JP4366631B2 - 画像投射装置及び画像投射方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度の光源を用いて構成される画像投射装置及び画像投射方法において安全対策を充分に講じるための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
大画面表示が可能な画像表示装置として、投射型のプロジェクタ装置が知られており、観察者は、光源からの光をスクリーン上に投射することによって映し出される映像を見ることができる。
【0003】
これまでプロジェクタ装置の光源として高輝度の投射管が用いられてきたが、明るさや色再現性等の改善、映像信号による変調のし易さ等を目的として、赤(R)、緑(G)、青(B)のレーザ光源を用いたプロジェクションシステムが提案されている。
【0004】
ところで、レーザ光を用いる場合には、その安全性の確保が重要課題とされ、例えば、視聴者が不用意にレーザ光の投射領域に侵入した場合の対策を充分に講じる必要がある。つまり、レーザ光が眼に直接に入った場合の危険性が指摘されており、その安全対策として、レーザ光の投射領域に人等が侵入したことを検知して、レーザ光の投射を遮断する機能をもった各種装置が提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−111585号公報
【特許文献2】
特表平11−501419号公報
【特許文献3】
特開2001−249399号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の装置では、安全対策を講じることに伴う問題、例えば、装置の構成が複雑化したり装置の大型化等に支障を来す等の問題がある。
【0007】
つまり、人体の安全性が重視される装置では、そのための安全機構が必須とされるが、該機構の付設によって投射光学系等が複雑化したり、あるいは装置コストの著しい上昇をもたらす等の不都合が生じた場合には、普及等を妨げる原因となる虞がある。また、安全機構の動作遅れは許されず、侵入検出には迅速性が要求される。
【0008】
そこで、本発明は、スクリーン上に画像を投射して表示する機能を備えた画像投射装置において、照射光の投射範囲に人体等が侵入する場合の安全性を向上させるとともに、そのために構成の複雑化等を伴わないようにすることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る画像投射装置は、上記した課題を解決するために、装置本体部のうちスクリーンとの対向面又はスクリーンに設けられた検出波源と、該検出波源からスクリーン上の投射領域の外側に離れて位置する監視領域に検出波が出射された後、該監視領域で反射された反射波を検出する反射波検出手段とを備え、該反射波検出手段による検出レベルを所定の閾値又は基準範囲と比較した結果に基づき、上記検出波によって包囲される監視空間内への侵入について検知し、検出波が赤外光又は赤外線であって、反射波検出手段が撮像素子を用いて構成され、該撮像素子による検出画像データをもとに監視領域が監視されるとともに、該監視領域の幅が、検出波源によってスクリーン上に投射される領域よりも狭くされ、反射波検出手段として、監視空間の侵入について検出する第1検出手段と、監視空間の外側領域を含む監視空間への侵入について検出する第2検出手段と、第1検出手段により侵入が検出された場合に警報処理を行う第1警報手段と、第2検出手段により侵入が検出された場合に警報処理を行う第2警報手段とを備えているものである。
【0010】
また、本発明に係る画像投射方法は、画像投射装置から距離をおいて位置するスクリーン上の投射領域に対して、その外側に離れて位置する監視領域を規定するとともに、該監視領域に対して画像投射装置の前面に設けられた検出波源から検出波を出射して、該監視領域からの反射波を検出することによって該検出波によって包囲された監視空間への侵入について検出し、投射領域に向けて照射される光を、侵入の状態に応じて遮断し又は該光の強度を低下させ、検出波として赤外光又は赤外線を用い、撮像素子により検出される画像データをもとに、検出波源によってスクリーン上に投射される領域よりも狭い幅の監視領域を監視し、監視領域及び画像投射装置の前面から該監視領域への検出波の通過領域を含む第1監視空間及び該監視領域のさらに外側に設けられる第2監視空間を規定し、各監視空間への侵入についてそれぞれ検出して、侵入の状態に応じて警報処理を行うものである。
【0011】
従って、これらの発明によれば、スクリーンに対向する検出波源を設けるとともに、検出波源から出射されて監視領域で反射した反射波を検出することによって、監視空間内への侵入を簡易な構成で検知することができる。そして、該監視空間への侵入が検出された場合には、投射領域への照射光を遮断したり、光強度を低下させることで、人体が危険に曝されないように防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、画像投射装置において、照射光(レーザ光等)の投射領域に障害物が侵入したときに直ちに光を遮断したり光強度を低下させることで、安全性を保証することを目的とする。
【0013】
図1は、本発明に係る画像投射装置の基本構成例を概略的に示したものであり、レーザ光源を用いた装置の一例(レーザプロジェクタ装置等)を示している。
【0014】
画像投射装置1は、装置本体部から一定の距離をもって位置されたスクリーン2上の投射領域3への投射によって画像表示を行うための光源1aと、投射レンズを含む投射部1bを備えている。例えば、レーザ光源(RGBの各色レーザ光源)と光モジュレータ(変調手段)を備え、レーザ光を用いてスクリーン2上に画像を投射する機能を有する構成が知られている。尚、光モジュレータは、RGBの各色レーザ光を画像信号に応じて変調する変調器及び光学系を備えており、レーザ光は画像信号に応じて変調され、例えば、光走査手段を構成するガルバノミラー等によって走査(スイープ)が行われる。また、光モジュレータは、各色レーザ光をスクリーン2上に投射するために、対物レンズを含む投射光学系を備えており、光走査手段によってスイープされた各色レーザ光が、該投射光学系を介してスクリーン2に照射される。尚、本発明の適用においては、照明光を映像信号で変調してスクリーン上に投射させる形式のプロジェクタ装置に限らず、各種構成形態のプロジェクタ装置に適用することができる。
【0015】
尚、光源1aとしては、光強度や輝度の高い放電灯や発光管等を用いた構成も挙げられるが、特に、レーザ光源を用いた構成形態では、投射管等を用いた場合に比較して、明るさや色再現性の点で優れた特性をもち、また映像信号の変調が容易である。但し、前記したようにレーザ光源を用いる場合には、投射部1bからスクリーン上の投射領域3に向かう照射光通過領域内への人体等の侵入に対して、安全対策を講じる必要がある(例えば、レーザ光の遮断又は光強度を低下させる等。)。
【0016】
図1において、スクリーン2上に実線で示す矩形枠「LA」がレーザ光の投射領域3の外形枠を示しており、該領域内に画像が投影されて表示される。
【0017】
画像投射装置1においては、例えば、レーザ光の投射領域3に向かう照射範囲に視聴者が不用意に侵入した場合でも人体に危害を与えない(レーザ光が眼に直接入らないようにする等)ための安全機構が設けられており、設定領域(監視空間)への侵入検出において検出波を利用し、該検出波の反射波を検出する。そして、人等が当該領域に侵入したことが検知された場合に、投射領域3への照射光を遮断し又は該照射光の強度を充分に低下させる(人の眼に影響を及ぼさないように防止する。)。
【0018】
検出波を用いた侵入検出手段については、検出波源1c及び反射波検出手段1dを備えている。
【0019】
検出波源1cは、装置本体部のうちスクリーン2に対向する前面又はスクリーン上に設けられており、例えば、赤外光や赤外線の発光源として、発光ダイオード(LED)等の安全な光源を用いることができる(赤外光が視聴者の眼に入っても安全上の問題がない。)。
【0020】
検出波源1cから発した検出波(図1の2点鎖線4を参照。)は、スクリーン2に向けて照射される。図1において、スクリーン2上に破線で示す矩形枠IRが検出波の投射領域を示している。本例では、レーザ光の投射領域3の外側に位置して該領域よりも一回り大きくされた4辺形の領域である。尚、検出波の投射領域(矩形枠IR)の方がレーザ光の投射領域3よりもサイズ(画角)が大きく設定されている理由は、投射領域3に視聴者等が侵入する前にそのことを検知する必要性のためである。
【0021】
反射波検出手段1dは、スクリーンからの検出波の反射波を検出するために設けられている。つまり、検出波源1cから投射領域3の外側に離れて位置する所定領域(図2の監視領域6を参照。)に検出波が出射された後、該領域で反射された反射波を検出する。例えば、検出波として赤外光や赤外線を用いる場合に、その反射波センサとして、撮像素子(CCD型やCMOS型イメージセンサ等)が挙げられる。
【0022】
