しかしながら、従来のシステムでは、次のような問題点がある。すなわち、動力出力装置においてCO、NOx等を効果的に浄化するためには、前述の触媒コンバータが有効に機能するとともに、前記の酸素センサが有効に作動し排気管内における酸素濃度に応じて適切に反応しなければならない。触媒コンバータ自体が劣化していれば、CO、NOx等の効果的な浄化が当然に阻害され、また、酸素センサを構成する白金電極の溶出や酸素イオン等の取込孔の目詰まり等が発生して該酸素センサの劣化が生じている場合には、前記のような空燃比制御を行うことが困難となり、結果、CO、NOx等の効果的な浄化が困難となるからである。
そこで、従来においても、動力出力装置の運用中に、触媒コンバータ、或いは酸素センサ、が劣化しているか否かを確認するプロセスを適宜実施するシステムが知られていた。例えば、エンジンへ供給する燃料の量等を所定周期と所定振幅で変動(以下では、このような意識的な「変動」を生じさせる制御を、「アクティブ制御」という。)させた結果みられるところの前記下流側の酸素センサの出力如何によって触媒コンバータが劣化しているかどうかを判定し、また、ほぼ同様のアクティブ制御を実施することでみられるところの前記上流側の酸素センサの出力如何によって当該上流側酸素センサが劣化しているかどうかを判定する構成及び手法が知られている。
しかしながら、このような触媒コンバータの劣化判定と上流側の酸素センサの劣化判定とでは、異なる態様のアクティブ制御の実施が要求されている。すなわち、前者(触媒コンバータ劣化判定)では、触媒コンバータが当該時点でどの程度の酸素吸蔵能力を有するかが下流側の酸素センサの出力に基づいて確かめられることにより、当該触媒コンバータの劣化の如何が判定される。したがって、この場合におけるアクティブ制御では、燃料供給量の変動(とりわけその期間)が受動的に(換言すれば、前記酸素吸蔵能力次第で)定められることになる。他方、後者(上流側酸素センサ劣化判定)では、予め定められた所定周期及び所定振幅の変動下において当該上流側酸素センサの出力が予測どおりのものであるかどうかによって、当該上流側酸素センサの劣化の如何が判定される。したがって、この場合におけるアクティブ制御では、燃料供給量の変動が能動的に且つ一定の規則に従ったものとして定められなければならない。このように、触媒コンバータの劣化判定と上流側酸素センサの劣化判定とは、相異なる態様のアクティブ制御が要求されるのである。
このようなことから、従来においては、これら二つの劣化判定は、別々の機会にそれぞれ独自に実施されるようになっていた。しかし、アクティブ制御を用いた劣化判定手法は、前記のように意図的な燃料供給量の増減を伴うものであるから、エミッションやドライバビリティ(drivability)に影響を及ぼす。すなわち、アクティブ制御の実施回数が多ければ多いほど、エミッション中におけるCO、NOx等の濃度を高め、運転のしやすさ、ないしは快適性を奪う結果になるのである。したがって、前記のように触媒コンバータの劣化判定と上流側の酸素センサの劣化判定とを、相異なる態様のアクティブ制御でもって別々の機会に実施すると、エミッションの悪化及びドライバビリティの劣化をもたらすことになっていたのである。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、触媒及び酸素センサの劣化判定を行うにあたり実施されるアクティブ制御の実施回数を極力減少し、もってエミッションの悪化を防止し、良好なドライバビリティを享受しうる動力出力装置を提供することを課題とする。
本発明の第1動力出力装置は、上記課題を解決するため、排気管が接続されたエンジンと、前記排気管に設けられ前記エンジンから排出される排気ガスを浄化する触媒と、前記エンジンと前記触媒との間に位置する前記排気管に配置され、当該排気管中の混合気の空燃比を検知する第1センサと、前記触媒を中心とし前記第1センサから見て反対側に位置する前記排気管に配置され、当該排気管の酸素濃度を検知する第2センサと、所定の前提条件を満たす場合に前記空燃比を、連続的に所定期間ずつリッチ及びリーンに交互に変動させる空燃比変動手段と、該空燃比変動手段による前記空燃比の変動の結果みられるところの前記第1センサ及び前記第2センサの出力をモニターするモニター手段とを備えてなり、前記モニター手段は、少なくとも前記所定期間が経過する際において、前記空燃比の変動の結果みられるところの前記第2センサの出力が前記所定期間内に前記酸素濃度につき定められた所定の閾値を跨ぐかどうかに応じて定まる反転の有無を確認し、前記反転があったと確認する場合であって前記所定期間が経過していない場合には、当該所定期間が経過するまで、前記第2センサの出力をモニターせず、前記第1センサの劣化判定を行うために前記第1センサの出力をモニターし、前記反転がなかったと確認する場合であって前記所定期間が経過した場合には、当該所定期間経過後の前記第1センサの出力をモニターせず、前記触媒の劣化判定を行うために前記第2センサの出力を前記反転があるまで前記所定期間を延長してモニターを継続する。
