JP4372542B2 - イオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法 - Google Patents

イオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、相間移動触媒法によるイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法に関する。本方法は、まず、アルカリ金属水酸化物を、スルフィド化合物およびイオウと水中で反応させて、ポリスルフィド混合物を生成することを含む。次に、相間移動触媒の存在下、このスルフィド混合物をシラン化合物と反応させる。
イオウ含有有機ケイ素化合物は、種々の商業的用途において反応性カップリング剤として有用である。特に、イオウ含有有機ケイ素化合物は、シリカを含有するゴム加硫物をベースとするタイヤの製造における不可欠な成分になっている。イオウ含有有機ケイ素化合物は、シリカを含有するゴム加硫物の物理的特性を改良して、改良された耐摩擦性、転がり抵抗および湿潤滑り性能を有する自動車用タイヤをもたらす。イオウ含有有機ケイ素化合物は、シリカを含有するゴム加硫物に直接添加され得るし、あるいはゴム加硫物組成物へ添加する前にシリカを前処理するために用いられ得る。
イオウ含有有機ケイ素化合物の調製に関して、当該技術分野では多数の方法が記載されている。例えば、Frenchらによる米国特許第5,399,739号には、アルカリ金属アルコラートを硫化水素と反応させてアルカリ金属ヒドロスルフィドを生成し、続いてこれをアルカリ金属と反応させてアルカリ金属硫化物を提供することによるイオウ含有有機シランの製造方法が記載されている。次いで、得られたアルカリ金属硫化物をイオウと反応させてアルカリ金属ポリスルフィドを提供し、次いでこれを式X−R−Si(R(式中、Xは塩素または臭素である)のシラン化合物と最終的に反応させて、イオウ含有有機シランを生成する。
米国特許第5,466,848号、第5,596,116号および第5,489,701号には、シランポリスルフィドの調製方法が記載されている。この特許第’848号の方法は、硫化水素とナトリウムエトキシラートとの反応により硫化ナトリウムを先ず生成させることを基礎にする。次に、硫化ナトリウムをイオウと反応させて四硫化物を生成し、続いてこれをクロロプロピルトリエトキシシランと反応させて3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)四硫化物を生成する。特許第’116号は、硫化水素を使用せずに、アルコール中の金属アルコキシドを元素状態で存在するイオウと反応させるか、又は金属ナトリウムを元素状態で存在するイオウおよびアルコールと、クロロプロピルトリエトキシシランのようなハロヒドロカルビルアルコキシシランと反応させることによるポリスルフィドの調製方法を教示する。特許第’701号は、硫化水素ガスを活性金属アルコキシド溶液と接触させ、続いて反応生成物をクロロプロピルトリエトキシシランのようなハロヒドロカルビルアルコキシシランと反応させることによるシランポリスルフィドの調製方法を特許請求する。
米国特許第5,892,085号には、高純度有機ケイ素ジスルファンの調製方法が記載されている。米国特許第5,859,275号には、ビス(シリルオルガニル)ポリスルファンの製造方法が記載されている。特許第’085号および第’275号にはともに、ハロアルコキシシランをポリスルフィドと直接反応させることを含む無水法が記載されている。
米国特許第6,066,752号は、溶媒の非存在下又は中性溶媒の存在下で、イオウ、アルカリ金属およびハロゲンアルコキシシランを反応させることによるイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法を教示する。
最近、米国特許第6,140,524号には、分布を有する式(RO)SiCSi(RO)(式中、nは2.2≦n≦2.8の範囲である)の短鎖ポリスルフィドシラン混合物の調製方法が記載されている。この特許第’524号の方法は、アルコール溶媒中で、金属ポリスルフィド、典型的にはNaを、式(RO)SiCX(式中、Xはハロゲンである)を有するハロゲノプロピルトリアルコキシシランと反応させる。
イオウ含有有機シランの他の調製方法は、相間移動触媒法の使用に基づいて当該技術分野で教示されてきた。相間移動触媒法は、イオウ含有有機ケイ素化合物を製造する上記従来技術の方法に関連する多数の実際的な問題を克服する。これらの問題の多くは、溶媒の使用に関連する。特に、エチルアルコールの使用は、その低い引火点のために問題がある。さらに、工業的規模における上記従来技術の方法の多くに必要とされる無水条件を達成および保持することは困難である。
イオウ含有有機ケイ素化合物を製造するための相間移動触媒法は、例えば、米国特許第5,405,985号、第5,663,396号、第5,468,893号および第5,583,245号に教示されている。これらの特許は、相間移動触媒を用いるイオウ含有有機ケイ素化合物の新規調製方法を教示するが、工業規模での相間移動法の使用に伴う多数の実際的な問題が依然として存在する。例えば工業的規模で実施され得る効率的で且つ安全な反応を提供するために、イオウ含有有機シランの調製において相間移動触媒の反応性を制御する必要がある。さらに、最終生成物の安定性、外観および純度を改良する必要がある。特に従来技術の相間移動触媒法は、多量の未反応イオウ種を含有する最終生成物組成物をもたらす。これらの未反応イオウ種は、時間の経過とともに貯蔵生成物中で沈殿して、生成物スルフィド分布の変化を引き起こし得る。
