JP4366553B2 - 磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末及びその製造法並びに磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末及びその製造法並びに磁気記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性がより優れた磁気記録媒体の磁気記録層用磁性粉末材料として好適な複合磁性粒子粉末を提供する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオ、オーディオ用磁気記録再生機器の小型軽量化や長時間記録化が進むにつれて、磁気テープ、磁気ディスク等の磁気記録媒体に対する高性能化、即ち、高密度記録化、高耐久性、良好な電磁変換特性などの要求が益々強まっている。
【0003】
磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体は、磁気ヘッドと接触しながら記録再生を行うために磁気記録層の磨耗が生じやすく、磁気ヘッドが汚染され、延いては記録、再生特性の劣化をひき起こすため、磨耗の少ない高耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性を有する磁気記録媒体が求められている。
【0004】
磁気記録媒体における磁気記録層の磨耗耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性を向上させるために、アルミナ(Al23)、ヘマタイト(α−Fe23)及び3酸化2クロム(Cr23)等の種々の研磨剤を磁性層中に添加する試みが行われている。
【0005】
しかしながら、これらの研磨剤には、それぞれ固有の問題点が存在する。アルミナは結合剤樹脂中への分散性が悪く、添加量を増すにつれて磁気記録層の表面平滑性が大幅に低下することが知られている。ヘマタイトは、結合剤樹脂中への分散性は比較的良好であるが、十分な耐久性を得るためには多量に添加しなければならず、磁性粒子粉末の充填性が低下するために電磁変換特性が低下することとなる。3酸化2クロムは、環境衛生上、好ましくない。
【0006】
そこで、磁性層中に添加する研磨剤を低減させても磁気記録媒体の耐久性を維持することができ、しかも、研磨性を有する磁性粒子粉末が要求されている。
【0007】
従来、磁性粒子の諸特性改善のために種々の試みがなされており、磁性粒子粉末の粒子表面をAl又はSiの酸化物層又は水酸化物層によって被覆したもの(特開昭62−89226号公報、特開昭63−64305号公報、特開昭64−50232号公報、特開平4−141820号公報等)や磁性粒子粉末の粒子表面にAl化合物又はSi化合物の微粒子粉末を付着させたもの(特公平7−55828号公報、特公平7−55829号公報、特公平7−55831号公報、特開平6−151139号公報等)が知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性がより優れた磁気記録媒体用磁性粒子粉末として好適な磁性粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0009】
即ち、前記磁性粒子粉末の粒子表面をAl又はSiの酸化物層又は水酸化物層によって被覆したものは、分散性は改善されるが、磁気記録媒体の磁性粒子粉末として用いた場合、磁気記録媒体の耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性が十分とは言い難いものである。
【0010】
また、前出特公平7−55828号公報、特公平7−55829号公報及び特公平7−55831号公報には、Al化合物又はSi化合物の微粒子粉末を磁性粒子粉末の粒子表面に付着させることが記載されているが、該磁性粒子粉末の分散性は改良されるが、磁性粒子粉末の粒子表面に付着した微粒子の結合力が弱く脱離しやすいため、磁気記録媒体の磁性粒子粉末として用いた場合、磁気記録媒体の耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性が十分ではなく、磁性層中の研磨剤の含有量を低減できるとは言い難いものである。
【0011】
また、特開平6−151139号公報には、粒子表面に沈着させたAl又はSiの酸化物又は水酸化物微粒子を圧密粉砕処理によって粒子表面に固着させる方法が記載されているが、後出比較例に示す通り、相当量の微粒子が粒子表面から脱離するために、磁気記録媒体の磁性粒子粉末として用いた場合、磁気記録媒体の磁気ヘッドのクリーニング性が十分ではなく、磁性層中の研磨剤の含有量を低減できるとは言い難いものである。
【0012】
そこで、本発明は、優れた分散性を有するとともに、磁性粒子粉末の粒子表面に酸化物微粒子粉末を強く固定化することにより、耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性に優れた磁気記録媒体用磁性粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
【0013】
【課題を解決する為の手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0014】
即ち、本発明は、平均粒子径0.01〜0.3μmの磁性粒子粉末の粒子表面に、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化モリブデンから選ばれた平均粒子径0.001〜0.07μmの酸化物微粒子粉末の一種又は二種以上がテトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物によって固定化されている複合磁性粒子粉末であって、前記酸化物微粒子粉末が前記磁性粒子粉末に対して0.1〜20重量%であることを特徴とする磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末である(本発明1)。
【0015】
また、本発明は、本発明1の磁性粒子粉末の粒子表面が、あらかじめアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる中間被覆物によって被覆されていることを特徴とする磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末である(本発明2)。
【0016】
また、本発明は、平均粒子径0.01〜0.3μmの磁性粒子粉末と酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化モリブデンから選ばれた平均粒子径0.001〜0.07μmの酸化物微粒子粉末の一種又は二種以上とを混合して磁性粒子粉末の粒子表面に酸化物微粒子を付着させた後に該混合物にテトラアルコキシシランを添加して40〜200℃の温度範囲で加熱することにより、前記酸化物微粒子粉末を前記磁性粒子粉末の粒子表面に前記テトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物によって固定化させることを特徴とする本発明1の磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末の製造法である。
【0017】
また、本発明は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末が本発明1又は本発明2の磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0018】
次に、本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0019】
先ず、本発明に係る複合磁性粒子粉末について述べる。
【0020】
本発明に係る複合磁性粒子粉末は、芯粒子粉末である平均粒子径0.01〜0.3μmの磁性粒子粉末の粒子表面に、平均粒子径0.001〜0.07μmの酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化モリブデンから選ばれた一種又は二種以上の酸化物微粒子粉末が付着しており、該酸化物微粒子がテトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物で固定化されている粒子粉末である。
【0021】
