JP7372129B2 - ポリプロピレン系多層シートおよびその製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系多層シートおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はポリプロピレン系多層シートおよびその製造方法に関する。
ポリプロピレンの延伸フィルムは、高い耐熱性に加え、優れた透明性および機械的特性が要求される分野に使用されている。しかし厚さが150μm未満と薄いため用途が限定されており、延伸フィルムの厚さを増大できれば別の用途へ拡大が期待される。例えば、特許文献1には、ポリプロピレンの一軸延伸フィルムを複数枚積層して加熱融着することによって、一定以上の厚さを有するシートを製造できることが開示されている。また、特許文献2には、特定の高次構造パラメータを有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムを複数枚積層して加熱融着することによって、優れた透明性および機械的特性を有するポリプロピレンシートを提供できることが開示されている。
特開2012-96526号公報 特開2017-186561号公報
発明者らは、前記特許文献に記載の延伸フィルムに無機充填材を含有させればより高い剛性を有するシートが得られ、ポリプロピレンの用途をさらに拡大できるとの着想を得た。しかし、従来、無機充填材を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を延伸すると、無機充填材を起点としてフィルムが破断するので、延伸フィルム(一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルム)を得ることはできなかった。したがって、無機充填材を含有する樹脂組成物を延伸フィルムにし、これからシートを得ることはこれまで検討されて来なかった。かかる事情を鑑み、本発明は、高い剛性を有する、ポリプロピレン系樹脂と無機充填材を含有する層を含有する多層シートを提供することを課題とする。
発明者らは、特定量の無機充填材を用い、製造条件を最適化することで前記課題が解決できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]0.5mm以上の厚さを有する多層シートであって、
0.15mm未満の厚さを有する延伸ポリプロピレンフィルム層Fならびに0.15mm未満の厚さを有する延伸熱可塑性樹脂フィルム層Nを含み、
前記層Fは成分(A)と(B)とを含む樹脂組成物から形成され、
前記成分(A)は、成分(A1)および任意成分(A2)からなるポリプロピレン系樹脂であり、
成分(A1)はエチレン、C4~C10-α-オレフィン、およびこれらの組合せからなる群より選択されるコモノマー由来単位を0~1重量%含むプロピレン(共)重合体100~60重量%、
成分(A2)はエチレン由来単位を10~90重量%含むエチレン-α-オレフィン共重合体0~40重量%であり、
成分(A)のMFR(230℃、荷重2.16kg)が0.1~15g/10分であり、
成分(B)は無機充填材であり、
前記層Fにおける成分(B)/[成分(A)+成分(B)]の重量比が0.5~60重量%であり、
前記層Nは熱可塑性樹脂と任意に前記成分(B)とを含む樹脂組成物から形成され、
成分(B)/[熱可塑性樹脂+成分(B)]の重量比が0~10重量%である、
多層シート。
[2]前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である、[1]に記載の多層シート。
[3]前記層Fが二軸延伸ポリプロピレンフィルム層であり、前記層Nが二軸延伸熱可塑性樹脂フィルム層である、[1]または[2]に記載の多層シート。
[4]前記無機充填材が板状無機充填材である、[1]~[3]のいずれかに記載の多層シート。
[5]前記板状無機充填材がタルクである、[4]に記載の多層シート。
[6]前記層Fにおける成分(B)/[成分(A)+成分(B)]の重量比が20~55重量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の多層シート。
[7]層Nの総厚さ/[層Nの総厚さ+層Fの総厚さ]の比が0.01~0.6である、[1]~[6]のいずれかに記載の多層シート。
[8]前記[1]~[7]のいずれかに記載のシートを成形してなる成形体。
[9]前記[1]~[7]のいずれかに記載のシートの製造方法であって、
0.15mm未満の厚さを有する延伸ポリプロピレンフィルムF、ならびに0.15mm未満の厚さを有する延伸熱可塑性樹脂フィルムNが積層された前駆体を調製する工程1と、
前記前駆体の最外層に加熱体を接触させて前記フィルムの層間を加熱融着する工程2とを備え、
前記フィルムFは前記重量比の成分(A)と(B)とを含む樹脂組成物から形成され、
前記フィルムNは前記重量比の熱可塑性樹脂と前記任意成分(B)とを含む樹脂組成物から形成され、
前記フィルムFおよびフィルムNの融点をそれぞれTmFおよびTmNとするとき、
TmF-TmN≧8(℃)を満たす、
製造方法。
[10]前記最外層の融点Tmoutと前記加熱体の温度Tが以下の条件を満たす、
Tmout-T≧4(℃)
[9]に記載の製造方法。
[11]前記工程2を、加熱体として加熱ロールを用いて実施する、[9]または[10]に記載の製造方法。
[12]前記工程1が、
i)前記成分(A)と(B)とを溶融混練して、下記方法で測定される無機充填材凝集体の最大径dmaxが500μm以下である原反シートを調製する工程と、
1)原反シートを各軸方向に同じ延伸倍率で二軸延伸し、得られたフィルムの主面を観察して像を取得する。
2)前記像を画像解析して、100cm中に存在する複数の無機充填材凝集体についてその直径を測定し、上記延伸倍率で割ることでdを求める。
3)前記dの最大値をdmaxとする。
ii)前記原反シートを、以下を満たす温度V(℃)で一軸または二軸延伸して、前記フィルムFを調製する工程と、
-3≦V-TmF≦3 (TmFは前記原反シートの融点(℃)である)
iii)当該フィルムFを前記フィルムNと積層する工程と、
を備える、[9]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]前記工程1が、
I)前記層Fを形成するための樹脂組成物と、前記層Nを形成するための樹脂組成物を共押出して、原反シートとして、前記層Fに相当する層Fと前記層Nに相当する層Nとを含む共押出シートであって、以下の関係:
TmF-TmN≦60℃ (TmFおよびTmNは、層Fおよび層Nの融点である)
を満たす、共押出シートを調製する工程と、
II)前記原反シートを、以下を満たす温度W(℃)で一軸または二軸延伸して多層延伸フィルムを調製する工程と、
-3≦W-TmF≦3(TmFは原反シートにおける層Fの融点(℃)である)
III)少なくとも2枚の当該多層延伸フィルムを異なる層同士が接触するように積層する工程と、を備える、
[9]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によって、高い剛性を有する、ポリプロピレン系樹脂と無機充填材を含有する層を備える多層シートを提供できる。
本発明の多層シートの概要を示す図 本発明の多層シートの製造方法の一態様を示す図 本発明の多層シートの製造方法の別態様を示す図
