JP4372856B2 - 磁気ディスク装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置、光ディスク装置または光磁気ディスク装置等の情報記憶装置に関し、特に、磁気抵抗効果形ヘッドもしくは光学的ヘッドを使用した情報記憶装置に適用して有効な技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の情報処理システムの扱うデータ量の増大から、情報記憶装置に対する記憶容量の増大と高速化の要求が高まっている。一方、携帯型の情報処理装置の発展からも情報記憶装置の小形化の要求が大きくなっている。
【0003】
情報記憶装置の記憶容量の増大は、記録媒体への情報の記録密度を向上することにより可能となる。しかし記録密度の向上は、情報を読み出すトランスデューサの出力の低下を来たし、信号ノイズ比(S/N比)の低下を生じる。
【0004】
トランスデューサ出力のS/N比の低下を補う方法として、平成7年10月9日、日経BP出版センター発行、「情報・通信新語辞典 96年板」、p501に記載されているように、パーシャルレスポンス方式(PR等化方式)が知られている。PR等化方式は、検出波形に規則的に干渉を与えて再生する方式であり、単にピークを検出する方法に比べて狭い帯域のままでデータを記録再生することができるものである。特に、あらかじめ相関させたデータ系列を最も確からしい系列を選択して再生するビタビ複合化方式と組み合わせたPRML(Partial Response Maximum Likelihood )方式では、誤り率を低くすることができるためそのため、S/N比の低下を補う方法として有効である。
【0005】
また、磁気記録方式においては、たとえば平成6年11月1日、工業調査会発行、「電子材料」1994年11月号、p22〜p28に記載されているように、記録・再生のためのコイルを具備しない磁気抵抗効果形ヘッド(MRヘッド)が用いられるようになっている。
【0006】
MRヘッドは、磁束感応形であるため媒体との相対速度に依存しない出力が得られる、コイルを有しないため再生ノイズが発生せずS/N比が向上する、高感度検出が可能である、低インダクタンスであるため高周波記録に対応できる等の特徴を有しており、高密度記録、高速再生に適したトランスデューサである。また、前記「電子材料」1994年11月号、p22〜p28に記載されているように、MRヘッドはPRML方式との組合せが容易であり、両技術を組み合わせての磁気ディスク装置の大容量化、小形化に有望な技術である。
【0007】
一方、光学的に記録媒体から情報を読み出す方式では、たとえば平成元年5月30日、オーム社発行、「情報処理ハンドブック」、p283〜p284に記載されているように、レーザダイオードを光源とする光学的ヘッドが再生用のトランスデューサとして用いられる。光学的ヘッドは、レーザ光を記録媒体に照射することにより記録データを読み取るものである。
【0008】
なお、MRヘッドは、磁束に応じた抵抗値を生じるMR(Magneto-Resistive )効果を用いて、磁気記録媒体の情報をMRヘッドの抵抗値変化として検出するため、原理的にセンス電流を必要とする。このセンス電流は、前記「電子材料」1994年11月号、p22〜p28またはp35〜p40に記載されているように、少なくとも記録データの再生期間の間、直流的に印加されている。また、前記「情報処理ハンドブック」、p283〜p284に記載されているように、この光学的ヘッドでも光源であるレーザダイオードは直流的に連続発光されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のとおり、MRヘッドへのセンス電流および光学的ヘッドのレーザダイオード駆動電流は直流的に印加されており、トランスデューサの劣化および寿命の点で問題が生じることを本発明者は認識した。
【0010】