生成物の品質を改良する必要性は、アルカリ金属またはアンモニウム硫化水素が相間移動触媒法における出発物質として用いられる場合、特に重要である。これらの反応において、危険で且つ臭いを生じる硫化水素は、副反応で生成される。硫化水素を少量でも含有する生成物組成物は、大規模工業的方法におけるそれらの使用を妨げる。
したがって、本発明の目的は、相間移動触媒法に基づくイオウ含有有機ケイ素化合物の改良された製造方法を提供することである。
本発明の更なる目的は、より大きな安定性、純度および外観を有する最終生成物組成物をもたらす相間移動触媒法に基づくイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、副生物としての硫化水素を最小限にするか、又は除去するスルフィド化合物を使用する相間移動法に基づくイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供することである。
本発明のさらなる別の目的は、慣用の従来法よりも少ない費用で、且つ未反応の副生物を最小限にする出発物質を使用する相間移動法に基づくイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供することである。
本発明は、相間移動触媒法によるイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供する。本発明の改良は、アルカリ金属水酸化物をスルフィド化合物およびイオウと水中で反応させて、ポリスルフィド混合物を生成し、次いでこれを、相間移動触媒の存在下、シラン化合物と反応させることを特徴とする。
本発明は、式:(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−m
(式中、Rは独立して炭素原子1〜12個の一価炭化水素であり、Alkは炭素原子1〜18個の二価炭化水素であり、mは0〜2の整数であり、nは1〜10の数である)を有する有機ケイ素化合物の製造方法において、
(A)アルカリ金属水酸化物、式MまたはMHS(式中、Hは水素であり、Mはアンモニウムまたはアルカリ金属であり、nは上記と同様である)を有するスルフィド化合物およびイオウを水中で反応させて、ポリスルフィド混合物を生成すること、
(B)相間移動触媒の存在下で、前記ポリスルフィド混合物を、式:(RO)3−mSi−Alk−X(式中、XはCl、BrまたはIであり、mは上記と同様である)を有するシラン化合物と反応させること
を含む有機ケイ素化合物の製造方法である。
本発明に従って調製され得るイオウ含有有機ケイ素化合物の例は、米国特許第5,405,985号、第5,663,396号、第5,468,893号および第5,583,245号(これらを援用して本明細書の一部とする)に記載されている。本発明に従って調製される好ましいイオウ含有有機ケイ素化合物は、3,3’−ビス(トリアルコキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。最も好ましい化合物は、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドおよび3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。
本発明の第一工程は、アルカリ金属水酸化物、スルフィド化合物およびイオウを水中で反応させることによるポリスルフィド混合物の生成を含む。
本発明で使用され得るアルカリ金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウムおよび水酸化セシウムのような第I族アルカリ金属の水酸化物である。好ましい金属水酸化物は、水酸化ナトリウムである。
式MまたはMHSのスルフィド化合物は、本発明の方法の反応工程(A)において用いられ得る。ここで、Mはアルカリ金属またはアンモニウム基を表し、Hは水素を表す。代表的なアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウムまたはセシウムが挙げられる。好ましくは、Mはナトリウムである。MHS化合物の例としては、NaHS、KHSおよびNHHSが挙げられる。スルフィド化合物がMHS化合物である場合、NaHSが好ましい。NaHS化合物の具体例としては、ペンシルバニア州ピッツバーグのPPG社のNaHSフレーク(71.5〜74.5%NaHSを含有)およびNaHSリカー(45〜60%NaHSを含有)が挙げられる。Mの化合物の具体例としては、NaS、KS、CsS、(NHS、Na、Na、Na、Na、K、K、K、Kおよび(NHが挙げられる。好ましくは、スルフィド化合物はNaSである。特に好ましいスルフィド化合物は、ペンシルバニア州ピッツバーグのPPG社の硫化ナトリウムフレーク(60〜63%NaSを含有)である。
本発明の第一工程で用いられるイオウは、元素状態で存在するイオウである。種類および形態は重要ではなく、一般的に用いられるものが含まれ得る。適切なイオウ物質の一例は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich社の100メッシュ精製イオウ粉末である。
