JP4370877B2 - 永久磁石粉末の配向方法および永久磁石の製造方法 - Google Patents

永久磁石粉末の配向方法および永久磁石の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、永久磁石粉末の配向方法および永久磁石の製造方法、並びにそれらの方法を用いて得られる永久磁石に関する。
高性能永久磁石として代表的なR−Fe−B系永久磁石(特許文献1など)は、優れた磁気特性を有しているため、各種モータ、アクチュエータなど様々な用途に使用され、用途に応じた種々の磁石特性を発揮するよう様々な組成のR−Fe−B系永久磁石が提案されている。しかし、電気・電子機器の小型・軽量化ならびに高機能化の要求は強く、R−Fe−B系永久磁石のより一層の高性能化とコストダウンが要求されている。
R−Fe−B系永久磁石の高性能化には、残留磁束密度(Br)の向上、保磁力(iHc)の向上、温度特性の向上、耐食性の向上などが挙げられる。そのうち、残留磁束密度の向上については、以下の手段が有効であることが知られている。
(1)強磁性相であり、主相のR2Fe14B相の存在量を多くする。
(2)焼結体の密度を理論密度まで高める。
(3)主相結晶粒の磁化容易軸方向の配向度を高める。
上記(1)を達成するためには、磁石の組成を上記R2Fe14Bの化学量論的組成に近づけること、具体的には、R(希土類)量の低減、酸素量を低減することが好ましい。
また、上記(2)を達成するためには、合金作製にストリップキャスティング法を採用することにより、合金中のR−rich相を微細に分散させ、それによって焼結性を向上させることが有効である。
さらに、上記(3)を達成するためには、永久磁石粉末を十分に配向させてから成形を行なうことが有効である。永久磁石粉末を十分に配向させるためには、パルス磁界などによって高い強度の磁界を印加したり、永久磁石粉末の潤滑性を向上させたりする方法が知られている。また、配向のバラツキを防止するために、成形空間に均一な磁界分布を形成することが知られている。
上記の永久磁石粉末を十分に配向させる方法として、例えば、R−Fe−B系合金粉末をモールド内に充填密度1.4〜3.5g/cm3に充填し、瞬間的に10kOe以上のパルス磁界を磁界方向を繰り返し反転させて付加し、それによって配向を行なった後、冷間静水圧プレスする方法が提案されている(特許文献2)。
この提案による方法は、高いパルス磁界を、磁界方向を繰り返し反転させながら印加することが特徴であり、磁界強度が35kOeのパルス磁界を反転繰り返し付加することが記載されている。磁界分布についての記載はないが、モールド全体に対して均一な磁界を印加しているものと思われる。
また、均一な配向度を得るための方法として、磁性粉を所定磁界強度の磁界中にて所定方向に配向する際、磁界強度の配向磁界領域よりも弱い磁界強度を有する弱磁界領域又は無磁界領域から配向磁界領域に磁性粉を相対的に移動させる方法が提案されている(特許文献3)。
前記の提案は、プレス装置のキャビティ内に設けられた、下側から上方へ磁界強度が順次上昇する空間の下側に、ボンド磁石用コンパウンド(磁石と樹脂の混合物)を配置する。コンパウンドの上方は何もない自由空間としておく。この状態で静磁場を印加することにより、コンパウンドは重量に抗して強い磁界領域の上方向へと移動する。このとき、コンパウンドの周囲には自由空間が形成されているので、コンパウンド間の摩擦力が低下し、コンパウンドの回転運動が容易となる。移動したコンパウンドは磁界方向に鎖状につながり、均一に配向するというものである。
従来、特許文献2及び特許文献3に代表されるように、主相結晶粒の磁化容易軸方向の配向度を高めるために種々の提案がなされ、磁界分布は均一なほどよい、またその配向磁界は高いほどよいという考え方が支配的であった。
特開昭59−46008号公報 特開平8−167516号公報 特開2001−93712号公報
