JP4365674B2 - 樹脂成形用治具 - Google Patents

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本発明は、例えば、プレート状の成形型の上にセットした熱硬化性樹脂による樹脂材を加熱装置で加熱して成形する際に、樹脂材を加熱装置内で支持するための樹脂成形用治具に関する。
熱硬化性樹脂と炭素繊維とを交互に積層した複合樹脂材は、軽量でありながら非常に高い比強度を有していることから、例えば、飛行機のボディの一部を構成する材料として採用されている。このような複合樹脂材は、柔軟性のある状態で最終製品の三次元的形状に加工された成形型の上に積層され、成形型に積層したままの状態でオートクレーブ等の加圧・加熱装置内に搬入され、真空を利用して成形型にプレスされながら、熱硬化反応によって成形される。成形型は、製造すべき複合樹脂材の形状に応じたプレート状に形成されており、多くは、三次元的な立体形状である。この成形型を支持する架台は、三次元形状の成形型を安定して支持するための多数の突起状の支持部が上方に向けて形成されており、これら支持部が、全体では成形型に応じた面状に配置されている。この架台は、複合樹脂の熱膨張係数に合わせた材質の厚板を切り出し適宜に組み合わせて溶接したものが一般的である(非特許文献1)。
Nickel,VOL.18,No.2,February 2003 P9 (NiDI:Ni開発協会発行)
上記のような成形型および架台を備えた成形用治具における架台は、剛性が高い厚板を用いて、熱容量の軽減のために平面から余分な面を口型に切り出して組み合わせたものであった。複合樹脂材の大型化・一体成形化に伴い成形用治具は大型化し、架台自体の剛性も上げる必要が生じている。ところが、架台の剛性を上げるためには、板厚を厚くするとともにその板組密度も高くする必要があり、それは成形用治具の重量および熱容量を大きくすることになる。そのため、成形用治具の大型化は、必要な治具用素材に要する費用の増加と治具加工に要する時間および費用の増加という問題を招く。さらに、重量増加は、成形用治具を移動させるための機器の大型化や加熱装置の耐荷重の大型化といった大型付帯設備に要する設備費用の増加を生み、熱容量の増加は、熱処理に要するエネルギー量の増加や、熱処理時間の増加といった生産コストの増加を生むことになる。
よって本発明は、軽量化が図られ、これによって樹脂材の製造にかかる時間とコストの低減が達成される樹脂成形用治具を提供することを目的としている。
本発明は、上面に所定形状の樹脂材がセットされる成形型と、この成形型の形状に対応した支持部を有し、その支持部に成形型がセットされる中間型と、この中間型を支持する架台とが組まれてなる樹脂成形治具であって、前記成形型、前記中間型および前記架台を構成するフレーム材が、Ni:35.0〜37.0重量%、C:0.05重量%以下で含有し、Si:0.30重量%以下で含有し、Mn:0.80重量%以下で含有し、P:0.010重量%以下で含有し、その他がFeおよび不可避的不純物からなるインバー合金製であり、さらに前記架台を構成するフレーム材が、板厚1〜6mm、断面の一辺の長さが25〜150mm、角部が半径3〜7mmのR形状に形成された角パイプからなることを特徴としている。
本発明によれば、角パイプからなるフレーム材は断面係数が高いので、このようなフレーム材で構成される架台は、厚板の切り出し材を組み合わせた従来の架台と比較すると、大幅な軽量化が可能である。従来の架台は、成形型が直接セットされるものであったが、本発明では、成形型は架台の上に支持される中間型にセットされる。この中間型は、成形型を安定して支持するように、従来の架台が有していた上方に突出する支持部を有するものとなるが、この中間型を必要最低限の容積にとどめ、架台が占める割合を多くすれば、より一層の軽量化が図られる。このような本発明の樹脂成形用治具では、軽量なるが故に、加熱装置内への搬入作業に要する労力や手間の低減が図られるとともに、搬入用の装置等も比較的小型のものでよくなる。また、加熱装置の荷重制限内に収めることも容易となる。これらの結果、製造コストが低減する。
成形型、中間型およびフレーム材は、熱膨張率に大きな差があると互いの接合部に歪みが生じるので、同じ材質がよく、さらに、成形型は、同じ理由で、樹脂材の熱膨張率と同程度の材質が望ましい。すなわち、成形型、中間型およびフレーム材は樹脂材の熱膨張率と同程度の材質がよく、それには、上記組成からなるインバー合金が好適である。インバー合金は、熱膨張率の他に、疵が付きにくく耐食性や耐久性が比較的高いといった利点を有する。
本発明の樹脂成形用治具によれば、架台が角パイプからなるフレーム材で構成されているので軽量化が図られ、これによって樹脂材の製造にかかる時間とコストの低減が達成されるといった効果を奏する。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態の樹脂成形用治具(以下、治具と略称)1を示している。この治具1は、架台10、中間型20、成形型30がこの順で下から積層され、これらが溶接によって接合されたものである。成形型30はプレート状で、その上に、例えば熱硬化性樹脂と炭素繊維とを交互に積層した複合樹脂材がセットされるもので、その樹脂材は、硬化後は成形型30の形状(例えば三次元形状)通りに成形される。中間型20は、厚板の切り出し材を組み合わせて溶接したもので、複数の孔21を有しており、その上端部には、成形型30を安定して支持するための多数の突起状の支持部22が上方に向けて多数形成されている。多数の支持部22は、全体では成形型30に応じた形状に配置されており、これら支持部22に合わせて成形型30が載せられ、支持される。中間型20の下端面は水平に設定されている。
