JP4363788B2 - 原子炉炉心冷却材流量計測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力発電プラントの原子炉炉心内の冷却材流量を計測するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
沸騰水型原子炉では、原子炉内の冷却材流量をジェットポンプ、ないし、原子炉内蔵型冷却材再循環ポンプ(以降「RIP」と称する。)により強制循環させ、原子炉の出力を調整している。この炉内冷却材流量は、原子炉炉心の燃焼計算に用いられたり、燃料チャンネルの熱的余裕の監視に用いられたりしている。炉内冷却剤流量の計測精度の劣化は、燃料の燃焼効率の低下や、運転範囲の縮小など、プラント全体の運用効率の低下をまねくため、精度の良い計測方法が求められている。
【0003】
従来のプラントでは、原子炉内冷却材流量は、ジェットポンプないしRIPの入口と出口の差圧(以降「PΔP」と称する。)を用いて求めたり、炉心支持板間の差圧(以降「CPΔP」と称する。)を計測することにより求めている。これらの差圧法では、圧力差と流量の間の比例関係を利用するが、流体の速度を直接計測しているわけではないため、例えば、炉心に水垢がついて計測場所と異なる位置での圧損が変化すると、圧力差と流量の間の比例関係が変化してしまい、計測流量に誤差が生じる。
【0004】
このような問題を解決するための、他の原理に基づいた計測法として、特願平8−158558号、特願平8−269760号では、原子炉内に設置された炉内中性子検出器の出力信号のゆらぎ成分を利用して炉心冷却材流量を計測する方法が提案されている。これは、炉内の燃料チャンネル内の気泡の移動速度を計測して、間接的に冷却材流量を推定する方法である。この方法は前記差圧法とは異なる原理での計測方法であり、炉心の水垢による圧損変化などに起因する計測誤差を含まないため、流量計の校正手段として適している。
【0005】
さらに詳述すると、特願平8−158558、特願平8−269760に記載の計測方法は、原子炉炉心内に配置されたLPRMの信号を収集し、局部での冷却材流量とそれらの積算により炉心流量を求め、原子炉内の状態把握のための情報や原子炉炉心性能計算のための情報を供し、低流量時に精度の高い炉心流量を供する手段を具備していることを特徴とする。
【0006】
この測定原理は、軸方向に配置されたLPRM検出器のゆらぎ信号の相関から、ボイドの移動時間を測定し、更に、燃料チャンネル内の熱水力モデルを用いて、チャンネル流量を推定する方法に基づいている。
【0007】
この方法では、LPRM検出器のゆらぎ信号から計測したボイドの移動時間を、原子炉内の制御棒配置や燃焼による核定数の違いなどを考慮した炉心性能計算に基づいて計算された、燃料チャンネル出力分布とボイド分布から計算したボイド移動時間と比較することにより、両者が一致するように燃料チャンネル入口冷却水流量を求めるものであった。この方法の特徴のひとつは、LPRMの軸方向の遅れ時間の計測値が、LPRMを囲む4体の燃料チャンネルの異なるボイド移動速度を平均したものになっていることを考慮して、4体の燃料チャンネルのボイド移動速度を、検出器位置での出力値とボイド率の大きさに依存した重みで平均化することで、計測値に対応する移動速度を求めることであった。
【0008】
この炉心性能計算は、実際の原子炉では、燃料チャンネルの熱水力特性を常時監視するための機能として備わっており、通常1時間おきにプロセス計算機により実行されて、燃料チャンネルの熱水力的状態や燃料の燃焼状態が計算されている。図1(a)に沸騰水型原子炉の炉心水平断面図を示し、図1(b)に炉心の要素である燃料チャンネルの水平断面図を示す。燃料チャンネル20の2体間隔で間に制御棒30が入り、4体間隔でLPRM検出器が配置され、LPRM検出器はLPRM計装管21内に収納されている。図1(b)の燃料チャンネル断面図に示すように、LPRM検出器及びLPRM計装管21は、制御棒30の反対側のコーナーに位置している。ここに示したように燃料チャンネル20そのものも、内部に燃料棒23とウォーターロッド24を含む微細構造をしている。なお、図1(a)中の符号31は中性子源を示し、符号32は起動領域検出器を示す。
【0009】