本発明において、フィルムとは薄い板状または膜状の部材をいう。フィルムの厚さは限定されないが、好ましくは0.15mm未満である。厚さが0.15mm以上の前記部材をシートと記載することがある。また、「X~Y」は、両端の値すなわちXとYとを含む。
1.多層シート
多層シートは、0.15mm未満の厚さを有する延伸ポリプロピレンフィルム層Fならびに0.15mm未満の厚さを有する延伸熱可塑性樹脂フィルム層Nを備える。これらの層は互いに密着しており、一体の多層シートを構成している。前記層Fは、ポリプロピレン系樹脂(成分(A))と比較的多量の無機充填材(成分(B))とを含む樹脂組成物から形成される。層Nは熱可塑性樹脂と比較的少量の無機充填材(成分(B))を含む樹脂組成物、または熱可塑性樹脂を含むが成分(B)を含まない樹脂組成物から形成される。便宜上、延伸ポリプロピレンフィルム層Fを「フィラー層F」、延伸熱可塑性樹脂フィルム層Nを「ニート層N」ともいう。図1は本発明の一態様を示す。図中、1は多層シート、Fは延伸ポリプロピレンフィルム層、Nは延伸熱可塑性樹脂フィルム層である。
(1)ポリプロピレン系樹脂(成分(A))
ポリプロピレン系樹脂とはポリプロピレンを主成分とする樹脂である。前記フィラー層Fを構成するポリプロピレン系樹脂は100~60重量%の成分(A1)および0~40重量%の任意成分(A2)からなる。成分(A2)が0重量%超である場合、成分(A)は、成分(A1)を重合し、当該成分の存在下で成分(A2)を重合して得られる、いわゆるヘテロ相共重合体(HECO)であってもよいし、別個に重合して調製した成分(A1)と成分(A2)をブレンドしたものであってもよいが、より少ない製造工程で成分(A)が得られる点においてHECOであることが好ましい。
[成分(A1)]
成分(A1)はエチレン、C4~C10-α-オレフィン、およびこれらの組合せからなる群より選択されるコモノマー由来単位を0~1重量%含むプロピレン(共)重合体である。コモノマーを含む場合は経済性の観点からエチレンが好ましい。当該コモノマー由来単位の量が上限を超えるとフィルムの剛性が低下することがある。この観点から、成分(A1)はコモノマー由来単位を含まないことすなわち、プロピレン単独重合体であることが好ましい。あるいは成分(A1)がコモノマー由来単位を含む場合、その量は0重量%を超え0.5重量%以下であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂中、成分(A1)の含有量は60~100重量%である。成分(A1)の含有量が少ないとポリプロピレン系樹脂の製造が困難になりうる。よって、成分(A1)の前記含有量は好ましくは70~100重量%であり、さらに好ましくは75~100重量%である。
成分(A)のMFR(230℃、荷重2.16kg)は0.1~15g/10分である。MFRが上限値を超えると多層シートの原料となる延伸フィルムの調製が困難となり、また下限値未満であると成分(A)の製造が困難となる。この観点から、前記MFRの下限値は、好ましくは1g/10分以上であり、より好ましくは2g/10分以上であり、その上限値は、好ましくは10g/10分以下であり、より好ましくは8g/10分以下である。
[成分(A2)]
任意成分(A2)は、10~90重量%のエチレン由来単位を含むエチレン-α-オレフィン共重合体である。エチレン由来単位が下限値未満または上限値を超える場合は、耐寒衝撃性が低下する。この観点から、エチレン由来単位の含有量は好ましくは15~85重量%であり、より好ましくは20~80重量%である。α-オレフィンは、エチレン以外であれば限定されないが、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンであり、より好ましくはプロピレン、1-ブテンであり、さらに好ましくはプロピレンである。
ポリプロピレン系樹脂中、成分(A2)の含有量は0~40重量%である。成分(A2)の含有量が過度に多いとポリプロピレン系樹脂の製造が困難になりうる。よって、成分(A2)の前記含有量は好ましくは0~35重量%であり、さらに好ましくは0~30重量%である。
(2)無機充填材(成分(B))
無機充填材は主に材料の剛性を向上する目的で添加される。無機充填材としては物質の観点から、例えば、以下のものが挙げられる。
タルク、カオリナイト、クレー、バイロフィライト、セリナイト、ウォラストナイト、マイカ等の天然珪酸または珪酸塩;含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸等の合成珪酸または珪酸塩;沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の酸化物。
また、無機充填材としては形状の観点から、例えば、以下のものが挙げられる。
含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸等の合成珪酸または珪酸塩等の粉末状充填材;タルク、カオリナイト、クレー、マイカ等の板状充填材;塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Filler)、ゾノトライト、チタン酸カリウム、およびエレスタダイト等のウィスカー状充填材;ガラスバルン、フライアッシュバルン等のバルン状充填材;ガラスファイバー等の繊維状充填剤。
当該無機充填材として1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの充填材の分散性を向上させるため、必要に応じて無機充填材の表面処理を行ってもよい。本発明に用いる無機充填材は限定されないが、フィラー層Fにおけるポリプロピレン結晶のフィルム面に沿った方向の配向を促進することにより剛性および耐衝撃性を高める観点から、板状無機充填材が好ましい。板状無機充填材としてはタルク、カオリナイト、クレー、マイカ等の公知のものを使用できるが、ポリプロピレン系樹脂との親和性や原料としての調達容易性や経済性等を考慮すると、好ましくはタルク、マイカであり、さらに好ましくはタルクである。板状無機充填材の体積平均粒子径は、好ましくは1~10μm、より好ましくは2~7μmである。体積平均粒子径が前記下限値未満の場合、フィラー層Fの剛性が低くなることがある。体積平均粒子径が前記上限値を超える場合は延伸時に破断が生じやすくなるので多層シートの原料となる延伸フィルムの調製が困難となる。前記体積平均粒子径は、レーザ回折法(JIS R1629に基づく)によって体積基準の積算分率における50%径として測定できる。
(3)熱可塑性樹脂
ニート層Nに使用される熱可塑性樹脂としては公知のものを使用できる。後述するとおり、本発明の多層シートは原反シートを延伸する工程を経て製造されることが好ましいので、原反シートにおけるフィラー層Fおよびニート層Nに相当する層Fおよび層Nの融点をそれぞれTmFUおよびTmNUとするとき、前記熱可塑性樹脂は、TmFU-TmNU≦60℃の関係を満たすように選択される。融点の差が上限を超えるとベタツキ等のハンドリング面で多層シートの製造が困難となる。この観点から、当該融点の差は、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。当該融点の差の下限は好ましくは0℃以上である。本発明において、融点はJIS K7271に従いDSCを用いて室温(23℃)から融解温度(230℃)まで10℃/分の条件で加熱した際に観測される、最も高温側にあるピークトップ温度である。また、層Fおよび層Nの融点TmFおよびTmNは、TmFおよびTmNと異なる場合があるが、その差(TmF-TmN)も60℃以下であることが好ましい。当該差は、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。当該差の下限は好ましくは0℃以上である。