本発明における芯粒子である磁性粒子は、マグヘマイト粒子、マグネタイト粒子、マグヘマイトとマグネタイトとの中間酸化物であるベルトライド化合物粒子等の針状磁性酸化鉄粒子、該針状磁性酸化鉄粒子にFe以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B等の異種元素を含有させた針状磁性酸化鉄粒子、これら針状磁性酸化鉄粒子にCoを被着させたCo被着型針状磁性酸化鉄粒子、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子、鉄以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B及び希土類金属等を含有する針状鉄合金磁性粒子、Ba、Sr又はBa−Srを含有する板状マグネトプランバイト型フェライト粒子並びに該フェライト粒子にCo、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、Sn、Zr、Nb、Cu、Mo等の2価及び4価の金属から選ばれた保磁力低減剤の1種又は2種以上を含有させた板状マグネトプランバイト型フェライト粒子等である。
【0022】
なお、近年の磁気記録媒体の高密度記録化を考慮すれば、磁性粒子としては、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子及び鉄以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B及び希土類金属等を含有する針状鉄合金磁性粒子等が好ましい。
【0023】
磁性粒子の粒子形状は、針状又は板状のいずれであってもよい。ここで「針状」とは、文字通りの針状はもちろん、紡錘状や米粒状などを含む意味である。
【0024】
磁性粒子粉末の平均長軸径(板状磁性粒子粉末の場合は平均粒子径)は、0.01〜0.3μm、好ましくは0.02〜0.2μmである。
【0025】
平均長軸径が0.3μmを超える場合には、得られる複合磁性粒子もまた粗大粒子となり、これを用いて磁気記録層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。平均長軸径が0.01μm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、磁性粒子粉末の粒子表面への酸化物微粒子粉末による均一な付着処理及びテトラアルコキシシランによる均一な固定化処理が困難となる。
【0026】
また、粒子形状が針状の磁性粒子粉末の場合、軸比(平均長軸径と平均短軸径の比)(以下、「軸比」という。)は2〜15であり、好ましくは3〜10である。
【0027】
軸比が15を超える場合には、粒子の絡み合いが多くなり、針状磁性粒子粉末の粒子表面への酸化物微粒子粉末による均一な付着処理及びテトラアルコキシシランによる均一な固定化処理が困難となる。軸比が2未満の場合には、得られる磁気記録媒体の塗膜強度が小さくなる。
【0028】
粒子形状が板状の磁性粒子粉末の場合、板状比(平均粒子径と平均厚みの比)(以下、「板状比」という。)は2〜20であり、好ましくは3〜15である。
【0029】
板状比が20を超える場合には、粒子のスタッキングが多くなり、板状磁性粒子粉末の粒子表面への酸化物微粒子粉末による均一な付着処理及びテトラアルコキシシランによる均一な固定化処理が困難となる。板状比が2未満の場合には、得られる磁気記録媒体の塗膜強度が小さくなる。
【0030】
磁性粒子粉末の長軸径(粒子径)の幾何標準偏差値は2.0以下が好ましく、より好ましくは1.8以下であり、更に好ましくは1.6以下である。幾何標準偏差値が2.0を超える場合には、存在する粗大粒子によって均一な分散が阻害されるため、磁性粒子粉末の粒子表面への酸化物微粒子粉末による均一な付着処理及びテトラアルコキシシランによる均一な固定化処理が困難となる。幾何標準偏差値の下限値は1.01であり、1.01未満のものは工業的に得られ難い。
【0031】
磁性粒子粉末のBET比表面積値は15〜150m2/gが好ましく、より好ましくは20〜120m2/g、更により好ましくは25〜100m2/gである。BET比表面積値が15m2/g未満の場合には、磁性粒子が粗大であったり、粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、得られる複合磁性粒子もまた粗大粒子となり、これを用いて磁気記録層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。BET比表面積値が150m2/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、磁性粒子粉末の粒子表面への酸化物微粒子粉末による均一な付着処理及びテトラアルコキシシランによる均一な固定化処理が困難となる。
【0032】
磁性粒子粉末の体積固有抵抗値は、通常1.0×109Ω・cm以下である。
【0033】
磁性粒子粉末の磁気特性は、針状磁性酸化鉄磁性粒子粉末の場合、保磁力値は19.9〜39.8kA/m(250〜500Oe)が好ましく、より好ましくは23.9〜39.8kA/m(300〜500Oe)であって、飽和磁化値は60〜90Am2/kg(60〜90emu/g)が好ましく、より好ましくは65〜90Am2/kg(65〜90emu/g)であり、コバルト被着型針状磁性酸化鉄粒子粉末の場合、保磁力値は39.8〜135.3kA/m(500〜1700Oe)が好ましく、より好ましくは43.8〜135.3kA/m(550〜1700Oe)であって、飽和磁化値は60〜90Am2/kg(60〜90emu/g)が好ましく、より好ましくは65〜90Am2/kg(65〜90emu/g)である。鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末及び針状鉄合金磁性粒子粉末の場合、保磁力値は63.7〜278.5kA/m(800〜3500Oe)が好ましく、より好ましくは71.6〜278.5kA/m(900〜3500Oe)であって、飽和磁化値は90〜170Am2/kg(90〜170emu/g)が好ましく、より好ましくは100〜170Am2/kg(100〜170emu/g)である。板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末の場合、保磁力値は39.8〜318.3kA/m(500〜4000Oe)、好ましくは51.7〜318.3kA/m(650〜4000Oe)であって、飽和磁化値は40〜70Am2/kg(40〜70emu/g)、好ましくは45〜70Am2/kg(45〜70emu/g)である。
【0034】
本発明に係る複合磁性粒子の粒子形状や粒子サイズは、芯粒子である磁性粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、芯粒子に相似する粒子形態を有している。また、本発明に係る複合磁性粒子粉末の磁気特性は、芯粒子粉末の磁気特性をほぼ維持している。
【0035】
即ち、本発明に係る複合磁性粒子粉末は、平均長軸径(板状磁性粒子を芯粒子として用いた場合には平均粒子径)が0.01〜0.3μm、好ましくは0.02〜0.2μmである。
【0036】
複合磁性粒子粉末の平均長軸径(平均粒子径)が0.3μmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため、これを用いて磁気記録層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。平均長軸径(平均粒子径)が0.01μm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下する。
【0037】
本発明に係る複合磁性粒子粉末は、芯粒子の粒子形状が針状の磁性粒子の場合、軸比は2〜15であり、好ましくは3〜10である。
【0038】
軸比が15を超える場合には、粒子の絡み合いが多くなり、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が悪くなったり粘度が増加する場合がある。軸比が2未満の場合には、得られる磁気記録媒体の塗膜強度が小さくなる。
【0039】
本発明に係る複合磁性粒子粉末は、芯粒子の粒子形状が板状の磁性粒子の場合、板状比は2〜20であり、好ましくは3〜15である。
【0040】
板状比が20を超える場合には、粒子のスタッキングが多くなり、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が悪くなったり粘度が増加する場合がある。板状比が2未満の場合には、得られる磁気記録媒体の塗膜強度が小さくなる。
【0041】
複合磁性粒子粉末の長軸径(粒子径)の幾何標準偏差値は、2.0以下であることが好ましい。2.0を超える場合には、存在する粗大粒子が塗膜の表面平滑性に悪影響を与えるために好ましくない。塗膜の表面平滑性を考慮すれば、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下である。工業的な生産性を考慮すれば、複合磁性粒子粉末の長軸径(粒子径)の幾何標準偏差値の下限値は1.01であり、1.01未満のものは工業的に得られ難い。
【0042】