R−Fe−B系永久磁石における残留磁束密度(Br)の理論値は、R2Fe14B金属間化合物の飽和磁化Isである1.6Tであるとされ、最大エネルギー積((BH)max)で512kJ/cm3であるとされている。これは、R2Fe14B金属間化合物(単結晶)による値であるため、市場に供される焼結磁石やボンド磁石といった形態においては、残留磁束密度1.6Tを得ることは実質的に不可能であるが、それに限りなく近づけることは可能である。
しかし、特許文献2による方法では、最高でも残留磁束密度(Br)は1.4T程度であり、また、特許文献3による方法では、ボンド磁石の例が記載されているが、焼結磁石の場合に得られる残留磁束密度Brについては具体的に記載がなく、この方法も焼結磁石に適用した際に得られる効果は不明である。いずれにしても、近年の要求を満足するためには、それ以上の残留磁束密度(Br)を得ることが必要である。
本発明は、配向磁界は高ければ高いほどよい、磁界分布は均一なほどよいという従来の考え方を根本的に変える配向方法により、主相結晶粒の磁化容易軸方向の配向度をさらに高め、電気・電子機器の小型・軽量化および高機能化に対応した高磁気特性を備えた永久磁石を提供することを目的とする。
本発明による永久磁石粉末の配向方法は、配向磁界方向に永久磁石粉末を配向させる永久磁石粉末の配向方法であって、配向磁界方向に長さLを有する空間の内部に永久磁石粉末を充填密度1.4〜4.2g/cm3で充填する工程と、前記空間の配向磁界方向における中心以外の位置で磁界強度が最高値を示し、かつ、前記空間の配向磁界方向の両端部のうち前記磁界強度が最高値を示す位置から遠い方の端部における磁界強度が前記磁界強度の最高値よりも1.0T以上低くなる傾斜磁界を形成することにより、前記空間内に充填されている永久磁石粉末に磁力を及ぼし、それによって前記磁界強度の最高値を示す位置の近傍で前記永久磁石粉末の充填密度を相対的に上昇させながら磁界配向を行なう傾斜磁界印加工程とを含む。
好ましい実施形態において、前記傾斜磁界印加工程は、パルス磁界を印加する工程である。
好ましい実施形態において、前記傾斜磁界印加工程を複数回行なう。
好ましい実施形態において、複数回行なう前記傾斜磁界印加工程のうち、第1回目の傾斜磁界印加工程と第2回目の傾斜磁界印加工程との間で、印加磁界の極性を変化させる。
好ましい実施形態において、複数回行なう前記傾斜磁界印加工程のうち、第1回目の傾斜磁界印加工程と第2回目の傾斜磁界印加工程との間で、印加磁界の強度分布が示す勾配の極性を変化させる。
好ましい実施形態において、前記第1回目の傾斜磁界印加工程と前記第2回目の傾斜磁界印加工程とを繰り返す。
好ましい実施形態において、前記空間の配向磁界方向における中心で磁界強度が最高値を示す磁界を印加する工程を更に含む。
好ましい実施形態において、前記配向磁界は、磁界強度が略直線的に変化する部分を含む強度分布を有している。
好ましい実施形態において、前記傾斜磁界印加工程における前記配向磁界の前記最高値を1.0T以上に設定する。
好ましい実施形態において、前記傾斜磁界印加工程において、前記空間内に充填されている永久磁石粉末に磁力を及ぼすとき、前記永久磁石粉末の配向磁界方向の移動を規制する。
好ましい実施形態において、前記永久磁石粉末は、R−Fe−B系磁石の粉末から構成されている。
好ましい実施形態において、前記永久磁石粉末は、ストリップキャスティング法によって得られた鋳片を粉砕することによって作製された粉末である。
好ましい実施形態において、前記永久磁石粉末を充填する前記空間が、可撓性を有するモールドによって規定される。
好ましい実施形態において、前記空間が、プレス装置のダイと上下パンチとによって規定される。
本発明の永久磁石の製造方法は、永久磁石粉末を用意する工程と、上記いずれかの永久磁石粉末の配向方法によって前記永久磁石粉末を配向する工程と、前記永久磁石粉末を成形し、焼結する工程とを含む。
好ましい実施形態において、前記成形は、冷間静水圧プレスによって行なう。
好ましい実施形態において、前記成形は、一軸圧縮プレスによって行う。
本発明の永久磁石は、上記いずれかの永久磁石の製造方法によって得られた永久磁石であって、配向度が92%以上である。
本発明の永久磁石は、上記いずれかの永久磁石の製造方法によって得られた永久磁石であって、理論値の90%以上の残留磁束密度(T)値を示す。