尚、検出波源1cや反射波検出手段1dは、スクリーン2に対向する面(装置本体部の前面)に設けられた投射部1bの周囲に配置されている。本例に示すように、反射波検出手段1dが投射部1bの近傍に位置され、それらを取り囲むようにして検出波源1cを配置させた構成にすると、装置の小型化やコンパクト化に有利である。また、反射波検出手段1dを投射部1bに近い場所に設けることによって、誤検出等の発生確率を低減することが可能である(例えば、反射波検出手段1dが投射部1bから離れ過ぎている場合には、投射に無関係な検出が行われてしまい、侵入検知がこれに反応すると不必要に安全機構が作動する虞が生じる。)。この他、検出波に変調をかける等の方法を用いることにより、検出精度を高め、あるいは誤検出を防止することができる。
【0023】
図2は、スクリーン2上において、レーザ光の投射領域3、検出波の投射領域5(破線の範囲で示す。)、監視領域6の関係を例示したものである。
【0024】
監視領域6は、投射領域5にほぼ対応した位置に設定されているが、該監視領域6の幅は投射領域5よりも狭くされている。本例では、監視領域6が、長方形枠(4辺形)の各辺にそれぞれ対応した、所定幅の4領域6A〜6Dから構成されているが、これに限らず、少なくとも1辺以上の監視領域を用いた各種形態での実施が可能である。
【0025】
図2に示す各領域6A〜6Dのうち、領域6Aが4辺形の左辺部、領域6Bが4辺形の上辺部、領域6Cが4辺形の右辺部、領域6Dが4辺形の下辺部をそれぞれ構成している。そして、各構成領域については、該領域にそれぞれ対応して、反射波検出手段1dによって検出される範囲(検出範囲)に係る取得データに基いて監視される。例えば、赤外光又は赤外線の反射波センサや撮像素子等を用いる場合において、各構成領域の検出画像を構成する画素データを用いた処理によって侵入監視が行われる。
【0026】
尚、投射領域3の外形枠LAから監視領域6までの距離(図3の「W」参照)に関しては、人体の動作等から想定される侵入速度及び人体や障害物の侵入が検知されてからレーザ光が遮断され又は減光されるまでの所要時間との関係等に基いて決定される(つまり、この距離が短かすぎると、侵入検知後のレーザ光遮断又は減光が間に合わなくなってしまう虞が生じるので、距離(間隔)設定を適切に行う必要がある。)。
【0027】
監視領域6については、例えば、下記に示す形態が挙げられる。
【0028】
(a)スクリーンのうち反射率の高い範囲に設定する形態
(b)スクリーン周縁部の反射率の低い範囲に反射部材(再帰反射シート等)を設ける形態。
【0029】
形態(a)では、投射領域3がスクリーン2のうち反射率の高い範囲に位置された状態で画像投射が行われ、通常、その最大サイズ(白地部分の大きさ)よりも、やや小さい範囲とされることを考慮し、投射領域3の外周に各領域6A〜6Dの位置を設定する。つまり、スクリーン2において反射率の高い範囲をそのまま利用することができる反面、監視領域6の存在が投射領域3の画サイズに影響して、表示範囲がやや狭くなる。
【0030】
そこで、形態(b)では、スクリーン周縁部(黒地部分等)に再帰反射シート等を貼り付け、この部分を監視領域として利用することで、スクリーンいっぱいに画像表示を行うことが可能となる。
【0031】
監視領域6については、画像投射装置1からスクリーン2までの距離の測定値及び投射レンズのF値に基いて投射領域3よりも大きいサイズ及び位置に設定する。その際には、いきなり光強度の高い照射光を投射領域3に当てるのではなく、初めに眼にとって十分安全な明るさの照射光を投射領域3に投射して、その画角を観測することで、監視領域6の大きさ及び位置の設定を行うことが好ましい。
【0032】
図3は、検出波の強度分布について模式的に示したものであり、該強度分布を示すグラフ曲線7については、矢印Lで示す方向において検出波の強度を表し、これに直交する方向がスクリーン2上での位置を示している。
【0033】
検出波は、投射領域3の外形からその外側に「W」で示す間隔をおいた位置に向けて照射されるが、監視領域6の幅(6A乃至6Dの幅)よりもやや広い範囲において所定レベル以上のほぼ一定な強度を示し、該範囲よりもスクリーン2の内側又は外側にいくにつれて強度が次第に減少する分布をもっている。つまり、投射領域5の幅に比して監視領域6の幅が大き過ぎると、検出波強度の低い裾野部が監視領域6にかかってしまうために、強度が不安定化したり、検出に必要なS/N(信号対ノイズ)比が十分に得られない等の問題が起きる。そこで、監視領域6の幅については、スクリーン2に対向する方向から見た場合に、検出波の投射領域5内であって、検出波の強度が所定レベル以上とされたほぼ一定のレベル範囲(平坦域)内に収まるように設定することが好ましい。
【0034】
次に、監視処理について説明する。
【0035】
上記反射波検出手段1dによって監視領域6の各領域6A乃至6Dを監視し、侵入検出に係る判断処理を行う場合の原理は、以下の通りである。
【0036】
監視領域の各構成領域については、例えば、反射波検出手段1dによる検出画像として監視される。一例として、ある監視領域6Bの大きさが、これに対応する検出画像において、「幅2画素×長さ600画素=合計1200画素」の画サイズに相当し、各画素データについては、所定の階調表現に従って反射波の強度を示すものとする。つまり、検出波はスクリーン2上の投射領域5に照射されて該スクリーンで反射し、その反射波の強度が監視領域の検出画像を構成する各画素のデータとして認識される。例えば、スクリーン2からの反射波の強度が、256階調の精度をもって検出される場合に、画素データに基く反射波強度の基準範囲を予め設定しておき、実際の反射波強度がこの基準範囲内に入っているか否かを調べることで、侵入検出の判断が可能である。基準範囲を仮に70〜120に規定した場合において、実際の反射波強度が基準範囲に満たない場合(0〜69)や、基準範囲を超える場合(121〜255)には、そのデータを示した画素において検出波が遮られたこと、又は逆に明る過ぎることが認識される。
【0037】
上記監視領域に係る1200画素のうち、予め決められた画素数(例えば、6画素)以上について、上記基準範囲との比較結果から反射波強度が許容されないと判断されて、強度低下や強度上昇が認められた場合には、人体や障害物の侵入があったものと判定される。尚、各画素データに基く反射波強度の検出値の変化については、人体や障害物の侵入によって検出波が遮られたり、検出波を直接反射することによって引き起こされる。反射波検出手段1dによる検出レベルを、所定の閾値又は基準範囲と比較するとともに、その比較結果に基づいて、検出波によって包囲される監視空間内への侵入について検知することができる。尚、この「検知」には、人体や物体に係る存在の有無は勿論、その大きさあるいは移動方向等の検出も含まれる。
【0038】
以上のように、検出画像全体ではなく、監視領域に相当する画像の一部についてレベル比較により検出を行うことが有効であり、複雑で時間のかかる画像処理は不要である。
【0039】
このような監視システムによって人等の侵入が検知された場合には、安全機構が働く。即ち、反射波検出手段1dは、監視領域6(6A〜6D)に関してスクリーン2からの反射波を検出する。反射波検出手段1dは、スクリーン2からの反射波強度を監視領域6の各画素データによって測定し、例えば、人体や障害物の侵入によって反射された検出波強度が、そのような侵入がない場合にスクリーン又は反射部材(再帰反射シート等)からの反射波強度と異なることを検出する。そして、いずれかの監視領域について強度の低下や上昇を含む異常が検出された場合に照射光(レーザ光等)が遮断され又は減光される。その機構については、例えば、下記に示す構成形態が挙げられる。
【0040】
・光源1aの出射光を、メカニカルシャッター等の遮断機構で遮光する形態
・光変調手段の駆動制御、例えば、光変調素子の駆動をオフ状態(暗状態)にする等の形態
・光源1aへの電源供給を停止し又は該供給電力を低下させる形態
・上記形態の組み合わせ。
【0041】
図4は、画像投射装置1に関する安全対策の一例について説明するためのフローチャート図であり、本アルゴリズムに従えば、レーザ光の投射について安全性が確認されるまでの間、人の眼に十分安全な強さのレーザ光での投射を行うことで、該レーザ光の投射範囲に人が不用意に侵入した場合の事故を未然に防止することができる。
【0042】
処理ステップは以下の通りである。
【0043】
(S1)装置のスイッチを投入して動作を開始する
(S2)眼にとって十分に安全な強度をもってレーザ光を照射する
(S3)安全機構について設定状態を確認し、再設定を要する場合には(S4)に進み、設定に問題がなければ(S5)に進む
(S4)各種調整及び確認処理を行った後、(S3)に戻る
(S5)装置の使用者又は管理者が安全性を確認した上で、スイッチを投入して安全機構を働かせる
(S6)規定の明るさをもってレーザ光を照射する。この状態で上記したように人体や障害物の侵入が検出された場合には、該レーザ光が遮断されるか又は減光によって(S2)と同様に安全なレベルまでレーザ光の強度が低下する。