フィラー層Fとの親和性の観点から、熱可塑性樹脂としてはポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・共役ジエン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体等が挙げられる。ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンのいずれであってもよい。ポリエチレンは、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれであってもよい。ポリオレフィンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリオレフィンの中でも、フィラー層Fとの相性の観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。特に、フィラー層Fとの密着性を鑑みると、熱可塑性樹脂は、0~10重量%未満のエチレン、C4~C10-α-オレフィン、およびこれらの組合せからなる群より選択されるコモノマー由来単位を含むプロピレン(共)重合体100~60重量%と、10~90重量%のエチレン由来単位を含むエチレン-α-オレフィン共重合体0~40重量%(任意成分)からなるポリプロピレン系樹脂であることがより好ましい。
(4)フィラー層F
フィラー層Fにおける成分(A)と(B)の重量比は、以下のとおりである。
成分(B)/[成分(A)+成分(B)]=0.5~60重量%
成分(B)の量が少ないと多層シートの剛性が十分でなく、成分(B)の量が多いと多層シートの製造が困難となりうる。この観点から、前記重量比は、好ましくは5~55重量%であり、より好ましくは10~55重量%であり、さらに好ましくは20~55重量%である。フィラー層Fは延伸ポリプロピレンフィルム層、すなわち一軸または二軸延伸ポリプロピレンフィルム層であることが好ましい。
(5)ニート層N
ニート層Nにおける熱可塑性樹脂と(B)の重量比は、以下のとおりである。
成分(B)/[熱可塑性樹脂+成分(B)]=0~10重量%
また、前述のとおり熱可塑性樹脂はポリプロピレン系樹脂であることが好ましいので、重量比は以下であることが好ましい。
成分(B)/[ポリプロピレン系樹脂+成分(B)]=0~10重量%
ニート層Nは延伸ポリプロピレンフィルム層、すなわち一軸または二軸延伸ポリプロピレンフィルム層であることが好ましい。特に多層シートの製造において、共押出して共押出フィルムの原反シートを調製する工程を含む場合、ニート層Nに相当する原反シートの層Fにおける成分(B)の量が多いと原反シートの延伸が困難となるので、前記重量比は5重量%以下が好ましい。前記重量比はより好ましくは5重量%未満、さらに好ましく1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0重量%である。ただし、ニート層Nにおける前記重量比は、フィラー層Fにおける前記重量比よりも小さい。
(6)多層構造
多層シートにおいて、ニート層Nとフィラー層Fは交互に存在することが好ましい。しかしながら、すべてのニート層Nとフィラー層Fが交互に存在している必要はなく、多層シートにおいて、同じ層が隣接する部分が存在していてもい。ただし、フィラー層F同士は融着しにくいので、同じ層が隣接する部分が存在する場合、当該隣接する層はニート層Nであることが好ましい。
ニート層Nの総厚さ/[ニート層Nの総厚さ+フィラー層Fの総厚さ]の比は、好ましくは0.01~0.6である。さらに好ましくは0.1~0.6であり、0.1~0.4であることがより好ましく、0.12~0.3であることが特に好ましい。ニート層Nの総厚さとは、多層シートにおけるニート層Nの厚さの総和である。フィラー層Fについても同様である。当該シートの各層間が融着され一体化されているのか、あるいは融着が不十分なために軽微な力が加わることにより剥離を生じるのかについては、偏光顕微鏡による断面観察によって確認することができる。
層数は各層の厚さに依存するが、一態様として0.01~0.1mm程度のフィラー層Fおよびニート層Nが合計で15~100層程度存在することが好ましい。
(7)多層シートの特性
[厚さ]
本発明の多層シートの厚さは0.5mm以上であるが、好ましくは0.7mm以上である。多層シートが過度に厚いと、鋼板と比べて重くなることや、内層への伝熱性が低下して製造効率が低下すること等から、厚さの上限は、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。
[剛性]
本発明の多層シートの引張弾性率(JIS K7161-2)は、好ましくは2500MPa以上、より好ましくは3000MPa以上、さらに好ましくは3500MPa以上、よりさらに好ましくは4000MPa以上、特に好ましくは5000MPa以上である。
[耐寒衝撃性]
本発明の多層シートは、-30℃において、好ましくは5J以上、より好ましくは8J以上、さらに好ましくは10J以上、よりさらに好ましくは12J以上の面衝撃強度(JIS K7211-2)を有する。
[寸法安定性]
本発明の多層シートは、優れた寸法安定性を有する。その指標である線膨張係数は、好ましくは50×10-6/K以下、より好ましくは45×10-6/K以下、さらに好ましくは40×10-6/K以下、よりさらに好ましくは35×10-6/K以下の線膨張係数(JIS K71972)を有する。
(8)他の成分
本発明の多層シートには、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、塩素吸収剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、結晶核剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の顔料等の当該分野で通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリプロピレン以外の合成樹脂または合成ゴムを含有してもよい。当該合成樹脂または合成ゴムは1種でもよいし2種以上でもよい。
(9)用途
本発明の多層シートは、面内方向において高い配向度を有し、かつ配向度の厚さ方向の依存性が小さいので、ポリプロピレンとして軽量でありながら優れた機械的特性やバリア性を有する。よって、食品容器・蓋、雑貨、家電部品、日用品等に好適に用いることができる。さらに、本発明の多層シートを複数枚積層してプレスまたは融着することにより、配向等を保持したままより厚手のシートや大きい成形体を得ることもできる。よって、本発明の多層シートは自動車部品や電気電子部品、筐体部材、玩具部材、家具部材、建材部材、包装部材、工業資材、物流資材、農業資材等としても有用である。
2.製造方法
本発明の多層シートは、以下の工程を備える方法で製造されることが好ましい。
工程1:0.15mm未満の厚さを有する延伸ポリプロピレンフィルムF、ならびに0.15mm未満の厚さを有する延伸熱可塑性樹脂フィルムNが積層された多層シートの前駆体を調製する。