前記炉心性能計算では、この燃料チャンネル20の水平断面の平均的な出力とボイド率を求めており、それをベースに、炉心2の全体の出力の水平方向分布を求めている。一方、軸方向の燃料チャンネル20の熱水力分布を示したのが、図2(a)、(b)、(c)である。図2(a)に示したように、約4mの燃料チャンネル20の間に、LPRM計装管21が挿入され、高さ方向に4個のLPRM検出器22が配置されている。また、この軸方向の出力分布、ボイド率分布、ボイド速度、液相速度の例が、図2(b)、(c)に記載されている。
【0010】
この計測方法は、LPRM検出器22の傍を通過するボイドにより発生する検出器出力信号の微小な変動成分が、高さ方向に配置された検出器間で、ボイドの移動速度に対応した遅れを持つことを利用している。つまり、この遅れ時間の計測値が、前記炉心性能計算により求まる燃料チャンネル内の熱水力状態分布値から計算した計算値と一致するように、炉心性能計算の入力として用いているチャンネル入口冷却材流量を調整することで、逆に、真の冷却材流量を推定している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、燃料チャンネル20内の気泡速度は、炉心冷却材の流量に応じて変化するだけでなく、隣接する制御棒23の挿入度合いに応じた熱出力密度の変化によっても変化する。このため、炉心冷却材の流量が同じ場合でも気泡速度が変化してしまい、これが、冷却材流量計測における大きな誤差要因となってしまうという問題がある。つまり、上述した炉心性能計算では、燃料チャンネル20の水平断面の平均的なボイド率を求めているが、図1(b)に示すように、LPRM検出器22は制御棒30と反対側の位置にあるため、制御棒30の挿入度合いにより、制御棒30からLPRM検出器22に向かって、一定の傾斜で分布がつくことがある。この場合、LPRM検出器22の出力信号は、燃料チャンネル20の平均的ボイド速度と異なる燃料チャンネルコーナー部での局所的ボイド速度を計測することになる。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するために成されたもので、燃料チャンネル内の熱水力条件と制御棒位置を勘案して、従来の炉心冷却材流量の計測手法の誤差を改善することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による原子炉炉心の冷却材流量計測方法は、原子炉炉心内の複数の燃料チャンネル間の軸方向の異なる位置に配置された少なくとも二つの中性子検出器が検出した出力信号のゆらぎ成分の相関関数のピーク値から、中性子検出器間の燃料チャンネル内の気泡伝達時間を計測し、所定の原子炉炉心性能計算で求まる熱出力分布と予め設定された燃料チャンネルの熱水力モデルとに基づいて、複数の燃料チャンネル内の気泡・液相平均伝達時間を算出し、これら複数の気泡・液相平均伝達時間の算出値のうち、中性子検出器に隣接する4つの燃料チャンネルについての算出値から、予め設定した重み値に基づいた重み付け平均値を求め、このとき、上記重み付け平均値を求める際の上記重み値を、燃料チャンネル内における気泡速度の水平方向分布を考慮して補正し、上記気泡伝達時間の計測値と重み付け平均値とが一致するように、各燃料チャンネルならびに原子炉炉心全体の入口冷却材流量を推定することを特徴とする。
【0014】
ここで、本発明における「気泡・液相平均伝達時間」は、LPRM検出器のゆらぎ信号が、その周辺を通過する気泡のゆらぎだけでなく、液相部のゆらぎにも影響されること、ならびに、二相流では、気泡速度と液相速度とは、互いにスリップするために異なる速度を持っていることに着目し、
τ=w(α)τg+(1−w(α))τf (1)
という、中性子検出器間の気泡伝播時間τgと、液相伝播時間τfとの重み平均で計算される。この両者の重み係数は、ボイド率の関数として実験より求める。
【0015】
さらに、中性子検出器周辺の4体の異なる燃料チャンネルの平均的伝達遅れ時間を算出するため、
という、(1)式で与えられる周辺4体の個々の気泡・液相平均伝達時間の重み付け平均を行い、この伝達時間τavrを計測値と比較する。
【0016】
また、本発明においては、好ましくは、(2)式における重み付け平均の重み値を、中性子検出器周辺の制御棒の挿入度合いに応じて変化させる。具体的には、中性子検出器周辺の制御棒がすべて引き抜かれている場合、4つの伝達遅れ時間τiのうち、最も大きい値をτavrとして採用し、制御棒が挿入されている場合、挿入されている側の燃料チャンネルの伝達時間τiを、
τi(cor)=f(Pi)τi (3)
という、出力値の関数として与えられる補正係数で補正した値を、τavrとして用いる。
【0017】
