JP4366594B2 - 光学ガラスレンズの熱間プレス成形金型として用いるのに適した高強度および高硬度を有するタングステン系焼結材料 - Google Patents
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(a)耐ガラス腐食性
(b)熱伝導性(放熱性)
(c)低熱膨張係数
などの特性が要求されることから、これらの特性を具備したW系焼結材料、すなわち、
(a)融点:1800〜2000℃、
(b)熱伝導率:90〜150W/m・K、
(c)熱膨張係数:4.5〜5.5×10-6/K、
を有するW系焼結材料が用いられている。
また、上記W系焼結材料が、質量%で(以下、%は質量%を示す)、
Ni:0.2〜0.8%、
W:残り、
からなる配合組成を有する圧粉体の焼結材で構成され、かつ、W相相互が焼結結合すると共に、前記W相の最大粒径が走査型電子顕微鏡による組織観察で、40μm以上である組織を有し、この結果として圧壊強度で700〜900MPaの強度およびビッカース硬さ(Hv)で250〜290の硬さを有することも知られている。
(A)原料粉末を、
Ni:0.2〜1.5%、
酸化イットリウム(以下、Y2O3で示す):0.1〜1%、
さらに必要に応じて、
(a)炭化バナジウム(以下、VCで示す):0.05〜0.5%、
(b)CoおよびFeのうちのいずれか、または両方(以下、Co/Feで示す):0.01〜0.5%、
以上(a)および(b)のうちのいずれか、または両方、
W:残り、
からなる配合組成に配合すること。
(a)融点:1800〜2000℃、
(b)熱伝導率:90〜150W/m・K、
(c)熱膨張係数:4.5〜5.5×10-6/K、
を有すると共に、W相相互が焼結結合すると共に、走査型電子顕微鏡による組織観察で、いずれも最大粒径が5μm以下の微細なNi相またはNi−Co/Fe合金相とY2O3 相とが前記W相相互間の境界部に分散分布し、さらに前記W相の最大粒径が30μm以下である細粒組織を有し、さらに、上記の従来W系焼結材料では前記W相の最大粒径が同じく走査型電子顕微鏡による組織観察で、上記の通り40μm以上(以下、粒径は走査型電子顕微鏡による組織観察で測定した結果を示す)で、かつ強度が圧壊強度で700〜900MPa、硬さがHvで250〜290であったものが、基本的にY2O3 によるW相成長抑制作用でW相個々の粒径が最大粒径で30μm以下となると共に、必要に応じて含有されるVCのY2O3 との共存による一段のW相成長抑制作用でW相個々の粒径は最大粒径で20μm以下になり、さらに同じく必要に応じて含有されるCo/Feによる一段の強度向上効果と相俟って、強度が圧壊強度で1350〜2000MPa、硬さもHv:320〜450に向上したものになり、したがって、この結果のW系焼結材料で構成した熱間プレス成形金型は、特に腐食性のきわめて強い珪弗化ガラスや、高い成形温度を必要とする石英ガラスなどで構成され、かつ一段と高いプレス成形圧力および成形温度が要求される小径化および薄肉化した光学ガラスレンズの熱間プレス成形に用いた場合にもすぐれた性能を長期に亘って発揮するようになること。
以上(A)〜(C)に示される研究結果を得たのである。
Ni:0.2〜1.5%、
Y2O3:0.1〜1%、
さらに必要に応じて、
(a)VC:0.05〜0.5%、
(b)Co/Fe:0.01〜0.5%、
以上(a)および(b)のいずれか、または両方、
W:残り、
からなる配合組成を有する圧粉体の焼結材で構成され、かつ、W相相互が焼結結合すると共に、いずれも最大粒径が5μm以下の微細なNi相またはNi−Co/Fe合金相とY2O3 相とが前記W相相互間の境界部に分散分布し、さらに前記W相の最大粒径が30μm以下である細粒組織を有する、光学ガラスレンズの熱間プレス成形金型として用いるのに適した高強度および高硬度を有するW系焼結材料に特徴を有するものである。
(a)Ni