工程2:前記前駆体の最外層に加熱体を接触させて前記フィルムの層間を加熱融着する。
ただし、TmF-TmN≧8(℃)を満たす。
TmFは、延伸ポリプロピレンフィルムFの融点であり、TmNは延伸熱可塑性樹脂フィルムNの融点である。融点は前述のとおり測定される。
延伸ポリプロピレンフィルムFは、前述の成分(A)および成分(B)を含む樹脂組成物から形成され、その重量比も前述のとおりである。延伸熱可塑性樹脂フィルムNは、熱可塑性樹脂と任意に前記成分(B)とを含む樹脂組成物から形成され、その重量比も前述のとおりである。
(1)工程1
本工程では延伸ポリプロピレンフィルムFと延伸熱可塑性樹脂フィルムNが積層された多層シートの前駆体を調製する。当該前駆体は、複数のフィルムを含むので複数の層間が存在する。そのすべての層間は融着されている必要はないが、1またはいくつかの層間は融着されていてもよい。例えば、延伸ポリプロピレンフィルムFと延伸熱可塑性樹脂フィルムNを1枚ずつ積層する場合、前駆体における全層間は融着されていないことが好ましい。また、後述するように延伸ポリプロピレンフィルムFと延伸熱可塑性樹脂フィルムNの共押出フィルムを用いる場合、前駆体における1またはいくつかの層間は融着されている。
(1-1)工程1の一態様
本工程の一態様を図2に示す。図中、fおよびnは、最終的に層Fおよび層Nを構成する樹脂組成物、FおよびNは未延伸シート(原反シート)、FおよびNは延伸フィルム、10は多層シートの前駆体、1は多層シート、Fはフィラー層、Nはニート層である。また、2は未延伸シート調製工程、3は延伸工程、4は積層工程、5は層間融着工程である。本態様においては、延伸ポリプロピレンフィルムFと延伸熱可塑性樹脂フィルムNを別個に準備して、これを交互に積層して前駆体10を調製する。この際、この場合、全層間は融着していないことが好ましいが、1またはいくつかの層間は融着していてもよい。得られるシートの耐熱性を高める観点から、両最外層は延伸ポリプロピレンフィルムFであることが好ましい。また、異方性低減の観点から、延伸ポリプロピレンフィルムFと延伸熱可塑性樹脂フィルムNは、それぞれ二軸延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
0.15mm未満の厚さを有する延伸熱可塑性樹脂フィルムNは、公知の方法で調製できる。例えば、原料樹脂組成物から未延伸熱可塑性樹脂シートNを調製して、これを公知の方法で一軸延伸または二軸延伸して延伸熱可塑性樹脂フィルムNを得ることができる。
0.15mm未満の厚さを有する延伸ポリプロピレンフィルムFは、無機充填材を含むため、従来の方法で製造することはほぼ不可能である。したがって、本態様では、以下の工程を経て延伸ポリプロピレンフィルムFを調製することが好ましい。
i)前記成分(A)と(B)とを溶融混練して未延伸ポリプロピレンシートF(原反シート)を調製する工程(図2中2)。
ii)前記原反シートを、以下を満たす温度V(℃)で一軸または二軸延伸して、延伸ポリプロピレンフィルムFを調製する工程(図2中3)。
-3≦V-TmF≦3 (TmFは原反シートの融点(℃)である)
iii)延伸ポリプロピレンフィルムFを前記フィルムNと積層する工程(図2中4)。
[工程i]
本工程(図2中2)は公知の方法で実施できる。例えば、ポリプロピレン系樹脂(成分(A))と無機充填材(成分(B))を準備して、予めドライブレンドする、または溶融混練することにより樹脂組成物を調製することができる。樹脂組成物を調製するにあたり、溶融混練しペレット状にする工程を設けることが好ましい。溶融混練時の条件は公知のとおりとしてよいが、混練効率を高めるために多軸押出機にて混練(多軸機溶融混練)を行うことが好ましい。この際、作業性や動力等経済性の観点から、二軸押出機にて行うことがより好ましい。
得られた樹脂組成物は、熱プレス成形またはTダイ等を用いた押出成形によって原反シートとできる。原反シートとは延伸前すなわち一軸または二軸延伸を行う前のシートのことである。押出成形において樹脂組成物を可塑化する際に、スクリュー構成として通常の単軸機を装着した押出成形機の他に、二軸機等の多軸機を装着した溶融混練をすることもできる。いすれにしても、原反シートの調製に際しては、多軸機溶融混練工程を含むことが好ましい。
原反シートは、下記方法で測定される無機充填材凝集体の最大径dmaxが500μm以下である。よって、当該dmaxを達成できるように、スクリュウ構成や混練温度等は適宜調製される。
1)原反シートを各軸方向に同じ延伸倍率で二軸延伸し、得られたフィルムの主面を観察して像を取得する。
2)前記像を画像解析して、100cm中に存在する複数の無機充填材凝集体についてその直径を測定し、上記延伸倍率で割ることでdを求める。
3)前記dの最大値をdmaxとする。
原反シートの切断面を直接観察する場合、試料中の無機充填材量が多いと凝集体同士が重なるため、凝集体の直径を計測することが難しい場合があった。しかし、本発明では、原反シートを二軸延伸することにより凝集体同士の重なりが解かれ、凝集体の直径の計測が可能となった。したがって、二軸延伸後のフィルムで観察した凝集体の直径を延伸倍率で割って求めたdおよびこれから求めたdmaxは、原反シートにおけるdおよびdmaxと同じである。すなわち、原反シートの二軸延伸フィルムで空隙等の欠陥を含む凝集体のサイズを測定し、それを延伸倍率で割った値を原反シートにおけるdと認定する。ただし、二軸延伸時に原反フィルムが破断した場合は、得られた一部のフィルムにおける欠陥の円相当径(直径)を測定し、破断時の延伸率で割ることで得た値を原反シートにおけるdと認定できる。dmaxを求めるために原反シートを二軸延伸する理由は、原反シート中に存在する無機充填材の重なりを排除するためである。よってここでの二軸延伸条件は必ずしも-3≦T-TmF≦3を満たす必要はなく、dmaxを求めるために得た原反シートの二軸延伸フィルムと多層シートの原料としての二軸延伸フィルムFは同じである必要はない。しかしながら、作業性の観点からは、前記条件を満たすように原反フィルムを二軸延伸してもよい。
[工程ii]
本工程(図2中3)では、原反シートを温度Vにおいて延伸加工、すなわち一軸または二軸延伸する。延伸温度Vは-3≦V-TmF≦3を満たす。すなわち、延伸温度Vは、前記原反シートの融点TmFを中心として±3℃の温度範囲から選択される。この温度範囲において延伸することで、原反シートが破断することなく単層延伸フィルムを得ることができる。この理由は限定されないが、無機充填材表面において部分的に溶融したポリプロピレンがエピタキシャルな結晶を形成するため両者の親和性が向上し、さらに前記Vの温度領域では形成された結晶が保持される結果、この親和性が損なわれないためであると推察される。
延伸(一軸延伸、二軸延伸)は公知の方法によって行うことができる。すなわち、一軸延伸の方法としては、Tダイにより得られた原反シートをオーブン等で加熱して、延伸ロールや巻き取り器で延伸する方法等が挙げられる。また、二軸延伸の方法としては、熱板成形、延伸成形、圧伸成形、絞り加工成形、圧接成形、融着成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、インフレーション成形等が挙げられる。さらには、縦方向と横方向の延伸工程を同時に実施する同時二軸延伸と、縦方向の延伸工程を実施した後に横方法の延伸工程を実施する逐次二軸延伸が挙げられるが、本発明ではいずれを採用してもよい。逐次二軸延伸においては、縦方向および横方向のいずれが先であってもよい。このようにして延伸ポリプロピレンフィルムFを得る。異方性低減の観点から、本工程では二軸延伸ポリプロピレンフィルムとすることが好ましい。
