けられている。単電池224の一方の電極タブ225Aは導通ワッシャ222と接触している。なお、導通ワッシャ222の厚みは、フレーム220の厚みよりも厚く単電池224の厚みよりも薄くしてある。つまり、導通ワッシャ222の厚みはフレーム220と単電池224の厚みの間となるようにしている。このような厚み関係とすれば、単電池224に所望の面圧を与えつつ電極タブ225Aと導通ワッシャ222とを接触させることができるからである。組電池100を構成するすべての導通ワッシャ埋め込みフレームはこのような厚み関係の導通ワッシャを使用している。
フレーム210に位置決め支持されている単電池214の電極タブ215Bとフレーム220に位置決め支持されている単電池224の電極タブ225Bは、それぞれのフレームに設けられている開口部217A、217Bの両側から図示しない冶具で加圧され超音波溶接が施されている。
フレーム230(充電制御回路内蔵ワッシャ埋め込みフレーム)の一端部には充電制御回路内蔵ワッシャ232が埋め込まれ、フレーム230の周囲にはフレーム210と同様の周縁支持部238が形成され、また、周縁支持部238によって囲まれているフレーム230の中央部分は開口されている。フレーム230の他端部にはフレーム210と同様の開口部217Cが設けられている。単電池234の一方の電極タブ235Aは充電制御回路内蔵ワッシャ232と接触している。フレーム220とフレーム230を積層すると、開口部217Cの存在によって、単電池234の電極タブ235Bが溶接済みの下側の電極タブ215B、225Bと接触してしまうので、電極タブ225Bの上側には絶縁テープ250Aが貼り付けてある。
フレーム265(導通ワッシャ埋め込みフレーム)の一端部には導通ワッシャ266が埋め込まれ、このフレーム265の上に積層される内層ヒートシンク325の載置部273が形成されている。また、フレーム265の周囲にはフレーム210と同様の周縁支持部278が形成され、また、周縁支持部278によって囲まれているフレーム265の中央部分は開口されている。フレーム265の他端部にはフレーム210と同様の開口部277Dが設けられている。単電池274の一方の電極タブ275Aは導通ワッシャ266と接触している。なお、導通ワッシャ266の厚みは、充電制御回路内蔵ワッシャまたは導通ワッシャの厚み(充電制御回路内蔵ワッシャの厚み=導通ワッシャの厚み)に内層ヒートシンク325の厚みを加えた厚みに等しくしている。
以上のようにして、下側の層から(充電制御回路内蔵ワッシャ埋め込みフレーム)−(導通ワッシャ埋め込みフレーム)−(充電制御回路内蔵ワッシャ埋め込みフレーム)−(導通ワッシャ埋め込みフレーム)−(充電制御回路内蔵ワッシャ埋め込みフレーム)−(導通ワッシャ埋め込みフレーム)という順番でフレームが6枚積層される。
フレーム265の載置部273には内層ヒートシンク325が載せられる。内層ヒートシンク325と導通ワッシャ266とはフレーム265によって絶縁されている。
内層ヒートシンク325の上側にはさらに(6枚のフレーム)−(内層ヒートシンク)−(6枚のフレーム)−(内層ヒートシンク)−(6枚のフレーム)−ヒートシンク300がこの順番で積層される。ヒートシンク300の直下のフレーム240は、フレーム220と同様の構成となっている。つまり、フレーム240には導通ワッシャ242が埋め込まれ、フレーム210と同様の周縁支持部248が形成され、また、周縁支持部248によって囲まれているフレーム240の中央部分は開口されている。フレーム240の他端部にはフレーム210と同様の開口部217Eが設けられている。単電池244の一方の電極タブ245Aは導通ワッシャ242と接触している。図示はしていないが、単電池244の電極タブ245Bはその下側に位置する単電池の電極タブと超音波溶接されている。電極タブ245Bの上側にはヒートシンク300との絶縁を図るため絶縁テープ250Bが貼り付けられている。
積層されたすべてのフレームは通しボルト270とボルト271とによって固定される。ナット271と導通ワッシャ242との間には絶縁ワッシャ278、ワッシャ279が介在しているが、絶縁ワッシャ278はバスバー262の絶縁用として、ワッシャ279は絶縁ワッシャ278がセラミック製のためその破損防止用としてそれぞれ用いられる。
ヒートシンク350には積層されている単電池をその単電池の配列方向に隣接する単電池と電気的に接続するためのバスバー260が設けられている。バスバー260は絶縁ワッシャ261によってヒートシンク350と絶縁されている。バスバー260にはその周囲を絶縁処理した通しボルト270が機械的に接続されている。組電池100に存在しているバスバー260、262、264と通しボルト270とは図19に示すように連結されている。通しボルト270はヒートシンク350の底面から立設され、通しボルト270は積層されている単電池同士をバスバー260、262、264によって直列に接続する。
