JP4372433B2 - 耐油性・耐水性食品加熱用包装紙およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐油性、耐水性、耐熱性に優れるコーティング膜(塗工層)を有する食品加熱用包装紙およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品包装に用いられる紙には、食品中の油分と水分をはじき、食品に接していない面に油分と水分がにじみ出ない耐油性と耐水性が必要である。また、食品用包装紙は、食品を包装したまま電子レンジやオーブンなどで加熱されるため耐熱性も必要である。
これらの問題を解決する方法として、単層抄の内添サイズ紙の少なくとも一方の面にノニオン性あるいはカチオン性のポリビニルアルコールの塗工層とフッ素系の耐油剤の塗工層を順次設けた耐油紙の使用が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−12849号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしフッ素系の耐油剤は、高温においてフッ化水素、フッ化カルボニル、フッ酸などの有毒なフッ素化合物が発生するとされており、かかる耐油剤を含む食品包装用の耐油紙は、調理中、あるいは使用後廃棄された後の焼却の際にこれらの有毒なフッ素化合物が発生する可能性があり、安全性の面では問題がある。
従って、本発明の目的は、安全で、環境に優しい耐油性・耐水性および耐熱性を有する食品加熱用包装紙を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のような問題のない安全で、環境に優しい耐油性・耐水性および耐熱性を有する食品加熱用包装紙を開発すべく鋭意検討した結果、ポリビニルアルコールと天然物由来で食品用途にも使用され、耐水性のある強固な塗膜を形成するセラック(シェラック)を塗膜形成成分として用いることで耐油性、耐水性、耐熱性に優れ、なおかつ食品用途としても安全な食品加熱用包装紙が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明によれば、基材シートとしての紙の少なくとも一方の面に、少なくともポリビニルアルコールとセラック(シェラック)とを含む塗工層を有し、上記ポリビニルアルコール(A)と上記セラック(シェラック)(B)との含有割合を、A:B=20〜80:80〜20(重量比)とすることを特徴とする耐油性・耐水性食品加熱用包装紙ならびにこれらの食品加熱用包装紙の製造方法が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
本発明の耐油性・耐水性食品加熱用包装紙は、基材シートとしての紙の片面または両面に、少なくともポリビニルアルコールとセラック(シェラック)を含む塗工層を有することが特徴である。
【0008】
本発明で使用するポリビニルアルコールとしては、部分ケン化型、完全ケン化型(ケン化度95モル%以上)、あるいはカルボキシル基、スルホン基、アセトアセチル基、シラノール基などで変性されたものが挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。重合度は特に限定されないが、通常500〜3000の範囲、好ましくは1000〜2500の範囲である。重合度が500未満では造膜が難しく、十分な耐油性が得られない。また、重合度が3000を超えると溶液の粘度がかなり高くなり、塗工作業が難しくなる。
【0009】
本発明ではポリビニルアルコールは溶剤に溶解した溶液(塗工液)として使用されるが、溶剤としてはポリビニルアルコールを溶解する溶剤であれば特に限定されない。例えば、水、アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなど)、アルコール水溶液などが挙げられるが、水が好ましい。
【0010】
本発明で使用するセラック(シェラック:shellac)は、動物生産物の天然樹脂であり、用途に応じた製品が市販されており、入手して使用することができる。本発明の食品加熱用包装紙は直接食品に接触するので、食品用途のセラック(シェラック)の使用が好ましい。
【0011】
本発明ではセラック(シェラック)も溶剤に溶解した溶液(塗工液)として使用される。溶剤としては、セラックを溶解する溶剤であれば特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、プロピレングリコールエーテルなどのアルコール、水などが挙げられる。セラックを水溶性にするためにセラックに含まれるカルボキシル基を中和するが、中和剤としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩基;アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリンなどの有機塩基が挙げられる。セラックを中和する塩基としては、揮発性に富むアンモニアが好ましい。
【0012】
本発明の耐油性・耐水性食品加熱用包装紙を製造するためには、基材シートとしての紙の少なくとも一方の面に、(1)少なくともポリビニルアルコールとセラックを含む塗工液を塗工して塗工層を形成する方法が用いられる。
【0013】
(1)の方法を実施するには、先ず塗工層形成成分のポリビニルアルコールとセラックを含む塗工液を用意する。共通の溶剤を使用する場合には、その溶剤にポリビニルアルコールとセラックを溶解させて塗工液を調製する。また、各塗工層形成成分を別々の溶剤に溶解する場合には、得られた各溶液を混合して塗工液を調製する。この場合には溶剤同士は混和性(相溶性)を有することが必要である。例えば、ポリビニルアルコールは水溶液で、セラックをアルコール溶液として使用する場合には、アルコールは水と混和性(相溶性)のものを使用し、アルコール溶液に塩基を加えてセラックを中和して水溶性としておくことが必要である。
