JP4366523B2 - 電気泳動用チップ及びこれを用いた試料の分析方法 - Google Patents
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クロスインジェクション法を利用した電気泳動用チップの一例を図13に示す。この例の電気泳動チップ11では、ガラス基板上に十字の溝を持つポリメチルシロキサン(PDMS)チップを張り合わせることによりその十字の流路が形成されている。十字の流路の4つの端部には液体を導入するポートが設けられ、また、電極(図示略)が接続されている。この例では、ポート24からポリマー溶液を十字の流路内に満たした後、液体試料をポート21に注入し、ポート22および23は緩衝液で満たす。まず、試料導入のための十字の短辺の流路31に電圧を加えることでこの短辺の流路31内に試料を満たす。続いて、試料分離のための十字の長辺の流路32に電圧を加え、短辺の流路31と長辺の流路32の交差部分ISの微小試料片(プラグ)を十字の長辺の流路に導入する。その後、試料は混合した物質の分子量ごとのバンドとなって分離される。
Effenhauser, et.al.,"Integrated Capillary Electrophoresis on Flexible Silicone Microdevices: Analysis of DNA Resriction Fragments and Detection of Single DNA Molecules on Microchips,"Anal.Chem,1997,69,3451-3457
また、この技法においては、印加電圧の制御により電気的プラグを生成するが、導入時の電圧印加の時間によって、生成した試料プラグ内の構成成分の比が、ポート21にある元の試料の構成成分の比とは異なるという問題がある。よって、この技法においては、試料導入の電圧印加の時間が十分でない場合には、定量性を補償することが困難である。
また、この技法においては、試料を導入する際の印加電圧及び試料を分離する際の印加電圧が100ボルトから300ボルト程度必要となり、大掛かりな装置が必要となる。
また、この電気泳動チップを用いた試料の検出方法によれば、前記課題を解決することができることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
この電気泳動用チップを用いれば、試料を分離するときに、分離した物質のバンドの形状が変形せず、矩形を保つので、試料の分離・検出の解像度がより向上し、好ましい。
この電気泳動用チップにおいて細管束の壁面が疎水性であれば、親水性の物質が細管束に浸入することが防止されるので、親水性の試料を分析するのに好適である。この電気泳動用チップにおいて細管束の壁面が親水性であれば、疎水性の物質が細管束に浸入することが防止されるので、疎水性の試料を分析するのに好適である。
この電気泳動用チップを用いれば、流路毎に異なる気体ポートを設ける必要がなくなり、装置を簡略化できるという点で好ましい。さらに、この電気泳動用チップによれば、流路が複数備えられているので、そのうち1つの流路に分子量既知のマーカーを導入し、それ以外の流路に分子量を測定したい試料を導入し、同じ電源装置によって電気泳動を行うことにより、試料の分子量を測定することができる。
前記樹脂基板の加工面の溝によって、前記流路と、前記気体透過部と、前記気体通路とが形成されていることを特徴とする第1の発明から第6の発明のいずれか1つに記載の電気泳動用チップである。
前記電気泳動開始用電極に最も近い気体透過部に通じた第1の気体ポートから気体を排出することにより、試料を前記流路の一部又は全体に導入した後、
前記電気泳動開始用電極に最も近い気体透過部以外のいずれか1つの気体透過部に通じた第2の気体ポートから気体を導入することにより、前記試料の一部を前記流路に計量して残し、前記試料のそれ以外の部分を流路から排出し、
次いで、前記第2の気体ポートから気体を排出することにより、前記流路に緩衝液を導入し、
電極に電圧を加えて試料を分離することを特徴とする第1の発明から第7の発明のいずれか1つに記載の電気泳動用チップである。
この電気泳動用チップアレイによれば、流路が複数備えられているので、そのうち1つの流路に分子量既知のマーカーを導入し、それ以外の流路に分子量を測定したい試料を導入し、同じ電源装置によって電気泳動を行うことにより、試料の分子量を測定することや、試料の成分量を定量することができる。
前記電気泳動開始用電極に最も近い気体透過部に通じた第1の気体ポートから気体を排出することにより、第1の試料を前記流路の一部又は全体に導入した後、
前記電気泳動開始用電極に最も近い気体透過部以外のいずれか1つの気体透過部に通じた第2の気体ポートから気体を導入することにより、第1の試料の一部を前記流路に計量して残し、第1の試料のそれ以外の部分を前記流路から排出し、
次いで、前記第2の気体ポートから気体を排出することにより、第2の試料を前記流路に導入した後、
