JP4372945B2 - アシストグリップ取付部の衝撃吸収構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車内に設置されるアシストグリップ取付部の衝撃吸収構造に係り、特に、アシストグリップ取付部による乗員への衝撃を緩和するための衝撃吸収構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より自動車のサイドレール部分における各種の衝撃吸収構造が提案されている。このうち、特開平10−181490号公報記載の吸収構造では、アシストグリップがブラケットを介してルーフサイドレールに取り付けられている。このブラケットは、アシストグリップを介して車室外方へ荷重が加わった場合に変形する立ち上がり部と、車室内方への荷重が加わった場合に変形に対して抵抗を現すフランジ部とを有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したサイドレールそのものには、車室内側から加わる衝撃を吸収する機能がなく、そのような衝撃によりアシストグリップを取り付けているボルトの先端が、サイドレールの表面にまで達した場合は、サイドレールの変形が少ないために衝撃荷重が短時間のうちにピークに達し、車室内方から加わる衝撃の吸収が不十分となる。
【0004】
本発明は、このような諸事情に対処するために提案されたものであって、簡単な構造で衝撃吸収効果を十分発揮することができ、且つ車体の組立作業の効率化を図ることが可能なアシストグリップ取付部の衝撃吸収構造を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、サイドレールアウタ及びサイドレールインナを備え、車体の天井部分の骨格の一部を構成するサイドレールに、アシストグリップ取付用ボルトが固定されるメンバを配設し、前記サイドレールインナに連続して延在する角部分のうち前記アシストグリップ取付用ボルトが対向する角部分に、他の角部分より曲率半径の大きな曲面形状、或いは平面形状の衝撃吸収部を形成することによって、前記アシストグリップ取付用ボルトの先端が該衝撃吸収部に当接した際に、該サイドレールインナの変形を促進して衝撃を吸収するようにしている。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るアシストグリップ取付部の衝撃吸収構造の好適な実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は車室内におけるアシストグリップの取付位置を示した斜視図、図2は車内に設置されたアシストグリップの取付状態を示す説明図である。これらの図に示されるように、アシストグリップ10は、助手席及び後席の側方上部に設置され、走行時に乗員がアシストグリップ10を掴むことによって、自動車がカーブした場合やブレーキング時等に、身体を安定させるために使用する。
【0010】
図3は、一実施形態に係るアシストグリップ取付部の衝撃吸収構造が適用された自動車の車体の天井部分を構成するサイドレールを示した図、図4〜図7はサイドレールとアシストグリップとの位置関係を示す断面図である。
図3に示されるように、サイドレール12は、サイドレールアウタ14と、サイドレールインナ16とから構成されている。サイドレール12は、サイドレールアウタ14及びサイドレールインナ16を接合することによって、構造部材としての基本的な骨格が形成され、車体の天井の側部を前後方向に亘って配設されている。サイドレールインナ16の所定箇所には、アシストグリップ10の前端部及び後端部を固定するためのメンバ18がスポット溶接によって接合されている。
【0011】
図4に示されるように、メンバ18には、アシストグリップ10が、車室側から挿通されたボルト20にナット22を螺合させることによって取り付けられ、取付後のボルト20には図示しないカバーが取り付けられ、ボルト20が車室内に露出しないようになっている。また、サイドレール12及びメンバ18は、車室側において内装材であるトリム26によって覆われている。アシストグリップ10の把持部は、未使用時、トリム26に対して平坦に密着して突起物とならないようになっている。
【0012】
図3に示されるように、サイドレールインナ16のアシストグリップ10の取付部のうち、後端部付近(図3中右側)には1対の変形促進孔28が穿設されている。このため、サイドレールインナ16は、車体の剛性を損なわない範囲で、車室内方から加わる荷重によって変形し易い状態となる。
更に、図3及び図4に示されるように、サイドレールインナ16の後端部には、ボルト20の先端が対向するサイドレールインナ16の角部近傍部分に衝撃吸収部32が形成されている。この衝撃吸収部32は、それに連続するサイドレールインナ16の角部の他の部分に対して曲率半径が大きくなるように形成され、車体の剛性を低下させない範囲で車室内側からの衝撃によって変形し易いように構成している。このため、アシストグリップ10に車室内側から荷重がかかった場合に、サイドレールインナ16は、変形促進孔28が穿設されていること、及び衝撃吸収部32との複合的作用により、ボルト20の進入に対して容易に変形するので、衝撃吸収を効果的に行うことができる。
【0013】