本発明の永久磁石粉末の配向方法によれば、強磁性を有する主相結晶粒の磁化容易軸方向の配向度を極限まで高めることができる。
例えば、本発明をR−Fe−B系焼結磁石の製造方法に適用することによって最も好ましい条件を選定した場合、残留磁束密度(Br)の値が1.533T(理論値のほぼ96%)、最大エネルギー積((BH)max)の値が460kJ/m3という、これまでには存在しなかった、極めて高い磁気特性を有する永久磁石を得ることが可能となる。これにより、近年要求される、電気・電子機器の小型・軽量化ならびに高機能化に十分に対応することが可能となる。
また、本発明は極めて簡便な方法であるため、永久磁石のコストアップを招くことがない。本発明によれば、磁界強度が比較的低くても極めて高い残留磁束密度Brを得ることできる。換言すれば、従来と同じ程度の残留磁束密度Brを得る場合、配向磁界の強度を低く設定してもよい。従って、従来よりも低い磁界で配向すること可能になるので、プレス装置におけるコイル電源を小型化し、省エネルギーなどを実現することが可能になる。
さらに、本発明により得られる永久磁石は、減磁曲線の角型性に極めて優れている。
本発明は、強磁性を有する主相結晶粒の磁化容易軸の配向度を極限まで高めることができるという効果を有するため、本発明に適用できる永久磁石粉末としては、強磁性を有する主相結晶粒を有する永久磁石粉末が適用可能である。例えば、フェライト磁石、R−Co系磁石、R−Fe−B系磁石などである。中でも、R−Fe−B系磁石、特に、R−Fe−B系焼結磁石は本発明の効果を最も発揮することができる。
R−Fe−B系永久磁石を用いる場合、ストリップキャスティング法によって得られた厚さ0.1〜1.0mmの原料合金を水素粉砕法などによって粗く粉砕した後、ジェットミル粉砕などによって更に微粉砕した磁石粉を用いることが好ましい。原料合金の粗粉砕及び微粉砕は、上記方法に限定されず、他の公知の方法を用いて行なうことができる。また、粗粉砕によって得られた粗粉末粉や微粉砕によって得られた微粉砕粉に公知の潤滑剤を添加すると、永久磁石粉末の配向度をより一層向上させることができるので好ましい。
以下、本発明による永久磁石粉末の配向方法の一例を説明する。ここでは、永久磁石粉末としてR−Fe−B系焼結磁石の粉末を用いる例を説明する。
まず、図6を参照して、従来の配向方法を説明する。従来の配向方法では、図6に示すように、例えばゴムモールド内やプレス機のキャビティ内などの空間内の磁界分布が、空間の配向方向の長さLの中心に、磁界強度の最高値が位置するとともに、中央部付近において均一磁界を有し、端部へ行くほど磁界強度が低くなっていた。このような磁界分布中において、印加磁界強度の最高値が位置する中心付近(均一磁界内)で成形が行われていた。
次に、図1及び図2を参照して、本発明の永久磁石粉末の配向方法を説明する。
本発明による配向方法によれば、粉末が充填されるべき空間の磁界強度が図1に示す分布を持つように形成される。より具体的には、配向方向に長さLを有する上記空間の中心からシフトした位置で磁界強度が最高値を示す。図1の例では、図の左側端部に近い位置に磁界強度の最高値を示す位置があり、右側端部へ行くに従って磁界強度が低くなっている。つまり、磁石粉末が充填される空間内における磁界強度の分布が非対称であり、配向方向に沿って変化している。このような磁界を「傾斜磁界」と称することとする。
本発明では、空間内における磁界強度の最高値(a)と、前記空間の端部のうち磁界強度が最高値を示す位置からから遠い方の端部における磁界強度(b)との差(「a−b」)が1.0T以上になるようにパルス状の磁界を印加する。
なお、磁界強度の最高値を示す位置から近い方の端部(c)は、この最高値(a)よりも磁界強度が低いが、最高値を示す位置から遠い方の端部(b)よりも磁界強度が高い方が望ましい。このとき、図の中心に対して、磁界強度が最高値を示す位置を含む左側の領域が高磁界強度側となり、最高値を示す位置から遠い方の端部を含む図中右側の領域が低磁界強度側となる。