また、本発明においては、好ましくは、(2)式における重み付け平均の重み値を、当該燃料チャンネルの中性子検出器近傍のボイド率とボイド速度の計算値に依存した関数で求める。即ち、
という、二つの中性子検出器の位置でのボイド率とボイド速度に依存した重み係数を用いる。これは、ボイド率が大きいほど、また、ボイド速度が小さいほど、その燃料チャンネルの二相流のゆらぎがLPRM検出器に与える影響が大きいことを考慮した重み付け方法である。
【0018】
また、本発明においては、好ましくは、気泡伝達時間の計測値と、重み付け平均値とが一致するように、各燃料チャンネルならびに原子炉炉心全体の入口冷却材流量を推定する際に、併せて、各燃料チャンネルの熱出力値を予め設定した割合で冷却材流量に比例させて変更する。上述した燃料チャンネル内の熱水力分布計算では、燃料チャンネル内の熱出力密度分布を与えて、入口冷却水流量を変化させることで、計測値に一致する気泡・液相平均伝達時間の計算値を求めていたが、ここでは、入口冷却水流量に比例させて燃料チャンネル内の熱出力分布も変化させる。これにより、計測値と計算値の誤差を冷却材流量だけで補正した場合の変化量を緩和することができ、より安定した冷却材流量推定値を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下で、本発明の一実施形態による原子炉炉心の冷却材流量計測方法について説明する。
【0020】
まず初めに、炉心総流量および燃料チャンネル流量の推定方法の第1の例について説明する。
【0021】
プロセス計算機の炉心性能計算では、核定数と全炉心流量、炉心入口エンタルピー等の情報から、炉心の各燃料バンドル内の軸方向の中性子束分布、熱流束分布、ボイド分布、クォリティ分布、チャンネル流量配分などを計算する。この計算値と燃料チャンネルの熱水力計算モデルにおけるドリフトフラックスモデルを用いると、図2(a)、(b)に示したように、軸方向に沿ったボイド率α、気泡速度vg、液相速度vfが計算できる。ここで、LPRM検出器22(図1(a)参照)のゆらぎは、検出器周辺を通過する気泡と液相の体積のゆらぎに比例するため、軸方向の二つのLPRM検出器22のゆらぎの相関関数のピークから求められる伝達時間遅れは、上記(1)式に示したように、気泡の伝達時間τgと液相の伝達時間τfの重み平均に相当する量になっている。
【0022】
それぞれの伝達時間は
τg=Σ dz/vg (5)
τf=Σ dz/vf (6)
により計算できる。ここで、dz間隔で二つのLPRM検出器22間の気泡・液相速度を積分している。(1)式の重み係数は、
w(α)=1−αm (7)
という形で与えると、ボイド率の小さい場合、w(α)〜1となり、気泡速度のゆらぎに依存した伝達時間に、ボイド率の大きい場合、w(α)〜0となり、液相速度のゆらぎに依存した伝達時間になる。mは、実験的に与えられる定数である。
【0023】
このように、炉心性能計算から与えられる熱出力分布などの情報から、燃料チャンネル単体でのLPRM検出器22間のゆらぎ伝達速度が求まるが、これを、本発明では、「気泡・液相平均伝達時間」と呼ぶことにする。
【0024】
一方、図1に示したように、注目するLPRM計装管21の周辺には、熱出力分布やチャンネル流量の異なる4本の燃料チャンネル20があり、更に、各燃料チャンネル20は、60本の燃料棒23の集合体となっている。(1)式で与えたのは、燃料チャンネル20の平均的挙動に対応する気泡・液相平均伝達時間であるが、実際には、図1から分かるように、燃料棒23の間の場所(コーナー部23a、周辺部23b、又は中央部23c)に依存して、それぞれに異なるボイド移動速度が存在している。中性子束の変動として観測されるLPRM検出器22のゆらぎ成分は、この各種のボイド移動速度を間接的に計測している事になり、ボイドとLPRM検出器22との距離や、ボイドの多さ、ボイドの速度に依存して異なってくる。
【0025】
即ち、LPRM計測値に対応するボイド伝搬時間(後述する図5中のS24に対応する。)は、(1)式のチャンネル平均値τではなく、(2)式に示した周辺4体の重み付け平均となる。
【0026】
(2)式の重み係数w(i)の決め方は、炉心流量の推定精度に大きく依存するため、本発明での特徴となっている。
【0027】
まず、第1の方法では、周辺4個の燃料チャンネル20の内、一番ボイドの速度の遅い燃料チャンネル20の伝達速度を選択採用する重みを用いる。これは、ボイド速度が遅いほど、LPRM検出器22近傍にボイドが長く存在するため、そのLPRM検出器22の出力への影響が大きくなり、結果的に、LPRM出力ゆらぎから観測される伝達時間は、この一番遅いボイド速度に影響されるという知見に基づいている。