複合磁性粒子粉末のBET比表面積値は16〜160m2/gが好ましく、より好ましくは21〜130m2/g、更により好ましくは26〜110m2/gである。BET比表面積値が16m2/g未満の場合には、複合磁性粒子粉末が粗大であったり、粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、これを用いて磁気記録層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。BET比表面積値が160m2/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下する。
【0043】
複合磁性粒子粉末の体積固有抵抗値は、1.0×109Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0×104〜5.0×108Ω・cm、更により好ましくは1.0×104〜1.0×108Ω・cmである。体積固有抵抗値が1.0×109Ω・cmを超える場合は、得られる磁気記録媒体の表面電気抵抗値を十分に低減することが困難となる。
【0044】
複合磁性粒子粉末の磁気特性は、芯粒子として針状磁性酸化鉄粒子を用いた場合、保磁力値は19.9〜39.8kA/m(250〜500Oe)が好ましく、より好ましくは23.9〜39.8kA/m(300〜500Oe)であって、飽和磁化値は60〜90Am2/kg(60〜90emu/g)が好ましく、より好ましくは65〜90Am2/kg(65〜90emu/g)であり、芯粒子としてコバルト被着型針状磁性酸化鉄粒子を用いた場合、保磁力値は39.8〜135.3kA/m(500〜1700Oe)が好ましく、より好ましくは43.8〜135.3kA/m(550〜1700Oe)であって、飽和磁化値は60〜90Am2/kg(60〜90emu/g)が好ましく、より好ましくは65〜90Am2/kg(65〜90emu/g)である。芯粒子として鉄を主成分とする針状金属磁性粒子及び針状鉄合金磁性粒子を用いた場合、保磁力値は63.7〜278.5kA/m(800〜3500Oe)が好ましく、より好ましくは71.6〜278.5kA/m(900〜3500Oe)であって、飽和磁化値は90〜170Am2/kg(90〜170emu/g)が好ましく、より好ましくは100〜170Am2/kg(100〜170emu/g)である。芯粒子として板状マグネトプランバイト型フェライト粒子を用いた場合、保磁力値は39.8〜318.3kA/m(500〜4000Oe)、好ましくは51.7〜318.3kA/m(650〜4000Oe)であって、飽和磁化値は40〜70Am2/kg(40〜70emu/g)、好ましくは45〜70Am2/kg(45〜70emu/g)である。
【0045】
複合磁性粒子粉末の酸化物微粒子粉末の脱離率は15%以下が好ましく、より好ましくは12%以下である。酸化物微粒子粉末の脱離率が15%を超える場合には、磁気記録媒体の製造時において、脱離した酸化物微粒子粉末によりビヒクル中での均一な分散が阻害される場合があるとともに、十分な耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性を有する磁気記録媒体が得られない。
【0046】
複合磁性粒子粉末における酸化物微粒子粉末は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化モリブデンから選ばれた一種又は二種以上の酸化物微粒子粉末である。磁気ヘッドのクリーニング性を考慮した場合、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムから選ばれた一種又は二種以上の酸化物微粒子粉末を用いることが好ましい。
【0047】
酸化物微粒子粉末の平均粒子径は0.001〜0.07μm、より好ましくは0.002〜0.05μmである。
【0048】
酸化物微粒子粉末の平均粒子径が0.001μm未満の場合には、酸化物微粒子粉末があまりに微細となるため、取扱いが困難となる。0.07μmを超える場合には、酸化物微粒子粉末の粒子サイズが磁性粒子粉末の粒子サイズに対して大きくなりすぎるため、磁性粒子粉末の粒子表面への付着が不十分となる。
【0049】
酸化物微粒子粉末の付着量は、磁性粒子粉末に対して0.1〜20重量%である。
【0050】
0.1重量%未満の場合には、酸化物微粒子粉末の付着量が少ないため、十分な研磨効果を有する複合磁性粒子粉末を得ることが困難となる。20重量%を超える場合には、得られる複合磁性粒子粉末は十分な研磨効果を有しているが、酸化物微粒子粉末の付着量が多いため、酸化物微粒子粉末が磁性粒子粉末の粒子表面から脱離しやすくなり、耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性に優れた磁気記録媒体が得られにくい。より好ましくは0.15〜15重量%、更に、より好ましくは0.2〜10重量%である。
【0051】
本発明に係る複合磁性粒子粉末におけるケイ素化合物は、化1で表わされるテトラアルコキシシランから、加熱工程を経て生成される。
【0052】
【化1】
SiX4
X:−OR
R:C1〜C5のアルキル基
【0053】
テトラアルコキシシランとしては、具体的には、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン及びテトラペンチルオキシシラン等が挙げられる。
【0054】
酸化物微粒子粉末の付着効果及び脱離率を考慮すると、テトラエトキシシラン及びテトラメトキシシランが好ましい。
【0055】
テトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物による被覆量は、複合磁性粒子粉末に対して、Si換算で0.01〜5.0重量%であることが好ましい。より好ましくは0.02〜4.0重量%、更により好ましくは0.03〜3.0重量%である。
【0056】
テトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物による被覆量が0.01重量%未満の場合には、磁性粒子粉末の粒子表面に付着している酸化物微粒子粉末を固定化するには不十分な量であり、酸化物微粒子粉末が磁性粒子粉末の粒子表面から脱離しやすくなるため、耐久性及びヘッドクリーニング性に優れた磁気記録媒体を得ることが困難である。
【0057】
5.0重量%を超える場合には、磁性粒子粉末の粒子表面に付着している酸化物微粒子粉末を固定化することはできるが、非磁性成分であるテトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物の増加により磁性粒子粉末の磁気特性が損なわれる。
【0058】
本発明に係る複合磁性粒子粉末は、必要により、磁性粒子粉末の粒子表面をあらかじめ、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上の中間被覆物で被覆しておいてもよく、中間被覆物で被覆しない場合に比べ、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が向上する。
【0059】
中間被覆物による被覆量は、中間被覆物が被覆された磁性粒子粉末に対してAl換算、SiO2換算又はAl換算量とSiO2換算量との総和で0.01〜20重量%が好ましい。
【0060】
0.01重量%未満である場合には、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性改良効果が得られない。20重量%を超える場合には、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性改良効果が十分に得られるため、必要以上に被覆する意味がない。また、非磁性成分が増加すると磁性粒子粉末の磁気特性が損なわれる。
【0061】
中間被覆物で被覆されている本発明に係る複合磁性粒子粉末は、中間被覆物で被覆されていない本発明に係る複合磁性粒子粉末の場合とほぼ同程度の粒子サイズ、幾何標準偏差値、BET比表面積値、体積固有抵抗値、磁気特性及び酸化物微粒子粉末の脱離率を有している。
【0062】
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
【0063】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体上と該非磁性支持体上に形成される複合磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層とからなる。
【0064】
非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができ、その厚みは、その材質により種々異なるが、通常好ましくは1.0〜300μm、より好ましくは2.0〜200μmである。
【0065】