図2は、本発明による最も好ましい磁界分布例である。印加磁界強度が左側端部から右側端部へと略直線状に傾斜しながら低下していることが特徴である。
前記磁界強度の最高値が位置する近傍で高く、最高値から遠い方の端部近傍で低くし、前記傾斜磁界中において磁界配向を行うと、空間内の永久磁石粉末の充填密度は、前記磁界分布における磁界強度の最高値が位置する近傍(高磁界強度側)で高く、最高値から遠い方の端部近傍(低磁界強度側)で低くなることが本発明の特徴である。
上記の充填密度の変化について、図1を例にとって説明すると、図1の如く、空間の中心より左側に磁界強度の最高値を有する傾斜磁界中で配向を行うと、各永久磁石粉末は磁界強度の最高値が位置する側(高磁界強度側、図中左側)へ移動しようとする力が働くが、結果として、その端部には空間壁面が存在するため、この空間の壁面に永久磁石粉末が押し寄せされて、充填密度が高くなる。逆に、磁界強度の最高値から遠い方の端部側(低磁界強度側、図中右側)の充填密度は低くなる。このとき、空間内の容積全体における平均充填密度は磁界印加前の充填密度と同じである。
このように、磁界印加後の永久磁石粉末の充填密度が、磁界分布中における高磁界強度側で高くなることによって、永久磁石粉末は印加磁界方向へ配向されたままで固定されることとなる。従って、パルス磁界を印加し終わったのちも、その固定状態を維持するので、静磁界などの外部磁界を印加し続ける必要がないという利点がある。
本発明によれば、上記のような永久磁石粉末の移動と空間内における充填密度の変化により、永久磁石粉末の配向度が向上されているものと考えられる。こま永久磁石粉末の移動と空間内における永久磁石粉末の充填密度の変化は、磁界印加前に空間内に充填する永久磁石粉末の充填密度を1.4〜4.2g/cm3にしておくことによって起こる。充填密度が1.4g/cm3未満では永久磁石粉末の移動は起こるが充填密度の変化が起こらず、パルス磁界印加後、その配向状態が維持されず、永久磁石粉末の配向度が低下する。一方充填密度が4.2g/cm3を超えると永久磁石粉末の移動が起こり難くなり、永久磁石粉末の配向度が低下するため好ましくない。より好ましい範囲は3.0〜4.0g/cm3である。
前述の特許文献2に開示されている方法では、モールド内でパルス磁界を反転させながら繰り返して印加するが、特許文献2は傾斜磁界の使用については教示も示唆もしてない。このため、特許文献2の方法では、従来通り、モールドの全体に対して均一な磁界を印加していると考えられる。従って、特許文献2の方法によれば、永久磁石粉末の移動と空間内における永久磁石粉末の充填密度の変化は起こっておらず、本発明のような効果は得られない。
一方、特許文献3に開示されている方法では、配向磁界領域(成形空間)よりも弱い磁界強度を有する弱磁界領域又は無磁界領域から配向磁界領域へ磁性粉を移動させる。ただし、磁性粉は特定の空間内の所定の密度を有するように充填されておらず、磁性粉の存在しない部分を広く含む空間の内部を磁性粉が移動している。このため、磁性粉の移動は空間を仕切る部材によって規制されず、磁性粉の全体が空間内を比較的自由に移動する。磁性粉は、移動後もコイルによる静磁場によって引き付けられて集合しているだけである。このため、磁性粉の位置による充填密度の変化は生じず、そもそも、磁性粉が自由に移動できる広い空間が形成されているため、磁性粉は充填されているとは言えず、「充填密度」という概念すらない。従って、永久磁石粉末の移動とともに空間内における永久磁石粉末の充填密度の変化は起こっておらず、本発明のような効果は得られない。
また、特許文献3においては、空間内における平均の粉末密度が極めて低いので、配向後に磁粉末の配向方向が固定されない。従って、配向後も静磁界を印加し続けて、成形が終了するまで配向を維持し続けなければならない。
従来、配向磁界は高ければ高いほどよく、磁界分布は均一なほどよいという考え方が存在したが、本願発明では、その考え他を根本的に変えている。