図17および図18において、これらの図が図19のA−A断面を表しているとするならば、符番262は強電端子450Aに繋がる部材263を、これらの図が図19のB−B断面を表しているとするならば、符番262はバスバーをそれぞれ表すことになる。
ヒートシンク300と350が電池ユニット200を介在させた状態でボルトおよびナット310A〜310Fによって固定され、6本の通しボルトが6個の連結端子で締め付けられると、組電池100を構成する単電池は図20に示すように直列に接続される。
組電池100は、24個の単電池が積層された4列の単電池積層体を有しているが、図20に示すように、各単電池積層体400、410、420、430は、単電池がその積層方向にすべて直列に接続されている。すなわち、単電池積層体400の左側の単電池同士の接続(図中の×印部分)は超音波溶接によって行われ、単電池同士の絶縁(図中の四角印部分)は絶縁テープ(図17の250A、250B)によって行われている。一方、単電池積層体400の右側の単電池同士の接続(図中の○印部分)は導通ワッシャ(図17の222、266など)によって行われ、単電池同士の絶縁(図示三角印部分)は充電制御回路内蔵ワッシャによって行われている。したがって、組電池100が組み上がると、単電池積層体400を構成するすべての単電池が直列に接続される。他の単電池積層体410、420、430も同一の構造によりすべての単電池が直列に接続される。
各単電池積層体400、410、420、430は、さらにヒートシンク(図17の300、350)に取り付けられたバスバー260、262、264によって直列に接続される。したがって、組電池100を構成するすべての単電池は直列に接続される。このような接続方法を採用すると、電力端子450A、450Bの接続部を一方向(ヒートシンク300の上側)のみにすることができるので、組電池設置後の電力配線が行いやすくなり生産性が向上する。
組電池100の全体の構造は以上のとおりである。次に、組電池を構成する主要な構成要素について詳細に説明する。
(単電池)
本実施の形態で用いる単電池214は、図21に示すような矩形状の扁平形積層二次電池であり、電極タブの形状が異なるのみで、基本的には、前述した実施の形態1と同様に、ラミネートフィルムによって外装され、電解質としてゲルポリマーを用いたリチウムポリマー2次電池である。
この単電池214は、長手方向両側面から電極タブ215A、215Bが引き出されている。電極タブ215Aは+の電極タブでありアルミニウム箔で構成されている。一方、電極タブ215Bは−の電極タブであり銅箔で構成されている。両電極タブ215A、215Bには通しボルト(図17の270)を挿入するための挿入孔272A、272Bが開口されている。なお、熱融着接合されている単電池214の周縁部216はフレームに形成されている保持部で位置決め保持される。単電池の積層方向は、この発電要素を構成する正極板と負極板の積層方向と同一の方向である。
(フレーム)
本実施の形態で用いるフレームは、図22Aに示すような充電制御回路内蔵ワッシャ埋め込みフレーム210、図22Bに示すような導通ワッシャ埋め込みフレーム220の2種類である。
充電制御回路内蔵ワッシャ埋め込みフレーム210は、その一端部210Aに充電制御回路内蔵ワッシャ212が埋め込まれている。充電制御回路内蔵ワッシャ212の厚みはフレーム210の厚みよりも若干厚く単電池の厚みよりも薄くなっている。
導通ワッシャ埋め込みフレーム220は、その一端部220Aに導通ワッシャ222が埋め込まれている。導通ワッシャ222の厚みは充電制御回路内蔵ワッシャと同様、フレーム220の厚みよりも若干厚く単電池の厚みよりも薄くなっている。導通ワッシャは、フレームに保持されている単電池の一方の電極タブを積層方向に隣接するほかのフレームに保持されている単電池の一方の電極タブと電気的に接続する第1接続手段としての機能を備えている。
上記の各フレーム210、220は、図22に示すように、1の平面上に配列される4個の単電池を位置決め保持する保持部を備えている。すなわち、単電池214(図6参照)の周縁部216の少なくとも1部を支持する周縁支持部218、228と、単電池214を位置決めする位置決め部とを備えている。なお、位置決め部とは、周縁支持部218、228の周囲に形成され、単電池214の周縁端がはまり込むように形取られている部分である。
単電池はフレームの位置決め部によってその位置が固定され、周縁支持部でその周縁部が支持される。単電池の周縁部とフレームの周縁支持部は両面テープで仮止めされる。したがって、製造段階において単電池をフレームに載置した状態で容易に搬送することができる。