【0014】
塗工液中のポリビニルアルコール(A)とセラック(B)の使用割合は、本発明の食品加熱用包装紙に要求される耐油性に応じて適宜決定することができるが、A:B(重量比)は20〜80:80〜20である。セラックが少なすぎると耐水性が不足し、セラックが多すぎると耐油性が不足する。
【0015】
塗工液には、必要に応じて消泡剤、防腐剤、着色剤などの添加剤を適宜添加することができる。
また、必要に応じてポリビニルアルコールと相溶する樹脂を本発明の効果が損なわれない範囲で併用することができる。このような樹脂としては、例えば、ビニルアルコールとスチレンあるいはアクリル酸エステルとの共重合体、水溶性セルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂が挙げられる。
【0016】
(1)の場合、塗工液を基材シートとしての紙に塗工して塗工層を形成する。
塗工液は、通常、固形分が2〜40重量%程度に調整され、例えば、バーコーター、ロールコーター、エアーナイフコーターあるいはグラビア印刷などの公知の塗工方法で基材シートの少なくとも一方の面に塗工され、乾燥される。塗工層の乾燥重量は、特に制限されないが、(1)の場合は、0.1〜10g/m2程度である。
【0017】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の文中における部および%は重量基準である。
【0018】
参考例1
ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製 GH−23)の5%水溶液を基材紙の片面にバーコーターNo.05で乾燥重量が2g/m2となるように塗工し、120℃にて20秒間乾燥させた。次に、セラック(日本シェラック工業株式会社製 ラックグレーズ25E)の10%イソプロピルアルコール溶液を上記ポリビニルアルコール塗膜の上にバーコーターNo.05で乾燥重量が1g/m2となるように塗工し、120℃にて10秒間乾燥させ、食品加熱用包装紙を得た。
得られた食品加熱用包装紙の耐油性、耐水性および耐熱性を下記の試験方法で評価した。
【0019】
(耐油性試験)
食品加熱用包装紙に2mlのスポイトで食用油を1滴、滴下し、30秒後に滴下した油滴を拭き取り、該紙の表面の油のにじみの有無を目視で確認する。
また、同様に食用油を1滴、滴下し、30分後に滴下した油滴を拭き取り、紙の表面の油のにじみの有無を目視で確認する。
30秒後、30分後とも油のにじみはなく、十分な耐油性が得られた。
【0020】
(耐水性試験)
食品加熱用包装紙を水浴に浸し、全体が水で十分濡れたところで水浴から取り出し、120℃にて30秒間乾燥させる。このように1度水に浸した食品加熱用包装紙を再度上記の方法で耐油試験し、30秒後と30分後の紙の表面の油のにじみの有無を目視で確認する。
30秒後、30分後とも油のにじみはなく十分な耐水性が得られた。
【0021】
(耐熱性試験)
食品加熱用包装紙に2mlのスポイトで食用油を1滴、滴下し、それを電子レンジで500W、1分間加熱し、その後滴下した油滴を拭き取り、紙の表面の油のにじみの有無を目視で確認する。
油のにじみはなく、十分な耐油性が得られた。
【0022】
実施例1
セラック(日本シェラック工業株式会社製 ラックグレーズ25E)の30%イソプロピルアルコール溶液に、28%アンモニア水を加え、pHを11に調整した。このセラックの溶液とポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製 GH−23)5%水溶液を混合し、セラック5%、ポリビニルアルコール5%の塗工液を調製した。
この塗工液を基材紙の片面にバーコーターNo.05で乾燥重量が2.5g/m2となるように塗工し、120℃にて20秒間乾燥させ食品加熱用包装紙を得た。参考例1と同様にして耐油性、耐水性および耐熱性を試験したが、十分な耐油性、耐水性および耐熱性が得られた。
【0023】
比較例1
ポリビニルアルコールおよびセラックを塗工していない基材紙について参考例1と同様に耐油試験を行い、30秒後の紙の表面の油のにじみの有無を目視で確認したが、大きなにじみが生じ、耐油性は全くなかった。
【0024】
比較例2
参考例1と同様にしてポリビニルアルコール水溶液のみを基材紙に塗工して食品加熱用包装紙を得た。このものの耐油性を参考例1と同様にして試験したが、30秒後、30分後とも該紙表面に油のにじみはなく、十分な耐油性が得られた。また、参考例1と同様にして耐水性試験を行ったが、30秒後の紙の表面には油のにじみが生じ十分な耐水性は得られなかった。さらに、参考例1と同様にして耐熱性試験を行ったが、紙の表面には油のにじみが生じ、十分な耐熱性が得られなかった。
【0025】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、紙基材の少なくとも一方の面にポリビニルアルコールとセラック(シェラック)を含む塗工層を設けることで耐油性、耐水性、耐熱性に優れた、特に食品用途としても安全な食品加熱用包装紙が提供される。
Claims (2)
- 基材シートとしての紙の少なくとも一方の面に、少なくともポリビニルアルコールとセラック(シェラック)とを含む塗工層を有し、上記ポリビニルアルコール(A)と上記セラック(シェラック)(B)との含有割合を、A:B=20〜80:80〜20(重量比)とすることを特徴とする耐油性・耐水性食品加熱用包装紙。
- 基材シートとしての紙の少なくとも一方の面に、少なくともセラック(シェラック)とポリビニルアルコールを溶剤に溶解させた塗工液を塗工し、上記ポリビニルアルコール(A)と上記セラック(シェラック)(B)との使用割合を、A:B=20〜80:80〜20(重量比)とすることを特徴とする耐油性・耐水性食品加熱用包装紙の製造方法。
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