磁気ディスクの場合、非磁性支持体としてはポリエチレンテレフタレートが通常用いられ、その厚みは、通常50〜300μm、好ましくは60〜200μmである。磁気テープの場合は、ポリエチレンテレフタレートの場合、その厚みは、通常3〜100μm、好ましくは4〜20μm、ポリエチレンナフタレートの場合、その厚みは、通常3〜50μm、好ましくは4〜20μm、ポリアミドの場合、その厚みは、通常2〜10μm、好ましくは3〜7μmである。
【0066】
結合剤樹脂としては、現在、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合樹脂、ウレタンエラストマー、ブタジエン−アクリロニトリル共重合樹脂、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン等の合成ゴム系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイソシアネート、電子線硬化型アクリルウレタン樹脂等とその混合物を使用することができる。
【0067】
また、各結合剤樹脂には−OH、−COOH、−SO3M、−OPO22、−NH2等の極性基(但し、MはH、Na、Kである。)が含まれていてもよい。磁性塗料製造時における複合磁性粒子粉末のビヒクル中への分散性を考慮すれば、極性基として−COOH、−SO3Mを含有している結合剤樹脂が好ましい。
【0068】
非磁性支持体上に形成された磁気記録層の塗膜厚さは、0.01〜5.0μmの範囲である。0.01μm未満の場合には、均一な塗布が困難で塗りむら等が生じやすくなるため好ましくない。5.0μmを超える場合には、反磁界の影響のため、所望の電磁変換特性が得られにくくなる。好ましくは0.05〜4.0μmの範囲である。
【0069】
磁気記録層中における複合磁性粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対して複合磁性粒子粉末が5〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。
【0070】
複合磁性粒子粉末が5重量部未満の場合には、磁性塗料中の複合磁性粒子粉末が少なすぎるため、塗膜にした時に、複合磁性粒子粉末の連続分散した層が得られず、塗膜表面の平滑性及び塗膜強度が不十分となる。2000重量部を超える場合には、結合剤樹脂の量に対して複合磁性粒子粉末が多すぎるため、磁性塗料中で複合磁性粒子粉末が十分に分散されず、その結果、塗膜にした時に、表面が十分平滑な塗膜が得られ難い。また、複合磁性粒子粉末が結合剤樹脂によって十分にバインドされないために、得られた塗膜はもろいものとなりやすい。
【0071】
尚、磁気記録層に、通常の磁気記録媒体の製造に用いられる潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等が必要により結合剤樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部程度含まれていてもよい。
【0072】
本発明に係る磁気記録媒体は、保磁力値が19.9〜318.3kA/m(250〜4000Oe)、好ましくは23.9〜318.3kA/m(300〜4000Oe)、角形比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bm)が0.82〜0.95、好ましくは0.83〜0.95であって、塗膜の光沢度が165〜300%、好ましくは170〜300%、塗膜の表面粗度Raが12.0nm以下、好ましくは2.0〜11.5nm、より好ましくは2.0〜11.0nm、ヤング率は124〜160、好ましくは126〜160、表面電気抵抗値は1.0×1010Ω/cm2以下、好ましくは9.0×109Ω/cm2以下、より好ましくは8.0×109Ω/cm2以下、走行耐久性は22分以上、好ましくは24分以上、磁気ヘッドのクリーニング性は、後記の4段階評価によるB又はA、好ましくはAである。
【0073】
本発明に係る磁気記録媒体は、磁性粒子粉末として粒子表面が中間被覆物で被覆されている本発明に係る複合磁性粒子粉末を用いた場合には、保磁力値が19.9〜318.3kA/m(250〜4000Oe)、好ましくは23.9〜318.3kA/m(300〜4000Oe)、角形比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bm)が0.82〜0.95、好ましくは0.83〜0.95であって、塗膜の光沢度が170〜300%、好ましくは175〜300%、塗膜の表面粗度Raが11.0nm以下、好ましくは2.0〜10.5nm、より好ましくは2.0〜10.0nm、ヤング率は126〜160、好ましくは128〜160、表面電気抵抗値は1.0×1010Ω/cm2以下、好ましくは9.0×109Ω/cm2以下、より好ましくは8.0×109Ω/cm2以下、走行耐久性は23分以上、好ましくは25分以上、磁気ヘッドのクリーニング性は、後記の4段階評価によるB又はA、好ましくはAである。
【0074】
磁気記録媒体の高密度記録を考慮して、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を芯粒子粉末として用いた本発明に係る複合磁性粒子粉末を磁性粒子粉末として用いた場合には、保磁力値が63.7〜278.5kA/m(800〜3500Oe)、好ましくは71.6〜278.5kA/m(900〜3500Oe)、角形比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bm)が0.85〜0.95、好ましくは0.86〜0.95であって、塗膜の光沢度が190〜300%、好ましくは195〜300%、塗膜の表面粗度Raが10.0nm以下、好ましくは2.0〜9.5nm、より好ましくは2.0〜9.0nm、ヤング率は126〜160、好ましくは128〜160、表面電気抵抗値は1.0×1010Ω/cm2以下、好ましくは9.0×109Ω/cm2以下、より好ましくは8.0×109Ω/cm2以下、耐久性のうち走行耐久性は24分以上、好ましくは26分以上、磁気ヘッドのクリーニング性は、後記の4段階評価によるB又はA、好ましくはAである。
【0075】
また、磁性粒子粉末として磁性粒子粉末の粒子表面が中間被覆物で被覆されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を芯粒子粉末として用いた本発明に係る複合磁性粒子粉末を用いた場合には、保磁力値が63.7〜278.5kA/m(800〜3500Oe)、好ましくは71.6〜278.5kA/m(900〜3500Oe)、角形比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bm)が0.85〜0.95、好ましくは0.86〜0.95であって、塗膜の光沢度が195〜300%、好ましくは200〜300%、塗膜の表面粗度Raが9.5nm以下、好ましくは2.0〜9.0nm、より好ましくは2.0〜8.5nm、ヤング率は128〜160、好ましくは130〜160、表面電気抵抗値は1.0×1010Ω/cm2以下、好ましくは9.0×109Ω/cm2以下、より好ましくは8.0×109Ω/cm2以下、耐久性のうち走行耐久性は25分以上、好ましくは27分以上、磁気ヘッドのクリーニング性は、後記の4段階評価によるB又はA、好ましくはAである。
【0076】
次に本発明に係る複合磁性粒子粉末の製造法について述べる。
【0077】
本発明に係る複合磁性粒子粉末は、磁性粒子粉末の粒子表面に酸化物微粒子粉末を付着させ、次いで、酸化物微粒子粉末が付着した磁性粒子粉末にテトラアルコキシシランを添加して、加熱処理することによって得ることができる。
【0078】
磁性粒子粉末の粒子表面への酸化物微粒子粉末の付着は、磁性粒子粉末と酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化モリブデンから選ばれた一種又は二種以上の酸化物微粒子粉末とを機械的に混合攪拌するか、あるいは磁性粒子粉末と該酸化物微粒子粉末を含むコロイド溶液とを機械的に混合攪拌した後乾燥すればよい。磁性粒子粉末の粒子表面への酸化物微粒子粉末の均一処理を考慮すれば、酸化物微粒子粉末を含むコロイド溶液を用いる方が好ましい。
【0079】
酸化物微粒子粉末としては、合成したもの、市販のもの等いずれをも使用することができる。酸化物微粒子粉末を含むコロイド溶液としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化セリウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素及び酸化モリブデン等の各酸化物微粒子粉末を含むコロイド溶液がある。
【0080】
酸化アルミニウム微粒子粉末を含むコロイド溶液としては、アルミナゾル溶液等(日産化学工業株式会社製)を使用することができる。
【0081】
