JP2004285949A - 排気ガスセンサの異常検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、触媒下流の排気ガスセンサの異常を検出する装置に関し、センサの置かれた環境をも考慮して、センサの異常を正確に検出することを目的とする。
【解決手段】内燃機関の排気通路に触媒を配置し、その下流に下流酸素センサを配置する。下流酸素センサの異常検出が要求されたら(ステップ100)、センサ素子温の目標を低温設定値(400℃)とし、低温側異常検出処理を行う(ステップ102,104)。次に、センサ素子温の目標を高温設定値(600℃)とし、高温側異常検出処理を行う(ステップ106,108)。それらの異常検出処理の結果を総合的に考慮して、下流酸素センサに以上が生じているか否かを判断する(ステップ110〜114)。
【選択図】 図4
【解決手段】内燃機関の排気通路に触媒を配置し、その下流に下流酸素センサを配置する。下流酸素センサの異常検出が要求されたら(ステップ100)、センサ素子温の目標を低温設定値(400℃)とし、低温側異常検出処理を行う(ステップ102,104)。次に、センサ素子温の目標を高温設定値(600℃)とし、高温側異常検出処理を行う(ステップ106,108)。それらの異常検出処理の結果を総合的に考慮して、下流酸素センサに以上が生じているか否かを判断する(ステップ110〜114)。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気ガスセンサの異常検出装置に係り、特に、内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するうえで好適な異常検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特許3134698号公報に開示されるように、内燃機関の排気通路に酸素センサを備える構成が知られている。この酸素センサは、排気ガスに含まれる酸素濃度を検出し、その酸素濃度より排気空燃比を検知する目的で配置される。排気通路に配置される酸素センサは、内燃機関の空燃比を制御するうえで重要な要素である。このため、酸素センサの異常は速やかに検知する必要がある。
【0003】
上述した従来の内燃機関は、より具体的には、排気通路に配置された触媒の上流に酸素センサを備えている。そして、このシステムは、内燃機関から流出する排気ガスの空燃比を、つまり、触媒の上流に到達する排気ガスの空燃比を、強制的にリッチ空燃比とリーン空燃比の間で変化させることにより、酸素センサの異常を検出することとしている。
【0004】
上記従来の内燃機関において、触媒上流における排気空燃比が強制的に変化させられると、酸素センサが正常であれば、そのセンサの出力は、排気空燃比の変化に追従した変化を示す。従って、このシステムにおいては、触媒上流における排気空燃比を強制的に変化させると共に、酸素センサの出力にその変化に対応した適正な変化が生ずるか否かを見ることにより、酸素センサが正常に作動しているか否かを正確に判断することができる。
【0005】
【特許文献1】
特許第3134698号公報
【特許文献2】
特開2001−329832号公報
【特許文献3】
特公平7−42884号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内燃機関の排気通路には、触媒の下流側にも酸素センサが配置されることがある。具体的には、例えば、2つのセンサを用いた高精度な空燃比フィードバック制御を実現するために、触媒の上流および下流の双方に酸素センサが配置されることがある。また、内燃機関の排気通路には、2つの触媒が直列に配置されることがあり、このような構成においては、下流触媒に流入する排気ガスの状態を検知するために、下流側の触媒の上流、つまり、上流側の触媒の下流に酸素センサが配置されることがある。
【0007】
触媒の下流における排気空燃比は、その上流における排気空燃比が如何なる値であっても、触媒が浄化作用を発揮する期間中は、ほぼ理論空燃比となる。この場合、下流側の酸素センサが正常であっても、そのセンサ出力は、触媒上流の排気空燃比に追従した変化は示さない。このため、上述した従来のシステムが用いる異常検出の手法では、触媒の下流に配置される下流酸素センサの異常を正確に検出することはできない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、触媒下流に配置される排気ガスセンサの異常を正確に検出することのできる排気ガスセンサの異常検出装置を提供することを目的とする。
より具体的には、本発明は、触媒下流に配置された排気ガスセンサから発せられる出力が、そのセンサの置かれた環境をも考慮したうえで適正であるか否かを見ることにより、そのセンサの異常を正確に検出することのできる排気ガスセンサの異常検出装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの温度を検知するセンサ温度検知手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、第1の温度下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第1の状態判定手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、前記第1の温度より高温の第2の温度下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第2の状態判定手段と、
前記第1の状態判定手段による判定結果と、前記第2の状態判定手段による判定結果とを考慮して、前記排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第1の温度を含まず前記第2の温度を含む温度領域を常用時の目標温度領域として、前記排気ガスセンサの温度を制御するセンサ温度制御手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段を備えると共に、
前記第1の状態判定手段は、前記排気ガスセンサが第1の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定し、
前記第2の状態判定手段は、前記排気ガスセンサが、前記第1の吸入空気量より多量の第2の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定することを特徴とする。
【0012】
また、第4の発明は、内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、第1の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第1の状態判定手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、前記第1の吸入空気量より多量の第2の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第2の状態判定手段と、
前記第1の状態判定手段による判定結果と、前記第2の状態判定手段による判定結果とを考慮して、前記排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記第1の状態判定手段により前記排気ガスセンサの異常が認められた場合に、前記第2の状態判定手段による判定を要求する本判定要求手段を備え、
前記異常判定手段は、前記第1の状態判定手段、および前記第2の状態判定手段の双方で異常が判定された場合に、前記排気ガスセンサの異常を判定することを特徴とする。
【0014】
また、第6の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記第2の状態判定手段により前記排気ガスセンサの異常が認められた場合に、前記第1の状態判定手段による判定を要求する本判定要求手段を備え、
前記異常判定手段は、前記第1の状態判定手段、および前記第2の状態判定手段の双方で異常が判定された場合に、前記排気ガスセンサの異常を判定することを特徴とする。
【0015】
また、第7の発明は、内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの温度を検知するセンサ温度検知手段と、
前記排気ガスセンサが前記アクティブ空燃比制御の実行中に発するセンサ出力の特性値を判定値と比較することにより当該排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
前記排気ガスセンサの温度に基づいて前記判定値を設定する判定値設定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
また、第8の発明は、第7の発明において、
吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段を備えると共に、
前記判定値設定手段は、前記排気ガスセンサの温度と吸入空気量とに基づいて、前記判定値を設定することを特徴とする。
【0017】
また、第9の発明は、内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気ガスセンサが前記アクティブ空燃比制御の実行中に発するセンサ出力の特性値を判定値と比較することにより当該排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
前記吸入空気量に基づいて前記判定値を設定する判定値設定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。図1に示す構成は、内燃機関10を備えている。内燃機関10には、吸気通路12および排気通路14が連通している。吸気通路12の端部にはエアフィルタ16が配置されている。エアフィルタ16の下流には、吸気通路12を流通する空気量、すなわち、吸入空気量Gaを検出するためのエアフロメータ18が配置されている。
【0020】
エアフロメータ18の下流には、スロットルバルブ20が設けられている。スロットルバルブ20の近傍には、スロットル開度TAを検出するスロットルセンサ22と、スロットルバルブ20が全閉となることでオンとなるアイドルスイッチ24とが配置されている。吸気通路12には、更に、内燃機関10の吸気ポートに燃料を噴射するための燃料噴射弁26が配置されている。
【0021】
排気通路14には、上流触媒28と下流触媒30とが直列に配置されている。これらの触媒は、内燃機関10が始動された後、所定の活性温度に達することにより排気ガスの浄化機能を発揮することができる。上流触媒28、および下流触媒30は、それぞれ酸素吸蔵容量(OSC:O2 Storage Capacitor)を有しており、その容量の範囲で酸素を吸蔵することができる。これらの触媒28,30は、排気ガス中にHCやCOなどの未燃成分が含まれている場合は、吸蔵している酸素を放出することでそれらの未燃成分を酸化し、また、排気ガス中に酸素やNOxなどが多く含まれている場合は、余剰な酸素を吸蔵し、触媒雰囲気を理論空燃比に保つことができる。上流触媒28および下流触媒30は、それぞれ上記の原理により排気ガスを浄化する。
【0022】
上流触媒28の上流には、空燃比センサ32が配置されている。空燃比センサ32は、排気ガス中の酸素濃度に応じた出力を発するセンサである。排気ガス中の酸素濃度は、排気空燃比と相関を有している。このため、空燃比センサ32によれば、上流触媒28に流入する排気ガス、つまり、内燃機関10から排出されてきた直後の排気ガスの空燃比を検出することができる。
【0023】
上流触媒28の下流、つまり、下流触媒30の上流には、下流酸素センサ34が配置されている。下流酸素センサ34は、排気ガス中に酸素が存在するか否かに応じて出力を大きく変化させるセンサである。排気ガス中には、排気空燃比がリッチである場合には酸素は残留しない。一方、排気空燃比がリーンである場合は排気ガス中の酸素が残留する。このため、下流酸素センサ34によれば、上流触媒28から流出してくる排気ガスがリッチであるかリーンであるかを正確に検出することができる。
【0024】
図1に示すシステムは、ECU(Electronic Control Unit)40を備えている。ECU40には、上述した各種のセンサからセンサ出力が供給されている。また、ECU40は、それらのセンサ出力に基づいて内燃機関10に供給すべき燃料量を算出し、その燃料量が噴射されるように燃料噴射弁26を制御することができる。
【0025】
本実施形態のシステムは、空燃比センサ32の出力、および下流酸素センサ34の出力に基づいて燃料噴射量の制御、すなわち、排気空燃比の制御などを実行する。このため、空燃比センサ32や下流酸素センサ34の異常は、速やかに検出できることが望ましい。
【0026】
空燃比センサ32の異常については、内燃機関10から排出される排気ガスの空燃比を強制的に変化させたうえで、その変化に追従した変化が空燃比センサ32の出力に表れるか否かを見ることで正確に判断することができる。つまり、ECU40は、エアフロメータ18により検出される吸入空気量Gaに対して、空燃比A/Fが変動するように燃料噴射量を決定しつつ、その変動に応じた変化が空燃比センサ32の出力に表れるか否かに応じて、空燃比センサ32が正常であるか否かを判断することができる。
【0027】
しかしながら、下流酸素センサ34の異常については、上記の手法によっては検出することができない。すなわち、吸入空気量Gaに対して燃料噴射量が上記の如く制御され、その結果上流触媒28に流入する排気ガスの空燃比が強制的に変動させられたとしても、下流酸素センサ34の周囲に導かれるのは、上流触媒28を通過した後の排気ガスである。上流触媒28を通過した後の排気ガスは、上流触媒28が浄化能力を発揮する限りは理論空燃比に維持される。このため、内燃機関10から排出される排気ガスの空燃比と、下流酸素センサ34のセンサ出力との間に相関が認められるか否かによっては、下流酸素センサ34が正常であるか否かを判断することはできない。そこで、本実施形態では、下流酸素センサ34の異常検出が要求される際には、下流酸素センサ34の周囲における排気空燃比を強制的に変動させるべく、以下に説明するアクティブ空燃比制御を実行することとした。
【0028】
[下流酸素センサの異常検出の原理説明]
図2は、ECU40が実行するアクティブ空燃比制御の内容を説明するためのタイミングチャートである。より具体的には、図2(A)は、上流触媒28に流入する排気ガスの空燃比(以下、「触媒前空燃比」と称す)がリッチであるかリーンであるかを表す波形を示す。また、図2(B)は、下流酸素センサ34のセンサ出力波形を示す。更に、図2(C)は、上流触媒28から流出して下流酸素センサ34の周囲に導かれる排気ガスの空燃比(以下、触媒後空燃比」と称す)の変化を示す。
【0029】
アクティブ空燃比制御の実行中は、先ず、触媒前空燃比が所定のリッチ空燃比またはリーン空燃比に維持される。図2(A)は、時刻t1以前において、触媒前空燃比がリッチ空燃比に維持されている状態を示している。触媒前空燃比がリッチ空燃比に維持されると、上流触媒28は、吸蔵酸素を放出して排気ガス中の未燃成分(HC、CO)の酸化を図る。上流触媒28中に吸蔵酸素が残存している期間中は、その下流には理論空燃比に浄化された排気ガスが流出する。従って、その間、触媒後空燃比はほぼ理論空燃比に維持される。
【0030】
触媒前空燃比がリッチに維持された結果、上流触媒28中の吸蔵酸素が全て消費されると、その後、上流触媒28の下流には、未燃成分を含むリッチな排気ガスが流出し始める。図2(C)は、時刻t1の直前に上流触媒28中の吸蔵酸素が全て消費され、その結果、触媒後空燃比が理論空燃比からリッチ空燃比に変化した状態を示している。
【0031】
触媒後空燃比が理論空燃比からリッチ空燃比に変化すると、下流酸素センサ34のセンサ出力は、図2(B)に示すようにリーン出力からリッチ出力に変化する。ECU40は、そのセンサ出力がリッチ出力であるかリーン出力であるかを判定するために、リーン判定値VLおよびリッチ判定値VRを用いている。より具体的には、ECU40は、下流酸素センサ34の出力が、リッチ判定値VRを超えると、そのセンサ出力がリッチ出力に変化したと判断し、一方、下流酸素センサ34の出力がリーン判定値VLを下回ると、そのセンサ出力がリーン出力に変化したと判断する。図2に示す時刻t1は、上記の基準に従って、下流酸素センサ34の出力がリッチ出力に変化したと判断された時刻である。
【0032】
アクティブ空燃比制御の実行中、ECU40は、下流酸素センサ34の出力がリッチ出力に変化したと判断すると、その時点で、上流触媒28の吸蔵酸素が使い果たされたと判断する。そして、ECU40は、その後、触媒前空燃比がリーンに反転するように、吸入空気量Gaに対する燃料噴射量の割合を変化させる。その結果、時刻t1の後、図2(A)に示すように、触媒前空燃比はリッチからリーンに反転する。
【0033】
触媒前空燃比がリッチからリーンに反転した後、その反転の影響を受けた排気ガスが上流触媒28の下流に流出してくるまでの期間(以下、「ガス輸送遅れ期間」と称す)は、触媒後空燃比がリッチに維持される。そして、ガス輸送遅れ期間が経過した後(図2における時刻t2の後)は、空燃比がリーンに反転した後に上流触媒28に流入し、その内部で処理された排気ガスが上流触媒28の下流に流出してくる。
【0034】
時刻t1において、上流触媒28は、全ての吸蔵酸素を放出した状態となっている。この状態で、上流触媒28に空燃比のリーンな排気ガスが流入すると、上流触媒28は、排気ガス中の余剰な酸素を吸蔵することで触媒雰囲気を理論空燃比に保ち、排気ガスを浄化する。このため、上記のガス輸送遅れ期間が経過した後に、つまり、図2に示す時刻t2の後に上流触媒28の下流に流出してくる排気ガスの空燃比は、再び理論空燃比の近傍値となる。
【0035】
アクティブ空燃比制御の実行中は、以後、触媒前空燃比がリーンに維持される。触媒前空燃比がリーンに維持されている期間中、上流触媒28は、酸素吸蔵能力一杯に酸素を吸蔵するまで、酸素を吸蔵し続ける。そして、上流触媒28に酸素吸蔵能力一杯の酸素が吸蔵されると、その後、上流触媒28の下流には、酸素を含むリーンな排気ガスが流出し始める。
【0036】
図2に示す時刻t3は、上流触媒28の下流にリーンな排気ガスが流出し始めた時刻を示し、また、時刻t4は、下流酸素センサ34の出力がリーン判定値VLを下回り、ECU40により、排気ガスがリーンであることが認識された時刻である。尚、触媒後空燃比が理論空燃比近傍に維持される期間は、上流触媒28が適正に浄化能力を発揮する期間であり、その長さは上流触媒28の酸素吸蔵能力に対応している。
【0037】
以後、アクティブ空燃比制御の実行が継続される限り、上述した処理、つまり、下流酸素センサ34の出力反転を受けて触媒前空燃比を強制的に反転させる処理が繰り返し実行される。その結果、アクティブ空燃比制御の実行中は、図2(C)に示すように、触媒後空燃比が、周期的にリッチ空燃比およびリーン空燃比となる。このような状況下では、下流酸素センサ34が正常であれば、その出力は、図2(B)に示すように、リッチ出力とリーン出力との間で周期的な変化を繰り返す。従って、本実施形態のシステムによれば、アクティブ空燃比制御の実行と合わせて、下流酸素センサ34の出力が正常にリッチ出力とリーン出力を交互に出力しているか否かを見ることにより、下流酸素センサ34の異常を精度良く検出することができる。
【0038】
[下流酸素センサの劣化の影響]
次に、下流酸素センサ34の劣化が、アクティブ空燃比制御の実行中におけるセンサ出力にどのように影響するかについて説明する。
図3は、アクティブ空燃比制御の実行中に、触媒後空燃比の反転に伴って下流酸素センサ34の出力に生ずる変化の様子を説明するための図である。図3において、実線で示す波形は、下流酸素センサ34が正規の出力特性を示す場合の波形である。また、図3中に一点鎖線或いは破線で示す波形は、それぞれ、出力が縮小するように劣化した下流酸素センサ34の出力波形、および応答性の劣化した下流酸素センサ34の出力波形である。
【0039】
下流酸素センサ34には、出力を縮小させる劣化と、応答性に関する劣化が生ずることがある。前者の劣化は、センサ出力の最大値Vmaxを低下させ、かつ、その最小値Vminを上昇させる形で表れる。また、後者の劣化は、触媒後空燃比の変化に対する下流酸素センサ34の出力応答性を悪化させる形で表れる。
【0040】
アクティブ空燃比制御の実行中は、既述した通り、触媒後空燃比がリッチまたはリーンに変化すると、その後、下流酸素センサ34の出力がその変化に追従するように変化すると共に、触媒前空燃比がその変化とは逆向きにリーンまたはリッチに反転される。従って、下流酸素センサ34の応答性が悪いと、そのセンサ出力が十分に変化する前に触媒後空燃比が理論空燃比に向かって変化し始め、その結果、センサ出力の最大値Vmaxは正常時より小さな値となり、また、その最小値Vminは正常時より大きな値となる。
【0041】
つまり、下流酸素センサ34に劣化が生じた場合は、その劣化が出力の縮小であっても応答性の悪化であっても、アクティブ空燃比制御の実行中におけるセンサ出力の最大値Vminおよび最小値Vminは、両者の差が縮小するように変化する。従って、下流酸素センサ34に劣化が生じているか否かは、センサ出力の最大値Vmaxおよび最小値Vminがどの程度の値に到達しているかを見ることにより、或いは、そのセンサ出力の振幅がどの程度の大きさであるかを見ることで判断することができる。
【0042】
[センサ出力の温度特性の影響]
