JP4369642B2 - 電気ケーブル及び高電圧電源用モールド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1kV以上の高電圧に耐えられる、乳酸系樹脂を含む電気絶縁材料を用いた電気ケーブル及び高電圧電源用モールドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、送電線等の高電圧用電気ケーブル絶縁材料として用いられている低密度ポリエチレンは、融点が低く、ケーブル通電時に導体発熱すると絶縁体が加熱され、変形を起こすおそれがあるため、これを防ぐために化学架橋させて用いられている。この架橋工程を必要とする電力ケーブル製造法は、架橋反応を完結させるために製造に要する時間が長くなるのが問題であった。
【0003】
高電圧用の絶縁材料には、絶縁特性に加えて、絶縁破壊が起こりにくいこと(絶縁破壊電圧が高いこと)が要求される。電気ケーブルは今後益々高電圧化することが予想され、現状の架橋ポリエチレンより高い絶縁破壊強度を有することが望まれている。また、ポリエチレンは、絶縁破壊時の電気トリーが長く伸びるため、絶縁破壊の事前検知が困難であるという問題もある。
【0004】
一方、使用済みの電気ケーブルは分別され、金属はリサイクルされるが、架橋した樹脂はその性格上、再利用が困難である。このようにして生じる廃樹脂の処分は、他の廃棄物処理と同様、近年問題になっている。
また、仮設ケーブルを土壌中に埋設する場合、再び土壌中から回収するには膨大なコストを要し、また回収しない場合には、樹脂が半永久的に環境中に放置されることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
(1)本発明が解決しようとする課題の一つは、生分解性を有する高圧用電気絶縁材料を用いた電気ケーブル及び高電圧電源用モールドを提供することにある。
(2)本発明が解決しようとする課題の一つは、絶縁破壊電圧が高い高圧用電気絶縁材料を用いた電気ケーブル及び高電圧電源用モールドを提供することにある。
(3)本発明が解決しようとする課題の一つは、電気トリー形状の良好な高圧用電気絶縁材料を用いた電気ケーブル及び高電圧電源用モールドを提供することにある。
(4)本発明が解決しようとする課題の一つは、優れた生分解性、高い絶縁破壊電圧、良好な電気トリー形状を併せ有する高圧用電気絶縁材料を用いた電気ケーブル及び高電圧電源用モールドを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記発明が解決しようとする課題に鑑み、従来の技術においては、いわゆる当業者によって、その生分解性のみに脚光を浴びてきたポリ乳酸系樹脂につき、種々の物理化学的特性につき、鋭意検討をした結果、驚くべきことに、ポリ乳酸系樹脂が、極めて優れた絶縁特性を有するという知見を見い出し、本発明を完成するに至った。
そして、この驚くべき知見に基づき、鋭意検討を推進した結果、ポリ乳酸系樹脂を電気絶縁材料として用いることにより、上記課題を解決できるという知見を見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]に記載した事項により特定される。
【0007】
[1] 電気絶縁材料を、少なくとも一部に含んで構成される電気ケーブルであって、
前記電気絶縁材料が、
分子中の全繰り返し構造単位を基準として、乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)を70〜100モル%、並びに、乳酸単位以外の繰り返し構造単位としてグリコール酸由来の繰り返し構造単位(グリコール酸由来の繰り返し構造単位(グリコール酸単位))、及び/又は、ヒドロキシカプロン酸由来の繰り返し構造単位(ヒドロキシカプロン酸単位)を0〜30モル%有し、1万〜100万の重量平均分子量(Mw)を有するポリ乳酸系樹脂を含み、かつ絶縁破壊強度が500kV/mm以上である
ことを特徴とする電気ケーブル。
[2] 前記ポリ乳酸系樹脂中の乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)における異性体含有量が、0〜10モル%であることを特徴とする、[1]に記載した電気ケーブル。
[3] 電気絶縁材料を、少なくとも一部に含んで構成される高電圧電源用モールドであって、
前記電気絶縁材料が、
分子中の全繰り返し構造単位を基準として、乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)を70〜100モル%、並びに、乳酸単位以外の繰り返し構造単位としてグリコール酸由来の繰り返し構造単位(グリコール酸由来の繰り返し構造単位(グリコール酸単位))、及び/又は、ヒドロキシカプロン酸由来の繰り返し構造単位(ヒドロキシカプロン酸単位)を0〜30モル%有し、1万〜100万の重量平均分子量(Mw)を有するポリ乳酸系樹脂を含み、かつ絶縁破壊強度が500kV/mm以上である
ことを特徴とする高電圧電源用モールド。