本発明の第1動力出力装置によれば、まず、前述したような「アクティブ制御」を実施することができる。すなわち、所定の前提条件が満たされる場合(例えば、エンジンに対する吸入空気量が所定範囲内にあると判断される場合その他の幾つかの条件が満たされる場合)において、空燃比変動手段は、例えばエンジンに対する燃料供給量を変動させることで該エンジンから排出される混合気の空燃比を意識的に変動させることが可能となっており、また、モニター手段は、それに伴って検知される第1センサの出力ないしは検知結果をモニターすることが可能となっている。これにより、与えた変動に応じて、予測される出力(例えば、当該出力の「振幅」の大小如何、「周期」の長短如何等で判断される。)が得られないときには、当該第1センサは劣化しており、そうでないとき(つまり、予測どおりの出力のとき)には劣化していないなどといった判断を行うことができる。ここで、このような劣化判定では特に、空燃比の変動の態様が予め定まっている必要がある。この点、本発明ではリッチ又はリーンにされる時間が「所定期間」として定められており、この「所定期間」の決定が前記の要請の全部又は一部をみたす。すなわち、当該所定期間の経過があるなら、劣化していない第1センサの出力はかくあるべきだと予測を立てることができるのである。
また、本発明では、前記第1センサからみて下流側に触媒が備えられているとともに、該触媒の更に下流側に第2センサが備えられている。この第2センサの出力は、前記のアクティブ制御の影響を受けて、前記第1センサと同様に変動することになる。ただし、第2センサの出力は、当該第2センサが触媒の下流側に配置されていることにより、触媒の現時点における酸素吸蔵能力の影響を受けることになり、前記第1センサの出力とは異なった挙動を示す。ここで本発明では特に、第2センサの出力が所定の閾値を超えるかどうかに着目し、当該出力がその閾値を跨いで変化することを「反転」と捉える。そして、かかる反転の如何(例えば、当該反転が生じた時期、回数等)をみれば、前記触媒の酸素吸蔵能力の如何を確かめることができ、また、当該触媒が劣化しているかどうかを知ることができる。
そして、本発明では特に、モニター手段が、少なくとも前記所定期間が経過する際に、前記反転の有無を確認するようになっているのである。ここで所定期間が経過する際とは、前記の説明から明らかなように、第1センサの劣化判定に必要なデータが得られそうな、或いは既に得られた段階を意味しているから、該第1センサが劣化しているかどうかを確認したいという観点からすると、これ以上、空燃比をリッチ又はリーンに継続すべき理由はない。しかしながら、この際、第2センサの出力につき未だ反転が経験されていない、即ち触媒の劣化判定に供するデータが十分には集められていない場合が考えられる。ここで本発明では、かかる際に第2センサの出力につき反転が生じたかどうかが確認されるようになっているのであるから、もしこの時点において、当該反転が生じてないなら、前記所定期間は経過するものの当該反転が生じるまで従前のリッチ又はリーンな空燃比制御を続行するという判断を行うことができる。また、逆に当該反転が既に生じているのなら、前記所定期間が経過するまで予定通りデータ収集を行えばよい。
これによると、リッチ又はリーンな空燃比変動が行われた1回の機会に、触媒の劣化判定と第1センサの劣化判定との双方を行うことができることになる。したがって、本発明によれば、相対的にアクティブ制御の実施回数を少なくすることが可能となるから、エミッション中におけるCO、NOx等の濃度を低め、運転のしやすさ、ないしは快適性を向上(ドライバビリティを向上)させることができるのである。
なお、本発明において、モニター手段が第2センサの出力につき反転が生じたかどうかの確認を実行するのは、「少なくとも所定期間が経過する際」であるから、当該確認は、それ以外の任意の時点で行うようにしてよい。例えば、所定期間経過前から経過の際にかけて定期的に当該確認を実行してもよいし、所定期間の経過前後に関わらず常時当該確認を実行してもよい。
