JP4365762B2 - 核医学診断装置および核医学診断装置の冷却方法 - Google Patents

核医学診断装置および核医学診断装置の冷却方法 Download PDF

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Description

本発明は、放射線を利用した核医学診断装置に係り、特に、陽電子放出型断層撮影装置(Positron Emission Computed Tomography、以下、「PET」という)等の放射線検査を行うのに好適な核医学診断装置および核医学診断装置の冷却方法に関する。
放射線を利用した検査技術は、被検体内部を非破壊で検査することができる。特に、人体に対する放射線検査技術には、X線CT、PET、単光子放出型断層撮影装置(Single Photon Emission Computed Tomography、以下、「SPECT」という)等がある。
これらの技術は、いずれも、検査対象の物理量を放射線飛翔方向の積分値として計測し、その積分値を逆投影することにより被検体内の各ボクセルの物理量を計算し画像化する技術である。これらの技術では、膨大なデータを処理する必要があり、近年のコンピュータの技術の急速な発達に伴い、高速・高詳細画像が提供されるようになってきた。
核医学診断装置であるPET及びSPECTは、X線CT等では検出できない分子生物学レベルでの機能や代謝の検出が可能な手法であり、身体の機能画像を提供することが可能である。PETは、18F,15O,11C,といったポジトロン放出核種で標識した放射性薬剤を投与し、その分布を計測して画像化する手法である。薬剤には、フルオロデオキシグルコース(2-[F-18]fluoro-2-deoxy-D-glucose、18FDG)等があり、これは、薬剤が糖代謝により腫瘍組織に高集積することを利用し、腫瘍部位の特定に使用される。
体内に取り込まれた放射線核種は、崩壊してポジトロン(β+)を放出する。放出されたポジトロンは電子と結合して消滅する際に、それぞれ511keVのエネルギーを有する一対の消滅γ線(消滅γ線対)を放出する。この消滅γ線対は、ほぼ反対方向(180度±0.6度)に放射されるので、被検体の周りを取り囲むように配置した複数の放射線検出器で消滅γ線対を同時検出し、その放射方向データを蓄積することで投影データを得ることができる。投影データを逆投影(前記フィルタードバックプロジェクション法等を使用)することにより放射位置(放射線核種の集積位置)を同定し画像化することが可能となる。
SPECTは、シングルフォトン放出核種で標識した放射性薬剤を投与し、その分布を計測して画像化する手法である。薬剤からは100keV程度のエネルギーをもった単一γ線が放出され、この単一γ線を放射線検出器で計測している。単一γ線の計測では、その飛翔方向を同定できないので、SPECTでは放射線検出器の前面にコリメータを挿入し、特定の方向からのγ線のみを検出することにより投影データを得る。PET同様、フィルタードバックプロジェクション法等を利用し投影データを逆投影して画像データを得る。PETと異なるところは、単一γ線の計測に起因して同時計測の必要がなく、放射線検出器の数が少なくて済むこと等であり、装置構成が簡単である。
前記した従来のPET、SPECT等の核医学診断装置では、画像を得るために、放射線検出器としてシンチレータを使用している。シンチレータは、入射したγ線を一旦可視光に変換し、その後、光電子増倍管(ホトマル)により電気信号に変換し直すという処理を行っている。シンチレータは、可視光変換時のホトン発生数が少ない上に、前記のように2段階の変換過程を必要とするためにエネルギー分解能が低く、必ずしも高精度の診断を行なうことができないという問題を有していた。エネルギー分解能の低下は、特に、PETの3D撮像時に定量性評価が出来ない原因となっている。なぜなら、エネルギー分解能が低いためにγ線のエネルギー閾値を低くせざるを得なく、3D撮像時に増加するノイズである体内散乱を多く検出してしまうからである。
そこで、近年、核医学診断装置用の放射線検出器として半導体検出器を用いることが注目されている。半導体検出器は、入射したγ線を直接電気信号に変換するものであり、生成される電子やホール対の数が多いために、エネルギー分解能が高いという特徴を有している。
通常、シンチレータや半導体検出器における時間分解能やエネルギー分解能といった特性は、高温の環境下において低下を来たすことが知られており、そのための手段として核医学診断装置に冷却機構を備えたものが開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
特開平10−160847号公報(全頁) 特開平9−276262号公報(全頁)
ところで、PET検査では、消滅γ線対の検出を行うために、検出したイベントの同時性を判断(同時計測)する必要がある。消滅γ線対の検出時刻には、放射線検出器や回路系のノイズ等によりゆらぎが存在するため、同時性を判断するために、許容できる特定の同時計測時間窓を設け、この同時計測時間窓内で検出した2個のイベントが同時のものであるとして判定している。
一方、核医学診断装置において、画質の向上および画像情報の定量性の向上を図るためには、前記したシンチレータや半導体検出器における時間分解能、エネルギー分解能の特性を向上することが挙げられる。
時間分解能の特性が向上すると、前記同時計測時間窓を小さくすることが可能となる。そうすると、真の消滅γ線対ではない、γ線を偶発的に捕らえてしまう確率が低減されることとなる。偶発的に捕らえられたγ線対(偶発同時イベント)は、真の位置情報を保持していないので、このようなノイズ成分が排除されることにより、画質および画像情報の定量性が向上する。また、エネルギー分解能の特性が向上すると、前記のような体内散乱によるγ線を排除することができ、画質および画像情報の定量性が向上する。
しかしながら、核医学診断装置の高性能化に伴い、放射線検出器の増加および高密度化が進んでおり、また、装置の小型化に伴って内部に組み込まれる電子回路機器等の稠密化も進んでいる状況では、前記従来の冷却機構を適用しても、放射線検出器を含む電子回路機器(信号処理装置)から発生する熱を十分に冷却することができず、その結果として、時間分解能やエネルギー分解能の特性が低下するという懸念があった。
本発明は、信号処理装置で発生する熱が放射線検出器に伝わることを抑制することができる核医学診断装置および核医学診断装置の冷却方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明の核医学診断装置は、放射線検出器と信号処理装置とをユニット基板上に設け、撮像装置内に形成される、放射線検出器が配置される第1の領域、および信号処理装置が配置される第2の領域をお互いに分離する断熱部材を、撮像装置内に設けた構成とした。この構成によれば、発熱要素を有する第2の領域と発熱はしないが低温に維持したい第1の領域とを断熱部材で遮断することができ、信号処理装置で発生する熱が放射線検出器に伝わるのを抑制することができる。したがって、半導体検出器の時間分解能およびエネルギー分解能が向上し、PET画像の画質および定量性が向上して、高精度な診断が可能となる。