すなわち、トランスデューサによる信号検出にPRML方式を組み合わせて信号処理する従来の技術は、トランスデューサの出力であるアナログ量をサンプリングしてPRML方式に合致した信号処理を行うものであり、トランスデューサの出力としては時間的に連続な量が必要であり、また、MRヘッドや光学的ヘッドのようなトランスデューサは能動測定素子であるため、センス電流またはレーザダイオード駆動電流が必要である。このため、センス電流またはレーザダイオード駆動電流の直流通電は避けられず、それら電流によるMRヘッドまたはレーザダイオード内のマイグレーションの発生が不可避的に発生している。つまり、このようなマイグレーションが原因で素子の劣化および寿命の問題が生じていると考えられる。
【0011】
また、より高密度に情報を記録したいという要求は依然強く、そのためには記録密度とトランスデューサの検出感度とのトレードオフを図る必要がある。検出感度の向上は、センス電流またはレーザ駆動電流の増加により図ることが可能であるが、前記マイグレーションを増加させるのみならず、消費電力の増大による熱的な影響によりトランスデューサの劣化が顕著となり、急速に寿命が短縮されるという問題をも生じる。
【0012】
本発明の目的は、MRヘッド、光学的ヘッド等トランスデューサの劣化を防止し、寿命期間を長くすることにある。
【0013】
本発明の他の目的は、MRヘッド、光学的ヘッド等トランスデューサの寿命を短縮することなく感度を向上することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、トランスデューサの感度向上により記録媒体への記録密度の向上を図り、情報記憶装置の記憶容量の増大と小形化に対応することのできる技術を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の情報記憶装置は、情報処理装置で扱うデータの特定規約に従った変調信号を記録する情報記録媒体と、情報記録媒体から変調信号を検出するトランスデューサと、トランスデューサの出力信号をディジタル値に変換する変換器と、ディジタル値をデータに復元する復調器とを有する情報記憶装置であって、出力信号をディジタル値に変換する際のサンプリング周期に同期した1個または複数個のタイミングクロックを発生するクロック発生器を備え、トランスデューサが、タイミングクロックに同期してパルス的に動作するものである。
【0016】
このような情報記憶装置によれば、出力信号をディジタル値に変換する際のサンプリング周期に同期した1個または複数個のタイミングクロックを発生するクロック発生器を備え、トランスデューサがタイミングクロックに同期してパルス的に動作するため、センス電流またはレーザ駆動電流等トランスデューサを駆動するための駆動電流が直流的に印加されず、タイミングクロックに同期してパルス的に動作している期間にのみ印加される。このため、駆動電流の平均値を低下させることができる。その結果、駆動電流に起因するマイグレーションを抑制してトランスデューサの寿命を延ばし、情報記憶装置の信頼性を向上することができる。
【0017】
また、駆動電流の平均値を下げ、トランスデューサの寿命に余裕を生じた結果、トランスデューサがタイミングクロックに同期してパルス的に動作している期間に印加する駆動電流の瞬時値を大きくすることができる。このような瞬時値の増加は、前記パルスの幅が小さい場合にはトランスデューサの消費電力を増加させるものではなく、熱劣化に起因するトランスデューサの寿命の低下を防止することができる。一方、駆動電流の瞬時値の増加は、トランスデューサの感度を向上することができるため、記録媒体の記録密度を向上し、情報記憶装置の記憶容量の向上または小形化を実現することができる。すなわちトランスデューサの劣化および寿命低下を伴うことなく感度を向上し、情報記憶装置の大容量化および小形化に寄与することができる。
【0018】
なお、サンプリング周期に同期するタイミングクロックは、1個のみならず、複数個でもよい。この場合、複数個のタイミングクロックにより複数のサンプリング値を得ることができ、この複数のサンプリング値にディジタルフィルタ等の技術を応用して計測値の信頼度を向上することができる。
【0019】