酸化ジルコニウム微粒子粉末を含むコロイド溶液としては、NZS−20A、NZS−30A、NZS−30B等(いずれも商品名、日産化学工業株式会社製)を使用することができる。
【0082】
酸化セリウム微粒子粉末を含むコロイド溶液としては、セリアゾル溶液(日産化学工業株式会社製)を使用することができる。
【0083】
酸化チタン微粒子粉末を含むコロイド溶液としては、STS−01、STS−02等(いずれも商品名、石原産業株式会社製)を使用することができる。
【0084】
酸化ケイ素微粒子粉末を含むコロイド溶液としては、スノーテックス−XS、スノーテックス−S、スノーテックスUP、スノーテックス−20、スノーテックス−30、スノーテックス−40、スノーテックス−C、スノーテックス−N、スノーテックス−O、スノーテックス−SS、スノーテックス−20L、スノーテックス−OL等(いずれも商品名、日産化学工業株式会社製)を使用することができる。
【0085】
酸化物微粒子粉末の添加量又は酸化物微粒子粉末を含むコロイド溶液の添加量は、磁性粒子粉末に対して、酸化物微粒子粉末又はコロイド溶液中に含まれる酸化物微粒子粉末がAl23換算、ZrO2換算、CeO2換算、TiO2換算、SiO2換算又はMoO3換算で、磁性粒子粉末100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲が好ましい。0.1重量部未満の場合には、磁性粒子粉末に対して酸化物微粒子粉末の付着量が不十分であり、十分な研磨効果を有する複合磁性粒子粉末が得られない。20重量部を超える場合には、得られる複合磁性粒子粉末は十分な研磨効果を有しているが、酸化物微粒子粉末の付着量が多いため、酸化物微粒子粉末が磁性粒子粉末の粒子表面から脱離しやすくなり、耐久性及び磁気ヘッドクリーニング性に優れた磁気記録媒体が得られにくい。
【0086】
なお、酸化物微粒子粉末を均一に磁性粒子粉末の粒子表面に付着させるためには、磁性粒子粉末の凝集をあらかじめ粉砕機を用いて解きほぐしておくことが好ましい。
【0087】
磁性粒子粉末と酸化物微粒子粉末との混合攪拌やテトラアルコキシシランと粒子表面に酸化物微粒子粉末が付着している磁性粒子粉末との混合攪拌をするための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール形混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができる。本発明の実施にあたっては、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0088】
上記ホイール型混練機としては、具体的に、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。上記ボール型混練機としては、具体的に、振動ミル等がある。上記ブレード型混練機としては、具体的に、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウタミキサー等がある。上記ロール型混練機としては、具体的に、エクストルーダー等がある。
【0089】
混合攪拌時における条件は、磁性粒子粉末の粒子表面に酸化物微粒子粉末ができるだけ均一に付着されるように、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)、処理時間は5〜120分、好ましくは10〜90分の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0090】
磁性粒子粉末の粒子表面に酸化物微粒子粉末を付着させた後、テトラアルコキシシランを添加して混合攪拌し加熱処理することにより、磁性粒子粉末に付着している酸化物微粒子粉末をテトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物で固定化する。
【0091】
混合攪拌時における条件は、酸化物微粒子粉末が付着している磁性粒子粉末の粒子表面にテトラアルコキシシランができるだけ均一に被覆されるように、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)、処理時間は5〜120分、好ましくは10〜90分の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0092】
テトラアルコキシシランの添加量は、磁性粒子粉末100重量部に対して0.05〜70重量部が好ましい。0.05重量部未満の場合には、研磨効果及び耐久性を改良できる程度に酸化物微粒子粉末を十分付着させることが困難である。70重量部を超える場合には、酸化物微粒子粉末を十分付着させることができるため、必要以上に添加する意味がない。
【0093】
加熱温度は、通常40〜200℃が好ましく、より好ましくは60〜150℃である。処理時間は、10分〜36時間が好ましく、30分〜24時間がより好ましい。テトラアルコキシシランは、この加熱工程によりケイ素化合物となる。
【0094】
尚、マグネタイト粒子粉末、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末及び針状鉄合金磁性粒子粉末等の酸化されやすい磁性粒子粉末は、酸化による磁気特性劣化を防止するために、混合機器にN2などの不活性ガスをパージして、各処理を行うことが好ましい。
【0095】
殊に、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末及び針状鉄合金磁性粒子粉末の加熱処理を行う際は、乾燥器内にN2などの不活性ガスをパージして加熱処理を行うか、あるいは減圧乾燥機を用いて減圧下加熱処理を行うことが好ましい。
【0096】
磁性粒子粉末は、必要により、酸化物微粒子粉末を付着させるに先立って、あらかじめ、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる一種又は二種以上の中間被覆物で被覆しておいてもよい。
【0097】
中間被覆物による被覆は、磁性粒子粉末を分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記磁性粒子粉末の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる一種又は二種以上の化合物で被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
【0098】
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が使用できる。
【0099】
アルミニウム化合物の添加量は、磁性粒子粉末に対してAl換算で0.01〜20重量%である。0.01重量%未満である場合には、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性改良効果が得られない。20重量%を超える場合には、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性改良効果が十分に得られるため、必要以上に被覆する意味がない。
【0100】
ケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が使用できる。
【0101】
ケイ素化合物の添加量は、磁性粒子粉末に対してSiO2換算で0.01〜20重量%である。0.01重量%未満である場合には、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性改良効果が得られない。20重量%を超える場合には、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性改良効果が十分に得られるため、必要以上に被覆する意味がない。
【0102】
アルミニウム化合物とケイ素化合物とを併せて使用する場合の添加量は、磁性粒子粉末に対し、Al換算量とSiO2換算量との総和で0.01〜20重量%が好ましい。
【0103】
次に、本発明に係る磁気記録媒体の製造法について述べる。
【0104】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、磁性粒子粉末と結合剤樹脂と溶剤とを含む塗膜組成物を塗布し塗膜を形成した後、乾燥して磁気記録層を形成することにより得られる。
【0105】
溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているメチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン及びその混合物等を使用することができる。
【0106】
溶剤の使用量は、複合磁性粒子粉末100重量部に対してその総量で65〜1000重量部である。65重量部未満では磁性塗料とした場合に粘度が高くなりすぎ塗布が困難となる。1000重量部を超える場合には、塗膜を形成する際の溶剤の揮散量が多くなりすぎ工業的に不利となる。