また、放射線検出器の温度上昇を抑制することができるので、放射線検出器の経時変化が抑えられ、故障率を低下させることができる。したがって、放射線検出器の特性が安定したものとなり、装置の信頼性が向上するとともに、ランニングコストの低減を図ることができる。
さらに、放射線検出器と信号処理装置とを第1,第2の基板からなるユニット基板上に設けて、検出精度がより向上するように構成することができる。
好ましくは、冷却装置により、冷却材を供給するように構成する。ここで、冷却材は、第1の領域から第2の領域に供給されるように構成してもよいし、第1,第2の領域に別々に供給されるように構成してもよい。さらに、発熱要素を有する第2の領域にのみ供給されるように構成してもよい。これらのような構成とすることにより、第2の領域における温度上昇が抑制され、第1の領域の放射線検出器側における温度上昇が著しく抑制されるようになる。
好ましくは、半導体放射線検出器を用いることで検出精度を上げるように構成する。この構成においては、半導体放射線検出器を用いてダイレクトに放射線を検出することができるので、時間分解能及びエネルギー分解能を向上させることができる。
さらに、複数のユニット基板を収納部材内に設けた検出器ユニットを備え、複数の検出器ユニットを、被検体を支持するベッドの周囲に配置し、断熱部材を収納部材内に配置して構成することができる。このように、ユニット基板が収納部材内に設置され、断熱部材によって第1の領域と第2の領域とがお互いに分離される構造では、放射線検出器の温度上昇の抑制を効果的に行うことができる。また、放射線検出器の存在する部分が収納部材の外側に位置するように構成することもできる。このように構成することで、断熱部材による放射線検出器の温度上昇の抑制をより効果的に行うことができる。
また、冷却材が供給される第1,第2の冷却材通路を撮像装置に形成し、これらの通路に検出器ユニットの、第1,第2の領域の部分をそれぞれ配置することにより、通路に供給される冷却材で効率よく冷却が行われるように構成することもできる。
また、本発明の核医学診断装置の冷却方法は、ユニット基板上の放射線検出器が設置される第1の領域と信号処理装置が設置される第2の領域とを断熱部材によりお互いに分離し、第2の領域に冷却材を供給するステップを具備する。これによれば、信号処理装置が配置される第2の領域を冷却材で冷却することができ、放射線検出器を低温状態に保持することができる。
冷却材は、第1,第2の領域に別々に供給されるように構成してもよいし、第1の領域に供給した後、第1の領域から第2の領域に供給されるように構成してもよい。この場合、第1の領域から第2の領域に供給される冷却材により放射線検出器を効率よく冷却することができ、放射線検出器を低温状態に保持することができる。
本発明によれば、信号処理装置で発生した熱が放射線検出器に伝わることを抑制することができる核医学診断装置および核医学診断装置の冷却方法が得られる。
次に、本発明の好適な一実施形態である核医学診断装置について、適宜図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、核医学診断装置を構成する撮像装置としてPET装置を例にとって説明する。もちろん、本発明はPET装置に限らずSPECT等のその他の撮像装置を用いた核医学診断装置に適用することが可能である。
〔実施形態1〕
はじめに、図1、図2を参照して、本実施形態の核医学診断装置(PET装置1)の概略構成を説明する。PET装置1は、撮像装置11と、この撮像装置11が撮像して得た検出データを処理して画像データに変換するデータ処理装置12と、このデータ処理装置12が出力する画像データを二次元または三次元的に表示する表示装置13と、被検者(被検体)H(図2参照)を体軸方向に進退動可能に載せるベッド14とを備えている。
撮像装置11は、多数の半導体放射線検出器(以下、単に検出器という(図3(a)(b)、図4参照、以下同様)、詳細は後記する)21を有する検出器ユニット2を備えている。検出器ユニット2は、撮像装置11のケーシング11A内に配置され、図2に示すように、撮像装置11の空間S内に挿入されたベッド14を取り囲むように、被検者Hの体軸Zを中心として周方向に多数配置されている。撮像装置11には、さらに冷却装置50(図2に構成要素の一部を図示)が設けられている。
被検者Hには、放射性薬剤、例えば、半減期が110分の18Fを含んだフルオロデオキシグルコース(FDG)が投与される。この放射性薬剤は、例えば、がんの患部C(図2)に集積する。図2に示すように、このFDGから放出された陽電子の消滅時に生じる一対のγ線(放射線)が、被検者Hの体内から同時に180度±0.6度の方向に放出される。これらのγ線は、180度反対方向に位置する2つの検出器21で検出される。これらの検出器21から出力される検出信号に基づいて、被検者Hの体内におけるγ線の発生源(放射性薬剤の集積部)の位置が特定される。
図2に示された、検出器ユニット2およびその周辺部の構成は、その配置を説明するために概略的に示したものであって、詳細な構成については後に詳しく説明する。撮像装置11に設けられた冷却装置50は、この検出器ユニット2の検出器21を冷却するためのものである。本実施形態では、検出器21を冷却する冷却材(冷媒)として空気を利用している。冷却装置50の詳細については後記する。
データ処理装置12は、図2に示すように、同時計測装置12A、及び画像情報作成装置12Bを有する。データ処理装置12は、検出器ユニット2に内蔵された結合基板22(図3(b))の結合FPGA28から出力されるデータ(後記するパケットデータ)を取り込む。同時計測装置12Aは、この取り込んだデータのうち同一の発生源からのペアのγ線からこれらのγ線を検出した一対の検出器21の位置を特定し、これらの位置情報を図示しない記憶装置に記憶する。そして、画像情報作成装置12Bは、この特定された位置情報に基づいて被検者HにおけるPET画像情報(断層像情報)を作成し、これを表示装置13に表示させるべく出力するようになっている。
具体的には、同時計測装置12Aにおいて、複数の検出データの検出時刻データを比較し、同時計測時間窓長、例えば、10ns以内である2つのデータを有効データ対として判定する。さらに、画像情報作成装置12Bにおいて、前記有効データ対の検出器21のIDからγ線対の飛翔方向データを集積し、そのデータから画像再構成を実施してPET画像を作成する。そして、作成したPET画像を表示装置13に出力する。
次に、主要構成部分の詳細について説明する。
まず、図3(a)(b)を参照して、検出器ユニット2について説明する。検出器ユニット2は、複数のユニット基板20を収納部材である筐体30内に収納して構成される。ちなみに、撮像装置11(図2参照)は、この検出器ユニット2が周方向に60〜70個着脱自在に配置されて構成されており、保守点検が容易なようにされている。
ユニット基板20は、第1の基板としての検出器基板20Aと、第2の基板としての信号処理基板20Bとを含んでいる。ユニット基板20は、図2に示した被検者Hの体軸Z方向(ベッド14の長手方向)に複数枚並べられた状態で、筐体30内に配置されている。本実施形態では、図3(b)に示すように、ユニット基板20が計15枚設けられている。