[工程iii]
本工程では、このようにして得た延伸ポリプロピレンフィルムFと延伸熱可塑性樹脂フィルムNを交互に重ね合わせて前駆体10を調製する。本態様において各フィルムは、単層フィルムである。
(1-2)工程1の別態様
工程1の別態様を図3に示す。図中、2’は共押出工程、Cは未延伸共押出シート(原反シート)、Cは延伸共押出フィルム、12は多層シートの前駆体であり、他の符号は前記のとおり定義される。本態様(下記工程I~III)においては、延伸ポリプロピレンフィルムFと延伸熱可塑性樹脂フィルムNからなる共押出フィルムCと、単層の延伸ポリプロピレンフィルムF、単層の延伸熱可塑性樹脂フィルムN、前記共押出フィルムCのいずれかを積層して前記前駆体12を調製する。この際、この場合、全層間のうち、1またはいくつかの層間は融着していないことが好ましい。得られるシートの耐熱性を高める観点から、両最外層は延伸ポリプロピレンフィルムFであることが好ましい。また、異方性低減の観点から、本工程で用いられる延伸フィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
[工程I]
本工程(図3中2’)では、樹脂組成物fと樹脂組成物nとを共押出して、未延伸の原反シートCを調製する。当該原反シートは、最終的に得られる多層シートの延伸ポリプロピレンフィルム層Fおよび延伸熱可塑性フィルム層Nに相当する層Fおよび層Nを備える。ただし、前記融点は、TmF-TmN≦60℃を満たす。融点の差が上限を超えるとベタツキ等のハンドリング面で共押出シートの製造が困難となる。この観点から、当該融点の差は、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。当該融点の差の下限は好ましくは0℃以上である。
当該工程は公知の方法で実施できる。例えば、ポリプロピレン系樹脂(成分(A))と無機充填材(成分(B))と必要に応じて他の成分を準備して、予めドライブレンドする、または溶融混練することにより樹脂組成物fを調製することができる。また、熱可塑性樹脂(好ましくは成分(A))をそのまま層nの原料としてもよいし、熱可塑性樹脂(好ましくは成分(A))に加えて、必要に応じて無機充填材(成分(B))と他の成分を準備し、同様にして樹脂組成物nを調製することができる。前記樹脂組成物または原料を調製するにあたり、溶融混練しペレット状にする工程を設けることが好ましい。溶融混練時の条件は公知のとおりとしてよいが、混練効率を高めるために多軸押出機にて混練(多軸機溶融混練)を行うことが好ましい。この際、作業性や動力等経済性の観点から、二軸押出機にて行うことがより好ましい。
得られた樹脂組成物は、Tダイ等を用いた共押出成形によって未延伸共押出シートC(原反シート)とされる。共押出成形において樹脂組成物を可塑化する際に、スクリュー構成として通常の単軸機を装着した押出成形機の他に、二軸機等の多軸機を装着した溶融混練を行うこともできる。原反シートの調製に際しては、多軸機溶融混練工程を含むことが好ましい。
本工程(図3中3)では、前記原反シートCを、以下を満たす温度W(℃)で一軸または二軸延伸して多層延伸フィルムCを調製する。延伸温度Wは-3≦W-TmF≦3を満たす。すなわち、延伸温度Wは、融点TmFを中心として±3℃の温度範囲から選択される。この温度範囲において延伸することで、原反シートが破断することなく多層延伸フィルムCを得ることができる。この理由は限定されないが、無機充填材表面において部分的に溶融したポリプロピレンがエピタキシャルな結晶を形成するため両者の親和性が向上し、さらに前記Tの温度領域では形成された結晶が保持される結果、この親和性が損なわれないためであると推察される。延伸は前述のとおりに実施できる。層数は限定されず2層以上としてよいが、2層または3層であることが好ましい。図3では、外層がNである態様を示したが、外層はFであってもよい。
[工程III]
本工程(図3中4)では、少なくとも2枚の多層延伸フィルムCを、最終的に異なる層同士が交互に積層された構造になるようにする。多層延伸フィルムCの層数が偶数である場合は、FとNとが交互になるように積層することが好ましい。多層延伸フィルムCの層数が奇数である場合は、同じ層が隣接する場合があるが、加熱圧着により一体となる。その際、密着性を良好にする観点から、N同士が隣接することが好ましい。
いずれの態様においても各フィルムを任意の方向に置くことができる。フィルムの置き方によって、シート面内の配向方向を調整できる。前述のとおり積層するフィルムの枚数は適宜調整される。
(2)工程2
本工程(図2および図3中5)では、前記多層シートの前駆体10または12の最外層に加熱体を接触させて各層間を加熱融着する。最外層の融点Tmoutと前記加熱体の温度TはTmout-T≧4(℃)の関係を満たすことが好ましい。当該関係が満たされることで、層間を良好に融着させることができる。この観点から、当該温度差は6℃以上であることがより好ましい。当該温度差の上限は限定されないが、ポリプロピレンの製造上の観点から40℃以下であることが好ましい。Tは任意の方法で測定できるが、放射温度計等の非接触型温度計を使用して測定することが好ましい。Tmoutは最外層に配置された層の融点に相当する。加熱体の温度は限定されないが120~190℃程度が好ましく、140~170℃がより好ましく、150~165℃がさらに好ましい。
本工程は、加熱体として加熱ロールを用いて連続的に実施されることが好ましい。具体的には、前記多層シートの前駆体を加熱された2本のロール間に通過させて層間を融着させる。2本のロールを1組とし、2組以上のロールを組合せた加熱ロールを加熱体として用いて融着させてもよい。この際に印加する圧力は適宜調整される。当該ロール成形における引取速度は、限定されないが好ましくは0.05~10m/分程度である。
ロール成形以外の方法としては、圧接成形や融着成形等が挙げられる。また、フィルムを加熱融着する際、熱収縮を抑えると共にさらに配向を促進するために加圧することが好ましい。その際の圧力は融着温度に応じて調整される。
(3)他の工程
本発明の製造方法は、前工程で得られたシートを冷却する等の公知の工程をさらに備えていてもよい。冷却方法は限定されないが、室温で放冷する方法や、室温あるいは10~20℃で冷プレスする方法等が挙げられる。
本発明の多層シートは、フィルム同士の密着性が良好であり層間における不連続性がほとんど存在しない。このため一体シートとして取扱うことができる。従来の方法では厚さが0.5mm以上であって、無機充填材を含む延伸されたシートを得ることはコスト等の観点から工業的に現実的でなかったが、本発明により当該シートを工業的に製造できる。
本発明の多層シートを目的に応じた方法で二次成形(所望の形状への賦形も含む)することにより、種々の成形体を得ることができる。二次成形方法としては、既知のプレス成形、熱板成形、延伸成形、圧延成形、絞り加工成形、圧接成形、融着成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等が挙げられる。また、加飾性や表面改質等の目的で、特殊フィルムを本発明の多層シートの最表面に貼りつけてもよい。貼り付けるフィルムとしては、例えば、防曇フィルム、低温シールフィルム、接着性フィルム、印刷フィルム、エンボス加工フィルム、レトルトフィルム等が挙げられる。最表面のフィルムの厚さは特に制限はないが、厚くなりすぎると本発明で得られるシートの特性を損なう可能性があり、また、特殊フィルムは一般的にコストが高く経済的にも好ましくないことから、薄いことが好ましい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムを加熱融着して積層する工程において、最外層に配置されたフィルムの表面に特殊フィルムを積層することができる。