本発明の方法に用いられるアルカリ金属水酸化物、硫化水素アルカリ金属化合物およびイオウの量は変わり得る。好ましくは、S/HSのモル比は0.1〜10の範囲である。S/HS化合物のモル比は、最終生成物分布、即ち、式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値に影響を及ぼすために用いられ得る。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が4であることが望ましい場合、S/HS化合物のモル比の好ましい範囲は2.7〜3.2である。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が2であることが望ましい場合、イオウ/スルフィド化合物の比の好ましい範囲は0.8〜1.2である。
本発明の方法の工程(A)に添加されるアルカリ金属水酸化物の量は、用いられるスルフィド化合物の量のモル比を基準として0.1〜10であり得る。好ましくは、スルフィド化合物に対するアルカリ金属水酸化物のモル比は、0.8〜1.2であり、最も好ましくは0.95〜1.05である。
本発明の工程(A)で用いられる水の量は変わり得る。一般に、工程(A)の反応で生成されるジアルカリ金属スルフィドの沈殿を防ぐのに、十分な量の水が添加される。反応を促進させるために、任意成分を水に添加することもできる。例えば、塩化ナトリウムまたは他のブライン塩類(brine salts)が添加され得る。
反応工程(A)は、アルカリ金属水酸化物、硫化水素アルカリ金属化合物、イオウおよび水を反応容器中で一緒に混合することを含む。この反応工程(A)は、種々の温度で行われ得るが、一般的には20〜100℃の範囲で行われ得る。好ましくは、反応は50〜90℃の範囲の温度で行われる。一般に、第一工程は種々の圧力で行われ得るが、好ましくは、第一工程の反応は大気圧で行われる。第一工程の反応が起こるのに必要な時間は重要ではないが、一般に5〜30分の範囲である。
本発明の方法の第二工程は、ポリスルフィド混合物を、次式:
(RO)3−mSi−Alk−X
(Rは独立して炭素原子1〜12個の全ての炭化水素基であり得る)のシラン化合物と反応させることを含む。したがって、Rの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、シクロヘキシルまたはフェニルが挙げられる。好ましくは、Rはメチル基又はエチル基である。式(RO)3−mSi−Alk−Xにおいて、mは整数であり、0〜2の値を有し得る。mは好ましくは0である。Alkは、炭素1〜18個を含有する二価炭化水素基である。Alkは、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンまたはイソブチレンであり得る。Alkは好ましくは2〜4個の炭素を含有し、最も好ましくはAlkはプロピレン基である。Xは、塩素、臭素またはヨウ素から選択されるハロゲン原子である。好ましくは、Xは塩素である。本発明に用いられ得るシラン化合物の例としては、クロロプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロエチルトリエトキシシラン、クロロブチルトリエトキシシラン、クロロイソブチルメチルジエトキシシラン、クロロイソブチルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルジメチルエトキシシランが挙げられる。好ましくは本発明のシラン化合物はクロロプロピルトリエトキシシラン(CPTES)である。
シラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xは、上述のようにポリスルフィド混合物と直接的に反応させるか、あるいはシラン化合物を有機溶媒中に分散させて、有機相を生成させ得る。有機溶媒の代表例としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘプタン、オクタン、デカン、クロロベンゼン等が挙げられる。有機溶媒が用いられる場合、好ましい有機溶媒はトルエンである。
本発明の工程(B)において反応を行う際、好ましくは、シラン化合物は上述のようにポリスルフィド混合物と直接反応させる。
本発明の方法に用いられるシラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xの量は、変わり得る。適切な範囲の例としては、用いられる硫化水素アルカリ金属化合物のモル量を基準として1/10〜10/1が挙げられる。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が4であることが望ましい場合、シラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xは、2.0〜2.10の範囲の硫化水素アルカリ金属化合物のモル過剰で一般に用いられ、2.01〜2.06の範囲が最も好ましい。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が2であることが望ましい場合、シラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xは、1.8〜2.1の範囲の硫化水素アルカリ金属化合物のモル過剰で好ましくは用いられ、1.9〜2.0の範囲が最も好ましい。