前記第2の気体ポートに通じた気体透過部を介して、前記電気泳動開始用電極とは反対の側に位置するいずれか1つの気体透過部に通じた第3の気体ポートから気体を導入することにより、第2の試料の一部を前記流路に計量して残し、第2の試料のそれ以外の部分を前記流路から排出し、
次いで、前記第3の気体ポートから気体を排出することにより、前記流路に緩衝液を導入し、
電極に電圧を加えて、第1の試料と第2の試料の反応を分析することを特徴とする第10の発明に記載の試料の分析方法であるである。
この試料の分析方法によれば、2種の試料の反応、例えば、一本鎖DNA同士の結合を検出したり、DNAと制限酵素との反応により、遺伝子の同定をおこなうことができる。
また、本発明の試料の分析方法は、上記と同様の効果を有し、有用である。
本発明に係る電気泳動用チップの1例の模式図を図1(a)及び図1(b)に示す。図1(b)は、図1(a)に示した電気泳動用チップ12を真上から見たときの流路3の末端付近の拡大模式図である。この例の電気泳動用チップ12は、ガラス基板11と樹脂基板13の2つを主要部とする。ガラス基板11は50mm×76mm×1mmの大きさとされる。樹脂基板13は、大きさが25mm×40mm×3mmの大きさとされ、ガラス基板11上に貼り合わされている。ガラス基板11の上面11aには2つの電極4が設けられている。
気体通路7の細管と連通していない一端には気体ポート8が接続され、気体通路7と気体ポート8が連通している。気体ポートは略円柱状とされ、直径は1mmとされる。気体ポート8には、気体チューブ9が挿入されている。気体チューブは空気圧制御装置(図略)とつながれており、装置を制御することにより、気体ポート8、気体通路7、細管束6、流路3に気体を導入したり、気体を排出できるようになっている。空気圧制御装置は自動化された機械を用いても良いし、注射器のような手動の器具を用いても良い。
なお、本発明の電気泳動用チップ1の各部材のサイズや形状、それに部材同士の位置関係はこの例に限るものではない。また、電極4を3つ以上設けることにより、電気泳動の測定の長さを2種以上設定することができる。
気体透過部56を多孔質体51の構造とした例を図5に示す。図5(a)は、この例の電気泳動用チップを真上から見たときの流路3の末端付近の拡大模式図であり、図5(b)は、この例の電気泳動用チップを図1(a)に示したCD断面で切断したときの断面図である。この図から明らかなように、この例の電気泳動用チップは、流路3と気体通路7をつなぐ部分を、前記細管管6の構造とする代わりに、多孔質体51の構造とする以外は、図1に示す電気泳動用チップ12と同じ構成を有する。
多孔質体51に用いられる物質としては、1)不規則な細孔構造を有する、多孔質ガラス、多孔質シリコン、活性炭、セラミクスのほか、2)規則的な細孔構造を有する、ゼオライト、層状構造物、等がある。
ポート2(図略)に試料Sを注入する。気体制御装置(図略)により、気体ポート81から気体を排出し、細管束61及び気体通路71の圧力を流路3に対して負圧にすると、流路3内の一部に試料Sが導入される(図6(a))。ここでは、試料Sは、その一端が末端33(若しくは電気泳動開始用電極41)付近に置かれ、もう一端は、細管束62とポート2の間に置くようにする。図6(b)に示すように、気体ポート82から気体を導入し、細管束62及び気体通路72の圧力を流路3に対して正圧にしたときに、試料の一部SPを残し、微小試料片(プラグ)を形成させるためである。このようにすれば、試料Sを流路3全体に導入する場合に比べて、より少ない試料で分析することができ、貴重なサンプルを有効利用できる。
次いで、気体制御装置により、気体ポート82から気体を導入し、細管束62及び気体通路72の圧力を流路3に対して正圧にすると、試料の一部SPが残り、微小試料片(プラグ)が形成される(図6(b))。
その後、電極4に電圧を加えることにより、試料がポート2に向かって動くが、分子量の小さい物質は移動度が大きく、分子量の大きい物質は移動度が小さいので、試料を分離・検出することができる。ここで、電極は厚さが数十nmとされているので、流路3の構造は長手方向にほぼ一様であり、試料の分析に与える影響は無視できる。また、試料の分離にかかる時間は、3分程度とされ、従来の技法と同等の性能を有するが、試料プラグ生成の際に、元の試料と構成成分比が変わらないので、試料を定量的に分析することができる。
なお、この例においては、前記と同様、気体透過部56を、前記細管管6の構造とする代わりに、多孔質体51の構造とすることもできる。
ポート2(図略)に第1の試料S1を注入する。気体制御装置(図略)により、気体ポート81から気体を排出し、細管束61及び気体通路71の圧力を流路3に対して負圧にすると、流路3内全体に試料S1が導入される(図7(a))。ここでは、試料S1は、その一端が末端33(若しくは電気泳動開始用電極41)付近に置かれ、もう一端は、細管束62とポート2の間に置くようにする。図7(b)に示すように、気体ポート82から気体を導入し、細管束62及び気体通路72の圧力を流路3に対して正圧にしたときに、試料の一部S1Pを残し、微小試料片(プラグ)を形成させるためである。このようにすれば、試料S1を流路3全体に導入する場合に比べて、より少ない試料で分析することができ、経済的である。