前記モニター手段は、前記反転があったと確認する場合であって前記所定期間が経過していない場合には、当該所定期間が経過するまで、前記第2センサの出力をモニターせず、前記第1センサの劣化判定を行うために前記第1センサの出力をモニターし、前記反転がなかったと確認する場合であって前記所定期間が経過した場合には、当該所定期間経過後の前記第1センサの出力をモニターせず、前記触媒の劣化判定を行うために前記第2センサの出力を前記反転があるまで前記所定期間を延長してモニターを継続する。このため、反転があった、即ち触媒の劣化判定は行えるが、所定期間が経過していない、即ち第1センサの劣化判定は行えない場合には、当該所定期間が経過するまで、第1センサの出力をモニターする。よって、当該所定期間経過後には、触媒及び第1センサの双方の劣化判定を行うことができる。他方、反転がなかった、即ち触媒の劣化判定は行えないが、所定期間が経過している、即ち第1センサの劣化判定は行える場合には、第1センサの出力はもはやモニターしない。ここで「モニターしない」というのは、劣化判定に供するデータとしては使用しないと言い換えてもよい(したがって、「モニターする」は、劣化判定に供するデータとして使用すると言い換えられる。)。これは、この時点において既に第1センサの劣化判定を行うのに十分なデータが収集されているからである。ただ、第2センサの出力は、反転が生じるまでモニターしつづける。これにより、当該反転が生じた以後は、触媒及び第1センサの双方の劣化判定を行うことができる。このように、本態様によれば、前記の作用効果をより確実に享受することができる。
本発明の第2動力出力装置の他の態様では、排気管が接続されたエンジンと、前記排気管に設けられ前記エンジンから排出される排気ガスを浄化する触媒と、前記エンジンと前記触媒との間に位置する前記排気管に配置され、当該排気管中の混合気の空燃比を検知する第1センサと、前記触媒を中心とし前記第1センサから見て反対側に位置する前記排気管に配置され、当該排気管の酸素濃度を検知する第2センサと、所定の前提条件を満たす場合に前記空燃比を、連続的にリッチ及びリーンに交互に変動させる空燃比変動手段と、該空燃比変動手段による前記空燃比の変動の結果みられるところの前記第1センサの出力を、当該第1センサの劣化判定に必要な第1期間、モニターする第1モニター手段と、前記空燃比の変動の結果みられるところの前記第2センサの出力を、前記触媒の劣化判定に必要な第2期間、モニターする第2モニター手段と、前記空燃比変動手段による前記空燃比のリッチからリーンへの切り替え、又は、リーンからリッチへの切り替えを、前記第1期間及び前記第2期間の長い方に合わせて行う切替手段とを備えている。
本発明の第2動力出力装置によれば、まず、前述の第1の動力出力装置と同様に「アクティブ制御」を実施することができる。また、このアクティブ制御の実施により、触媒及び第1センサの劣化判定を行うこともできる。即ち、触媒の劣化判定は、第2センサの出力が所定の閾値を跨ぐかどうかに応じて定まる反転の時期、回数等を確認することで行うことができるし、第1センサの劣化判定は、当該第1センサを所定のリッチ又はリーン雰囲気に曝すことで得られるその出力と予め予測される出力とを対比することによって行うことができる。
ここで本発明では特に、触媒の劣化判定に必要な期間、典型的には空燃比の変動開始時から前記反転が生じるまでの期間が「第2期間」とされ、第1センサの劣化判定に必要な期間、即ち第1センサの出力予測値を定めるに応じて(或いは、当該第1センサの特性に応じて等)定まる期間が「第1期間」とされている。そして、本発明では更に、これら第1期間及び第2期間の長い方に合わせて、前記空燃比変動手段によるリッチからリーンへの切り替え又はその逆の切り替えを実施する切替手段が備えられているのである。
このような構成によれば、第2期間が第1期間に比べて長ければ、第1センサの劣化判定に必要なデータは収集されているものの、触媒の劣化判定に必要なデータを収集すべくリッチ又はリーンな空燃比変動が第2期間(から第1期間を引いた時間)だけ維持された後、前記切り替えが行われることになる。逆に、第1期間が第2期間に比べて長ければ、触媒の劣化判定に必要なデータは収集されているものの、第1センサの劣化判定に必要なデータを収集すべくリッチ又はリーンな空燃比変動が第1期間(から第2期間を引いた時間)だけ維持された後、前記切り替えが行われることになる。
このようなことから、本発明によれば、前述の第1の動力出力装置と略同様な作用効果が得られるのは明白である。すなわち、本発明によっても一時に触媒の劣化判定と第1センサの劣化判定との双方を行うことができることになるから、相対的にアクティブ制御の実施回数を少なくすることが可能となり、エミッション中におけるCO、NOx等の濃度を低め、運転のしやすさ、ないしは快適性を向上(ドライバビリティを向上)させることができるのである。