【0028】
ここで、もうひとつ重要な特徴は、LPRM検出器22の傍にある制御棒30が挿入されている場合である。この場合、制御棒30とLPRM検出器22に挟まれた燃料チャンネル20の出力は他に比べて小さくなり、ボイド速度も遅くなる。しかしながら、この場合、制御棒30からLPRM検出器22に向けて、燃料チャンネル20内での水平方向の局所出力分布の傾きが生じるため、LPRM検出器22側に近い位置での熱出力は、チャンネル平均よりも大きい値となる。従って、ボイド速度も、チャンネル平均より速くなる。この効果を、(3)式で与えられる式を用いて、チャンネル平均のボイド速度に基づく伝達時間を補正している。この補正係数は、制御棒30の挿入度合いによって変化するが、これを、図7に示したようにLPRM検出器22の高さ位置での、燃料チャンネル出力値Piの関数として整理すると、ほぼ一定の補正係数になるため、予め実験的に求めた(3)式のf(Pi)を共通で用いることで、炉心性能計算の結果と制御棒30の挿入の有無だけから、ボイド伝達時間の補正値を求めることが出きる。
【0029】
こうして補正されたボイド伝達時間が、周辺4体の燃料チャンネルについて求まると、下記の条件で重み係数を決めることができる。
【0030】
w(i)=1 (伝達時間τiの最小のもの)
w(i)=0 (その他のチャンネル) (8)
次に、炉心総流量および燃料チャンネル流量の推定方法の第2の例としては、この重み係数を、各燃料チャンネル20のLPRM検出器22の位置に相当する二つの高さ(z1、z2)での二相流条件、即ち、ボイド率αとボイド速度vを用いて、下記のように与える方法がある。これは(4)式を具体化したものである。
【0031】
ここで、αとvは、LPRM検出器22の高さz1,z2に対応した位置でのボイド率とボイド速度である。また、p1,p2,q1,q2は、経験的に決める重み係数である。これは、LPRM検出器22から求まるボイド移動速度が、周辺の燃料チャンネル20の内、ボイド量の多い燃料チャンネル20や、ボイド速度の小さい燃料チャンネル20により強く影響されることを考慮して決める定数である。
【0032】
次に、炉心総流量および燃料チャンネル流量の推定方法の第3の例としては、上記の例では燃料チャンネル20の熱水力モデルによりボイド速度、液相速度を求める際に、炉心性能計算により求めた熱出力分布を入力として、チャンネル入口冷却材流量を繰り返し計算での仮定値として用いているが、この熱出力分布をチャンネル入口冷却材流量に比例させて変化させることができる。炉心性能計算では、燃料チャンネル20の水平断面を一体として扱い、その平均的なボイド率を求めているが、実際には、燃料チャンネル20内で、制御棒30からLPRM検出器22にかけての出力分布の勾配があるため、LPRM検出器22側での二相流の条件は平均からずれる場合がある。これを考慮して、チャンネル入口冷却材流量と熱出力分布の両方を変化させて、計測値に一致する遅れ時間を計算するのが、この実施の形態である。
【0033】
以上の3通りの方法で、炉心性能計算と同じ熱水力モデルから、LPRM検出器22の計測時間遅れに相当する、(2)式の伝達時間遅れを計算により求めることができる。こうして得られた遅れ時間の予測値を、実際のLPRM信号の揺らぎの相関関数から求めた遅れ時間と一致させるように、チャンネル入口冷却材流量を推定する事が可能になる。
【0034】
次に、軸方向の二つのLPRM揺らぎ信号の相関から、ボイド伝搬時間を求める方法を説明する。図3に、この方法のアルゴリズムを示す。まず、観測されるゆらぎ信号の低周波数成分を除去するためにバンドパスフィルター50を通し、グローバル成分を除去する(S11)。この出力から相関関数を下記の式で求める(S12)。
【0035】
この相関関数には、図4に示したように、ボイド移動速度に相当する部分にピークが存在する。このピークの最大値を、図4に示した2次関数でピーク前後のデータを最小2乗フィッティングして、相関関数の時間遅れを算出する(S13)。このフィッティングにより、LPRM検出器22の出力データのサンプリング周期よりも更に小さい分解能で、遅れ時間を計測可能となる。そして、ボイド移動時間を算出する(S14)。
【0036】