【0044】
尚、上記(S4)の調整や確認の事項については、例えば、下記に示す通りである。
【0045】
・投射距離の自動調整及び確認
・投射距離及び画角に基く監視領域の設定
・検出波のスクリーンへの照射及び距離に応じた検出波出力や照射位置等の自動調整
・スクリーンからの反射波強度の確認及び必要に応じたスクリーンのセッティング変更等。
【0046】
本例のように、検出波によって包囲される監視空間への侵入、特に人体の侵入が検出されないことを確認するまでの間は、照射光の強度を人体に危険のないレベルまで低下させた上で画像投射を行い、安全性が充分に確認された後で、照射光の強度を規定レベルまで上昇させるように制御を行うことが望ましい。そして、画像投射装置1において監視空間への人体や障害物の侵入がないことを確認した後、念のためにユーザ(装置のオペレータ)が投射領域3に人体や障害物の侵入がないことを確認した上で、専用のスイッチを投入することで初めて照射光の投射出力を上げるようにすると、さらに安全性を高めることが可能である。
【0047】
尚、上記(S2)乃至(S4)については手動又は自動で行うことができるが、ユーザの利便性の観点からは自動化が好ましい。また、前回の調整や設定状態を、その時の条件(投射画角や投射距離等)とともに装置内の記憶手段に記憶させておき、次回の装置起動時には、前回の記憶情報を現状から得られる情報と照合することが好ましい。例えば、照合結果が許容される場合(つまり、前回の状態と大差ない場合)には、上記(S2)から(S5)に進むが、照合結果から状況が大きく変化している場合には、調整や設定を最初からやり直すように構成する。
【0048】
次に、侵入検出及び危険防止の機能をもつプロジェクタ装置の一例について、図5乃至図20を用いて説明する。尚、投影光線(レーザ光)の通過領域に人間が侵入したことを検出して、人間の眼に光線が入射されることを防止する形態や危険のない程度に光線の強度を低減する形態への適用が可能である。
【0049】
図5はプロジェクタ装置本体部及びスクリーンを示す斜視図であり、プロジェクタ装置は、その装置本体部1Aと、その上に載置されたCCD型イメージセンサ等の撮像手段100を備えている(上記反射波検出手段1dに相当する。)。
【0050】
そして、プロジェクタ装置の前方にはスクリーン40が配置されていて、その表面において映像の投影領域42が規定されるとともに、該領域の周縁域44には、矩形状をした監視領域46が規定されている。尚、本例では、監視領域46が、4辺形の各辺にそれぞれ相当する監視領域46A〜46Dから構成されている。
【0051】
図6は装置本体部1Aの正面図であり、投影レンズ32、撮像手段100、赤外線照射手段120(120A〜120D)を示している。
【0052】
装置本体部1Aの前面中央には投影レンズ32が位置され、該投影レンズ32からスクリーン40上の投影領域42に映像が投射される(投影レンズ32は焦点距離の調整が可能である。)。
【0053】
装置本体部1Aにおける前面の周縁部には、赤外線照射手段120が位置されており、本例では、赤外線を照射する4つの赤外線照射部120A〜120Dを有する。つまり、これらの赤外線照射部は、上記監視領域46を構成する監視領域46A〜46Dのそれぞれに対して、所定波長(例えば、λ=880nm)の赤外線を照射する。
【0054】
図7は赤外線照射部の1つ(120A)を例示したものであり、(A)図が正面図、(B)図が1個の発光素子を示す側面図であり、(C)図及び(D)図は赤外線照射角度の説明図である。
【0055】
各赤外線照射部120A〜120Dはいずれも同様の構成を有しており、(A)図に示すように、長手方向に沿って複数個の発光素子(例えば、赤外線を放射する11個の発光ダイオード)を配列したものが、長手方向に直交する方向(図の上下方向)において2段配置されている。
【0056】
各発光ダイオードには、(B)図に示すように、その前面に補正レンズ「LNS」が設けられている。そして、本例では、(C)図に示すように、該補正レンズの光軸を含む垂直面内において光軸方向を基準とする発散角度(仰角)が2°とされ、また、(D)図に示すように、水平面内において光軸方向を基準とする発散角度が34°とされて、各赤外線照射部のそれぞれに対応した監視領域(例えば、46A)に向けて赤外光を照射する。
【0057】
尚、各赤外線照射部に用いられる発光素子の数について同じである必要はなく、例えば、4辺形の長辺に位置する赤外線照射部120A、120Cに比べて4辺形の短辺に位置する赤外線照射部120B、120Dは使用素子数が少なくても良い。
【0058】
また、各赤外線照射部については、スクリーン40に向けた照射角度を手動又は自動で調整することができるようにするためのチルト機構が設けられている。つまり、本体部1Aからスクリーン40までの投射距離や両者の位置関係が常に固定されたものではないため、赤外線照射部120A〜120Dの照射方向や範囲等を調整したり、投影レンズ32の焦点距離等を調整できるように構成することが好ましい。プロジェクタ装置は種々の状況で利用される場合が多いので、例えば、投射距離が3mであって投影レンズ32とスクリーン40の投影領域42とが水平な位置関係にある場合や、投射距離が5mであって投影レンズ32から投影領域42に上向きに投影画像が照射される場合等、各種状況が挙げられる(投影レンズ32について向きや焦点距離の調整が可能であるとともに、赤外線照射部120A〜120Dのチルト(傾動)を可能とし、投影レンズ32のズーミング等に応じて各赤外線照射部のチルト角度を調整できるようにすることが好ましい。)。
【0059】
例えば、投射距離に応じて、手動又は自動で、図7(C)に上向きの矢印「U」又は下向きの矢印「D」に示すように調整可能である。
【0060】
図8は赤外線照射部に係る照射方向及び照射幅について説明するための図であり、赤外線照射部120Aを例にして、垂直面に直交する側方からみた様子を示している。
【0061】
垂直方向及び水平方向の発散角度や赤外線照射幅については、本体部1Aとスクリーン40との距離に応じて調整や設定を行うことができる。例えば、(A)図のように、赤外線照射部120Aからの光線(赤外光線)がほぼ平行光線とされて監視領域46Aに対して照射される光路設定や、(B)図に示すように、赤外線照射部120Aからの照射光線が接近して交差した後で、互いに離れるように進行する光路設定等が挙げられる。
【0062】
各赤外線照射部によってスクリーンの周縁域44に照射される赤外線の強度分布については、図3に説明した通りである。つまり、図3のグラフ曲線7が赤外線の強度を表しており、その強度ピークの範囲(平坦部)に対応するスクリーン40上の範囲内に、監視領域46が位置されている。例えば、距離「W」の値は10cmであり、また、各監視領域46A〜46Dの幅は全て同じとし、又は必要に応じてそれらの幅を個別に変えることも可能である。
【0063】
撮像手段100は、監視領域46を含むスクリーン40を撮像するが、撮像手段100の前面には、プロジェクタ装置の通常動作時に赤外成分のみ透過させるフィルタが設けられ、監視領域46を含む範囲から反射される赤外線を検出する(但し、後述する調整段階では該フィルタを取り外す必要がある。)。
【0064】
撮像手段100で検出される赤外線映像(フィルタを透過した赤外線による検出画像)は、後述する侵入検出及び危険防止制御部110によって信号処理される。
【0065】
図9はプロジェクションシステムの構成例を示すブロック図であり、光変調部10、光調整部20、光投射部30、スクリーン40、電源系統50、信号処理部60、撮像手段100、侵入検出及び危険防止制御部110、赤外線照射手段120、給電装置130を備えている。
【0066】
給電装置130は赤外線照射部120A〜120Dに給電を行うものであり、侵入検出及び危険防止制御部110からの指令を受けて、各赤外線照射部に供給する電力を変化させることができる。それにより、各赤外線照射部を構成する上記発光素子群の出力レベルについて調整及び設定が可能である。尚、侵入検出及び危険防止制御部110は侵入検出手段を構成しており、例えば、コンピュータ(メモリや表示装置等を含む)や、専用回路等を用いて構成されている。
【0067】
光変調部10は、光源部12、照明光生成部14、空間変調光生成部16を有する。
【0068】
光源部12は、緑色レーザダイオードLD(G)、青色レーザダイオードLD(B)、赤色レーザダイオードLD(R)を有し、各レーザダイオードは電源系統50の電源装置52から給電を受けて、各色のレーザビームを出射する。
【0069】
尚、電源系統50については、光源部12に対してレーザを駆動する電圧及び電流を出力する電源装置52と、レギュレータ54とを有しており、レギュレータ54によって電源装置52の出力レベルを調整できるように構成されている(出力調整については、侵入検出及び危険防止制御部110の指令に応じて電源装置52から光源部12に出力される電流等を、ゼロから最大許容値までの範囲に亘って任意に調整することができる。)。
