JP4362145B2 - 交流発電機 - Google Patents
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Description
車両用交流発電機は、ランドル型の回転子7がアルミニウム製のフロントブラケット1及びリヤブラケット2から構成されたケース3内にシャフト6を介して回転自在に装着され、固定子8が回転子7の外周側を覆うようにケース3の内壁面に固着されて構成されている。
シャフト6は、フロントブラケット1及びリヤブラケット2に回転可能に支持されている。このシャフト6の一端にはプーリ4が固着され、エンジンの回転トルクをベルト(図示せず)を介してシャフト6に伝達できるようになっている。
回転子7に電流を供給するスリップリング9がシャフト6の他端部に固着され、一対のブラシ10がこのスリップリング9に摺接するようにケース3内に配設されたブラシホルダ11に収納されている。固定子8で生じた交流電圧の大きさを調整するレギュレータ18がブラシホルダ11に嵌着されたヒートシク17に接着されている。固定子8に電気的に接続され、固定子8で生じた交流を直流に整流する整流器12がケース3内に装着されている。
固定子巻線16は、a相固定子巻線部16a、b相固定子巻線部及びc相固定子巻線部から構成されている。a相固定子巻線部16a、b相固定子巻線部及びc相固定子巻線部は互いに1スロット15aずつずれて配置され、かつ星型結線されている。
図16はa相固定子巻線部16aの巻線図であり、b相固定子巻線部、c相固定子巻線図は示されていない。なお、この図では図中、実線はリヤブラケット2側の導線(後述する導体セグメントの連結部である。)を示し、点線はフロントブラケット1側の導線(後述する導体セグメントのつなぎ部である。)を示している。
そして、最後にはスロット番号34の第3層目である3番地からリヤブラケット2側に出た導線が反時計方向に延びてスロット番号1の第1層目の1番地に到達し、ここが第1巻線部54の終点となる。
そして、最後にはスロット番号1の3番地からフロントブラケット1側に出た導線は時計方向に延びてスロット番号34の4番地に到達し、ここが第2巻線部55の終点となる。この終点には中性点引き出し線101が接続されている。
なお、b相固定子巻線部及びc相固定子巻線部については、a相固定子巻線部と同様であり、その説明は省略する。
導線の構成要素である導体セグメント50は、絶縁被覆された断面丸形状の銅線材を略U字状に成形したもので、スロット15a内に収まる一対の直線部51a、51bと、直線部51a、51b同士を連結した連結部52と、直線部51a、51bの先端部に設けられ両開きして隣接した導体セグメント50同士をつなぐつなぎ部53a、53bとから構成されている。
まず、図16に示すように、所定のスロット番号及び番地に、導体セグメント50の一方の直線部51a及び3スロット離れた他方の直線部51bをリヤブラケット2側から挿入し、各スロット15a内では、導体セグメント50の直線部51a、51bが径方向に1列に4本並んで配列される。
そして、図15中一点鎖線で示されるように、リヤ側においては、遠心ファン5の回転により、外気が整流器12のヒートシンク19及びレギュレータ18のヒートシンク17にそれぞれ対向して設けられた吸気孔2aを通じて吸い込まれて整流器12及びレギュレータ18を冷却し、その後遠心ファン5により遠心方向に曲げられて固定子巻線16のリヤ側のコイルエンド16bを冷却し、排気孔2bより外部に排出される。
ここで、固定子巻線16は、発熱度合いが高く、高温度となるとその出力特性が低下してしまうことから、そのコイルエンド16bを遠心ファン5と排気孔1b、2bとの間に位置させ、確実に冷却できるように構成されている。
また、内周側接続部56と外周側接続部57とが径方向に一列に配列されているので、遠心ファン5から吐出された冷却風が外周側接続部57に衝突しにくく、外周側の導体セグメント50の温度が上昇して外周側接続部57の半田が溶融滴下し、隣接した他の導体セグメント50と短絡するという問題点もあった。
また、車両用交流発電機は車両の中で最も振動の大きいエンジンに取り付けられるので、内周側接続部56と外周側接続部57とが振動により接触して短絡するという問題点もあった。
このTIG溶接による接続においては、図21及び図22に示されるように、銅製の挟み込み治具40を一直線に並べ、挟み込み治具40の先端部同士を突き合わせて導体セグメント50を保持し、溶接時の発熱を挟み込み治具40を介して放熱用治具41に伝達させて放熱するようにしていたが、挟み込み治具40と導体セグメント50との接触面積が小さいので、溶接時の接続部56、57での熱が十分に放熱できず、接続部56、57近傍のつなぎ部53a、53bまでも皮膜焼けが発生して導体セグメント50同士の良好な絶縁状態が得られないという問題点もあった。