検出器基板20Aと信号処理基板20Bとは、互いの端部近傍で重なり合うオーバラップ部分を設けて、これらのオーバラップ部分に存在するコネクタC1同士を接続することにより相互に機械的かつ電気的に連結されている。このオーバラップ部分において、検出器基板20Aおよび信号処理基板20Bは、互いにねじ(図示せず)で着脱自在に結合されている。このような、検出器基板20Aと信号処理基板20Bとの電気的な接続構造を用いることで、信号を検出器基板20Aから信号処理基板20Bへ低損失で伝送することができる。ちなみに、損失が少なくなると、例えば、検出器21としてのエネルギー分解能が向上する。
このように、検出器基板20Aと信号処理基板20Bとの電気的接続は、コネクタC1によって行われることから、基板同士の接続・接続の解除(結合・結合の解除)は容易である。したがって、例えば、後記する検出器21やアナログASIC24,デジタルASIC26に不具合が生じた場合には、不具合のある部分だけを取り替えれば済む。よって、一部に不具合があるために、ユニット基板20全体を新しいものに取り替えるといったような無駄を無くすことができ、保守費用を低減することができる。
なお、ユニット基板20は、前記構成に限らず、例えば、1枚の基板から構成して前記検出器基板20Aおよび信号処理基板20Bに設けられている後記する各エレメントを、この1枚の基板上に設けるように構成してもよい。このようなユニット基板20では、コネクタC1がない分、コストが低減されるとともに、組み立てが簡単になる。
信号処理基板20Bの他端(上端)には、基板コネクタC2が設けられており、図3(b)に示すように、この基板コネクタC2を介して接続された連絡線R1により、ユニット基板20は、その後方側(図3(b)における右方)に配置された後記する結合基板22に対して電気的に接続されている。
検出器基板20Aは、図3(a)(b)に示すように、複数の検出器21を基板本体20aの両面にそれぞれマトリックス状に配置している。図3(a)では基板本体20aの片面当り、撮像装置11の周方向(空間Sの周方向、図4参照)に16個、撮像装置11の半径方向(空間Sの半径方向、図4参照)に4個、の計64個の検出器21が設けられる。本実施形態では、検出器21が、撮像装置11の中心軸(被検者Hの体軸Zと略同軸)を中心として周方向に並べられて配置されている。本実施形態では、検出器21の配列ピッチを小さくして、検出器21の相互間の隙間が狭い状態となるように検出器21を密に配置してあり、これによって、検出器基板20A上における検出器21の高実装化を図っている。したがって、検出器基板20Aにおけるγ線の検出効率は向上されたものとなり、検査時間を低減している。
検出器21は、図示しないカソードとアノードとに挟まれて積層された半導体部材を有する。この半導体部材は、CdTe(テルル化カドミウム)、TlBr(臭化タリウム)、GaAs(ガリウム砒素)等のいずれかの単結晶で構成される。アノードおよびカソードは、Pt(白金)、Au(金)、In(インジウム)等のいずれかの材料が用いられる。検出器21をこのような構造とすることにより、電荷の収集効率が高められるとともに、素通りしてしまうγ線の量を少なくして、半導体部材とγ線との相互作用(カウント数)を増やす(感度を上昇させる)ことができる。なお、検出器21は、必ずしもこのような積層構造とする必要はなく、単層としてもよいし、また、適宜の層構造としてもよい。
ここで、PET装置1では、設置される検出器21の数が多くなればなるほどγ線が検出され易くなり、かつ、γ線検出の際の位置精度が高められる。このため、検出器21は、前記のように密に配置されることが好ましく、また、図5に示すように、検出器ユニット2が、撮像装置11のケーシング11A(図2参照)内において周方向に近接して配置されることが好ましい。このような配置構造を採ることにより、得られる画像の位置分解能を高めることができる。
かかる構成により、各検出器21は、PET撮影で用いる511keVのγ線(放射線)を検出して、そのγ線のエネルギー(半導体材料と相互作用を起こしたエネルギー)に対応したアナログ信号(γ線検出信号)を出力する。
次に、信号処理基板20Bについて説明する。信号処理基板20Bは、それぞれの検出器21において出力されたγ線検出信号を処理する、信号処理装置である集積回路(アナログASIC24,ADC25,デジタルASIC26)を基板本体20bに設置している。これらの集積回路は、検出器21から出力された微弱なγ線検出信号を増幅し、検出したγ線のエネルギーおよび検出時刻を計測する。そして、この計測されたエネルギーおよび検出時刻のデータに、予め設定されている検出器IDを付加し、パケットデータ(デジタルデータ)として出力する。この出力されたパケットデータは、基板コネクタC2から連絡線R1を通じて結合基板22の結合FPGA28に送られる。
結合基板22は、図3(b)に示すように、各ユニット基板20に電圧を供給するための昇圧装置である高圧電源27と、各ユニット基板20の基板コネクタC2を通じて出力された前記パケットデータを集約する結合FPGA(Field Programmable Gate Array)28と、これら集約されたパケットデータをデータ処理装置12に送信するデータ転送装置29とを備えている。本実施形態では、結合基板22がユニット基板20と同様に並べられて、後記する筐体30の後方側(図3(b)における右方)に配置した。しかし、これに限らず、結合基板22は、筐体30の前方側等に配置することができる。
高圧電源27は、図示しない撮像装置11の外部に設置された低圧の電源に接続されており、DC−DCコンバータにより低圧の電圧を300Vに昇圧して各ユニット基板20の各検出器21に供給する。また、高圧電源27は、結合基板22に搭載されて筐体30内に配置されるので、検出器ユニット2を支持部材であるユニット支持部材40(図2)に取り付けることによって撮像装置11に容易に設置できる。
本実施形態では、撮像装置11において、各ユニット基板20は、基板本体20aに設けられた各検出器21がベッド14の長手方向を向くように配置されているが、この構造には限定されない。例えば、基板本体20aに設けられた各検出器21が撮像装置11の周方向を向くように各ユニット基板20を配置してもよい。
次に、このようなユニット基板20および結合基板22の筐体30への収納について説明する。
筐体30は、横断面が矩形(好ましくは、長方形)の筒状体であり、撮像装置11のケーシング11A内に設けられるリング状(環状)のユニット支持部材40(図4参照)に周方向に取り付けられる。筐体30は、図3(a)(b)に示すように、側部31がユニット基板20の信号処理基板20Bを覆う大きさに形成されているとともに、下端部に開口が形成されている。これにより、筐体30内にユニット基板20を設置すると、ユニット基板20の信号処理基板20Bが筐体30内に配置されるが、検出器基板20Aの大部分、すなわち検出器基板20Aの、検出器21が設置された部分が筐体30の開口から下方(外側)に突出する。すなわち、基板本体20a上の全検出器21は、筐体30で覆われることなく、筐体30の外部に位置する。このため、後記するように、ユニット支持部材40に検出器ユニット2を取り付けた状態では、検出器21が、ユニット支持部材40内の第1導風路41に露出された状態で配置されることとなる。
