JP6944267B2 - ポリプロピレンシートおよびその成形体ならびにその製造方法 - Google Patents
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Description
[1]150μm以上の厚みを有するポリプロピレンシートであって、
シートの面内方向にX線を入射して測定した配向度Aが最大となる面内方向をX方向、これに直交する面内方向をY方向、シート面に垂直な方向をZ方向とするとき、
X方向にX線を入射して測定した配向度Axが85%以上、Y方向にX線を入射して測定した配向度Ayが80%以上であり、
Z方向にX線を入射して測定した強度の最大値IZ maxと最小値IZ minとの比IZ max/IZ minが5.0未満であり、
Z方向にX線を入射して測定したb軸配向の程度Kbが0.30以下であり、
X方向にX線を入射して得られる小角X線散乱の2次元プロファイルから求められる積分強度SX VとSX Lとの比SX V/SX Lが1.20以下である、シート。
[2]前記シートの表面から厚み方向に30%の範囲を表層部、それ以外をコア部とするとき、当該表層部におけるAxと当該コア部におけるAxとの比が0.90〜1.10である、[1]に記載のシート。
[3]表面に酸素含有官能基を有する、[1]または[2]に記載のシート。
[4]150μm未満の厚みを有する二軸延伸ポリオレフィンフィルムを準備する工程、および
複数の当該フィルムを加熱融着して積層する積層工程を含む、請求項1または2に記載のシートの製造方法であって、
前記加熱融着して積層する工程の樹脂温度Tr(℃)が以下の条件を満たす、
Tr≦Tm+9℃
(Tmは、DSCを用いて、30℃から230℃まで昇温速度10℃/分の条件で測定して得た前記フィルムの融点である)
製造方法。
[5]前記TrがTr≦Tm+7℃を満たす、[4]に記載の製造方法。
[6]前記積層工程が、複数の前記フィルムと、表面に酸素含有官能基を有するポリプロピレンフィルムとを、当該官能基含有フィルムが最外層になるようにして加熱融着して積層する工程を含む、[4]または[5]に記載の製造方法。
[7]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のシートを用いて作製された成形体。
[8]前記[3]に記載のシートの上に塗膜を有する、塗装シート。
(1)厚み
本発明のポリプロピレンシート(以下、単に「本発明のシート」ともいう)は150μm以上の厚みを有する。厚みは用途によって適宜調整してよく、例えば、250μm以上、500μm以上、または1mm以上としてよい。また厚みを10mm以下、8mm以下、5mm以下、または3mm以下としてもよい。
ポリプロピレンシートの面内方向にX線を入射して測定した配向度Aが最大となる面内方向をX方向、これに直交する面内方向をY方向とするとき、X方向にX線を入射して測定した配向度Axが85%以上、Y方向にX線を入射して測定した配向度Ayが80%以上である。面内方向にX線を入射するとは、シートの厚み断面に垂直な方向からX線を入射することをいう。配向度Aは、シートにおけるポリプロピレンのα晶の040面に起因する反射の方位角(回折リングの円周に沿った)スキャンの強度分布を求め、強度ピークの半価幅を用いて次式から算出される配向度である。
配向度A(%)=(360−ΣWi)/360×100
式中、WiはX線回折による040面に起因する反射の方位角スキャンの強度分布プロファイル中に存在する各ピークの半価幅である。
Kbはシートの厚み方向へのb軸の配向の指標である。一方、前述のとおり配向度AxはY方向へのc軸の配向の指標、配向度AyはX方向へのc軸の配向の指標である。
本発明のシートは、優れた機械的特性を有する。例えば、本発明のシートは2,500MPa以上の引張弾性率(JIS K7161)を有する。また、本発明のシートは耐寒衝撃性にも優れる。例えば本発明のシートは、5J以上の面衝撃強度(−30℃、JIS K7211−2)を有する。
本発明のシートは、優れた透明性を有する。例えば、本発明のシートは、1mmの厚みで20%以下の全ヘーズ(ISO 14782)を有する。
本発明のシートは、優れた耐熱性を有する。例えば、本発明のシートは165℃以上のビカット軟化温度(JIS K7206/A50法)を有する。
本発明のシートの表面は官能基を有することが好ましい。官能基としては酸素含有官能基が好ましい。酸素含有官能基としては、カルボキシル基、カルボキシレート基、酸無水物基、水酸基、アルデヒド基、エポキシ基等が挙げられる。これらの官能基によって、本発明のシートと他材料との接着性が向上する。特に、当該官能基を有する本発明のシートに塗装を施した部材は、アルコールを混合したガソリンに対する耐性である耐ガソホール性に優れる。この観点から、官能基の中でも酸無水物基が好ましい。官能基は、本発明のシートの任意の表面に存在すればよいが、主面の片面または両面に存在することが好ましい。官能基の付与の方法については後述する。