以上述べたように、本発明によれば、触媒の劣化判定と第1センサの劣化判定との双方を一時に行うことができるから、相対的にアクティブ制御の実施回数を少なくすることが可能となり、エミッション中におけるCO、NOx等の濃度を低め、運転のしやすさ、ないしは快適性を向上(ドライバビリティを向上)させることができる。
本発明のこのような作用及び効果その他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施の形態について図1から図4を参照しつつ説明する。ここに図1は、本実施形態に係る動力出力装置の構成概略図である。また、図2は図1に示すSC触媒装置31及び第1O2センサ51の状態を判定するための処理の流れを示すフローチャートであり、図3は、後述するアクティブ制御を実施した際に得られる燃料噴射量の変動等を示すチャート図であり、(a)のような燃料噴射量の変動に応じて変化する第1O2センサの検知結果の様子、(c)は(a)のような燃料噴射量の変動に応じて変化する第2O2センサの検知結果の様子、をそれぞれ示している。さらに、図4は、本実施形態の作用効果を説明するための説明図であり、(a)は第1O2センサの劣化判定に必要なデータ収集期間よりもSC触媒装置の劣化判定期間に必要なデータ収集期間が長い場合、(b)はその逆の場合を示している。
まず、図1を参照して、エンジン及びその周囲の構成について説明する。図1に示すように、エンジン150は、吸気ポート内に燃料を直接噴射する、いわゆるポート噴射式ガソリンエンジンである。エンジン150は、ECU170により制御される。エンジン150は、シリンダブロック14を備えている。シリンダブロック14の内部にはシリンダ16が形成されている。なお、エンジン150は、複数のシリンダを備えているが、説明の便宜上、図1には複数のシリンダのうち1つのシリンダ16を示している。シリンダ16の内部にはピストン18が配設されている。ピストン18は、シリンダ16の内部を、図1における上下方向に摺動することができる。
シリンダ16の内部において、ピストン18の上方には燃焼室20が形成されている。燃焼室20には、点火プラグ26の先端が露出している。点火プラグ26は、ECU170から点火信号を供給されることにより、燃焼室20内の燃料に点火する。
燃焼室20には、吸気弁32を介して吸気マニホールド34の各枝管が連通している。吸気マニホールドの一部では、燃料噴射弁22の噴射口が露出している。エンジン150の運転中、燃料噴射弁22には燃料ポンプ24から燃料が圧送される。燃料噴射弁22及び燃料ポンプ24は、ECU170に接続されている。燃料ポンプ24は、ECU170から供給される制御信号に応じて燃料噴射弁22側へ燃料を圧送する。また、燃料噴射弁22は、ECU170から供給される制御信号に応じて吸気ポート内へ燃料を噴射する。吸気マニホールド34は、その上流側においてサージタンク36に連通している。サージタンク36の更に上流側には吸気管38が連通している。吸気管38には、スロットル弁40が配設されている。スロットル弁40は、スロットルモータ42に連結されている。そして、スロットルモータ42は、ECU170に接続されている。スロットルモータ42は、ECU170から供給される制御信号に応じてスロットル弁40の開度を変化させる。スロットル弁40の開度は、例えばアクセルペダル78の踏み込み量に応じて変化させられる。吸気管38の一旦にはエアクリーナ60が設けられている。
他方、燃焼室20には、排気弁28を介して排気管30が連通している。本実施形態では、排気管30には、SC(Start Catalyst)触媒装置31及びUF(Under Floor)触媒装置32の二段の触媒装置が設けられており、これにより排気ガス浄化性能が高められている。これらSC触媒装置31及びUF触媒装置32としては、具体的には例えば三元触媒装置をあてることができる。また、当該SC触媒装置31及びUF触媒装置32には、例えばCeO2及びCeO2-ZrO2等の酸素吸蔵能力を有する助触媒を備えておくとよい。これにより、排気管30内の空燃比の変動を吸収することが可能となり、前記の三元触媒が好適に働くように当該排気管30内の雰囲気を調整することができる。