本実施形態では、前記のように、筐体30内に収納されるユニット基板20が、奥行方向(ベッド14の長手方向)に重なり合わないように15列並べて配置されているとともに、結合基板22が、筐体30の後部側に配置されている。これらのユニット基板20および結合基板22は、筐体30の長手方向(ベッド14の長手方向)に延びて筐体30に設けられた4本の基板固定棒32に貫通されて支持されることにより筐体30に取り付けられる。
筐体30の上部は、内側に折り曲げられており、この部分に、排気用のユニットファン33が取り付けられている。このユニットファン33は、図示しない薄形のモータにより回転駆動されるファンを内蔵しており、後記するように筐体30内の空気を筐体30の上方の排気ダクト43(図2参照)に対して排出する役目をなしている。ユニットファン33は、結合基板22に供給された図示していない低圧の電源から電力の供給を受けて作動するようになっている。なお、ユニットファン33は、常時作動型であるが、筐体30内の温度が所定の温度となったことを検出して作動するように構成してもよい。このように構成することで電力の消費を抑えることができる。
筐体30の下部の開口には、ユニット基板20との間に形成される全ての隙間S1を埋めるように、断熱部材35が充填されている。本実施形態では、ユニット基板20のコネクタC1の位置で、ユニット基板20相互間、ユニット基板20と結合基板22との間、ユニット基板20と筐体30の内面との間、および結合基板22と筐体30の内面との間にそれぞれ形成される隙間S1に断熱部材35が充填され(目張りされ)、筐体30の開口が封鎖されている。つまり、断熱部材35を境にして、検出器基板20Aの、全検出器21が位置する筐体30の外側の空間(第1の領域A)と信号処理基板20Bが位置する筐体30の内側の空間(第2の領域B)とがお互いに分離されている。断熱部材35の存在により、筐体30の下部の開口を通じての第1の領域Aおよび第2の領域B相互間での空気の流れが遮断されている。したがって、第2の領域Bの集積回路(デジタルASIC26等)の熱によって加熱された空気が第1の領域Aに流れ込んで検出器21が加熱されることが防止される。したがって、検出器21が高温に曝されることがない。
断熱部材35としては、熱伝導率が低く、隙間S1に対する充填性に優れた材料、例えば、ウレタンを用いることができる。好ましくは、電磁波を遮蔽することが可能な部材、例えば、金属シートでウレタンを包むとよい。このような電磁波を遮蔽することが可能な部材を用いることにより、集積回路(デジタルASIC26等)から発生する電磁波から検出器21を防御することができる。これにより、検出器21の時間分解能及びエネルギー分解能を高めることができる。また、断熱部材35は、弾性を有する部材、例えばゴム等の弾力性を備えた部材を用いることが好ましい。このような部材を用いることにより、隙間S1の目張りを行う作業がより簡便化し、さらに、PET装置1を移送する際にユニット基板20に振動が生じても、これを好適に抑制することができる。
なお、前記例においては、断熱部材35をユニット基板20のコネクタC1の周囲および結合基板22の下端部周りに充填して開口を閉じたが、これは一例を示すものであって、集積回路(デジタルASIC26等)からの熱が検出器21側に伝わるのを防止することのできる任意の位置、例えば、アナログASIC24の下方近傍位置等において開口を閉じるように構成してもよい。
筐体30の側部31には、筐体30の外側から冷却材である空気を筐体30内に導くための通気孔34が多数設けられている。通気孔34は、筐体30内の第2の領域Bに連絡されている。ユニットファン33の駆動により、筐体30外部の後記する第2導風路42にある空気が、確実に筐体30内に導かれる。本実施形態では、通気孔34が、筐体30の長手方向に所定の間隔を置いて複数設けられている。これによって、筐体30内に略均一に所定量の空気が導入されるようになっている。
このような筐体30を有する検出器ユニット2は、撮像装置11のケーシング11A内に設置されたユニット支持部材40に取り付けられる。すなわち、検出器ユニット2は、図4に示すように、撮像装置11のユニット支持部材40に形成された開口部40aに検出器21側から挿入され、リング状のユニット支持部材40の開口縁40b(図4、図5参照)に筐体30の側部31の下端部が密着した状態で着脱可能に固定される。開口縁40bは、開口部40a相互間に存在する。筐体30の下端部が開口縁40bの外面に設けられた嵌合部材55内に挿入されるため、検出器ユニット2の、撮像装置11の周方向における位置決めがなされる。空間Sを取り囲む円筒板40cが、開口縁40bの内側に位置してユニット支持部材40に取り付けられる。前記のように、全てのユニット基板20に備わった全検出器21は、筐体30の外側に位置しているので、検出器ユニット2をユニット支持部材40の開口部40aに取り付けると、検出器ユニット2の各検出器21は、開口縁40b、すなわちユニット支持部材40と円筒板40cとの間に形成される環状の第1導風路41内に位置することとなる。なお、検出器ユニット2の固定は、図示しないねじ等を用いることにより行われる。これにより、検出器ユニット2は、ユニット支持部材40に対して着脱可能に構成される。したがって、メンテナンス等が行い易いという利点が得られる。
また、図5に示すように、検出器ユニット2は、下部(ユニット支持部材40よりも内側に位置する部分)に側部31(図3(a)参照)が形成されていないので、その分、隣り合う検出器ユニット2の検出器基板20A同士は、周方向に近接して配置することができる。これにより、周方向に隣り合う検出器基板20A間のデッドスペースが小さくなり、これらの検出器基板20Aのそれぞれの端部に位置して互いに隣り合う検出器21相互間の間隔が狭くなる。これによって、放射線の検出感度を向上させることができる。したがって、検査時間の短縮を図ることが可能となる。
次に、本実施形態の特徴的構成である冷却装置50について説明する。冷却装置50は、図2に示すように、送風装置51と、この送風装置51からの空気が導入される、ユニット支持部材40の第1導風路(第1冷却材通路)41と、ユニット支持部材40の外側を取り囲むように設けられ、第1導風路41からの空気が導入される第2導風路(第2冷却材通路)42と、この第2導風路42の外側を取り囲むように設けられた排気ダクト43と、この排気ダクト43に設けられた排気ファン44とを主として備えている。環状の第1導風路41は、前述したように、開口縁40bと円筒板40cとの間に形成される。また、第2導風路42は、開口縁40b、すなわちユニット支持部材40の外側で筐体30相互間に形成される。第1導風路41および第2導風路42はケーシング11A内に形成され、排気ダクト43および排気ファン44はケーシング11A内に設けられる。
