JP2017206403A - 熱膨張係数の大きい耐酸化性低バインダー硬質合金またはこの素材で構成されるレンズ成形用金型 - Google Patents

熱膨張係数の大きい耐酸化性低バインダー硬質合金またはこの素材で構成されるレンズ成形用金型 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の、熱膨張係数がカルコゲナイドに近い耐酸化性サーメットは、高い解像度を必要とするカルコゲナイドレンズの金型成形用素材としては、鏡面加工性が劣っており、超仕上げ加工を容易にすることが望まれていた。
【解決手段】NbCを20mass%以上40mass%以下、Niを0.3mass%以上10mass%以下、不可避不純物を含み、残部がCrである、Cr−NbC−Ni焼結硬質合金を提供する。この材料は熱膨張係数が大きく、鏡面加工性もよいため、高解像度用のカルコゲナイドレンズの成形金型用素材に適する。
【選択図】図5

Description

本発明は、レンズ成形用の金型のうち大きな熱膨張係数を必要とする金型、およびその素材の技術分野に関する。
各種光学レンズのうち、デジタルカメラなどの可視光領域用の非球面ガラスレンズを成形する金型の素材としては、硬さ、耐酸化性および鏡面性に優れるバインダーレス超硬合金が主として用いられているほか、超微粒超硬合金なども用いられている。
これらの金型素材の熱膨張係数は、室温(Room Temperature、以下RTと記述する)〜800℃においてバインダーレス超硬合金が4.7〜5.1MK−1、超微粒超硬合金が6.4MK−1であり、SUS420J2のRT〜540℃での11.7MK−1と比べて、温度が変化しても金型寸法の変化がより少ないことにより金型設計が容易になる。
また、ポアなどの欠陥がSUS420J2と比べて著しく少ないこと、さらに軟質相が少ない、またはほとんどないため、鏡面加工性がよいことにより、金型加工が容易になる。
そして、非球面レンズに求められる形状精度が高くなるに従って、段落0002の2種の合金のうち、熱膨張係数のより小さい、バインダーレス超硬合金が主として適用されるようになった。これらは特許文献1〜3に記載されている。
以上は、通常のデジタルカメラ用の光学すなわち可視光レンズに関する技術であるが、近年は、夜間の防犯用および伝染病感染者識別用の赤外線カメラ、省エネ目的の赤外線センサー付照明器具が増加している。
これらカメラやセンサーの分解精度を高める場合は中〜遠赤外線デジタルカメラを用いることが良いが、通常の可視光領域用の光学レンズは中〜遠赤外線を透過しにくいため、赤外線デジタルカメラには、中〜遠赤外線を透過しやすいレンズ(以後、赤外線レンズと記載)を必要とする。
従来の赤外線レンズの素材は、ガラス転移温度(以下Tgと記す)が700℃以上と高いため金型成形が困難であることから、特許文献4のように、金型成形用としてTgが500℃未満と低いカルコゲナイドガラスレンズが提供されるようになった。
ところが、カルコゲナイドガラスの熱膨張係数は15〜25MK−1であるため、従来のバインダーレス超硬合金製の金型では、熱プレス成形後の冷却時に、両者間の熱収縮量が大きく異なるため、レンズの形状いかんによってレンズに引張り応力が作用して、レンズが割れる問題がある。
そこで、本発明者らは特許文献4において、RT〜500℃での熱膨張係数が9.2MK−1より大きい耐酸化性硬質サーメットを開発し、熱収縮量が大きく異なることによる成形性の問題の解決を試みた。
特開平02−120244号公報 特開2013−213259号公報 特開2015−63708号公報 特許第5770357号公報