一方、アシストグリップ10の前端部付近(図3中左側)には、図3及び図5に示されるように、プレス加工により衝撃吸収用の段付面30を設けている。即ち、サイドレールインナ16におけるボルト20の先端と対向する部分に段付面30を形成し、この段付面30を衝撃吸収用のクラッシャブルゾーンとして機能させ、サイドレールインナ16の強度を損なうことなく、車室側から加わる衝撃の吸収を可能としている。当該構造によれば、鋼板の厚さや段付面30の面積や深さを調整することによって、段付面30の座屈強度及び座屈開始時間をきめ細かく設定することができる。
【0014】
段付面30による衝撃吸収時の作用について、図5〜図7に基づいて説明する。まず、図5はアシストグリップに荷重が入力する直前の状態であり、車室内からアシストグリップ10に荷重が入力すると、図6に示されるように、メンバ18が座屈してアシストグリップ10が矢印方向に移動し、ボルト20の先端が段付面30に当接する。更に、ボルト20が進入すると、図7に示されるように、段付面30が大きく変形して衝撃を吸収する。
【0015】
前述したように、本実施形態の衝撃吸収構造では、サイドレールインナ16に対して車室側から荷重が加わった際に衝撃吸収部32によってサイドレールインナ16の変形を促進し、且つ変形に要する時間を長くとることができる。このため、効率よく衝撃吸収が行われる。
【0016】
図8は、ダミーを使用した衝撃実験の結果を示したグラフであって、サイドレールに対策の施されていない従来の車体構造と、本実施形態の衝撃吸収構造が適用された車体構造とを比較したものである。横軸には車体の変形量を、縦軸にはダミーに加わる荷重を表している。
【0017】
図8のグラフにおいては、実線で示した結果が従来の対策の施されていない車体構造の計測結果であり、一点鎖線で示した結果が本実施形態による衝撃吸収構造が採用されている車体の計測結果を示している。同図のグラフによれば、本実施形態では、車体の変形量が多くなり、且つダミーに加わる衝撃荷重が大幅に低減されていることが分かる。これにより、本実施形態は車体の衝撃吸収能力を大幅に高めることが証明されている。
【0018】
以上説明したように、本実施形態の衝撃吸収構造によれば、サイドレールインナ16に、衝撃吸収を行わしめる衝撃吸収部32を形成している。このため、アシストグリップ10に衝撃荷重が作用した場合に、サイドレールインナ16は、その衝撃を吸収しながら変形するため、乗員の安全性をより高めることができる。
【0019】
なお、変形促進孔28、段付面30、及び衝撃吸収部32のうち、その1つを適用した場合、2つを組み合わせて適用した場合、3つ全てを組み合わせて適用することが可能であり、その組み合わせは、車体の大きさや、車種によって、最適なものを適宜選択すればよい。また、図4において、衝撃吸収部32を曲面状に形成しているが、これに限らず、サイドレールインナ16のボルト20に面する部分の角部を平坦状に形成することも可能である。
【0020】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、サイドレールの構造を複雑化することなく、アシストグリップ取付部に作用する衝撃を効率よく吸収することができる。また、サイドレールの構造が簡単化されることにより、車体組立時の作業効率が向上し、製品のコストダウンを図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】車室内におけるアシストグリップの取付位置を示した概略斜視図である。
【図2】車内に設置されたアシストグリップの取付状態を示す説明図である。
【図3】本発明に係るアシストグリップ取付部の衝撃吸収構造の一実施形態が適用された自動車の車体の天井部分を構成するサイドレール付近を示した概略斜視図である。
【図4】図3におけるA−A線に沿った矢視断面図であって、図3の衝撃吸収構造におけるサイドレールとアシストグリップとの位置関係を示している。
【図5】図3におけるB−B線に沿った矢視断面図であって、図3の衝撃吸収構造におけるサイドレールとアシストグリップとの位置関係を示している。。
【図6】図5の衝撃吸収構造において、衝撃が加わって変形した状態を示す断面図である。
【図7】同じく、図5の衝撃吸収構造において、更に変形した状態を示す断面図である。
【図8】一実施形態に係るアシストグリップ取付部の衝撃吸収構造において、ダミーを使用した衝撃実験の結果を示したグラフである。
【符号の説明】
10 アシストグリップ
12 サイドレール
14 サイドレールアウタ
16 サイドレールインナ
18 メンバ
20 ボルト
22 ナット
26 トリム
28 変形促進孔
30 段付面
32 衝撃吸収部

Claims (1)

  1. サイドレールアウタ及びサイドレールインナを備え、車体の天井部分の骨格の一部を構成するサイドレールに、アシストグリップ取付用ボルトが固定されるメンバを配設し、前記サイドレールインナに連続して延在する角部分のうち前記アシストグリップ取付用ボルトが対向する角部分に、他の角部分より曲率半径の大きな曲面形状、或いは平面形状の衝撃吸収部を形成することによって、前記アシストグリップ取付用ボルトの先端が該衝撃吸収部に当接した際に、該サイドレールインナの変形を促進して衝撃を吸収するようにしたことを特徴とするアシストグリップ取付部の衝撃吸収構造。
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