送風装置51およびダクト52はケーシング11Aの外部に設置される。送風装置51は、撮像装置11の側方や後方等の、撮像装置11の操作やメンテナンス等の邪魔にならない場所に配置されており、撮像装置11が設置される部屋内の空気を内蔵ファン(不図示)によって吸い込み、ダクト52を介してユニット支持部材40の内側の第1導風路41に供給する。送風装置51の吸気口側には、図示しない空気清浄フィルタが取り付けられており、この空気清浄フィルタを通過した空気が冷却空気として利用される。空気清浄フィルタとしては、集塵性能の高いヘパ(HEPA(High Efficiency Particle Air filter))フィルタや電気式の集塵フィルタ等を用いることができる。なお、送風装置51には、空気を冷却するための図示しない冷却手段を設けてもよい。この場合、ダクト52やその他の空気が通流する箇所に、結露を防ぐための断熱材等を付設する。
第1導風路41には、図5に示すように、ユニット基板20の検出器基板20Aが周方向に所定の間隔を置いて配置される。図4に示すように、ユニット支持部材40の背面部には、送風装置51からのダクト52が接続(破線で図示)されており、また、ユニット支持部材40の正面部には、第1導風路41に通じる通孔41aが複数設けられている。これにより、送風装置51からの空気は、第1導風路41内を後部側(ダクト52が接続された側)から正面側(通孔41aが設けられた側)に向けて流れ、通孔41aから排出される。
通孔41aは、第2導風路42に連通しており、これによって、第1導風路41からの空気が第2導風路42に導入されるようになっている。第2導風路42の詳細を、図5を用いて説明する。第2導風路42は、隣り合う筐体30の各側部31、それらの筐体30に架け渡された天板42aおよびユニット支持部材40の開口縁40bで仕切られた空間によって形成され、各検出器ユニット2間に位置している。第2導風路42には、通孔41a(図4参照)を通して第1導風路41からの空気が導入されるようになっている。なお、第2導風路42の通孔41aに通じる部分には、通孔41aからの空気を第2導風路42に導くための図示しない通路がケーシング11A内に形成されている。また、これとは反対側となる第2導風路42の後部側の開口(筐体30の後端部における側部31,31同士の間)は、図示しない板部材で閉じられている。なお、メンテナンス作業等により、検出器ユニット2のひとつをユニット支持部材40から取り外す際には、取り外そうとする検出器ユニット2に取り付けられている天板42aや図示しない板部材等を外すことにより簡単に行うことができる。したがって、第2導風路42の全体を外すというような煩雑な作業を必要とせず、簡易にメンテナンス作業等を行うことができる。
第2導風路42は、筐体30の側部31に設けられた複数の通気孔34を通して、筐体30の内部と連通している。筐体30のユニットファン33の駆動と相俟って、筐体30内には、第2導風路42からの空気が導入されるようになっている。排気ダクト43は、ユニットファン33を介して筐体30の内部と連通しており、ユニットファン33の駆動によって、排気ダクト43には、筐体30の内部からの空気が排出されるようになっている。排気ダクト43には、撮像装置11の設置される部屋内に開口された排気口43aが計3個設けられており、各排気口43aに設けられた排気ファン44を通じて、排気ダクト43内の空気が部屋内に排出されるようになっている。
なお、本実施形態では、撮像装置11が設置される部屋内の空気を吸い込んで、冷却空気として利用し、冷却後に再び部屋内に排出するように構成したが、部屋の外部から空気を吸い込んで冷却後の空気を再び部屋の外へ排出するように構成してもよい。
次に、このような冷却装置50による冷却について説明する。撮像装置11の図示しない電源スイッチを操作して撮像装置11に電力を供給すると、撮像装置11の作動に連動して送風装置51が作動する。そうすると、部屋内の空気が送風装置51からダクト52を介してユニット支持部材40の第1導風路41に冷却空気として送られ(第1の領域Aに冷却空気を供給するステップ)、送られた冷却空気は、第1導風路41内を後部側から正面側に向かって通過する。第1導風路41内には、検出器ユニット2に保持されたユニット基板20の検出器21が露出した状態に配置されているので、各検出器21は、第1導風路41内に送られてきた冷却空気により冷却される。ここで、検出器21は、もともと発熱を生じる性質のものではないが、例えば、連結部分であるコネクタC1を介して信号処理基板20B側からの熱が仮に伝わってくるという事態が生じたとしても、その熱によって検出器21が加熱されるのを著しく抑制することができる。したがって、検出器21の時間分解能及びエネルギー分解能を向上させることができる。
その後、第1導風路41を通過した空気は、通孔41aから第2導風路42に導入され、筐体30の側部31に設けられた通気孔34を通じて筐体30内に導入される(第1の領域Aに供給された冷却空気(冷却材)を第1の領域Aから第2の領域Bへ供給するステップ)。これにより、筐体30内が冷却空気により冷却されて、集積回路(デジタルASIC26等)が冷却され、第2の領域Bの温度上昇を抑制して信号処理系の熱暴走を防止することができる。したがって、装置の信頼性が向上する。
このように、冷却空気は、検出器21が配置される第1の領域Aから第2の領域Bに供給され、検出器21を冷却した空気で集積回路(デジタルASIC26等)が冷却されるようになっているので、一連の流れのなかで検出器21および集積回路(デジタルASIC26等)は、効率よく冷却されることとなる。なお、送風装置51により供給される空気の供給量は、検出器21の数(ユニット基板20の数量)および集積回路(デジタルASIC26等)の温度上昇状況等を考慮して、集積回路(デジタルASIC26等)の熱暴走や素子の破壊を生じない程度に冷却可能で、かつ、検出器21が低温に維持されるように設定する。
筐体30内に供給された冷却空気は、ユニットファン33により強制的に排気ダクト43に排気される。排気ダクト43に排気された冷却後の空気は、排気口43aに設けられた排気ファン44によって、排気口43aから部屋内に排出される。以上のようにして、冷却装置50による冷却空気を用いた冷却が行われる。
なお、本実施形態で用いているCdTeを半導体材料とする検出器21は、光に反応して電荷を発生することから、外部からの光が侵入してこの検出器21に照射しないように遮光が施されている。具体的には、図4に示した筐体30やユニット支持部材40は、アルミニウムまたはアルミニウム合金といった遮光性を有する材料から構成され、両者が嵌合する部分も含め、光が侵入する隙間をなくすように構成されている。
空間Sの方向から侵入する光に対しては、円筒板40cをその外周面が検出器基板20Aの自由端(下端)の近傍に位置するように配置することで、光が検出器21に到達するのを確実に防御することができる。また、円筒板40cをアルミニウム合金(またはアルミニウム)から構成することで遮光性を向上させることができる。さらに、空間Sの方向から侵入する光を防御する他の方法としては、図示しない遮光カバー等で筐体30を覆うように構成してもよいし、また、遮光カバー等の代わりに遮光膜が形成されるように検出器21に遮光材を塗布してもよい。