架台10は、その上に中間型20を支持するもので、角パイプ等のパイプまたは形鋼からなる複数のフレーム材11を組み合わせ、溶接により接合して組み立てられている。架台10を構成するフレーム材11の数や組み合わせ方は、なるべく少ない数ながらも全体の強度が十分に確保されるように適宜になされる。本実施形態での架台10は、所定の間隔をおいて配された複数の柱10aと、これら柱10aの上下の端部に溶接されて隣り合う柱10aを連結する上下の横梁10bと、柱10aと上下の横梁10bとで形成される矩形の枠の対角をつなぐ斜め梁10cとを備えている。これら柱10a、横梁10bおよび斜め梁10cを構成するフレーム材11の具体例としては、例えば、板厚1〜6mm、断面の一辺の長さが25〜150mmの角パイプが用いられる。
架台10、中間型20、成形型30は、Niを33〜45重量%含み、他が主にFeのインバー合金を用いて製造されている。成分の具体例としては、Ni:35.0〜37.0重量%、C:0.05重量%以下、Si:0.30重量%以下、Mn:0.80重量%以下、P:0.010重量%以下で、その他がFeおよび不可避的不純物の合金が挙げられる。この架台10の上に上記中間型20がセットされて溶接され、さらに、中間型20の上に上記成形型30がセットされて溶接され、本実施形態の治具1が製造される。この治具1によれば、成形型30上に複合樹脂材をセットした状態で、オートクレーブ等の加熱装置内に搬入され、真空を利用して複合樹脂材を成形型30にプレスしながら加熱することにより、複合樹脂材は熱硬化反応によって成形型30の形状に成形される。
上記治具1によると、架台10を構成するパイプまたは形鋼からなるフレーム材11は断面係数が高いので、架台10の軽量化が可能であり、このため、治具1全体の重量も軽量化されるとともに、熱容量を低く抑えることができる。その結果、加熱装置内への搬入作業に要する労力や手間の低減が図られるとともに、搬入用の装置等も比較的小型のもので済む。また、加熱装置の荷重制限内に収めることも容易となり、加熱時のエネルギー量も抑えられ、これらの結果、製造コストを低減させることができる。
また、成形型30はインバー合金であり、このインバー合金は複合樹脂材と熱膨張率が同等のため、加熱時や冷却時に複合樹脂材に歪みが起こりにくく、歪み発生による品質の劣化が防止される。また、治具1全体、すなわち架台10のフレーム材11、中間型20および成形型30の全てがインバー材からなるので、これらの接合部にも熱の影響による歪みは生じにくく、このため高い耐久性を有する。さらに、インバー合金は、疵が付きにくく、耐食性も高いといった利点も有する。なお、加熱装置内では、加熱された空気を流動させて温度の均一化を図る場合があるが、例えば、図1に示すように、成形型30の裏面の適宜箇所に山形鋼等からなるフィン31を設けると、成形型30の加熱および冷却の効率を向上させることができる。
架台10を構成するフレーム材11としては、特に、強度や組み立てやすさ等の観点から、上述したような角パイプが好適に用いられる。角パイプとしては、断面が長方形状あるいは正方形状のものが用いられる。図2は断面正方形状の角パイプによるフレーム材11を示しているが、このフレーム材11は、ほぼ直角の角部(屈曲部)12が、ある程度R状に形成されている。このように角部12がある程度R状に形成されていると、溶接ビードが角部の外面と相手側のフレーム材との間に入り込んで接着面積が大きくなり、接合強度が増すので好ましい。その外面側のRは、例えば、一辺の長さが75mmあるいは100mmで肉厚が3〜5mmの角パイプの場合、3〜7mm程度に設定されるとよい。
また、図2に示す角パイプのフレーム材11においては、断面形状の四辺が内側に僅かに湾曲している。この湾曲の状態は、上記のように一辺の長さが75mmあるいは100mmで肉厚が3〜5mmの角パイプの場合、その深さdは、例えば0mmを超え、かつ、1mm以下とされる。この1mm以下の深さdは、溶接時に許容出来る隙間である。このように四辺を内側に湾曲させると、一辺の両端の角部21の近傍が2点接地して安定するので、架台10を組み立てる際にフレーム材11を安定して位置決めさせることができたり、不用意に転がってしまうことを防止できたりするといった利点を有する。
本発明の一実施形態に係る樹脂成形用治具の側面図である。 架台を構成する角パイプからなるフレーム材の断面図である。
符号の説明
1…樹脂成形治具、10…架台、10a…柱、11…フレーム材、20…中間型、
22…支持部、30…成形型。

Claims (2)

  1. 上面に所定形状の樹脂材がセットされる成形型と、
    この成形型の形状に対応した支持部を有し、その支持部に成形型がセットされる中間型と、
    この中間型を支持する架台とが組まれてなる樹脂成形治具であって、
    前記成形型、前記中間型および前記架台を構成するフレーム材が、Ni:35.0〜37.0重量%、C:0.05重量%以下で含有し、Si:0.30重量%以下で含有し、Mn:0.80重量%以下で含有し、P:0.010重量%以下で含有し、その他がFeおよび不可避的不純物からなるインバー合金製であり、さらに前記架台を構成するフレーム材が、板厚1〜6mm、断面の一辺の長さが25〜150mm、角部が半径3〜7mmのR形状に形成された角パイプからなることを特徴とする樹脂成形用治具。
  2. 前記架台を構成するフレーム材は、断面形状の四辺が内側に1mm以下の範囲で湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形用治具。
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