JP4368228B2 - ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
中でもポリエステル樹脂フィルムを貼り合せる方法は、フィルムの加工性やバリヤ性が比較的優れることから、実用化に向けて開発が進められている。
接着剤を用いてポリエステル樹脂フィルムを金属板に貼り合せる方法が提案されており(例えば、特許文献1、2参照)、これらのように接着剤を介して貼り合せる方法によれば強固な密着性を得ることができるが、接着剤の塗布・乾燥工程が必要であり、生産性が低く実用的でない。
ポリエステル樹脂フィルムを貼り合せた後、樹脂フィルムの融点以上に加熱して樹脂フィルムを溶融させる方法も提案されている。この方法によると、高い加工密着性が得られ、また樹脂フィルム層が非晶質となるためフィルム加工性も向上する。しかしながら、内容物充填後の殺菌加熱処理の際に樹脂フィルムが白濁し外観が著しく劣ってしまうため実用的でない。
(F50値の平均値)
F50値の0、45、90、135°方向平均値が80〜160MPaであることにより、殺菌加熱処理での白濁、しわの発生を有効に防止できる。F50値の平均値が80MPa未満であると、殺菌加熱処理での耐白濁性が低下し、F50値の平均値が160MPaを越えると殺菌加熱処理でしわが発生しやすくなる。よってF50値の平均値は80〜160MPaとした。同様の理由で100〜135MPaが好ましい。
F50値の最大値/最小値≦2.0であることにより、殺菌加熱処理での局部的なしわの発生を抑えることができる。F50値の最大値/最小値が2.0を越えると成形加工により生じるフィルム内の残留応力が強い異方性を持ち、殺菌加熱処理により局部的なしわが発生しやすくなる。よって最大値/最小値≦2.0であり、好ましくは1.5以下である。
特にネジキャップに用いられる際に、ネジキャップの内面のフィルムF50値が80MPa未満の場合、繰り返し開閉による耐摩耗性に優れた特性が得られる。80MPa以上の場合、耐摩耗性に劣る。
8%以上の含有により、外層のF50値が80MPa未満とならない温度で後加熱できる温度範囲が工業的レベルで十分確保できるだけの外層と内層の融点差が得られ、かつ後加熱時に内層が十分に流動し、良好な密着性が得られる。また、内層の変形抵抗が低ければ、成形加工後の外層の殺菌加熱処理による収縮が容易となるため、内層の変形抵抗は高いほど耐加工後熱処理性は高くなる。内層の変形抵抗は、内層のエステル単位のうちエチレンイソフタレート単位の総含有率が増加するほど低くなる。そこで内層のエチレンイソフタレート単位の総含有率は16モル%以下である必要がある。
内層の厚さが薄い場合、十分な加工密着性が得られない場合がある。アルミニウム合金板の表面には、圧延ロール表面の凹凸に対応した表面凹凸が存在する。アルミニウム合金板表面とフィルム表面とが十分になじむためには、ある程度以上の内層の量が必要であり、内層の量が少ない場合にはアルミニウム板の凹部に間隙が生じ、真の密着面積が低下し、十分な加工密着性を得ることができない。よって、フィルム内層の厚さがアルミニウム合金板表面の中心線平均粗さの3倍以上が好ましい。
また、内層の変形抵抗が低ければ、成形加工後の外層の殺菌加熱処理による収縮が容易となるため、内層の変形抵抗は高いほど耐加工後熱処理性は高くなる。内層の変形抵抗は、内層の厚さが厚いほど低くなる。そこでフィルム内層の厚さが、内層のエチレンイソフタレート単位の総含有率をIモル%として、6−(1/3)Iμm未満である必要がある。
外層に共重合成分を混合させることによって、樹脂フィルムの白濁化を抑えることができるが、共重合成分の増加は樹脂フィルムの製造コストを高くするため、現実的でない。コスト面から共重合成分は極力少なくする必要があるが、内層に含まれるエチレンイソフタレート単位がある程度外層に含まれることを考慮して、外層のエチレンイソフタレート単位の総含有率を3モル%以下とした。
耐白濁性を得るために、被覆樹脂フィルムに延伸時に形成された配向結晶を残存させている場合、非晶質状態と比較して被覆樹脂フィルムの加工性が低下している。このような状態で、絞り、しごき等の成形加工を行うと、被覆樹脂フィルムが破断する場合がある。
被覆樹脂フィルムの破断には、被覆樹脂フィルム内に生じる応力の三軸度が影響する。応力三軸度が小さいほど、被覆樹脂フィルムを破断させることなく大きな加工を施すことができる。応力三軸度を小さくするためには、被覆樹脂フィルムの厚さを薄くすることが有効である。そこで、外層の厚さを11μm以下とする必要があり、好ましくは9μm以下とすることが望ましい。
一方、外層の厚さが6μm未満では二軸延伸に要するコストが嵩む。