[4] 前記ポリ乳酸系樹脂中の乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)における異性体含有量が、0〜10モル%であることを特徴とする、[3]に記載した高電圧電源用モールド。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
[ポリ乳酸系樹脂]
本発明において、ポリ乳酸系樹脂とは、ポリ乳酸、乳酸とヒドロキシカルボン酸等の共重合可能な多官能性化合物とのコポリマー、及び、それらの混合物を包含する。
ポリ乳酸系樹脂は、分子中の全繰り返し構造単位を基準として、乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)を少なくとも50モル%以上有するものである。また、混合物の場合、ポリ乳酸系樹脂以外の成分は30重量%未満である。混合物の場合、相溶化剤を含有してもよい。
【0015】
これらのポリ乳酸系樹脂のうち、ホモポリマーであるポリ乳酸、又は、乳酸単位以外の繰り返し構造単位を0〜10モル%含む共重合体が好ましい。
ポリ乳酸の場合、光学異性体含有量が0〜10モル%のポリL−乳酸、又は、ポリD−乳酸がより好ましい。
すなわち、D−乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)を0〜10モル%含むポリL−乳酸、又は、L−乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)を0〜10モル%含むポリD−乳酸が特に好ましい。D−乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)を1〜8モル%含むポリL−乳酸がさらに好ましい。
【0016】
ポリ乳酸系樹脂がコポリマーの場合、コポリマーの配列の様式は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体の何れでもよい。さらに、これらは少なくとも一部が、キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート等の多価イソシアネートや、セルロース、アセチルセルロースやエチルセルロース等の多糖類等の架橋剤で架橋されたものでもよく、少なくとも一部が、線状、環状、分岐状、星状、三次元網目構造等のいずれの構造をとっていてもよく、何ら制限されない。
【0017】
[乳酸]
原料となる乳酸は、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、又は、それらの混合物が挙げられ、乳酸の環状2量体であるラクチドを樹脂の原料として用いる場合には、L−ラクチド、D−ラクチド、およびメソ−ラクチド、又は、それらの混合物が挙げられる。
【0018】
[共重合可能な多官能性化合物]
共重合可能な多官能性化合物としては、例えば、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシメチルカプロン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸;グリコリド、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状エステル;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の飽和脂肪族多価カルボン酸、及びこれらの無水物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール等の多価アルコール;セルロース等の多糖類、α−アミノ酸等のアミノカルボン酸等を挙げることができる。
これらのうち、グリコール酸、6−ヒドロキシカプロン酸が好ましく用いられ、その含有量(共重合体組成)は、0〜30モル%である。
これらの共重合可能な多官能性化合物は、一種類又は二種類以上の混合物であってもよく、不斉炭素を有する場合、L体、D体、及びその任意の割合の混合物であってもよい。
【0019】
[ポリ乳酸系樹脂の製造方法]
本発明において使用するポリ乳酸系樹脂の製造方法は特に限定されないが、例えば、特開昭59−096123号、特開平7−033861号等に記載されている、乳酸を直接脱水縮合して得る方法、又は、米国特許第4,057,357号、Polymer Bulletin,14巻,491−495頁(1985年)、Makromol.Chem.,187巻,1611−1628頁(1986年)等に記載されている乳酸の環状二量体であるラクチドを用いて開環重合させる方法等により得ることができる。
【0020】
[ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量]
本発明において使用するポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万〜100万であり、3万〜50万がより好ましく、5万〜30万がさらに好ましい。本発明で使用するポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、その製造方法において、原料の種類、溶媒の種類、触媒の種類及び量、反応温度、反応時間、反応系の脱水の程度等の反応条件を適宜選択することにより所望のものに制御することができる。