沸騰水型原子炉では20〜50本のLPRM計装管21があり、図2(a)に示したように、軸方向に4つのLPRM検出器22(下部より、A,B,C,Dと名付けている。)が備わっている。従って、遅れ時間を求める組み合わせとしては、(A,B)(B,C),(C,D)と各計装管で3通りある。各組合わせでの遅れ時間の計測値を、
τmeas(n,ab)、τmeas(n,bc)、τmeas(n,cd)とすると、これらの計測値と計算値の差の平均2乗和は、炉心全体で次のように加算される。
【0037】
ここで、w1,w2,w3は適当な重み係数である。
【0038】
(11)式で与えた各計算値は、燃料チャンネル20の熱水力モデルと、入力である軸方向熱出力分布とチャンネル入口流量に依存して計算できる。もし、熱出力を固定すると、チャンネル入口流量の関数として、(11)式の計算値と計測値の誤差が決まる事になる。従って、(11)式を最小にするように、チャンネル入口流量を一意的に決める事ができる。
【0039】
上述した本実施形態による原子炉炉心の冷却材流量計測方法の手順をまとめて、図5に示す。また、本実施形態による原子炉炉心の冷却材流量計測方法を実施するためのシステムをプラントに適用した場合の構成例を図6に示す。
【0040】
本実施形態による原子炉炉心の冷却材流量計測方法を実施するためのシステムをブロックで分けると、プロセス計算機60、LPRM間遅れ時間算出装置61、炉心流量算出装置62となる。炉心流量算出装置62には表示装置63が接続されている。プロセス計算機60は発電所に備わった装置であり、このプロセス計算機60での計算結果が炉心流量算出装置62に入力される。なお、図6中の符号1は炉心2を収容する原子炉を示し、符号10は炉心支持板差圧計装配管を示し、符号11は炉心支持板差圧測定装置を示す。
【0041】
次に、本実施形態による原子炉炉心の冷却材流量計測方法を実施するための装置を、計算処理内容で機能区分すると、実測値を求める処理(S1)、予測値を求める処理(S2)、推定値を計測する処理(S3)の3つに分けることができる。ここで予測値・実測値とはボイド速度に関するものである。
【0042】
予測値つまり計算値を求めるために、プロセス計算機60において、核定数、全炉心流量、炉心入口エンタルピー等が入力され(S20)、中性子束分布、熱流速分布等の炉心性能計算(熱出力分布パターン推定)が行われ(S21)、推定された熱出力分布パターンが出力され(S22)、炉心流量算出装置62に入力される。
【0043】
そして、炉心流量算出装置62においては、プロセス計算機60での計算結果を基にして、まず、ドリフトフラックスモデル(熱水力計算モデル)を参照してボイド分布を計算する(S23)。次に、計算されたボイド分布から、上記(1)式、(2)式を用いて、ボイド伝播時間(ボイド速度)Tmを計算する(S24)。そして、上記(3)式又は(4)式を用いて、それぞれ重み付け演算を行う(S25)。
【0044】
ここまでの処理によって実測値と比較するための予測値(計算値)が求まるので、上記(11)式を用いて両者の誤差を求める(S30)。そして、求まった誤差が最小になるように繰り返し計算を行い(S31)、一定の誤差以下になった時点で収束終了として(S32)、結果を表示装置63で表示する。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による原子炉炉心の冷却材流量計測方法によれば、従来のプラントに備わっているポンプ差圧、ならびに、炉心下部格子板差圧と異なる原理により、炉心冷却材流量を計測することができ、単一方式で測定した流量にドリフトが生じたような場合に、異なる原理による炉心流量計測方式を提供できるため、ドリフト原因の究明に役立てることができる。異なる原理での計測手法と比べる事により既存の計測装置の校正が運転中にできる点は、センサー校正の手間を省く上で重要なほか、コモンモードによるドリフトなどの検知に役立つ。さらに、炉心総流量と、局所流量を同時に計測する事ができ、炉心の運転状態の監視に役立てる事もできる。そして、本発明では、気泡・液相平均伝達時間の算出値から重み付け平均値を求める際の重み値を、燃料チャンネル内における気泡速度の水平方向分布を考慮して補正するようにしたので、炉心流量推定精度を大幅に向上させることができ、より精度の良い監視に役立てることができる。
【0046】
また、好ましくは、上記重み付け平均値を求める際の上記重み値を、中性子検出器周辺の制御棒の挿入度合いに応じて変化させることにより、制御棒の位置を考慮した補正を行うことで、炉心流量推定精度を大きく向上でき、より精度の良い監視に役立てることが出きる。