【0070】
照明光生成部14は、光源部12から出射されたRGB各色のレーザビームを受け入れ、平行な照明光をそれぞれ生成するために設けられており、緑色照明光学部LG(G)、青色照明光学部LG(B)、赤色照明光学部LG(R)を有する。
【0071】
空間変調光生成部16は光変調手段を備え、本例ではグレーティング・ライト・バルブ(GLV:Grating Light Valve)と呼ばれる1次元光変調素子が用いられている。該素子は光のオン/オフ制御が電気的に可能な位相回折格子を用いて構成される(ディジタル画像表示に使用される。)。
【0072】
照明光生成部14からの各色光に対して、緑色用GLV(G)、青色用GLV(B)、赤色用GLV(R)がそれぞれ設けられており、空間変調光生成部16はさらにコンバイナ「MX」を有している。各色のGLVには、信号処理部60で処理される映像信号(VIDEO)に応じた変調用の駆動信号がドライバ回路64からそれぞれ供給され、照明光生成部14からの光が映像信号VIDEOに応じて変調されて出力される。
【0073】
コンバイナ「MX」は、各色GLVによる光を合成する手段(画像合成手段)であり、その出力光は後段の光調整部20に出射される。
【0074】
光調整部20は、オフナーリレー光学系22、ディフューザ光学系24を有し、空間変調光生成部16からの画像光について調整する。
【0075】
光調整部20の後段に位置する光投射部30は、投影レンズ32と、スキャナ34を有し、スクリーン上への画像の光投射手段を構成する。光投射部30の前方には投影用のスクリーン40が配置されて、ガルバノミラー等の偏向手段を備えたスキャナ34によって映像信号VIDEOに応じた画像がスクリーン40に投影される。尚、本例では、投影レンズ32の後段にスキャナ34が配置された形態を示しているが、両者の位置関係を逆にした形態(スキャン後に拡大投影する形態)等、各種形態での実施が可能である。
【0076】
信号処理部60は、映像信号処理部62、ドライバ回路64、全体制御部66、スキャナ制御部68を有する。
【0077】
映像信号処理部62には、図示しない映像ソース機器(コンピュータや記録再生装置等)からの映像信号VIDEOが入力され、ドライバ回路64を介して空間変調光生成部16の各GLVを制御して照明光(レーザ光)を変調する信号を生成するために信号処理が行われる。そして、ドライバ回路64は映像信号処理部62の出力信号を受けて駆動信号を各色GLVにそれぞれ送出して各素子を駆動する。
【0078】
スキャナ制御部68はスキャナ34についての回転制御を行うために設けられており、全体制御部66の制御下に置かれている。尚、全体制御部66は、例えば、ドライバ回路64からの信号に応じてスキャナ制御部68に指令を出したり、映像信号処理全般及び投射制御等を統括する。
【0079】
図10は侵入検出及び危険防止制御部110における処理の一例を示すフローチャート図であり、処理ステップS1〜S6は下記の通りである。
【0080】
(S1)装置起動
(S2)クラス1の光照射及び位置調整
(S3)クラス3Rのレベル調整
(S4)通過確認試験
(S5)調整終了
(S6)通常監視状態の設定。
【0081】
尚、(S1)乃至(S5)が初期調整に関するものであり、(S6)については初期調整後に装置を起動して使用する場合に設定される。また、(S2)、(S3)はいずれもレーザ光の照射調整に関するステップを示し、(S2)の「クラス1」の照射レベルでは、眼にとって充分に安全な強度まで低下した状態とされる。また、(S3)の「クラス3R」の照射レベルは、プロジェクタ装置の通常動作において使用される強度である(レーザ安全規格は「JIS C 6802」参照)。
【0082】
次に、図11を用いて上記S1乃至S6について説明する。尚、図11は横軸に時間をとり、縦軸にレーザ光の照射レベルをとってその時間的変化の経緯を例示したものであり、各時刻t1〜t4及び時間T1、T2の意味は下記の通りである。
【0083】
・「t1」=装置の電源スイッチをオンにした時点
・「t2」=クラス1からクラス3Rへの上昇開始時点
・「t3」=監視空間に人体や障害物が侵入を始めた時点
・「t4」=クラス3Rへの上昇開始時点
・「T1」=APRの動作時間
・「T2」=人体や障害物の監視空間への侵入時間(T2>T1)
図中の「APR」(Auto Power Reduction)は人体等の侵入検知時にレーザパワーのレベルを低減させる安全機構を意味し、「ON」が該機構の作動状態、「OFF」が該機構の作動後におけるレーザ光の遮断解除を意味する。
【0084】
先ず、上記ステップS1では、時点t1においてオペレータがプロジェクタ装置の電源スイッチ140(図9参照)を操作して該スイッチをオン状態とし、プロジェクタ装置の起動が指示される。これにより、プロジェクタ装置の各部に給電が行われる。尚、映像信号処理部62に映像信号VIDEOが供給されない状態では、映像がない状態で照明のみが行われる(但し、この状態で投影レンズ32から光が投影領域42を常に正しく投影しているわけではないことに注意を要する。)。
【0085】
次ステップS2では、レーザ光の照射レベル(パワー)がクラス1に上昇する。つまり、時点t1において、侵入検出及び危険防止制御部110に、電源スイッチ140がオンであることを示す信号が入力されると、光源部12に対する電力制御が行われて、クラス1のパワーをもつレーザ光が照射される。そして、スクリーン上での位置調整が行われる。
【0086】
プロジェクタ装置の装置本体部1Aとスクリーン40を設置した直後の状態では、赤外線照射部120A〜120Dから監視領域46A〜46Dに向けて照射された赤外線が予定された位置を正しく照射しているとは限らない。
【0087】
そこで、各赤外線照射部の指向性や、投射距離の調整の他、必要に応じて、投影レンズ32の焦点距離調整等が手段又は自動で行われる。例えば、スクリーン40内の投影領域42に該当する範囲に、投影レンズ32からの光が照射されるように、装置本体部1Aの向きや投影レンズ32の焦点距離等を調整する。そして、スクリーン40における投影領域42の位置が確定した後で、各赤外線照射部120A〜120Dからスクリーン上への照射範囲と、各監視領域46A〜46Dとがそれぞれ対応する位置関係をもつように両者の位置合わせを行う。
【0088】
尚、投射距離や表示位置、画サイズ等の調整、赤外線照射範囲と監視領域との間の位置合わせ等については、撮像手段100を使って、スクリーン40への投影レンズ32からの投射光及び各赤外線照射部を構成する発光ダイオードの投射光に関してそれらの反射光として撮像し、その撮像信号を侵入検出及び危険防止制御部110に入力するとともに、ここで信号処理を行うことにより画像表示で確認できるように構成する(投影領域42の調整等においては、撮像手段100に設けられた赤外線透過フィルタ(可視光カットフィルタ)は非装着状態とする。)。
【0089】
また、赤外発光パワーについて十分な安全性を保証することが必要である。
【0090】
図12は赤外LEDのパワーと距離との関係を例示したグラフ図である。
【0091】
「JIS C6802」に規定される、直接眼露光に対する角膜におけるMPE(Maximum Permissible Exposure)は、波長λ=880nm、照射時間t=3×10-4秒(0.3ms)のとき、0.733mW/cm2であり、本例においても、この基準を満足するように設計している。例えば、スクリーンサイズが80インチであって、投射距離が2.35mである場合に、監視領域46における赤外光のパワーは約0.15mW/cm2であり、監視領域46における赤外線照射幅は5cmである。別例としては、スクリーンサイズが180インチで投射距離が6.53mの場合、監視領域46における赤外光のパワーは約0.054mW/cm2であり、監視領域46における赤外線照射幅は5cmである。
【0092】
図13は、赤外線照射部120A〜120Dによる各投射領域と、監視領域46A〜46Dとの位置関係の調整及び確認処理について説明するための図である。本例では、投影レンズ32から投射された投影領域42への位置調整終了後に、侵入検出及び危険防止制御部110のメモリに記憶された撮像手段100の撮像結果を図示しない表示装置に表示させて、赤外線照射部120A〜120Dから監視領域46A〜46Dへの照射状態を確認する場合を例示している。
【0093】
(A)図は投影領域42が設定された直後の初期状態を示しており、投影領域42の周囲には、赤外線照射部120A〜120Dの投射範囲46a〜46d(破線で示す。)が、投影領域42の外縁から距離d1=30cm、距離d2=20cm、距離d3=20cm、距離d4=40cmをもってそれぞれ離れていることが数値で表示されている。
【0094】
撮像手段100はスクリーン40に照射された赤外線照射部120A〜120Dの光の反射について赤外透過フィルタを通して撮像する。例えば、監視領域幅が5cmとされて、その幅方向がいずれも6画素分のデータに相当し、図示した監視領域46の長手方向における各領域46A、46Cの長さが200画素分のデータ、また、領域46B、46Dの長さが114画素分のデータに相当する。そして、各画素データについては、例えば、256階調のデータとして表わされる。