鈴木壽編著:超硬合金と焼結硬質材料−基礎と応用、丸善株式会社、1986年、p.2 鈴木壽編著:超硬合金と焼結硬質材料−基礎と応用、丸善株式会社、1986年、p.90 鈴木壽編著:超硬合金と焼結硬質材料−基礎と応用、丸善株式会社、1986年、p.110 P.Villars,A.Prince,H.Okamoto:Handbook of Ternary Alloy Phase Diagrams,Volume 1−10,ASM International,1995,p.6657 鈴木壽編著:超硬合金と焼結硬質材料−基礎と応用、丸善株式会社、1986年、p.511 深津保:「Cr3C2−Ni系焼結合金の金属相の研究」、粉体および粉末冶金、第8巻第6号、1961年、p.247−252 P.Villars,A.Prince,H.Okamoto:Handbook of Ternary Alloy Phase Diagrams,Volume 1−10,ASM International,1995,p.6688 鈴木壽編著:超硬合金と焼結硬質材料−基礎と応用、丸善株式会社、1986年、p.65
ところが、特許文献4における著者ら発明の耐酸化性サーメットは硬質粒子としてCr(1300HV:非特許文献1)およびTi(C,N)(2050〜3200HV:非特許文献1のTiCの硬さおよび非特許文献2のTiNの硬さから混合則による)、結合相としてNi(210HV:非特許文献3)を使用しているため、硬質粒子同士での硬さの差および硬質粒子と結合相との硬さの差から、金型形状・鏡面性を得るための研削ないし切削加工・研磨中に、Ti(C,N)の一部が欠けやすく、かつNiが軟質なため結合相が凹部となりやすく、短時間での鏡面加工仕上げが困難となる問題が見られた。
また、赤外線レンズに求められる解像度も急速に大きくなり、金型の鏡面仕上げ精度すなわち表面粗さRaが、耐酸化性硬質サーメットを開発した時点の50nmと比べて、現在は10nm以下の精度の超仕上げ加工が要求されるようになった。ここまで精密になると、金型材料中の硬質粒子と結合相との硬さの差が大きいと超仕上げの加工性が低下し、加工できなくはないものの、慎重な加工を必要とし、長時間を要するので、コスト高となって、耐酸化性サーメットは事実上使用できなくなった。
そこで、本発明者らは、最近の赤外線レンズ用ガラスおよび低Tgガラスの熱膨張係数に相応し、さらに高精度な表面粗さまで容易に加工できる金型材料を発明することとした。その開発目標として、通常の加工時間での超仕上げ後の表面粗さRaを10nm以下にできる材料を開発することとした。
なお、熱膨張係数は、本発明者らの特許文献4の耐酸化性硬質サーメットを開発した経験より、RT〜500℃で8.3MK−1以上を開発目標とした。バインダーレスの被研削性をよくするためには、室温の破壊強度(抗折力)が800MPa以上あればよいので、開発目標の抗折力を800MPa以上とした。
初めに、特許文献4で開発した耐酸化性硬質サーメットをバインダーレスにすることを考えた。すなわちCr−30mass%Ti(C,N)である。これは、軟質の結合相を含ませないことで、硬質相のみとなり、特許文献4のサーメットより軟質相がなくなった分だけ鏡面性がよくなり、加工性を改善できると思われたためである。
ここで、Ti(C,N)は難焼結性であることが知られており、普通の焼結で緻密化できるか懸念されたが、予想通り、1600℃での焼結でも十分緻密化しなかった。普通焼結に比べて緻密化を促進できるホットプレス等での生産は経済的でないのでCr−Ti(C,N)は断念した。
そこで、段落0017の耐酸化性バインダーレス素材の構成成分の中で、より熱膨張係数が低く欠けやすいTi(C,N)に代わる物質を表1(特許文献4)に示した各炭窒化物から探索した。この中では、NbNは熱膨張係数が10.1MK−1と高く、硬さも1460HV(非特許文献2)とCrに近いことから、Cr−NbNが有望と思われた。
ここで、Cr−NbN擬二元系状態図およびCr−Nb−Nの三元系状態図は見当たらなかったが、非特許文献4にNbC−Crの擬二元系状態図があり、それを図1に示した。これより、NbCとCrの擬二元系で最も低い液相出現温度(この場合共晶点)が1100℃であることからCr−NbNでも比較的低温で焼結できると予想した。