また、前記トランスデューサは、磁気抵抗効果形ヘッドまたは発光源であるレーザダイオードを含む光学的ヘッドとすることができる。このような磁気抵抗効果形ヘッドまたは光学的ヘッドでは、特に小形化、微細化の要求が強いため熱的にも弱く、本発明を適用する効果が大きい。なお、磁気抵抗効果形ヘッドの場合の駆動電流は磁気抵抗効果形ヘッドのセンス電流であり、光学的ヘッドの場合の駆動電流はレーザダイオードの駆動電流である。また、磁気抵抗効果形ヘッドにはMRヘッドはもとよりGMR(Giant Magneto-Resistive )効果を用いたGMRヘッドが含まれることはいうまでもない。さらに、本発明のトランスデューサが磁気抵抗効果形ヘッドまたは光学的ヘッドの場合に効果が大きいことは前記のとおりであるが、これに限られるものではなく、能動的な測定素子であって、能動測定のための駆動電流または駆動電圧を必要とされるものが含まれることはいうまでもない。
【0020】
さらに、本発明のデータの復調にパーシャルレスポンス方式を用いることができる。パーシャルレスポンス方式は、トランスデューサの出力信号をクロック周期に同期してサンプリングするものであり、このサンプリングされた瞬間の出力信号のみを利用するものであるため、本発明のトランスデューサに印加する駆動電流をパーシャルレスポンス方式のためのクロック周期に同期させることにより連続量として得られる従来のトランスデューサの出力信号をサンプリングする場合と同様のサンプリング信号を得ることができる。すなわち、本発明のトランスデューサ出力をピークホールド回路等でピークホールドした信号を、従来同様のパーシャルレスポンス方式の復調回路に入力することができ、大きな設計変更を伴うことなくトランスデューサの消費電力の低下と寿命の向上を図ることができる。また、パーシャルレスポンス方式は、高記録密度に適した方式であるため、本発明の目的とも合致し好適である。なお、パーシャルレスポンス方式のうち、PRML方式は、従来良く用いらている方式であり、専用のLSIも豊富に供給されているため、本発明に適用して好適である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態である磁気ディスク装置の要部の一構成例について示したブロック図であり、図2は、図1における各点の信号波形または数値を示すグラフまたはデータ図であって、(a)は、磁気ディスク媒体表面の磁界の波形を示すグラフ、(b)は、クロック発生器から得られるパルス列を示すグラフ、(c)は、磁気抵抗効果形読取りヘッドに付勢される磁界の強さに従って振幅が変化するパルス列を示すグラフ、(d)は、ピークホールドされた再生信号を示すグラフ、(e)は、再生信号のディジタルデータを示すデータ図、(f)は、パーシャルレスポンス方式処理により回復された記録データを示すデータ図である。
【0023】
本実施の形態の磁気ディスク装置は、情報を記憶する磁気ディスク媒体1、MRヘッド(磁気抵抗効果形読取りヘッド)2、複数のMRヘッド2から1個を選択する切替回路3、MRヘッド2の出力を増幅する増幅器4、クロック発生器5、ピークホールド回路6、AD変換器7、パーシャルレスポンス方式処理によりデータを回復する復調回路8、データを上位装置に送出するインタフェース9から構成される情報再生系を含むものである。情報記録系については公知のパーシャルレスポンス方式による記録系を用いることができる。
【0024】
磁気ディスク媒体1には、前記情報記録系により記録されたパーシャルレスポンス方式に適合した情報が磁化反転のパターンとして記録されている。図2(a)に磁気ディスク媒体1からMRヘッド2に付勢される磁界の波形10を示す。ピークの存在する情報点10aが磁化反転のあることを示し、磁化反転のない情報点10aでは単調増加あるいは単調減少として表される。
【0025】
MRヘッド2は、磁気ディスク媒体1の表面に発生している磁界に感応してその抵抗値が変化する素子であり、センス電流の印加により磁界に応じた電圧変化(センス電流が定電流である場合)として磁界を検出するものである。ただし、本実施の形態のセンス電流は直流的に印加されるものではなく、図2(b)に示すようなクロック発生器5から与えられるパルス列11に同期したパルス状の電流として印加されるものである。すなわち、MRヘッド2は、パルス列11をタイミングクロックとして、そのパルスが印加されている瞬間の磁気ディスク媒体1表面の磁界を計測するものである。