【0095】
侵入検出及び危険防止制御部110は、撮像手段100から入力した撮像データを信号処理して、投射範囲46a〜46dに係る画素データを閾値、例えば、50で2値化して、50以上の画素データを論理値「1」、49未満の画素データを論理値「0」として区別し、投影領域42の部分と投射範囲46a〜46dを表示画面に表示させる。その際、投影領域42と投影部46a〜46dとの間隔を計算して距離d1〜d4として表示する。
【0096】
本例では上記W値が10cmとされており、よって、距離d1〜d4が全て10cm程度になるように、赤外線照射部120A〜120Dのチルト角度を調整する。
【0097】
(B)図は、投影領域42の上下周縁から10cmだけ離れた領域46A、46Cに、赤外線照射部120A、120Cからの光が投射される状態に調整されたことを示している。また、(C)図は、投影領域42の左右周縁から10cmだけ離れた領域46B、46Dに、赤外線照射部120B、120Dからの光が投射される状態に調整されたことを示している。
【0098】
尚、W=10cmという値はあくまで一例であり、ズーミングによる画角変化等に応じて赤外光や赤外線の投射範囲及び監視領域の位置設定を適切に行う必要があることは勿論である。
【0099】
(C)図の状態で位置調整が自動又は手動で行われた後、その確認を終えると、次ステップS3に進んで、クラス3Rでのレーザパワーの調整処理に進む。尚、このとき、撮像手段100には赤外線透過フィルタが装着されている。
【0100】
電源装置52から光源部12への供給電力を増加させていくことで、t2の時点でクラス1であったレーザパワーがクラス3Rまで上昇する。尚、時刻t2では上記APRが動作するように設定して安全機構の機能を有効化する必要がある。
【0101】
各監視領域46A〜46Dに係る反射光(赤外光)は撮像手段100によって受光される。侵入検出及び危険防止制御部110は、撮像手段100が撮像した反射光の検出レベルを画素データから取得して、そのレベルを基準範囲と比較して許容範囲内であるか否かを調べる。例えば、各画素データが256階調で表されるとした場合において、該データを閾値との比較によって2値化する。該閾値以上の画素データが論理値「1」に相当し、該閾値未満の画素データを論理値「0」に相当するものとして区別し、赤外光について正当に監視領域46A〜46Dが照射されていることを確認することが必要である。
【0102】
尚、実験によれば、各種の反射面に対する撮像素子(CCD型イメージセンサ)の検出レベルは下記表1で示した値であった。上記の閾値は、スクリーン40に使用する材質に応じて決定することが好ましく、例えば、スクリーン40の材質が、白色のマットのスクリーン、白い紙等の場合に、55程度に設定すれば、侵入検出対象の1つである日本人の肌との識別が可能である。
【0103】
【表1】
【0104】
次ステップS4では、赤外線照射部120A〜120Dから各監視領域46A〜46Dに向けてそれぞれ投射される赤外光の通過範囲(角錐台状の検出範囲)への障害物の通過確認試験を行う。つまり、オペレータは、赤外光によって包囲された上記検出範囲に障害物を出し入れして、監視領域46A〜46Dに関する撮像手段100の検出画像データに基いて検出信号レベルの低下又は上昇が検出されるか否かを確認することでテストする。
【0105】
図11の時刻t3では赤外光で包囲される監視空間内に障害物の侵入が開始された状況を示しており、このことが検知されると、APRが作動してレーザパワーが急激に低下して、時間T1(<T2)以内でパワーがゼロとなる。つまり、障害物がレーザ光の投射範囲に入るまでに要する侵入時間T2よりも短い時間でレーザ出力がクラス1以下のレベルまで低減される。
【0106】
この試験方法には種々の形態が挙げられるが、例えば、各監視領域について検出範囲の外側から、人の手指や光沢のある黒色定規等の物体を出し入れして、上記検出信号レベルの低下等をチェックする。
【0107】
侵入検出及び危険防止制御部110は、この通過試験において、障害物が上記検出範囲に侵入したときは警報音を出すように制御を行う(図示しない警報装置に対して出力信号が送出される。)。これによってオペレータは正常に障害の検出が行われたことを聴覚で確認できる。また、侵入検出及び危険防止制御部110は、必要に応じて、図示しない表示装置に対して、障害物に該当する部分を赤色等で区別して表示させることもできる(障害物が検出されない監視領域については、その検出画像を、例えば、白色で表示する。)。そして、侵入検出及び危険防止制御部110はこのときのデータをメモリに記憶しておくこともできる。
【0108】
このような試験は、監視領域46A〜46Dについて行う(但し、障害物の侵入や通過を想定する必要性のないことが事前に明らかな場合には、該当する監視領域は当然に試験対象から除外される。)。
【0109】
尚、この試験期間中、投影レンズ32から投影領域42への投影は不要であるから、侵入検出及び危険防止制御部110は、レギュレータ54を駆動して電源装置52から光源部12に給電される電力を非常に低いレベルに低下させるか、又は電源装置52から光源部12への給電を停止させることが望ましい。
【0110】
通過試験が完了すると次ステップS5に進み、上記した一連の調整作業が終了する。尚、S2乃至S4の順序や回数等は適宜に変更可能である。
【0111】
上記調整及び確認が終了したら、オペレータは図示しない操作入力手段(操作スイッチ等)を使って、侵入検出及び危険防止制御部110に対してその旨を指示する。
【0112】
上記通過試験の間、電源装置52から光源部12への給電を停止したり、あるいは非常に少ない電力供給状態とするときは、侵入者が、投影レンズ32と投射領域42を結んだ範囲に入っても障害はないので、オペレータが上記調整終了の指示を出した場合に、侵入検出及び危険防止制御部110は給電装置130から赤外線照射手段120への給電を停止させることができる。
【0113】
他方、侵入者が上記検出範囲に侵入することに対して警告を発するため、電源装置52から光源部12への給電状態に係わりなく、電源スイッチ140がオン状態である限り、侵入検出及び危険防止制御部110が給電装置130から赤外線照射手段120への給電を継続させることで、上記警報を常に出力可能な状態にしておくこともできる。
【0114】
最終ステップS6では、通常監視状態に設定される。
【0115】
例えば、図示しない映像ソース機器からの映像信号VIDEOが映像信号処理部62に入力されて、プロジェクタ装置の投影動作が開始すると、ドライバ回路64は空間変調光生成部16に映像信号VIDEOに応じた駆動信号を出力し、全体制御部66がスキャナ制御部68を介してスキャナ34を制御する。
【0116】
侵入検出及び危険防止制御部110には、全体制御部66から通常の投影動作が開始したことを示す情報が送られ、上記検出範囲に相当する領域(以下、「侵入禁止領域」という。)に人や障害物等が侵入したか否かを常時検出する。
【0117】
この検出方法については、上記ステップS4で説明した方法と同様であるが、侵入者の保護のためには、侵入検出及び危険防止制御部110によって侵入禁止領域内に侵入者等を検出したときに、下記の手段を講じることが好ましい。
【0118】
・投影レンズ32からスクリーン40に向かう照射光のレベルが侵入者の肉眼に障害を与えない程度のレベルになるまで低下するように、レギュレータ54を制御して電源装置52から光源部12に供給される電力を低下させること。
【0119】
・状況次第では、電源装置52から光源部12に供給される電力を遮断すること。
【0120】
それらの結果、投影レンズ32からスクリーン40に向かう照射光が暗くなるか又は皆無となる。また、このとき、侵入検出及び危険防止制御部110は警告音又は警報メッセージ等を出力することができる。
【0121】
侵入検出及び危険防止制御部110による危険防止処理については、侵入禁止領域に侵入物が侵入するときの状態に応じて異なる。
【0122】
例えば、各監視領域46A〜46Dに係るW値を10cmとして、侵入速度が2m/s(メートル毎秒)の場合に、線状侵入物の侵入時間は0.05秒であり、また、侵入速度がその半分(1m/s)の場合には、線状の侵入物の侵入時間は0.10秒である。人間の場合にはその幅が線状物体より広いから、侵入時間が0.05〜0.1秒よりの数倍〜10数倍程度長くなる。
【0123】
また、各赤外線照射部と各監視領域を繋いてできる面(侵入禁止領域の境界)に沿って人間が移動しているときは、侵入禁止領域に入り続けた状態になる。各監視領域の長手方向における長さを2mと仮定した場合、侵入速度が2m/sのときには、約1秒間侵入禁止領域に侵入していることになる。
【0124】
他方、撮像手段100により撮像された画像データにはノイズの混入が避けられず、侵入者が瞬間的にかつ部分的に侵入禁止領域に侵入したとの誤判断が下される可能性がある(このような場合は過敏な判断処理を行う必要がない。)。