ところで、下流酸素センサ34の出力特性は、温度に対する依存性を有している。
図4は、下流酸素センサ34の静的なセンサ出力とセンサ素子温との関係、つまり、排気空燃比を一定に維持した場合に得られるセンサ出力とセンサ素子温との関係を示す。図4において、符号Vmaxを付して示す曲線は、下流酸素センサ34の周囲を所定のリッチ空燃比に維持した場合に得られるセンサ出力の変化を、また、符号Vminを付して示す極性は、その周囲を所定のリーン空燃比に維持した場合に得られるセンサ出力の変化を示す。更に、符号Vaを付して示す曲線は、VmaxとVminとの差、つまり、下流酸素センサ34の出力に生じ得る振幅の変化を示す。
【0043】
図4に示すように、センサ出力の最大値Vmaxは、センサ素子温が400℃程度である場合に最大となり、その後、センサ素子温が上昇するに連れて低下する傾向を示す。一方、センサ出力の最小値Vminは、図示される温度領域では、センサ素子温が上昇するほど小さな値となる。そして、振幅Vaは、600℃近傍において最大となるような変化を示す。
【0044】
図5は、下流酸素センサ34の動的な出力特性とセンサ素子温との関係、より具体的には、下流酸素センサ34の応答性とセンサ素子温との関係を示す。この図において、縦軸は、正しくは下流酸素センサ34の応答遅れを示している。つまり、図5中に示す曲線は、下流酸素センサ34の応答性が、低温時ほど悪く、センサ素子温が上昇するに伴って改善されることを示している。
【0045】
アクティブ空燃比制御の実行中は、下流酸素センサ34の周囲で空燃比が反転されるため、下流酸素センサ34の出力には、その静的な特性と動的な特性の双方が反映される。つまり、アクティブ空燃比制御の実行中における下流酸素センサ34の出力特性は、図4に示す静的な特性に、図5に示す応答性に関する特性が加味されたものとなる。アクティブ空燃比制御の実行中における最大値Vmaxおよび最小値Vminは、既述した通りセンサの応答性が悪いほどそれぞれ小さな値および大きな値となる。このため、アクティブ空燃比制御の実行中における振幅Vaは、図4に示すより更に顕著に、低温側で小さく、高温側で大きくなる傾向を示す。
【0046】
ここで、下流酸素センサ34に、その出力を縮小させる劣化が生じた場合、つまり、図4に示す最大値Vmaxを低下させ、また、図4における最小値Vminを上昇させる劣化が生じた場合、アクティブ空燃比制御の実行中におけるセンサ出力には、図5に示す応答性の温度特性に起因して、その劣化の影響が低温領域においてより顕著に表れる。また、下流酸素センサ34に応答性を悪化させる劣化が生じた場合も、その劣化の影響は、低温領域において顕著に表れる。このように、アクティブ空燃比制御の実行中におけるセンサ出力には、センサ素子温が低いほど、下流酸素センサ34の劣化の影響が顕著に表れる。従って、下流酸素センサ34の異常を早期に検知するうえでは、センサ素子温が低い環境下でアクティブ空燃比制御を実行し、その結果正常なセンサ出力が得られるか否かを見ることが有効である。
【0047】
ところが、センサ素子温が低い領域は、下流酸素センサ34の状態が不安定な領域に他ならず、そのような領域では、下流酸素センサ34の出力特性に大きなばらつきが生じ易い。このため、異常検出のための処理を、センサ素子温の低い領域でのみ実行することとすると、下流酸素センサ34の本来の状態を適正に表していないセンサ出力に基づいて異常判定が実行されやすくなり、異常判定の精度を維持することができなくなる。
【0048】
これに対して、センサ素子温が高い領域は、下流酸素センサ34が安定状態を維持する領域である。このため、その領域では、センサ出力に劣化の影響は反映され難いものの、下流酸素センサ34の出力特性がばらつくのを十分に阻止することができる。そして、このような領域で異常判定を行うこととすれば、精度の高い判定を行うことができる。
【0049】
従って、本実施形態のシステムにおいて、下流酸素センサ34の異常を迅速に、かつ、精度良く検出するためには、センサ素子温の低い領域と高い領域の双方で適正なセンサ出力が得られているかを判定し、それら2つの判定結果を総合的に考慮して最終的な判断を下すことが望ましい。また、センサ素子温が低い領域と高い領域とでは、アクティブ空燃比制御の実行に伴って生ずるセンサ出力の最大値Vmaxや最小値Vmin、或いは振幅Vaが異なる。このため、2つの温度領域でそれぞれ正確な判定を行うためには、センサ出力が適正であるか否かを判断すべくそれらの特性値(Vmax、Vmin、Va)と比較される判定値は、何れの温度領域が用いられるかに応じて適宜設定されることが望ましい。
【0050】
本実施形態において、下流酸素センサ34の内部には、センサ素子を加熱するためのヒータが内蔵されている。ヒータのインピーダンスとセンサ素子温との間には相関が認められるため、ECU40は、そのインピーダンスを見ることでセンサ素子温を検知することができ、また、そのインピーダンスが目標値となるようにヒータへの供給電力を制御することでセンサ素子温を目標温度に制御することができる。
【0051】
そこで、本実施形態のシステムは、センサ素子温を2つの異なる温度(例えば、400℃と600℃)に制御し、それぞれのセンサ素子温で適正なセンサ出力が発せられているか否かを判定し、その結果得られた2つの判定結果から総合的に、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを判断することとした。また、それぞれのセンサ素子温での判定には、個々の判定に適した判定値を用いることとした。
【0052】
[具体的処理の説明]
図6は、上記の機能を実現するためにECU40が実行する異常検出ルーチンのフローチャートを示す。
図6に示すルーチンでは、先ず、下流酸素センサ34の異常検出が要求されているか否かが判別される(ステップ100)。
異常検出は、例えば、内燃機関10の始動直後など、予め決められている条件が成立する際に要求される。本ステップ100においてその実行が要求されていないと判別された場合は、以後速やかに今回の処理サイクルが終了される。
【0053】
ECU40は、異常検出の実行が要求されていない場合は、原則として、下流酸素センサ34のセンサ素子温を550〜600℃程度に制御して、所望の制御(燃料噴射量の制御、空燃比フィードバック制御など)を実行する。550〜600℃は、下流酸素センサ34が安定した出力特性を発揮する領域である。このような温度領域を常用域とすると、下流酸素センサ34に僅かな劣化が生じても、ECU40は、所望の制御を適正に実行し続けることが可能である。
【0054】
図6に示すルーチン中、上記ステップ100において、異常検出の実行が要求されていると判別された場合は、次に、下流酸素センサ34の目標温度が低温設定値(例えば400℃)に設定される(ステップ102)。
ECU40は、下流酸素センサ34のセンサ素子温が目標温度となるように、センサに内蔵されているヒータのインピーダンス制御を実行する。従って、本ステップ102の処理が実行されると、センサ素子温は、やがて低温設定値に制御される。
【0055】
図6に示すルーチンでは、次に、低温側異常検出処理が実行される(ステップ104)。
低温側異常検出処理では、下流酸素センサ34のセンサ素子温が低温設定値(400℃)とされた状態でアクティブ空燃比制御が実行され、その際に下流酸素センサ34が正常なセンサ出力を発するか否かが判断される。尚、本ステップ104において実行される処理については、後に図7を参照して詳細に説明する。
【0056】
低温側異常検出処理が終了すると、次に、下流酸素センサ34の目標温度が高温設定値(例えば600℃)に設定される(ステップ106)。
本ステップ106の処理が実行されることにより、下流酸素センサ34のセンサ素子温は、以後、高温設定値に制御される。
【0057】
次に、高温側異常検出処理が実行される(ステップ108)。
高温側異常検出処理では、下流酸素センサ34のセンサ素子温が高温設定値(600℃)とされた状態でアクティブ空燃比制御が実行され、その際に下流酸素センサ34が正常なセンサ出力を発するか否かが判断される。尚、本ステップ108において実行される処理は、上記ステップ104において実行される処理とほぼ同じであるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0058】
図6に示すルーチンでは、次に、低温側異常検出処理、および高温側異常検出処理の双方により、センサ出力の異常が判定されたか否かが判別される(ステップ110)。
その結果、双方の異常検出処理で共に異常判定がなされていると判別された場合は、下流酸素センサ34の異常が判定される(ステップ112)。
これに対して、少なくとも一方の異常検出処理により正常判定がなされていると判別された場合は、下流酸素センサ34が正常であると判定される(ステップ114)。
【0059】
以上説明した通り、図6に示すルーチンによれば、下流酸素センサ34が、低温設定値(400℃)に制御された状態で正常なセンサ出力を発するか否か、および高温設定値(600℃)に制御された状態で正常なセンサ出力を発するか否かを順次判定し、その2つの判定結果に基づいて下流酸素センサ34が正常であるか否かを判断することとしている。このため、本実施形態のシステムによれば、下流酸素センサ34の異常を精度良く検知することができる。
【0060】
ところで、図6に示すルーチンでは、低温側異常検出処理と高温側異常検出処理の双方で異常が認められる場合にのみセンサの異常を判定し、その他の場合にはセンサが正常であると判断することとしているが、最終的な結論の導出手法はこれに限定されるものではない。すなわち、最終的な結論は、2種類の判定結果から総合的に導出されればよく、例えば、一方の異常検出処理でのみ異常が判定される場合にセンサの仮異常を判定したり、或いは、それぞれの異常検出処理により異常が判定される頻度を求めて、その頻度に基づいて最終的な判断を下したりといった手法を用いることとしてもよい。
【0061】
既述した通り、ECU40は、通常時には、下流酸素センサ34のセンサ素子温を550〜600℃程度に制御する。550〜600℃の領域では、低温設定値(400℃)付近の領域に比して、下流酸素センサ34の状態が安定し、かつ、センサ劣化の影響がセンサ出力に表れ難い。このため、低温側異常検出処理でのみ異常判定がなされる(或いは繰り返される)場合に下流酸素センサ34の仮異常を判定し、その状態を車両の使用者に警報することとすれば、常用域で適正な制御が実行できるうちに下流酸素センサ34の劣化を早期検知するという機能を実現することも可能である。
【0062】
次に、図7を参照して、ECU40が、上記ステップ104において実行する低温側異常検出処理の詳細について説明する。
図7に示すルーチンでは、先ず、アクティブ空燃比制御の実行条件が成立しているか否かが判別される(ステップ120)。
その結果、上記の実行条件が成立していないと判別された場合は、アクティブ空燃比制御の停止指令が発せられた後(ステップ122)、今回の処理サイクルが終了される。
【0063】
一方、上記の実行条件が成立していると判別された場合は、アクティブ空燃比制御の実行指令が発せられる(ステップ124)。
ECU40は、本ステップ124の処理により、実行指令が発せられると、上述したアクティブ空燃比制御が実現されるべく、燃料噴射量等の制御を開始する。
【0064】
図7に示すルーチンでは、次に、下流酸素センサ34の出力Vsが、リッチ判定値VR以上であるか否かが判別される(ステップ126)。
その結果、センサ出力Vsがリッチ判定値VR以上であると判別された場合は、下流酸素センサ34が、リッチ出力を発していると判断することができる。この場合、先ず、出力最大値Vmaxがクリアされる(ステップ128)。
次いで、現在のセンサ出力Vsが、出力最大値Vmaxより大きいか否かが判別される(ステップ130)。
その結果、Vs>Vmaxが成立すると判別された場合は、そのセンサ出力Vsが、出力最大値Vmaxとして記憶される(ステップ132)。
一方、Vs>Vmaxが成立しないと判別された場合は、上記ステップ132の処理がジャンプされる。
【0065】
図7に示すルーチンでは、次に、センサ出力Vsが、リーン判定値VL以下に低下したか否かが判別される(ステップ134)。
本ステップ134において、Vs≦VLが成立しないと判別された場合は、再び上記ステップ130以降の処理が実行される。そして、ステップ130および132の処理は、本ステップ134において、Vs≦VLが成立すると判別されるまで繰り返される。
【0066】
上記ステップ134においてVs≦VLが成立すると判別された場合は、センサ出力Vsが、リッチ出力からリーン出力に変化したと判断することができる。つまり、この場合は、センサ出力Vsの最大値Vmaxが現時点で確定されたと判断することができる。図7に示すルーチンでは、この場合、以後、後述するステップ146の処理が実行される。
【0067】
図7に示すルーチン中、上記ステップ126において、下流酸素センサ34の出力Vsがリッチ判定値VR以上でないと判別された場合は、そのセンサ出力Vsがリーン判定値VL以下であるかが判別される(ステップ136)。
【0068】
その結果、センサ出力Vsがリーン判定値VL以下であると判別された場合は、下流酸素センサ34がリーン出力を発していると判断できる。この場合、先ず、出力最小値Vminがクリアされる(ステップ138)。
次いで、現在のセンサ出力Vsが、出力最小値Vminより小さいか否かが判別される(ステップ140)。
その結果、Vs<Vminが成立すると判別された場合は、そのセンサ出力Vsが、出力最小値Vminとして記憶される(ステップ142)。
一方、Vs<Vminが成立しないと判別された場合は、上記ステップ142の処理がジャンプされる。
【0069】
図7に示すルーチンでは、次に、センサ出力Vsが、リッチ判定値VR以上に上昇したか否かが判別される(ステップ144)。
本ステップ144において、Vs≧VRが成立しないと判別された場合は、再び上記ステップ140以降の処理が実行される。そして、ステップ140および142の処理は、本ステップ144において、Vs≧VRが成立すると判別されるまで繰り返される。
【0070】
上記ステップ144においてVs≧VRが成立すると判別された場合は、センサ出力Vsが、リーン出力からリッチ出力に変化したと判断することができる。つまり、この場合は、センサ出力Vsの最小値Vminが現時点で確定されたと判断することができる。図7に示すルーチンでは、この場合、以後、後述するステップ146の処理が実行される。
【0071】
上記ステップ134の条件、或いは上記ステップ144の条件が成立すると、次に、最大値Vmaxおよび最小値Vminの双方が演算済みであるか否かが判別される(ステップ146)。
その結果、未だ双方の演算は済んでいないと判別された場合は、再び上記ステップ120以降の処理が実行される。その結果、アクティブ空燃比制御の実行条件が成立している限り、最大値Vmaxおよび最小値Vminの双方が演算されるまで、上記ステップ120〜146の処理が繰り返される。
【0072】
上記ステップ146で、最大値Vmaxおよび最小値Vminの双方が演算済みであると判別されると、次に、センサ出力の振幅Va=Vmax−Vminが、低温側異常検出用判定値VthL以下であるか否かが判別される(ステップ148)。
既述した通り、下流酸素センサ34のセンサ出力は、センサ素子温に対して依存性を有しており、その振幅Vaは、下流酸素センサ34が正常であってもセンサ素子温が低いほど小さな値となる。本ステップ148で用いられる低温側異常検出用判定値VthLは、センサ素子温が低温設定値(400℃)に制御されている環境下で発生するべき最少の振幅値として予め定められた値である。従って、本ステップ148の処理によれば、下流酸素センサ34の温度特性をも考慮したうえで、低温設定値の温度環境下で下流酸素センサ34が適正に機能しているか否かを判断することができる。
【0073】
図7に示すルーチンでは、上記ステップ148において、Va≦VthLが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34の低温側異常が判定される(ステップ150)。
一方、上記ステップ148において、Va≦VthLが成立しないと判別された場合は、下流酸素センサ34が低温設定値の温度環境下で正常に機能していることが判定される(ステップ152)。
【0074】
以上説明した通り、図7に示すルーチンによれば、低温設定値(400℃)の温度環境下で生成されるセンサ出力の振幅Vaを、低温側異常検出用判定値VthLと比較することで、その温度環境下で下流酸素センサ34が正常に機能しているか否かを判断することができる。つまり、本実施形態のシステムは、低温側異常検出処理(図6中ステップ104)では、センサ出力の振幅Vaを低温側異常検出用判定値VthLと比較することにより下流酸素センサ34が正常に機能しているか否かを判断することができる。
【0075】
このシステムが、高温側異常検出処理(図6中ステップ108)として実行する処理は、低温側異常検出用判定値VthLが高温側異常検出用判定値VthHに変更されることを除き、図7に示す一連の処理と同様である。高温側異常検出用判定値VthHは、センサ素子温が高温設定値(600℃)に制御されている環境下で確保されるべき最少の振幅値として予め実験的に定められた値である。このような高温側異常検出処理によれば、下流酸素センサ34が高温設定値(600℃)の温度環境下で正常に機能しているか否かを正確に判断することができる。
【0076】
つまり、本実施形態のシステムでは、低温側異常検出処理では低温設定値を前提とした判定値VthLを用い、また、高温側異常検出処理では高温設定値を前提とした判定値VthHを用いることにより、センサ出力の温度特性に影響されることなく、それぞれの温度環境下で下流酸素センサ34が正常に機能しているか否かを正確に判断することができる。そして、このシステムでは、それらの判断を総合的に評価することにより、下流酸素センサ34に異常(劣化)が生じているか否かを、極めて精度良く判定することができる。
【0077】
ところで、上述した実施の形態1は、低温側異常検出処理、および高温側異常検出処理において、センサ出力の振幅Vaが正常値であるか否かに基づいて、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを判断することとしているが、その判断の基礎は振幅Vaに限定されるものではない。すなわち、その判断の基礎は、例えば、アクティブ空燃比制御の実行に伴って発生するセンサ出力の到達値(最大値Vmaxまたは最小値Vmin)であってもよい。
【0078】
図8は、センサ出力の到達値を判断の基礎とした低温側異常検出処理の一例のフローチャートを示す。図8に示すルーチンは、ステップ134または144の条件が成立した場合に、ステップ146および148の処理に代えて、ステップ160の処理が実行される点を除き、上記図7に示すルーチンと同様である。
【0079】
すなわち、図8に示すルーチンでは、ステップ134においてセンサ出力Vsがリーン判定値VL以下に変化したと判別された場合、或いは、ステップ144においてセンサ出力Vsがリッチ判定値VR以上に変化したと判別された場合に、センサ出力の最大値Vmaxが低温側第1判定値αLより小さいか否か、およびセンサ出力の最小値Vminが低温側第2判定値βより大きいか否かが判別される(ステップ160)。
【0080】
低温側第1判定値αLは、下流酸素センサ34が正規の出力特性(応答性および出力値)を示す場合に、低温設定値(400℃)の温度環境下でセンサ出力Vsが到達する最大値から、マージンを減じた値である。従って、本ステップ160において、Vmax<αLが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34が、正規の出力特性を示していないと判断することができる。また、低温側第2判定値βは、下流酸素センサ34が正規の出力特性(応答性および出力値)を示す場合に、低温設定値の温度環境下でセンサ出力Vsが到達する最小値に、マージンを加えた値である。従って、本ステップ160において、Vmax>βLが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34が、正規の出力特性を示していないと判断することができる。これに対して、本ステップ160において、それら2つの条件が何れも成立しないと判別された場合は、下流酸素センサ34が正規の出力特性を示していると判断できる。
【0081】
図8に示すルーチンでは、上記ステップ160において、Vmax<αLおよびVmax>βLの何れかが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34の低温側異常を判定すべくステップ150の処理が実行される。一方、それらの条件が何れも成立しないと判別された場合は、下流酸素センサ34が正常であることを表すべくステップ152の処理が実行される。
【0082】
以上説明した通り、図8に示すルーチンによれば、上記図7に示すルーチンの場合と同様に、下流酸素センサ34が、低温設定値の温度環境下で正常に機能しているか否かを正確に判定することができる。また、既述した低温側第1判定値αLおよび第2判定値βLを、それぞれ高温側第1判定値αHおよび第2判定値βHに変更して図8に示すルーチンを実行すれば、下流酸素センサ34が、高温設定値の温度環境下で正常に機能しているか否かを正確に判定することができる。従って、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かは、センサ出力の到達値(最大値Vmaxまたは最小値Vmin)を判断の基礎としても、正確に判定することができる。