本発明において使用可能な相間移動触媒は、第四級オニウムカチオンである。相間移動触媒としての第四級オニウムカチオンの好ましい例は、米国特許第5,405,985号(これを本明細書に引用して援用する)に記載されている。好ましくは、第四級オニウムカチオンは、臭化テトラブチルアンモニウムまたは塩化テトラブチルアンモニウムである。最も好ましい第四級オニウム塩は、臭化テトラブチルアンモニウムである。特に好ましい第四級オニウムイオン塩は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich社の臭化テトラブチルアンモニウム(99%)である。
本方法で用いられる相間移動触媒の量は変わり得る。好ましくは相間移動触媒の量は、用いられるシラン化合物の量を基準として0.1〜10重量%、最も好ましくは0.5〜2重量%である。
相間移動触媒は、工程(B)のシラン化合物との反応前にポリスルフィド混合物に添加される。
本発明の工程(B)を行う際、好ましくは、一定の反応温度を保持するような速度で、シラン化合物をポリスルフィド混合物に添加する。本発明の工程(B)の反応は種々の温度で行われ得るが、一般には40〜100℃の範囲で行われ得る。好ましくは、反応は65〜95℃の範囲の温度で行われる。一般に、第二工程は種々の圧力で行われ得るが、好ましくは第二工程の反応は大気圧で行われる。第二工程の反応が起こるのに必要な時間は重要ではないが、一般に5分〜6時間の範囲である。
本発明の反応工程は、緩衝剤を含有する水相の存在下で行うこともできる。緩衝剤は、単一化合物、例えばリン酸のアルカリ金属塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩もしくはホウ酸塩、又はそれらの組合せであり得る。緩衝剤の例としては、NaPO、NaHPO、NaHPO、NaCO、NaHCOおよびNaBが挙げられる。好ましくは、緩衝剤は、NaPO、NaCOまたはKCOから選択される。
水相に添加される緩衝剤の量は変わり得るが、一般に、MまたはMHSのモル数と等しいか、又はそれより多いモル量で添加される。如何なる理論にも限定されるべきでないが、本発明者らは、相間移動触媒を用いてイオウ含有有機ケイ素化合物を調製する本方法において、水相に緩衝剤を添加することは、反応媒質のpHを制御することを助け、それにより物質生成に影響を及ぼして、硫化水素の生成などの副反応を最小限にすると考える。したがって、本発明の一実施形態は、pHを制御することにより上記反応において製造されるイオウ含有有機ケイ素化合物を提供する。本発明の反応に用いられる水相のpHは、上述のように緩衝剤の添加、あるいは7〜14の範囲に反応中のpHを保持するような速度および濃度でのすべての酸性または塩基性化合物の添加により制御され得る。本発明者らは、pHが生成物分布、即ち、生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの値に影響し得ることも見出した。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が2であることが望ましい場合、好ましいpH範囲は8〜10である。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が4であることが望ましい場合、好ましいpH範囲は11〜14である。
本発明の好ましい実施形態では、アルカリ金属水酸化物、スルフィド化合物、相間移動触媒、水およびイオウが一緒に混合されて、ポリスルフィド混合物を生成する。次いで、上述したように、ポリスルフィド混合物をシラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xと反応させる。この反応は種々の温度で行われ得るが、一般的には40〜100℃の範囲で行われ得る。好ましくは、反応は65〜95℃の範囲の温度で行われる。一般に、第一工程は種々の圧力で行われ得るが、好ましくは第一工程の反応は大気圧で行われる。第一工程の反応が起こるのに必要な時間は重要ではないが、一般に5〜30分の範囲である。次いで、中間反応生成物をシラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xと反応させる。
水相またはポリスルフィド混合物を作製するのに用いられる水の量は変わり得るが、好ましくは本方法に用いられる式(RO)3−mSi−Alk−Xを有するシラン化合物の量を基準としている。他の出発物質中に少量の水がすでに多少存在するので、水は直接的または間接的に添加され得る。本発明の目的のためには、存在する水の総量を算定する、即ち、直接的または間接的に添加される全ての水を明らかにするのが好ましい。好ましくは、水相または中間反応生成物を作製するために用いられる水の総量は、用いられるシラン化合物の1〜100重量%であり、2.5〜70重量%の範囲がさらに好ましい。最も好ましくは中間反応生成物に関して用いられる水は、用いられるシラン化合物の量を基準として20〜40重量%の範囲である。
反応終了時に、有機相と、水相と、恐らく、反応中に生成されるNaCl、NaHPOまたはNaHCOのような塩を含み得る沈殿固体物質とを含有する生成物の混合物が生成される。有機相は、有機シラン化合物を含有する。