また、排気ダクト43は、周方向に分割して、排気ダクト43を区切り、各区切られた排気ダクト43の空間毎に排気ファン44を設けるようにしてもよい、このように排気ファン44を独立して設けることにより、より効率のよい排気を行うことができ、冷却空気のスムーズな通流を実現することができる。また、排気ダクト43は、2分割や4分割以上に区切る構成としてもよい。
以下では、本実施形態における効果を説明する。
(1)この核医学診断装置によれば、ユニット基板20が、検出器21を設置した検出器基板20A(第1の基板)と、信号処理装置を設置した信号処理基板20B(第2の基板)とからなり、検出器21が配置された第1の領域Aと信号処理装置が配置された第2の領域Bとが、断熱部材35でお互いに分離された構成となっているので、集積回路(デジタルASIC26等)により生じた熱が、断熱部材35で遮断され、検出器21側に伝わることを著しく抑制できる。これにより、第1の領域Aにある検出器21の温度上昇を著しく抑制することができ、検出器21を低温に維持することができる。これにより、時間分解能およびエネルギー分解能を向上させることができる。また、時間分解能を向上させることができるので、γ線の同時計測時間窓を小さくすることが可能となり、γ線を偶発的に捕らえてしまう確率が低減される。さらに、エネルギー分解能を向上させることができるので、体内散乱が除去(ノイズが低減)されるようになる。したがって、PET画像の画質および定量性が向上して、高精度の診断を行うことができる核医学診断装置が得られる。
しかも、検出器基板20Aと信号処理基板20BとがコネクタC1を介して結合されているので、信号処理基板20B側からの熱が検出器基板20A側に直接的に伝わり難くなり、検出器基板20Aに設置した検出器21の温度上昇を著しく抑制することができる。これにより、時間分解能やエネルギー分解能がより一層向上された核医学診断装置が得られる。
また、検出器21の温度上昇を抑制できるので、検出器21の経時変化が抑えられ、故障率を低下させることができる。したがって、検出器21の特性が安定したものとなり、撮像装置11の信頼性が向上するとともに、ランニングコストの低減を図ることができる。
さらに、検出器21が低温に維持されることとなるので、結合基板22の高圧電源27から供給される電圧が安定するという利点も得られる。
(2)この核医学診断装置によれば、冷却装置50により供給される冷却空気により、第1,第2の領域A,Bを好適に冷却することができる。しかも、冷却空気は、冷却装置50により第1の領域Aから第2の領域Bに供給されるようになっているので、発熱要素のない温度の低い側である検出器21側が冷却された後に、温度の高い側である集積回路(デジタルASIC26等)側が冷却される。このため、前記した断熱部材35による検出器21の温度上昇を抑制することができる効果と相俟って、検出器21の温度上昇をより一層抑制することができる。
(3)この核医学診断装置によれば、ユニット基板20を筐体30内に複数枚収納して検出器ユニット2を構成し、被検者Hを支持したベッド14が挿入されるリング状のユニット支持部材40の周方向に検出器ユニット2が複数配置された構成となっているので、検出器21の高密度実装化を図ることができ、空間分解能が向上すると共に実質的な感度向上による検査時間の短縮された核医学診断装置が得られる。特に、検出器基板20Aの、検出器21が存在する部分を、筐体30の外側に配置しているため、隣り合う検出器ユニット2のユニット基板20の相互間の間隔を狭くでき、撮像装置11の周方向において検出器21をより稠密に配置することができる。したがって、撮像装置11におけるγ線の検出感度が向上し、検査時間を短縮できる。
検出器基板20Aの、検出器21が存在する部分を、筐体30の外側に配置しているため、図7の構成に比べて検出器21の冷却効率が向上する。
また、検出器ユニット2が、ユニット支持部材40に保持されて固定されるので、検出器ユニット2の取り付け取り外しが行い易く、保守性が高い。
(4)この核医学診断装置によれば、検出器21の配置される第1の領域Aが、第2の領域Bから断熱部材35によりお互いに分離されているとともに、検出器ユニット2の下部に露出した状態に配置されているので、検出器21の時間分解能やエネルギー分解能がより向上された核医学診断装置が得られる。
(5)この核医学診断装置によれば、ユニット支持部材40に検出器21を冷却するための第1導風路41が形成されているので、ユニット支持部材40を冷却空気の供給路として有効に利用することができ、冷却を行うための機構をシンプルに構成することができる。
(6)この核医学診断装置によれば、検出器21として半導体放射線検出器を使用しているので、エネルギー分解能が向上し、体内散乱によるγ線を除去することができる。したがって、高精度の診断を行なうことができる核医学診断装置が得られる。特に、3D撮像時において、体内散乱によるγ線の増加が抑えられPET画像の高画質化が図れると共に定量性のある検査が可能となる。
(7)この核医学診断装置によれば、検出器21として半導体放射線検出器を使用しているので、位置分解能が向上する。従来のようなシンチレータにおいては、数十個のシンチレータの信号を1つのホトマルで増幅し、重心計算等を用いて検出したシンチレータ位置を算出しているために、位置分解能が劣化し易い。また、ホトマルを使用しているのでシンチレータ微細化には限界がある。
一方、本実施形態の核医学診断装置では、検出器21毎に増幅回路が形成されているので、位置分解能が劣化しない。さらに、ASIC(24,26)等を使用して信号処理装置を用いているので、検出器21の微細化が容易であり、位置分解能の更なる向上が可能となっている。
(8)この核医学診断装置では、検出器21として半導体放射線検出器を使用し、その信号処理にASIC(24,26)を使用しているために、シンチレータで使用しているホトマルに比べて検出器21周りの小型化が実現される。したがって、第1導風路41が大型化するのを防止することができ、冷却装置50を備えた構成であるにもかかわらず、撮像装置11の小型化を図ることができる。また、検出器21と集積回路(デジタルASIC26等)とをユニット基板20上に順序良く配置しているので、検出器ユニット2の小型化が可能となり、これによって、第2導風路42の小型化も可能となり、冷却装置50を備えた構成であるにもかかわらず、撮像装置11の小型化を図ることができる。
(9)ユニット支持部材40は、検出器ユニット2を支持する部材であり、第1導風路41と第2導風路42を分離する部材でもある。このため、検出器ユニット2を支持する部材と、第1導風路41と第2導風路42を分離する部材を別々に設ける必要がなく、撮像装置11の構造を単純化できる。断熱部材35も、第1の領域Aと第2の領域Bを分離する部材だけでなく、第1導風路41と第2導風路42を分離する部材でもある。この断熱部材35の設置も、撮像装置11の構造をさらに単純化する。
〔実施形態2〕
他の実施形態である核医学診断装置としてのPET装置10を説明する。本実施形態の核医学診断装置は、図6(a)(b),図7に示すように、検出器ユニット2の収納部材である筐体60がユニット基板20の全体を覆う大きさに形成されている点が実施形態1と異なる。具体的には、同図に示すように、筐体60は、底部60aを有する箱型形状とされており、実施形態1で説明した筐体30(図3(a)(b)参照)のように下部に開口が設けられていない。つまり、筐体60内には、断熱部材35で仕切られる第1の領域Aと第2の領域Bとが形成されるようになっている。