【0083】
また、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを判断するための基礎は、アクティブ空燃比制御の実行中に表れるセンサ出力の応答性であってもよい。既述した通り、下流酸素センサ34の応答性は、劣化の一態様により悪化する。従って、センサ出力の応答性を基礎としても、下流酸素センサ34に劣化(異常)が生じているか否かを判断することは可能である。
【0084】
図9は、センサ出力の応答性を判断の基礎とした低温側異常検出処理の一例のフローチャートを示す。図9に示すルーチンは、ステップ126の条件が成立した場合に、ステップ128〜134,146および148の処理に代えて、ステップ170,172および178処理が実行される点、および、ステップ134の条件が成立した場合に、ステップ138〜148の処理に代えてステップ174〜178の処理が実行される点を除き、上記図7に示すルーチンと同様である。
【0085】
すなわち、図9に示すルーチンでは、ステップ126においてセンサ出力Vsがリーン判定値VL(図2(B)参照)を下回る値からその値VL以上の値に変化したと判別されると、センサ出力Vsがリッチ判定値VRに到達するまでの所要時間を計数すべく、カウンタCがインクリメントされる(ステップ170)。
【0086】
次に、下流酸素センサ34の出力Vsが、リッチ判定値VR(図2(B)参照)に達したか否かが判別される(ステップ172)。
本ステップ172において、Vs≧VRが成立すると判別されるまで、上記ステップ170の処理が繰り返し実行される。そして、Vs≧VRが成立すると判別された場合は、以後、後述するステップ178の処理が実行される。上記の処理によれば、下流酸素センサ34の出力Vsがリーン出力からリッチ出力に変化する過程において、その値Vsが、リーン判定値VLからリッチ判定値VRまで変化するのに要する時間をカウンタCに計数することができる。
【0087】
図9に示すルーチン中、ステップ136において、下流酸素センサ34の出力Vsが、リッチ判定値VRを上回る値から、その値VR以下の値に変化したと判別された場合は、センサ出力Vsがリーン判定値VLまで下降するのに要する時間を計数するために、カウンタCがインクリメントされる(ステップ174)。
【0088】
次に、下流酸素センサ34の出力Vsが、リーン判定値VLに達したか否かが判別される(ステップ176)。
本ステップ176において、Vs≦VLが成立すると判別されるまで、上記ステップ174の処理が繰り返し実行される。そして、Vs≦VLが成立すると判別されると、以後、後述するステップ178の処理が実行される。上記の処理によれば、下流酸素センサ34の出力Vsがリッチ出力からリーン出力に変化する過程において、その値Vsが、リッチ判定値VRからリーン判定値VLまで変化するのに要する時間をカウンタCに計数することができる。
【0089】
上記ステップ172の処理、或いは上記ステップ176の処理が終了すると、次に、カウンタCの計数値が低温側判定値CthL以上であるかが判別される(ステップ178)。
低温側判定値CthLは、下流酸素センサ34が低温設定値(400℃)の温度環境下で正規の応答性を示す場合に、センサ出力Vsがリーン判定値VLからリッチ判定値VRに変化する際に、或いはリッチ判定値VRからリーン判定値VLに変化する際に要する時間にマージンを加えた時間に相当する。従って、本ステップ178において、C≧CthLが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34が、正規の応答性を示していないと判断することができる。一方、その計数値Cが判定値CthL以上でないと判別された場合は、下流酸素センサ34が正規の応答性を示していると判断できる。
【0090】
図9に示すルーチンでは、上記ステップ178において、C≧CthLが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34の低温側異常を判定すべくステップ150の処理が実行される。一方、その条件が成立しないと判別された場合は、下流酸素センサ34が正常であることを表すべくステップ152の処理が実行される。
【0091】
以上説明した通り、図9に示すルーチンによれば、上記図7に示すルーチンの場合と同様に、下流酸素センサ34が、低温設定値の温度環境下で正常に機能しているか否かを正確に判定することができる。また、既述した低温側判定値CthLを高温側判定値CthHに変更して図9に示すルーチンを実行すれば、下流酸素センサ34が、高温設定値の温度環境下で正常に機能しているか否かを正確に判定することができる。従って、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かは、センサ出力の応答性を判断の基礎としても、正確に判定することができる。
【0092】
また、上述した実施の形態1では、下流酸素センサ34の異常検出が要求される場合に、常に低温側異常検出処理と高温側異常検出処理の双方を実行することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、何れの処理を優先的に実行し、その処理で異常が認められる場合にも他方の処理を実行することとしてもよい。
【0093】
図10は、低温側異常検出処理を優先させる場合に実行すべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。実施の形態1のシステムにおいては、ECU40に、上記図6に示すルーチンに代えて図10に示すルーチンを実行させることにより、低温側異常検出処理を、高温側異常検出処理に対して優先させることができる。
【0094】
図10に示すルーチンは、ステップ104と106の間にステップ180が挿入されている点、およびステップ108に続く処理がステップ110からステップ182に変更されている点を除き、図6に示すルーチンと同様である。
すなわち、図10に示すルーチンでは、ステップ104において低温側異常検出処理が終了した後に、その処理により低温側異常が判定されたか否かが判別される(ステップ180)。
【0095】
その結果、低温側異常が判定されていないと判別された場合は、その時点で下流側酸素センサ34が正常であると判断され、以後速やかにステップ114の処理が実行される。一方、低温側異常が判定されていると判別された場合は、その後、高温側異常検出処理を行うべくステップ106の処理が実行される。
【0096】
また、図10に示すルーチンでは、ステップ108において高温側異常検出処理が終了した後に、その処理により高温側異常が判定されたか否かが判別される(ステップ182)。
そして、高温側異常が判定されている場合は下流酸素センサ34の異常を判定すべくステップ112の処理が実行される。一方、高温側異常が判定されていない場合は下流酸素センサ34が正常であることを表すべく、ステップ114の処理が実行される。
【0097】
以上説明した通り、図10に示すルーチンによれば、低温側異常検出処理で異常が認められる場合にのみ高温側異常検出処理を実行して、下流酸素センサ34に真に異常が生じているかを確認することができる。低温側異常検出処理が実行される低温環境下では、下流酸素センサ34の異常が拡大される傾向にある。従って、低温側異常検出処理を優先して行うこととすれば、下流酸素センサ34の異常を早期に検知することが可能である。また、低温側異常検出処理により異常が認められない場合には、高温側異常検出処理により異常が認められる可能性は極めて低いと推定できる。このため、図10に示すルーチンによれば、センサ異常の早期検知に適した特性を損なうことなく、高温側異常検出処理が無駄に実行されるのを防いでECU40の演算負荷の軽減を実現することができる。
【0098】
図11は、高温側異常検出処理を優先させる場合に実行すべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。実施の形態1のシステムにおいては、ECU40に、上記図6に示すルーチンに代えて図11に示すルーチンを実行させることにより、高温側異常検出処理を、低温側異常検出処理に対して優先させることができる。
【0099】
図11に示すルーチンは、ステップ102,104および108と、ステップ106,108および182とが、それぞれ入れ替えられている点を除き、図10に示すルーチンと同様である。
図11に示すルーチンによれば、高温側異常検出処理で異常が認められる場合にのみ低温側異常検出処理を実行して、下流酸素センサ34に真に異常が生じているかを確認することができる。下流酸素センサ34は、低温設定値の温度環境下では不安定な状態となる。従って、低温側異常検出処理の判定結果は、高温側異常検出処理の判定結果と比較すると、その精度が低くなりがちである。
【0100】
図11に示すルーチンでは、高温側異常検出処理が優先して実行されるため、下流酸素センサ34に異常が生じている可能性が真に高い場合にのみ、確認的に低温側異常検出処理を実行することができる。このため、図11に示すルーチンによれば、高温側異常検出処理と低温側異常検出処理が共に実行される機会を十分に減らすことができ、図10に示すルーチンが実行される場合に比して、ECU40の演算負荷を更に軽減することができる。
【0101】
また、上述した実施の形態1においては、ECU40が、下流酸素センサ34のセンサ素子温を低温設定値、或いは高温設定値に制御したうえで、低温側異常検出処理、または高温側異常検出処理を実行することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、センサ素子温を積極的に制御することなく、センサ素子温が成り行きにより低温設定値、或いは高温設定値となった際に低温側異常検出処理、または高温側異常検出処理を実行することとしてもよい。
【0102】
図12は、センサ素子温を成り行きに任せる場合にECU40が実行すべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。実施の形態1のシステムにおいては、ECU40に、上記図6に示すルーチンに代えて図12に示すルーチンを実行させることにより、センサ素子温を成り行きに任せつつ、低温側異常検出処理および高温側異常検出処理の双方を適当に実行させることができる。尚、図12において、上記図6に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0103】
図12に示すルーチンでは、先ず、センサ素子温が低温設定値と一致しているか否かが判別される(ステップ190)。
その結果、両者が一致していないと判別された場合は、ステップ192および104の処理がジャンプされ、以後、速やかにステップ194以降の処理が実行される。
【0104】
一方、両者が一致していると判別された場合は、低温側異常検出処理による判定が、未だ実行されていないかが判別される(ステップ192)。
低温側異常検出処理による判定が既に実行されている場合は、その処理を再び実行する必要がない。従って、この場合は、ステップ104の処理がジャンプされ、以後、ステップ194以降の処理が実行される。
これに対して、未だ低温側異常検出処理による判定が実行されていないと判別された場合は、その判定を行うべく、ステップ104の処理が実行される。
【0105】
図12に示すルーチンでは、上記の処理に次いで、センサ素子温が高温設定値と一致しているか否かが判別される(ステップ194)。
その結果、両者が一致していないと判別された場合は、ステップ196および108の処理がジャンプされ、以後、速やかにステップ198以降の処理が実行される。
【0106】
一方、両者が一致していると判別された場合は、高温側異常検出処理による判定が、未だ実行されていないかが判別される(ステップ196)。
高温側異常検出処理による判定が既に実行されている場合は、その処理を再び実行する必要がない。従って、この場合は、ステップ108の処理がジャンプされ、以後、ステップ198以降の処理が実行される。
これに対して、未だ高温側異常検出処理による判定が実行されていないと判別された場合は、その判定を行うべく、ステップ108の処理が実行される。
【0107】
図12に示すルーチンでは、上記の処理に次いで、低温異常検出処理による判定と高温異常検出処理による判定とが共に終了しているか否かが判別される(ステップ198)。
その結果、未だ双方の判定が終了していないと判別された場合は、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを判断することなく、速やかに今回の処理サイクルが終了される。一方、双方の判定が既に終了していると判別された場合は、それらの判定結果から、下流酸素センサ34の状態を総合的に判断すべく、以後、ステップ110〜114の処理が実行される。
【0108】
以上説明した通り、図12に示すルーチンによれば、下流酸素センサ34のセンサ素子温が成り行きにより低温設定値、或いは高温設定値と一致したタイミングにおいて、低温異常検出処理、または高温異常検出処理を適宜実行することができる。このため、ECU40に図12に示すルーチンを実行させることによれば、例えば、内燃機関が始動された後、下流酸素センサ34の暖機が進行する過程において、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを精度良く判定することが可能である。
【0109】
尚、上述した実施の形態1においては、下流酸素センサ34が前記第1の発明における「排気ガスセンサ」に、低温設定値(400℃)が前記第1の発明における「第1の温度」に、高温設定値(600℃)が前記第1の発明における「第2の温度」に、それぞれ相当している。また、ECU40が、上流触媒28の上流における排気空燃比を制御すべく燃料噴射量を制御することにより前記第1の発明における「排気空燃比制御手段」が、アクティブ空燃比制御を実行することにより前記第1の発明における「アクティブ空燃比制御手段」が、下流酸素センサ34のインピーダンスに基づいてそのセンサ素子温を検知することにより前記第1の発明における「センサ温度検知手段」が、上記ステップ104の処理を実行することにより前記第1の発明における「第1の状態判定手段」が、上記ステップ108の処理を実行することにより前記第1の発明における「第2の状態判定手段」が、上記ステップ110〜114の処理を実行することにより前記第1の発明における「異常判定手段」が、それぞれ実現されている。
【0110】
また、上述した実施の形態1においては、550〜600℃が前記第2の発明における「常用時の目標温度領域」に相当していると共に、ECU40が、異常検出の実行が要求されていない状況下で、原則としてセンサ素子温をその温度領域に制御することにより前記第2の発明における「センサ温度制御手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態1においては、ECU40に、図10に示すルーチン中で上記ステップ180の処理を実行させることにより前記第5の発明における「本判定要求手段」を実現することができる。また、ECU40に、図11に示すルーチン中で上記ステップ182の処理を実行させることにより前記第6の発明における「本判定要求手段」を実現することができる。
【0111】
実施の形態2.
次に、図13および図14を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態のシステムは、上述した実施の形態1のシステムにおいて、ECU40に、上記図6に示すルーチン(およびそのルーチンの中で実行される低温側異常検出ルーチン(図7)並びに高温側異常検出ルーチン)に代えて、図13に示すルーチンおよび図14に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0112】
既述した通り、実施の形態1のシステムは、下流酸素センサ34の状態を、低温設定値の温度環境下と高温設定値の温度環境下の双方で判定する。そして、それぞれの温度環境下で異なる判定値を用いることにより、センサ出力の温度特性の影響を排除することとしている。これに対して、本実施形態のシステムは、異常検出処理が実行されるべき温度環境を成り行きに任せ、その一方で、異常検出処理が実行される際のセンサ素子温に基づいて判定値を適宜設定することにより、センサ出力の温度特性の影響を排除することとしている。
【0113】
図13は、上記の機能を実現するために、本実施形態においてECU40が実行する。尚、図13において、上記図6に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
すなわち、図13に示すルーチンでは、先ず、異常検出の実行が要求されているか否かを判断すべく、ステップ100の処理が実行される。その結果、異常検出の実行が要求されていないと判別された場合は、以後速やかに今回の処理サイクルが終了される。
一方、上記ステップ100において異常検出の実行が要求されていると判別された場合は、その時点におけるセンサ素子温が検出される(ステップ200)。
【0114】
本実施形態において、下流酸素センサ34の異常は、実施の形態1の場合と同様に、アクティブ空燃比制御の実行中に適正なセンサ出力が発せられるか否かに基づいて判断される。そして、その判断は、実施の形態1の場合と同様に、センサ出力の振幅Va、到達値(Vmax、Vmin)、或いは応答性を基礎として行うことができる。以下、説明の便宜上、ここでは振幅Vaを基礎として下流酸素センサ34の異常を判定する例について説明する。
【0115】
アクティブ空燃比制御の実行中に下流酸素センサ34から発せられるセンサ出力の振幅Vaは、既述した通り温度に対して依存性を有している。本実施形態において、ECU40は、正常な下流酸素センサ34により実現される振幅Vaとセンサ素子との関係を定めたマップを記憶している。そして、上記ステップ200の処理が終了すると、そこで検出されたセンサ素子温に対応する振幅Vaが上記マップから読み出され、その読み出された値が今回の処理サイクルで用いるべき判定値として設定される(ステップ202)。
以後、このようにして設定された判定値を用いて、異常検出処理が実行される(ステップ204)。
【0116】
図14は、上記204において実行される異常検出処理の詳細を説明するためのフローチャートを示す。図14に示すルーチンは、ステップ148〜152が、ステップ210〜214に変更されている点を除き、図7に示す低温側異常検出ルーチンと同様である。以下、両者が相違する点を中心に図14に示すルーチンを説明する。
【0117】
すなわち、図14に示すルーチンでは、ステップ146においてセンサ出力の最大値Vmaxおよび最小値Vminの双方が演算済みであると判別されると、その後、振幅Va=Vmax−Vminが、判定値Vth(T)より小さいか否かが判別される(ステップ210)。
【0118】
上記ステップ210で用いられる判定値Vth(T)は、図13に示すルーチン中、上記ステップ202の処理により設定された値、つまり、現在のセンサ素子温に対して設定された判定値である。従って、Va≦Vth(T)が成立すると判別された場合は、現在のセンサ素子温の下、センサ出力の振幅Vaが正常値に達していないと判断することができる。図14に示すルーチンでは、この場合、下流酸素センサ34の異常が判定される(ステップ212)。
【0119】
一方、Va≦Vth(T)が成立しないと判別された場合は、現在のセンサ素子温の下、センサ出力の振幅Vaが正常値に達していると判断することができる。図14に示すルーチンでは、この場合、下流酸素センサ34が正常であるとの判定がなされる(ステップ214)。
【0120】
以上説明した通り、図13に示すルーチンおよび図14に示すルーチンによれば、下流酸素センサ34の異常検出が要求された際に、その時点におけるセンサ素子温に基づいて適切な判定値Vth(T)を設定したうえで、下流酸素センサ34から正常な振幅Vaを伴うセンサ出力が発せられているか否かを判断することができる。このため、本実施形態のシステムによれば、センサ素子温を特定の温度に制御することなく、センサ出力の温度特性に影響されることのない正確な異常検出を実現することができる。
【0121】
ところで、上記の例では、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かをセンサ出力の振幅Vaを基礎として判断することとしているが、その基礎となる特性値は、既述した通りセンサ出力の到達値(最大値Vmax、Vmin)、或いは応答性であっても良い。このような変形例は、ECU40に、上記図14に示すルーチンに代えて、図8に示すルーチンに適当な修正を施したもの、或いは図9に示すルーチンに適当な修正を施したものを実行させることにより実現することができる。
【0122】
尚、上述した実施の形態2においては、下流酸素センサ34が前記第7の発明における「排気ガスセンサ」に相当している。また、ECU40が、上流触媒28の上流における排気空燃比を制御すべく燃料噴射量を制御することにより前記第7の発明における「排気空燃比制御手段」が、アクティブ空燃比制御を実行することにより前記第7の発明における「アクティブ空燃比制御手段」が、下流酸素センサ34のインピーダンスに基づいてそのセンサ素子温を検知することにより前記第7の発明における「センサ温度検知手段」が、上記ステップ210の処理を実行することにより前記第7の発明における「異常判定手段」が、上記ステップ202の処理を実行することにより前記第7の発明における「判定値設定手段」が、それぞれ実現されている。
【0123】
実施の形態3.
