JP4362896B2 - 熱可塑性樹脂成形体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる成形体およびその製造方法に関し、詳しくは、剛性や耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂からなる成形体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は成形性に優れることから、押出成形や射出成形など種々の成形方法によって、フィルム、シートあるいは立体形状を有する構造体などの様々な形状に成形されて広く用いられている。昨今、環境問題への材料面での対応が要求されており、また、リサイクル性の向上も望まれている背景から、熱可塑性樹脂の適用範囲は拡大しており、特にポリオレフィン系樹脂、その中でもポリプロピレン系樹脂は、安価で性能が高く、環境適性に優れることから注目されている。
【0003】
しかしながら、熱可塑性樹脂は、材料として有する機械的強度に限界があるため、その適用範囲が限られるのが現状である。
そこで、熱可塑性樹脂の機械的強度を向上させるために、例えばフィルム分野においてはテンター法やチューブラー法などによって延伸加工することにより分子を配向させ、機械的強度を向上させる方法が一般的に行われている。
例えば、ポリプロピレン系樹脂では、Tダイ加工によって製膜したシートを適当な温度に加熱して、テンター法によって二軸延伸することにより、同じ材料の無延伸フィルムと比較して、機械的強度が飛躍的に向上したフィルムが得られることは公知である。しかしながら、この方法で得られるフィルムには厚みに限界がある。
【0004】
一方、射出成形法による成形体の分野では、機械的強度を向上させる方法としては、フィラーと呼ばれる無機材料やガラス繊維などを樹脂に配合する方法が一般的に用いられている。しかしながらこうした方法は樹脂材料のコストアップとなることはもちろん、その性能向上には限界があり、また樹脂のリサイクル性を制限することにもつながる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題、即ち本発明の目的は、フィラーやガラス繊維などを用いずとも剛性や耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂からなる成形体およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、剛性や耐衝撃性に優れた特定の積層体を成形体の一部に用いることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち本発明は、熱可塑性樹脂からなる成形体であって、熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム(α’)を少なくとも2枚積層してなる積層体(α)を該成形体の一部に配置してなる成形体、および熱可塑性樹脂からなる成形体であって、熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム(α’)を少なくとも2枚積層してなる積層体(α)からなる層と、それ以外の層とからなる成形体にかかるものである。また本発明は、これらの成形体の製造方法であって、積層体(α)を金型キャビティ内にセットし、このキャビティ内に加熱溶融した熱可塑性樹脂を注入し、冷却固化させ、双方を一体化する成形体の製造方法にかかるものである。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の成形体は、熱可塑性樹脂からなる成形体であって、熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム(α’)を少なくとも2枚積層してなる積層体(α)を、成形体の一部に配置してなる成形体である。
図1は、該第一の成形体の一例を示す図面である。図1において(a)は該成形体を真上から見た図であり、(b)は該成形体を斜め上方から見た図である。図1においては、熱可塑性樹脂からなる成形体11の一部に積層体(α)12を配置している。積層体(α)を剛性あるいは耐衝撃性の要求される部位に用いることにより、複雑な形状であっても剛性や耐衝撃性に優れた成形体を得ることができる。
【0008】
本発明の第二の成形体は、熱可塑性樹脂からなる成形体であって、熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム(α’)を少なくとも2枚積層してなる積層体(α)からなる層と、それ以外の層とからなる成形体であり、第一の成形体の実施態様のひとつである。
図2は、該第二の成形体の一例であって、2層からなる成形体21の形態を示す図面である。図2においては、積層体(α)からなる層22とそれ以外からなる層23とから構成されている。また図3は、該第二の成形体の他の一例であって、3層からなる成形体31の形態を示す図面である。図3においては、両側に積層体(α)からなる層32とその間にそれ以外からなる層33とから構成されている。