【0021】
[用途]
ポリ乳酸系樹脂は、絶縁性が高く、電気絶縁材料として広く用いることができる。電気絶縁材料としては、例えば、電線・ケーブル用被覆材料、民生用・産業用電子機器、複写機・コンピューター・プリンター等のOA機器、計器類などの一般絶縁材料、硬質プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、衛生通信機器用などの高周波回路基板、液晶基板・光メモリー・自動車や航空機のデフロスタ等の面発熱体等の透明導電性フィルムの基材、各種メモリー・トランジスタ・IC・LSI・LED・MCM等の半導体素子及び封止材及び部品、モーター、コンクター、スイッチ、センサー等の電気・電子部品の封止材料、テレビやビデオカメラ等のボディ材料、パラボラアンテナ、フラットアンテナ、レーダードームの構造部材、マルチチップモジュール内部における、配線と配線との間の層間絶縁膜、あるいは絶縁膜、平坦化膜、表面保護膜及びフレキシブル回路用基材等を挙げることができる。
【0022】
本発明において使用するポリ乳酸系樹脂を含んでなる電気絶縁材料は、絶縁破壊電圧が高いことから、特に、高電圧用絶縁材料として好適に使用される。本出願明細書において、高電圧とは、少なくとも100V/mm以上の電圧、好ましくは少なくとも500V/mm以上の電圧、より好ましくは少なくとも1kV/mm以上の電圧、より好ましくは少なくとも5kV/mm以上の電圧、より好ましくは少なくとも10kV/mm以上の電圧、より好ましくは少なくとも50kV/mm以上の電圧、より好ましくは少なくとも100kV/mm以上の電圧、より好ましくは少なくとも500kV/mm以上の電圧、より好ましくは少なくとも1000kV/mm以上の電圧を意味する。本発明によれば、従来の技術の材料によったのでは実現に困難が伴う、500kV/mm以上、場合により、600kV/mm以上の高電圧が負荷されても、破壊することなく良好に絶縁性を発揮する。従って、送電等に用いられる電気ケーブル、高電圧電源用モールドに用いることができる。高電圧用電気ケーブルとしては、少なくとも導体を、ポリ乳酸系樹脂を含む絶縁層で被覆した電線ケーブルであり、必要に応じて、導体部分を集合線にしたり、導体と絶縁層の間に半導電層を設けることや、絶縁層の外部に難燃性の樹脂層を構成したりすることができる。また、銅製の集合線からなるワイヤーに導電性炭素、又は、金属粉を加えた樹脂組成物を被覆して半導電層とし、その上にポリ乳酸系樹脂を被覆し絶縁層を構成し、更にそのうえに金属シートで被覆、又は、半導電層を設け、最外部に難燃性樹脂や鼠忌避性樹脂を被覆してなるケーブル、銅製の単線に炭素、又は、金属粉を加えた樹脂組成物を被覆して半導電層とし、その上にポリ乳酸系樹脂を被覆し絶縁層を構成し、更にその上に金属フィルム層を設け、かかる銅線被覆体を数本〜数十本組み合わせ最外部に難燃性樹脂や鼠忌避樹脂を被覆してなるケーブル等が挙げられるが、ポリ乳酸系樹脂は高圧の電気に対して特に効果が著しく、大容量ケーブル、直流ケーブルとして好適に使用される。
【0023】
本発明の電気ケーブルは、6.6kV以上の電力ケーブル、66kV以上の電力ケーブルとして好適に用いられる。本発明の電気ケーブルは公知の方法によって形成される。また、本発明のケーブルの構造としては、導体上に連続被覆にて形成される。また、本発明のケーブルの構造としては、導体上に単独一層で絶縁体を被覆したもの、ジャケット付きのもの、導体上セパレータ付きのもの、導体上、絶縁体上に半導体層を付与したもの等が挙げられる。
【0024】
[添加剤]
本発明で使用するポリ乳酸系樹脂には、目的に応じて添加剤を加えることができる。添加剤の例としては、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防菌剤、核形成剤等が挙げられる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
▲1▼ GPC
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として以下の条件で評価した。
装置 :Shodex GPCsystem−11
カラム:PLgel 5μm MIXED−C
(ポリマーラボラトリー社製)
溶媒 :クロロホルム
濃度 :1重量%
注入量:20μL
流速 :1.0mL/min
【0027】
▲2▼ 試料の誘電率、誘電正接、体積固有抵抗の試験方法
試料の誘電率、誘電正接、体積固有抵抗の試験方法は、それぞれ、ASTMのD−150、D−150、D−257に従って行なった。
【0028】
▲3▼ 生分解性の評価
生分解性は、5X5cmの試験フィルム片(厚み0.2mm)を温度35℃、水分30%の土壌中に埋設して分解試験を行い、外観変化を観察した。
【0029】
[製造例1]