次に、図15乃至図18を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態のシステムは、実施の形態1の場合と同様に、図1に示す構成を用いて実現することができる。但し、本実施形態において、ECU40は、実施の形態1の場合と異なり、下流酸素センサ34のヒータをインピーダンス制御する機能を有していないものとする。つまり、本実施形態において、下流酸素センサ34のヒータは、ECU40によりオープン制御されているものとする。
【0124】
下流酸素センサ34のヒータがオープン制御される場合、センサ素子温は、排気温の変化と共に上下する。より具体的には、そのセンサ素子温は、排気温が高い場合には高温となり、排気温が低い場合には低温となる。内燃機関の排気温と吸入空気量Gaとの間には、フューエルカット中などの特殊な場合を除き大きな相関が認められる。このため、ヒータがオープン制御される場合のセンサ素子温は、結局、吸入空気量Gaの増減に対応した変化を示す。従って、本実施形態のシステムでは、吸入空気量GAがセンサ素子温の代替値としての意味を有することとなる。
【0125】
図15および図16は、上記図4および図5に示すセンサ特性を、吸入空気量との関係で書き直した図である。本実施形態では、吸入空気量Gaがセンサ素子温の代替値としての意味を有するため、下流酸素センサ34の静的特性(図4)、および動的特性(図5)は、それぞれ図15および図16に示すように表すことができる。
【0126】
図17は、本実施形態のシステムにおいて、上述した実施の形態1の場合と同様の機能を実現するためにECU40に実行させるべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。ECU40が図17に示すルーチンを実行する場合、厳密には、ECU40が、上記図12に示すルーチンを実行する場合(センサ素子温を成り行きに任せる変形例の場合)と同様の機能を実現することができる。
【0127】
図17に示すルーチンは、ステップ190がステップ220に変更されている点、およびステップ194がステップ222に変更されている点を除き、上記図12に示すルーチンと同様である。
つまり、図12に示すルーチンでは、既述した通り、センサ素子温が低温設定値(400℃)と一致する場合に(ステップ190)低温側異常検出処理(ステップ104)が実行され、また、センサ素子温が高温設定値(600℃)と一致する場合(ステップ194)に高温側異常検出処理(ステップ108)が実行される。
これに対して、図17に示すルーチンでは、吸入空気量Gaが低温設定値(400℃の代替値)と一致する場合に(ステップ220)低温側異常検出処理(ステップ104)が実行され、また、吸入空気量Gaが高温設定値(600℃の代替値)と一致する場合(ステップ222)に高温側異常検出処理(ステップ108)が実行される。
【0128】
本実施形態では、吸入空気量Gaがセンサ素子温の代替値としての意味を有するため、図17に示すルーチンによれば、図12に示すルーチンと全く同じ機能を実現することができる。従って、ECU40に、図17に示すルーチンを実行させれば、吸入空気量Gaが成り行きで変化する過程において、低温側異常検出処理と高温側異常検出処理とを適宜実行させることができ、更に、それらの処理の結果から、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを総合的に精度良く判断することができる。
【0129】
図18は、本実施形態のシステムにおいて、上述した実施の形態2の場合と同様の機能を実現するためにECU40に実行させるべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。
図18に示すルーチンは、ステップ200および202がステップ230および232に変更されている点を除き、上記図13に示すルーチンと同様である。
つまり、図13に示すルーチンでは、既述した通り、異常検出の実行が要求された際に、センサ素子温に基づいて、そのセンサ素子温の下で用いられるべき判定値が設定される。(ステップ202)。
これに対して、図18に示すルーチンでは、異常検出の実行が要求されると、その時点における吸入空気量Gaが検出され(ステップ230)、その吸入空気量Gaに基づいて、その時点で用いられるべき判定値が設定される(ステップ232)。
【0130】
本実施形態では、吸入空気量Gaがセンサ素子温の代替値としての意味を有するため、図18に示すルーチンによれば、図13に示すルーチンと全く同じ機能を実現することができる。従って、ECU40に、図18に示すルーチンを実行させれば、吸入空気量Gaが成り行きで変化し、その変化に伴ってセンサ素子温が適当に変化する過程において、常に適正な判定値を設定し、常に精度良く下流酸素センサ34の異常を検出することができる。
【0131】
尚、上述した実施の形態3においては、下流酸素センサ34が前記第4の発明における「排気ガスセンサ」に、エアフロメータ18が前記第4の発明における「吸入空気量検出手段」に、低温設定値(400℃代替値)が前記第4の発明における「第1の吸入空気量」に、高温設定値(600℃代替値)が前記第4の発明における「第2の吸入空気量」に、それぞれ相当している。また、ECU40が、上流触媒28の上流における排気空燃比を制御すべく燃料噴射量を制御することにより前記第1の発明における「排気空燃比制御手段」が、アクティブ空燃比制御を実行することにより前記第1の発明における「アクティブ空燃比制御手段」が、図17に示すルーチン中で上記ステップ104、108および110〜114の処理を実行することにより、前記第4の発明における「第1の状態判定手段」、「第2の状態判定手段」、および「異常判定手段」が、それぞれ実現されている。
【0132】
また、上述した実施の形態3においては、下流酸素センサ34が前記第9の発明における「排気ガスセンサ」に、エアフロメータ18が前記第9の発明における「吸入空気量検出手段」に、それぞれ相当している。また、ECU40が、上流触媒28の上流における排気空燃比を制御すべく燃料噴射量を制御することにより前記第1の発明における「排気空燃比制御手段」が、アクティブ空燃比制御を実行することにより前記第1の発明における「アクティブ空燃比制御手段」が、図18に示すルーチン中で上記ステップ204、および232の処理を実行することにより前記第9の発明における「異常判定手段」および「判定値設定手段」が、それぞれ実現されている。
【0133】
実施の形態4.
次に、図19乃至22を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。本実施形態のシステムは、実施の形態1の場合と同様に、図1に示す構成を用いて実現することができる。本実施形態のシステムは、実施の形態1の場合と同様に、ECU40が、下流酸素センサ34のヒータをインピーダンス制御する機能を有しており、この点において実施の形態3のシステムと相違している。
【0134】
下流酸素センサ34のヒータがインピーダンス制御されている場合、センサ素子温が一定になるようにヒータへの供給電力が制御される。従って、本実施形態のシステムでは、排気温の変化がそのままセンサ素子温の変化に反映されることはなく、吸入空気量Gaは、センサ素子温の代替値としての意味を有しない。しかしながら、このような状況下であっても、吸入空気量Gaは、下流酸素センサ34の特性に影響を与える。
【0135】
すなわち、下流酸素センサ34の出力は、センサ素子へのガスの当たりが強い(良好である)ほど本来の空燃比と合致する出力を発し、また、優れた応答性を示す。そして、センサ素子へのガスの当たりは、吸入空気量Gaが多いほど強く(良好と)なる。このため、下流酸素センサ34の出力は、吸入空気量Gaが増えるに従って大きな振幅Vaと、良好な応答性を示し易くなる。
【0136】
図19および図20は、センサ素子温が一定に制御された下流酸素センサ34の静的特性(到達値および振幅)および動的特性(応答性)をそれぞれ表した図である。本実施形態における下流酸素センサ34のセンサ特性は、吸入空気量Gaとの関係で、これらの図に示すように表すことができる。つまり、本実施形態のシステムでは、インピーダンス制御が行われるため、吸入空気量Gaをセンサ素子温の代替値として扱うことはできないが、変化の傾きに相違はあるものの、下流酸素センサ34の出力と吸入空気量Gaとの間には、実施の形態3において成立したもの(図15および図16参照)と類似した相関が認められる。
【0137】
[第1のシステム例の説明]
このため、本実施形態のシステムでも、吸入空気量Gaの少ない状況下での異常検出とその量Gaが多い状況下での異常検出とを組み合わせることにより、実施の形態1の場合と同様の原理で、下流酸素センサ34の異常判定精度を高めることができる。このような制御は、例えば、インピーダンス制御により下流酸素センサ34の素子温を一定に保ちつつ、上記図17に示すルーチンと同様の処理を行うことで実現することができる(但し、この場合、図17に示すルーチン中、「低温・・」として説明した部分は「少量・・」と、また、「高温・・」として説明した部分は「多量・・」と読み替えるものとする)。
【0138】
[第2のシステム例の説明]
更に、本実施形態のシステムでは、吸入空気量Gaが成り行きで変化する過程で、そのGaに応じた判定値を設定して異常検出処理を実行することで、実施の形態2の場合と同様の原理で、下流酸素センサ34の異常判定精度を高めることができる。このような制御は、例えば、インピーダンス制御により下流酸素センサ34の素子温を一定に保ちつつ、上記図18に示すルーチンと同様の処理を行うことで実現することができる(但し、この場合、判定値設定のためにステップ232で参照すべきマップは、実施の形態3で用いられるマップとは異なるものとする必要がある)。
【0139】
[第3および第4のシステム例の説明]
以上説明した2つの例は、インピーダンス制御によってセンサ素子温度が一定に制御されることを前提としたものである。これに対して、本実施形態のシステムでは、センサ素子温を実施の形態1または2の場合と同様に変化させつつ、更に吸入空気量Gaに対するセンサ出力の依存性を考慮して下流酸素センサ34の異常検出を行うことも可能である。つまり、実施の形態1の装置が、センサ素子温の異なる2つの状況下でそれぞれ異常検出を行うのに対して、本実施形態では、その異常検出の手法に、2つの状況下で吸入空気量Gaを異ならせる手法を組み合わせることが可能である。また、実施の形態2の装置が、センサ素子温に基づいて判定値を設定するのに対して、本実施形態では、その判定値をセンサ素子温と吸入空気量Gaの双方に基づいて設定することが可能である。
【0140】
[第3のシステム例で実行される処理の説明]
図21は、実施の形態1における異常検出の手法に、2つの状況下で吸入空気量Gaを異ならせる手法を組み合わせるためにECU40に実行させるべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。このルーチンは、図6に示す異常検出ルーチンに必要な修正を施したものであり、ステップ104の前段にステップ240が挿入されている点、およびステップ108の前段にステップ242が挿入されている点を除き、図6に示すルーチンである。
【0141】
すなわち、図21に示すルーチンでは、ステップ102において下流酸素センサ34の目標温度が低温設定値(600℃)に設定された後、吸入空気量Gaが少量設定値と一致しているか否かが判別される(ステップ240)。
ステップ240の処理は、その条件が成立するまで繰り返し実行される。吸入空気量Gaが少量設定値と一致するとの判断がなされると、以後、低温側異常検出処理を開始すべく、ステップ104の処理が実行される。
【0142】
また、図21に示すルーチンでは、ステップ106において下流酸素センサ34の目標温度が高温設定値(600℃)に設定された後、吸入空気量Gaが多量設定値と一致しているか否かが判別される(ステップ242)。
ステップ242の処理は、その条件が成立するまで繰り返し実行される。そして、吸入空気量Gaが多量設定値と一致するとの判断がなされると、以後、高温側異常検出処理を開始すべく、ステップ108の処理が実行される。
【0143】
以上説明した一連の処理によれば、低温側異常検出処理は、下流酸素センサ34の温度が低温設定値に制御され、かつ、吸入空気量Gaがほぼ少量設定値と一致する環境下で実行される。そして、この場合、低温側異常検出処理は、低温設定値、および少量設定値を前提とした判定値VthL、αLおよびβL、またはCthL(図7乃至図9参照)を用いて実行される。また、高温側異常検出処理は、下流酸素センサ34の温度が高温設定値に制御され、かつ、吸入空気量Gaがほぼ多量設定値と一致する環境下で実行される。そして、この場合、高温側異常検出処理は、高温設定値、および多量設定値を前提とした判定値VthH、αHおよびβH、またはCthHを用いて実行される。
【0144】
下流酸素センサ34の劣化の影響は、センサ素子温が低いほど拡大され易いことは既述した通りであるが、同様の傾向は、吸入空気量Gaについても成立する。つまり、下流酸素センサ34の出力特性には、吸入空気量Gaが少ないほど劣化の影響が顕著に表れる。一方で、下流酸素センサ34の特性は、センサ素子が高いほど安定し、その安定化の傾向は、吸入空気量Gaが増す場合にも表れる。従って、上記図21に示すルーチンによれば、センサ素子温および吸入空気量Gaの双方が劣化を拡大させ易い状況下で低温側異常検出処理を実行させ、かつ、それら双方がセンサ特性を安定化させる状況下で高温側異常検出処理を実行させることができる。このため、ECU40が図21に示すルーチンを実行する場合は、実施の形態1の場合に比して、下流酸素センサ34の異常を、更に早期に検知することが可能となり、かつ、その異常の発生を更に正確に判定することが可能である。
【0145】
ところで、上記図21に示すルーチンは、ステップ240および242の処理を図6に示すルーチンと組み合わせることで構成されているが、その組み合わせの基礎となるルーチンは図6に示すルーチンに限定されるものではない。すなわち、ステップ240および242は、実施の形態1の変形例として説明した図10乃至図12に示す何れのルーチンと組み合わせることとしてもよい。
【0146】
[第4のシステム例で実行される処理の説明]
図22は、実施の形態2における異常検出の手法に、吸入空気量Gaに応じて判定値を異ならせる手法を組み合わせるためにECU40に実行させるべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。このルーチンは、図13に示す異常検出ルーチンに必要な修正を施したものであり、ステップ200および202が、ステップ250および252に修正されている点を除き、図13に示すルーチンである。
【0147】
すなわち、図22に示すルーチンでは、ステップ100において下流酸素センサ34の異常検出が要求されていると判別されると、その後、下流酸素センサ34の温度と共に、吸入空気量Gaが検出される(ステップ250)。
次いで、センサ素子温と吸入空気量Gaに基づいて、今回の処理サイクルで用いるべき判定値が設定される(ステップ252)。
【0148】
ECU40は、図22に示すルーチンを実行する場合、その前提として、センサ出力が正常であるか否かを判別するための判定値を、センサ素子温および吸入空気量Gaとの関係で定めたマップを記憶している。上記ステップ252では、そのマップを参照して、現時点のセンサ素子温および吸入空気量Gaに対応する判定値が設定される。ECU40は、上記の手法で判定値を設定すると、以後、その判定値を用いて異常検出処理を行うべく、ステップ204の処理を実行する。
【0149】
以上説明した通り、図22に示すルーチンによれば、異常検出処理において用いるべき判定値を、下流酸素センサ34の温度と吸入空気量Gaの双方に基づいて設定することができる。このため、ECU40に、図22に示すルーチンを実行させる場合は、センサ素子温や吸入空気量Gaに対する依存性に関わらず、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを常に精度良く判定することができる。
【0150】
尚、上述した実施の形態4においては、「第1のシステム例」により前記第4の発明が、「第2のシステム例」により前記第9の発明が、「第3のシステム例」により前記第3の発明が、また、「第4のシステム例」により前記第8の発明が、それぞれ実現されている。
【0151】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
第1の発明によれば、触媒の下流に配置された排気ガスセンサが、第1の温度下で発する出力が適正であるか、および第2の温度下で発する出力が適正であるかを総合的に判断することでその異常判定を行うことができる。このため、本発明によれば、排気ガスセンサの温度依存性に影響されることなく、正確にその異常判定を行うことができる。
【0152】
第2の発明によれば、常用域として用いられる温度領域で排気ガスセンサが正常な特性を示しているか、および常用域より低い温度(第1の温度)で排気ガスセンサが正常な特性を示しているかを総合判断することで、そのセンサの異常を判定することができる。常用域より低い第1の温度下では、センサ特性の劣化が拡大されるため、その異常を早期に発見することができる。一方、第1の温度は、常用域ではないため、その温度で排気ガスセンサの異常が早期発見されても、その後、常用域では、排気ガスセンサを正常に機能させながら所望の制御を継続することができる。従って、本発明によれば、エミッション特性が大きく悪化する前に排気ガスセンサの異常を早期発見することができる。
【0153】
第3の発明によれば、触媒の下流に配置された排気ガスセンサが、第1の温度下、かつ、第1の吸入空気量下で発する出力が適正であるか、および第2の温度下、かつ、第2の吸入空気量下で発する出力が適正であるかを総合的に判断することでその異常判定を行うことができる。排気ガスセンサは、吸入空気量が多くガスの当たりが良好であるほど優れた応答性で正しい出力を発する。一方、吸入空気量が少なくガスの当たりが悪いほど、排気ガスセンサの特性劣化は拡大されて表れやすい。本発明によれば、センサ素子温および吸入空気量の双方が特性劣化を拡大させる環境下での判定と、その双方がセンサ特性を安定化させる環境下での判定とを総合判断することができるため、排気ガスセンサの異常を早期に、かつ正確に検知することができる。
【0154】
第4の発明によれば、触媒の下流に配置された排気ガスセンサが、第1の吸入空気量下で発する出力が適正であるか、および第2の吸入空気量下で発する出力が適正であるかを総合的に判断することでその異常判定を行うことができる。このため、本発明によれば、排気ガスセンサの特性が吸入空気量に対して有する依存性に影響されることなく、正確にその異常判定を行うことができる。
【0155】
第5の発明によれば、第1の温度下または第1の吸入空気量下で排気ガスセンサの異常が認められた場合に限り、第2の温度下または第2の吸入空気量下での排気ガスセンサの異常判定を行うことができる。この場合、センサ特性の劣化が拡大される環境下での判定が優先的に行われるため、無駄なく効率的に排気ガスセンサの異常を早期検知することができる。
【0156】
第6の発明によれば、第2の温度下または第2の吸入空気量下で排気ガスセンサの異常が認められた場合に限り、第1の温度下または第1の吸入空気量下での排気ガスセンサの異常判定を行うことができる。この場合、センサが安定した特性を示す環境下での判定が優先されるため、不安定な環境下で異常判定処理が無駄に実行されるのを有効に防ぐことができる。
【0157】
第7の発明によれば、排気ガスセンサの温度に基づいて、異常判定のための判定値を適宜変更することができる。このため、本発明によれば、排気ガスセンサの温度依存性に影響されることなく、そのセンサの異常を正確に判定することができる。
【0158】
第8の発明によれば、排気ガスセンサの温度と吸入空気量とに基づいて、異常判定のための判定値を適宜変更することができる。このため、本発明によれば、排気ガスセンサの温度および吸入空気量に対する依存性に影響されることなく、そのセンサの異常を正確に判定することができる。
【0159】
第9の発明によれば、吸入空気量に基づいて、異常判定のための判定値を適宜変更することができる。このため、本発明によれば、排気ガスセンサの吸入空気量に対する依存性に影響されることなく、そのセンサの異常を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1の装置が実行するアクティブ空燃比制御の内容を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1において、アクティブ空燃比制御の実行中に、触媒後空燃比の反転に伴って下流酸素センサの出力に生ずる変化の様子を説明するための図である。
【図4】下流酸素センサの出力の特性値(最大値Vmax、最小値Vmin、および振幅Va)をセンサ素子温との関係で表した図である。
【図5】下流酸素センサの応答性(応答遅れ)をセンサ素子温との関係で表した図である。
【図6】本発明の実施の形態1において実行される異常検出ルーチンの第1例のフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態1において低温側異常検出処理として実行される一連の処理の第1例のフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態1において低温側異常検出処理として実行される一連の処理の第2例のフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態1において低温側異常検出処理として実行される一連の処理の第3例のフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態1において実行される異常検出ルーチンの第2例のフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態1において実行される異常検出ルーチンの第3例のフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態1において実行される異常検出ルーチンの第4例のフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態2において実行される異常検出ルーチンのフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態2において異常検出処理として実行される一連の処理のフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態3のシステムにおける下流酸素センサの出力の特性値(最大値Vmax、最小値Vmin、および振幅Va)を吸入空気量との関係で表した図である。
【図16】本発明の実施の形態3のシステムにおける下流酸素センサの応答性(応答遅れ)を吸入空気量との関係で表した図である。
【図17】本発明の実施の形態3において実行される異常検出ルーチンの第1例のフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態3において実行される異常検出ルーチンの第2例のフローチャートである。
【図19】本発明の実施の形態4のシステムにおける下流酸素センサの出力の特性値(最大値Vmax、最小値Vmin、および振幅Va)を吸入空気量との関係で表した図である。