Niには、圧粉体中でW粉末の表面を被覆した状態で存在させることにより、焼結性を著しく向上させると共に、W相の境界に最大粒径で5μm以下の微細なNi相またはNi−Co/Fe合金相として存在させて、W系焼結材料の強度を向上させる作用があるが、その配合割合が0.2%未満では焼結性および前記Ni相またはNi−Co/Fe合金相の分布割合が不十分となり、所望の高強度を確保することができず、一方その配合割合が1.5%を越えると硬さに低下傾向が現れるようになるばかりでなく、最大粒径で5μmを越えたNi相またはNi−Co/Fe合金相が分布するようになり、これが金型キャビティ表面の摩耗促進の原因となることから、その配合割合を0.2〜1.5%、望ましくは0.7〜1.2%と定めた。
なお、W相の境界に分散する上記Ni相またはNi−Co/Fe合金相は、上記の通り原料粉末の混合時にNi、またはNiとCo/Feを上記の配合割合で原料粉末であるW粉末の表面にまぶした状態で存在させることによって5μm以下の最大粒径とすることができる。
また、前記上記Ni相またはNi−Co/Fe合金相の最大粒径を5μm以下としたのは、その粒径に5μmを越えたものが存在するようになると、金型キャビティの表面粗さが急激に低下するようになるという理由からである。
Y2O3 は、焼結時のW相の成長粗大化を抑制し、焼結後にW相相互間の境界部に最大粒径で5μm以下の微細な状態で分散分布して、前記W相個々の最大粒径を30μm以下に抑制し、もって硬さおよび強度を向上させる作用があるが、その配合割合が0.1%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その配合割合が1%を越えるとW相境界のY2O3 相に凝集傾向が現れ、これが強度低下の原因となることから、その配合割合を0.1〜1%、望ましくは0.2〜0.7%と定めた。
また、W相の境界に分散する上記Y2O3 相は、原料粉末であるY2O3 粉末の粒度を調整して、最大粒径で5μmを越えないようにする必要がある。これはY2O3 相の粒径に5μmを越えたものが存在するようになると、強度に著しい低下傾向が現れるようになるという理由からである。
VCには、Y2O3 との共存において、焼結時にNiあるいはNi−Co/Fe合金に固溶して、W相の成長粗大化を抑制し、前記W相の最大粒径を20μm以下に抑制する作用があるので、必要に応じて配合されるが、その配合割合が0.05%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その配合割合が0.5%を越えるとW相境界に分散分布するようになり、強度低下の原因となることから、その配合割合を0.05〜0.5%、望ましくは0.1〜0.3%と定めた。
Co/Feには、Niと合金を形成した状態でW相相互間の境界部強度を一段と向上させ、もって材料の強度向上に寄与する作用があるので、必要に応じて配合するが、その配合割合が0.01%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その配合割合が0.5%を越えると,硬さに低下傾向が現れるようになり、これが金型キャビティ表面の摩耗促進の原因となることから、その配合割合を0.01〜0.5%、望ましくは0.05〜0.3%と定めた。
(a)融点:1800〜2000℃、
(b)熱伝導率:90〜150W/m・K、
(c)熱膨張係数:4.5〜5.5×10-6/K、
(d)圧壊強度:1350〜2000MPa、
(e)ビッカース硬さ(Hv):320〜450、
を有するようになるので、このW系焼結材料で構成した熱間プレス成形金型は、特に腐食性のきわめて強い珪弗化ガラスや、さらに1100℃以上の高い成形温度を必要とする石英ガラスなどで構成され、かつ小径化および薄肉化した光学ガラスレンズの熱間プレス成形でも、すぐれた性能を長期に亘って発揮するものである。
(b)ついで、上記の被覆W粉末を、水素雰囲気中、温度:800℃に1時間保持の加熱処理を施して、表面の硝酸ニッケル、硝酸コバルト、および硝酸鉄を熱分解することにより、表面がNiまたはNi−Co/Fe合金で被覆された被覆W粉末を形成し、
(c)これにいずれも1μmの平均粒径をもったY2O3 粉末およびVC粉末の所定量を配合して、表1,2に示される配合組成に調製し、
(d)つぎに、これをアセトン溶媒を用いてボールミル中にて48時間湿式混合し、乾燥した後、これをゴム鋳型に充填し、150MPaの静水圧にてプレス成形して、直径:50mm×高さ:40mmの寸法をもった成形体を形成し、この成形体に、水素雰囲気中、900℃に5時間保持の条件での予備焼結、および水素雰囲気中、1470℃に2時間保持の条件での本焼結を施して、直径:40mm×長さ:32mmの寸法をもったW系焼結材料の金型素材とし、