また、SC触媒コンバータ31を中心として、その上流側に第1O2センサ51が設けられ、下流側に第2O2センサ52が設けられている。このうち上流側の第1O2センサは、本発明にいう「第1センサ」の一例に該当し、エンジン150から排出された排気ガス中の酸素濃度を直接的にモニターする。当該エンジン150における燃焼態様(例えば理論空燃比近くにおける燃焼)は、この第1O2センサ51の検知結果に基づいて制御されるようになっている。また、下流側の第2O2センサは、本発明にいう「第2センサ」の一例に該当し、SC触媒装置31を通過し未燃成分の少なくなった排気ガス中の酸素濃度をモニターする。この第2O2センサの存在により、空燃比制御に影響する部品(例えば燃料噴射弁22、上流側の第1O2センサ等)の特性ばらつきを吸収することが可能となるため、空燃比をより理論空燃比近くに制御することが可能となり、排気浄化率を更に向上することができる。
なお、これら第1及び第2O2センサ51及び52は、具体的には例えば、空洞部を有するように成形されたジルコニアと、該ジルコニアの周囲に被覆された多孔質の白金電極とからなる構成を備えてなる。この構成において、前記空洞部に大気が導入されるとともに、該大気とジルコニア及び白金電極を介して面するように排気ガスが導入されると、排気ガス中の酸素分圧と大気中の酸素分圧との比に応じて(より詳細には、当該比の対数に比例して)前記ジルコニア中に酸素イオンの流れが生じ起電力が発生する。第1及び第2O2センサ51及び52は、この起電力を測定することにより、排気ガス中の酸素濃度を検出し得る。
このような構成を備える動力出力装置では、要所要所に各種のセンサが設けられている。例えば、アクセルペダル78の近傍にはアクセル開度センサ80が配設されている。また、エアクリーナ60からエンジン150に至るまでの間には、エアクリーナ60の近傍に吸気温センサ38Tが、スロットル弁40の近傍にスロットル開度センサ44が、サージタンク36の近傍に該サージタンク36内の圧力を検出する圧力センサ36Tがそれぞれ配設されている。さらに、エンジン150周りでは、該エンジン150の冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ15T1及びクランク角を検出するクランク角センサ15T2がそれぞれ配設されている。加えて、エンジン150から最も下流側の要素として図示されたUF触媒装置32に至るまでの間には、既に述べた第1O2センサ51及び第2O2センサ52がそれぞれ配設されている。
前記いずれのセンサ(第1及び第2O2センサ51及び52も含む。)もECU170に接続されており、ECU170は、これら各種のセンサから送られてくる電気信号に基づいて、アクセル開度、スロットル開度、サージタンク内圧力、エンジン冷却水温度、クランク角度及び触媒温度等々を知ることができる。また、ECU170は、これらの諸状態ないしは諸量に基づいて、図に示す各種の要素が好適な状態となるように、或いは当該動力出力装置のユーザが所望する状態となるようになどを目的として、当該各種の要素を制御(例えば、スロットル40の開度の増減、燃料噴射弁22からの燃料噴射量の増減等々)する。
なお、図における前記各種のセンサの設置場所は単なる一例を示しているに過ぎない。当該各種のセンサは、それぞれ目的とする諸状態ないしは諸量を検出できる限り、然るべき場所に設置されていればよい。また、図示されないが、前記の各種のセンサ以外のセンサ(例えば、エンジン150の回転数を検出する回転数センサ、或いは気筒判別センサ等々)を設けてよいことは言うまでもない。
以下では、本発明に係る空燃比変動手段、モニター手段(或いは、第1及び第2モニター手段)及び切替手段を構成するECU170により、前記のSC触媒装置31及び第1O2センサ51が劣化しているかどうかを判定するための処理について、図2乃至図4を参照しながら説明する。
まず、その前提として、本実施形態に係る第1O2センサ51が存在することによって、エンジン150から排出され最終的に外部へと至る排気ガス中のCO、NOx等の絶対量が如何に減少させられるかについて説明しておく。まず、SC触媒装置31は、通常、混合気が理論空燃比の近傍にある場合において最大限の能力を発揮するようになっている。ここで、前記の第1O2センサ51によれば排気ガス中の酸素濃度を知り得るから、現時点において、SC触媒装置31がリッチ寄りの雰囲気に曝されているのか、或いはリーン寄りの雰囲気に曝されているのかを知ることができる。したがって、この第1O2センサ51の検知結果を利用すれば、ECU170は、燃料ポンプ24及び噴射弁22から噴射される燃料供給量等を調整し、混合気が常に理論空燃比の近傍にありうるような制御(フィードバック制御)を行うことができる。そうすると、SC触媒装置31は常に最大限の能力を発揮することができることになり、最終的に外部へと至る排気ガス中のCO、NOx等の絶対量を減少せしめることができるのである。