【0125】
そこで、侵入継続時間と侵入領域の大きさとの乗算結果に応じて段階的な防止処理を行うことが好ましい。
【0126】
ここにいう「侵入継続時間」とは、侵入禁止領域への侵入状態が継続している時間を意味する。また、「侵入領域の大きさ」とは、撮像手段100で検出した各監視領域46A〜46Dに係る反射光レベルが所定の基準範囲を逸脱している合においてその部分の面積(例えば、閾値以下のデータをもつ画素数に相当する。)等をいう。
【0127】
下記表2は、継続侵入時間と侵入領域の大きさ(侵入部分の面積等)との積によって規定される「侵入状態指示値」と、これに応じて侵入検出及び危険防止制御部110により行われる処理内容を例示したものである。
【0128】
【表2】
【0129】
本例では、侵入状態指示値に応じた4段階(光源部に係るパワー低減や給電停止)の処理が行われ、侵入検出及び危険防止制御部110は、レギュレータ54を介して電源装置52の電力レベルを変化させて光源部12の出力を調整して、侵入禁止領域への侵入者の眼等に悪影響を及ぼさないように防止する。尚、侵入状況に応じた、侵入検出及び危険防止制御部110の処理については、上記の例に限定されず、種々の処理方法が可能であり、例えば、侵入継続時間だけで判断する方法又は侵入領域の大きさ(侵入面積)だけで判断する方法、あるいは、さらに別の要因を考慮して判断する方法等が挙げられる。
【0130】
上記の処理によって、人間が侵入禁止領域に侵入した場合に、人体への障害を及ぼさないように防止することができ、特に、事情が分からない幼児等が侵入禁止領域に入り込んだ場合でも充分な安全対策が講じられる。
【0131】
次に、上記構成の変形態様について説明する。
【0132】
赤外線照射手段120を構成する各赤外線照射部120A〜120Dについて、それらの傾動角(チルト角度)の調整を自動化することが好ましく、モータ等の駆動源及びチルト機構を各赤外線照射部に設けることでそれらの姿勢制御によって照射方向制御を行うことができる。
【0133】
また、上記形態においては、図10に示すステップS5の調整終了後に通常監視処理に移行する例を述べたが、既に調整作業が終了した状態のプロジェクタ装置を使用するときは、電源スイッチ140をオン状態にしたときに、直ちにステップS6の通常監視状態から開始することもできる。その場合、例えば、ステップS5において調整作業が完了したことを示すためのフラグ(調整終了フラグ)を用意し、これを所定値(例えば、「1」)に設定して、侵入検出及び危険防止制御部110のメモリ内に記憶させておけば良い。
【0134】
ステップS6の通常監視状態においては、各赤外線照射部120A〜120Dからスクリーン40の各監視領域46A〜46Dに赤外線を連続的に照射するものとしたが、これに限らず、侵入禁止領域への侵入者の検出が可能な時間間隔をもって赤外線照射を行っても良い(例えば、監視領域46への赤外線照射を数ミリ秒間隔で断続的に行うこともできる。)。
【0135】
また、上記形態では、監視領域46A〜46Dの全てについて赤外線照射手段120から赤外線を照射する場合について述べたが、例えば、領域46Aの位置が高く、普通人の身長範囲を考えると侵入の可能性がない場合には、あえて該領域の赤外線照射を行う必要はない。
【0136】
上記の説明では、スクリーン上の投射領域42の外側に位置する監視領域46を設け、侵入禁止領域への侵入について監視するシステムを想定したが、該監視領域の外側にさらに別の監視領域を設定し、監視空間の多重化(2重化、3重化等)によって監視体制を強化することが可能であり、以下ではそのような実施態様について説明する。
【0137】
図14はプロジェクションシステムの構成例を示した構成図であり、基本的な要素については図9と同様であり(よって、機能的に同じ要素には既に付した符号を用いて重複説明を回避する。)、相違点だけを箇条書きで下記に示す。
【0138】
・監視領域については2重とされ、内側の領域(第1監視空間又は第1監視ゾーン)を第1警報処理部70が担当し、外側の領域(第2監視空間又は第2監視ゾーン)を第2警報処理部80が担当すること及び各監視空間への侵入についてそれぞれ検出するとともに、侵入の状態や状況に応じて警報処理を行うこと。
【0139】
・第1警報処理部70が第1検出手段72と第1警報手段74を有しており、第1検出手段72によって人体等の侵入が検出されると、第1警報手段74が警報を出力し、レーザ光の強度を変化させる(低下又はゼロ)こと。
【0140】
・第2警報処理部80が第2検出手段82と第2警報手段84を有しており、第2検出手段82によって人体等の侵入が検出されると、第2警報手段84が警報を出力すること。
【0141】
図15は、プロジェクタ装置の本体部1Bとスクリーン40との位置関係を示す概略図であり、(A)図は投影光の状態を示す斜視図、(B)図は投影方向に直交する方向(側方)からみた場合の断面図である。
【0142】
本体部1Bの光投射部30からスクリーン40に投影される映像は、光投射部30のスキャナ34により走査が行われ、スクリーン上の投影領域42に投影される。
【0143】
光投射部30から投影領域42に投影される光(映像光)の通過領域42Sを、以下では「映像光通過空間領域」と呼ぶことにする。
【0144】
また、上記第1監視空間(又はゾーン)については、下記の領域から構成されるものとする。
【0145】
・「第1監視領域」=投影領域42の外周に位置する監視領域(前記した監視領域46と同様であり、図にはその幅を誇張して示す。)
・「第1空間監視領域」=上記映像光通過空間領域42Sの外側(外周)に位置する空間領域(光投射部30から出力される映像光の周囲に位置する空間領域46S)。
【0146】
同様に、上記第2監視空間(又はゾーン)については、下記の領域から構成されるものとする。
【0147】
・「第2監視領域」=第1監視領域46の外周又は第1監視領域46を含む外部領域90((A)図に破線で示す領域)
・「第2空間監視領域」=第1空間監視領域46Sの外周又は第1空間監視領域46Sを含む空間領域90S((B)図参照)。
【0148】
第1警報処理部70において(図14参照)、第1検出手段72は第1空間監視領域46Sへの人体や物体の侵入、あるいは、これらが継続的に存在することを検出する。そして、第1警報手段74は、第1検出手段72からの検出情報に基いて警報を出力するとともに、光源部12への電力供給について制御する。
【0149】
また、第2警報処理部80において、第2検出手段82は、第2空間監視領域90Sへの人体又は物体の侵入、あるいはこれらが継続的に存在することを検出する。そして、第2警報手段84は、第2検出手段82からの検出情報に基いて警報を出力する。
【0150】
図16は警報処理の一例を示したフローチャート図であり、下記ステップに従って処理が行われる。
【0151】
(S11)正常投影動作
(S12)第2検出手段による侵入検出
(S13)第2警報手段による警報処理
(S14)第1検出手段による侵入検出
(S15)第1警報手段による警報処理。
【0152】
先ず、ステップS11では、図14の電源装置52からの規定電圧をもって光源部12が駆動され、映像信号VIDEOに応じて空間変調光生成部16で変調された映像光が光投射部30からスクリーン40上の投影領域42に投影される。
【0153】
そして、ステップS12に進み、第2検出手段82によって第2空間監視領域90Sに人体等が侵入したか否かについて検出される。つまり、人体等の侵入や存在が検出された場合に、ステップS13に進み、第2警報手段84によって警報処理が行われる。該警報処理としては、例えば、「危険ですから投影領域から離れて下さい」といった内容の音声メッセージを出力する(視聴者が投影領域42を注視していない状態でも該メッセージを耳で聞けるので、視聴者は事前に危険を察知することができる。)。これにより侵入者に回避行動が促される。尚、この音声メッセージに加えて、又は音声メッセージとは別に、第2警報手段84から全体制御部66に第2警報信号を出力することにより、全体制御部66が映像信号処理部62において映像信号VIDEOに警告メッセージ信号や警告図形信号を重畳させた上でドライバ回路64に出力し、空間変調光生成部16を経由して、投影領域42に映像表示を行っても良い(これにより、視聴者が投影領域42上の警告表示や上記音声メッセージにより、事前に危険を察知することができる。)。
【0154】
このような警報にも係わらず、侵入等が継続された場合には、次ステップS14において、第1検出手段72によって、第1空間監視領域46Sへの侵入が検出される。つまり、人体等の侵入又は該領域46Sにおける人体等の存在を検出すると、ステップS15に進んで第1警報手段74が第1警報処理を行う。例えば、第1警報手段74は、レギュレータ54を介して電源装置52の出力電圧を遮断状態にして、光源部12からレーザビームを出射させない状態にする。これにより、視聴者の眼が保護される。好ましくは、「危険ですから装置を停止します。」といった内容の音声メッセージを出力する(プロジェクタ装置の停止理由が視聴者に理解される。)。