(e)これら金型素材のそれぞれ2個を1対の上下コア型とし、このうちの下コア型の上面に直径:38mm×中心部深さ:5mmの曲面キャビティを形成し、一方上コア型の下面は平面のままとし、これら両上下コア型の曲面をRmax:0.05μm以下の面粗度に研磨することにより本発明W系焼結材料製の光学ガラスレンズ熱間プレス成形金型(以下、本発明金型という)1〜32、並びに上記の従来W系焼結材料に相当する配合組成のW系焼結材料で構成された光学ガラスレンズ熱間プレス成形金型(以下、比較金型という)をそれぞれ製造した。
上述のように、この発明のW系焼結材料製光学ガラスレンズの熱間プレス成形金型は、例えば比較的腐食性の弱い珪酸ガラスや硼化ガラスなどを用いた光学ガラスレンズの熱間プレス成形は勿論のこと、特に腐食性の強い珪弗化ガラスや、1100℃以上の高い成形温度を必要とする石英ガラスなどの加熱プレス成形にて、小径化および薄肉化した光学ガラスレンズを成形する場合においても、すぐれた性能を長期に亘って発揮し、長い使用寿命を示すものである。
Claims (4)
- 質量%で、Ni:0.2〜1.5質量%、
酸化イットリウム:0.1〜1質量%、
タングステン:残り、
からなる配合組成を有する圧粉体の焼結材で構成され、かつ、タングステン相相互が焼結結合すると共に、走査型電子顕微鏡による組織観察で、いずれも最大粒径が5μm以下の微細なNi相と酸化イットリウム相が前記タングステン相相互間の境界部に分散分布し、さらに前記タングステン相の最大粒径が30μm以下である細粒組織を有することを特徴とする、光学ガラスレンズの熱間プレス成形金型として用いるのに適した高強度および高硬度を有するタングステン系焼結材料。 - 質量%で、Ni:0.2〜1.5質量%、
酸化イットリウム:0.1〜1質量%、
炭化バナジウム:0.05〜0.5質量%、
タングステン:残り、
からなる配合組成を有する圧粉体の焼結材で構成され、かつ、タングステン相相互が焼結結合すると共に、走査型電子顕微鏡による組織観察で、いずれも最大粒径が5μm以下の微細なNi相と酸化イットリウム相が前記タングステン相相互間の境界部に分散分布し、さらに前記タングステン相の最大粒径が20μm以下である細粒組織を有することを特徴とする、光学ガラスレンズの熱間プレス成形金型として用いるのに適した高強度および高硬度を有するタングステン系焼結材料。 - 質量%で、Ni:0.2〜1.5質量%、
酸化イットリウム:0.1〜1質量%、
CoおよびFeのうちのいずれか、または両方:0.01〜0.5%、
タングステン:残り、
からなる配合組成を有する圧粉体の焼結材で構成され、かつ、タングステン相相互が焼結結合すると共に、走査型電子顕微鏡による組織観察で、いずれも最大粒径が5μm以下の微細なNi−Co合金相、Ni−Fe合金相、およびNi−Co−Fe合金相のうちのいずれかと酸化イットリウム相とが前記タングステン相相互間の境界部に分散分布し、さらに前記タングステン相の最大粒径が30μm以下である細粒組織を有することを特徴とする、光学ガラスレンズの熱間プレス成形金型として用いるのに適した高強度および高硬度を有するタングステン系焼結材料。 - 質量%で、Ni:0.2〜1.5質量%、
酸化イットリウム:0.1〜1質量%、
炭化バナジウム:0.05〜0.5質量%、
CoおよびFeのうちのいずれか、または両方:0.01〜0.5%、
タングステン:残り、
からなる配合組成を有する圧粉体の焼結材で構成され、かつ、タングステン相相互が焼結結合すると共に、走査型電子顕微鏡による組織観察で、いずれも最大粒径が5μm以下の微細なNi−Co合金相、Ni−Fe合金相、およびNi−Co−Fe合金相のうちのいずれかと酸化イットリウム相とが前記タングステン相相互間の境界部に分散分布し、さらに前記タングステン相の最大粒径が20μm以下である細粒組織を有することを特徴とする、光学ガラスレンズの熱間プレス成形金型として用いるのに適した高強度および高硬度を有するタングステン系焼結材料。
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