【図20】本発明の実施の形態4のシステムにおける下流酸素センサの応答性(応答遅れ)を吸入空気量との関係で表した図である。
【図21】本発明の実施の形態4において実行される異常検出ルーチンの第1例のフローチャートである。
【図22】本発明の実施の形態4において実行される異常検出ルーチンの第2例のフローチャートである。
【符号の説明】
10 内燃機関
12 吸気通路
14 排気通路
28 上流触媒
30 下流触媒
32 空燃比センサ
34 下流酸素センサ
Vs 下流酸素センサのセンサ出力
VR リッチ判定値
VL リーン判定値
Vmax 出力最大値
Vmin 出力最小値
Va センサ出力の振幅
Ga 吸入空気量
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気ガスセンサの異常検出装置に係り、特に、内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するうえで好適な異常検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特許3134698号公報に開示されるように、内燃機関の排気通路に酸素センサを備える構成が知られている。この酸素センサは、排気ガスに含まれる酸素濃度を検出し、その酸素濃度より排気空燃比を検知する目的で配置される。排気通路に配置される酸素センサは、内燃機関の空燃比を制御するうえで重要な要素である。このため、酸素センサの異常は速やかに検知する必要がある。
【0003】
上述した従来の内燃機関は、より具体的には、排気通路に配置された触媒の上流に酸素センサを備えている。そして、このシステムは、内燃機関から流出する排気ガスの空燃比を、つまり、触媒の上流に到達する排気ガスの空燃比を、強制的にリッチ空燃比とリーン空燃比の間で変化させることにより、酸素センサの異常を検出することとしている。
【0004】
上記従来の内燃機関において、触媒上流における排気空燃比が強制的に変化させられると、酸素センサが正常であれば、そのセンサの出力は、排気空燃比の変化に追従した変化を示す。従って、このシステムにおいては、触媒上流における排気空燃比を強制的に変化させると共に、酸素センサの出力にその変化に対応した適正な変化が生ずるか否かを見ることにより、酸素センサが正常に作動しているか否かを正確に判断することができる。
【0005】
【特許文献1】
特許第3134698号公報
【特許文献2】
特開2001−329832号公報
【特許文献3】
特公平7−42884号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内燃機関の排気通路には、触媒の下流側にも酸素センサが配置されることがある。具体的には、例えば、2つのセンサを用いた高精度な空燃比フィードバック制御を実現するために、触媒の上流および下流の双方に酸素センサが配置されることがある。また、内燃機関の排気通路には、2つの触媒が直列に配置されることがあり、このような構成においては、下流触媒に流入する排気ガスの状態を検知するために、下流側の触媒の上流、つまり、上流側の触媒の下流に酸素センサが配置されることがある。
【0007】
触媒の下流における排気空燃比は、その上流における排気空燃比が如何なる値であっても、触媒が浄化作用を発揮する期間中は、ほぼ理論空燃比となる。この場合、下流側の酸素センサが正常であっても、そのセンサ出力は、触媒上流の排気空燃比に追従した変化は示さない。このため、上述した従来のシステムが用いる異常検出の手法では、触媒の下流に配置される下流酸素センサの異常を正確に検出することはできない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、触媒下流に配置される排気ガスセンサの異常を正確に検出することのできる排気ガスセンサの異常検出装置を提供することを目的とする。
より具体的には、本発明は、触媒下流に配置された排気ガスセンサから発せられる出力が、そのセンサの置かれた環境をも考慮したうえで適正であるか否かを見ることにより、そのセンサの異常を正確に検出することのできる排気ガスセンサの異常検出装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの温度を検知するセンサ温度検知手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、第1の温度下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第1の状態判定手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、前記第1の温度より高温の第2の温度下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第2の状態判定手段と、
前記第1の状態判定手段による判定結果と、前記第2の状態判定手段による判定結果とを考慮して、前記排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第1の温度を含まず前記第2の温度を含む温度領域を常用時の目標温度領域として、前記排気ガスセンサの温度を制御するセンサ温度制御手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段を備えると共に、
前記第1の状態判定手段は、前記排気ガスセンサが第1の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定し、
前記第2の状態判定手段は、前記排気ガスセンサが、前記第1の吸入空気量より多量の第2の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定することを特徴とする。
【0012】
また、第4の発明は、内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、第1の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第1の状態判定手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、前記第1の吸入空気量より多量の第2の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第2の状態判定手段と、
前記第1の状態判定手段による判定結果と、前記第2の状態判定手段による判定結果とを考慮して、前記排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記第1の状態判定手段により前記排気ガスセンサの異常が認められた場合に、前記第2の状態判定手段による判定を要求する本判定要求手段を備え、
前記異常判定手段は、前記第1の状態判定手段、および前記第2の状態判定手段の双方で異常が判定された場合に、前記排気ガスセンサの異常を判定することを特徴とする。
【0014】
また、第6の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記第2の状態判定手段により前記排気ガスセンサの異常が認められた場合に、前記第1の状態判定手段による判定を要求する本判定要求手段を備え、
前記異常判定手段は、前記第1の状態判定手段、および前記第2の状態判定手段の双方で異常が判定された場合に、前記排気ガスセンサの異常を判定することを特徴とする。
【0015】
また、第7の発明は、内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの温度を検知するセンサ温度検知手段と、
前記排気ガスセンサが前記アクティブ空燃比制御の実行中に発するセンサ出力の特性値を判定値と比較することにより当該排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
前記排気ガスセンサの温度に基づいて前記判定値を設定する判定値設定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
また、第8の発明は、第7の発明において、
吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段を備えると共に、
前記判定値設定手段は、前記排気ガスセンサの温度と吸入空気量とに基づいて、前記判定値を設定することを特徴とする。
【0017】
また、第9の発明は、内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気ガスセンサが前記アクティブ空燃比制御の実行中に発するセンサ出力の特性値を判定値と比較することにより当該排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
前記吸入空気量に基づいて前記判定値を設定する判定値設定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。図1に示す構成は、内燃機関10を備えている。内燃機関10には、吸気通路12および排気通路14が連通している。吸気通路12の端部にはエアフィルタ16が配置されている。エアフィルタ16の下流には、吸気通路12を流通する空気量、すなわち、吸入空気量Gaを検出するためのエアフロメータ18が配置されている。
【0020】
エアフロメータ18の下流には、スロットルバルブ20が設けられている。スロットルバルブ20の近傍には、スロットル開度TAを検出するスロットルセンサ22と、スロットルバルブ20が全閉となることでオンとなるアイドルスイッチ24とが配置されている。吸気通路12には、更に、内燃機関10の吸気ポートに燃料を噴射するための燃料噴射弁26が配置されている。
【0021】
排気通路14には、上流触媒28と下流触媒30とが直列に配置されている。これらの触媒は、内燃機関10が始動された後、所定の活性温度に達することにより排気ガスの浄化機能を発揮することができる。上流触媒28、および下流触媒30は、それぞれ酸素吸蔵容量(OSC:O2 Storage Capacitor)を有しており、その容量の範囲で酸素を吸蔵することができる。これらの触媒28,30は、排気ガス中にHCやCOなどの未燃成分が含まれている場合は、吸蔵している酸素を放出することでそれらの未燃成分を酸化し、また、排気ガス中に酸素やNOxなどが多く含まれている場合は、余剰な酸素を吸蔵し、触媒雰囲気を理論空燃比に保つことができる。上流触媒28および下流触媒30は、それぞれ上記の原理により排気ガスを浄化する。
【0022】
上流触媒28の上流には、空燃比センサ32が配置されている。空燃比センサ32は、排気ガス中の酸素濃度に応じた出力を発するセンサである。排気ガス中の酸素濃度は、排気空燃比と相関を有している。このため、空燃比センサ32によれば、上流触媒28に流入する排気ガス、つまり、内燃機関10から排出されてきた直後の排気ガスの空燃比を検出することができる。
【0023】
上流触媒28の下流、つまり、下流触媒30の上流には、下流酸素センサ34が配置されている。下流酸素センサ34は、排気ガス中に酸素が存在するか否かに応じて出力を大きく変化させるセンサである。排気ガス中には、排気空燃比がリッチである場合には酸素は残留しない。一方、排気空燃比がリーンである場合は排気ガス中の酸素が残留する。このため、下流酸素センサ34によれば、上流触媒28から流出してくる排気ガスがリッチであるかリーンであるかを正確に検出することができる。
【0024】
図1に示すシステムは、ECU(Electronic Control Unit)40を備えている。ECU40には、上述した各種のセンサからセンサ出力が供給されている。また、ECU40は、それらのセンサ出力に基づいて内燃機関10に供給すべき燃料量を算出し、その燃料量が噴射されるように燃料噴射弁26を制御することができる。
【0025】
本実施形態のシステムは、空燃比センサ32の出力、および下流酸素センサ34の出力に基づいて燃料噴射量の制御、すなわち、排気空燃比の制御などを実行する。このため、空燃比センサ32や下流酸素センサ34の異常は、速やかに検出できることが望ましい。
【0026】
空燃比センサ32の異常については、内燃機関10から排出される排気ガスの空燃比を強制的に変化させたうえで、その変化に追従した変化が空燃比センサ32の出力に表れるか否かを見ることで正確に判断することができる。つまり、ECU40は、エアフロメータ18により検出される吸入空気量Gaに対して、空燃比A/Fが変動するように燃料噴射量を決定しつつ、その変動に応じた変化が空燃比センサ32の出力に表れるか否かに応じて、空燃比センサ32が正常であるか否かを判断することができる。
【0027】
しかしながら、下流酸素センサ34の異常については、上記の手法によっては検出することができない。すなわち、吸入空気量Gaに対して燃料噴射量が上記の如く制御され、その結果上流触媒28に流入する排気ガスの空燃比が強制的に変動させられたとしても、下流酸素センサ34の周囲に導かれるのは、上流触媒28を通過した後の排気ガスである。上流触媒28を通過した後の排気ガスは、上流触媒28が浄化能力を発揮する限りは理論空燃比に維持される。このため、内燃機関10から排出される排気ガスの空燃比と、下流酸素センサ34のセンサ出力との間に相関が認められるか否かによっては、下流酸素センサ34が正常であるか否かを判断することはできない。そこで、本実施形態では、下流酸素センサ34の異常検出が要求される際には、下流酸素センサ34の周囲における排気空燃比を強制的に変動させるべく、以下に説明するアクティブ空燃比制御を実行することとした。
【0028】
[下流酸素センサの異常検出の原理説明]
図2は、ECU40が実行するアクティブ空燃比制御の内容を説明するためのタイミングチャートである。より具体的には、図2(A)は、上流触媒28に流入する排気ガスの空燃比(以下、「触媒前空燃比」と称す)がリッチであるかリーンであるかを表す波形を示す。また、図2(B)は、下流酸素センサ34のセンサ出力波形を示す。更に、図2(C)は、上流触媒28から流出して下流酸素センサ34の周囲に導かれる排気ガスの空燃比(以下、触媒後空燃比」と称す)の変化を示す。
【0029】
アクティブ空燃比制御の実行中は、先ず、触媒前空燃比が所定のリッチ空燃比またはリーン空燃比に維持される。図2(A)は、時刻t1以前において、触媒前空燃比がリッチ空燃比に維持されている状態を示している。触媒前空燃比がリッチ空燃比に維持されると、上流触媒28は、吸蔵酸素を放出して排気ガス中の未燃成分(HC、CO)の酸化を図る。上流触媒28中に吸蔵酸素が残存している期間中は、その下流には理論空燃比に浄化された排気ガスが流出する。従って、その間、触媒後空燃比はほぼ理論空燃比に維持される。
【0030】
触媒前空燃比がリッチに維持された結果、上流触媒28中の吸蔵酸素が全て消費されると、その後、上流触媒28の下流には、未燃成分を含むリッチな排気ガスが流出し始める。図2(C)は、時刻t1の直前に上流触媒28中の吸蔵酸素が全て消費され、その結果、触媒後空燃比が理論空燃比からリッチ空燃比に変化した状態を示している。
【0031】
触媒後空燃比が理論空燃比からリッチ空燃比に変化すると、下流酸素センサ34のセンサ出力は、図2(B)に示すようにリーン出力からリッチ出力に変化する。ECU40は、そのセンサ出力がリッチ出力であるかリーン出力であるかを判定するために、リーン判定値VLおよびリッチ判定値VRを用いている。より具体的には、ECU40は、下流酸素センサ34の出力が、リッチ判定値VRを超えると、そのセンサ出力がリッチ出力に変化したと判断し、一方、下流酸素センサ34の出力がリーン判定値VLを下回ると、そのセンサ出力がリーン出力に変化したと判断する。図2に示す時刻t1は、上記の基準に従って、下流酸素センサ34の出力がリッチ出力に変化したと判断された時刻である。
【0032】
アクティブ空燃比制御の実行中、ECU40は、下流酸素センサ34の出力がリッチ出力に変化したと判断すると、その時点で、上流触媒28の吸蔵酸素が使い果たされたと判断する。そして、ECU40は、その後、触媒前空燃比がリーンに反転するように、吸入空気量Gaに対する燃料噴射量の割合を変化させる。その結果、時刻t1の後、図2(A)に示すように、触媒前空燃比はリッチからリーンに反転する。
【0033】
触媒前空燃比がリッチからリーンに反転した後、その反転の影響を受けた排気ガスが上流触媒28の下流に流出してくるまでの期間(以下、「ガス輸送遅れ期間」と称す)は、触媒後空燃比がリッチに維持される。そして、ガス輸送遅れ期間が経過した後(図2における時刻t2の後)は、空燃比がリーンに反転した後に上流触媒28に流入し、その内部で処理された排気ガスが上流触媒28の下流に流出してくる。
【0034】
時刻t1において、上流触媒28は、全ての吸蔵酸素を放出した状態となっている。この状態で、上流触媒28に空燃比のリーンな排気ガスが流入すると、上流触媒28は、排気ガス中の余剰な酸素を吸蔵することで触媒雰囲気を理論空燃比に保ち、排気ガスを浄化する。このため、上記のガス輸送遅れ期間が経過した後に、つまり、図2に示す時刻t2の後に上流触媒28の下流に流出してくる排気ガスの空燃比は、再び理論空燃比の近傍値となる。
【0035】
アクティブ空燃比制御の実行中は、以後、触媒前空燃比がリーンに維持される。触媒前空燃比がリーンに維持されている期間中、上流触媒28は、酸素吸蔵能力一杯に酸素を吸蔵するまで、酸素を吸蔵し続ける。そして、上流触媒28に酸素吸蔵能力一杯の酸素が吸蔵されると、その後、上流触媒28の下流には、酸素を含むリーンな排気ガスが流出し始める。
【0036】
図2に示す時刻t3は、上流触媒28の下流にリーンな排気ガスが流出し始めた時刻を示し、また、時刻t4は、下流酸素センサ34の出力がリーン判定値VLを下回り、ECU40により、排気ガスがリーンであることが認識された時刻である。尚、触媒後空燃比が理論空燃比近傍に維持される期間は、上流触媒28が適正に浄化能力を発揮する期間であり、その長さは上流触媒28の酸素吸蔵能力に対応している。
【0037】
以後、アクティブ空燃比制御の実行が継続される限り、上述した処理、つまり、下流酸素センサ34の出力反転を受けて触媒前空燃比を強制的に反転させる処理が繰り返し実行される。その結果、アクティブ空燃比制御の実行中は、図2(C)に示すように、触媒後空燃比が、周期的にリッチ空燃比およびリーン空燃比となる。このような状況下では、下流酸素センサ34が正常であれば、その出力は、図2(B)に示すように、リッチ出力とリーン出力との間で周期的な変化を繰り返す。従って、本実施形態のシステムによれば、アクティブ空燃比制御の実行と合わせて、下流酸素センサ34の出力が正常にリッチ出力とリーン出力を交互に出力しているか否かを見ることにより、下流酸素センサ34の異常を精度良く検出することができる。
【0038】
[下流酸素センサの劣化の影響]
次に、下流酸素センサ34の劣化が、アクティブ空燃比制御の実行中におけるセンサ出力にどのように影響するかについて説明する。
図3は、アクティブ空燃比制御の実行中に、触媒後空燃比の反転に伴って下流酸素センサ34の出力に生ずる変化の様子を説明するための図である。図3において、実線で示す波形は、下流酸素センサ34が正規の出力特性を示す場合の波形である。また、図3中に一点鎖線或いは破線で示す波形は、それぞれ、出力が縮小するように劣化した下流酸素センサ34の出力波形、および応答性の劣化した下流酸素センサ34の出力波形である。
【0039】
下流酸素センサ34には、出力を縮小させる劣化と、応答性に関する劣化が生ずることがある。前者の劣化は、センサ出力の最大値Vmaxを低下させ、かつ、その最小値Vminを上昇させる形で表れる。また、後者の劣化は、触媒後空燃比の変化に対する下流酸素センサ34の出力応答性を悪化させる形で表れる。
【0040】
アクティブ空燃比制御の実行中は、既述した通り、触媒後空燃比がリッチまたはリーンに変化すると、その後、下流酸素センサ34の出力がその変化に追従するように変化すると共に、触媒前空燃比がその変化とは逆向きにリーンまたはリッチに反転される。従って、下流酸素センサ34の応答性が悪いと、そのセンサ出力が十分に変化する前に触媒後空燃比が理論空燃比に向かって変化し始め、その結果、センサ出力の最大値Vmaxは正常時より小さな値となり、また、その最小値Vminは正常時より大きな値となる。
【0041】
つまり、下流酸素センサ34に劣化が生じた場合は、その劣化が出力の縮小であっても応答性の悪化であっても、アクティブ空燃比制御の実行中におけるセンサ出力の最大値Vminおよび最小値Vminは、両者の差が縮小するように変化する。従って、下流酸素センサ34に劣化が生じているか否かは、センサ出力の最大値Vmaxおよび最小値Vminがどの程度の値に到達しているかを見ることにより、或いは、そのセンサ出力の振幅がどの程度の大きさであるかを見ることで判断することができる。
【0042】
[センサ出力の温度特性の影響]
ところで、下流酸素センサ34の出力特性は、温度に対する依存性を有している。
図4は、下流酸素センサ34の静的なセンサ出力とセンサ素子温との関係、つまり、排気空燃比を一定に維持した場合に得られるセンサ出力とセンサ素子温との関係を示す。図4において、符号Vmaxを付して示す曲線は、下流酸素センサ34の周囲を所定のリッチ空燃比に維持した場合に得られるセンサ出力の変化を、また、符号Vminを付して示す極性は、その周囲を所定のリーン空燃比に維持した場合に得られるセンサ出力の変化を示す。更に、符号Vaを付して示す曲線は、VmaxとVminとの差、つまり、下流酸素センサ34の出力に生じ得る振幅の変化を示す。
【0043】
図4に示すように、センサ出力の最大値Vmaxは、センサ素子温が400℃程度である場合に最大となり、その後、センサ素子温が上昇するに連れて低下する傾向を示す。一方、センサ出力の最小値Vminは、図示される温度領域では、センサ素子温が上昇するほど小さな値となる。そして、振幅Vaは、600℃近傍において最大となるような変化を示す。
【0044】
図5は、下流酸素センサ34の動的な出力特性とセンサ素子温との関係、より具体的には、下流酸素センサ34の応答性とセンサ素子温との関係を示す。この図において、縦軸は、正しくは下流酸素センサ34の応答遅れを示している。つまり、図5中に示す曲線は、下流酸素センサ34の応答性が、低温時ほど悪く、センサ素子温が上昇するに伴って改善されることを示している。
【0045】
アクティブ空燃比制御の実行中は、下流酸素センサ34の周囲で空燃比が反転されるため、下流酸素センサ34の出力には、その静的な特性と動的な特性の双方が反映される。つまり、アクティブ空燃比制御の実行中における下流酸素センサ34の出力特性は、図4に示す静的な特性に、図5に示す応答性に関する特性が加味されたものとなる。アクティブ空燃比制御の実行中における最大値Vmaxおよび最小値Vminは、既述した通りセンサの応答性が悪いほどそれぞれ小さな値および大きな値となる。このため、アクティブ空燃比制御の実行中における振幅Vaは、図4に示すより更に顕著に、低温側で小さく、高温側で大きくなる傾向を示す。
【0046】
ここで、下流酸素センサ34に、その出力を縮小させる劣化が生じた場合、つまり、図4に示す最大値Vmaxを低下させ、また、図4における最小値Vminを上昇させる劣化が生じた場合、アクティブ空燃比制御の実行中におけるセンサ出力には、図5に示す応答性の温度特性に起因して、その劣化の影響が低温領域においてより顕著に表れる。また、下流酸素センサ34に応答性を悪化させる劣化が生じた場合も、その劣化の影響は、低温領域において顕著に表れる。このように、アクティブ空燃比制御の実行中におけるセンサ出力には、センサ素子温が低いほど、下流酸素センサ34の劣化の影響が顕著に表れる。従って、下流酸素センサ34の異常を早期に検知するうえでは、センサ素子温が低い環境下でアクティブ空燃比制御を実行し、その結果正常なセンサ出力が得られるか否かを見ることが有効である。