Cr−30mass%Ti(C0.50.5)のTi(C0.50.5)とほぼ同じvol%のNbNを添加したCr−40mass%NbNは、800kPaの窒素雰囲気で1550℃−1hの焼結を行ったが緻密化しなかった。
そこで、NbNは緻密化を抑制する成分であると考え、NbN量を40mass%より減らしたCr−30mass%NbNについて、同条件で焼結を行ったところ、緻密化に成功した。
しかし、この1550℃は、予想外に高温であった。また、RT〜500℃における熱膨張係数の測定値は、8.1MK−1であり目標値を達成できなかった。よって、NbNを用いて目標の熱膨張係数を得ることは困難と思われると共に、Ti(C、N)以外で大きな熱膨張係数を有し、かつ容易に入手できる物質は見当たらず、大きな熱膨張係数を有する耐酸化性硬質バインダーレス素材の開発は当初極めて困難であると思われた。
なお、Ti(C,N)−MoC−Ni系サーメットが市販の耐食性硬質材料として普及し、これの熱膨張係数は約7MK−1と比較的大きい(非特許文献5)。しかし、主成分のTi(C,N)が欠け易く、かつダイヤモンド砥石のダイヤモンドの構成元素であるCを吸収することから難加工性であるため低コストでの超仕上げ加工が困難であり、本用途には適していない。
本発明者らは、段落0024における問題を解決するため、先に試作したCr−30mass%NbNの焼結体についてよく調べることとした。まず、X線回折を行った結果、図2が得られた。
図2より、Cr相が認められなくて、bのピークで示されるCrC相があることを突き止めた。cのピークはCrである。これは、CrがCr、CrCおよびCに分解して生成したものと思われる。これは古くから知られていることである(非特許文献6)。xは同定できなかったピークでunknownであるが、量が少なく熱膨張係数などに影響しないと思われる。
図3は、非特許文献7によるC−Cr−W三元系状態図である。図3には、CrCが認められないので、CrCは準安定相であると思われた。このCrCの生成は、焼結温度が1550℃と高いことと、段落0030に示すようにCがNbNの方に移動すること等が原因と考えられた。
また、合金中窒素分析を行い、窒素量を定量分析した結果、NbNも窒素が約30%解離していることが分かった。
以上より、得られた焼結体はCr−30mass%NbNではなく、CrC−30mass%Nb(C0.30.7)であることを突き止めた。このため図2にはaのピークをNb(C0.30.7)と示している。
CrCの熱膨張係数は知られていないものの、得られた焼結体のRT〜500℃の熱膨張係数が8.1MK−1であったこと、Nb(C0.30.7)の熱膨張係数を、NbCとNbNの熱膨張係数から混合則で見積もると9.2MK−1と見積もられるので、CrCの熱膨張係数は、やはり混合則で7.0MK−1と見積もられた。このため、8.3MK−1の目標値を達成することはこの成分系ではできないと考えた。
また、NbNがNb(C0.30.7)になっていることから、焼結中にNbNの脱窒が起こり、生じたNガスが孤立空隙内に取り残され、そのNガス圧が高いために焼結性が悪いと考えられた。
すなわち、窒化物を用いなければより低温で焼結できるのではないかと思われた。低温で焼結できれば、CrCを生じることなく、熱膨張係数が大きいCr(10.3MK−1)で構成された、目標とする大きな熱膨張係数を持つ耐酸化性硬質バインダーレス素材を作ることが可能と考えた。
なお、NbNを用いないとするとNbCを用いることになるが、NbCの熱膨張係数は6.6MK−1であり、TiCおよびTiNより熱膨張係数が小さい。しかし、熱膨張係数が大きいCrを主成分とすれば、目標の熱膨張係数に達する可能性はあると思われた。