【0026】
したがって、切替回路3を経由し、増幅器4で増幅された出力電圧は、図2(c)に示すような、パルス電流が印加された瞬間の磁界の強さに比例した振幅の再生信号パルス列12となる。つまり再生信号パルス列12は、磁界の波形10をパルス列11によりサンプリングしたものとなる。
【0027】
増幅器4は、MRヘッド2の出力を増幅するとともに、MRヘッド2に印加する電流を発生するセンス電流供給回路を含むものである。センス電流供給回路および増幅回路については後述する。
【0028】
クロック発生器5は、検出された再生信号パルス列12をフィードバックすることによりパルス列11を発生するものであり、再生信号の情報点10aのタイミングに一致したパルスを発生する。パルス列11の周波数および位相の制御の具体的な方法は、パーシャルレスポンス方式の磁気ディスク装置に従来から用いられてきたような公知の方法を適用することができる。
【0029】
ピークホールド回路6は、再生信号パルス列12の各パルス点から次のパルス点までパルスの振幅を保持する機能を有する回路であり、このピークホールド回路6を通過した信号は、図2(d)に示すような再生信号13となる。
【0030】
AD変換器7は、ピークホールドされた再生信号13を、図2(e)に示すようなディジタルデータ14に変換する回路である。
【0031】
復調回路8は、ディジタル化されたディジタルデータ14を、パーシャルレスポンス方式処理により情報処理装置で扱うことのできる図2(f)に示すような元の記録データ15に回復する処理回路である。
【0032】
インタフェース9は、記録データ15を上位装置に送出するインターフェース回路である。
【0033】
なお、ピークホールド回路6、AD変換器7および復調回路8の動作タイミングの制御にはパルス列11をクロックとして利用することができる。
【0034】
次に、図3を用いてセンス電流供給回路および増幅回路を有する増幅器4を説明する。図3は、本実施の形態で用いる増幅器の一例を示した回路図である。
【0035】
抵抗素子として表されるMRヘッド2には、それとほぼ同等の抵抗値を有するダミー抵抗16が並列に接続され、MRヘッド2とダミー抵抗16には、各々電流切替え用トランジスタ17,18が直列に接続される。電流切替え用トランジスタ17,18のエミッタはともに接地される。電流切替え用トランジスタ17は、タイミングクロックであるパルス列11がベースに入力されている期間だけオンするものであり、電流切替え用トランジスタ18は、逆にパルス列11の入力されている期間はオフとなる。つまり電流切替え用トランジスタ17,18は、一方がオンのときには他方がオフとなる相補的なオン・オフ動作を繰り返すものである。
【0036】
MRヘッド2とダミー抵抗16に接続されるトランジスタ19は、MRヘッド2またはダミー抵抗16に一定電流を供給するセンス電流供給回路である。
【0037】
差動形の演算増幅器20の出力は、トランジスタ19のベース電圧を制御し、コンデンサ21は、演算増幅器20の出力電圧の急激な変動を抑制するために用いられる。定電流回路22は、演算増幅器20の入力の基準電圧を生成し、それによりトランジスタ19が供給するセンス電流の値になるようにする。
【0038】
すなわち、演算増幅器20の2点の入力電圧は常に等しくなければならないから、抵抗23および抵抗24の抵抗値をそれぞれRおよびnR、センス電流の所望電流値をIMR、定電流回路22の電流値をIref とすると、R・ IMR=nR・ Iref 、となり、したがって、IMR=n・ Iref 、となってIMRは一定値となる。
【0039】
ここで、信号再生動作時において、MRヘッド2に磁気ディスク媒体1からの磁界が与えられると、MRヘッド2の抵抗値は微小変化ΔRを生ずる。MRヘッド2の非動作時における抵抗値をRMRとすると、トランジスタ19のエミッタ電圧はコンデンサ21により急変が抑えられているため、IMRは、ΔI=ΔR /(RMR+ΔR)・ IMR、だけ変化する。この変化は抵抗23によりトランジスタ19のコレクタにR・ ΔIなる電圧変化として伝えられる。この電圧変化は差動増幅器25により出力される。つまり、差動増幅器25の出力電圧は電流切替え用トランジスタ18がオンの時には常に一定値を示し、電流切替え用トランジスタ17がオンの時にはMRヘッド2にセンス電流が供給されてMRヘッド2にかかる磁界の強さに比例して変化する。したがって、電圧波形は図2(c)に示す再生信号パルス列12のようになる。