(充電制御回路内蔵ワッシャ)
ここで、充電制御回路内蔵ワッシャ212、232は、前述した実施の形態1における充電制御回路内蔵ワッシャ(図5〜9参照)と同様である。
すなわち、実施の形態1において詳述したとおり、ツェナーダイオード、バリスター、VRDなどの素子を用いた電圧検知ワッシャと抵抗体である抵抗ワッシャの組み合わせ、または定電流回路としてFETを用いた充電制御回路内蔵ワッシャなどである。
この充電制御回路内蔵ワッシャによって、通常状態では充電制御回路内蔵ワッシャ212、242が有る電極間は絶縁状態が保たれ、2直列分の単電池の電圧が過充電となる所定電圧以上となったときには、その部分の電極間がバイパスされることになる。
(ヒートシンク)
本実施の形態で用いるヒートシンクは、図16に示したとおり、最上段に位置される外層ヒートシンク300、積層されているフレーム間に少なくとも1以上介挿される内層ヒートシンク325、最下段に位置される外層ヒートシンク350の3種類である。
最下段の外層ヒートシンク350は、図23に示すように、積層されるフレームを位置決めするためのロケートピン510、520を備えている。もちろんフレームにはこれらのロケートピン510、520が挿入されるロケートピン挿入孔が開口されている。
外層ヒートシンク350にフレームを積層する場合には、フレームのロケートピン挿入孔をこれらのロケートピン510、520に挿入しフレームの位置決めを行う。また、外層ヒートシンク350の一端部には隣り合う単電池積層体同士、例えば単電池積層体400と410(図20参照)を電気的に直列接続するためのバスバー260、264を埋め込むバスバー埋め込み溝360、370が設けられている。バスバー埋め込み溝360、370には通しボルト270(図20参照)を外層ヒートシンク350の底面から立設するための通しボルト挿入孔362、364、372、374が開口されている。さらに、外層ヒートシンク350には、電池ユニット200に適切な面圧を付与するとともに電池ユニット200を外層ヒートシンク300、350と一体的に保持するための保持手段としての機能を有する加圧ユニットの取り付け孔380〜385が設けられている。
これらの取り付け孔380〜385には図24に示すように、6個の加圧ユニット530〜535が取り付けられる。加圧ユニット530〜535は、外層ヒートシンク300と350で電池ユニット200を挟み込むときに、電池ユニット200に付与する面圧を容易に微調整できるようにするものである。外層ヒートシンク300、350の材質としては銅、アルミニウム、マグネシウムなどが適切であるが、放熱性や軽量化を考慮するとアルミニウムが最適である。外層ヒートシンク350は、放熱効率を向上させるためその長手方向に貫通する通気口352が形成されている。
加圧ユニット530〜535は実施の形態1と同様であり(図11および12参照)、引っ張りコイルバネ42(弾性体)と、引っ張りコイルバネ42の両端を保持するバネ保持部43などからなる。
内層ヒートシンク325は、図25に示すように、ロケートピン510、520を貫通するロケートピン貫通孔330、332、加圧ユニット530〜535を貫通させる加圧ユニット貫通孔335〜340、通しボルトを貫通させる通しボルト貫通口341〜344が開口されている。
内層ヒートシンク325は外層ヒートシンク350に取り付けられているロケートピン510、520をロケートピン挿入孔330、332に挿入することで位置決めされる。内層ヒートシンク325は、電池ユニット200に等間隔で3枚介挿される。内層ヒートシンク325の材質としては外層ヒートシンク350と同一のものでもよいが、軽量化を考慮して表面が波型形状に加工された樹脂を用いてもよい。
最上段の外層ヒートシンク300は、図26に示すように、ロケートピン510、520を挿入するロケートピン挿入孔312、314、加圧ユニット530〜535の上に取り付けられているボルトを貫通させそれをナット310A〜310Fで固定するためのボルト挿入孔315〜320、通しボルトを貫通させる通しボルト貫通口321、322、電力端子450A、450B(図3参照)を取り付けるための電力端子取り付け孔323、324が開口されている。
外層ヒートシンク300はロケートピン挿入孔312、314にロケートピン510、520を挿入することで位置決めされる。外層ヒートシンク300を位置決めするときに加圧ユニット530〜535の上に取り付けられているボルトをボルト挿入孔315〜320に挿入し、ナット310A〜310Fで外層ヒートシンク300を固定する。この固定によって外層ヒートシンク300と350が電池ユニット200と一体化される。通しボルト貫通口321、322には図示上から下方向に向けて通しボルトが挿入される。この通しボルトにはバスバー262(図20参照)が取り付けられる。電力端子取り付け孔323、324には電力端子450A、450Bが取り付けられ、これらの電力端子が充電装置または動力源のモータに接続される。