また、NbCの硬さは2400HV(非特許文献1)であり、Ti(C0.70.3)の硬さ2850HV(非特許文献1のTiCの硬さおよび非特許文献2のTiNの硬さから混合則による計算値)よりも、前述したCrの硬さ1300HVに近く、硬質相間の硬さの差が小さいことから超仕上げしやすくなることもメリットと考えた。
そこで、Cr−30mass%NbCを調製し、冷間プレス成形して得た4×8×25mmの圧粉体試験片を800kPaの窒素雰囲気で1350℃−1hの焼結を行った。
その結果、理論密度の96%の緻密化に成功し、さらに、1350℃で1hr、100MPaのArによるHIP処理して得られた100%密度の素材は、RT〜500℃における熱膨張係数が8.7MK−1であり開発目標の8.3MK−1を超えた。
しかし、表面近傍に800kPaの加圧窒素下での焼結に起因する窒化による組織異常が見られ、使用できないことはないが、やや研削代が多くなる欠点があった。そこでさらに研究を進め、800kPaに比べてかなり低圧の40kPaの窒素雰囲気焼結を試みた。
すなわち、Cr−30mass%NbCを調製し、冷間プレス成形して得た4×8×25mmの圧粉体試験片を1350℃−1hで40kPaの窒素雰囲気焼結を行った。しかし、理論密度に対して65%までしか緻密化せず失敗した。
この原因は、加圧窒素下での焼結では、窒素が焼結体に入り込むことにより、液相線を下げ、40kPaの窒素雰囲気焼結ではそれが得られないためと思われる。
そこで、窒素の役割、すなわち液相線を下げ窒素が無い場合に比べて液相を低温で出現させ緻密化を促進する効果を他の方法で実現するために、加工硬化したNi粉末を0.3mass%添加して焼結することとした。
これは、特許文献2において記載されている、加工硬化したNi粉末を0.12mass%〜0.3mass%添加することで、焼結性が改善されることを応用したものである。
0.3mass%としたのは、特許文献2のWC基素材と比較すると本発明材料の比重は約半分であるため、硬質粒子の重量が約1/2となるので、硬質粒子の結合相となるNiの量は0.12mass%〜0.3mass%の下限値(0.12mass%)の2倍よりやや多い量としたものである。
Cr−30mass%NbC−0.3mass%Niを調製し、冷間プレス成形して得た4×8×25mmの圧粉体試験片を1350℃−1hで40kPaの窒素雰囲気焼結を行った。
その結果、相対密度98%まで緻密化させることに成功した。相対密度100%になっていないのは、ポアが残留するためであり、この原因は、原料粉末中に含まれる酸化物、および圧粉体の調製途中で生じる酸化により、酸化物が焼結前の圧粉体に多くあるために、緻密化前に炭化物すなわちCrとNbCのCにより十分に還元除去されないことにあると思われた。
そこで、還元を促進する目的で炭素を0.5mass%添加した、Cr−30mass%NbC−0.3mass%Ni−0.5mass%Cを調製し、冷間プレス成形して得た4×8×25mmの圧粉体試験片を1350℃−1hで40kPaの窒素雰囲気焼結を行った。
その結果、ほぼ相対密度100%の焼結体の作製に成功した。この焼結体について、1350℃−1h、100MPaのAr雰囲気でHIP処理し、光学顕微鏡で合金組織観察をした結果を図4に示す。アルカリ赤血塩溶液(村上試薬:非特許文献8)による食刻をしている。これは、後掲の表2および表3のNo.22の試料である。
濃い灰色の粒子はNbCである。淡い灰色のマトリックス部分は、段落0057および段落0068に示すように、Crである。
Cを添加しているにもかかわらず図4において遊離炭素が認められないのは、添加したCが焼結の昇温過程でCOまたはCOとなって焼結体から脱離したことによると判断された。
このようにして、Cr−30mass%NbC−0.3mass%Niという新種のバインダーレスに近い素材を作製することができた。