【0107】
【発明の実施の形態】
粒子の平均長軸径、平均短軸径は、電子顕微鏡写真(×30,000)を縦方向及び横方向にそれぞれ4倍に拡大した写真に示される粒子約350個について長軸径、短軸径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0108】
軸比は、平均長軸径と平均短軸径との比で示し、板状比は平均粒子径と平均厚みとの比で示した。
【0109】
粒子の長軸径又は粒子径(以下、「粒子径」という。)の粒度分布は、下記の方法により求めた幾何標準偏差値で示した。
【0110】
即ち、上記拡大写真に示される粒子の粒子径を測定した値を、その測定値から計算して求めた粒子の実際の粒子径と個数から統計学的手法に従って、対数正規確率紙上に横軸に粒子径を、縦軸に所定の粒子径区間のそれぞれに属する粒子の累積個数(積算フルイ下)を百分率でプロットする。そして、このグラフから粒子の個数が50%及び84.13%のそれぞれに相当する粒子径の値を読みとり、幾何標準偏差値=積算フルイ下84.13%における粒子径/積算フルイ下50%における粒子径(幾何平均径)に従って算出した値で示した。幾何標準偏差値が1に近いほど、粒子の粒度分布が優れていることを意味する。
【0111】
比表面積値はBET法により測定した値で示した。
【0112】
磁性粒子粉末の粒子表面に被覆されているAl量、Si量及びCo量、磁性粒子粉末の粒子表面に存在する酸化物微粒子のAl量、Zr量、Ce量、Ti量、Si量及びMo量並びにテトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物に含有されるSi量のそれぞれは、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0113】
尚、磁性粒子粉末の粒子表面に被覆、存在しているケイ素の酸化物、ケイ素の水酸化物及び酸化ケイ素微粒子粉末並びにテトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物のそれぞれに含有される各Si量は、処理工程後の各段階でSi量を測定し、その測定値から処理工程前の段階で測定したSi量を差し引いた値で示した。また、磁性粒子粉末の粒子表面に被覆、存在しているアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物及び酸化アルミニウム微粒子粉末のそれぞれに含有される各Al量も上記Si量と同様の方法で求めた値で示した。
【0114】
複合磁性粒子粉末に付着している酸化物微粒子粉末の脱離率(%)は、下記の方法により求めた値で示した。酸化物微粒子粉末の脱離率が0%に近いほど、複合磁性粒子粉末の粒子表面からの酸化物微粒子粉末の脱離量が少ないことを示す。
【0115】
複合磁性粒子粉末3gとエタノール40mlを50mlの沈降管に入れ、20分間超音波分散を行った後、120分間静置し、沈降速度によって複合磁性粒子粉末と脱離した酸化物微粒子粉末とを分離した。次いで、この複合磁性粒子粉末に再度エタノール40mlを加え、更に20分間超音波分散を行った後120分静置し、複合磁性粒子粉末と脱離した酸化物微粒子粉末を分離した。この複合磁性粒子粉末を80℃で1時間乾燥させ、前記の「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従ってAl量、Zr量、Ce量、Ti量、Si量及びMo量を測定し、下記式に従って求めた値を酸化物微粒子粉末の脱離率(%)とした。
【0116】
酸化物微粒子粉末の脱離率(%)=[(Wa−We)/Wa]×100
Wa:複合磁性粒子粉末の酸化物微粒子粉末付着量
We:脱離テスト後の複合磁性粒子粉末の酸化物微粒子粉末付着量
【0117】
マグネタイト粒子粉末中のFe2+含有量は、下記の化学分析法により求めた値で示した。
【0118】
即ち、不活性ガス雰囲気下において、マグネタイト粒子粉末0.5gに対してリン酸と硫酸とを2:1の割合で含む混合溶液25mlを添加し、上記マグネタイト粒子粉末を溶解した。この溶解水溶液の希釈液に指示薬としてジフェニルアミンスルホン酸を数滴加えた後、重クロム酸カリウム水溶液を用いた酸化還元滴定を行った。上記希釈液が紫色を呈した時を終点とし、該終点に至るまでに使用した重クロム酸カリウム水溶液の量から求めた。
【0119】
磁性粒子粉末及び複合磁性粒子粉末の各粒子粉末の体積固有抵抗値は、まず、粒子粉末0.5gを測り取り、KBr錠剤成形器(株式会社島津製作所)を用いて、1.37×107Pa(140Kg/cm2)の圧力で加圧成形を行い、円柱状の被測定試料を作製した。
【0120】
次いで、被測定試料を温度25℃、相対温度60%の環境下に12時間以上暴露した後、この被測定試料をステンレス電極の間にセットし、電気抵抗測定装置(model 4329A 横河北辰電気株式会社製)で15Vの電圧を印加して抵抗値R(Ω)を測定した。
【0121】
次いで、被測定(円柱状)試料の上面の面積A(cm2)と厚みt0(cm)を測定し、次式にそれぞれの測定値を挿入して、体積固有抵抗値(Ω・cm)を求めた。
【0122】
体積固有抵抗値(Ω・cm)=R×(A/t0
【0123】
磁性粒子粉末の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場795.8kA/m(10kOe)(但し、Co被着型磁性酸化鉄粒子及び磁性酸化鉄粒子を用いた場合には397.9kA/m(5kOe))の下で測定した値であり、磁気テープの諸特性は外部磁場795.8kA/m(10kOe)(但し、Co被着型磁性酸化鉄粒子及び磁性酸化鉄粒子を芯粒子として用いた複合磁性粒子粉末を磁性粒子粉末として用いた場合には397.9kA/m(5kOe))の下で測定した結果である。
【0124】
塗料粘度は、得られた塗料の25℃における塗料粘度を、「E型粘度計EMD−R」(株式会社東京計器製)を用いて測定し、ずり速度D=1.92sec-1における値で示した。
【0125】
塗膜の表面光沢は、グロスメーター 「UGV−5D」(スガ試験器株式会社製)で入射角45°で測定した値であり、標準板光沢を86.3%とした時の値を%表示で示したものである。
【0126】
表面粗度Raは、「Surfcom−575A」(東京精密株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さを測定した。
【0127】
磁気記録媒体の走行耐久性は、「Media Durability Tester MDT−3000」(Steinberg Associates社製)を用いて、負荷1.96N(200gw)、ヘッドとテープとの相対速度16m/sにおける実可動時間で評価した。実可動時間が長いほど走行耐久性が良いことを示す。
【0128】
磁気記録媒体の磁気ヘッドのクリーニング性は、「Media Durability Tester MDT−3000」(Steinberg Associates社製)を用いて、負荷1.96N(200gw)、ヘッドとテープとの相対速度16m/sにおいて、30分間走行させた後のヘッド汚れを目視で評価し、下記の4段階で評価を行った。ヘッドの汚れが少ないほど、磁気ヘッドのクリーニング性が高いことを示す。
【0129】
A:ヘッド汚れなし。
B:ヘッド汚れ若干有り。
C:ヘッド汚れ有り。
D:ヘッドにひどい汚れ有り。
【0130】
塗膜の強度は、「オートグラフ」(株式会社島津製作所製)を用いて塗膜のヤング率を測定して求めた。ヤング率は市販ビデオテープ「AV T−120」(日本ビクター株式会社製)との相対値で表した。相対値が高いほど塗膜の強度が良好であることを示す。
【0131】
塗膜の表面電気抵抗値は、被測定塗膜を温度25℃、相対湿度60%の環境下に12時間以上暴露した後、幅6.5mmの金属製の電極に、幅6mmにスリットした塗膜を、塗布面が金属製電極に接触するように置き、その両端に各170gのおもりを付け、電極に塗膜を密着させた後、電極間に500Vの直流電圧をかけて表面電気抵抗値を測定した。
【0132】
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体及び磁気記録層の各厚みは、下記のようにして測定した。
【0133】
デジタル電子マイクロメーターK351C(安立電気株式会社製)を用いて、先ず、非磁性支持体の膜厚(A)を測定する。次に、非磁性支持体と該非磁性支持体上に形成された磁気記録層との厚み(B)(非磁性支持体の厚みと磁気記録層の厚みとの総和)を同様にして測定する。そして、磁気記録層の厚みは(B)−(A)で示した。
【0134】
<複合磁性粒子粉末の製造>