本発明においてポリプロピレンとは、ポリプロピレンを主成分とするポリマーをいう。ポリプロピレンとしては、プロピレンのホモポリマー(HOMO)、エチレンとC4〜C10−αオレフィンの少なくとも一つをコモノマーとして5.0質量%以下含むプロピレンランダム共重合体(RACO)、エチレンとC3〜C10−α−オレフィンとの共重合体がプロピレン(共)重合体マトリックスに分散している異相共重合体(HECO)が好ましい。剛性に優れることから、HOMOまたはコモノマー含有量の少ないRACOが特に好ましい。
本発明のシートは核剤を含んでいてもよい。核剤の量は、ポリプロピレン100質量部に対して0質量部を超え1.0質量部以下、好ましくは0.05〜0.5質量部である。核剤とは樹脂中の結晶成分のサイズを小さく制御して透明性を高めるために用いられる添加剤(透明核剤)である。核剤は特に限定されず、当該分野で通常使用されるものを使用してよいが、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤から選択されることが好ましい。ノニトール系核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールが挙げられる。ソルビトール系核剤として、例えば、1,3:2,4−ビス−o−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールが挙げられる。リン酸エステル系核剤として、例えば、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リチウム塩系造核剤が挙げられる。
本発明のシートは、150μm未満の厚みを有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムを準備する工程、当該フィルムを特定の樹脂温度で加熱融着して積層する積層工程を含む製造方法で製造されることが好ましい。以下、各工程について説明する。
本工程では、前述のとおりに準備したポリプロピレンまたは当該ポリプロピレンと前述の添加剤を含む組成物を公知の方法で二軸延伸して150μm未満の厚みを有する二軸延伸フィルムを得る。例えば、前記ポリプロピレン等を押出成形またはプレス成形して無延伸シートを得て、当該シートを二軸延伸して二軸延伸フィルムを得ることができる。当該フィルムの厚みは150μm未満であれば限定されないが、取扱容易性等の観点から10μm以上150μm未満が好ましい。また、公知の方法により、低融点樹脂を表面層にシーラント層として有する多層二軸延伸フィルムとすることもできる。シーラント層は公知の材料で構成することができ、当該材料として例えば直鎖状低密度ポエチレン、一種類以上のコモノマーを3.0質量%以上含む低融点のポリプロピレンランダム共重合体、1−ブテン(共)重合体、およびそれらの混合物等を挙げることができる。
本工程では、前記フィルムを加熱融着して積層する。当該方法は限定されないが、例えば前記フィルムを複数枚積層してプレス成形することができる。積層の際には、複数のフィルムを任意の方向に置くことができる。フィルムの置き方によって、シート面内の配向方向を調整できる。当該工程の樹脂温度Trは、Tr≦Tm+9℃であることが好ましい。ここでTrは成形時の樹脂表面温度である。Trは任意の方法で測定できるが、放射温度計等の非接触型温度計を使用して測定することが好ましい。Tmは単層フィルムの融点に相当し、フィルムがシーラント層を有する多層フィルムである場合にはコア層の融点に相当する。当該融点はDSCにより30℃から230℃まで昇温速度10℃/分の条件で測定して得た融解曲線のピーク温度として定義される。ただし、シーラント層を有する多層フィルムにおいてコア層の融点と共にシーラント層の融点Tmsが特定できる場合は、Tmは複数のピークのうち最高温に位置する融解ピーク温度とする。TrがTm+9℃以下であると、当該フィルムは配向度AxとAyが低下(KbやSX V/SX Lが増加)するほどは溶融しない。よって、この温度範囲で加熱融着して積層することにより、フィルムの配向度を低下させることなく(KbやSX V/SX Lを増加させることなく)、場合によっては配向度をさらに向上(KbやSX V/SX Lをさらに低下)させたシートを製造できる。この観点から、TrはTr≦Tm+7℃を満たすことがより好ましい。前記フィルムが、シーラント層を持たない単層フィルムの場合、フィルム間の融着を促進させる観点から、Tm≦Trであることが好ましい。前記フィルムが、シーラント層を持つ多層フィルムでシーラント層の融点Tmsが特定できる場合、Trの下限はシーラント層の融点Tmsであってよい。