【0155】
尚、第1警報手段74がレギュレータ54を介して、電源装置52の出力を下げて、安全なレベルまでレーザ光の強度を低下させることにより、視聴者の眼が保護されるようにしても良い。その際、「目に危険ですから暗くします。」といった内容の音声メッセージを出力することにより、投影光の低下理由を視聴者が理解できるように配慮することが好ましい。
【0156】
また、第1警報手段74が動作したとき、第1警報信号を全体制御部66に出力し、全体制御部66は必要に応じて、映像信号VIDEOを出力する外部装置に対して映像信号VIDEOの出力停止を要求し、プロジェクタ装置による投影を停止させることができる。
【0157】
第1警報手段74が動作した後におけるプロジェクタ装置の再起動については、オペレータの操作によりレギュレータ54をリセットすることで行うことができる。コンピュータ機器等の外部装置からの映像信号VIDEOの出力再開については、オペレータによってプロジェクタ装置が再起動されたときに全体制御部66が外部装置に対して映像信号を要求する。
【0158】
上記形態によれば、第2空間監視領域90Sへの侵入が検出され、さらに第1空間監視領域46Sへの侵入が検出されたときに、レーザ光を遮断し又はその光強度を低下させることにより、1段階の侵入検出に比べてプロジェクタ装置の稼働率を低下させずに安全対策を講じることができる。そして、第1空間監視領域46Sへの侵入前に、第2空間監視領域90Sに人体が侵入したことを検出して、事前警告を行えるので、侵入禁止領域に人体が誤って入り込まないよう未然に防止できる。
【0159】
好ましくは、第2警報手段84が動作した時点から、所定時間以内に第1検出手段72が第1空間監視領域46Sへの侵入を検出した場合に、第1警報手段74によって上記警報処理を行う。それにより、第1検出手段72の誤検出や誤動作、あるいは第1空間監視領域46Sの検出に係るノイズ成分の影響を低減させ、第1警報手段74が頻繁に動作してプロジェクタ装置の利用度が低下するといった不具合を防止できる。
【0160】
上記した第2警報処理部80の実施形態について、その第2検出手段82には下記に示す形態が挙げられる。
【0161】
(I)人体の発する放射エネルギーを検出する焦電センサ(警備装置等において人体の侵入を検出するために使用されている。)を用いる形態
(II)サーモグラフィ装置等に使用される熱感知センサを用いる形態。
【0162】
上記(I)については、例えば、下記の形態が挙げられる。
【0163】
(I−1)1つの焦電センサを用いた形態(図17参照)
(I−2)複数の焦電センサを組み合わせた形態(図18参照)。
【0164】
先ず、上記(I−1)では、例えば、図17に示すように、焦電センサの設置方法として、スクリーン40を含む第2監視領域90のほぼ全体を包囲する領域(図に太線の円形枠で示す。)への指向特性をもった1個の焦電センサを光投射部30の近傍に設けることができる。尚、誤動作やノイズ等に起因して、第2警報手段84の頻繁な動作が起きないようにするためには、焦電センサが所定時間以上継続して人体等を検出したときに(例えば、継続時間の判定用閾値を2秒間程度とする。)、第2警報手段84を動作させれば良い。
【0165】
第1検出手段72については前記したように撮像素子(CCDセンサ等)を用いることができるが、これを第2検出手段82と共用させた形態も勿論可能であり、その場合には、1個の焦電センサで、第1空間監視領域46Sへの侵入状態をも検出できる(該焦電センサが第1及び第2検出手段の役目を果たす。)。さらには、該焦電センサを用いて、映像光通過空間領域42Sに人体が侵入することも検出可能である。
【0166】
上記(I−2)では、例えば、比較的指向性の狭い焦電センサを複数個用いることができる。図18に示す複数の円形枠は各焦電センサによる検出領域を表しており、図の下方にはそれらの指向性分布について概略的に示している。本例では、7個の焦電センサを用いて、それぞれ第2空間監視領域90Sの下部、右側部、左側部を指向させるために、光投射部30の近傍に配置している。尚、第2空間監視領域90Sの上部に人間が接近することはありえないので、当該部分を指向する焦電センサを設ける必要はないものとしている。
【0167】
第2空間監視領域90Sの下部を担当する焦電センサについて、図には指向性の強度分布例を3つの波形で示しているが、指向性としてそれほど厳密な条件が要求される訳ではないので、第1空間監視領域46Sの外部、あるいは当該領域46Sを含む範囲を指向していれば良い。
【0168】
この場合も、誤動作やノイズ等による、第2警報手段84の頻繁な動作を回避するためには、各焦電センサが所定時間以上に亘って継続して人体を検出したときに第2警報手段84を動作させるように構成すれば良い。
【0169】
また、2個の焦電センサを組み合わせて用いること、例えば、2個の焦電センサを並べて1組にし、それらの検出信号の差を演算すると、差の符号(±)に応じて人体の移動方向を検出することができる。このような焦電センサ対を用いて、第2空間監視領域90Sの下部、右側部、左側部を指向させて配置して、差動型焦電センサとして用いることにより、第2空間監視領域90Sに侵入してくる人体を検出できる。
【0170】
次に、上記形態(II)について説明すると、熱感知センサを用いることにより、人体の温度(体温)を検出して温度に応じた表示や制御等を行うことができる。例えば、熱感知センサによって検出された温度が、人の体温範囲(34〜40度)内であるとき、人体が第2空間監視領域90Sにいることが判断されて、第2警報手段84が動作する。尚、熱感知センサの検出領域については、焦電センサの場合と同様に規定することができる。また、第1検出手段72との共用も可能であり、1個の熱感知センサを光投射部30の近傍に設け、第1検出手段72として第1空間監視領域46Sにいる人体を検出したり、さらには映像光通過空間領域42Sにいる人体の検出にも使用できる。
【0171】
この他、複数の熱感知センサを光投射部30の近傍に設けることにより、第2空間監視領域90Sを中心に人体の存在を検出することができる。
【0172】
次に、上記第1検出手段72について下記の構成形態を説明する。
【0173】
(i)超音波センサを用いた形態(図19参照)
(ii)光センサを用いた形態(図20参照)。
【0174】
先ず、形態(i)では、図19に円形枠で示すように、第1監視領域46及び第1空間監視領域46Sを検出領域として包含し、第2監視領域90および第2空間監視領域90Sを検出領域として含まない超音波センサを複数個(例えば、4個程度)用いる(各超音波センサを光投射部30の近傍に設ける。)。超音波センサは送受信部を備えており、圧電素子に電圧を印加することにより超音波を発生し、超音波を受信すると受信した超音波の振幅に応じた電気信号を出力する。人体等の侵入がない状態では光投射部30とスクリーン40との間に超音波を遮るものはないので、この場合には、超音波センサから超音波が出力されてスクリーン40の第1監視領域46を含むスクリーン40に向かって進み、スクリーン40上で反射された反射波が超音波センサに受信される。超音波センサと第1監視領域46との間や、第1空間監視領域46Sに超音波を遮る物体や人体が存在する場合には、反射波のレベルが低くなるか又は反射波が検出されないことにより判断される。
【0175】
上記形態(ii)では、例えば、図20に黒色太線の矩形枠で示すように、スクリーン40の第1監視領域46に沿って、複数の光センサや、ライン状センサ(1次元CCD)等の受光素子群を配置し、他方、プロジェクタ装置本体部の前面には、光投射部30の周囲から第1監視領域46に向かって光源部12からの照射光よりも充分レベルの低い光や赤外光等を出力する発光素子群(LED等)を設ける。これにより、該発光素子群と上記受光素子群との間に形成される光路を遮る物体や人体を検出することができる。あるいは、第1監視領域46に赤外光の発光素子群を配置して、それらが出射する光線をプロジェクタ装置本体部の光学センサで検出するといった構成形態が挙げられる。
【0176】
これらの形態以外にも、焦電センサや熱感知センサ等を使用したり、第2検出手段82と共用するといった、各種の実施形態が可能であることは勿論である。
【0177】
尚、上記の説明では、第1監視領域46が投影領域42の外周のスクリーン40内に規定された例を示したが、投影領域42の外部に位置していれば、スクリーン40の内部に位置しなくても良い。また、第2監視領域90をスクリーン40の外部に位置する例を上述したが、第2監視領域90を第1監視領域46とともにスクリーン40内に位置させることもできる。
【0178】
上記した構成により、例えば、下記に示す利点が得られる。
【0179】
・レーザ光の投射領域に人体や障害物が侵入するまでの間に、レーザ光を瞬時に遮断し又は減光することができるので、安全性が高い。
【0180】