本実施形態では、第1導風路41に筐体60の下部が配置されており、これによって、第1導風路41に供給される冷却空気により、筐体60が冷却されるようになっている。つまり、筐体60が冷却されることで、その内部に収納される検出器21の温度上昇の抑制が行われるように構成されている。第1導風路41は、実施形態1と同様に通孔41a(図4参照)を介して第2導風路42に連通しており、第1導風路41を通過した冷却空気が通孔41aを通じて第2導風路42に供給されるようになっている。
また、第2導風路42には、筐体60の側部61が位置しており、側部61に形成された通気孔34を通じて、第2導風路42が筐体60内の第2の領域Bに連通した構成となっている。これにより、第2導風路42に供給された冷却空気が通気孔34を通じて第2の領域Bに供給される。第2の領域Bに供給された冷却空気は、筐体60の上部に設けられたユニットファン33により、排気ダクト43内に排出される。
このようなPET装置10によれば、冷却装置50により、検出器21の温度上昇の抑制が効果的に行われ検出器21が低温状態に維持されることとなるので、検出器21の時間分解能やエネルギー分解能が向上される。
なお、筐体60の下部(底部60a等)に図示しない挿通孔を設けて第1導風路41に供給された冷却空気が筐体60の下部から第1の領域A内に自然流入し、第1の領域Aを冷却するように構成してもよい。
また、第1導風路41と第2導風路42とを仕切る開口縁40bに通孔を設け第1導風路41と第2導風路42とが連通するように構成してもよい。さらに、開口縁40bを削除して第1導風路41と第2導風路42とが一体の導風路となるように構成してもよい。
本実施形態は、前記効果(1)から(9)に加えて以下に記す効果を有する。
(10)本実施形態の核医学診断装置によれば、ユニット基板20の全体が筐体60内に収納される構成となっているので、遮光性に優れ、冷却装置50による冷却効果と相俟って、検出器21の時間分解能やエネルギー分解能がより一層向上されるという効果が得られる。
なお、以上の各実施形態では、検出器ユニット2の撮像装置11への装着(収納)は、前記したユニット支持部材40によるものに限定されるものではなく、どのような装着・収納の手段・方法を用いてもよい。
また、前記実施形態では、第1の領域Aから第2の領域Bに冷却空気が供給される構成としたが、これに限られることはなく、例えば、集積回路(デジタルASIC26等)が設置される第2の領域Bにのみ、冷却装置50により冷却空気が供給されるように構成してもよい。このような構成とすることにより、発熱要素を有する第2の領域Bが冷却空気により直接的に冷却されることとなるので、この場合においても、断熱部材35による空気の通流の遮断効果と相俟って、検出器21が設置される第1の領域A側に熱が伝わり難くなり、検出器21の温度上昇をより効果的に抑制することができる。これにより、検出器21を低温状態に維持することが可能となって、検出器21の時間分解能およびエネルギー分解能を向上させることができ、高精度の診断を行なうことができる核医学診断装置が得られる。また、第2の領域Bに配置される集積回路等の故障を少なくすることができ、撮像装置11の信頼性が向上するとともに、保守費用等を低減することができる。
さらに、第1,第2の領域A,Bに対して、冷却空気がそれぞれ独立して供給されるように構成してもよい。このように構成することで、第1,第2の領域A,Bを独立して冷却することができ、第1,第2の領域A,B毎の温度管理を厳格に行うことができる。これにより、例えば、検出器21を室温と同等の状態に維持するとともに、第2の領域Bにおける温度を80℃以下に保持するということも可能となる。したがって、検出器21を低温の状態に確実に維持することができる。
この場合、冷却装置は、第1,第2の領域A,B毎に2つ(第1,第2の冷却装置)設けるようにしてもよい。このように構成することにより、温度の制御性をより高めることができ、第1,第2の領域A,Bの温度管理をより厳密に行うことができる。また、検出器21を冷却するために、第2の領域Bが必要以上に冷却されてしまうことを防止することができ、冷却効率を向上させることができる。さらに、2つの独立した冷却装置を備えている構成でありながら、ランニングコストを抑えることができるという利点も得られる。
また、冷却材としては、空気に限られることはなく、水等の流体を利用することができる。この場合、冷却を行うための冷却水が供給される水ジャケット等の構成部材を第2の領域B内の空間や集積回路(デジタルASIC26等)に配設することにより、冷却を行うことができる。
実施形態1にかかる核医学診断装置の構成を示す斜視図である。 図1の撮像装置の周方向の断面を模式的に示した図である。 (a)は本実施形態にかかる核医学診断装置に用いられる検出器ユニットを正面側から見たときの断面図、(b)は同じく側断面図である。 検出器ユニットが撮像装置のユニット支持部材に装着される態様を示す斜視図である。 検出器ユニットがユニット支持部材に取り付けられた状態を示す断面図である。 (a)は実施形態2にかかる核医学診断装置に用いられる検出器ユニットを正面側から見たときの断面図、(b)は同じく側断面図である。 検出器ユニットがユニット支持部材に取り付けられた状態を示す断面図である。
符号の説明
1 PET装置
2 検出器ユニット
11 撮像装置
11A ケーシング
12 データ処理装置
12A 同時計測装置
12B 画像情報作成装置
13 表示装置
14 ベッド
20 ユニット基板
20A 検出器基板(第1の基板)
20B 信号処理基板(第2の基板)
21 検出器(半導体放射線検出器)
22 結合基板
24 アナログASIC
25 ADC
26 デジタルASIC
27 高圧電源
28 結合FPGA
29 データ転送装置
30 筐体
32 基板固定棒
33 ユニットファン
34 通気孔
35 断熱部材
40 ユニット支持部材
40c 円筒板
41 第1導風路
42 第2導風路
43 排気ダクト
43a 排気口
44 排気ファン
50 冷却装置
51 送風装置
A 第1の領域
B 第2の領域
C1 コネクタ
H 被検者(被検体)
R1 連絡線
S 空間
Z 体軸

Claims (15)

  1. 被検体を支持するベッドと、撮像装置とを備え、
    前記撮像装置は、複数の放射線検出器、および前記放射線検出器の検出信号を入力する信号処理装置を含むユニット基板を有し、
    前記撮像装置内に形成される、前記放射線検出器が配置される第1の領域および前記信号処理装置が配置される第2の領域をお互いに分離する断熱部材を、前記撮像装置に設けたことを特徴とする核医学診断装置。
  2. 被検体を支持するベッドと、撮像装置とを備え、
    前記撮像装置は、放射線検出器を含む第1の基板、および前記放射線検出器の検出信号を入力する信号処理装置を含み、前記第1の基板とコネクタを介して結合される第2の基板を有するユニット基板を有し、