L−ラクチド100重量部及びオクタン酸第一錫0.01部と、ラウリルアルコール0.03部を、攪拌機を備えた肉厚の円筒形ステンレス製重合容器へ装入し、真空で2時間脱気した後、窒素ガスで置換した。この混合物を窒素雰囲気下で攪拌しながら200℃で3時間加熱した。温度をそのまま保ちながら、排気管及びガラス製受器を介して真空ポンプにより徐々に脱気し反応容器内を3mmHgまで減圧にした。脱気開始から1時間後、モノマーや低分子量揮発分の留出がなくなったので、容器内を窒素置換し、容器下部からポリマーをストランド状に抜き出してペレット化し、ポリ乳酸を得た。重量平均分子量は13.6万であった。
【0030】
[製造例2]
Dien−Starkトラップを設置した1Lの反応器に、90%L−乳酸100gを150℃、50mmHgで3時間攪拌しながら水を留去させた後、錫末0.062gを加え、150℃、30mmHgでさらに2時間攪拌してオリゴマー化した。このオリゴマーに錫末0.288gとジフェニルエーテル211gを加え、150℃、35mmHgで共沸脱水を行ない、留出した水と溶媒を水分離器で分離して溶媒のみを反応器に戻した。2時間後、反応器に戻す溶媒を460gのモレキュラーシーブス3Aを充填したカラムに通してから反応器に戻りようにして、150℃、35mmHgで40時間反応を行ない、ポリ乳酸の溶液を得た。この溶液に脱水したジフェニルエーテル440gを加え、希釈した後40℃まで冷却して、析出した結晶を濾過し、100gのn−ヘキサンで3回洗浄して60℃、50mmHgで乾燥した。この粉末を0.5N塩酸120gとエタノール120gを加え、35℃で1時間攪拌した後濾過し、60℃、50mmHgで乾燥して、ポリ乳酸を得た。このポリ乳酸の重量平均分子量は14.5万であった。
【0031】
[製造例3]
L−ラクチド90重量部、DL−ラクチド(L−ラクチドとD−ラクチドの1:1混合物)10重量部、及びオクタン酸第一錫0.01部と、ラウリルアルコール0.03部を、攪拌機を備えた肉厚の円筒形ステンレス製重合容器へ装入し、製造例1と同様に加熱反応させた。反応終了後、容器下部からポリマーをストランド状に抜き出してペレット化し、光学異性体(D−乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位))を5モル%含有するポリL−乳酸を得た。重量平均分子量は15.1万であった。
【0032】
[製造例4]
L−ラクチド97重量部、グリコリド3重量部、及びオクタン酸第一錫0.01部と、ラウリルアルコール0.03部を、攪拌機を備えた肉厚の円筒形ステンレス製重合容器へ装入し、製造例1と同様に加熱反応させた。反応終了後、容器下部からポリマーをストランド状に抜き出してペレット化し、乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)96モル%、グリコール酸由来の繰り返し構造単位(グリコール酸単位)を4モル%含有する乳酸−グリコール酸共重合体を得た。重量平均分子量は14.5万であった。
【0033】
[製造例5]
L−ラクチド97重量部、ε−カプロラクトン3重量部、及びオクタン酸第一錫0.01部と、ラウリルアルコール0.03部を、攪拌機を備えた肉厚の円筒形ステンレス製重合容器へ装入し、製造例1と同様に加熱反応させた。反応終了後、容器下部からポリマーをストランド状に抜き出してペレット化し、乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)96モル%、6−ヒドロキシカプロン酸由来の繰り返し構造単位(ヒドロキシカプロン酸単位)を4モル%含有する乳酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体を得た。重量平均分子量は12.2万であった。
【0034】
[製造例6]
低密度ポリエチレン(三井化学製、ミラソンSL011)300gに触媒入りポリエチレン(三井化学製、SLMB12)23.1gを混合し、165℃でシート成形した(シート厚0.1mm)。その後シートを80℃の水中に浸漬して一晩放置して架橋反応を行った後、シートを取り出してよく乾燥した。
【0035】
[実施例1]
製造例1で得られたポリL−乳酸を熱プレス機により200℃にてプレスし、0.1mm厚の成型体を得た。
この成型体を乾燥器中で、120℃で、5分間熱処理した。
この成形体試料を2個の3/4インチのSUS球電極にはさみ、波形1.2×50μ秒のインパルス電圧を3kVstepで3回印加して、試料が破壊された時の電圧を測定したところ、600kV/mmであった。絶縁破壊時の電気トリー形状も良好であった。誘電率は3.0、誘電正接110×10−4、体積固有抵抗は1Ω・cm×1016以上であった。
生分解試験の結果、3ヶ月後に外力により容易に形が崩れた。
【0036】
[実施例2]
製造例2で得られたポリL−乳酸を、実施例1と同様に処理し、0.1mm厚の成型体を得た。
この成形体試料を、実施例1と同様にインパルス絶縁破壊強度を測定したところ、640kV/mmであった。電気トリー形状も良好であった。