アルミニウム合金板の表面にポリエステル樹脂フィルムを加圧ロールに挟んで加圧圧着する際、該アルミニウム合金板の板温度および加圧ロールの表面温度を内層のガラス転移温度以上に加熱することにより、アルミニウム合金板とポリエステル樹脂フィルムを貼り合せることが可能である。この状態でもある程度の密着性は得られているが、このままでは軽度の加工により樹脂被覆フィルムが容易に剥離する。この原因は、加圧圧着時にアルミニウム合金板と樹脂フィルムとの間に巻き込まれた空気により、アルミニウム合金板と樹脂フィルムとの密着が阻害され、真の密着面積が小さくなっていることである。従って高い加工密着性を得るためには、加圧圧着によりアルミニウム合金板と樹脂フィルムとを貼り合せた後に、巻き込まれた空気を除去する必要がある。加圧圧着による貼り合せの後に、比較的高温で後加熱を行うことにより巻き込まれた空気を除去することが可能であり、そのための後加熱としては、内層のエチレンイソフタレート単位の総含有率をIモル%とした場合、(250−2.5I)℃以上、かつ、外層の融点未満であることが必要である。ここで言う融点は、F50値の平均値が80MPa未満となる温度に相当する。
本発明のポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板に用いられるアルミニウム合金板としては、飲食品用のキャップ、缶蓋等に一般的に用いられるアルミニウム合金板であれば用いることができる。例えば、キャップ用途にはJIS1200,3003等のアルミニウム合金板を用いることができるし、缶蓋用途にはJIS5182等のアルミニウム合金板を用いることができる。この合金板には、ポリエステル樹脂フィルムとの密着性を向上させるために、その表面にクロメート処理、アルマイト処理等が施されていることが望ましい。最近では無孔質アルマイト技術が開発されており、この技術によれば高い真の密着面積が得られるため、特に好適である。また、更に高い加工密着性が必要な場合には、シランカップリング剤を用いることもできる。
上記アルミニウム合金板に被覆される前記した所定の組成の樹脂フィルムが同じくコイル状にして加圧ロールの近傍に設置される。
予備加熱された該合金板は、該樹脂フィルムとともに加圧ロールに送られ、加圧圧着される。加圧圧着の際には、アルミニウム合金板の両面に樹脂フィルムを被覆してもよく、またアルミニウム合金板の片面に樹脂フィルムを被覆してもよい。
該後加熱により、高い加工密着性を得ることができる。その際必要に応じて、後加熱温度を前記上・下限温の範囲で選択し、アルミニウム合金板の熱処理を兼ねてもよい。該後加熱処理においても、予備加熱と同様に、適宜の加熱装置を使用する。
上記により製造された樹脂被覆アルミニウム合金板は、耐白濁性、耐加工後熱処理性、加工性、加工密着性に優れた特性を有している。
この方法によれば、片面は耐摩耗性に優れ、他方の面は耐白濁性、耐加工後熱処理性、加工性、加工密着性に優れた、特にネジキャップ等の用途に好適な樹脂被覆アルミニウム合金板を得ることができる。
なお、この方法の場合、それぞれの面に被覆する樹脂フィルムは同一であることが、樹脂フィルムのコストを抑える点から有利である。
JIS5182アルミニウム合金板からなる厚さ0.28mmのアルミニウム合金板に、常法によりクロムの付着量が15mg/m2となるようにリン酸クロメート処理を施した。
一方、アルミニウム合金板に被覆する樹脂フィルムとしては、それぞれエチレンイソフタレート単位とエチレンテレフタレート単位とからなるものを用い、アルミニウム合金板と接する側の内層と、アルミニウム合金板と接しない側の外層とからなる、2層ポリエステルフィルムを準備した。この2層ポリエステルフィルムは、共押出し成形後、2軸延伸して熱処理を施したものである。
表1に示す樹脂被覆アルミニウム合金板に対して、以下の評価試験を行った。
樹脂被覆アルミニウム合金板を塩酸水溶液に浸し、アルミ部分を溶解して、被覆フィルムを得た。フィルムの縦延伸方向に対して0°、45°、90°、135°方向にそれぞれ引張試験を行った。引張試験は、幅15mm×長さ100mmに切り出したフィルムの両端各25mmだけチャックし、引張速度200mm/minで行った。その際、伸びが50%になる応力(F50値)を求め、その結果を表2に示す。
樹脂被覆アルミニウム合金板に対して、210℃×5分の加熱処理を行い、白濁の程度を色差計により測定した。L*a*b*光学系で測色し、下記式により色差ΔE*を求めた。
ΔE*=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)1/2
色差ΔE*が小さいほど加熱による色の変化(白濁)が小さく、ΔE*が0〜0.5未満であれば○、0.5〜1.5未満であれば△、1.5以上では×と判定した。判定結果を表2に示す。