【0009】
図2や図3に示すように、積層体(α)が片側または両側の最外層に配置されていることにより、成形体の特徴である剛性や耐衝撃性を改善し、さらに意匠性や表面硬度に優れた成形体を得ることができるので好ましい。
【0010】
本発明で使用する積層体(α)は、熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム(α’)を少なくとも2枚積層してなる積層体である。本発明で使用する延伸フィルム(α’)は熱可塑性樹脂からなるものであり、好ましくは多層延伸フィルムである。延伸フィルム(α’)としてより好ましくは、融解主ピーク温度がTma(℃)である熱可塑性樹脂(A)からなる層と融解主ピーク温度がTmb(℃)である熱可塑性樹脂(B)からなる層との少なくとも2層から構成され、かつTma(℃)とTmb(℃)が、Tma<Tmb−5の関係を満たす多層延伸フィルムである。
【0011】
即ち、熱可塑性樹脂(A)の融解主ピーク温度Tma(℃)は、熱可塑性樹脂(B)の融解主ピーク温度Tmb(℃)よりも5℃を越えて低いことが好ましい。この関係を満たすことにより積み重ねた多層延伸フィルムを加熱によって融着させて一体化する際に十分な接着強度が得られるので好ましい。
延伸フィルム(α’)を複数枚積層し一体化の加工を容易にする観点からは、これらの関係は、Tma<Tmb−20の多層延伸フィルムであればさらに好ましい。
本発明でいう融解主ピーク温度(Tm)とは、示差走査熱量計を用いて得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピーク温度をいう。
【0012】
延伸フィルム(α’)としては、得られる積層体(α)の剛性と、積層体を構成する各フィルム間の接着強度とを考慮すると、両表面層および芯層の3層から構成される多層延伸フィルムであり、両表面層が前記熱可塑性樹脂(A)からなり、芯層が前記熱可塑性樹脂(B)からなるフィルムが好ましい。この場合、芯層と表面層の厚みの比率は、積層体(α)の剛性を高める観点から、(表面層:芯層:表面層)=1:2:1〜1:30:1程度であることが好ましい。また、必要に応じ、リサイクル樹脂層等を設けた四層以上の構成のフィルムとすることもできる。
【0013】
本発明で使用する積層体(α)を製造するために用いる延伸フィルム(α’)としては、種類の異なるものを組み合わせて用いることもできる。例えば、両表面層が前記熱可塑性樹脂(A)からなり、芯層が前記熱可塑性樹脂(B)からなる2種3層構成の多層延伸フィルムを所定の枚数積層し、最表面の延伸フィルム(α’)として前記熱可塑性樹脂(A)からなる層と、前記熱可塑性樹脂(B)からなる層との2種2層構成の多層延伸フィルムを用いて、積層体(α)の表面を前記熱可塑性樹脂(B)からなる層とすることが好適にされる。
【0014】
また、文字や色などが印刷されたフィルムを積層することも可能であり、意匠性に優れた成形体を得ることができる。さらには、耐候剤を添加したフィルムを積層することもできる。
【0015】
本発明で用いる延伸フィルム(α’)は、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムのいずれでもよい。
本発明で用いる延伸フィルム(α’)は、その延伸方向および延伸倍率を必要に応じて選定することができるが、得られる積層体の機械的性質に異方性が生じることを避ける観点からは、二軸延伸されることが望ましく、その倍率は、引き取り方向(MD方向)、横方向(TD方向:MD方向に直交する方向)、それぞれの方向に対して通常2〜10倍、好ましくは3〜9倍である。積層体(α)の剛性を高める観点からは、延伸倍率は高いほど望ましいが、安定的に延伸加工を行なうためには、例えばポリプロピレン系樹脂をテンター法で二軸延伸する場合、引き取り方向に5倍、横方向に8倍程度の延伸倍率が好ましい。
【0016】
このような延伸フィルム(α’)は、例えばTダイ法によって原反シートを得た後テンター法によって二軸延伸する方法、インフレーション法によって原反シートを得た後チューブラー法によって二軸延伸する方法、あるいは、Tダイ法によって原反シートを得た後ロール延伸機によって縦方向一軸延伸を行なう方法等によって製造される。また、同時二軸延伸型テンター法を適用することも可能である。
また多層延伸フィルムは、例えば共押出Tダイ法によって原反シートを得た後テンター法によって二軸延伸する方法、共押出インフレーション法によって原反シートを得た後チューブラー法によって二軸延伸する方法、あるいは、共押出Tダイ法によって原反シートを得た後ロール延伸機によって縦方向一軸延伸を行なう方法等によって製造される。また、同時二軸延伸型テンター法を適用することも可能である。
【0017】
延伸フィルム(α’)の厚みは任意に選択可能であるが、上記公知の方法によって製造される多層延伸フィルムの厚みは、通常10〜60μm程度である。