外層ヒートシンク300と350は、電池ユニット200をその積層方向の両面から加圧して一体的に保持する保持手段として機能し、この保持手段は、電池ユニット200を構成するすべての単電池に積層方向の面圧を付与する加圧手段としての機能と、電池ユニット200から生じる熱を放散する冷却手段としての機能とを備えている。また、外層ヒートシンク300と350は、電池ユニット200を構成する1つの単電池積層体(例えば図3の電池積層体400)を別の単電池積層体(例えば図3の電池積層体410)に電気的に接続する第3接続手段としてのバスバー(例えば図3の260)を取り付ける機能を備えている。
(組電池の製造手順)
次に、本実施の形態にかかる組電池の製造手順を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、図27に示すように、電池ユニット200の最下層に位置されることになるフレーム210に単電池214A〜214Dを載置する。単電池を載置するときには、各単電池の周縁部216に厚みの非常に薄い両面テープを貼り付け、周縁部216をフレーム210の周縁支持部218に載置させてその位置決め部にはめ込むようにする。これによって4個の単電池はフレームに仮止めされ、製造現場での搬送が可能になる。4個の単電池がフレームに載置された状態は図28に示すとおりであるが、単電池をフレームに配列させるときには、その電極タブ215の極性が図27、図28に示すように、単電池の配列方向に正負交互となるようにする。つまり、単電池の極性が+−交互に並ぶように単電池の向きを変えながら配列する。
以上の単電池の配列を、電池ユニット200を構成することになる24枚のフレームに対して行う。なお、単電池を配列するときには図28に示すようにその極性が、配列方向が正負交互となるようにするだけではなく、フレームの積層方向にもその極性が正負交互となるように注意する。例えば、最下層位置されるフレームに載置する単電池の極性が図28に示すように手前左端から「+」、「−」、「+」、「−」と並んでいるのであれば、そのフレームの上に積層されるフレームに載置する単電池の極性は手前左端から「−」、「+」、「−」、「+」となるように配列する。単電池をこのように配列しないと、最終的に図20に示すような回路を構成することができないからである。
次に、充電制御回路内蔵ワッシャが埋め込まれているフレーム210に導通ワッシャが埋め込まれているフレーム220を図30に示すように重ねる。重ねるときには、導通ワッシャと充電制御回路内蔵ワッシャが取り付けられている側を同一方向にして重ねる。フレームの導通ワッシャと充電制御回路内蔵ワッシャが取り付けられていない側の端部には図27に示すように開口部217Aが形成されている。フレーム210の下側およびフレーム220の上側の開口部217Aに超音波溶接装置の冶具を挿入し、フレーム210とフレーム220に載置されている単電池の電極タブをその冶具で挟んで超音波溶接を行う。この超音波溶接は4組の単電池の片側の電極タブ215、225に対して行う。
電極タブ同士の接合に超音波溶接を用いるのは次の2つの理由からである。超音波溶接は、接合される部分に高周波振動を与えることによって金属の原子を拡散させ、再結晶させることによって機械的な接合を行うため、同種、異種の金属の重ね溶接に対して非常に効果的である。本実施の形態で用いている単電池は、その一方の電極タブがアルミニウム箔であり、他方の電極タブが銅箔である。また、バスバーは銅製である。したがって、電極タブ同士の接合は異種金属同士の接合になる。これがまず1つ目の理由である。次に、超音波溶接は、接合時に高い温度に達することなく、接合面の最高温度は融点の35〜50%程度に抑えることができるため、高温溶接を行ったときに生じる母材の溶融やもろい鋳造組織が形成されることはない。本実施の形態で用いている単電池は、外装がラミネート材であり電極タブをあまり高い温度に上げることができないため、単電池を高温状態にさらすことなく、非常に薄い金属で形成されている電極タブを接合するのには最適である。これが2つ目の理由である。
ここまでの作業によって制御回路内蔵ワッシャが埋め込まれているフレーム210と導通ワッシャが埋め込まれているフレーム220を1組とするフレームユニットが形成される。
この溶接は、電池ユニット200を構成することになる12組のフレームユニットに対して行う。溶接作業が終了すると、フレームユニットが積層されて行くときに、フレームユニット間で電気的な絶縁を図るため、図29に示すように電極タブ215の外側の面に絶縁テープ250Aを貼り付ける。