樹脂被覆アルミニウム合金板に対して、深絞り試験機により深絞り加工を行い、完全に絞りきる前に、絞りを中断して、ハット形に成形した。得られたハット形樹脂被覆アルミニウム合金板を150℃で90秒間加熱し、カップのフランジ部に発生したしわの本数を数えた。しわの本数が少ないほど耐加工後熱処理性に優れており、しわの数が50以下であれば○、51〜100であれば△、100を超える場合を×と判定した。判定結果を表2に示す。
樹脂被覆アルミニウム合金板に対して、深絞り試験機により深絞り・しごき加工を行った。得られた樹脂被覆アルミニウム合金カップのウオール部を観察し、フィルムの損傷の状態を観察した。フィルムに損傷が見られないものを○、部分的にフィルム表面に亀裂が見られるものを△、完全にフィルムが破断しているものを×と判定した。判定結果を表2に示す。
樹脂被覆アルミニウム合金板に対して、圧下率10%で冷間圧延加工を施した。圧延後の樹脂被覆アルミニウム合金板に対して、V字引裂き試験による密着性の評価を行った。図1に示すように樹脂被覆アルミニム合金板11に対し、8mm間隔で2本の切り込みを約10mmだけ導入した。評価したい側の面の切り込み部に、図1(a)のようにカッター等を用いてフィルムが切断される程度のキズ12をつける。その後図1(b)のように切り込みの間の部分3を曲げ、その状態で55℃水中に30分浸漬させる。しかる後に、55℃水中より取り出すことなく切り込み間の部分13を図1(c)のように引き裂く。その際、図2のように三角形の引き裂き部14が形成される。引き裂き部14には、評価面より剥離したフィルム15が残存する。三角形の引き裂き部全体の面積および剥離したフィルムの面積をそれぞれ測定し、(剥離したフィルムの面積)/(引き裂き部全体の面積)による剥離比率を算出した。剥離比率が小さいほど加工後の密着性が高く、5回測定した平均剥離比率が65%以下であれば○、それを超える場合には×と判定した。判定結果を表2に示す。
樹脂被覆アルミニウム合金板を、高速摩擦試験に供した。摩擦速度400mm/sec、押し付け荷重100kgで試験した後の樹脂フィルムの摩耗状況を確認した。摩耗粉の発生が認められない場合には○、摩耗粉の発生が認められる場合には△と判定した。
12 キズ
13 切り込みの間の部分
14 引き裂き部
15 剥離したフィルム
Claims (3)
- アルミニウム合金板の両面に、アルミニウム合金板と接する側の内層と、アルミニウム合金板と接しない側の外層とからなる2層構造ポリエステル樹脂フィルムが被覆されたポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板であって、一方の面に被覆された前記ポリエステル樹脂フィルムは、F50値の0、45、90、135°方向平均値が80〜160MPa、最大値/最小値≦2.0であり、他方の面に被覆された前記ポリエステル樹脂フィルムは、F50値の0、45、90、135°方向平均値が80MPa未満であることを特徴とするポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板。
- 前記ポリエステル樹脂フィルムは、エチレンイソフタレート単位とエチレンテレフタレート単位とからなる共重合ポリエステル単独または該共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレートとの混合物からなり、前記内層はエチレンイソフタレート単位の総含有率が8〜16モル%であり、該内層の厚さがアルミニウム合金板表面の中心線平均粗さの3倍以上、かつ、該内層のエチレンイソフタレート単位の総含有率をIモル%として、6−(1/3)Iμm未満であり、前記外層は、エチレンイソフタレート単位の総含有率が3モル%以下であり、該外層の厚さが6〜11μmであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板。
- 請求項2記載のポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法であり、アルミニウム合金板を予備加熱し、加熱された該合金板の片面にポリエステル樹脂フィルムを加圧ロールで挟んで加圧圧着した後、該ポリエステル樹脂の融点以上に加熱した後冷却し、その後片面にポリエステル樹脂が被覆されたアルミニウム合金板を再度予備加熱し、加熱された該アルミニウム合金板の樹脂フィルムを被覆していない側の表面にポリエステル樹脂フィルムを加圧ロールで挟んで加圧圧着し、その後、積層された樹脂被覆アルミニウム合金板を更に、内層のエチレンイソフタレート単位の総含有率をIモル%とした場合、(250−2.5I)℃以上、かつ、外層の融点未満で後加熱し、冷却することを特徴とするポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法。
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