この他、本発明の多層シートに塗装を施して、当該シートの上に塗膜を有する塗装シートとすることもできる。塗膜の種類は限定されず、通常、塗装分野で使用されるものであれば限定されない。しかしながら、本発明においては車体塗装で使用される塗膜が好ましい。好ましい塗膜としては、エポキシ系塗膜、ウレタン系塗膜、ポリエステル系塗膜等が挙げられる。必要に応じて、下層塗膜(プライマー塗膜)、中層塗膜、上層塗膜(クリアー塗膜)を設けてもよい。本発明の製造方法で得られるシートを、塗工を施すためのシート(塗工シート)として用いる場合、塗装を施す面が官能基を有することが好ましい。
(4)官能基の付与
本発明の多層シートの表面に官能基を付与する方法は限定されない。例えば、本発明の多層シートをプラズマ処理やコロナ処理に供することで表面に酸素含有官能基を付与できる。あるいは、官能基を有するポリプロピレンフィルムを準備して、前記積層工程において当該官能基含有フィルムが最外層となるように、前述のフィルムと積層することによって官能基を付与できる。ここでは、後者の方法について説明する。
酸素含有官能基を有するポリプロピレンフィルムは、無水マレイン酸変性ポリプロピレンあるいはエポキシ変性ポリプロピレン等の公知のポリプロピレンをフィルムに成形することで得られる。当該官能基含有フィルムの厚さは限定されないが150μm未満であることが好ましい。また、当該官能基含有フィルムは二軸延伸されていてもされていなくてもよい。積層工程においては、官能基を有するポリプロピレンフィルムと、官能基を有さないポリプロピレンフィルムを同時に積層してもよいし、予め官能基を有さないポリプロピレンフィルムを積層してシートを製造し、当該シートの表面に官能基を有するポリプロピレンフィルムを積層してもよい。しかしながら、作業性を考慮すると同時に積層する方法が好ましい。
[重合体1]
重合に用いる固体触媒を、欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により調製した。当該固体触媒は、MgCl上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。当該固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が11、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、-5℃で5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を重合反応器に導入した後、水素とプロピレンをフィードし、重合温度、水素濃度を、それぞれ75℃、0.23モル%とし、圧力を調整することよってプロピレン単独重合体として重合体1を得た。
[樹脂組成物(a)]
重合体1を60重量部に対して、タルクを40重量部、酸化防止剤(BASF社製B225)を0.2重量部、および中和剤(淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレート)を0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した。ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単軸押出機を用いてシリンダ温度230℃で当該混合物を溶融混練し、押出したストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状の樹脂組成物(a)を得た。樹脂組成物(a)は、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)が7.0g/10分であった。
[重合体2]
欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により固体触媒(2)を調製した。当該固体触媒は、MgCl上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。上記で得られた固体触媒(2)と、TEALおよびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が11であり、TEAL/DCPMSの重量比が3となるような量で、-5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を重合反応器に導入した後、水素とプロピレン、エチレンをフィードした。そして、重合温度75℃、水素濃度0.44モル%、エチレン濃度1.07モル%で、重合圧力を調整することよって、プロピレン-エチレン共重合体として重合体2を得た。
[樹脂組成物(b)]
重合体2を100重量部に対して、酸化防止剤(BASF社製B225)を0.2重量部および中和剤(淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレート)を0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した。ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単軸押出機を用いてシリンダ温度230℃で当該混合物を溶融混練し、押出したストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状の樹脂組成物(b)を得た。樹脂組成物(b)は、4.0重量%のエチレン由来単位を含み、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)が7.5g/10分であった。
[樹脂組成物(c)]
重合体2を99.7重量部に対して、タルクを0.3重量部、酸化防止剤(BASF社製B225)を0.2重量部および中和剤(淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレート)を0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した。ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単軸押出機を用いてシリンダ温度230℃で当該混合物を溶融混練し、押出したストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状の樹脂組成物(c)を得た。樹脂組成物(c)のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は7.5g/10分であった。
[樹脂組成物(d)]