【0040】
本実施の形態の磁気ディスク装置によれば、MRヘッド2に流れるセンス電流は、常時流れるわけではなく、クロック発生器5により発生したパルス列11が電流切替え用トランジスタ17のベースに入力されている時にのみ流れるため、MRヘッド2に流れるセンス電流の時間的な平均値を低下することができる。一方、磁気ディスク媒体1の磁界は、パルス列11をタイミングクロックとするパーシャルレスポンス方式の処理を行うため、パルス列11の入力された情報点10aにおける磁界を知れば十分である。したがって、磁気ディスク媒体1に記録された情報を欠落することなくMRヘッド2へのセンス電流の平均値を低減し、MRヘッド2の寿命を延ばすことができる。また、平均センス電流を低減した結果、MRヘッド2での消費電力も低減できるため熱劣化に対する余裕が生じ、その余裕の範囲内でMRヘッド2に流すセンス電流の瞬時値を増加することができる。この結果、MRヘッド2の感度を向上し、高密度記録、磁気ディスク装置の大容量化および小形化に寄与することができる。
【0041】
なお、クロック発生器5の周波数および位相は公知のパーシャルレスポンス処理回路と同様に再生信号パルス列12を用いて制御することが可能である。
【0042】
また、クロックとなるパルス列11のパルス幅は狭いほど再生信号の振幅を忠実に検出することが可能となり、また、センス電流の時間的平均値を低減できるのでMRヘッドの長寿命化にも有効である。
【0043】
次に、本発明の第2の実施の形態を図4に示す。センス電流供給回路および増幅回路を有する第2の増幅器4について図4を用いて説明する。図4は、本発明の第2の実施の形態で用いる定電圧型増幅器の一例を示した回路図である。
【0044】
図4において、抵抗素子として表されるMRヘッド302には、それとほぼ同等の抵抗値を有するダミー抵抗316が並列に接続される。MRヘッド302とダミー抵抗316には、各々、電流切替え用スイッチ330、331が接続される。電流切替え用スイッチ331は、タイミングクロックであるパルス列11が存在する期間だけオンするものであり、逆に、電流切替え用スイッチ330は、パルス列11が存在する期間はオフとなる。換言すれば、電流切替え用スイッチ330、331は、一方がオンのときには他方がオフとなる相補的なオン・オフ動作を繰り返すものである。
【0045】
電流源319は、2つの経路に接続され、その1つの経路は、電流切替え用スイッチ331、MRヘッド302および電流切替え用スイッチ331を有し、残りの経路は、電流切替え用スイッチ330、ダミー抵抗316および電流切替え用スイッチ330を有する。ダミー抵抗316を有する経路は、電流切替え用スイッチ331がオフのとき、電流源319からの電流をバイパスとして流す。電流源319は、MRヘッド302またはダミー抵抗316に一定電流を供給する。
【0046】
差動形のプリアンプ326は、MRヘッド302の出力の交流成分を増幅する。コンデンサ328は、電流源319の電流とMRヘッド302の抵抗の積から、直流成分を除去するために用いられる。尚、本実施の態様において、コンデンサ328は、概略、0.01マイクロファラッドか、これ以上の値を有している。定電流回路322は、プリアンプ326およびプリアンプ327の、それぞれのツイントランジスタにバイアス電流を供給する。抵抗323と324の端子における電位の変化が、差動増幅器325へ伝搬される。
【0047】
電流切替え用スイッチ331、MRヘッド302、スイッチ331およびプリアンプ326を有する経路は、タイミングクロックであるパルス列11が存在するときに、選択される。タイミングチャートを図5に示す。タイミングクロックであるパルス列11が存在するとき、差動増幅器325は、V outA−V outBの値に等しい信号を出力する。
【0048】