この焼結体について、1350℃−1h、100MPaのAr雰囲気によるHIP処理を行った後、RT〜500℃間の平均熱膨張係数を測定した結果、8.6MK−1であることが分かり、開発目標の熱膨張係数「8.3MK−1以上」を達成した。
次に、通常の加工時間での超仕上げ加工をして表面粗さRaを測定した結果、6nmであったことから目標の「10nm以下」を達成した。
なお、表面粗さ6nmRaという超仕上げ加工でなくてもよい用途もあるとともに金型使用時の温度変化許容値を大きくしたい(昇温降温速度を早くして効率化したい)用途もあるので、多少表面粗さを犠牲にし、その分、耐熱衝撃性を高める目的でNi添加量を多くした試料も作製した。
ここで、耐熱衝撃性は、窒素雰囲気で試料を加熱した後、水中に投下して、その試験片を抗折力測定して、水中投下なしと比べて著しく抗折力が低下しない最高の温度を耐熱衝撃温度として評価した(50℃単位で測定)。
図5は、1250℃−1h、40kPaの窒素雰囲気焼結を行い、1200℃−1h、100MPaのArでHIP処理をした、Cr−24〜28.5mass%NbC−5mass%〜20mass%Ni合金の、村上試薬食刻した表面の光学顕微鏡組織である。それぞれ後掲の表2および表3のNo.29〜32の試料である。
図4と同じく、淡い灰色のマトリックス部分はCr相で、濃い灰色の粒子はNbC相である。また、白色の粒子はNi相である。5〜20mass%Ni合金のいずれの組織中にもNi相が認められた。
後掲の表2と表3のNo.29、30のX線回折結果を図6に示す。Cr相、NbC相、Ni相が認められる。
10mass%NiまでNi相の分散状態がよく、5mass%Niおよび10mass%Ni添加試料の超仕上げ後の表面粗さRaは10nm以下と、幸いに実用範囲になった。10mass%Niより多く添加すると、超仕上げ後の表面粗さRaは10nmより大となった。Cr相、NbC相と比べて軟質なNi相が多くなりすぎるためである。
0.3mass%Ni添加の試料の耐熱衝撃温度は200℃であったが、5mass%Ni添加により、耐熱衝撃温度は350℃に向上した。10mass%Niも同様で耐熱衝撃温度は350℃であった。5、10mass%Ni添加試料は、熱変化に強く使いやすいレンズ成形材料であると言える。
なお、従来の耐酸化性サーメットと発明試料の破壊靱性値をIF法で測定して比較したが、特許文献4の耐酸化性サーメットCr−30mass%Ti(C,N)−6mass%Mo−2mass%VC−20mass%Ni合金の2.9MPam1/2に対して、Ni量が半分のCr−27mass%NbC−10mass%Ni合金(後掲の表2のNo.30)は3.3MPam1/2と優れていた。
Ni添加量が少ない場合について、Ni量、NbC量およびC添加量の諸特性に対する影響について整理すると次の様になる。Ni量は0mass%以上10mass%以下が最適であった。10mass%より多いと、Niの偏析を生じやすくなって超仕上げした場合の表面粗さRaが10nmより大となりやすくなり実用的でなくなる。
NbCは、20mass%NbC未満では焼結性が劣化し、緻密体が得られなくなる。また40mass%NbCより多くなると熱膨張係数が8.3MK−1より小となり、実用的でなくなる。
C添加量は0mass%〜0.6mass%がよい。0.6mass%より多いと、遊離炭素を生じて、鏡面性が劣化する。
Ni添加量が多い場合については、C添加量は無添加でよい。この理由は、Niが多いと焼結時の液相が多いため、焼結性が元々よいことと、CrがCrとCに分解する可能性があり、その結果Cが供給されることが考えられた。段落0027で述べたように、CrがCrとCに分解することは古くから知られている(非特許文献6)。
ここで、組織ではCr相とNi相が同様に観察されるため識別が困難であり、X線回折ではCrとCrのピークが重なりやはり識別が困難であった。よって、さらにCrがCrとCに分解する量が多くなるために、Cが供給されるという本発明者らの予想を裏付けるCrを、組織およびX線回折では確認できていない。