このような事情から明らかなように、第1O2センサ51の検出性能は、排気ガス中のCO、NOx等を減少することにとって重要であることがわかる。そこで図2のように、このような第1O2センサ51の検出性能が正常に維持されているか、言い換えると当該第1O2センサ51は劣化していないか(具体的に、当該第1O2センサ51が前記ジルコニア及び白金電極からなる構成を備える場合には、該白金電極の溶出、或いは該白金電極の細孔の目詰まり等が生じていないか)を確認するのである。また、排気ガス中のCO、NOx等の減少にとって、SC触媒装置31が劣化していないかどうかも当然に重要であるから、図2ではその点についても確認するようになっている。
さて、図2においてはまず、「アクティブ制御」を実施するための前提条件が成立しているかどうかが判断される(ステップS10)。ここで「アクティブ制御」とは、SC触媒装置31及び第1O2センサ51が劣化しているかどうかを確認するために、エンジン150への燃料供給量を意図的に変動させることをいう。このようなアクティブ制御は燃料の供給量の変動を意図的に生じさせるものであるから、エンジン150に対しても、或いは動力出力装置全体に対しても相応の負担を課すことになる。したがって、これを実施してもシステム全体に大きな影響を及ぼさない適当な時期を見定める意味をこめて、「前提条件」の成立如何が確かめられるのである。ここで「前提条件」の具体例としては、例えば、エンジン150が受けている負荷の大小或いは変動量が所定の範囲内にあるかどうか、SC触媒装置31の温度が所定値以上であるかどうか、第1O2センサ51が活性化された状態にあるかどうか、更にはエンジン150に対する吸入空気量の大小或いは変動量が所定の範囲内にあるかどうか等を挙げることができる。一般的には、当該動力出力装置が安定的な状態(例えば、アクセルペダル78の踏み込み量が一定等)にあるときに前提条件が満たされ、そうでないときは満たされないと判断される。そして、前提条件が満たされるときにはアクティブ制御を伴う劣化判定処理を行うべく次の処理へ進み(ステップS10;YESからステップS12へ)、そうでないときには前提条件が満たされるまで当該処理が続行される(ステップS10;NOからステップS10へ)。なお、前提条件が満たされるかどうかの判断は、例えば割り込み処理により定期的に、或いは不定期に繰り返し実施されるようにしておけばよい。
次に、燃料供給量の増量及び減量の期間Xが決定される(ステップS12)。この期間Xは、第1O2センサ51の検出能力を見極めるのに必要な応答(アクティブ制御に呼応する検知結果)が得られように定められるものである。この原則を踏まえた上で、期間Xの具体値は種々の事情に応じて様々に決定され得る。例えば、吸入空気量が比較的大きいときには短めに、その逆のときには長めに設定されるというようである。
次に、燃料供給量の増量又は減量制御を現実に実施する(ステップS14)。すなわち、ECU170は、燃料ポンプ24及び燃料噴射弁22を適当に作動させることにより、燃焼室20内への燃料の供給量を増量又は減量するのである。図3(a)では、このような制御の結果観測され得る燃料噴射量の変動の様子が示されている。ちなみに、この図によれば、当該増量及び減量制御の実施の前に噴射されていた燃料噴射量(以下、「ベース噴射量」という。図中破線参照)からみて、まず増量が行われ、続いて減量が行われるという変動が周期的に行われていることがわかる。なお、本明細書では、増量制御が実施されている状態及び期間をそれぞれ「リッチ」及び「リッチ期間」といい、或いは減量制御が実施されている状態及び期間をそれぞれ「リーン」及び「リーン期間」ということがある。
このように、燃料供給量の増量及び減量制御が行われると、排気管30に排出される排気ガスの空燃比も変動することになり、更にこれに応じて、第1O2センサ51の検知結果にも変動が生じることになる。図3(b)では、かかる変動の様子、即ち燃料噴射量の変動に応じて変化する第1O2センサ51の出力ないしは検知結果の様子が示されている。この図によれば、第1O2センサ51の出力もまた、燃料噴射量が前記のように周期的に変化するのに応じて周期的に変化することがわかる。ECU170は、このような周期的な変化として得られる第1O2センサ51の検知結果を逐次モニターする。