本発明において、配向のために磁性粉末が充填される空間(形成される磁界強度の分布が配向方向に沿って変化している空間)は、プレス装置のダイと上下パンチとで形成されるキャビティや、例えばゴムや樹脂などの可撓性を有するモール度によって規定されることが好ましい。前述のように、本発明では、このような空間内に永久磁石粉末を充填密度1.4〜4.2g/cm3で充填するため、空間内を永久磁石粉末は塊となって移動することはできない。すなわち、永久磁石粉末を構成する個々の粒子はミクロなスケールでは自由に移動するとともに回動することもできるため、充填密度かに分布が生じるが、空間の内壁が粉末の移動を規制するため、特許文献2に記載されているような空間内を磁性粉末がかたまりとなって移動することはない。
本発明では印加する磁界は、パルス磁界である。印加磁界の強度分布における最高値は1.0T以上であることが好ましい。磁界強度の最高値が1.0T未満では、永久磁石粉末を配向することが困難となるため好ましくない。磁界強度の最高値の上限値は、現在一般的に使用されている着磁装置の範囲において、コイル電源装置の大きさや消費電力などを考慮して決定すればよい。但し、本発明による傾斜磁界による配向方法を用いることにより、従来の配向方法のように、高い磁界強度を印加しなくても、比較的低い磁場でも従来と同等の磁気特性を有する永久磁石を得ることが可能になる。言いかえれば、従来と同様に高い磁界強度を印加することにより、従来よりも格段に優れた磁気特性を有する永久磁石を得ることが可能になる。
本発明による配向方法は、傾斜磁界中において1回行えば、本発明による効果を得ることができるが、2回以上(複数回)行うことにより、さらに効果を向上させることができる。複数回行う場合は、第1回目の配向と第2回目の配向との印加磁界の極性を異ならせるか、あるいは強度を異ならせることが好ましい。
図1を参照しながら、印加磁界の極性を異ならせる場合を説明すると、例えば、高磁界強度側(図中左側)をN極、低磁界強度側(図中右側)をS極として第1回目の配向を行った場合、第2回目は高磁界強度側(図中左側)をS極、低磁界強度側(図中右側)をN極とする。この場合、永久磁石粉末の移動はほとんど起こらないが、未配向粉末の配向ができ、永久磁石粉末の配向度が向上する。
次に、図1を参照しながら、印加磁界の傾斜方向を異ならせる場合を説明すると、高磁界強度側(図中左側)をN極、低磁界強度側(図中右側)をS極として第1回目の配向を行った場合、第2回目は、図中左側を低磁界強度とし、図中右側を高磁界強度とする。つまり、右下がりの傾斜を右上がりの傾斜に入れ替える。この場合、永久磁石粉末の移動と空間内における充填密度の変化が起こり、永久磁石粉末の配向度がさらに向上する。なお、この時、極性はそのままでも切り替えてもよい。
また、上記の極性を異ならせる場合を繰り返し行ったり、傾斜方向を異ならせる場合を繰り返し行ったり、それらを組み合わせて繰り返し行うこともできる。この場合、最も好ましいのは、第1回目の配向と第2回目の配向の傾斜方向を異ならせ、それを繰り返し行うことである。
本発明は、これまで述べた上記の構成によって永久磁石粉末の配向度を向上させることができるが、充填密度が変化したまま次の工程となる成形工程へ進むと、成形体に密度差が生じることとなり、配向度の向上により磁気特性は格段に向上するものの、焼結体の変形、その変形による加工工程の増加などを招く可能性がある。
そこで、本発明の配向方法により、1回あるいは複数回の傾斜磁界による配向を行ったのち、空間の配向方向の長さLの中心に印加磁界の強度の最高値が位置する磁界分布、すなわち、従来から行われていた均一な磁界分布で、少なくとも1回配向することにより、成形体の密度差が解消し、焼結体の変形を抑制することができる。但し、この場合においても、上記の通り、磁界印加前に特定の充填密度で充填し、傾斜磁界中で配向を施しているため、単に均一磁界中で高磁界強度によって配向されたものや、均一磁界中で繰り返し反転させるパルス磁界によって配向されたもの(特許文献2)に比べ、永久磁石粉末の配向度が向上していることは言うまでもない。
上述した本発明による永久磁石粉末の配向方法によって配向した粉末は、以下の方法によって成形される。