前工程で得られたシートは、その後、冷却等の公知の工程を経て本発明のシートとされる。冷却方法は限定されないが、室温で放冷する方法や、室温あるいは10〜20℃で冷プレスする方法等が挙げられる。
本発明のシート表面に官能基を付与する方法は限定されない。例えば、本発明のシートをプラズマ処理やコロナ処理に供することで表面に酸素含有官能基を付与できる。あるいは、官能基を有するポリプロピレンフィルムを準備して、前記積層工程において当該官能基含有フィルムが最外層となるように、前述のフィルムと積層することによって官能基を付与できる。ここでは、後者の方法について説明する。
本発明のシートは、面内方向において特定の配向度と高次構造パラメータを有し、かつその配向度の厚み方向の依存性が小さいので、優れた機械的性質を有する。また、本発明のシートは優れた透明性も有する。よって、食品容器・蓋、雑貨、家電部品等に好適に用いることができる。さらに、本発明のシートを複数枚積層してプレスまたは溶着することにより、配向等を保持したままより厚手のシートや大きい成形体を得ることもできる。よって、本発明のシートは自動車部品や電子部品等としても有用である。
[材料A]
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定したMFRの値が3.0g/10分であるHP525J(ライオンデルバゼル社製)を用いた。
特開2011−500907号の実施例に従い固体触媒成分を調製した。具体的には以下のようにして固体触媒成分を調製した。
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl4を0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl2・1.8C2H5OHおよび9.1ミリモルのジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。MgCl2・1.8C2H5OHは米国特許4,399,054の実施例2に記載の方法に従ったが、10000rpmに代えて3000rpmで運転して製造した。温度を100℃に上げて120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した:250mLの新しいTiCl4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(100mL)で6回洗浄した。
上記固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの質量比が18であり、TEAL/DCPMSの質量比が10となるような量で、室温において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。
得られた予備重合物を重合反応器に導入した後、プロピレンと分子量調整剤の水素をフィードし、ポリプロピレンホモポリマー(HOMO)を製造した。重合中は、重合温度、水素濃度を、それぞれ75℃、0.24モル%とし、圧力を調整した。得られたポリプロピレン重合体に、酸化防止剤として、BASF社製B225を0.2質量%、中和剤として、淡南化学株式会社製カルシウムステアレートを0.05質量%配合し、ヘンシェルミキサーで1分間攪拌して混合した後、スクリュー直径50mmの単軸押出機(ナカタニ機械株式会社製NVC)を用いてシリンダー温度230℃で押出した。ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた組成物のMFRは9.0g/10分であった。
材料Bの製造に用いた予備重合物を重合反応器に導入した後、水素とプロピレンをフィードし、重合温度、水素濃度を、それぞれ75℃、0.10モル%とし、圧力を調整することよって、ポリプロピレンホモポリマー(HOMO)を製造した。得られたポリプロピレン重合体を用いて材料Bと同様にしてペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた組成物のMFRは2.0g/10分であった。
前記ポリプロピレンホモポリマーに、さらに重合体100質量部に核剤としてMillad NX8000J(ノニトール系、ミリケンジャパン株式会社製)を0.2質量部添加した以外は、材料C−1と同様にしてペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた組成物のMFRは2.0g/10分であった。