一方、電流切替え用スイッチ330、ダミー抵抗316、スイッチ330およびプリアンプ327を有する残りの経路は、タイミングクロックであるパルス列11が存在しないときに、選択される。この場合には、差動増幅器325は、プリアンプ327がダミー抵抗316の出力の交流成分を増幅しないので、なんら信号を発しない。
【0049】
一般に、電流にも慣性がある。電流の急激な遮断は、電子回路に過渡現象を生じさせる。過渡現象は、電流が安定するまで、電子回路におけるスイッチングの遅延をしばしば引き起こす。これが理由で、端子VrまたはVmr(図4)に、図5に示される高いまたは低い信号が印加されることにより、プリアンプ326と327が交互に選択される。本実施の態様において、より具体的には、VrまたはVmrは、−8ボルトと0ボルトとの間、より好ましくは、−0.4ボルトと0ボルトとの間にある。
【0050】
なお、本実施の形態のデータ検出の手段と、従来のパーシャルレスポンス方式のデータ記録・読取り手段との整合性について以下に説明する。
【0051】
すなわち、従来実用されているパーシャルレスポンス方式のデータ記録・読取り手段においては、連続量として得られた再生信号波形を増幅した後、クロック信号によりサンプリングし、AD変換してディジタルデータ列としており、その後の処理は上記実施の形態と同様である。したがって、本実施の形態の手段がパーシャルレスポンス方式のデータ記録・読取りに問題なく使用できることは明らかであり、従来技術との主な差異は再生波形のディジタル化を従来技術より前段の再生トランスデューサの段階で行うことである。
【0052】
他の一つの差異は、従来技術の場合、前置増幅器の後にアナログ式低域濾波器を設けて信号・雑音比の改善を図っているのが通常であるのに対し、本実施の形態ではそのまま低域濾波器を使用しても信号・雑音比の改善の効果は現れないことである。しかし、下記に示すような方法により低域濾波機能と同等な効果を得ることが可能である。
【0053】
すなわち、クロック信号として、1情報点当たり1個のクロックでサンプリングする従来技術と異なり、1情報点に複数個のクロックを等間隔で配置し、MRヘッド2が1情報点当たり複数回付勢されるようにすればよい。再生信号波形は複数のクロックによってAD変換され、1情報点当たり複数個のディジタルデータ列を得ることができる。このようにして得られたディジタルデータ列を用いて低域濾波器機能を実現するには公知のディジタルフィルタの技術を適用することができる。また、1情報点当たり複数個のディジタルデータ列を直接にパーシャルレスポンス方式の信号処理に適用して、記録データの検出精度を高めることも可能である。
【0054】
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0055】
たとえば、前記実施の形態では、磁気ディスク装置についての例を説明したが、それ以外の磁気的記憶装置、たとえば媒体をテープあるいはドラム等とするものであってもよい。
【0056】
また、前記実施の形態では、磁気的に情報を再生する場合の例を説明したが、光学的に情報を再生する光学的情報記憶装置、たとえば光ディスク、光磁気ディスク等においても同様の構成で本発明を実現できる。ただし、光学的情報記憶装置においては、光源にレーザダイオードを用い、ホトダイオード等の光学的トランスデューサを用いて信号を検出しており、前記実施の形態と同様の効果を得るには光源用レーザダイオードをデータのクロックタイミングを用いてパルス的に発光させる手段を用いることができる。一方、信号検出素子および再生回路はレーザダイオードの付勢回路とは独立しているが、この場合信号検出素子に現れる信号はクロックタイミングに従った振幅が検出される信号の強度に比例して変化するパルス列となる。このような信号波形は前記実施の形態と類似のものであるため、その信号処理回路には前記実施の形態と同様な構成を採用することが可能である。
【0057】
【発明の効果】
本発明の情報処理装置によれば以下のような効果が得られる。
【0058】
(1)MRヘッド、光学的ヘッド等トランスデューサの劣化を防止し、寿命期間を長くすることができる。
【0059】
(2)MRヘッド、光学的ヘッド等トランスデューサの寿命を短縮することなく感度を向上することができる。