【0047】
ところが、センサ素子温が低い領域は、下流酸素センサ34の状態が不安定な領域に他ならず、そのような領域では、下流酸素センサ34の出力特性に大きなばらつきが生じ易い。このため、異常検出のための処理を、センサ素子温の低い領域でのみ実行することとすると、下流酸素センサ34の本来の状態を適正に表していないセンサ出力に基づいて異常判定が実行されやすくなり、異常判定の精度を維持することができなくなる。
【0048】
これに対して、センサ素子温が高い領域は、下流酸素センサ34が安定状態を維持する領域である。このため、その領域では、センサ出力に劣化の影響は反映され難いものの、下流酸素センサ34の出力特性がばらつくのを十分に阻止することができる。そして、このような領域で異常判定を行うこととすれば、精度の高い判定を行うことができる。
【0049】
従って、本実施形態のシステムにおいて、下流酸素センサ34の異常を迅速に、かつ、精度良く検出するためには、センサ素子温の低い領域と高い領域の双方で適正なセンサ出力が得られているかを判定し、それら2つの判定結果を総合的に考慮して最終的な判断を下すことが望ましい。また、センサ素子温が低い領域と高い領域とでは、アクティブ空燃比制御の実行に伴って生ずるセンサ出力の最大値Vmaxや最小値Vmin、或いは振幅Vaが異なる。このため、2つの温度領域でそれぞれ正確な判定を行うためには、センサ出力が適正であるか否かを判断すべくそれらの特性値(Vmax、Vmin、Va)と比較される判定値は、何れの温度領域が用いられるかに応じて適宜設定されることが望ましい。
【0050】
本実施形態において、下流酸素センサ34の内部には、センサ素子を加熱するためのヒータが内蔵されている。ヒータのインピーダンスとセンサ素子温との間には相関が認められるため、ECU40は、そのインピーダンスを見ることでセンサ素子温を検知することができ、また、そのインピーダンスが目標値となるようにヒータへの供給電力を制御することでセンサ素子温を目標温度に制御することができる。
【0051】
そこで、本実施形態のシステムは、センサ素子温を2つの異なる温度(例えば、400℃と600℃)に制御し、それぞれのセンサ素子温で適正なセンサ出力が発せられているか否かを判定し、その結果得られた2つの判定結果から総合的に、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを判断することとした。また、それぞれのセンサ素子温での判定には、個々の判定に適した判定値を用いることとした。
【0052】
[具体的処理の説明]
図6は、上記の機能を実現するためにECU40が実行する異常検出ルーチンのフローチャートを示す。
図6に示すルーチンでは、先ず、下流酸素センサ34の異常検出が要求されているか否かが判別される(ステップ100)。
異常検出は、例えば、内燃機関10の始動直後など、予め決められている条件が成立する際に要求される。本ステップ100においてその実行が要求されていないと判別された場合は、以後速やかに今回の処理サイクルが終了される。
【0053】
ECU40は、異常検出の実行が要求されていない場合は、原則として、下流酸素センサ34のセンサ素子温を550〜600℃程度に制御して、所望の制御(燃料噴射量の制御、空燃比フィードバック制御など)を実行する。550〜600℃は、下流酸素センサ34が安定した出力特性を発揮する領域である。このような温度領域を常用域とすると、下流酸素センサ34に僅かな劣化が生じても、ECU40は、所望の制御を適正に実行し続けることが可能である。
【0054】
図6に示すルーチン中、上記ステップ100において、異常検出の実行が要求されていると判別された場合は、次に、下流酸素センサ34の目標温度が低温設定値(例えば400℃)に設定される(ステップ102)。
ECU40は、下流酸素センサ34のセンサ素子温が目標温度となるように、センサに内蔵されているヒータのインピーダンス制御を実行する。従って、本ステップ102の処理が実行されると、センサ素子温は、やがて低温設定値に制御される。
【0055】
図6に示すルーチンでは、次に、低温側異常検出処理が実行される(ステップ104)。
低温側異常検出処理では、下流酸素センサ34のセンサ素子温が低温設定値(400℃)とされた状態でアクティブ空燃比制御が実行され、その際に下流酸素センサ34が正常なセンサ出力を発するか否かが判断される。尚、本ステップ104において実行される処理については、後に図7を参照して詳細に説明する。
【0056】
低温側異常検出処理が終了すると、次に、下流酸素センサ34の目標温度が高温設定値(例えば600℃)に設定される(ステップ106)。
本ステップ106の処理が実行されることにより、下流酸素センサ34のセンサ素子温は、以後、高温設定値に制御される。
【0057】
次に、高温側異常検出処理が実行される(ステップ108)。
高温側異常検出処理では、下流酸素センサ34のセンサ素子温が高温設定値(600℃)とされた状態でアクティブ空燃比制御が実行され、その際に下流酸素センサ34が正常なセンサ出力を発するか否かが判断される。尚、本ステップ108において実行される処理は、上記ステップ104において実行される処理とほぼ同じであるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0058】
図6に示すルーチンでは、次に、低温側異常検出処理、および高温側異常検出処理の双方により、センサ出力の異常が判定されたか否かが判別される(ステップ110)。
その結果、双方の異常検出処理で共に異常判定がなされていると判別された場合は、下流酸素センサ34の異常が判定される(ステップ112)。
これに対して、少なくとも一方の異常検出処理により正常判定がなされていると判別された場合は、下流酸素センサ34が正常であると判定される(ステップ114)。
【0059】
以上説明した通り、図6に示すルーチンによれば、下流酸素センサ34が、低温設定値(400℃)に制御された状態で正常なセンサ出力を発するか否か、および高温設定値(600℃)に制御された状態で正常なセンサ出力を発するか否かを順次判定し、その2つの判定結果に基づいて下流酸素センサ34が正常であるか否かを判断することとしている。このため、本実施形態のシステムによれば、下流酸素センサ34の異常を精度良く検知することができる。
【0060】
ところで、図6に示すルーチンでは、低温側異常検出処理と高温側異常検出処理の双方で異常が認められる場合にのみセンサの異常を判定し、その他の場合にはセンサが正常であると判断することとしているが、最終的な結論の導出手法はこれに限定されるものではない。すなわち、最終的な結論は、2種類の判定結果から総合的に導出されればよく、例えば、一方の異常検出処理でのみ異常が判定される場合にセンサの仮異常を判定したり、或いは、それぞれの異常検出処理により異常が判定される頻度を求めて、その頻度に基づいて最終的な判断を下したりといった手法を用いることとしてもよい。
【0061】
既述した通り、ECU40は、通常時には、下流酸素センサ34のセンサ素子温を550〜600℃程度に制御する。550〜600℃の領域では、低温設定値(400℃)付近の領域に比して、下流酸素センサ34の状態が安定し、かつ、センサ劣化の影響がセンサ出力に表れ難い。このため、低温側異常検出処理でのみ異常判定がなされる(或いは繰り返される)場合に下流酸素センサ34の仮異常を判定し、その状態を車両の使用者に警報することとすれば、常用域で適正な制御が実行できるうちに下流酸素センサ34の劣化を早期検知するという機能を実現することも可能である。
【0062】
次に、図7を参照して、ECU40が、上記ステップ104において実行する低温側異常検出処理の詳細について説明する。
図7に示すルーチンでは、先ず、アクティブ空燃比制御の実行条件が成立しているか否かが判別される(ステップ120)。
その結果、上記の実行条件が成立していないと判別された場合は、アクティブ空燃比制御の停止指令が発せられた後(ステップ122)、今回の処理サイクルが終了される。
【0063】
一方、上記の実行条件が成立していると判別された場合は、アクティブ空燃比制御の実行指令が発せられる(ステップ124)。
ECU40は、本ステップ124の処理により、実行指令が発せられると、上述したアクティブ空燃比制御が実現されるべく、燃料噴射量等の制御を開始する。
【0064】
図7に示すルーチンでは、次に、下流酸素センサ34の出力Vsが、リッチ判定値VR以上であるか否かが判別される(ステップ126)。
その結果、センサ出力Vsがリッチ判定値VR以上であると判別された場合は、下流酸素センサ34が、リッチ出力を発していると判断することができる。この場合、先ず、出力最大値Vmaxがクリアされる(ステップ128)。
次いで、現在のセンサ出力Vsが、出力最大値Vmaxより大きいか否かが判別される(ステップ130)。
その結果、Vs>Vmaxが成立すると判別された場合は、そのセンサ出力Vsが、出力最大値Vmaxとして記憶される(ステップ132)。
一方、Vs>Vmaxが成立しないと判別された場合は、上記ステップ132の処理がジャンプされる。
【0065】
図7に示すルーチンでは、次に、センサ出力Vsが、リーン判定値VL以下に低下したか否かが判別される(ステップ134)。
本ステップ134において、Vs≦VLが成立しないと判別された場合は、再び上記ステップ130以降の処理が実行される。そして、ステップ130および132の処理は、本ステップ134において、Vs≦VLが成立すると判別されるまで繰り返される。
【0066】
上記ステップ134においてVs≦VLが成立すると判別された場合は、センサ出力Vsが、リッチ出力からリーン出力に変化したと判断することができる。つまり、この場合は、センサ出力Vsの最大値Vmaxが現時点で確定されたと判断することができる。図7に示すルーチンでは、この場合、以後、後述するステップ146の処理が実行される。
【0067】
図7に示すルーチン中、上記ステップ126において、下流酸素センサ34の出力Vsがリッチ判定値VR以上でないと判別された場合は、そのセンサ出力Vsがリーン判定値VL以下であるかが判別される(ステップ136)。
【0068】
その結果、センサ出力Vsがリーン判定値VL以下であると判別された場合は、下流酸素センサ34がリーン出力を発していると判断できる。この場合、先ず、出力最小値Vminがクリアされる(ステップ138)。
次いで、現在のセンサ出力Vsが、出力最小値Vminより小さいか否かが判別される(ステップ140)。
その結果、Vs<Vminが成立すると判別された場合は、そのセンサ出力Vsが、出力最小値Vminとして記憶される(ステップ142)。
一方、Vs<Vminが成立しないと判別された場合は、上記ステップ142の処理がジャンプされる。
【0069】
図7に示すルーチンでは、次に、センサ出力Vsが、リッチ判定値VR以上に上昇したか否かが判別される(ステップ144)。
本ステップ144において、Vs≧VRが成立しないと判別された場合は、再び上記ステップ140以降の処理が実行される。そして、ステップ140および142の処理は、本ステップ144において、Vs≧VRが成立すると判別されるまで繰り返される。
【0070】
上記ステップ144においてVs≧VRが成立すると判別された場合は、センサ出力Vsが、リーン出力からリッチ出力に変化したと判断することができる。つまり、この場合は、センサ出力Vsの最小値Vminが現時点で確定されたと判断することができる。図7に示すルーチンでは、この場合、以後、後述するステップ146の処理が実行される。
【0071】
上記ステップ134の条件、或いは上記ステップ144の条件が成立すると、次に、最大値Vmaxおよび最小値Vminの双方が演算済みであるか否かが判別される(ステップ146)。
その結果、未だ双方の演算は済んでいないと判別された場合は、再び上記ステップ120以降の処理が実行される。その結果、アクティブ空燃比制御の実行条件が成立している限り、最大値Vmaxおよび最小値Vminの双方が演算されるまで、上記ステップ120〜146の処理が繰り返される。
【0072】
上記ステップ146で、最大値Vmaxおよび最小値Vminの双方が演算済みであると判別されると、次に、センサ出力の振幅Va=Vmax−Vminが、低温側異常検出用判定値VthL以下であるか否かが判別される(ステップ148)。
既述した通り、下流酸素センサ34のセンサ出力は、センサ素子温に対して依存性を有しており、その振幅Vaは、下流酸素センサ34が正常であってもセンサ素子温が低いほど小さな値となる。本ステップ148で用いられる低温側異常検出用判定値VthLは、センサ素子温が低温設定値(400℃)に制御されている環境下で発生するべき最少の振幅値として予め定められた値である。従って、本ステップ148の処理によれば、下流酸素センサ34の温度特性をも考慮したうえで、低温設定値の温度環境下で下流酸素センサ34が適正に機能しているか否かを判断することができる。
【0073】
図7に示すルーチンでは、上記ステップ148において、Va≦VthLが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34の低温側異常が判定される(ステップ150)。
一方、上記ステップ148において、Va≦VthLが成立しないと判別された場合は、下流酸素センサ34が低温設定値の温度環境下で正常に機能していることが判定される(ステップ152)。
【0074】
以上説明した通り、図7に示すルーチンによれば、低温設定値(400℃)の温度環境下で生成されるセンサ出力の振幅Vaを、低温側異常検出用判定値VthLと比較することで、その温度環境下で下流酸素センサ34が正常に機能しているか否かを判断することができる。つまり、本実施形態のシステムは、低温側異常検出処理(図6中ステップ104)では、センサ出力の振幅Vaを低温側異常検出用判定値VthLと比較することにより下流酸素センサ34が正常に機能しているか否かを判断することができる。
【0075】
このシステムが、高温側異常検出処理(図6中ステップ108)として実行する処理は、低温側異常検出用判定値VthLが高温側異常検出用判定値VthHに変更されることを除き、図7に示す一連の処理と同様である。高温側異常検出用判定値VthHは、センサ素子温が高温設定値(600℃)に制御されている環境下で確保されるべき最少の振幅値として予め実験的に定められた値である。このような高温側異常検出処理によれば、下流酸素センサ34が高温設定値(600℃)の温度環境下で正常に機能しているか否かを正確に判断することができる。
【0076】
つまり、本実施形態のシステムでは、低温側異常検出処理では低温設定値を前提とした判定値VthLを用い、また、高温側異常検出処理では高温設定値を前提とした判定値VthHを用いることにより、センサ出力の温度特性に影響されることなく、それぞれの温度環境下で下流酸素センサ34が正常に機能しているか否かを正確に判断することができる。そして、このシステムでは、それらの判断を総合的に評価することにより、下流酸素センサ34に異常(劣化)が生じているか否かを、極めて精度良く判定することができる。
【0077】
ところで、上述した実施の形態1は、低温側異常検出処理、および高温側異常検出処理において、センサ出力の振幅Vaが正常値であるか否かに基づいて、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを判断することとしているが、その判断の基礎は振幅Vaに限定されるものではない。すなわち、その判断の基礎は、例えば、アクティブ空燃比制御の実行に伴って発生するセンサ出力の到達値(最大値Vmaxまたは最小値Vmin)であってもよい。
【0078】
図8は、センサ出力の到達値を判断の基礎とした低温側異常検出処理の一例のフローチャートを示す。図8に示すルーチンは、ステップ134または144の条件が成立した場合に、ステップ146および148の処理に代えて、ステップ160の処理が実行される点を除き、上記図7に示すルーチンと同様である。
【0079】
すなわち、図8に示すルーチンでは、ステップ134においてセンサ出力Vsがリーン判定値VL以下に変化したと判別された場合、或いは、ステップ144においてセンサ出力Vsがリッチ判定値VR以上に変化したと判別された場合に、センサ出力の最大値Vmaxが低温側第1判定値αLより小さいか否か、およびセンサ出力の最小値Vminが低温側第2判定値βより大きいか否かが判別される(ステップ160)。
【0080】
低温側第1判定値αLは、下流酸素センサ34が正規の出力特性(応答性および出力値)を示す場合に、低温設定値(400℃)の温度環境下でセンサ出力Vsが到達する最大値から、マージンを減じた値である。従って、本ステップ160において、Vmax<αLが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34が、正規の出力特性を示していないと判断することができる。また、低温側第2判定値βは、下流酸素センサ34が正規の出力特性(応答性および出力値)を示す場合に、低温設定値の温度環境下でセンサ出力Vsが到達する最小値に、マージンを加えた値である。従って、本ステップ160において、Vmax>βLが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34が、正規の出力特性を示していないと判断することができる。これに対して、本ステップ160において、それら2つの条件が何れも成立しないと判別された場合は、下流酸素センサ34が正規の出力特性を示していると判断できる。
【0081】
図8に示すルーチンでは、上記ステップ160において、Vmax<αLおよびVmax>βLの何れかが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34の低温側異常を判定すべくステップ150の処理が実行される。一方、それらの条件が何れも成立しないと判別された場合は、下流酸素センサ34が正常であることを表すべくステップ152の処理が実行される。
【0082】
以上説明した通り、図8に示すルーチンによれば、上記図7に示すルーチンの場合と同様に、下流酸素センサ34が、低温設定値の温度環境下で正常に機能しているか否かを正確に判定することができる。また、既述した低温側第1判定値αLおよび第2判定値βLを、それぞれ高温側第1判定値αHおよび第2判定値βHに変更して図8に示すルーチンを実行すれば、下流酸素センサ34が、高温設定値の温度環境下で正常に機能しているか否かを正確に判定することができる。従って、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かは、センサ出力の到達値(最大値Vmaxまたは最小値Vmin)を判断の基礎としても、正確に判定することができる。
【0083】
また、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを判断するための基礎は、アクティブ空燃比制御の実行中に表れるセンサ出力の応答性であってもよい。既述した通り、下流酸素センサ34の応答性は、劣化の一態様により悪化する。従って、センサ出力の応答性を基礎としても、下流酸素センサ34に劣化(異常)が生じているか否かを判断することは可能である。
【0084】
図9は、センサ出力の応答性を判断の基礎とした低温側異常検出処理の一例のフローチャートを示す。図9に示すルーチンは、ステップ126の条件が成立した場合に、ステップ128〜134,146および148の処理に代えて、ステップ170,172および178処理が実行される点、および、ステップ134の条件が成立した場合に、ステップ138〜148の処理に代えてステップ174〜178の処理が実行される点を除き、上記図7に示すルーチンと同様である。
【0085】
すなわち、図9に示すルーチンでは、ステップ126においてセンサ出力Vsがリーン判定値VL(図2(B)参照)を下回る値からその値VL以上の値に変化したと判別されると、センサ出力Vsがリッチ判定値VRに到達するまでの所要時間を計数すべく、カウンタCがインクリメントされる(ステップ170)。
【0086】
次に、下流酸素センサ34の出力Vsが、リッチ判定値VR(図2(B)参照)に達したか否かが判別される(ステップ172)。
本ステップ172において、Vs≧VRが成立すると判別されるまで、上記ステップ170の処理が繰り返し実行される。そして、Vs≧VRが成立すると判別された場合は、以後、後述するステップ178の処理が実行される。上記の処理によれば、下流酸素センサ34の出力Vsがリーン出力からリッチ出力に変化する過程において、その値Vsが、リーン判定値VLからリッチ判定値VRまで変化するのに要する時間をカウンタCに計数することができる。
【0087】
図9に示すルーチン中、ステップ136において、下流酸素センサ34の出力Vsが、リッチ判定値VRを上回る値から、その値VR以下の値に変化したと判別された場合は、センサ出力Vsがリーン判定値VLまで下降するのに要する時間を計数するために、カウンタCがインクリメントされる(ステップ174)。
【0088】
次に、下流酸素センサ34の出力Vsが、リーン判定値VLに達したか否かが判別される(ステップ176)。
本ステップ176において、Vs≦VLが成立すると判別されるまで、上記ステップ174の処理が繰り返し実行される。そして、Vs≦VLが成立すると判別されると、以後、後述するステップ178の処理が実行される。上記の処理によれば、下流酸素センサ34の出力Vsがリッチ出力からリーン出力に変化する過程において、その値Vsが、リッチ判定値VRからリーン判定値VLまで変化するのに要する時間をカウンタCに計数することができる。
【0089】
上記ステップ172の処理、或いは上記ステップ176の処理が終了すると、次に、カウンタCの計数値が低温側判定値CthL以上であるかが判別される(ステップ178)。
低温側判定値CthLは、下流酸素センサ34が低温設定値(400℃)の温度環境下で正規の応答性を示す場合に、センサ出力Vsがリーン判定値VLからリッチ判定値VRに変化する際に、或いはリッチ判定値VRからリーン判定値VLに変化する際に要する時間にマージンを加えた時間に相当する。従って、本ステップ178において、C≧CthLが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34が、正規の応答性を示していないと判断することができる。一方、その計数値Cが判定値CthL以上でないと判別された場合は、下流酸素センサ34が正規の応答性を示していると判断できる。
【0090】
図9に示すルーチンでは、上記ステップ178において、C≧CthLが成立すると判別された場合は、下流酸素センサ34の低温側異常を判定すべくステップ150の処理が実行される。一方、その条件が成立しないと判別された場合は、下流酸素センサ34が正常であることを表すべくステップ152の処理が実行される。
【0091】