次いで、気体制御装置により、気体ポート82から気体を導入し、細管束62及び気体通路72の圧力を流路3に対して正圧にすると、第1の試料の一部S1Pが残り、第1の試料の微小試料片(プラグ)が形成される(図7(b))。
次いで、気体制御装置により、気体ポート83から気体を導入し、細管束63及び気体通路73の圧力を流路3に対して正圧にすると、第2の試料の一部S2Pが残り、第2の試料の微小試料片(プラグ)が形成される。こうして、第1の試料の微小試料片(プラグ)と、第2の試料の微小試料片(プラグ)同士を合一させて反応を行うことができる。
その後、電極4に電圧を加えることにより、試料がポート2に向かって動くが、分子量の小さい物質は移動度が大きく、分子量の大きい物質は移動度が小さいので、試料を分離・検出することができる。
また、本実施例のDNAマーカーの検出の結果を図9に示す。この例では、10種のDNAの好ましくないピーク同士の重なりは見られなかった。
Claims (11)
- 試料を導入するためのポートと、導入された試料の流路と、流路に接続された2以上の電極とを備えた電気泳動用チップであって、前記電極のいずれか1つの近傍には気体透過部が2以上並べて接続されており、それぞれの気体透過部は、気体通路を介して、前記気体通路に気体を導入・排出するための気体ポートと接続されていることを特徴とする電気泳動用チップ。
- 前記気体透過部が複数の細管で構成される細管束、若しくは多孔質体であることを特徴とする請求項1記載の電気泳動用チップ。
- 前記電極の前記流路に突出する端縁が、前記流路の長手方向に直交する直線状であることを特徴とする請求項1又は2記載の電気泳動用チップ。
- 前記細管の壁面が、疎水性加工若しくは親水性加工されていることを特徴とする請求項2又は3記載の電気泳動用チップ。
- 前記細管の断面形状が矩形であり、幅及び高さが0.1μm以上20μm以下とすることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の電気泳動用チップ。
- 前記流路が複数並列してなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の電気泳動用チップ。
- 前記電極が形成された上面を有するガラス基板と、予め溝加工された加工面を有する樹脂基板とを、前記ガラス基板の上面に、前記樹脂基板の加工面を対面させて貼り合せることにより、
前記樹脂基板の加工面の溝によって、前記流路と、前記気体透過部と、前記気体通路とが形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の電気泳動用チップ。 - 前記流路の末端に設けられている電気泳動開始用電極の近傍に2以上の前記気体透過部が並べられており、
前記電気泳動開始用電極に最も近い気体透過部に通じた第1の気体ポートから気体を排出することにより、試料を前記流路の一部又は全体に導入した後、
前記電気泳動開始用電極に最も近い気体透過部以外のいずれか1つの気体透過部に通じた第2の気体ポートから気体を導入することにより、前記試料の一部を前記流路に計量して残し、前記試料のそれ以外の部分を流路から排出し、
次いで、前記第2の気体ポートから気体を排出することにより、前記流路に緩衝液を導入し、
電極に電圧を加えて試料を分離することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の電気泳動用チップ。 - 請求項1から8のいずれか1項記載の電気泳動用チップを2以上並列してなる電気泳動用チップアレイ。
- 請求項1から8のいずれか1項記載の電気泳動用チップ若しくは請求項9記載の電気泳動用チップアレイを用いたことを特徴とする試料の分析方法。
- 前記流路の末端に設けられている電気泳動開始用電極の近傍に3以上の前記気体透過部が並べられており、
前記電気泳動開始用電極に最も近い気体透過部に通じた第1の気体ポートから気体を排出することにより、第1の試料を前記流路の一部又は全体に導入した後、
前記電気泳動開始用電極に最も近い気体透過部以外のいずれか1つの気体透過部に通じた第2の気体ポートから気体を導入することにより、第1の試料の一部を前記流路に計量して残し、第1の試料のそれ以外の部分を前記流路から排出し、
次いで、前記第2の気体ポートから気体を排出することにより、第2の試料を前記流路に導入した後、
前記第2の気体ポートに通じた気体透過部を介して、前記電気泳動開始用電極とは反対の側に位置するいずれか1つの気体透過部に通じた第3の気体ポートから気体を導入することにより、第2の試料の一部を前記流路に計量して残し、第2の試料のそれ以外の部分を前記流路から排出し、
次いで、前記第3の気体ポートから気体を排出することにより、前記流路に緩衝液を導入し、
電極に電圧を加えて、第1の試料と第2の試料の反応を分析することを特徴とする請求項10記載の試料の分析方法。
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