延伸フィルム(α’)の表面には、公知の表面処理、例えばコロナ放電処理などが施されてもよい。
【0018】
本発明で使用する積層体(α)は、かかる延伸フィルム(α’)を少なくとも2枚積層してなる積層体である。積層体(α)を構成する延伸フィルム(α’)の積層枚数は少なくとも2枚であるが、得ようとする積層体(α)の厚みに応じて積層する枚数を適宜選択できる。通常、積層体(α)の厚みは0.1〜5mm程度が好ましく、この場合、例えば厚みが40μmの延伸フィルム(α’)を用いると、積層する枚数は2〜125枚程度である。
【0019】
延伸フィルム(α’)を積層する方向は、特に限定されるものではなく、例えばすべて同じ方向でもよいし、あるいは1枚ごとに90度方向を変えるなどしてもよい。特に、一軸延伸フィルムのような異方性の強い延伸フィルムの場合は、積層する方向を適宜変えることによって得られる積層体(α)の異方性を制御することができる。
【0020】
延伸フィルム(α’)を重ねる方法は任意であり、フィルムを1枚ずつ切りとって所定の枚数積層することもできるが、紙管などに長尺巻いたフィルムの一箇所を切断してフィルムをMD方向に展開して所定枚数をそのまま採取する方法、フィルムをカセ巻きにしてそのまま採取する方法などが好ましい。
【0021】
そしてこれらを公知の装置を用いて加熱融着する方法により積層体(α)を製造できる。例えば、温調機能を備えた油圧プレス機、電動プレス機、あるいは射出成形機などで、該延伸フィルム(α’)を加熱しながら挟むことによって延伸フィルム(α’)を加熱融着することが可能である。所定の枚数積層した延伸フィルム(α’)は、通常、所定の大きさにカットされたものを用いるが、長尺の状態で連続的に装置に供給されてもよい。
【0022】
また、本発明の成形体に用いる積層体(α)は、少なくとも2枚の上記延伸フィルム(α’)を連続的に供給し、2本のロールの間で連続的に加熱融着して得ることもできる。この際、延伸フィルム(α’)として前記の熱可塑性樹脂(A)からなる層と熱可塑性樹脂(B)からなる層との少なくとも2層から構成される多層延伸フィルムを用いる場合には、延伸フィルム(α’)の加熱は、それぞれの延伸フィルム(α’)を赤外線ヒーターなどで、Tma−20(℃)以上、かつTmb(℃)以下の温度に予め加熱することが好ましい。
【0023】
本発明の成形体は熱可塑性樹脂からなる成形体であり、該熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(ブテン−1)系樹脂、ポリ(4−メチルペンテン−1)系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネー卜系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、PMMA系樹脂、ABS系樹脂などやこれらの変性物、ポリマーアロイ、あるいはこれらの混合物などの各種熱可塑性樹脂が挙げられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。
【0024】
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1などのα−オレフィンの単独重合体もしくは他のコモノマー(例えば該α−オレフィンとは異なるα−オレフィン)との共重合体などのポリオレフィン系樹脂がさらに製品使用後のリサイクル性に優れる点でさらに好ましい。
【0025】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂が好適な成形体を得るのに好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、例えばプロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体等が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えばエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の炭素原子数2もしくは4〜10のα−オレフィンが挙げられる。
【0026】
また、本発明で用いる熱可塑性樹脂には、必要に応じて各種添加剤、充填剤、例えば酸化防止剤、防曇剤、帯電防止剤、造核剤、紫外線吸収剤、顔料、タルク、マイカ、ガラスファイバー、ゴムなどを含ませることができる。また、本発明の妨げにならない範囲で他の熱可塑性樹脂をブレンドして使用してもよい。例えば、リサイクル樹脂などをブレンドすることもできる。
【0027】
特にポリプロピレン系樹脂には水添テルペン系樹脂、水添石油樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、クマロン樹脂、ロジンとその誘導体などの炭化水素系重合体を含有させることができる。これらの炭化水素系重合体を添加することによって延伸フィルム(α’)を製膜する際の延伸性が向上し、かつ得られる延伸フィルム(α’)の剛性が向上する。したがって、本発明の成形体の剛性をさらに向上させることができる。