【0060】
(3)トランスデューサの感度向上により記録媒体への記録密度の向上を図り、情報記憶装置の記憶容量の増大と小形化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である磁気ディスク装置の要部の一構成例について示したブロック図である。
【図2】図1における点の信号波形または数値を示すグラフまたはデータ図であって、(a)は、磁気ディスク媒体表面の磁界の波形を示すグラフ、(b)は、クロック発生器から得られるパルス列を示すグラフ、(c)は、磁気抵抗効果形読取りヘッドに付勢される磁界の強さに従って振幅が変化するパルス列を示すグラフ、(d)は、ピークホールドされた再生信号を示すグラフ、(e)は、再生信号のディジタルデータを示すデータ図、(f)は、パーシャルレスポンス方式処理により回復された記録データを示すデータ図である。
【図3】本実施の形態で用いる増幅器の一例を示した回路図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態で用いる定電圧型増幅器の一例を示した回路図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態で用いる定電圧型増幅器のタイミングチャートである。
【符号の説明】
1…磁気ディスク媒体、2…MRヘッド、3…切替回路、4…増幅器、5…クロック発生器、6…ピークホールド回路、7…AD変換器、8…復調回路、9…インタフェース、10…波形、10a…情報点、11…パルス列、12…再生信号パルス列、13…再生信号、14…ディジタルデータ、15…記録データ、16…ダミー抵抗、17,18…電流切替え用トランジスタ、19…トランジスタ、20…演算増幅器、21…コンデンサ、22…定電流回路、23,24…抵抗、25…差動増幅器、302…MRヘッド、316…ダミー抵抗、319…電流源、322…定電流回路、323,324…抵抗、325…差動増幅器、326,327…プリアンプ、328…コンデンサ、330,331…電流切替え用スイッチ。

Claims (3)

  1. 情報を記録する磁気ディスク媒体と、前記磁気ディスク媒体から情報を検出するMRヘッドと、前記MRヘッドにより再生された信号をサンプリングするタイミングクロックを生成するクロック発生器とを有し、
    前記再生された信号の復調にパーシャルレスポンス方式を用い、
    前記クロック発生器の出力するパーシャルレスポンス方式のサンプリング情報点に同期した瞬時幅のパルス状のセンス電流であって、直流的な駆動電流よりも大きな瞬時電流値を有するセンス電流を前記MRヘッドに供給することを特徴とする磁気ディスク装置。
  2. 磁気ディスク装置で扱うデータの特定規約に従った変調信号を記録する磁気ディスク媒体と、前記磁気ディスク媒体から前記変調信号を検出するトランスデューサと、前記トランスデューサの出力信号をディジタル値に変換する変換器と、前記ディジタル値を前記データに復元する復調器とを有する磁気ディスク装置であって、
    前記磁気ディスク装置に、前記出力信号を前記ディジタル値に変換する際のパーシャルレスポンス方式のサンプリング情報点に同期した1個または複数個の瞬時幅のタイミングクロックを発生するクロック発生器を備え、前記トランスデューサが、前記タイミングクロックに同期した瞬時幅のパルス状のセンス電流であって、直流的な駆動電流よりも大きな瞬時電流値を有するセンス電流により動作し、
    前記トランスデューサが磁気抵抗効果形ヘッドである構成を有することを特徴とする磁気ディスク装置。
  3. 請求項1記載の磁気ディスク装置であって、
    前記MRヘッドと同等の抵抗値であって前記MRヘッドと並列して接続されるダミー抵抗と、前記MRヘッドと前記ダミー抵抗へ供給する前記センス電流の切替えを行う切替回路とを有し、
    前記クロック発生器の出力するパーシャルレスポンス方式のサンプリング情報点に同期した前記切替回路の制御により、前記パルス状のセンス電流を生成することを特徴とする磁気ディスク装置。
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