前記ポリプロピレンホモポリマーに、さらに重合体100質量部に核剤としてアデカスタブNA−71(株式会社ADEKA製)を0.1質量部添加した以外は、材料C−1と同様にしてペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた組成物のMFRは2.0g/10分であった。
MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により調製した。次いで、当該固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)を、固体触媒に対するTEALの質量比が8、TEAL/CHMMSの質量比が6.5となるような量で、−5℃で5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。
得られた予備重合物を重合反応器に導入した後、水素とプロピレンをフィードし、重合温度、水素濃度を、それぞれ75℃、0.04モル%とし、圧力を調整することよって、ポリプロピレンホモポリマー(HOMO)を製造した。得られたポリプロピレン重合体を用いて材料Bと同様にしてペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた組成物のMFRは3.0g/10分であった。
材料C−4で使用したものと同じ固体触媒と、TEALおよびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの質量比が11であり、TEAL/DCPMSの質量比が3となるような量で、−5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。
得られた予備重合物を重合反応器に導入した後、水素とプロピレンとエチレンをフィードし、重合温度、水素濃度、エチレン濃度を、それぞれ75℃、0.44モル%、1.07モル%とし、圧力を調整することよって、エチレン含有量が4.0質量%のプロピレンランダム共重合体(RACO)(プロピレン・エチレン共重合体)を重合させた。得られたポリプロピレン重合体を用いて材料Bと同様にしてペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた組成物のMFRは7.5g/10分であった。なお、プロピレン・エチレン共重合体のエチレン含有量は、1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子株式会社製JNM LA−400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、13C−NMR法で測定した値から算出した。
(1)二軸延伸ポリプロピレンフィルム
プレス成形機(株式会社ショージ製)を用いて、前記材料のペレットを210℃、10MPaで120秒間プレスして10cm×10cm以上の大きさの単層シートを得た。当該単層シートを140℃で120秒間加熱し、Bruckner社製フィルム延伸装置(KARO)を用いて二軸延伸し、表1に示す厚みの二軸延伸フィルムを得た。
(2)シーラントフィルム
サンアロマー株式会社製PC540Rを25mmφ3種3層フィルム・シート成形機(サーモ・プラスチック工業株式会社製)を用いて、成形温度230℃で成形し、厚み10ミクロンのフィルムを製造し、シーラントフィルムとした。
(3)シーラント層を含む二軸延伸フィルム
材料Dをシーラント層、材料Aをコア層とし、予め25mmφ3種3層フィルム・シート成形機(サーモ・プラスチック工業株式会社製)を用いて、成形温度230℃で成形し、シーラント層用単層フィルムおよびコア層用単層シートを製造した。これらを重ね合わせてさらにプレス成形して(170℃にて加圧10MPa×30秒、30℃冷却×150秒)、シーラント層とコア層の厚み比が10/90である2種3層の積層体(3層シート)を製造した(いずれも大きさ10cm×10cm以上)。シートの厚みは0.8〜0.9mmであった。当該3層シートを140℃で120秒間加熱し、Bruckner社製フィルム延伸装置(KARO)を用いて二軸延伸し、厚み0.1mmの二軸延伸フィルムを製造し、シーラント層を含む二軸延伸フィルムとした。
表1に示す枚数の二軸延伸フィルムを積層して表1に示す温度Tでプレス成形を行い、シートを製造した。プレス成形後は23℃に温調された冷却用プレスにより冷却した。
(1)配向度およびその目安
X線回折装置(リガク社製MicroMaxとRapid)を用い、シートまたはフィルムについてX線回折測定を行い、バックグラウンドを除去した後、ポリプロピレンのα晶の040面に起因する反射の方位角(回折リングの円周に沿った)スキャンの強度分布を求めた。前述のとおりX線の入射方向をX、Y、Z方向に変更して、AxとAyについては、各強度ピークの半価幅(Wi)を求め、次式から配向度を算出した。