本発明は、生成物の混合物からの有機シラン化合物の分離を向上させるための処理工程も含む。この分離は、上記のような成分(A)、(B)および任意の(C)の反応に直接もたらされる有機相と水相との相分離であり得る。あるいは沈殿塩が反応中に生成される場合、塩は、相分離の前に濾過法またはデカント法によって先ず分離され得る。好ましくは水または希酸溶液が、分離前に生成物の混合物に添加される。水または希酸溶液の添加は、ある程度または全ての沈殿塩を溶解することにより、相分離中の生成物純度を向上させ得る。この工程中に添加される水または希酸溶液の量は、用いられるシラン化合物の量の重量を基準として、10〜50重量%で変わり得る。好ましくは、添加される水または希酸溶液の量は、用いられるシラン化合物の量を基準として20〜40重量%であり、最も好ましくは25重量%〜35重量%である。希酸溶液が用いられる場合、それは、0.000001〜5、好ましくは0.01〜1の規定(N)濃度を有する一般的酸のいずれか、例えばHCl、HNO、HSO等であり得る。希酸溶液は、水へのクロロシランの添加によっても調製され得る。希酸溶液を作製するために用いられ得るクロロシランの例としては、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシランが挙げられる。好ましくは、希酸溶液を調製するために0.5〜10重量%のクロロシランが用いられ、1〜5重量%が最も好ましい。希酸溶液を作製するためにクロロシランを用いる場合、クロロシランは好ましくはトリメチルクロロシランである。
生成物の混合物への水または希酸溶液の添加後、有機相および水相を相分離することにより、有機ケイ素化合物が生成物の混合物から単離される。さらに有機ケイ素化合物を含有する有機相は、乾燥工程に供され得る。乾燥工程の一例は、真空下で有機相を処理して、存在する如何なる揮発性有機物質とともに存在し得る如何なる残留水をも除去することであり得る。この乾燥工程は、例えば5〜35mmHg(0.67〜4.65kPa)の減圧下で20〜160℃の温度に有機相を加熱することを含み得る。好ましくは、当該条件は、5〜25mmHg(0.67〜3.33kPa)で90〜120℃である。あるいは有機相の乾燥工程は、有機相中の揮発性有機物質および残留水分を除去するための薄膜ストリッパーの使用を含み得る。有機相の乾燥工程のためのさらに他の方法は、有機ケイ素化合物を含有する有機相を乾燥剤物質と接触させることであり得る。乾燥剤物質は、有機相中の微量の水を除去することが当該技術分野で公知のすべての固体物質であり得る。これらの例としては、公知のイオン性吸湿物質、例えば硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等、またはケイ酸塩ベースの物質、例えばゼオライト、シリカ、アルミナケイ酸塩等が挙げられる。好ましい乾燥剤物質は、硫酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウムであり、硫酸ナトリウムが最も好ましい。
乾燥された有機相は、有機ケイ素化合物の最終純度および外観のさらなる改良をもたらす本発明の追加工程に供され得る。有機ケイ素化合物を含有する有機相は、15℃未満の温度に冷却され得る。この冷却工程は、未反応イオウおよびイオウ化合物の沈殿を生じる。好ましくは有機ケイ素化合物を含有する有機相は、−20℃〜30℃の範囲の温度に、好ましくは−15℃〜15℃の範囲の温度に冷却される。次に、沈殿した未反応イオウおよびイオウ化合物は、例えば濾過によって、有機ケイ素化合物を含有する有機相から分離され得る。未反応イオウおよびイオウ化合物の除去は、イオウおよび未反応イオウ化合物の時間経過に伴うさらなる沈殿を最小限にするか、又は無くすことを本発明者らは見出した。その結果、時間経過に伴って変化しないか又は固体沈殿物を含有する生成物の組成物をもたらさない組成物を製造することにより、有機ケイ素化合物の長期貯蔵安定性が高められる。
以下の実施例は、本発明を説明するために提示される。これらの実施例は、本明細書中の特許請求の範囲を限定することを意図しない。
高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により、種々のイオウ含有有機ケイ素化合物の分布を分析した。HPLC分析のための典型的な実験条件を以下に示す:8〜9滴の反応試料を8.5gのシクロヘキサンで希釈し、次にこれを0.2μmのPTFE膜(例えば、Whatman(登録商標)のPURADISC(商標)25TF)に通してバイアル中に濾過し、濾液の10μL試料をオートサンプラーによりHPLC装置(例えば、Hewlet-Packard 1050)に注入した。移動相として96%アセトニトリルおよび4%テトラヒドロフラン(vol/vol)の混合物を用いて、Lichrosorp RP18カラム(例えばAlltech Assoc., Inc; 250mm×4.6mm、10μm)上で試料を分画した。適切な励起波長として254nmを用いて、UV吸収検出器により画分を調べた。以下に列挙される特定の経験的に評価された応答因子(RF)で各ピーク面積を割ることにより、全ての単一スルフィド種の異なるUV感度を平均した。この応答因子は、鎖中の全てのイオウ原子および元素状態で存在するイオウについての濃色性を表す。
Figure 0004372542
[実施例1]