以上説明した通り、図9に示すルーチンによれば、上記図7に示すルーチンの場合と同様に、下流酸素センサ34が、低温設定値の温度環境下で正常に機能しているか否かを正確に判定することができる。また、既述した低温側判定値CthLを高温側判定値CthHに変更して図9に示すルーチンを実行すれば、下流酸素センサ34が、高温設定値の温度環境下で正常に機能しているか否かを正確に判定することができる。従って、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かは、センサ出力の応答性を判断の基礎としても、正確に判定することができる。
【0092】
また、上述した実施の形態1では、下流酸素センサ34の異常検出が要求される場合に、常に低温側異常検出処理と高温側異常検出処理の双方を実行することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、何れの処理を優先的に実行し、その処理で異常が認められる場合にも他方の処理を実行することとしてもよい。
【0093】
図10は、低温側異常検出処理を優先させる場合に実行すべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。実施の形態1のシステムにおいては、ECU40に、上記図6に示すルーチンに代えて図10に示すルーチンを実行させることにより、低温側異常検出処理を、高温側異常検出処理に対して優先させることができる。
【0094】
図10に示すルーチンは、ステップ104と106の間にステップ180が挿入されている点、およびステップ108に続く処理がステップ110からステップ182に変更されている点を除き、図6に示すルーチンと同様である。
すなわち、図10に示すルーチンでは、ステップ104において低温側異常検出処理が終了した後に、その処理により低温側異常が判定されたか否かが判別される(ステップ180)。
【0095】
その結果、低温側異常が判定されていないと判別された場合は、その時点で下流側酸素センサ34が正常であると判断され、以後速やかにステップ114の処理が実行される。一方、低温側異常が判定されていると判別された場合は、その後、高温側異常検出処理を行うべくステップ106の処理が実行される。
【0096】
また、図10に示すルーチンでは、ステップ108において高温側異常検出処理が終了した後に、その処理により高温側異常が判定されたか否かが判別される(ステップ182)。
そして、高温側異常が判定されている場合は下流酸素センサ34の異常を判定すべくステップ112の処理が実行される。一方、高温側異常が判定されていない場合は下流酸素センサ34が正常であることを表すべく、ステップ114の処理が実行される。
【0097】
以上説明した通り、図10に示すルーチンによれば、低温側異常検出処理で異常が認められる場合にのみ高温側異常検出処理を実行して、下流酸素センサ34に真に異常が生じているかを確認することができる。低温側異常検出処理が実行される低温環境下では、下流酸素センサ34の異常が拡大される傾向にある。従って、低温側異常検出処理を優先して行うこととすれば、下流酸素センサ34の異常を早期に検知することが可能である。また、低温側異常検出処理により異常が認められない場合には、高温側異常検出処理により異常が認められる可能性は極めて低いと推定できる。このため、図10に示すルーチンによれば、センサ異常の早期検知に適した特性を損なうことなく、高温側異常検出処理が無駄に実行されるのを防いでECU40の演算負荷の軽減を実現することができる。
【0098】
図11は、高温側異常検出処理を優先させる場合に実行すべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。実施の形態1のシステムにおいては、ECU40に、上記図6に示すルーチンに代えて図11に示すルーチンを実行させることにより、高温側異常検出処理を、低温側異常検出処理に対して優先させることができる。
【0099】
図11に示すルーチンは、ステップ102,104および108と、ステップ106,108および182とが、それぞれ入れ替えられている点を除き、図10に示すルーチンと同様である。
図11に示すルーチンによれば、高温側異常検出処理で異常が認められる場合にのみ低温側異常検出処理を実行して、下流酸素センサ34に真に異常が生じているかを確認することができる。下流酸素センサ34は、低温設定値の温度環境下では不安定な状態となる。従って、低温側異常検出処理の判定結果は、高温側異常検出処理の判定結果と比較すると、その精度が低くなりがちである。
【0100】
図11に示すルーチンでは、高温側異常検出処理が優先して実行されるため、下流酸素センサ34に異常が生じている可能性が真に高い場合にのみ、確認的に低温側異常検出処理を実行することができる。このため、図11に示すルーチンによれば、高温側異常検出処理と低温側異常検出処理が共に実行される機会を十分に減らすことができ、図10に示すルーチンが実行される場合に比して、ECU40の演算負荷を更に軽減することができる。
【0101】
また、上述した実施の形態1においては、ECU40が、下流酸素センサ34のセンサ素子温を低温設定値、或いは高温設定値に制御したうえで、低温側異常検出処理、または高温側異常検出処理を実行することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、センサ素子温を積極的に制御することなく、センサ素子温が成り行きにより低温設定値、或いは高温設定値となった際に低温側異常検出処理、または高温側異常検出処理を実行することとしてもよい。
【0102】
図12は、センサ素子温を成り行きに任せる場合にECU40が実行すべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。実施の形態1のシステムにおいては、ECU40に、上記図6に示すルーチンに代えて図12に示すルーチンを実行させることにより、センサ素子温を成り行きに任せつつ、低温側異常検出処理および高温側異常検出処理の双方を適当に実行させることができる。尚、図12において、上記図6に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0103】
図12に示すルーチンでは、先ず、センサ素子温が低温設定値と一致しているか否かが判別される(ステップ190)。
その結果、両者が一致していないと判別された場合は、ステップ192および104の処理がジャンプされ、以後、速やかにステップ194以降の処理が実行される。
【0104】
一方、両者が一致していると判別された場合は、低温側異常検出処理による判定が、未だ実行されていないかが判別される(ステップ192)。
低温側異常検出処理による判定が既に実行されている場合は、その処理を再び実行する必要がない。従って、この場合は、ステップ104の処理がジャンプされ、以後、ステップ194以降の処理が実行される。
これに対して、未だ低温側異常検出処理による判定が実行されていないと判別された場合は、その判定を行うべく、ステップ104の処理が実行される。
【0105】
図12に示すルーチンでは、上記の処理に次いで、センサ素子温が高温設定値と一致しているか否かが判別される(ステップ194)。
その結果、両者が一致していないと判別された場合は、ステップ196および108の処理がジャンプされ、以後、速やかにステップ198以降の処理が実行される。
【0106】
一方、両者が一致していると判別された場合は、高温側異常検出処理による判定が、未だ実行されていないかが判別される(ステップ196)。
高温側異常検出処理による判定が既に実行されている場合は、その処理を再び実行する必要がない。従って、この場合は、ステップ108の処理がジャンプされ、以後、ステップ198以降の処理が実行される。
これに対して、未だ高温側異常検出処理による判定が実行されていないと判別された場合は、その判定を行うべく、ステップ108の処理が実行される。
【0107】
図12に示すルーチンでは、上記の処理に次いで、低温異常検出処理による判定と高温異常検出処理による判定とが共に終了しているか否かが判別される(ステップ198)。
その結果、未だ双方の判定が終了していないと判別された場合は、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを判断することなく、速やかに今回の処理サイクルが終了される。一方、双方の判定が既に終了していると判別された場合は、それらの判定結果から、下流酸素センサ34の状態を総合的に判断すべく、以後、ステップ110〜114の処理が実行される。
【0108】
以上説明した通り、図12に示すルーチンによれば、下流酸素センサ34のセンサ素子温が成り行きにより低温設定値、或いは高温設定値と一致したタイミングにおいて、低温異常検出処理、または高温異常検出処理を適宜実行することができる。このため、ECU40に図12に示すルーチンを実行させることによれば、例えば、内燃機関が始動された後、下流酸素センサ34の暖機が進行する過程において、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを精度良く判定することが可能である。
【0109】
尚、上述した実施の形態1においては、下流酸素センサ34が前記第1の発明における「排気ガスセンサ」に、低温設定値(400℃)が前記第1の発明における「第1の温度」に、高温設定値(600℃)が前記第1の発明における「第2の温度」に、それぞれ相当している。また、ECU40が、上流触媒28の上流における排気空燃比を制御すべく燃料噴射量を制御することにより前記第1の発明における「排気空燃比制御手段」が、アクティブ空燃比制御を実行することにより前記第1の発明における「アクティブ空燃比制御手段」が、下流酸素センサ34のインピーダンスに基づいてそのセンサ素子温を検知することにより前記第1の発明における「センサ温度検知手段」が、上記ステップ104の処理を実行することにより前記第1の発明における「第1の状態判定手段」が、上記ステップ108の処理を実行することにより前記第1の発明における「第2の状態判定手段」が、上記ステップ110〜114の処理を実行することにより前記第1の発明における「異常判定手段」が、それぞれ実現されている。
【0110】
また、上述した実施の形態1においては、550〜600℃が前記第2の発明における「常用時の目標温度領域」に相当していると共に、ECU40が、異常検出の実行が要求されていない状況下で、原則としてセンサ素子温をその温度領域に制御することにより前記第2の発明における「センサ温度制御手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態1においては、ECU40に、図10に示すルーチン中で上記ステップ180の処理を実行させることにより前記第5の発明における「本判定要求手段」を実現することができる。また、ECU40に、図11に示すルーチン中で上記ステップ182の処理を実行させることにより前記第6の発明における「本判定要求手段」を実現することができる。
【0111】
実施の形態2.
次に、図13および図14を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態のシステムは、上述した実施の形態1のシステムにおいて、ECU40に、上記図6に示すルーチン(およびそのルーチンの中で実行される低温側異常検出ルーチン(図7)並びに高温側異常検出ルーチン)に代えて、図13に示すルーチンおよび図14に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0112】
既述した通り、実施の形態1のシステムは、下流酸素センサ34の状態を、低温設定値の温度環境下と高温設定値の温度環境下の双方で判定する。そして、それぞれの温度環境下で異なる判定値を用いることにより、センサ出力の温度特性の影響を排除することとしている。これに対して、本実施形態のシステムは、異常検出処理が実行されるべき温度環境を成り行きに任せ、その一方で、異常検出処理が実行される際のセンサ素子温に基づいて判定値を適宜設定することにより、センサ出力の温度特性の影響を排除することとしている。
【0113】
図13は、上記の機能を実現するために、本実施形態においてECU40が実行する。尚、図13において、上記図6に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
すなわち、図13に示すルーチンでは、先ず、異常検出の実行が要求されているか否かを判断すべく、ステップ100の処理が実行される。その結果、異常検出の実行が要求されていないと判別された場合は、以後速やかに今回の処理サイクルが終了される。
一方、上記ステップ100において異常検出の実行が要求されていると判別された場合は、その時点におけるセンサ素子温が検出される(ステップ200)。
【0114】
本実施形態において、下流酸素センサ34の異常は、実施の形態1の場合と同様に、アクティブ空燃比制御の実行中に適正なセンサ出力が発せられるか否かに基づいて判断される。そして、その判断は、実施の形態1の場合と同様に、センサ出力の振幅Va、到達値(Vmax、Vmin)、或いは応答性を基礎として行うことができる。以下、説明の便宜上、ここでは振幅Vaを基礎として下流酸素センサ34の異常を判定する例について説明する。
【0115】
アクティブ空燃比制御の実行中に下流酸素センサ34から発せられるセンサ出力の振幅Vaは、既述した通り温度に対して依存性を有している。本実施形態において、ECU40は、正常な下流酸素センサ34により実現される振幅Vaとセンサ素子との関係を定めたマップを記憶している。そして、上記ステップ200の処理が終了すると、そこで検出されたセンサ素子温に対応する振幅Vaが上記マップから読み出され、その読み出された値が今回の処理サイクルで用いるべき判定値として設定される(ステップ202)。
以後、このようにして設定された判定値を用いて、異常検出処理が実行される(ステップ204)。
【0116】
図14は、上記204において実行される異常検出処理の詳細を説明するためのフローチャートを示す。図14に示すルーチンは、ステップ148〜152が、ステップ210〜214に変更されている点を除き、図7に示す低温側異常検出ルーチンと同様である。以下、両者が相違する点を中心に図14に示すルーチンを説明する。
【0117】
すなわち、図14に示すルーチンでは、ステップ146においてセンサ出力の最大値Vmaxおよび最小値Vminの双方が演算済みであると判別されると、その後、振幅Va=Vmax−Vminが、判定値Vth(T)より小さいか否かが判別される(ステップ210)。
【0118】
上記ステップ210で用いられる判定値Vth(T)は、図13に示すルーチン中、上記ステップ202の処理により設定された値、つまり、現在のセンサ素子温に対して設定された判定値である。従って、Va≦Vth(T)が成立すると判別された場合は、現在のセンサ素子温の下、センサ出力の振幅Vaが正常値に達していないと判断することができる。図14に示すルーチンでは、この場合、下流酸素センサ34の異常が判定される(ステップ212)。
【0119】
一方、Va≦Vth(T)が成立しないと判別された場合は、現在のセンサ素子温の下、センサ出力の振幅Vaが正常値に達していると判断することができる。図14に示すルーチンでは、この場合、下流酸素センサ34が正常であるとの判定がなされる(ステップ214)。
【0120】
以上説明した通り、図13に示すルーチンおよび図14に示すルーチンによれば、下流酸素センサ34の異常検出が要求された際に、その時点におけるセンサ素子温に基づいて適切な判定値Vth(T)を設定したうえで、下流酸素センサ34から正常な振幅Vaを伴うセンサ出力が発せられているか否かを判断することができる。このため、本実施形態のシステムによれば、センサ素子温を特定の温度に制御することなく、センサ出力の温度特性に影響されることのない正確な異常検出を実現することができる。
【0121】
ところで、上記の例では、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かをセンサ出力の振幅Vaを基礎として判断することとしているが、その基礎となる特性値は、既述した通りセンサ出力の到達値(最大値Vmax、Vmin)、或いは応答性であっても良い。このような変形例は、ECU40に、上記図14に示すルーチンに代えて、図8に示すルーチンに適当な修正を施したもの、或いは図9に示すルーチンに適当な修正を施したものを実行させることにより実現することができる。
【0122】
尚、上述した実施の形態2においては、下流酸素センサ34が前記第7の発明における「排気ガスセンサ」に相当している。また、ECU40が、上流触媒28の上流における排気空燃比を制御すべく燃料噴射量を制御することにより前記第7の発明における「排気空燃比制御手段」が、アクティブ空燃比制御を実行することにより前記第7の発明における「アクティブ空燃比制御手段」が、下流酸素センサ34のインピーダンスに基づいてそのセンサ素子温を検知することにより前記第7の発明における「センサ温度検知手段」が、上記ステップ210の処理を実行することにより前記第7の発明における「異常判定手段」が、上記ステップ202の処理を実行することにより前記第7の発明における「判定値設定手段」が、それぞれ実現されている。
【0123】
実施の形態3.
次に、図15乃至図18を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態のシステムは、実施の形態1の場合と同様に、図1に示す構成を用いて実現することができる。但し、本実施形態において、ECU40は、実施の形態1の場合と異なり、下流酸素センサ34のヒータをインピーダンス制御する機能を有していないものとする。つまり、本実施形態において、下流酸素センサ34のヒータは、ECU40によりオープン制御されているものとする。
【0124】
下流酸素センサ34のヒータがオープン制御される場合、センサ素子温は、排気温の変化と共に上下する。より具体的には、そのセンサ素子温は、排気温が高い場合には高温となり、排気温が低い場合には低温となる。内燃機関の排気温と吸入空気量Gaとの間には、フューエルカット中などの特殊な場合を除き大きな相関が認められる。このため、ヒータがオープン制御される場合のセンサ素子温は、結局、吸入空気量Gaの増減に対応した変化を示す。従って、本実施形態のシステムでは、吸入空気量GAがセンサ素子温の代替値としての意味を有することとなる。
【0125】
図15および図16は、上記図4および図5に示すセンサ特性を、吸入空気量との関係で書き直した図である。本実施形態では、吸入空気量Gaがセンサ素子温の代替値としての意味を有するため、下流酸素センサ34の静的特性(図4)、および動的特性(図5)は、それぞれ図15および図16に示すように表すことができる。
【0126】
図17は、本実施形態のシステムにおいて、上述した実施の形態1の場合と同様の機能を実現するためにECU40に実行させるべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。ECU40が図17に示すルーチンを実行する場合、厳密には、ECU40が、上記図12に示すルーチンを実行する場合(センサ素子温を成り行きに任せる変形例の場合)と同様の機能を実現することができる。
【0127】
図17に示すルーチンは、ステップ190がステップ220に変更されている点、およびステップ194がステップ222に変更されている点を除き、上記図12に示すルーチンと同様である。
つまり、図12に示すルーチンでは、既述した通り、センサ素子温が低温設定値(400℃)と一致する場合に(ステップ190)低温側異常検出処理(ステップ104)が実行され、また、センサ素子温が高温設定値(600℃)と一致する場合(ステップ194)に高温側異常検出処理(ステップ108)が実行される。
これに対して、図17に示すルーチンでは、吸入空気量Gaが低温設定値(400℃の代替値)と一致する場合に(ステップ220)低温側異常検出処理(ステップ104)が実行され、また、吸入空気量Gaが高温設定値(600℃の代替値)と一致する場合(ステップ222)に高温側異常検出処理(ステップ108)が実行される。
【0128】
本実施形態では、吸入空気量Gaがセンサ素子温の代替値としての意味を有するため、図17に示すルーチンによれば、図12に示すルーチンと全く同じ機能を実現することができる。従って、ECU40に、図17に示すルーチンを実行させれば、吸入空気量Gaが成り行きで変化する過程において、低温側異常検出処理と高温側異常検出処理とを適宜実行させることができ、更に、それらの処理の結果から、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを総合的に精度良く判断することができる。
【0129】
図18は、本実施形態のシステムにおいて、上述した実施の形態2の場合と同様の機能を実現するためにECU40に実行させるべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。
図18に示すルーチンは、ステップ200および202がステップ230および232に変更されている点を除き、上記図13に示すルーチンと同様である。
つまり、図13に示すルーチンでは、既述した通り、異常検出の実行が要求された際に、センサ素子温に基づいて、そのセンサ素子温の下で用いられるべき判定値が設定される。(ステップ202)。
これに対して、図18に示すルーチンでは、異常検出の実行が要求されると、その時点における吸入空気量Gaが検出され(ステップ230)、その吸入空気量Gaに基づいて、その時点で用いられるべき判定値が設定される(ステップ232)。
【0130】
本実施形態では、吸入空気量Gaがセンサ素子温の代替値としての意味を有するため、図18に示すルーチンによれば、図13に示すルーチンと全く同じ機能を実現することができる。従って、ECU40に、図18に示すルーチンを実行させれば、吸入空気量Gaが成り行きで変化し、その変化に伴ってセンサ素子温が適当に変化する過程において、常に適正な判定値を設定し、常に精度良く下流酸素センサ34の異常を検出することができる。
【0131】
尚、上述した実施の形態3においては、下流酸素センサ34が前記第4の発明における「排気ガスセンサ」に、エアフロメータ18が前記第4の発明における「吸入空気量検出手段」に、低温設定値(400℃代替値)が前記第4の発明における「第1の吸入空気量」に、高温設定値(600℃代替値)が前記第4の発明における「第2の吸入空気量」に、それぞれ相当している。また、ECU40が、上流触媒28の上流における排気空燃比を制御すべく燃料噴射量を制御することにより前記第1の発明における「排気空燃比制御手段」が、アクティブ空燃比制御を実行することにより前記第1の発明における「アクティブ空燃比制御手段」が、図17に示すルーチン中で上記ステップ104、108および110〜114の処理を実行することにより、前記第4の発明における「第1の状態判定手段」、「第2の状態判定手段」、および「異常判定手段」が、それぞれ実現されている。
【0132】
また、上述した実施の形態3においては、下流酸素センサ34が前記第9の発明における「排気ガスセンサ」に、エアフロメータ18が前記第9の発明における「吸入空気量検出手段」に、それぞれ相当している。また、ECU40が、上流触媒28の上流における排気空燃比を制御すべく燃料噴射量を制御することにより前記第1の発明における「排気空燃比制御手段」が、アクティブ空燃比制御を実行することにより前記第1の発明における「アクティブ空燃比制御手段」が、図18に示すルーチン中で上記ステップ204、および232の処理を実行することにより前記第9の発明における「異常判定手段」および「判定値設定手段」が、それぞれ実現されている。
【0133】
実施の形態4.