    前記撮像装置内に形成される、前記放射線検出器が配置される第1の領域および前記信号処理装置が配置される第2の領域をお互いに分離する断熱部材を、前記撮像装置に設けたことを特徴とする核医学診断装置。
  3. 冷却材を前記第2の領域に供給する冷却装置を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。
  4. 冷却材を前記第1の領域から前記第2の領域に供給する通路を有する冷却装置を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。
  5. 冷却材を前記第1の領域に供給する第1の冷却装置と、冷却材を前記第2の領域に供給する第2の冷却装置とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。
  6. 前記放射線検出器は、半導体放射線検出器であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の核医学診断装置であって、
    複数の前記ユニット基板を収納部材内に設けた検出器ユニットを備え、複数の前記検出器ユニットを、被検体を支持するベッドの周囲に配置し、前記断熱部材が前記収納部材内に配置されたことを特徴とする核医学診断装置。
  8. 前記ユニット基板の、前記放射線検出器が存在する部分が前記収納部材の外側に位置することを特徴とする請求項7に記載の核医学診断装置。
  9. 請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置であって、
    冷却材を供給する冷却装置と、複数の前記ユニット基板を収納部材内に設けた検出器ユニットと、を備え、複数の前記検出器ユニットが、被検体を支持するベッドの周囲に配置され、前記断熱部材が前記収納部材内に配置されており、
    前記撮像装置は前記ベッドの周囲を取り囲む環状の支持部材を備え、前記複数の検出器ユニットは前記支持部材に取り付けられ、
    前記冷却装置は、前記支持部材より内側で前記撮像装置内に形成された第1冷却材通路、および前記支持部材より外側で前記撮像装置内に形成され、前記第1冷却材通路内の前記冷却材が供給される第2冷却材通路を有し、
    前記検出器ユニットの、前記第1の領域の部分が前記第1冷却材通路内に配置され、前記検出器ユニットの、前記第2の領域の部分が前記第2冷却材通路内に配置されることを特徴とする核医学診断装置。
  10. 請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置であって、
    冷却材を供給する冷却装置と、複数の前記ユニット基板を収納部材内に設けた検出器ユニットと、を備え、複数の前記検出器ユニットが、被検体を支持するベッドの周囲に配置され、前記断熱部材が前記収納部材内に配置されており、
    前記撮像装置は前記ベッドの周囲を取り囲む環状の支持部材を備え、前記複数の検出器ユニットは前記支持部材に取り付けられ、
    前記冷却装置は、前記支持部材より内側で前記撮像装置内に形成された第1冷却材通路、および前記支持部材より外側で前記撮像装置内に形成され、前記第1冷却材通路内の前記冷却材が供給される第2冷却材通路を有し、
    前記検出器ユニットの、前記第2の領域の部分が前記第2冷却材通路内に配置され、前記検出器ユニットに設けられた前記ユニット基板の、前記放射線検出器が存在する部分が、前記収納部材の外側に位置し前記第1冷却材通路内に配置されたことを特徴とする核医学診断装置。
  11. 複数の放射線検出器及び前記放射線検出器の検出信号を入力する信号処理装置を含むユニット基板、及び前記放射線検出器が配置される第1の領域及び前記信号処理装置が配置される第2の領域をお互いに分離する断熱部材を有する撮像装置を備えた核医学診断装置の冷却方法であって、
    前記第2の領域に冷却材を供給するステップを具備したことを特徴とする核医学診断装置の冷却方法。
  12. 複数の放射線検出器及び前記放射線検出器の検出信号を入力する信号処理装置を含むユニット基板、及び前記放射線検出器が配置される第1の領域及び前記信号処理装置が配置される第2の領域をお互いに分離する断熱部材を有する撮像装置を備えた核医学診断装置の冷却方法であって、
    前記第1の領域に冷却材を供給するステップと、
    前記第1の領域に供給された冷却材を前記第1の領域から前記第2の領域へ供給するステップと、を具備したことを特徴とする核医学診断装置の冷却方法。
  13. 被検体を支持するベッドと、撮像装置とを備え、
    前記撮像装置は、前記ベッドの周囲を取り囲む環状の支持部材、および前記支持部材に取り付けられた複数の検出器ユニットを有し、
    前記検出器ユニットは、複数の放射線検出器および前記放射線検出器の検出信号を入力する信号処理装置を含む複数のユニット基板を、収納部材内に設け、
    前記支持部材より内側で前記撮像装置内に形成された第1冷却材通路、および前記支持部材より外側で前記撮像装置内に形成された第2冷却材通路を有する冷却装置を備え、
    前記収納部材内に設けられた断熱部材が、前記放射線検出器が配置される第1の領域および前記信号処理装置が配置される第2の領域を分離し、
    前記検出器ユニットの、前記第1の領域の部分が前記第1冷却材通路内に配置され、前記検出器ユニットの、前記第2の領域の部分が前記第2冷却材通路内に配置されている核医学診断装置の冷却方法であって、
    前記第1冷却材通路に冷却材を供給し、前記第1冷却材通路内の前記冷却材を前記第2冷却材通路に供給することを特徴とする核医学診断装置の冷却方法。
  14. 被検体を支持するベッドと、撮像装置とを備え、
    前記撮像装置は、前記ベッドの周囲を取り囲む環状の支持部材、および前記支持部材に取り付けられた複数の検出器ユニットを有し、
    前記検出器ユニットは、複数の放射線検出器および前記放射線検出器の検出信号を入力する信号処理装置を含む複数のユニット基板を、収納部材内に設け、
    前記支持部材より内側で前記撮像装置内に形成された第1冷却材通路、および前記支持部材より外側で前記撮像装置内に形成された第2冷却材通路を有する冷却装置を備え、
    前記収納部材内に設けられた断熱部材が、前記放射線検出器が配置される第1の領域および前記信号処理装置が配置される第2の領域を分離し、
    前記検出器ユニットの、前記第の領域の部分が前記第冷却材通路内に配置され、前記検出器ユニットに設けられた前記ユニット基板の、前記放射線検出器が存在する部分が、前記収納部材の外側に位置し前記第冷却材通路内に配置されている核医学診断装置の冷却方法であって、
    前記第1冷却材通路に冷却材を供給し、前記第1冷却材通路内の前記冷却材を前記第2冷却材通路に供給することを特徴とする核医学診断装置の冷却方法。
  15. 前記ユニット基板は、前記放射線検出器を含む第1の基板および前記放射線検出器の検出信号を入力する前記信号処理装置を含んでいる第2の基板を有することを特徴とする請求項13または請求項14に記載の核医学診断装置の冷却方法。
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