配向度A(%)=(360−ΣWi)/360×100
Z方向については、ピークの半値幅を用いる算出方法では、配向の弱い場合はピークとベースラインの区別がつきにくい場合があることから、強度の最大値IZ maxと最小値IZ minとの比IZ max/IZ minを求め、配向度の目安とした。
この際、X線入射ビームのコリメータとして、800μmφのピンホールコリメータを用いた。
シートまたはフィルム表面と裏面から30%の厚みの部分を表層部とし、その余りをコア部とした。表層部に対して(1)と同様にAxを求めた。もう一つの表層部に対してもAxを求め、両者の平均値を表層部のAxとした。同様にしてコア部についてもAxを求めた。この際、X線入射ビームのコリメータとして、30μmφのピンホールコリメータを用いた。
特開平9−316283号公報段落0013の方法に準拠し、X線回折装置(リガク社製MicroMaxとRapid)を用い、前述のとおりシート面に対して垂直な方向(Z方向)にX線を入射して測定を行い、結晶面110と結晶面040の散乱強度の比から求めた。
この際、X線入射ビームのコリメータとして、800μmφのピンホールコリメータを用いた。
X線散乱装置(リガク社製MicroMaxとNanoViewer)を用い、図1に示すようにシートに対してX方向にX線を入射して小角X散乱測定を行った。得られた2次元プロファイルについて、バックグラウンドを除去した後、赤道(Y)方向の積分強度SX Lと子午線(Z)方向の積分強度を求めた。積分の領域は、方位角においては赤道(Y軸)および子午線(Z軸)から±30°までの範囲、2θにおいては0.15°〜1.00°の範囲とした。
この解析では、シート表面の反射の影響を避けるため、サンプル照射位置でのX線入射ビームのサイズをシートの厚みより小さくする必要がある。今回は1mm厚のシートに対してサンプル照射位置でのビームサイズを700μmとした。
赤外線放射温度計(株式会社佐藤計量器製作所製SK−8900)を用い、成形後にプレス成形機から取り出した直後のシートの表面温度を測定した。
二軸延伸フィルムから約5mgをサンプリングし、電子天秤で秤量した後、示差熱分析計(DSC)(TA Instruments社製 Q−200)で、30℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱して融解曲線を得た。融解曲線のピーク温度をTmとした。
得られたシートについて、JIS K7161に従い室温(23℃)において引張試験を行い、引張弾性率を測定した。
(8)透明性
得られたシートについて、ISO 14782に従い株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150を使用してヘイズ測定を行い、透明性を評価した。さらに、成形および冷却条件に由来するシート表面の凹凸の影響を除外するため、シートの両面に流動パラフィン(関東化学株式会社製、Liquid Paraffin Cat. No.32033−00)を刷毛にて塗布し、同様にヘイズ測定を行った。前者を「全ヘイズ」、後者を「内部ヘイズ」と定義した。またシート表面の寄与を見るため、「外部ヘイズ」(「全ヘイズ」−「内部ヘイズ」)を定義した。
(9)耐寒衝撃性(面衝撃強度)
JIS K7211−2に従い、上記成形により得た積層体を円柱形状のストライカー(打刻面12.7mmφ)を用いて試験速度1m/秒で−30℃にて打刻し、パンクチャーエネルギーを算出した。
(10)ビカット軟化温度
JIS K7206/A50法に従い、荷重10N、試験速度50℃/時間下での軟化温度を測定した。
材料A、B、C−1、C−2、C−3、C−4をそれぞれ用いて本発明のシートを製造し、評価した。実施例3では、二軸延伸フィルムを12枚積層し、その最表面と最裏面に厚み10μmの前記シーラントフィルムをさらに積層してシートを得た。実施例7では、前述のシーラント層を含む二軸延伸フィルムを12枚積層してシートを得た。図3および図4に、実施例2および比較例1で得た小角X散乱2次元プロファイルから求めた方位角での積分強度(1ピクセル当たりに規格化されたもの)と2θの関係を示す。
材料Aを用いて、プレス温度Tとプレス時間を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして比較用シートを製造し、評価した。
材料BとC−4を用い、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOTα−100Cにより、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、射出速度35mm/秒、冷却時間25秒の条件で成形して、幅100mm、厚み1mm、長さ100mmの比較用シートを製造し、評価した。