機械攪拌機、1枚のバッフル、滴下漏斗および内部温度計を備えた1L反応器に、114.02gの硫酸水素ナトリウム水溶液(0.24%NaS、45.77%NaHS)、51.00gの水および77.24gの水酸化ナトリウム水溶液(48.20%NaOH)を75℃で投入した。次に89.88gのイオウを一部ずつ添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を激しく攪拌した。次に14.40gの25%触媒水溶液(10.80gの水中に3.60gの臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB))を添加した。次に463.50gのクロロプロピルトリエトキシシランを素早く添加し、反応温度を85℃未満に保持した。発熱が低減した後、混合物を80℃の温度レベルで撹拌し、3.5時間後にクロロプロピルトリエトキシシラン(CPTES)が安定レベルに到達するまで、定量ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。この反応混合物を50℃に冷却し、次いで、形成された塩化ナトリウムが完全に溶解されるまで、131.10gの水を慎重に添加した。攪拌を止めて、446.30gの水相を除去した。次に、25mmHg(3.33kPa)および50℃という減圧条件下、1分毎に250mLずつの空気パージで30分以内に、6.18gのエタノールおよび残留水を有機相外に蒸発させた。残りの溶液を15℃に冷却し、排出して(485.43gの原料)、濾紙(例えばワットマン(Whatman)(登録商標)1)および濾過助剤(例えば、ManCel Assoc.,Inc.製のセライト(Celite)(登録商標)545)に通してブフナー漏斗中に濾過した。残留水滴を除去するために、5.00gの硫酸マグネシウムを添加した。有機相を濾過して、468.68gの透明で淡琥珀色の液体を得た(収率:スルフィド種を基準として94.1%)。HPLC分析は、3.81という平均イオウランクを示した。
[実施例2]
機械攪拌機、1枚のバッフル、滴下漏斗および内部温度計を備えた1L反応器に、114.02gの硫酸水素ナトリウム水溶液(0.24%NaS、45.77%NaHS)、51.0gの水および69.52gの水酸化ナトリウム水溶液(48.2%NaOH)を77℃で投入した。次に89.88gのイオウを一部ずつ添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を激しく攪拌した。次に14.40gの25%触媒水溶液(10.80gの水中に3.60gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に463.50gのクロロプロピルトリエトキシシランを素早く添加し、反応温度を85℃未満に保持した。発熱が低減した後、混合物を80℃の温度で撹拌し、3.5時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定レベルに到達するまで、定量ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。この反応混合物を50℃に冷却し、次いで、形成された塩化ナトリウム沈殿物が完全に溶解されるまで、127.46gの水を慎重に添加した。攪拌を止めて、400.16gの水相を除去した。次に、25mmHg(3.33kPa)および50℃という減圧条件下、1分毎に250mLずつの空気パージで30分以内に、5.83gのエタノールおよび残留水を有機相外に蒸発させた。残りの溶液を15℃に冷却し、排出して(509.01gの原料)、濾紙(例えばワットマン(Whatman)(登録商標)1)および濾過助剤(例えば、ManCel Assoc.,Inc.製のセライト(Celite)(登録商標)545)に通してブフナー漏斗中に濾過した。残留水滴を除去するために、6.69gの硫酸マグネシウムを添加した。有機相を濾過して、486.37gの透明で淡琥珀色の液体を得た(収率:スルフィド種を基準とする理論の97.6%)。HPLC分析は、3.83という平均イオウランクを示した。
[実施例3]
機械攪拌機、1枚のバッフル、滴下漏斗および内部温度計を備えた1L反応器に、114.02gの硫酸水素ナトリウム水溶液(0.24%NaS、45.77%NaHS)、51.00gの水および84.96gの水酸化ナトリウム水溶液(48.2%NaOH)を76℃で投入した。次に89.88gのイオウを一部ずつ添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を激しく攪拌した。次に14.4gの25%触媒水溶液(10.8gの水中に3.6gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に463.50gのクロロプロピルトリエトキシシランを素早く添加し、反応温度を85℃未満に保持した。発熱が低減した後、混合物を80℃の温度レベルで撹拌し、3.5時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、定量ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。この反応混合物を50℃に冷却し、次いで、形成された塩化ナトリウム沈殿物が完全に溶解されるまで、131.22gの水を慎重に添加した。攪拌を止めて、419.48gの水相を除去した。次に、32mmHg(4.5kPa)および50℃という減圧条件下、1分毎に250mLずつの空気パージで30分以内に、9.06gのエタノールおよび残留水を有機相外に蒸発させた。残りの溶液を15℃に冷却し、排出して(495.49gの原料)、濾紙(例えばワットマン(Whatman)(登録商標)1)および濾過助剤(例えば、ManCel Assoc.,Inc.製のセライト(Celite)(登録商標)545)に通してブフナー漏斗中に濾過した。残留水滴を除去するために、3.10gの硫酸マグネシウムを添加した。有機相を濾過して、469.86gの透明で琥珀色の液体を得た(収率:スルフィド種を基準とする理論の94.8%)。HPLC分析は、3.74という平均イオウランクを示した。