可撓性を有するモールド内の永久磁石粉末を配向した場合、成形は、冷間静水圧プレスによって行うことが好ましい。先に説明したように、配向後の永久磁石粉末は、モールド内で所定の配向方向に固定されているので、成形時の磁界印加は基本的に必要でない。むろん、磁界を印加して成形しても差しつかえはない。
プレス装置におけるダイと上下パンチとで形成されるキャビティ内で永久磁石粉末を配向した場合、成形は、上下パンチによる一軸圧縮プレスによって行う。この時も、上記と同様に、成形時の磁界印加は基本的に必要ではないが、磁界を印加してもよい。
成形後の成形体は、公知の手段によって焼結、熱処理され、焼結磁石となす。
これによって、主相結晶粒の磁化容易軸の配向度を極限まで高めた、永久磁石を得ることができる。
得られた永久磁石は、焼結体の配向度が92%以上であり、また、理論値(1.6T)の90%以上の残留磁束密度(Br)を発現することができる。この配高度、残留磁束密度は、従来方法では得られなかった、極めて優れた特性を発揮する。
(実施例1)
組成が、Nd28.51.00Co0.50Cu0.05Al0.05残部Fe(mass%)を溶解し、合金溶湯をストリップキャスティング法によって急冷し、合金鋳片を得た。合金鋳片は厚さ0.3mmであった。
上記合金鋳片を、水素粉砕、脱水素によって粗粉砕し、さらに、ジェットミル粉砕によって、平均粒径3μmに微粉砕した。
次に、得られた微粉砕粉を、直径25mm、高さ25mmのゴムモールドに充填密度3.5g/cm3で充填し、ゴム製の蓋によってゴムモールドを密閉した。
上記ゴムモールドを図3に示す磁界分布の傾斜配向(1)領域において配向した。図3に示す通り、磁界分布は、配向方向の長さLの中心以外(図3においては左側)に磁界強度の最高値(8.0T)が位置し、かつ、最高値と配向方向における該最高値から遠い方の端部(4.5T)との強度差が3.5Tであった。配向は、図3による傾斜配向(1)の磁界分布で1回(第1回目の配向)、傾斜配向(1)の分布を全く逆にした磁界分布(測定位置31mm位置における磁界強度が8.0T、測定位置57.5mm位置における磁界強度が4.5T、強度差が3.5T)で1回(第2回目の配向)、パルス磁界を印加することによって行った。
次いで、配向後のゴムモールドを、冷間静水圧プレスによって成形した後、ゴムモールドを除去して内部の成形体を取り出し、この成形体を温度1373Kで2時間焼結し、さらに823Kで1時間熱処理を施し、焼結磁石を作製した。
(実施例2)
図3に示す磁界分布の傾斜配向(1)領域で1回配向を行う以外は、実施例1と同じ条件で焼結磁石を作製した。
(実施例3)
図3に示す磁界分布の傾斜配向(2)領域(測定位置40mm位置における磁界強度が7.5T、測定位置67mm位置における磁界強度が2.5T、強度差が5.0T)で1回配向を行い(第1回目の配向)、次いで傾斜配向(2)の分布を全く逆にした磁界分布で1回(第2回目の配向)パルス磁界を印加する以外は、実施例1と同じ条件で焼結磁石を作製した。
(実施例4)
図3に示す磁界分布の傾斜配向(2)領域で1回配向を行う以外は、実施例1と同じ条件で焼結磁石を作製した。
(比較例1)
図3に示す磁界分布の中心配向領域で1回配向を行い、極性を逆にして1回配向する以外は実施例1と同じ条件で焼結磁石を作製した。
(比較例2)
図3に示す磁界分布の中心配向領域で1回配向を行う以外は、実施例1と同じ条件で焼結磁石を作製した。
図4に実施例1(傾斜(1)の◆印)、実施例2(傾斜(1)の■印)、実施例3(傾斜(2)の◆印)、実施例4(傾斜(2)の■印)比較例1(中心の◆印)及び比較例2(中心の■印)の残留磁束密度Br(T)の値を示す。
図4から明らかなように、傾斜磁界中において第1の配向と第2の配向の磁界強度を異ならせた本発明による実施例1の磁石は、均一磁界中において極性を異ならせて配向した従来の比較例1による磁石に比べて、Brが大きく向上していることがわかる。また、傾斜磁界中において1回配向を施した本発明による実施例2の磁石も、均一磁界中においてい1回配向した従来の比較例2に比べ、Brが向上しており、従来の比較例1と同等のBrを有することが分かる。