そこで、後掲の表2の発明試料No.29の組成(5mass%Ni)に0.5mass%Cを添加して、1250℃−1hの焼結をした結果、遊離炭素(free carbon、後掲の表3ではf.c.と表示)を生じることを確かめた。すなわち、Ni少量添加試料と比較して、遊離炭素が合金中に発生しやすいことを確かめた。
0.3mass%Niの試料では、C添加は0.6mass%まで遊離炭素が発生しないので、5mass%Niではこれよりも0.1mass%少ない。これは、CrがCr、CrCおよびCに分解するのは、0.1mass%未満であることを示す。
したがって、Cr炭化物相はほぼ全てCrであるという傍証を得た。10mass%Niの合金でも同様であった。5、10mass%Niの試料でC添加しなくてよいのは、主として焼結性のよさにある。
なお、No.19、20、23、26は遊離炭素を生じているので超仕上げ加工後のRaが大きかった。後掲の表2と表3の試料No.31、32はNiの大きな偏析を生じるため、超仕上げ加工後のRaが大きかった。
本発明のバインダーレスに近い素材は、熱膨張係数がカルコゲナイドレンズ素材に近く、鏡面加工性もよく、そのカルコゲナイドレンズのモールド成形に適すると共に、その他の、カルコゲナイドレンズ素材に近い特性のレンズ素材である低Tgガラスについても有用である。
非特許文献4による、NbC−Crの擬二元系状態図である。文字を大きく改変して見やすくしている。 800kPa窒雰囲気で1550℃−1hの焼結をしたCr−30mass%NbN合金(後掲の表2および表3のNo.6)について、X線回折を行った結果である。X線種はCuKαである。 非特許文献7による、C−Cr−Wの三元系状態図である。文字を大きく改変して見やすくしている。 1350℃−1hで、40kPaの窒素雰囲気焼結後、1350℃−1h、100MPaのArでHIP処理したCr−30mass%NbC−0.3mass%Ni−0.5mass%C合金の、村上試薬食刻した表面の光学顕微鏡組織である。後掲の表2および表3のNo.22の試料である。淡い灰色のマトリック部分はCrである。濃い灰色の粒子はNbCである。 1250℃−1hで40kPaの窒素雰囲気焼結後、1200℃−1h、100MPaのArでHIP処理したCr−24〜28.5mass%NbC−5〜20mass%Ni合金の、村上試薬食刻した表面の光学顕微鏡組織である。それぞれ後掲の表2および表3のNo.29〜32の試料である。図4と同じく、淡い灰色のマトリック部分はCrで、濃い灰色の粒子はNbCである。また、白色の粒子はNiである。 1250℃−1hで40kPaの窒素雰囲気焼結後、1200℃−1h、100MPaのArでHIP処理したCr−27〜28.5mass%NbC−5〜10mass%Ni合金(後掲の表2および表3のNo.29、30)について、X線回折を行った結果である。X線種はCuKαである。
原料として、アライドマテリアル社製の平均粒度1.4μmのCr(炭素量13.3mass%、窒素量0.18mass%、酸素量0.35mass%)、日本新金属社製の平均粒度5.5μmのNbN(炭素量1.0mass%、窒素量11.7mass%、酸素量0.48mass%)、日本新金属社製の平均粒度1.2μmのNbC(炭素量11.4mass%、窒素量0.02mass%、酸素量0.44mass%)、アライドマテリアル社製の平均粒度0.8μmのVC(炭素量17.2mass%、窒素量0.04mass%、酸素量0.3mass%)、日本新金属社製の平均粒度1.5μmのMo(酸素量0.3mass%)各粉末を用いた。
Ni少量添加の試料ではインコ社製の平均粒度2.5μmのNi(酸素量0.15mass%)およびの各粉末を粉末:ボール重量比を1:8とし、エタノール中で120h粉砕することで加工硬化させたNiとして用いた。また、Niを5mass%以上添加する試料では、インコ社製の平均粒度2.5μmのNi(酸素量0.15mass%)をそのまま用いた。