[実施例4]
機械攪拌機、1枚のバッフル、滴下漏斗および内部温度計を備えた1L反応器に、114.02gの硫酸水素ナトリウム水溶液(0.24%NaS、45.77%NaHS)、51.00gの水および77.24gの水酸化ナトリウム水溶液(48.2%NaOH)を78℃で投入した。次に86.88gのイオウを一部ずつ添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を激しく攪拌した。次に14.40gの25%触媒水溶液(10.80gの水中に3.60gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に459.00gのクロロプロピルトリエトキシシランを素早く添加し、反応温度を85℃未満に保持した。発熱が低減した後、混合物を80℃の温度レベルで撹拌し、3.5時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、定量ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。この反応混合物を50℃に冷却し、次いで、形成された塩化ナトリウム沈殿物が完全に溶解されるまで、131.10gの水を慎重に添加した。攪拌を止めて、418.97gの水相を除去した。次に、34mmHg(3.34kPa)および50℃という減圧条件下、1分毎に250mLずつの空気パージで30分以内に、6.57gのエタノールおよび残留水を有機相外に蒸発させた。残りの溶液を15℃に冷却し、排出して(492.44gの原料)、濾紙(例えばワットマン(Whatman)(登録商標)1)および濾過助剤(例えば、ManCel Assoc.,Inc.製のセライト(Celite)(登録商標)545)に通してブフナー漏斗中に濾過した。残留水滴を除去するために、5.00gの硫酸マグネシウムを添加した。有機相を濾過して、472.91gの透明で淡琥珀色の液体を得た(収率:スルフィド種を基準とする理論の91.7%)。HPLC分析は、3.75という平均イオウランクを示した。
[実施例5]
50.0g(0.589モル)のNaHSフレーク、56.6g(1.767モル)のイオウおよび75.62gの水を反応器に入れて、室温で混合した。次に25.12g(0.628モル)のNaOHペレット(NaOH/NaHS比=1.0およびS/NaHS比=3.0)を素早く入れて、HSの形成を抑制し、混合時は70℃に加熱した。イオウが完全に溶解すると、溶液は30分で透明で黄色がかった赤色になった。NaOH添加後にガスの発生は観察されなかった。相間移動触媒である25重量%臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)溶液(4.54g、0.014モル)をスルフィド水相に添加し、15分間混合した。暗く赤みがかった黒色の析出物が表面に形成された。次に302.5g(1.256モル)のクロロプロピルトリエトキシシラン(CPTES)をゆっくり添加し、2時間反応させた。この反応混合物を50℃に冷却し、副生物であるNaCl塩を脱イオン水に溶解させた。次いで、この混合物を相分離した。有機相(生成物)を濾過し、ガスクロマトグラフィー(GC)および高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)法により分析した。HPLC分析は、4.08という平均イオウランクを示した。
安定なスルフィド分布が反応の初期段階で達成された。メルカプトシランは生成されず、冷却中および生成物の長期貯蔵中に固体イオウ沈殿物は観察されなかった。
[実施例6]
100g(0.8316モル)のNaHS溶液を反応器に入れて、50℃に加熱した。次に66.5g(0.8316モル)の50重量%NaOH溶液(NaOH/NaHS比=1.0およびS/NaHS比=3.0)をゆっくり添加して混合した。NaSの固晶が形成され、水相に分散された。79.3g(2.495モル)のイオウを添加し、83℃で15分間混合した。殆どの沈殿物は、Naの形成に伴って溶解した。次いで、4.0g(0.013モル)のTBABを70℃で添加した後に、CPTES(402.0g、1.672モル)を添加した。CPTS添加の間、発熱は観察されなかったが、CPTES添加後7分間で20℃(70℃から90℃へ)の発熱が観察された。177.4gの水中でNaCl塩を30℃で溶解する前に、反応を210分間継続した。相分離後、433.4gの有機相(生成物)および379.4gの水相を捕集した。HPLC分析は、3.86という平均イオウランクを示した。
GCデータは、反応が2時間で完了し、CPTES含量は1.0重量%未満であるということを示した。12を超えるpHを保持する水酸化ナトリウムの使用により、この方法における反応の全ての段階で生成するメルカプタン化合物は存在しなかった。HPLCデータは、反応が進行してもスルフィド分布の有意な変化はなく;したがって、水酸化ナトリウムの存在下、安定なスルフィド分布が水相中で形成されるということを示した。
[実施例7]
