JP4362891B2 - 塗料用メタクレゾール樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ系缶内面塗料等の硬化剤として有用な塗料用メタクレゾール樹脂組成物に関し、短時間硬化性を有し、形成される塗膜の過マンガン酸カリウム消費量が小さく、曲げ等の加工性にも優れている塗料用メタクレゾール樹脂組成物に関するするものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、エポキシ樹脂−フェノール樹脂系塗料の性能は、配合されるフェノール樹脂の性質により大きく影響される。実際には、用いられるフェノール成分の種類と組成比、エポキシ樹脂/フェノール樹脂の比等により硬化性、衛生性、密着性、加工性等の性能のバランスを変化させ、それぞれの用途に応じた種々のフェノール樹脂が利用されている。
【0003】
近年、エポキシ系塗料の硬化剤であるフェノール樹脂に対しては、速硬化性を有することが要求されている。一般に、製缶用塗料の焼き付けは、150〜300℃で30秒〜20分間程度の条件で行われているが、このような高温の焼き付けでは、多大な熱エネルギーコストを必要とすると共に、高温におけるヒュームやヤニの発生があるため、低温でしかも短時間で硬化する硬化剤樹脂が要望されている。
【0004】
しかしながら、従来の二官能性フェノール類を主成分とした塗料用フェノール樹脂は、重量平均分子量が400〜800で比較的分子量が低く、且つ低分子量成分が多く残存するため、エポキシ樹脂系缶内面塗料の硬化剤として用いた場合、硬化性が低く、過マンガン酸カリウム消費量が高いという問題がある。
また、これらの特性を解決するため、三官能性フェノール類やビスフェノールAを用いた高分子量のレゾール型フェノール樹脂を用いる例もあるが、メチロール基濃度が高くなるため、硬化剤単独での自己縮合傾向も高まり、加工性に劣るという欠点があった。さらに、ビスフェノールAについては、内分泌攪乱物質としての疑いがもたれているため、缶内面塗料の硬化剤として使用するのは好ましくない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、エポキシ系缶内面塗料等の硬化剤として用いた場合、短時間硬化性を有し、且つ形成される塗膜の過マンガン酸カリウム消費量が小さく、加工性に優れている塗料用メタクレゾール樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記の課題解決のため鋭意研究を重ねた結果、分子量分布が狭く、アルコキシ化度の極めて大きな特定分子量のメタクレゾール樹脂が好ましいことを見いだした。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、メタクレゾールとホルムアルデヒド類とを塩基性触媒で反応させることにより得られるプレポリマーとアルコール類とを反応せしめることにより得られる反応生成物であって、重量平均分子量(Mw)が600〜1,800で且つ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下であり、メチロール基の60%以上がアルコキシ化されていることを特徴とする塗料用メタクレゾール樹脂組成物に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の塗料用メタクレゾール樹脂組成物を得るには、例えば下記の3段階の工程をとる方法を挙げることができる。第1工程において、メタクレゾールにホルムアルデヒドを付加してメチロール化し、第2工程において、メチロール化メタクレゾールの脱水縮合を進めプレポリマー化し、第3工程において、プレポリマーとアルコール類とを反応させてアルコキシ化する方法である。
【0008】
第1工程において、メタクレゾールとホルムアルデヒドとの反応が塩基性触媒の存在下で行われる。ここでは使用したメタクレゾールをすべて反応させ、メチロール化させることが好ましい。第1工程においては、メタクレゾールのメチロール化以外にメチロール化メタクレゾール類の脱水縮合が一部行われてもよい。
【0009】
第1行程において使用されるホルムアルデヒドとしては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。ホルムアルデヒドの使用量は、メタクレゾール1モルに対してホルムアルデヒド換算で2.0〜5.0モルが好ましく、3.0〜4.0モルがより好ましい。ホルムアルデヒドの使用量(モル比)が2.0モル未満の場合は、メチロール化されないメタクレゾールが残存することが多く、一方5.0モルを越えると、樹脂中のメチロール基濃度が高くなりすぎる傾向がある。