重合体1を100重量部に対して、酸化防止剤(BASF社製B225)を0.2重量部および中和剤(淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレート)を0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した。ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単押出機を用いてシリンダ温度230℃で当該混合物を溶融混練し、押出したストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状の樹脂組成物(d)を得た。樹脂組成物(d)のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は7.0g/10分であった。これらの特性等を表1に示す。
[単層二軸延伸ポリプロピレンフィルム]
プレス成形機(株式会社ショージ製)を用いて、樹脂組成物(a)のペレットを210℃、10MPaで120秒間熱プレスして10cm×10cm以上の大きさ、厚さ1.25μmの原反シートを得た。原反シートの融点TmFは166℃であった。Bruckner社製フィルム延伸装置(KARO)を用いて、当該原反シートを165℃で120秒間加熱した後、50mm/secの速度で5倍×5倍で同時二軸延伸し、厚さ0.05mmの単層二軸延伸ポリプロピレンフィルムAを得た。すなわち、二軸延伸温度(V)は165℃であり、V-TmFは-1℃であった。得られた単層二軸延伸ポリプロピレンフィルムAの融点TmFは171℃であった。樹脂組成物(b)~(d)を用いて、同様にして単層二軸延伸ポリプロピレンフィルムB~Dを得た。条件や特性等を表2に示す。
[二層二軸延伸ポリプロピレンフィルム]
樹脂組成物(a)および樹脂組成物(b)をスクリュー温度230℃に設定した25mmφ3種3層フィルム・シート成形機(サーモ・プラステイックス工業株式会社製)に供して溶融混練(二軸機溶融混練)して、原反シートとして厚さ1.25mmの二種二層共押出シートを得た。
原反シートにおける層Fの融点TmFは166℃、層Nの融点TmNは144℃であった。Bruckner社製フィルム延伸装置(KARO)を用いて、当該原反シートを165℃で120秒間加熱した後、50mm/secの速度で5倍×5倍で同時二軸延伸し、厚さ0.05mmの二層二軸延伸フィルムAB-1を得た。すなわち、二軸延伸温度(W)は165℃であり、W-TmFは-1℃であった。同様にして、樹脂組成物(a)と樹脂組成物(b)から厚さ比を変更した二層二軸延伸ポリプロピレンフィルムAB-2を、樹脂組成物(a)と樹脂組成物(c)から二層二軸延伸ポリプロピレンフィルムACを製造した。条件や特性等を表2に示す。
[三層二軸延伸ポリプロピレンフィルム]
樹脂組成物(a)および樹脂組成物(b)をスクリュー温度230℃に設定した25mmφ3種3層フィルム・シート成形機(サーモ・プラステイックス工業株式会社製)に供して溶融混練(二軸機溶融混練)して、原反シートとして厚さ1.25mmの(b)/(a)/(b)構造の二種三層共押出シートを得た。当該二種三層共押出シートを用いて、前記と同様にして二層二軸延伸ポリプロピレンフィルムBABを製造した。条件や特性等を表2に示す。
[実施例1]
単層二軸延伸ポリプロピレンフィルムAとBを交互に重ね合わせて多層シートの前駆体を製造した。用いたフィルムは合計で21枚であり、両最外層に単層二軸延伸ポリプロピレンフィルムAを配置した。加熱体としてロール成形機(トクデン株式会社製誘導発熱ジャケットローラー、型式JR-D0-W、ロール径200mmφ×2本、ロール面長410mm)を用いて、当該前駆体の各層間を加熱融着してシートを製造した。成形条件は表3に示すとおりとした。次いで、後述する方法によって、当該シートを評価した。
[実施例2~8]
使用するフィルムおよび製造条件を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同じ方法でシートを製造し、評価した。
[比較例1、2]
使用するフィルムおよび製造条件を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同じ方法でシートを製造し、評価した。
[参考例]
JIS K6921-2に従い、樹脂組成物(a)を用いてJIS K7152-3に規定する厚さ1.0mmの小形角板(タイプD1)を射出成形し、参考用シートを得て、評価した。成形条件は以下のとおりとした。
成形機:射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT S2000i)
溶融樹脂温度:200℃
金型温度:40℃
平均射出速度:200mm/秒
保圧時間:40秒
全サイクル時間:60秒
Figure 0007372129000001
Figure 0007372129000002
Figure 0007372129000003
Figure 0007372129000004
評価は以下のように行った。
[DSCによる融点(TmF、TmN、TmF、TmN、TmOUT)]
原反シートの層n、層f、および二軸延伸ポリプロピレンフィルムより、各々約5mgを電子天秤で秤量し、DSC用試料として採取した。示差熱分析計(DSC)(TA Instruments社製 Q-200)を用いて、30℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱して融解曲線を得た。融解曲線の最も高温側にあるピークトップ温度を融点とした。
[剛性(引張弾性率)]
得られたシートから成形体としてJIS K7139に規定するタイプA2の多目的試験片を機械加工し、JIS K7161-2に従い、株式会社島津製作所製精密万能試験機(オートグラフAG-X 10kN)を用い、温度23℃、相対湿度50%、試験速度1mm/分の条件で引張弾性率を測定した。
[耐寒衝撃性(面衝撃強度、-30℃)]
得られたシートについて、JIS K7211-2に従い、株式会社島津製作所製ハイドロショットHITS-P10を用い、-30℃に調整した槽内で、内径40mmφの穴の開いた支持台に測定用試験片を置き、内径76mmφの試料押さえを用いて固定した後、半球状の打撃面を持つ直径12.7mmφのストライカーで、1m/秒の衝撃速度で試験片を打撃しパンクチャーエネルギー(J)を求めた。4個の測定用試験片各々のパンクチャーエネルギーの平均値を面衝撃強度とした。
[寸法安定性]
得られたシートを成形時の樹脂組成物の流動方向に沿って10mmの長さに切り出し、80℃のオーブン内に24時間放置したものを試料としてJIS K7197に準拠して測定した。
試験装置:Ulvac MTS9000(真空理工製)
試験条件
昇温速度:5℃/分
荷重 :5.0g重
測定温度:-30℃~80℃
[積層状態]
得られたシートの中央部分に関し、株式会社日本ミクロトーム研究所製ロータリーミクロトーム(型式:RU-S)を用いて表面に垂直な面方向に厚さ20μmの切片をスライスし、これをオリンパス株式会社製偏光顕微鏡(BX-50)を用いてクロスニコル条件にて観察し、以下の基準を以て積層状態を評価した。
a:層間剥離が全くない
b:部分的に剥離している層が見られる
c:完全に層間剥離する
d:多層構造を確認できない
[MFR]
ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットについて、JIS K 7210-1に準じ温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