材料Bを用い、230℃で10分プレスして比較用シートを製造し、評価した。シートの040面(α晶)の回折ピークの近傍にβ晶に起因する回折ピークが存在したため、配向度Aを解析することはできなかった。
[比較例7]
前述のシーラント層を含む二軸延伸フィルム12枚積層してシートを得た。
[比較例8]
材料Bを用い、25mmφ3種3層フィルム・シート成形機(サーモ・プラスチック工業株式会社製)を用いて、成形温度230℃で成形し、厚み1mmのシートを得た。
実施例および比較例の評価結果を表1に示す。
以下のサンプルを準備した。
シート1:厚み90μmのポリプロピレン二軸延伸フィルム24枚を用いて、前述の方法に従い、厚み2mmの本発明のシートを調製した。
官能基含有シート2:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(モディック ER350P−3MP、三菱化学株式会社製)を用いて厚み90μmのフィルムを調製した。前述の方法に従い、当該フィルムが最表層となるように厚み90μmのポリプロピレン二軸延伸フィルム23枚とともに積層して厚み2mmの官能基含有シートを調製した。
これらのシートを長さ150mm、幅70mmに裁断した。
次いで、当該シート(実施例ではシート1、実施例9では官能基含有シート2)の表面にプライマー(RB150、日本ビー・ケミカル株式会社製)を塗布かつ乾燥し、そのプライマー面にウレタン塗料メタリック(R255、日本ビー・ケミカル株式会社製)、およびウレタン塗料クリアー(R266、日本ビー・ケミカル株式会社製)を塗布し、80℃で10分間乾燥を行った。次いで23℃、RH50%の恒温室中で48時間静置することで耐ガソホール試験用の塗装シートサンプルを得た。各塗工層の厚みは、それぞれ15μm、20μm、15μmであった。
JIS K8101に規定するエタノール10容量%とJIS K2202に規定する1号ガソリン90容量%の混合溶液を準備し、当該溶液に23℃にて60分間サンプルを浸漬し塗膜の剥がれ具合を観察した。
参考用シート3として、変性ポリプロピレン(モディック ER350P−3MP、三菱化学株式会社製)をプレス成形して厚み2mmの比較用シートを調製した。当該参考用シートを用いて実施例8と同様に耐ガソホール試験を実施した。
2 入射X線
20 サンプルへの照射位置でのビームサイズ
Claims (9)
- 150μm以上の厚みを有するポリプロピレンシートであって、
シートの面内方向にX線を入射して測定した配向度Aが最大となる面内方向をX方向、これに直交する面内方向をY方向、シート面に垂直な方向をZ方向とするとき、
X方向にX線を入射して測定した配向度Axが85%以上、Y方向にX線を入射して測定した配向度Ayが80%以上であり、
Z方向にX線を入射して測定した強度の最大値IZmaxと最小値IZminとの比IZmax/IZminが5.0未満であり、
Z方向にX線を入射して測定したb軸配向の程度Kbが0.30以下であり、
X方向にX線を入射して得られる小角X線散乱の2次元プロファイルから求められる積分強度SXVとSXLとの比SXV/SXLが1.20以下である、シート。 - 前記シートの表面から厚み方向に30%の範囲を表層部、それ以外をコア部とするとき、
当該表層部におけるAxと当該コア部におけるAxとの比が0.90〜1.10である、
請求項1に記載のシート。 - 表面に酸素含有官能基を有する、請求項1または2に記載のシート。
- 150μm未満の厚みを有する二軸延伸ポリオレフィンフィルムを準備する工程、および
複数の当該フィルムを加熱融着して積層する積層工程を含む、請求項1または2に記載のシートの製造方法であって、
前記加熱融着して積層する工程の樹脂温度Tr(℃)が以下の条件を満たす、
Tr≦Tm+9℃
(Tmは、DSCを用いて、30℃から230℃まで昇温速度10℃/分の条件で測定して得た前記フィルムの融点である)
製造方法。 - 前記TrがTr≦Tm+7℃を満たす、請求項4に記載の製造方法。
- 前記積層工程が、複数の前記フィルムと、表面に酸素含有官能基を有するポリプロピレンフィルムとを、当該官能基含有フィルムが最外層になるようにして加熱融着して積層する工程を含む、請求項4または5に記載の製造方法。
- 前記Trが、Tm以上またはシーラント層の融点Tm s 以上である、請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のシートを用いて作製された成形体。
- 請求項3に記載のシートの上に塗膜を有する、塗装シート。
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