【0010】
第1工程において使用される塩基性触媒としては、通常のレゾール型フェノール樹脂を合成する際に使用される公知のものが使用できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、トリエチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミンのようなアミン類である。塩基性触媒の使用量は、メタクレゾール1モルに対して0.01〜0.3モルが好ましい。0.01モル未満ではメチロール化反応が遅く生産性が低下し、0.3モルを越えると反応が速すぎコントロールしにくい。
【0011】
第1工程の反応条件としては、反応温度を40〜55℃、反応時間を0.5〜3時間程度にするのが好ましい。第1行程において重要な点はメタクレゾールの全てをメチロール化することであり、そのためには反応温度をできるだけ低くすることであるが、40℃未満では反応が遅く生産性が低下する。
【0012】
第2工程においては、第1工程で得られるメチロール化メタクレゾール類を60℃以上の反応温度で脱水縮合させプレポリマー化する。プレポリマー化の程度は、得られるプレポリマーの分子量でコントロールする。この時の重量平均分子量は300〜1,000が好ましく、更には400〜800とすることが好ましい。重量平均分子量が300〜1,000を外れると第3工程でのアルコキシ化のコントロールが困難になる。
【0013】
第2工程の反応条件としては、反応温度を60〜80℃、反応時間を1.0〜3時間程度行えば良い。プレポリマー反応の終了後、使用した塩基性触媒は、公知の酸、例えば硫酸、酢酸、リン酸等で中和した後、水洗を行い、減圧濃縮して水分を除去する。
【0014】
第3工程においては、第2工程で得られるプレポリマーとアルコール類とを酸性触媒の存在下で反応させてプレポリマーのアルコキシ化が行われる。
【0015】
第3工程において使用される酸性触媒としては、通常公知の触媒例えばシュウ酸、ギ酸、酢酸等が利用でき、その量はメタクレゾール1モルに対して0.01〜0.1モル程度、好ましくは0.03〜0,07モル程度とするのが良い。
【0016】
第3行程において使用されるアルコール類としては、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール等が挙げられる。第3行程において重要な点はメチロール基の60%以上をアルコキシ化することであり、そのためには等量以上のアルコール類の配合が必要となる。プレポリマーに対するアルコール類の配合量は100〜400PHRが好ましく、更には150〜300PHRが好ましい。100PHRよりも低い場合メチロール基のアルコキシ化が不十分となり、400PHRより多い場合は、生産性が低下する。
【0017】
反応条件としては、反応温度を80〜130℃で、反応時間は縮合水を除去しながら3〜20時間程度行えば良い。
【0018】
前記第1、第2及び第3工程を行うことにより、重量平均分子量(Mw)が600〜1,800で且つ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下で、メチロール基の60%以上がアルコキシ化されている塗料用メタクレゾール樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
本発明の塗料用メタクレゾール樹脂組成物は上記のようにして得られるが、重量平均分子量(Mw)が600〜1,800、好ましくは800〜1,500で、且つ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下、好ましくは2.0以下であり、メチロール基の60%以上、好ましくは70%以上がアルコキシ化されているものである。本発明の塗料用メタクレゾール樹脂組成物はエポキシ系缶内面塗料の硬化剤として用いた場合、短時間硬化性を有し、且つ形成される塗膜は過マンガン酸カリウム消費量が小さく、曲げ等の加工性に極めて優れた性能を有するものである。重量平均分子量が600未満であると硬化性、過マンガン酸カリウム消費量が悪くなり、一方重量平均分子量が1,800を越えると加工性が悪くなる傾向にある。重量平均分子量と数平均分子量の比が3.0を越えると低分子量成分の影響により過マンガン酸カリウム消費量が大きくなり、高分子量成分の影響により加工性が悪くなる。また、アルコキシ化度が60%未満であると自己縮合傾向が高まるため加工性が極端に低下する。