炭化水素系重合体の含有量は、例えば1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%である。延伸フィルム(α’)として前記の熱可塑性樹脂(A)および(B)からなる多層延伸フィルムを用いる場合、炭化水素系重合体は、(A)および(B)の両層ともに添加することができるが、特に該(B)層に添加することが延伸フィルムの加工の容易性の点で好ましい。
【0028】
本発明の成形体において、積層体(α)とそれ以外の部分の材質が同一系の樹脂を用いることにより、製品使用後のリサイクル性に優れる点で好ましい。本発明の成形体として特に好ましくは、積層体(α)とそれ以外の部分とがポリオレフィン系樹脂からなる成形体であり、最も好ましくは積層体(α)とそれ以外の部分とがポリプロピレン系樹脂からなる成形体である。
【0029】
本発明の成形体は、予め任意の成形法により成形された積層体(α)を金型キャビティ内にセットし、このキャビティ内に加熱溶融した熱可塑性樹脂を注入し、冷却固化させ、双方を一体化することにより製造できる。これにより成形後に接着等の工程を省くことができ、剛性、耐衝撃性に優れた任意の形状の熱可塑性樹脂からなる成形体を効率的でかつ安価に提供することができる。
【0030】
本発明の成形体は各種用途に供することが可能であり、例えば自動車内外装部品、家電・弱電製品ハウジング、等その応用範囲は極めて広い。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
これら実施例および比較例において、各種の評価に用いられた試験法は以下の通りである。
【0033】
(1)射出成形条件
成形機:日精樹脂工業(株)製 FS160S25ASEN
成形品サイズ:100mm×400mm×3mm
シリンダー温度:220℃、金型温度:40℃
【0034】
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に従い、ポリプロピレン系樹脂は表1条件14に規定された方法に基づき測定した。
【0035】
(3)融解主ピーク温度(Tm)
ポリプロピレン系樹脂については、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC)を用いて、予め試料10mgを窒素雰囲気下で220℃で5分間溶融した後、5℃/分の降温速度で40℃まで降温した。その後、5℃/分で昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピーク温度を融解主ピーク温度(Tm)とした。
なお、本測定器を用いて5℃/分の昇温速度で測定したインジウム(In)の融解主ピーク温度は、156.6℃であった。
【0036】
(4)モノマー単位の含有量
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の615〜616ページに記載されている方法により、13C−NMR法で測定を行った。
【0037】
(5)曲げ弾性率
JIS−K−7203に規定された方法に基づき測定した。
【0038】
(6)耐衝撃性能
各成形体を100mm×100mmの大きさに切断し、所定の温度の恒温槽内に5時間放置した後、恒温槽内に設置したホルダー(開口部径50mmφ)に固定し、レオメトリクス社製ハイレートインパクト試験機RIT−8000を用いて、先端径5/8インチのダートで、試料を1m/秒の一定速度で打抜いた時の破壊エネルギー値を計測した。耐衝撃性に優れた材料は高い破壊エネルギー値を示し、耐衝撃性が劣る材料は低い破壊エネルギー値を示す。
【0039】
[実施例1]
プロピレン−エチレン共重合体(住友化学工業(株)製ノーブレンFS2011D、エチレン単位の含有量=0.4重量%、Tm=158℃)およびプロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体(住友化学工業(株)製WS709N、エチレン単位の含有量=3.0重量%、ブテン−1単位の含有量=7.7%、Tm=132℃)を用いて2種3層構成の多層延伸フィルムを製膜した。具体的には、三菱重工業(株)製共押出テンター装置を用いて次のように多層延伸フィルムを製膜した。まず、プロピレン−エチレン共重合体を65mmφ押出機にて230℃で溶融混練して、230℃に温調されたマルチマニホールド式Tダイの芯層に導き、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体を50mmφ押出機で同様に溶融混練して該Tダイの両表面層に導き、20℃に温調した冷却ロールで引取って厚さ900μm、層間の厚み比率1:20:1の2種3層原反シートを得た。この原反シートをロール延伸機に導き、原反シートを120℃に予熱した後、MD方向に5倍延伸した。さらに、これを157℃に温調したテンターに導き、TD方向に8倍延伸した。これらの工程を連続的に行うことにより、厚さ22μmの2種3層構成の二軸延伸された多層延伸フィルムを得た。