・人体や障害物の侵入検知に用いられる検出波(赤外光や赤外線)については、視聴者に視認されず、従って、スクリーン上の投影画像に影響を及ぼして画質を低下させるといった不都合がない。また、検出波自体の影響による人体への危険もない。
【0181】
【発明の効果】
以上に記載したところから明らかなように、本発明によれば、人体に対する安全性を保証するとともに、監視空間内への侵入検出を簡易に実現することが可能である。また、検出精度を充分に確保するとともに、投射画像への影響がない。また、画像検出を確実に行うことができるとともに、スクリーン周縁の全範囲を監視する方法に比較して、監視領域の幅を必要最小限度で設定することができ、検知処理が簡単で迅速である。また、多重の監視体制によって、安全対策の強化に有効である。
【0182】
請求項2に係る発明によれば、装置の小型化に適している。
【0185】
請求項3に係る発明によれば、照射光を規制して人体への影響を抑え、充分な安全対策を講じることができる。
【0186】
請求項4に係る発明によれば、光変調手段を備えた画像投射装置への適用において、安全性や信頼性の向上に有効である。
【0187】
請求項5や請求項7に係る発明によれば、出射光の遮光や変調停止により迅速な処理が可能である。
【0188】
請求項6に係る発明によれば、光源への供給電力を制御することにより、光強度を確実に規制することができる。
【0189】
請求項8に係る発明によれば、侵入状態の度合いに応じて詳細な光出力レベルの制御が可能であり、また、誤検出防止等に有効である。
【0190】
請求項9に係る発明によれば、侵入検知処理が容易であり、複雑な画像処理等を必要としない。
【0191】
請求項10に係る発明によれば、安全性が確認されるまで照射光の強度が抑制されるので、高い安全性を保証することができる。
【0192】
請求項11に係る発明によれば、多重の監視体制によって、安全対策の強化により有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像投射装置の基本構成例を示す概略図である。
【図2】スクリーン上における各投射領域、監視領域を例示した説明図である。
【図3】スクリーン周縁に照射される検出波の強度分布について説明するための図である。
【図4】画像投射装置における安全対策について説明するためのフローチャート図である。
【図5】画像投射装置の構成例について説明するための図であり、プロジェクタ装置とスクリーン部との配置例を示す図である。
【図6】図5に示すプロジェクタ装置の正面図である。
【図7】(A)〜(D)に赤外線照射手段の一例を図解した図である。
【図8】(A)、(B)に赤外線照射手段の照射例を示す図である。
【図9】プロジェクションシステムの構成例を示す図である。
【図10】侵入検出及び危険防止制御部の処理例を示すフローチャート図である。
【図11】レーザ光のパワーレベルについて時間経過の一例を示したグラフ図である。
【図12】赤外線強度と距離との関係を例示したグラフ図である。
【図13】検出波の投射範囲と監視領域との設定方法について、(A)〜(C)に従って説明するための図である。
【図14】プロジェクションシステムの構成について別例を示した図である。
【図15】図14に示すプロジェクタ装置とスクリーンとの位置関係を示した図である。
【図16】図14のプロジェクタ装置における警報動作を例示したフローチャート図である。
【図17】第2監視空間への侵入検出について、第2検出手段の検出領域を例示した説明図である。
【図18】第2検出手段について他の検出領域を例示した説明図である。
【図19】第1監視空間への侵入検出について、第1検出手段として超音波センサを用いた場合の検出領域を例示した説明図である。
【図20】第1検出手段の別例を示した説明図である。
【符号の説明】
1…画像投射装置、1a…光源、1b…投射部、1c…検出波源、1d…反射波検出手段、2…スクリーン、3…投射領域、6…監視領域、40…スクリーン、72…第1検出手段、74…第1警報手段、82…第2検出手段、84…第2警報手段
Claims (12)
- スクリーン上の投射領域への投射によって画像表示を行うための光源及び投射部と、該投射部から上記投射領域に向かう照射光の通過領域内への侵入に対する安全機構を備えた画像投射装置において、
装置本体部のうち上記スクリーンとの対向面又はスクリーンに設けられた検出波源と、
上記検出波源から上記投射領域の外側に離れて位置する監視領域に検出波が出射された後、該監視領域で反射された反射波を検出する反射波検出手段とを備え、
上記反射波検出手段による検出レベルを閾値又は基準範囲と比較した結果に基づき、上記検出波によって包囲される監視空間内への侵入について検知し、
上記検出波が赤外光又は赤外線であって、
上記反射波検出手段が撮像素子を用いて構成され、該撮像素子による検出画像データをもとに上記監視領域が監視されるとともに、該監視領域の幅が、上記検出波源によってスクリーン上に投射される領域よりも狭くされ、
上記反射波検出手段として、上記監視空間の侵入について検出する第1検出手段と、
上記監視空間の外側領域を含む監視空間への侵入について検出する第2検出手段と、
上記第1検出手段により侵入が検出された場合に警報処理を行う第1警報手段と、
上記第2検出手段により侵入が検出された場合に警報処理を行う第2警報手段とを備えている
ことを特徴とする画像投射装置。 - 請求項1に記載の画像投射装置において、
上記検出波源又は上記反射波検出手段が、上記スクリーンとの対向面に設けられた上記投射部の周囲に配置されている
ことを特徴とする画像投射装置。 - 請求項1に記載の画像投射装置において、
上記監視空間内への侵入が検知された場合に、上記光源から上記投射領域への照射光が遮断され又は該照射光の強度が低減される
ことを特徴とする画像投射装置。 - 請求項1に記載の画像投射装置において、
上記光源の出射光を映像信号に応じて変調する光変調手段と、
上記光変調手段で変調された光を上記スクリーン上の投射領域に投射する光投射手段と、
上記監視空間への侵入について検出する侵入検出手段とを備え、
上記侵入検出手段によって上記監視空間への侵入が検出された場合に、侵入の状態に応じて、上記光源から上記投射領域への照射光が遮断され又は該照射光の強度が低減される
ことを特徴とする画像投射装置。 - 請求項4に記載の画像投射装置において、
上記侵入検出手段によって上記監視空間への侵入が検出された場合に、上記光源の出射する光が遮光される
ことを特徴とする画像投射装置。 - 請求項4に記載の画像投射装置において、
上記侵入検出手段によって上記監視空間への侵入が検出された場合に、上記光源に供給される電力が低減されるか又ゼロに規定される
ことを特徴とする画像投射装置。 - 請求項4に記載の画像投射装置において、
上記侵入検出手段によって上記監視空間への侵入が検出された場合に、上記光変調手段の駆動が停止される
ことを特徴とする画像投射装置。 - 請求項6に記載した画像投射装置において、
上記監視空間への侵入の継続時間又は侵入部分の面積に応じて、上記光源に供給される電力が制御される
ことを特徴とする画像投射装置。 - 請求項1に記載した画像投射装置において、
上記反射波検出手段が、上記スクリーンからの反射波強度を上記監視領域に係る各画素データによって測定し、上記監視空間への侵入の際に反射された検出波強度と、該侵入のない場合における上記監視領域からの反射強度とを比較し、両者が異なることにより侵入を検知する
ことを特徴とする画像投射装置。 - 請求項1に記載した画像投射装置において、
上記監視空間への侵入が検出されないことが確認されるまでの間、上記照射光の強度が人体に安全なレベルまで低下されて画像の投射が行われ、該確認の後に照射光の強度が規定レベルまで上昇する
ことを特徴とする画像投射装置。 - 請求項1に記載した画像投射装置において、
上記第1検出手段により侵入が検出された場合に、上記光源から上記投射領域への照射光が遮断されるか又は該照射光の強度が人体に危険のないレベルまで低減される
ことを特徴とする画像投射装置。 - 画像投射装置から距離をおいて位置するスクリーン上の投射領域に対して、その外側に離れて位置する監視領域を規定するとともに、該監視領域に対して画像投射装置の前面に設けられた検出波源から検出波を出射して、該監視領域からの反射波を検出することによって該検出波によって包囲された監視空間への侵入について検出し、
上記投射領域に向けて照射される光を、侵入の状態に応じて遮断し又は該光の強度を低下させ、
上記検出波として赤外光又は赤外線を用い、
撮像素子により検出される画像データをもとに、上記検出波源によってスクリーン上に投射される領域よりも狭い幅の上記監視領域を監視し、
上記監視領域及び画像投射装置の前面から該監視領域への検出波の通過領域を含む第1監視空間及び該監視領域のさらに外側に設けられる第2監視空間を規定し、
各監視空間への侵入についてそれぞれ検出して、侵入の状態に応じて警報処理を行う
ことを特徴とする画像投射方法。
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