<成分(A1)または成分(A2)におけるコポリマー中のエチレン由来単位の含有量、および成分(A1)と成分(A2)からなる重合混合物における成分(A2)のコポリマーの含有割合>
1,2,4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、Bruker社製AVANCEIII HD400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、測定温度120℃、フリップ角45度、パルス間隔7秒、試料回転数20Hz、積算回数5000回の条件で13C-NMRのスペクトルを得た。
<成分(A1)または、成分(A1)と成分(A2)からなる重合混合物中の総エチレン量>
上記で得られたスペクトルを用いて、Kakugo,Y.Naito、K.Mizunuma and T.Miyatake、Macromolecules、15、1150-1152(1982)の文献に記載された方法により、試料の総エチレン量(重量%)を求めた。成分(A1)を試料として測定する場合、上記の総エチレン量が成分(A1)のエチレン由来単位の含有量となる。
<成分(A2)のコポリマー中のエチレン由来単位の含有量>
上記で得られたTββの積分強度の替わりに下記式で求めた積分強度を使用した以外は、総エチレン量と同様の方法で計算を行い、コポリマー中のエチレン由来単位の含有量を求めた。
T’ββ= 0.98×Sαγ×A/(1-0.98×A)
ここで、A= Sαγ/(Sαγ+Sαδ)
<成分(A1)と成分(A2)からなる重合混合物における成分(A2)のコポリマーの含有割合>
以下の式で求めた。
コポリマーの含有割合(重量%)=重合混合物の総エチレン量/(コポリマー中のエチレン由来単位の含有量/100)
1 多層シート
延伸ポリプロピレンフィルム層(フィラー層)
延伸熱可塑性樹脂フィルム層(ニート層)

10、12 多層シートの前駆体

、N 延伸フィルム、
延伸共押出フィルム

、N 未延伸シート(原反シート)
未延伸共押出シート

f、n 樹脂組成物

2 未延伸シート調製工程
2’ 共押出工程
3 延伸工程
4 積層工程
5 層間融着工程

Claims (13)

  1. 0.5mm以上の厚さを有する多層シートであって、
    0.15mm未満の厚さを有する延伸ポリプロピレンフィルム層Fならびに0.15mm未満の厚さを有する延伸熱可塑性樹脂フィルム層Nを含み、
    前記層Fは成分(A)と(B)とを含む樹脂組成物から形成され、
    前記成分(A)は、成分(A1)および任意成分(A2)からなるポリプロピレン系樹脂であり、
    成分(A1)はエチレン、C4~C10-α-オレフィン、およびこれらの組合せからなる群より選択されるコモノマー由来単位を0~1重量%含むプロピレン(共)重合体100~60重量%、
    成分(A2)はエチレン由来単位を10~90重量%含むエチレン-α-オレフィン共重合体0~40重量%であり、
    成分(A)のMFR(230℃、荷重2.16kg)が0.1~15g/10分であり、
    成分(B)は無機充填材であり、
    前記層Fにおける成分(B)/[成分(A)+成分(B)]の重量比が0.5~60重量%であり、
    前記層Nは熱可塑性樹脂と任意に前記成分(B)とを含む樹脂組成物から形成され、
    成分(B)/[熱可塑性樹脂+成分(B)]の重量比が0~10重量%である、
    多層シート。
  2. 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である、請求項1に記載の多層シート。
  3. 前記層Fが二軸延伸ポリプロピレンフィルム層であり、前記層Nが二軸延伸熱可塑性樹脂フィルム層である、請求項1または2に記載の多層シート。
  4. 前記無機充填材が板状無機充填材である、請求項1~3のいずれかに記載の多層シート。
  5. 前記板状無機充填材がタルクである、請求項4に記載の多層シート。
  6. 前記層Fにおける成分(B)/[成分(A)+成分(B)]の重量比が20~55重量%である、請求項1~5のいずれかに記載の多層シート。
  7. 層Nの総厚さ/[層Nの総厚さ+層Fの総厚さ]の比が0.01~0.6である、請求項1~6のいずれかに記載の多層シート。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載のシートを成形してなる成形体。
  9. 請求項1~7のいずれかに記載のシートの製造方法であって、
    0.15mm未満の厚さを有する延伸ポリプロピレンフィルムF、ならびに0.15mm未満の厚さを有する延伸熱可塑性樹脂フィルムNが積層された前駆体を調製する工程1と、
    前記前駆体の最外層に加熱体を接触させて前記フィルムの層間を加熱融着する工程2とを備え、
    前記フィルムFは前記重量比の成分(A)と(B)とを含む樹脂組成物から形成され、
    前記フィルムNは前記重量比の熱可塑性樹脂と前記任意成分(B)とを含む樹脂組成物から形成され、
    前記フィルムFおよびフィルムNの融点をそれぞれTmFおよびTmNとするとき、
    TmF-TmN≧8(℃)を満たす、
    製造方法。
  10. 前記最外層の融点Tmoutと前記加熱体の温度Tが以下の条件を満たす、
    Tmout-T≧4(℃)
    請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記工程2を、加熱体として加熱ロールを用いて実施する、請求項9または10に記載の製造方法。
  12. 前記工程1が、
    i)前記成分(A)と(B)とを溶融混練して、下記方法で測定される無機充填材凝集体の最大径dmaxが500μm以下である原反シートを調製する工程と、
    1)原反シートを各軸方向に同じ延伸倍率で二軸延伸し、得られたフィルムの主面を観察して像を取得する。
    2)前記像を画像解析して、100cm中に存在する複数の無機充填材凝集体についてその直径を測定し、上記延伸倍率で割ることでdを求める。
    3)前記dの最大値をdmaxとする。
    ii)前記原反シートを、以下を満たす温度V(℃)で一軸または二軸延伸して、前記フィルムFを調製する工程と、
    -3≦V-TmF≦3 (TmFは前記原反シートの融点(℃)である)
    iii)当該フィルムFを前記フィルムNと積層する工程と、
    を備える、請求項9~11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 前記工程1が、
    I)前記層Fを形成するための樹脂組成物と、前記層Nを形成するための樹脂組成物を共押出して、原反シートとして、前記層Fに相当する層Fと前記層Nに相当する層Nとを含む共押出シートであって、以下の関係:
    TmF-TmN≦60℃ (TmFおよびTmNは、層Fおよび層Nの融点である)
    を満たす、共押出シートを調製する工程と、
    II)前記原反シートを、以下を満たす温度W(℃)で一軸または二軸延伸して多層延伸フィルムを調製する工程と、
    -3≦W-TmF≦3(TmFは原反シートにおける層Fの融点(℃)である)
    III)少なくとも2枚の当該多層延伸フィルムを異なる層同士が接触するように積層する工程と、を備える、
    請求項9~11のいずれかに記載の製造方法。
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