次に、MD×TD=30cm×30cmの大きさにカットした該多層延伸フィルムを45枚、同じ方向に積み重ね、これを125℃に温調した(株)新藤金属工業所製プレス機NF−37で2分間プレスして加熱融着し、厚さ1mmの積層体を得た。プレスの圧力は、フィルム1cm2あたり300Nとした。得られた積層体の曲げ弾性率はMD方向が2620MPaでありTD方向が4870MPaであった。
【0040】
この積層体を100mm×260mm×1mmに切出し、金型キャビティ壁面に密着させて型閉めを行い射出成形用樹脂を型内に供給して100mm×400mm×3mmの成形体を得た。なお、射出成形用樹脂はプロピレン−エチレンブロック共重合体(住友化学工業(株)製、住友ノーブレン AH561、エチレン単位の含有量=38重量%、MFR=3g/10分、23℃における曲げ弾性率1080MPa)を用いた。得られた積層成形体を射出成形用樹脂側からダートで打抜き耐衝撃性能を評価した。結果を表1に示す。
【0041】
[比較例1]
金型内に延伸フィルムの積層体を貼合せず、実施例1で用いたものと同じ射出成形用樹脂(AH561)を実施例1と同様に射出成形のみ実施して成形体を得た。得られた成形体をダートで打抜き耐衝撃性能を評価した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明によれば、フィラーやガラス繊維を用いずとも、剛性や耐衝撃性に優れた成形体が提供できる。さらに積層体(α)を片側または両側の最外層に配置することにより、意匠性や表面硬度に優れた成形体を得ることができる。また、本発明によれば、上記の優れた物性を奏する成形体を容易に効率的に製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の成形体の一例であって、成形体の一部に積層体(α)を配置した形態を示す図面である。図1において(a)は該成形体を真上から見た図であり、(b)は該成形体を斜め上から見た図である。
【図2】図2は本発明の成形体の一例であって、2層からなる成形体の形態を示す図面である。
【図3】図3は本発明の成形体の一例であって、3層からなる成形体の形態を示す図面である。
【符号の説明】
11・・・成形体
12・・・積層体(α)
21・・・成形体
22・・・積層体(α)の層
23・・・積層体(α)以外の層
31・・・成形体
32・・・積層体(α)の層
32・・・積層体(α)以外の層
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂からなる成形体であって、
融解主ピーク温度がTma(℃)である熱可塑性樹脂(A)からなる層と融解主ピーク温度がTmb(℃)である熱可塑性樹脂(B)からなる層との少なくとも2層から構成され、かつTma(℃)とTmb(℃)とが、Tma<Tmb−5の関係を満たす多層延伸フィルムを、少なくとも2枚積層し、Tma−20(℃)以上、かつTmb(℃)以下の温度で加熱融着することにより得られる積層体(α)を、該成形体の一部に配置してなることを特徴とする成形体。 - 前記積層体(α)は、前記成形体の片側又は両側の最外層に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
- 前記多層延伸フィルムにおいて、Tma(℃)とTmb(℃)とが、Tma<Tmb−20の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の成形体。
- 前記多層延伸フィルムは、二軸延伸フィルムである請求項1から3いずれかに記載の成形体。
- 前記多層延伸フィルムが、両表面層および芯層の3層から構成され、両表面層が前記熱可塑性樹脂(A)からなり、芯層が前記熱可塑性樹脂(B)からなる多層延伸フィルムであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の成形体。
- 前記芯層と表面層の厚みの比率(表面層:芯層:表面層)は、1:2:1〜1:30:1程度である請求項5に記載の成形体。
- 積層体(α)とそれ以外の部分とがポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の成形体。
- 熱可塑性樹脂からなる成形体の製造方法であって、
融解主ピーク温度がTma(℃)である熱可塑性樹脂(A)からなる層と融解主ピーク温度がTmb(℃)である熱可塑性樹脂(B)からなる層との少なくとも2層から構成され、かつTma(℃)とTmb(℃)とが、Tma<Tmb−5の関係を満たす多層延伸フィルムを、少なくとも2枚積層し、Tma−20(℃)以上、かつTmb(℃)以下の温度で加熱融着することにより得られる積層体(α)を、金型キャビティ内にセットし、このキャビティ内に加熱溶融した熱可塑性樹脂を注入し、冷却固化させ、双方を一体化することを特徴とする成形体の製造方法。
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