この実験では、NaOH/NaHSモル比を3.0に変えた。37.7g(0.942モル)のNaOHペレットを反応器に入れ、200rpmで攪拌することにより75.6gの水に溶解させた。発熱によって温度は40℃に上昇した。次に25.0g(0.314モルのNa)のNaHSフレーク(61.7%のNaHSおよび6.07%のNaSを含む、PPG製)および70.5g(2.19モル、S/HS比=7.0)のイオウを混合しながらゆっくり添加した。ガスのわずかな発生に伴って暗橙赤色の溶液がすぐに形成された。TBAB触媒(4.5g、0.014モル)を68℃でポリスルフィド水相に添加し、10分間混合した。クロロプロピルトリエトキシシラン(302.5g、1.2562モルのCPTES)をゆっくり添加し、80〜85℃で1.5時間反応させた。CPTS添加の間、17℃の発熱が観察された。この反応混合物を50℃に冷却し、水に塩を溶解させた。相分離により、252.8gの水相および309.1gの琥珀橙色の相が得られた。イオウ分布のために、HPLCによって有機相を分析した。平均イオウランクは3.93であった。HPLCの結果は、実施例6と同等のスルフィド分布を示したが、GCは15重量%以下の未反応CPTESを示した。生成物から黄色のイオウの沈殿も一晩で起こった。
[実施例8]
NaOHとNaHSとが同モル量、およびイオウが3倍モル量の他の実験は、この実施例において提供される。まず、50.0g(0.6281モル)のNaHSフレーク、25.12g(0.6281モル)のNaOHペレットおよび60.42g(1.8844モル)のイオウを1L反応器に室温で入れた。次に、連続的に混合しながら、75.62gの水をゆっくり添加した。4.53gのTBAB触媒を25重量%水溶液として添加する前に、反応混合物を68℃に加熱した。317.61g(1.32モル)のCPTESを水相にゆっくり添加して、発熱を制御し、80〜85℃で2時間反応させた。反応完了後、副生物であるNaCl塩を45℃で溶解させた。相分離後、316.93gの生成物が捕集され、これをGCおよびHPLCにより分析した。計算されたイオウランクは3.89であった。反応に過剰のCPTESを用いたために、GCは6.0重量%の未反応CPTESを示した。この生成物は淡黄橙色でかつ透明であった。
[実施例9(比較例)]
水酸化ナトリウムなしでは、出発物質としての硫化二ナトリウムから3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)四硫化物も調製された。60重量%活性フレークとしての81.0g(0.623モル)のNaS(PPGから入手)、59.92g(1.187モル)のイオウおよび75.0gの脱イオン水を1L反応器に室温で入れた。この混合物を300rpmで混合しながら68℃に加熱した。15分後、全ての固体が溶液に溶解した。次に、2.4g(0.0074モル)のTBABを25重量%溶液として添加し、10分間混合した。次に300.0g(1.246モル)のCPTESをゆっくり添加し、120分間反応させた。GCの結果は、0.5重量%未満の未反応CPTESを示した。塩を50℃で溶解させ、有機相を相分離した。274.8gの暗赤橙色の生成物が捕集された。この生成物もHPLCにより分析した。イオウランクは3.83と計算された。この方法から得られた生成物は、より暗い色であり、冷却中に固体が沈殿した。

Claims (3)

  1. 式:(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−m
    (式中、Rは独立して炭素原子1〜12個の一価炭化水素であり、Alkは炭素原子1〜18個の二価炭化水素であり、mは0〜2の整数であり、nは1〜10の数である)を有する有機ケイ素化合物の製造方法において、
    (A)アルカリ金属水酸化物、式MまたはMHS(式中、Hは水素であり、Mはアンモニウムまたはアルカリ金属であり、nは上記と同様である)を有するスルフィド化合物およびイオウを水中で反応させて、ポリスルフィド混合物を生成すること、
    (B)相間移動触媒の存在下で、前記ポリスルフィド混合物を、式:(RO)3−mSi−Alk−X(式中、XはCl、BrまたはIであり、mは上記と同様である)を有するシラン化合物と反応させることを含み、
    前記相間移動触媒は、前記工程(A)で添加される有機ケイ素化合物の製造方法。
  2. 前記スルフィド化合物がNaHSであり、前記スルフィド化合物に対する前記イオウのモル比が2.7〜3.2であり、前記相間移動触媒が臭化テトラブチルアンモニウムである請求項1に記載の方法。
  3. 式:(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−m
    (式中、Rは独立して炭素原子1〜12個の一価炭化水素であり、Alkは炭素原子1〜18個の二価炭化水素であり、mは0〜2の整数であり、nは1〜10の数である)を有する有機ケイ素化合物の製造方法において、
    (A)水中でアルカリ金属水酸化物を、式MまたはMHS(式中、Hは水素であり、Mはアンモニウムまたはアルカリ金属であり、nは上記と同様である)を有するスルフィド化合物と反応させて、ジアルカリ金属スルフィド混合物を生成すること、
    (B)前記ジアルキル金属スルフィド混合物をイオウと反応させて、ポリスルフィド混合物を生成すること、
    (C)相間移動触媒の存在下で、前記ポリスルフィド混合物を、式:(RO)3−mSi−Alk−X(式中、XはCl、BrまたはIであり、mは前記と同様である)を有するシラン化合物と反応させることを含み、
    前記相間移動触媒は、前記工程(B)で添加される有機ケイ素化合物の製造方法。
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