次に、燃料供給量の増量又は減量時間が、前記のステップS12で定めた期間X以下であるかどうかが判断される(ステップS16)。ここで増量又は減量時間が期間X以下であるときには、次なる処理に進み(ステップS16;YESからステップS18へ)、そうでないときには、次なる処理であるステップS18を飛ばしてステップS20へと進む(ステップS16;NOからステップS20へ)。まず、前者の場合は、現実に進行している増量又は減量時間が、前記で定めた期間X以下なのであるから、第1O2センサ51の検出能力を見定めるに十分な応答を当該第1O2センサ51からは得ていない段階に該当する。したがって、この場合には、現時点までに得られている第1O2センサ51の軌跡長が積算される(ステップS18)。ここで軌跡長の演算とは、図3(b)に概念的に示すように、得られた検知結果に基づいて描かれる曲線において、ある微少時間Δtm(但し、mは1,2,…,nなる有限の正の整数)に対応する出力の上昇値S(Δtm)を求めるとともに、所定期間(例えば、前記の期間X)内における当該上昇値の全部の和S=S(Δt1)+S(Δt2)+…+S(Δtm)+…+S(Δtn)を求めることをいう。他方、後者の場合(即ち、現段階において増量又は減量時間が当初に定めた期間Xを越える場合)は、前記のような軌跡長の積算は行われない。なぜなら、この段階においては既に得るべき軌跡長の積算がすべて完了しているからである。
以上のように、第1O2センサ51の検知結果に基づいて軌跡長の積算が行われる(又は該積算が行われずに当該のステップS18が飛ばされる)と、続いて、第2O2センサ52の検知結果が参照される(ステップS20)。ここで、この第2O2センサ52もまた、前記のステップS14で開始された増量又は減量制御の実施の影響を受ける。図3(c)では、かかる影響の様子、即ち燃料噴射量の変動(図3(a)参照)に応じて変化する第2O2センサ52の出力ないしは検知結果の様子が示されている。ただし、当該第2O2センサ52は、前記の第1O2センサ51とは異なり、SC触媒装置31からみて下流側に設けられている点で大きく事情が異なる。すなわち、第2O2センサ52は、SC触媒装置31の現時点における酸素吸蔵能力の影響を受け、比喩的にいえばそこから漏れ出てくる酸素につき感応するようになっているのである。定性的には、SC触媒装置31の劣化が進行しており酸素吸蔵能力に衰えが見えるときには、第2O2センサは比較的早くに感応し、SC触媒装置31が新品同様であり酸素吸蔵能力が旺盛なときには、第2O2センサは比較的遅く感応するということがいえる。
前記のステップS20では、これを確かめるため、第2O2センサ52の出力ないしは検知結果が予め定められた閾値を現実に跨ぐかどうか、即ち反転するかどうかが確かめられるのである。そして、このステップS20において、第2O2センサ52の検知結果についての反転が確認されないときには(ステップS20;YES)、当該時点までにおけるSC触媒装置31の酸素吸蔵能力が算出された後(ステップS22)、続いて最初の処理へと戻る(ステップS10へ)。
このとき、当該ステップS20における肯定判断(ステップS20;YESなる判断)が、前記のステップS16において増量又は減量時間が期間X以下であると判断された後に行われたものであるなら、ECU170は、以後暫く、第1O2センサ51及び第2O2センサ52双方の出力をモニターし続けることになる(第1O2センサON;第2O2センサON。以下、「ON」及び「OFF」とあるのは、それぞれ「モニターする必要がある」及び「モニターする必要がない」を意味するものとする。)。一方、当該肯定判断が、前記ステップS16において増量又は減量時間が期間Xを超えていると判断された後に行われたものであるなら、ECU170は、第2O2センサ52の出力は以後暫くモニターする必要があるものの、第1O2センサ51の出力をモニターする必要はない(第1O2センサOFF;第2O2センサON。後の図4参照時に「ケースI」という。)。つまり、この場合、増量又は減量制御は、もっぱら第2O2センサ52の出力をモニターするために、換言すればSC触媒装置31の劣化の判定に供するデータを収集するために続行されるのである。
他方、前記のステップS20において、第2O2センサ52の検知結果についての反転が確認されるときには次なる処理へと進む(ステップS20;NOからステップS24へ)。この反転が確認された場合とは、即ちSC触媒装置31の劣化の判定に供するデータが収集され、したがって第2O2センサ52の出力はもはやモニターする必要がないことを意味する。そして、かかる場合更に、前記の処理に続いて、増量又は減量時間が前記の期間X以上であるかどうかが確認される(ステップS24)。ここで増量又は減量時間が期間X以上でないと判断されるときには、最初の処理へと戻り(ステップS24;NOからステップS10へ)、そうでないときには、いままでが増量制御であったなら減量制御への切り替え又は減量制御から増量制御への切り替えが行われ(ステップS26)、最初の処理へと復帰する(ステップRETURNからステップS10へ)。