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末(平均長軸径0.130μm、平均短軸径0.0186μm、軸比7.0、幾何標準偏差値1.38、BET比表面積値51.8m2/g、体積固有抵抗値7.2×105Ω・cm、保磁力値136.1kA/m(1,710Oe)、飽和磁化値135.6Am2/kg(135.6emu/g))11.0kgを窒素ガスを導入したエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入して、196N/cm(20Kg/cm)で20分間混合攪拌を行い、粒子の凝集を軽く解きほぐした。
【0135】
次に、平均粒子径0.01μmの酸化セリウム微粒子粉末を含むセリアゾル(CeO2含有量20重量%、日産化学工業株式会社製) 1100gを、エッジランナーを稼動させながら粒子の凝集を解きほぐした上記鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末に添加し、196N/cm(20kg/cm)の線荷重で20分間混合攪拌を行い、上記鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の粒子表面に酸化セリウム微粒子粉末を付着させた。得られた鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、蛍光X線分析の結果、酸化セリウム微粒子粉末の存在量が、酸化セリウム微粒子粉末が存在する鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末に対してCeO2換算で1.92重量%であった。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
【0136】
また、電子顕微鏡観察の結果、添加した酸化セリウム微粒子粉末の存在がほとんど認められないことから、添加した酸化セリウム微粒子粉末はほぼ全量が上記鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の粒子表面に付着・存在していることが認められた。
【0137】
次に、テトラエトキシシランKBE 04(商品名、信越化学工業株式会社製)110gを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に196N/cm(20Kg/cm)の線荷重で20分間、混合攪拌を行い、粒子表面に酸化セリウム微粒子粉末が付着している鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末にテトラエトキシシランを被覆した。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
【0138】
得られた鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を、減圧乾燥機を用いて40℃、1333.22Pa(10Torr)下で24時間加熱処理することにより、テトラエトキシシランから生成するケイ素化合物によって鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の粒子表面に酸化セリウム微粒子粉末を固定化するとともに、テトラエトキシシランの加水分解等によって生成したエタノールや残留した水分等を揮散させた。得られた鉄を主成分とする針状複合金属磁性粒子粉末は、電子顕微鏡観察の結果、テトラエトキシシランから生成するケイ素化合物による固定化処理後も酸化セリウム微粒子粉末の存在がほとんど認められないことから、添加した酸化セリウム微粒子粉末は、ほぼ全量が鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の粒子表面に、固定化されていることが認められた。
【0139】
得られた鉄を主成分とする針状複合金属磁性粒子粉末の平均長軸径は0.131μm、平均短軸径は0.0187μm、軸比は7.0、長軸径の幾何標準偏差値は1.39、BET比表面積値は52.5m2/g、体積固有抵抗値は7.3×106Ω・cm、酸化物微粒子の脱離率は6.3%、保磁力値は135.1kA/m(1,698Oe)、飽和磁化値は129.8Am2/kg(129.8emu/g)、蛍光X線分析の結果、テトラエトキシシランから生成するケイ素化合物の被覆量はSi換算で0.130重量%であった。
【0140】
<磁気記録媒体の製造>
上記で得られた鉄を主成分とする針状複合金属磁性粒子粉末100.0重量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名:MR−110、日本ゼオン株式会社製)10.0重量部、シクロヘキサノン23.3重量部、メチルエチルケトン10.0重量部、カーボンブラック粒子粉末(三菱化学株式会社製、平均粒子径26nm、BET比表面積値130m2/g)1.0重量部とアルミナ粒子粉末(AKP−30、住友化学株式会社製、平均粒子径0.4μm)7.0重量部とをニーダーを用いて20分間混練した後、該混練物にトルエン79.6重量部及びメチルエチルケトン110.2重量部及びシクロヘキサノン17.8重量部を添加して希釈し、次いで、サンドグラインダーによって3時間混合、分散させて混合分散物を得た。
【0141】
上記混合分散物に、ポリウレタン樹脂(商品名:E−900、武田薬品工業株式会社製)の固形分10.0重量部を含むメチルエチルケトン/トルエンの1/1溶液33.3重量部を添加して、更に30分間サンドグラインダーを用いて混合・分散した後、目開き1μmのフィルターで濾過して得られた濾過物にミリスチン酸1.0重量部及びブチルステアレート3.0重量部を含むメチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノンの5/3/2溶液12.1重量部及び三官能性低分子量ポリイソシアネート(商品名:E−31、武田薬品工業株式会社製)5.0重量部を含むメチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノンの5/3/2溶液15.2重量部を攪拌しながら混合して磁性塗料を製造した。
【0142】
得られた磁性塗料の組成は下記の通りであった。
鉄を主成分とする針状複合金属磁性粒子粉末 100.0重量部、
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂 10.0重量部、
ポリウレタン樹脂 10.0重量部、
アルミナ粒子粉末 7.0重量部、
カーボンブラック微粒子粉末 1.0重量部、
ミリスチン酸 1.0重量部、
ステアリン酸ブチル 3.0重量部、
三官能性低分子量ポリイソシアネート 5.0重量部、
シクロヘキサノン 56.6重量部、
メチルエチルケトン 141.5重量部、
トルエン 85.4重量部。
【0143】
得られた磁性塗料の塗料粘度は5,760cPであった。
【0144】
上記磁性塗料を目開き1μmのフィルターで濾過した後、厚さ12μmのポリエステルベースフィルム上にギャップ幅45μmのスリットコーターを用いて塗布し、次いで、乾燥することによって磁性層を形成させ、常法によりカレンダー処理を行って表面平滑化した後、1.27cm(1/2インチ)の幅に裁断した。得られた磁気テープを60℃の硬化炉で24時間静置させ、十分に硬化させて、磁気テープを得た。得られた塗膜の膜厚は3.5μmであった。
【0145】
上記磁気テープの磁気特性は、保磁力値が137.1kA/m(1,723Oe)、角型比(Br/Bm)が0.88であった。光沢度は232%、表面粗度Raは6.9nm、ヤング率は139、表面電気抵抗値は3.6×109Ω・cm、走行耐久時間は27.8分であって、磁気ヘッドのクリーニング性はAであった。
【0146】
【作用】
本発明においては最も重要な点は、磁性粒子粉末の粒子表面に酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化モリブデンから選ばれた一種又は二種以上の酸化物微粒子粉末を付着させ、該磁性粒子粉末の粒子表面と当該酸化物微粒子をテトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物で固定化することによって得られた磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末を磁性粒子粉末として用いることにより、耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性に優れた磁気記録媒体が得られるという事実である。
【0147】
本発明に係る複合磁性粒子粉末を磁気記録媒体用磁性粒子粉末として用いることによって、耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性が優れた磁気記録媒体が得られる理由としては、磁性粒子粉末の粒子表面にモース硬度が高い酸化物微粒子粉末を付着させ、且つ、該酸化物微粒子粉末をテトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物で固定化することによって、磁性粒子粉末の粒子表面からの酸化物微粒子粉末の脱離を可及的に防止しているからと考えている。