次に、図19乃至22を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。本実施形態のシステムは、実施の形態1の場合と同様に、図1に示す構成を用いて実現することができる。本実施形態のシステムは、実施の形態1の場合と同様に、ECU40が、下流酸素センサ34のヒータをインピーダンス制御する機能を有しており、この点において実施の形態3のシステムと相違している。
【0134】
下流酸素センサ34のヒータがインピーダンス制御されている場合、センサ素子温が一定になるようにヒータへの供給電力が制御される。従って、本実施形態のシステムでは、排気温の変化がそのままセンサ素子温の変化に反映されることはなく、吸入空気量Gaは、センサ素子温の代替値としての意味を有しない。しかしながら、このような状況下であっても、吸入空気量Gaは、下流酸素センサ34の特性に影響を与える。
【0135】
すなわち、下流酸素センサ34の出力は、センサ素子へのガスの当たりが強い(良好である)ほど本来の空燃比と合致する出力を発し、また、優れた応答性を示す。そして、センサ素子へのガスの当たりは、吸入空気量Gaが多いほど強く(良好と)なる。このため、下流酸素センサ34の出力は、吸入空気量Gaが増えるに従って大きな振幅Vaと、良好な応答性を示し易くなる。
【0136】
図19および図20は、センサ素子温が一定に制御された下流酸素センサ34の静的特性(到達値および振幅)および動的特性(応答性)をそれぞれ表した図である。本実施形態における下流酸素センサ34のセンサ特性は、吸入空気量Gaとの関係で、これらの図に示すように表すことができる。つまり、本実施形態のシステムでは、インピーダンス制御が行われるため、吸入空気量Gaをセンサ素子温の代替値として扱うことはできないが、変化の傾きに相違はあるものの、下流酸素センサ34の出力と吸入空気量Gaとの間には、実施の形態3において成立したもの(図15および図16参照)と類似した相関が認められる。
【0137】
[第1のシステム例の説明]
このため、本実施形態のシステムでも、吸入空気量Gaの少ない状況下での異常検出とその量Gaが多い状況下での異常検出とを組み合わせることにより、実施の形態1の場合と同様の原理で、下流酸素センサ34の異常判定精度を高めることができる。このような制御は、例えば、インピーダンス制御により下流酸素センサ34の素子温を一定に保ちつつ、上記図17に示すルーチンと同様の処理を行うことで実現することができる(但し、この場合、図17に示すルーチン中、「低温・・」として説明した部分は「少量・・」と、また、「高温・・」として説明した部分は「多量・・」と読み替えるものとする)。
【0138】
[第2のシステム例の説明]
更に、本実施形態のシステムでは、吸入空気量Gaが成り行きで変化する過程で、そのGaに応じた判定値を設定して異常検出処理を実行することで、実施の形態2の場合と同様の原理で、下流酸素センサ34の異常判定精度を高めることができる。このような制御は、例えば、インピーダンス制御により下流酸素センサ34の素子温を一定に保ちつつ、上記図18に示すルーチンと同様の処理を行うことで実現することができる(但し、この場合、判定値設定のためにステップ232で参照すべきマップは、実施の形態3で用いられるマップとは異なるものとする必要がある)。
【0139】
[第3および第4のシステム例の説明]
以上説明した2つの例は、インピーダンス制御によってセンサ素子温度が一定に制御されることを前提としたものである。これに対して、本実施形態のシステムでは、センサ素子温を実施の形態1または2の場合と同様に変化させつつ、更に吸入空気量Gaに対するセンサ出力の依存性を考慮して下流酸素センサ34の異常検出を行うことも可能である。つまり、実施の形態1の装置が、センサ素子温の異なる2つの状況下でそれぞれ異常検出を行うのに対して、本実施形態では、その異常検出の手法に、2つの状況下で吸入空気量Gaを異ならせる手法を組み合わせることが可能である。また、実施の形態2の装置が、センサ素子温に基づいて判定値を設定するのに対して、本実施形態では、その判定値をセンサ素子温と吸入空気量Gaの双方に基づいて設定することが可能である。
【0140】
[第3のシステム例で実行される処理の説明]
図21は、実施の形態1における異常検出の手法に、2つの状況下で吸入空気量Gaを異ならせる手法を組み合わせるためにECU40に実行させるべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。このルーチンは、図6に示す異常検出ルーチンに必要な修正を施したものであり、ステップ104の前段にステップ240が挿入されている点、およびステップ108の前段にステップ242が挿入されている点を除き、図6に示すルーチンである。
【0141】
すなわち、図21に示すルーチンでは、ステップ102において下流酸素センサ34の目標温度が低温設定値(600℃)に設定された後、吸入空気量Gaが少量設定値と一致しているか否かが判別される(ステップ240)。
ステップ240の処理は、その条件が成立するまで繰り返し実行される。吸入空気量Gaが少量設定値と一致するとの判断がなされると、以後、低温側異常検出処理を開始すべく、ステップ104の処理が実行される。
【0142】
また、図21に示すルーチンでは、ステップ106において下流酸素センサ34の目標温度が高温設定値(600℃)に設定された後、吸入空気量Gaが多量設定値と一致しているか否かが判別される(ステップ242)。
ステップ242の処理は、その条件が成立するまで繰り返し実行される。そして、吸入空気量Gaが多量設定値と一致するとの判断がなされると、以後、高温側異常検出処理を開始すべく、ステップ108の処理が実行される。
【0143】
以上説明した一連の処理によれば、低温側異常検出処理は、下流酸素センサ34の温度が低温設定値に制御され、かつ、吸入空気量Gaがほぼ少量設定値と一致する環境下で実行される。そして、この場合、低温側異常検出処理は、低温設定値、および少量設定値を前提とした判定値VthL、αLおよびβL、またはCthL(図7乃至図9参照)を用いて実行される。また、高温側異常検出処理は、下流酸素センサ34の温度が高温設定値に制御され、かつ、吸入空気量Gaがほぼ多量設定値と一致する環境下で実行される。そして、この場合、高温側異常検出処理は、高温設定値、および多量設定値を前提とした判定値VthH、αHおよびβH、またはCthHを用いて実行される。
【0144】
下流酸素センサ34の劣化の影響は、センサ素子温が低いほど拡大され易いことは既述した通りであるが、同様の傾向は、吸入空気量Gaについても成立する。つまり、下流酸素センサ34の出力特性には、吸入空気量Gaが少ないほど劣化の影響が顕著に表れる。一方で、下流酸素センサ34の特性は、センサ素子が高いほど安定し、その安定化の傾向は、吸入空気量Gaが増す場合にも表れる。従って、上記図21に示すルーチンによれば、センサ素子温および吸入空気量Gaの双方が劣化を拡大させ易い状況下で低温側異常検出処理を実行させ、かつ、それら双方がセンサ特性を安定化させる状況下で高温側異常検出処理を実行させることができる。このため、ECU40が図21に示すルーチンを実行する場合は、実施の形態1の場合に比して、下流酸素センサ34の異常を、更に早期に検知することが可能となり、かつ、その異常の発生を更に正確に判定することが可能である。
【0145】
ところで、上記図21に示すルーチンは、ステップ240および242の処理を図6に示すルーチンと組み合わせることで構成されているが、その組み合わせの基礎となるルーチンは図6に示すルーチンに限定されるものではない。すなわち、ステップ240および242は、実施の形態1の変形例として説明した図10乃至図12に示す何れのルーチンと組み合わせることとしてもよい。
【0146】
[第4のシステム例で実行される処理の説明]
図22は、実施の形態2における異常検出の手法に、吸入空気量Gaに応じて判定値を異ならせる手法を組み合わせるためにECU40に実行させるべき異常検出ルーチンのフローチャートを示す。このルーチンは、図13に示す異常検出ルーチンに必要な修正を施したものであり、ステップ200および202が、ステップ250および252に修正されている点を除き、図13に示すルーチンである。
【0147】
すなわち、図22に示すルーチンでは、ステップ100において下流酸素センサ34の異常検出が要求されていると判別されると、その後、下流酸素センサ34の温度と共に、吸入空気量Gaが検出される(ステップ250)。
次いで、センサ素子温と吸入空気量Gaに基づいて、今回の処理サイクルで用いるべき判定値が設定される(ステップ252)。
【0148】
ECU40は、図22に示すルーチンを実行する場合、その前提として、センサ出力が正常であるか否かを判別するための判定値を、センサ素子温および吸入空気量Gaとの関係で定めたマップを記憶している。上記ステップ252では、そのマップを参照して、現時点のセンサ素子温および吸入空気量Gaに対応する判定値が設定される。ECU40は、上記の手法で判定値を設定すると、以後、その判定値を用いて異常検出処理を行うべく、ステップ204の処理を実行する。
【0149】
以上説明した通り、図22に示すルーチンによれば、異常検出処理において用いるべき判定値を、下流酸素センサ34の温度と吸入空気量Gaの双方に基づいて設定することができる。このため、ECU40に、図22に示すルーチンを実行させる場合は、センサ素子温や吸入空気量Gaに対する依存性に関わらず、下流酸素センサ34に異常が生じているか否かを常に精度良く判定することができる。
【0150】
尚、上述した実施の形態4においては、「第1のシステム例」により前記第4の発明が、「第2のシステム例」により前記第9の発明が、「第3のシステム例」により前記第3の発明が、また、「第4のシステム例」により前記第8の発明が、それぞれ実現されている。
【0151】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
第1の発明によれば、触媒の下流に配置された排気ガスセンサが、第1の温度下で発する出力が適正であるか、および第2の温度下で発する出力が適正であるかを総合的に判断することでその異常判定を行うことができる。このため、本発明によれば、排気ガスセンサの温度依存性に影響されることなく、正確にその異常判定を行うことができる。
【0152】
第2の発明によれば、常用域として用いられる温度領域で排気ガスセンサが正常な特性を示しているか、および常用域より低い温度(第1の温度)で排気ガスセンサが正常な特性を示しているかを総合判断することで、そのセンサの異常を判定することができる。常用域より低い第1の温度下では、センサ特性の劣化が拡大されるため、その異常を早期に発見することができる。一方、第1の温度は、常用域ではないため、その温度で排気ガスセンサの異常が早期発見されても、その後、常用域では、排気ガスセンサを正常に機能させながら所望の制御を継続することができる。従って、本発明によれば、エミッション特性が大きく悪化する前に排気ガスセンサの異常を早期発見することができる。
【0153】
第3の発明によれば、触媒の下流に配置された排気ガスセンサが、第1の温度下、かつ、第1の吸入空気量下で発する出力が適正であるか、および第2の温度下、かつ、第2の吸入空気量下で発する出力が適正であるかを総合的に判断することでその異常判定を行うことができる。排気ガスセンサは、吸入空気量が多くガスの当たりが良好であるほど優れた応答性で正しい出力を発する。一方、吸入空気量が少なくガスの当たりが悪いほど、排気ガスセンサの特性劣化は拡大されて表れやすい。本発明によれば、センサ素子温および吸入空気量の双方が特性劣化を拡大させる環境下での判定と、その双方がセンサ特性を安定化させる環境下での判定とを総合判断することができるため、排気ガスセンサの異常を早期に、かつ正確に検知することができる。
【0154】
第4の発明によれば、触媒の下流に配置された排気ガスセンサが、第1の吸入空気量下で発する出力が適正であるか、および第2の吸入空気量下で発する出力が適正であるかを総合的に判断することでその異常判定を行うことができる。このため、本発明によれば、排気ガスセンサの特性が吸入空気量に対して有する依存性に影響されることなく、正確にその異常判定を行うことができる。
【0155】
第5の発明によれば、第1の温度下または第1の吸入空気量下で排気ガスセンサの異常が認められた場合に限り、第2の温度下または第2の吸入空気量下での排気ガスセンサの異常判定を行うことができる。この場合、センサ特性の劣化が拡大される環境下での判定が優先的に行われるため、無駄なく効率的に排気ガスセンサの異常を早期検知することができる。
【0156】
第6の発明によれば、第2の温度下または第2の吸入空気量下で排気ガスセンサの異常が認められた場合に限り、第1の温度下または第1の吸入空気量下での排気ガスセンサの異常判定を行うことができる。この場合、センサが安定した特性を示す環境下での判定が優先されるため、不安定な環境下で異常判定処理が無駄に実行されるのを有効に防ぐことができる。
【0157】
第7の発明によれば、排気ガスセンサの温度に基づいて、異常判定のための判定値を適宜変更することができる。このため、本発明によれば、排気ガスセンサの温度依存性に影響されることなく、そのセンサの異常を正確に判定することができる。
【0158】
第8の発明によれば、排気ガスセンサの温度と吸入空気量とに基づいて、異常判定のための判定値を適宜変更することができる。このため、本発明によれば、排気ガスセンサの温度および吸入空気量に対する依存性に影響されることなく、そのセンサの異常を正確に判定することができる。
【0159】
第9の発明によれば、吸入空気量に基づいて、異常判定のための判定値を適宜変更することができる。このため、本発明によれば、排気ガスセンサの吸入空気量に対する依存性に影響されることなく、そのセンサの異常を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1の装置が実行するアクティブ空燃比制御の内容を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1において、アクティブ空燃比制御の実行中に、触媒後空燃比の反転に伴って下流酸素センサの出力に生ずる変化の様子を説明するための図である。
【図4】下流酸素センサの出力の特性値(最大値Vmax、最小値Vmin、および振幅Va)をセンサ素子温との関係で表した図である。
【図5】下流酸素センサの応答性(応答遅れ)をセンサ素子温との関係で表した図である。
【図6】本発明の実施の形態1において実行される異常検出ルーチンの第1例のフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態1において低温側異常検出処理として実行される一連の処理の第1例のフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態1において低温側異常検出処理として実行される一連の処理の第2例のフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態1において低温側異常検出処理として実行される一連の処理の第3例のフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態1において実行される異常検出ルーチンの第2例のフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態1において実行される異常検出ルーチンの第3例のフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態1において実行される異常検出ルーチンの第4例のフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態2において実行される異常検出ルーチンのフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態2において異常検出処理として実行される一連の処理のフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態3のシステムにおける下流酸素センサの出力の特性値(最大値Vmax、最小値Vmin、および振幅Va)を吸入空気量との関係で表した図である。
【図16】本発明の実施の形態3のシステムにおける下流酸素センサの応答性(応答遅れ)を吸入空気量との関係で表した図である。
【図17】本発明の実施の形態3において実行される異常検出ルーチンの第1例のフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態3において実行される異常検出ルーチンの第2例のフローチャートである。
【図19】本発明の実施の形態4のシステムにおける下流酸素センサの出力の特性値(最大値Vmax、最小値Vmin、および振幅Va)を吸入空気量との関係で表した図である。
【図20】本発明の実施の形態4のシステムにおける下流酸素センサの応答性(応答遅れ)を吸入空気量との関係で表した図である。
【図21】本発明の実施の形態4において実行される異常検出ルーチンの第1例のフローチャートである。
【図22】本発明の実施の形態4において実行される異常検出ルーチンの第2例のフローチャートである。
【符号の説明】
10 内燃機関
12 吸気通路
14 排気通路
28 上流触媒
30 下流触媒
32 空燃比センサ
34 下流酸素センサ
Vs 下流酸素センサのセンサ出力
VR リッチ判定値
VL リーン判定値
Vmax 出力最大値
Vmin 出力最小値
Va センサ出力の振幅
Ga 吸入空気量
Claims (9)
- 内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの温度を検知するセンサ温度検知手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、第1の温度下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第1の状態判定手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、前記第1の温度より高温の第2の温度下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第2の状態判定手段と、
前記第1の状態判定手段による判定結果と、前記第2の状態判定手段による判定結果とを考慮して、前記排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする排気ガスセンサの異常検出装置。 - 前記第1の温度を含まず前記第2の温度を含む温度領域を常用時の目標温度領域として、前記排気ガスセンサの温度を制御するセンサ温度制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載の排気ガスセンサの異常検出装置。
- 吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段を備えると共に、
前記第1の状態判定手段は、前記排気ガスセンサが第1の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定し、
前記第2の状態判定手段は、前記排気ガスセンサが、前記第1の吸入空気量より多量の第2の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定することを特徴とする請求項1または2記載の排気ガスセンサの以上検出装置。 - 内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、第1の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第1の状態判定手段と、
前記排気ガスセンサが、前記アクティブ空燃比制御の実行中に、前記第1の吸入空気量より多量の第2の吸入空気量下で発するセンサ出力の特性値に基づいて、当該排気ガスセンサの状態を判定する第2の状態判定手段と、
前記第1の状態判定手段による判定結果と、前記第2の状態判定手段による判定結果とを考慮して、前記排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする排気ガスセンサの異常検出装置。 - 前記第1の状態判定手段により前記排気ガスセンサの異常が認められた場合に、前記第2の状態判定手段による判定を要求する本判定要求手段を備え、
前記異常判定手段は、前記第1の状態判定手段、および前記第2の状態判定手段の双方で異常が判定された場合に、前記排気ガスセンサの異常を判定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の排気ガスセンサの異常検出装置。 - 前記第2の状態判定手段により前記排気ガスセンサの異常が認められた場合に、前記第1の状態判定手段による判定を要求する本判定要求手段を備え、
前記異常判定手段は、前記第1の状態判定手段、および前記第2の状態判定手段の双方で異常が判定された場合に、前記排気ガスセンサの異常を判定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の排気ガスセンサの異常検出装置。 - 内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの温度を検知するセンサ温度検知手段と、
前記排気ガスセンサが前記アクティブ空燃比制御の実行中に発するセンサ出力の特性値を判定値と比較することにより当該排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
前記排気ガスセンサの温度に基づいて前記判定値を設定する判定値設定手段と、
を備えることを特徴とする排気ガスセンサの異常検出装置。 - 吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段を備えると共に、前記判定値設定手段は、前記排気ガスセンサの温度と吸入空気量とに基づいて、前記判定値を設定することを特徴とする請求項7記載の排気ガスセンサの異常検出装置。
- 内燃機関の排気通路に配置される触媒の下流に位置する排気ガスセンサの異常を検出するための装置であって、
前記触媒上流における排気空燃比を制御する排気空燃比制御手段と、
前記排気ガスセンサの出力がリッチ出力からリーン出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比に変化させ、また、前記排気ガスセンサの出力がリーン出力からリッチ出力に変化するのを受けて前記触媒上流の排気空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比に変化させるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気ガスセンサが前記アクティブ空燃比制御の実行中に発するセンサ出力の特性値を判定値と比較することにより当該排気ガスセンサの異常を判定する異常判定手段と、
前記吸入空気量に基づいて前記判定値を設定する判定値設定手段と、
を備えることを特徴とする排気ガスセンサの異常検出装置。
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