さらに、特筆すべきは、磁界強度の最高値が傾斜(1)よりも低い磁界分布で配向した実施例3と実施例4の磁石が、実施例1と実施例2の磁石よりもBrが高いということである。この結果は、従来の「磁界分布は均一なほどよい」という考え方を根本的に変えるものであり、本発明の大きな特徴である。
これらの結果から、磁界強度が比較的低くても、傾斜磁界中で配向することにより、極めて高いBrを得ることできる。換言すれば、従来と同じ程度のBrを得るのならば、磁界強度はもっと低くてもよいことになる。すなわち、従来よりも低い磁界で配向すること可能になるので、従来に比べ、コイル電源の小型化、省エネルギーなどを実現することが可能になる。
図5は、減磁曲線の角型性を示している。本発明による実施例1及び実施例2の磁石は、従来の比較例に比べ、角型性に極めて優れることが分かる。また、Brの傾向と同様に、角型性においても、実施例3及び実施例4の磁石は、実施例1及び実施例2の磁石よりも優れている。
これは、傾斜磁界中における配向によって、永久磁石粉末の移動と空間内における充填密度の変化が同時に起こっているからであると考えられる。
本発明は、高性能化が強く求められている永久磁石に広く適用される。
本発明の永久磁石の配向方法を示す説明図である。 本発明の永久磁石の配向方法を示す説明図である。 磁界分布を示す説明図である。 配向方法とBrの関係を示すグラフである。 配向方法と減磁曲線の角型性の関係を示すグラフである。 従来の永久磁石の配向方法を示す説明図である。

Claims (10)

  1. ストリップキャスティング法によって得られた鋳片を粉砕することによってR−Fe−B系永久磁石粉末を作製する工程と、
    可撓性を有するモールドによって規定される空間またはプレス装置のダイと上下パンチとによって規定される空間であって配向磁界方向に長さLを有する空間の内部に前記永久磁石粉末を充填密度3.5〜4.2g/cm3で充填する工程と、
    前記空間の配向磁界方向における中心以外の位置で磁界強度が最高値を示し、かつ、前記空間の配向磁界方向の両端部のうち前記磁界強度が最高値を示す位置から遠い方の端部における磁界強度が前記磁界強度の最高値よりも1.0T以上低くなる傾斜磁界を前記空間にパルス磁界によって印加することにより、前記空間内に充填されている永久磁石粉末に磁力を及ぼし、それによって前記磁界強度の最高値を示す位置の近傍で前記永久磁石粉末の充填密度を相対的に上昇させながら磁界配向を行なう傾斜磁界印加工程と、
    前記傾斜磁界印加工程により配向された永久磁石粉末を成形し、焼結する工程と、
    を含む永久磁石の製造方法
  2. 前記傾斜磁界印加工程を複数回行なう請求項に記載の永久磁石の製造方法
  3. 複数回行なう前記傾斜磁界印加工程のうち、第1回目の傾斜磁界印加工程と第2回目の傾斜磁界印加工程との間で、印加磁界の極性を変化させる請求項に記載の永久磁石の製造方法
  4. 複数回行なう前記傾斜磁界印加工程のうち、第1回目の傾斜磁界印加工程と第2回目の傾斜磁界印加工程との間で、印加磁界の強度分布が示す勾配の極性を変化させる請求項に記載の永久磁石の製造方法
  5. 前記第1回目の傾斜磁界印加工程と前記第2回目の傾斜磁界印加工程とを繰り返す請求項またはに記載の永久磁石の製造方法
  6. 前記空間の配向磁界方向における中心で磁界強度が最高値を示す磁界を印加する工程を更に含む、請求項1からのいずれかに記載の永久磁石の製造方法
  7. 前記配向磁界は、磁界強度が略直線的に変化する部分を含む強度分布を有している請求項1からのいずれかに記載の永久磁石の製造方法
  8. 前記傾斜磁界印加工程における前記配向磁界の前記最高値を1.0T以上に設定する請求項1からのいずれかに記載の永久磁石の製造方法
  9. 請求項からのいずれかに記載の永久磁石の製造方法によって得られた永久磁石であって、
    配向度が92%以上である永久磁石。
  10. 請求項からのいずれかに記載の永久磁石の製造方法によって得られた永久磁石であって、
    理論値の90%以上の残留磁束密度(T)値を示す永久磁石。
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