【0148】
なお、磁性粒子粉末の粒子表面に固定化されている酸化物微粒子は、以下の理由によって強固に固定化されいるものと推定できる。
【0149】
即ち、テトラアルコキシシランは、水の存在によって容易に加水分解し、更に加熱処理を行うことにより脱水して、二酸化ケイ素を生成することが知られている。本発明においては、磁性粒子粉末の粒子表面に存在する水酸基と磁性粒子粉末の粒子表面に付着している酸化物微粒子粉末の粒子表面に存在する水酸基を介してテトラアルコキシシランの加水分解が起こり、これを加熱処理して脱水することで、磁性粒子粉末の粒子表面と酸化物微粒子とがテトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物によって強固に結合されるためと考えている。
【0150】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を示す。
【0151】
芯粒子1〜3:
芯粒子粉末として表1に示す特性を有する磁性粒子粉末を準備した。
【0152】
【表1】
Figure 0004366553
【0153】
<中間被覆物による磁性粒子粉末の被覆>
芯粒子4:
水酸化ナトリウム水溶液を用いて純水150lのpH値を11.0に調製し、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末(芯粒子1)20kgを加えて攪拌機を用いて邂逅し、さらにホモミックラインミル(特殊機化工業株式会社製)を3回通して鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末のスラリーを得た。
【0154】
該スラリーのに水を加えてスラリーの濃度を98g/lに調整した後、該スラリーから150lを抜き取り、攪拌しながら60℃まで加熱した。
【0155】
このスラリーに1.0mol/lのアルミン酸ナトリウム溶液5444ml(鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末に対してAl換算で1.0重量%に相当する)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値を8.5に調整した。
【0156】
この状態で30分間保持した後、濾過、水洗し、N2ガスをパージした状態で乾燥、粉砕して粒子表面がアルミニウムの水酸化物により被覆されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を得た。
【0157】
この時の主要製造条件を表2に、得られた鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0158】
芯粒子5、6:
芯粒子粉末の種類、添加物の種類及び添加量を種々変化させた以外は前記芯粒子4と同様にして中間被覆物によって被覆された芯粒子5及び6を得た。
【0159】
この時の主要製造条件を表2に、得られた芯粒子粉末の諸特性を表3に示す。尚、表2の被覆物の種類のうち、Aはアルミニウムの水酸化物、Sはケイ素の酸化物であることを示す。
【0160】
【表2】
Figure 0004366553
【0161】
【表3】
Figure 0004366553
【0162】
酸化物微粒子粉末1〜5:
酸化物微粒子粉末として、表4に示す特性を有する各酸化物微粒子粉末を準備した。
【0163】
【表4】
Figure 0004366553
【0164】
実施例1〜10及び比較例1〜5:
芯粒子粉末の種類、酸化物微粒子粉末の付着工程における酸化物微粒子粉末の種類及び添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間、テトラアルコキシシランによる被覆工程におけるテトラアルコキシシランの種類及び添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして複合磁性粒子粉末を得た。
【0165】
この時の主要製造条件を表5に、得られた複合磁性粒子粉末の諸特性を表6に示す。
【0166】
【表5】
Figure 0004366553
【0167】
【表6】
Figure 0004366553
【0168】
比較例6(特開平6−151139号公報の追試実験例):
芯粒子3のCo被着マグヘマイト粒子粉末6.0kgを水に混合・攪拌した後、0.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液1000mlを添加してpH11.4の混合懸濁液を得た。
【0169】
上記混合懸濁液を攪拌・混合した後、0.5mol/lのアルミン酸ナトリウム水溶液2200ml(Co被着マグヘマイト粒子粉末に対してAl換算で0.5重量%に該当する。)を添加して攪拌・混合した。
【0170】
次いで、当該懸濁液を攪拌しながら0.1mol/lのHCl水溶液を添加してpHを7.0に調整した。その時の所要時間は8分であった。直ちに、常法により濾別・水洗・乾燥して磁性粒子粉末を得た。
【0171】
得られたCo被着マグヘマイト粒子粉末5kgをエッジランナー「MPUV−2型」(株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入して線荷重588N/cm(60Kg/cm)で60分間圧密粉砕を行なった。
【0172】
得られたCo被着マグヘマイト粒子粉末の諸特性を表6に示す。
【0173】
実施例11〜22及び比較例7〜12:
複合磁性粒子粉末の種類及び研磨剤の添加量を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして磁気記録媒体を得た。
【0174】
この時の主要製造条件及び得られた磁気記録媒体の諸特性を表7に示す。
【0175】
【表7】
Figure 0004366553
【0176】
【発明の効果】
本発明に係る複合磁性粒子粉末は、磁気記録媒体の磁性粒子粉末として用いた場合、耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性に優れた磁気記録媒体が得られることから、高密度磁気記録媒体用磁性粒子粉末として好適である。
【0177】
本発明に係る磁気記録媒体は、耐久性及び磁気ヘッドのクリーニング性に優れるとともに、磁性層中の研磨剤含有量を低減させ磁性粒子粉末の充填割合を増加させることができるので、電磁変換特性が優れていることから、高密度磁気記録媒体として好適である。

Claims (4)

  1. 平均粒子径0.01〜0.3μmの磁性粒子粉末の粒子表面に、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化モリブデンから選ばれた平均粒子径0.001〜0.07μmの酸化物微粒子粉末の一種又は二種以上がテトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物によって固定化されている複合磁性粒子粉末であって、前記酸化物微粒子粉末が前記磁性粒子粉末に対して0.1〜20重量%であることを特徴とする磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末。
  2. 請求項1記載の磁性粒子粉末の粒子表面が、あらかじめアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる中間被覆物によって被覆されていることを特徴とする磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末。
  3. 平均粒子径0.01〜0.3μmの磁性粒子粉末と酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化モリブデンから選ばれた平均粒子径0.001〜0.07μmの酸化物微粒子粉末の一種又は二種以上とを混合して磁性粒子粉末の粒子表面に酸化物微粒子を付着させた後に、該混合物にテトラアルコキシシランを添加して40〜200℃の温度範囲で加熱することにより、前記酸化物微粒子粉末を前記磁性粒子粉末の粒子表面に前記テトラアルコキシシランから生成するケイ素化合物によって固定化させることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末の製造法。
  4. 非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末が請求項1又は請求項2記載の磁気記録媒体用複合磁性粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体。
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