【0047】
また、好ましくは、上記重み付け平均値を求める際の上記重み値を、当該燃料チャンネルの中性子検出器近傍のボイド率とボイド速度の計算値に依存した関数で求めることにより、制御棒の位置が利用できない場合の精度改善方法を提供することができ、これにより、炉心流量推定精度を大きく向上でき、より精度の良い監視に役立てることが出きる。
【0048】
また、好ましくは、上記気泡伝達時間の計測値と上記重み付け平均値とが一致するように各燃料チャンネルならびに原子炉炉心全体の入口冷却材流量を推定する際に、併せて、各燃料チャンネルの熱出力値を予め設定した割合で冷却材流量に比例させて変更することにより、炉心流量推定手法のロバスト性を向上させることができ、LPRM検出器ゆらぎから求めた伝達遅れ時間の計測精度が十分でない場合に、これが炉心流量推定値に与える影響を緩和することができ、安定した炉心流量推定値を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は概略の炉心配置図、(b)は(a)中のA部の部分拡大図。
【図2】(a)はLPRM検出器及びその周囲の燃料チャネル等の部分拡大図、(b)、(c)はLPRM検出器の軸方向配置と周辺燃料チャンネルの熱水力状態の説明図。
【図3】本発明の一実施形態において気泡伝達時間の実測値を求める原理を説明するためのアルゴリズムを示す概略フロー図。
【図4】本発明の一実施形態において気泡伝達時間の実測値を求める原理を説明するための相関関数と遅れ時間の関係図。
【図5】本発明の一実施形態による原子炉炉心の冷却材流量計測方法の手順をまとめて示した概略フロー図。
【図6】本発明の一実施形態による原子炉炉心の冷却材流量計測方法を実施するためのシステムをプラントに適用した場合の全体構成を示す概略ブロック図。
【図7】本発明の一実施形態による原子炉炉心の冷却材流量計測方法における気泡伝達時間の予測値を求める原理を説明するための出力値と補正係数の関係図。
【符号の説明】
1 原子炉(RPV)
2 炉心
20 燃料チャンネル
21 LPRM計装管
22 LPRM検出器
23 燃料棒
30 制御棒
60 プロセス計算機
61 LPRM間遅れ時間算出装置
62 炉心流量算出装置
63 表示装置
Claims (4)
- 原子炉炉心内の複数の燃料チャンネル間の軸方向の異なる位置に配置された少なくとも二つの中性子検出器が検出した出力信号のゆらぎ成分の相関から、中性子検出器間の燃料チャンネル内の気泡伝達時間を計測し、
所定の原子炉炉心性能計算で求まる熱出力分布と予め設定された燃料チャンネルの熱水力モデルとに基づいて、複数の燃料チャンネル内のそれぞれの気泡・液相平均伝達時間を算出し、これら複数の気泡・液相平均伝達時間の算出値のうち、中性子検出器に隣接する4つの燃料チャンネルについての算出値から、予め設定した重み値に基づいた重み付け平均値を求め、このとき、上記重み付け平均値を求める際の上記重み値を、燃料チャンネル内における気泡速度の水平方向分布を考慮して補正し、
上記気泡伝達時間の計測値と上記重み付け平均値とが一致するように、各燃料チャンネルならびに原子炉炉心全体の入口冷却材流量を推定することを特徴とする原子炉炉心の冷却材流量計測方法。 - 上記重み付け平均値を求める際の上記重み値を、中性子検出器周辺の制御棒の挿入度合いに応じて変化させることを特徴とする請求項1記載の原子炉炉心の冷却材流量計測方法。
- 上記重み付け平均値を求める際の上記重み値を、当該燃料チャンネルの中性子検出器近傍のボイド率とボイド速度の計算値に依存した関数で求めることを特徴とする請求項1記載の原子炉炉心の冷却材流量計測方法。
- 上記気泡伝達時間の計測値と上記重み付け平均値とが一致するように各燃料チャンネルならびに原子炉炉心全体の入口冷却材流量を推定する際に、併せて、各燃料チャンネルの熱出力値を予め設定した割合で冷却材流量に比例させて変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の原子炉炉心の冷却材流量計測方法。
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---|---|---|---|
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Publications (2)
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