この際におけるステップS24の判断は、前記のステップS20において、もはや第2O2センサ52の出力をモニターする必要がないとの判断が行われた後に行われているから、実質的には、第1O2センサ51の出力を以後暫くモニターする必要があるかどうか、換言すれば当該第1O2センサ51の劣化の判定に供する積算値を収集し終わったかどうかを確認するために行われるものである。そして、ここで増量又は減量時間が期間X以下であるなら、第1O2センサ51の劣化の判定を行うのに十分な積算値が未だ収集されてないということだから、改めて、最初の処理へと戻るのである(第1O2センサON;第2O2センサOFF。後の図4参照時に「ケースII」という。)。一方、増量又は減量時間が期間Xを超える場合には、当該増量制御又は当該減量制御の期間において、SC触媒装置31及び第1O2センサ51の劣化の判定に供すべき積算値は全部収集し終えたことを意味するから(第1O2センサOFF;第2O2センサOFF)、リッチからリーンへ又はその逆へという切り替えが行われるのである。
以上をまとめると、概念的には図4に示されるような各場合を想定することができる。まず、図4(a)は、前記のケースIを表している。すなわち、当該ケースIでは、第1O2センサ51の劣化判定に供すべき積算値は、時刻t1において既に収集されており、それ以後もはや当該積算値の収集を行う必要がないが、当該時点において第2O2センサ52は未だ反転を迎えていないから、増量制御は中止しない。当該増量制御は、第2O2センサ52の検知結果について反転が確認された後の時刻t2において中止されるのである。この場合、所定期間Xを超えて、時刻t2に至るまでの期間T1だけ余分に増量制御が続行されるかたちになる。ちなみに、かかる場合は、SC触媒装置31が劣化していない場合に典型的にみられると考えられる。なお、この図4(a)及びすぐ後に説明する図4(b)では、第2O2センサ52の出力に関して、リッチ期間及びリーン期間の別に応じて、二つの閾値I及びIIが定められており、前記の「反転」は、これら二つの閾値I及びIIについて生じるようになっている。
一方、図4(b)は、前記のケースIIを表している。すなわち、当該ケースIIでは、SC触媒装置31の劣化判定に供すべき積算値は、時刻t3において既に収集されており(即ち、既に反転が迎えられており)、それ以後もはや当該データの収集を行う必要がないが、当該時点において所定期間Xは未だ経過していないから、増量制御は中止しない。当該増量制御は、所定期間Xが経過した後の時刻t4において中止されるのである。この場合、第2O2センサ52の出力のみに着目する観点からすれば、時刻t3近傍で増量制御を中止することができるものの、当該時刻t3から所定期間Xに至るまでの期間T2だけ余分に増量制御が続行されるかたちになる。ちなみに、かかる場合は、SC触媒装置31が劣化している場合に典型的にみられると考えられる。
後は、前記のようにモニターされた積算値に基づき、SC触媒装置31及び第1O2センサ51の劣化判定を行えばよい。例えば、SC触媒装置31の劣化判定は、前記のように反転が生じるまでの期間の長短に基づいて行うことができるし、第1O2センサ51の劣化判定は、前記の積算値、振幅、あるいは応答時期等が、予め定められた閾値を越えるかどうかなどに基づいて行うことができる(第1O2センサ51が劣化していると、当該第1O2センサ51の応答の振幅は小さくなり、また該応答は遅れる傾向にある。)。これらの判定の方法については公知の手法を用いればよいので、ここではその説明は省略する。
以上述べたように、本実施形態によれば、いったんアクティブ制御が実行された後には、その機会を利用して、SC触媒装置31の劣化判定及び第1O2センサ51の劣化判定をともに行ってしまうようになっている。したがって、本発明によれば、相対的にアクティブ制御の実施回数を少なくすることが可能となるから、エミッション中におけるCO、NOx等の濃度を低め、運転のしやすさ、ないしは快適性を向上(ドライバビリティを向上)させることができるのである。
なお、上記実施形態においては、第1O2センサ51の検知結果に基づいて、その軌跡長が求められるようになっているが、本発明では、これに代えて当該検知結果の軌跡とこれに交わる一定の水平線(例えば、図3(b)でいえば、理想空燃比14.7を表す水平線)とによって画される図形の面積値を利用するにしてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う動力出力装置もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。