上記の各種粉末を選択して、表2のNo.5〜32の組成に配合し、粉末:ボールを重量比で1:8としたボールミル粉砕をエタノール中で48h行い、乾燥後、面圧100MPaで冷間圧縮成形した。なお、No.16〜20、22、23、25〜27のCは、原料中の酸化物および製作過程での酸化によって生じた酸化物を焼結で還元するために添加している。
表3には、比重、抗折力、硬さ、熱膨張係数、超仕上げ後の表面粗さRaおよび耐熱衝撃温度などの諸特性値を焼結温度と焼結雰囲気と共に示した。なお、No.1〜4は既存材料で表3の備考に示した特許文献からの引用である。これらの試料の焼結は表3に示した焼結温度と焼結雰囲気で1h焼結している。表中f.c.は遊離炭素である。
諸特性は、1350℃焼結の試料は1350℃−1h、100MPaのAr雰囲気でHIP処理を行った後に測定した。1250℃焼結の試料は、1200℃−1h、100MPaのAr雰囲気でHIP処理を行った後に測定した。
既存材料No.1およびNo.4の超仕上げ後のRaは、特許文献に無かったため、今回、本発明者らが測定した。表3の発明試料は、いずれも超仕上げ後の表面粗さRaが10nm以下で、熱膨張係数が8.3MK−1以上で、抗折力が800MPa以上であり目標を達成した。
なお、Niを多く添加した試料No.28〜30の熱膨張係数は、Ni少量添加の場合より大となると推定したが、実際は同程度である。この原因はよく分らなかった。
実施例1で得られた発明試料を用いて、中〜遠赤外線カメラ用カルコゲナイドガラスの金型成形加工を行った結果、容易にRaが10nm以下の超仕上げとすることができるとともに、それを用いて、高解像度のレンズの良好な成形を行えた。
本発明サーメットは、中〜遠赤外線カメラ用カルコゲナイドガラスの金型成形を容易にし、高解像度のレンズを作りやすくして高解像度の中〜遠赤外線カメラの量産化に寄与し、自動車の安全運転を進展させる。また、太陽電池パネルのエレクトロ・ルミネッセンス検査(赤外線カメラで太陽電池パネルを撮影し、パネルの不具合を可視化する検査)をしやすくしてその性能向上に寄与し省エネに貢献する。
その結果、理論密度の96%の緻密化に成功し、さらに、1350℃で1hr、100MPaのArによるHIP処理して得られた100%密度の素材は、RT〜500℃における熱膨張係数が8.7MK−1であり開発目標の8.3MK−1を超えた。これは、後掲の表2および表3のNo.10の試料である。
Ni添加量が少ない場合について、Ni量、NbC量およびC添加量の諸特性に対する影響について整理すると次の様になる。Ni量は0.3mass%以上10mass%以下が最適であった。10mass%より多いと、Niの偏析を生じやすくなって超仕上げした場合の表面粗さRaが10nmより大となりやすくなり実用的でなくなる。

Claims (4)

  1. NbCを20mass%以上40mass%以下、Niを0mass%以上10mass%以下、および不可避不純物を含み、残部がCrである、Cr−NbC−Ni組成の焼結硬質合金。
  2. 抗折力が800MPa以上、熱膨張係数が8.3MK−1以上9.0MK−1以下である、請求項1の焼結硬質合金。
  3. NbCを20mass%以上40mass%以下、Niを0mass%以上10mass%以下、Cを0mass%以上0.6mass%以下、および不可避不純物を含み、残部をCrとして原料粉末を配合して、成形後、窒素雰囲気で焼結する、請求項1または請求項2の焼結硬質合金の製造方法。
  4. 請求項1または請求項2の硬質材料で構成される赤外線レンズ成形用金型。
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