【0020】
なお、重量平均分子量及び重量平均分子量と数平均分子量の比はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によりポリスチレン換算値で求め、アルコキシ化度はNMRより求めた値である。
【0021】
本発明の塗料用メタクレゾール樹脂組成物は、エポキシ系塗料の硬化剤として特に優れた性能を発揮するが、水酸基を有する、アクリル系、アルキド系、ポリエステル系などの硬化剤としても優れた性能を発揮する。また本発明の塗料用メタクレゾール樹脂組成物は、有機溶剤型塗料のみならず、水系塗料に対しても使用できる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。しかし本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0023】
《実施例1》
攪拌機、熱交換機、温度計のついた1Lの四つ口フラスコにメタクレゾール108.0g(1モル)、37%ホルマリン324g(3モル)を加え、触媒として25%水酸化ナトリウム水溶液16g(0.1モル)を添加し50℃で3時間、次いで70℃で3時間反応させた。反応終了後50%硫酸水溶液を添加して中和し、分離沈殿した樹脂を4回水洗した。更に、減圧脱水により水分を除去後、生成した重量平均分子量800のプレポリマー100部に対してn−ブタノールを400部加え、触媒としてギ酸を0.05モル添加し、100℃にて10時間反応させた。
更に、減圧濃縮により目的とする50%メタクレゾール樹脂ワニス300部を得た。生成物のGPCによる重量平均分子量は1,000、重量平均分子量と数平均分子量の比は1.5、NMRによるアルコキシ化度は80%であった。
【0024】
《実施例2》
実施例1と同様の反応装置にメタクレゾール108.0g(1モル)、37%ホルマリン432g(4モル)を加え、触媒としてトリエチルアミン40g(0.4モル)を添加し50℃で3時間、次いで70℃で4時間反応させた。反応終了後蟻酸を添加して中和し、分離沈殿した樹脂を4回水洗した。更に、減圧脱水により水分を除去後、生成した重量平均分子量600のプレポリマー100部に対してn−ブタノールを200部加え、触媒としてギ酸を0.03モル添加し、100℃にて6時間反応させた。
更に、減圧濃縮により目的とする50%メタクレゾール樹脂ワニス280部を得た。生成物のGPCによる重量平均分子量は700、重量平均分子量と数平均分子量の比は1.7、NMRによるアルコキシ化度は75%であった。
【0025】
《実施例3》
実施例1と同様の反応装置にメタクレゾール108.0g(1モル)、80%パラホルムアルデヒド188g(ホルムアルデヒドとして5モル)、水200gを加え、触媒として25%水酸化ナトリウム水溶液64g(0.4モル)を添加し50℃で1時間、次いで80℃で2時間反応させた。反応終了後酢酸を添加して中和し、分離沈殿した樹脂を4回水洗した。更に、減圧脱水により水分を除去後、生成した重量平均分子量1,000のプレポリマー100部に対してn−アミルアルコールを150部加え、触媒として酢酸を0.03モル添加し、100℃にて10時間反応させた。
更に、減圧濃縮により目的とする50%メタクレゾール樹脂ワニス310部を得た。生成物のGPCによる重量平均分子量は1,400、重量平均分子量と数平均分子量の比は2.0、NMRによるアルコキシ化度は70%であった。
【0026】
《比較例1》
実施例1と同様の反応装置にメタクレゾール108.0g(1モル)、37%ホルマリン324g(3モル)を加え、触媒として25%水酸化ナトリウム水溶液1.6g(0.01モル)を添加し50℃で3時間、次いで70℃で3時間反応させた。反応終了後50%硫酸水溶液を添加して中和し、分離沈殿した樹脂を3回水洗した。更に、減圧脱水により水分を除去後、生成した重量平均分子量600のプレポリマー100部に対してn−ブタノールを80部加え、触媒としてギ酸を0.05モル添加し、100℃にて10時間反応させた。
更に、減圧濃縮により50%メタクレゾール樹脂ワニス220部を得た。生成物のGPCによる重量平均分子量は1,400、重量平均分子量と数平均分子量の比は3.2、NMRによるアルコキシ化度は65%であった。
【0027】
《比較例2》