誘電率は3.1、誘電正接120×10−4、体積固有抵抗は1Ω・cm×1016以上であった。
生分解試験の結果、3ヶ月後に外力により容易に形が崩れた。
【0037】
[実施例3]
製造例3で得られた光学異性体(D−乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位))を5モル%含有するポリL−乳酸を実施例1と同様に成形し、0.1mm厚の成形体を得た。この成形体試料を、実施例1と同様にインパルス絶縁破壊強度を測定したところ、702kV/mmであった。電気トリー形状も良好であった。
【0038】
[実施例4]
製造例4で得られた乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)96モル%、グリコール酸由来の繰り返し構造単位(グリコール酸単位)を4モル%含有する乳酸−グリコール酸共重合体を実施例1と同様に成形し、0.1mm厚の成形体を得た。この成形体試料を、実施例1と同様にインパルス絶縁破壊強度を測定したところ、610kV/mmであった。電気トリー形状も良好であった。
【0039】
[実施例5]
製造例5で得られた乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)96モル%、6−ヒドロキシカプロン酸由来の繰り返し構造単位(ヒドロキシカプロン酸単位)を4モル%含有する乳酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体を実施例1と同様に成形し、0.1mm厚の成形体を得た。この成形体試料を、実施例1と同様にインパルス絶縁破壊強度を測定したところ、590kV/mmであった。電気トリー形状も良好であった。
【0040】
[比較例1]
製造例6で得られた架橋ポリエチレンの成形体(0.1mm厚)を、実施例1と同様にインパルス絶縁破壊強度を測定したところ、483kV/mmであった。絶縁破壊時の電気トリーが長く伸びており、絶縁破壊の事前検知が困難であるという問題があった。
誘電率は2.3、誘電正接<5×10−4、体積固有抵抗は1Ω・cm×1016以上であった。生分解性試験の結果、12ヶ月以上外観に変化はなく、生分解性を示さなかった。
【0041】
【発明の効果】
本発明の高圧用電気絶縁材料は、絶縁破壊電圧が高く、電気絶縁性と生分解性に優れるので、種々の分野で幅広く使用することができる。
▲1▼ 本発明の効果の一つは、生分解性を有する高圧用電気絶縁材料を提供することができることにある。
▲2▼ 本発明の効果の一つは、絶縁破壊電圧が高い高圧用電気絶縁材料を提供することができることにある。
▲3▼ 本発明の効果の一つは、電気トリー形状の良好な高圧用電気絶縁材料を提供することができることにある。
▲4▼ 本発明の効果の一つは、優れた生分解性、高い絶縁破壊電圧、良好な電気トリー形状を併せ有する高圧用電気絶縁材料を提供することができることにある。
Claims (4)
- 電気絶縁材料を、少なくとも一部に含んで構成される電気ケーブルであって、
前記電気絶縁材料が、
分子中の全繰り返し構造単位を基準として、乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)を70〜100モル%、並びに、乳酸単位以外の繰り返し構造単位としてグリコール酸由来の繰り返し構造単位(グリコール酸由来の繰り返し構造単位(グリコール酸単位))、及び/又は、ヒドロキシカプロン酸由来の繰り返し構造単位(ヒドロキシカプロン酸単位)を0〜30モル%有し、1万〜100万の重量平均分子量(Mw)を有するポリ乳酸系樹脂を含み、かつ絶縁破壊強度が500kV/mm以上である
ことを特徴とする電気ケーブル。 - 前記ポリ乳酸系樹脂中の乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)における異性体含有量が、0〜10モル%であることを特徴とする、請求項1に記載した電気ケーブル。
- 電気絶縁材料を、少なくとも一部に含んで構成される高電圧電源用モールドであって、
前記電気絶縁材料が、
分子中の全繰り返し構造単位を基準として、乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)を70〜100モル%、並びに、乳酸単位以外の繰り返し構造単位としてグリコール酸由来の繰り返し構造単位(グリコール酸由来の繰り返し構造単位(グリコール酸単位))、及び/又は、ヒドロキシカプロン酸由来の繰り返し構造単位(ヒドロキシカプロン酸単位)を0〜30モル%有し、1万〜100万の重量平均分子量(Mw)を有するポリ乳酸系樹脂を含み、かつ絶縁破壊強度が500kV/mm以上である
ことを特徴とする高電圧電源用モールド。 - 前記ポリ乳酸系樹脂中の乳酸由来の繰り返し構造単位(乳酸単位)における異性体含有量が、0〜10モル%であることを特徴とする、請求項3に記載した高電圧電源用モールド。
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