次に、図31に示すように、外層ヒートシンク350にロケートピン510、520を立て、加圧ユニット530〜535を取り付け、バスバー260、264を設置して通しボルト270、275、280、285を取り付ける。そして、上記のフレームユニット550に設けられているそれぞれの孔に図に示すようにロケートピン510、520、加圧ユニット530〜535、通しボルト270、275、280、285を通し、フレームユニット550を外層ヒートシンク350上に載せる。フレームユニット550は導通ワッシャが取り付けられているフレームを下側にして載置する。フレームに取り付けられている導通ワッシャは、バスバー260または264と直接接触し電気的に接続される。バスバー260、264は外層ヒートシンク350との間は、絶縁シールなどの絶縁部材によって絶縁されている。
上記のようにしてフレームユニット550を3組、導通ワッシャが取り付けられているフレームを下側にして図32のように積層する。3組のフレームユニットが積層されると6個の単電池が積層されることになる。フレームは単電池を支持する周縁部以外が開口されているので、積層方向に積み重ねられる単電池の外装面同士は直接接触する。3組のフレームユニットの上には図に示すように内層ヒートシンク325が積み重ねられる。したがって、6個の単電池が外層ヒートシンク350と内層ヒートシンク325に挟まれる。単電池の外装面同士は直接接触しているので、単電池の内部で発生した熱は外層ヒートシンク350および内層ヒートシンク325に効率的に伝達されて放熱される。もちろん熱の一部はフレームから間接的にこれらのヒートシンクに伝えられる。放熱性を考慮すれば、フレームの材料は熱伝達特性のよいものを使用することが望ましい。
さらに、内層ヒートシンク325の上に(3組のフレームユニット)−(内層ヒートシンク325)−(3組のフレームユニット)−(内層ヒートシンク325)−(3組のフレームユニット)を積み重ね、最後に外層ヒートシンク300を重ねて、ナット310A〜310F(図16参照)で外層ヒートシンク300を仮止めし、通しボルト270、275、280、285をナットで仮止めする。
なお、フレームユニットを積層するごとに直列接続される単電池の数が増加して行くため、作業者が取り扱う電圧も増加する。作業を安全に行うためには、その電圧を40V以下とすることが望ましい。したがって、本実施の形態における製造過程では、1枚のフレームユニットが積層される度に通しボルト(図20の270)に紙製の絶縁ワッシャを挿入している。このようにすれば、各フレームユニットは絶縁させることになるので、作業者が高電圧にさらされずに済む。
以上のようにして組電池100が組み立て、フレームユニット間に介在されている紙製の絶縁ワッシャを取り除き、最後に仮止め状態のすべてのナットを締め込むと、組電池100を構成するすべての単電池は、図20に示したように電力端子450A、450B間で直列に接続される。単電池1個の電圧は3V程度であるので、電力端子450A、450B間には300V弱の高電圧が得られる。
以上のように、本実施の形態2では、単電池の一方の電極タブを超音波溶接し、他方の電極タブを通しボルトで固定したが、両側の電極タブを通しボルトで固定するようにしてもよい。両側の電極タブを通しボルトで固定する場合には、通しボルトに導通ワッシャと充電制御回路内蔵ワッシャとを交互に入れて隣接する電極タブ同士を導通させ、2直列分の単電池の電極間に電圧制御回路を入れることになる。
本実施の形態2の組電池によれば、以下の効果を奏する。
以上のように実施の形態2によれば、フレームによって複数の単電池を保持した上で、さらにこのフレームによって保持された複数の電池ユニット積層することで、多くの単電池を一組の組電池をすることができ、そして、フレーム内に制御手段となる充電制御回路を内蔵した充電制御回路内蔵ワッシャを埋め込むこととしているので、従来のように、単電池の電圧検出のための検出端子や配線を設ける必要がなくなるので、組電池の製作の際の配線作業などが不要となる。
また、本実施の形態2によれば、単電池間に隙間を設けることなく積層し、必要放熱量に応じた数の内層ヒートシンクを介在させ、各単電池に適切な面圧を付与しているので、小型でエネルギー密度の高い自動車搭載用電池が構成できる。
さらに、隙間の存在しない堅固な構造であるので、剛性が高く耐振動性に優れている。また、その組み立てはフレームユニットを単に積み重ねてボルト締めするだけでよいので、組み立て作業性も良好である。
なお、本発明にかかる組電池は耐振動性、放熱性が特に優れ、また、小型軽量であるので、自動車用の電池に限られず、環境の劣悪な現場で作業を行うロボット用電源、工事現場用電源としても利用することができる。