実施例1と同様の反応装置に同様の反応装置にメタクレゾール108.0g(1モル)、37%ホルマリン432g(4モル)を加え、触媒として25%水酸化ナトリウム水溶液3.2g(0.02モル)を添加し50℃で3時間、次いで70℃で2時間反応させた。反応終了後50%硫酸水溶液を添加して中和し、分離沈殿した樹脂を3回水洗した。更に、減圧脱水により水分を除去後、生成した重量平均分子量700のプレポリマー100部に対してn−ブタノールを150部加え、100℃にて2時間反応させた。
更に、減圧濃縮により50%メタクレゾール樹脂ワニス240部を得た。生成物のGPCによる重量平均分子量は900、重量平均分子量と数平均分子量の比は1.8、NMRによるアルコキシ化度は30%であった。
【0028】
《比較例3》
実施例1と同様の反応装置にパラクレゾール75.6g(0.7モル)、メタクレゾール32.4g(0.3モル)、37%ホルマリン243g(3モル)を加え、触媒として25%水酸化ナトリウム水溶液48g(0.3モル)を添加し50℃で3時間、次いで80℃で1時間反応させた。反応終了後25%硫酸水溶液を添加して中和し、分離沈殿した樹脂を3回水洗した。更に、減圧脱水により水分を除去後、生成した重量平均分子量700のプレポリマー100部に対してn−ブタノールを150部加え、100℃にて7時間反応させた。
更に、減圧濃縮により50%クレゾール樹脂ワニス200部を得た。生成物のGPCによる重量平均分子量は1,300、重量平均分子量と数平均分子量の比は1.8、NMRによるアルコキシ化度は70%であった。
【0029】
[塗膜性能試験]
上記実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたクレゾール樹脂を用いて下記のようにして塗料を調製し、その塗料をアルミ板に塗布後焼付け処理を行い、加工性、過マンガン酸カリウム消費量、密着性の試験を実施した。各種試験方法を下記に示し、その試験結果を表1に示す。
【0030】
1.塗料の調製
エピコート1009(油化シェルエポキシ(株)製エポキシ樹脂)30部をブチルセロソルブ50部とキシレン50部の混合溶剤に溶解して固形分30%のエポキシ樹脂溶液とした。このエポキシ樹脂溶液と実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたクレゾール樹脂を固形分の重量比が9対1となるように混合し試験塗料を得た。
【0031】
2.塗膜性能試験方法
上記の方法で調製した各塗料を0.3mmのアルミ板(5052材)に乾燥塗膜厚5〜7μmとなるようにバーコーターで塗布して、240℃で2分間焼き付けを行った。そして、以下の示す塗膜性能を測定した。
(1)ゾル分率
塗装したアルミ板を所定の寸法に切り出し、メチルエチルケトンの沸点で1時間抽出し、抽出前後の重量差と塗膜重量から未硬化成分(ゾル分)の比率を求めた。
(2)過マンガン酸カリウム消費量
塗膜1cm2 当たり1mlのイオン交換水を用い130℃で30分のレトルト抽出を行い、得られた試験液について食品衛生法記載の測定法(厚生省434号)に準じて測定した。
(3)加工性
塗装したアルミ板を3cm×5cmに切断した試験片を、塗装面が外側になるように予備折り曲げし、試験片と同じ板厚のアルミ板3枚をスペーサーとしてはさみこみ、次いで3Kgの鉄ブロックを30cmの高さからから落下させて曲げ加工を施した。この折り曲げ試験片の折り曲げ加工部を1%食塩水中に漬積させ、試験片を+極にして6Vの直流負荷をかけたときの電流値(mA)を読みとって評価した。
【0032】
3.試験結果
【表1】
【0033】
【発明の効果】
本発明の塗料用メタクレゾール樹脂組成物は、エポキシ系缶内面塗料等の硬化剤として用いた場合、短時間硬化性を有し、且つ形成される塗膜は過マンガン酸カリウム消費量が小さく、加工性に優れた性能を有するので、たとえば食物などを保存する缶詰や飲料用缶などの金属製缶の缶内面塗料の硬化剤として好適に使用しうるものである。
Claims (1)
- メタクレゾールとホルムアルデヒド類とを塩基性触媒で反応させることにより得られるプレポリマーとアルコール類とを反応せしめることにより得られる反応生成物であって、重量平均分子量(Mw)が600〜1,800で且つ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下であり、メチロール基の60%以上がアルコキシ化されていることを特徴とする塗料用メタクレゾール樹脂組成物。
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