また、治具40は一列に並んだ接続部56、57を纏めて保持しているので、保持性が不確実で、TIG溶接が不安定になるという問題点もあった。
また、治具40は軟質の銅で構成されており、この先細の治具40同士が当接しているので、破損し易く、治具40の寿命が極端に悪いという問題点もあった。
各接続部はそれぞれ周方向にずれて設けられており、前記固定子鉄心の内周側にある各内周側接続部同士は同じ高さであり、また前記固定子鉄心の外周側にある各外周側接続部同士は同じ高さであり、また、各前記内周側接続部と前記固定子鉄心の端面との間の距離と、各前記外周側接続部と前記固定子鉄心の端面との間の距離とは、異なり、第1のスロット内の第1層目から延出した前記第1の導線部の先端部と第2のスロット内の第2層目から延出された前記第2の導線部の先端部とが接続された外周側接続部と、前記第1のスロット内の第3層目から延出した前記第1の導線部の先端部と前記第2のスロット内の第4層目から延出された前記第2の導線部の先端部とが接続された内周側接続部とは1/2スロット分離れており、前記第1の導線部、前記第2の導線部及び前記接続部は、一連の導線で構成されている。
参考例1.
図1はこの発明の参考例1に係る車両用交流発電機の固定子30の要部を示す斜視図、図2は図1の固定子30をフロントブラケット1側(接続部側)から視たときの固定子鉄心及び接続部を示す平面図、図3は図2の要部拡大図である。
図1において、固定子鉄心15は、円筒状に成形され、溝方向を軸線方向とするスロット15aが内周側に開口するようにして周方向に等角ピッチで36個形成されている。
固定子巻線32は、絶縁被覆された銅線を略U字状に成形してなる複数の導体セグメント50から構成されており、固定子鉄心15の各スロット15aに図15の巻線図に示したように装着されている。
また、遠心ファン5から吐出された冷却風が外周側の導体セグメント50のつなぎ部53a、53bに衝突し易くなり、固定子巻線32の冷却性が向上する。
また、内周側接続部32aと外周側接続部32bとが十分に離れているので、接続部32a、32bが振動により接触して短絡するという不具合も回避することができた。
上記参考例1では、導体セグメント50の先端部同士を半田付けにより接合したが、この参考例2では、導体セグメント50の先端部同士を半田溶接により接合し、さらに表面に絶縁ワニスを塗布して内周側接続部33a、外周側接続部33bを形成している。なお、他の構成は上記参考例1と同様である。
この参考例2による固定子30Bでは、参考例1と同様の効果を得ることができるとともに、絶縁ワニスが隣接した内周側接続部33a、外周側接続部33bを跨いで形成されるようなことはなく、絶縁ワニスが冷却風の通路を塞いで騒音の発生や固定子巻線33の冷却性の低下を招くといったことを防止することができる。
この参考例3の固定子30Bでは、図5に示されるように、内周側接続部34aの軸線方向高さを外周側接続部34bの軸線方向高さより高くしている。他の構成は上記参考例2と同様である。
この参考例3による固定子30Bでは、固定子巻線34の内周側接続部34aと外周側接続部34bとの距離をさらに大きくできるので、溶接作業性及び歩留まりを向上させることができるとともに、振動による接続部34a、34b同士の短絡を防止することができる。
この参考例4の固定子30Cでは、図6に示されるように、内周側接続部35a及び外周側接続部35bが径方向に対して回転子7の回転方向に沿うように傾斜して設けられている。ここでは、内周側接続部35a及び外周側接続部35bが、固定子巻線35の軸心を通る半径線に対して30°傾斜している。他の構成は上記参考例2と同様である。
この参考例4による固定子30Cでは、接続部35a、35bの傾きが遠心ファン5からの冷却風の吐出方向に略一致し、冷却風が円滑に排出される。
本願の発明者がこの参考例4の固定子30Cを従来の固定子8に代えて車両用交流発電機を回転子7が10000rpmの条件下で作動させて風騒音を測定したところ、従来のものと比較して5デシベルの騒音低減効果が得られた。
この例では、図7及び図8に示すように、径方向に重ね合わされたつなぎ部53a、53bの先端部を一対の挟み込み治具40で保持した状態で、つなぎ部53a、53bの先端部同士をそれぞれTIG溶接して接続する。
この時、一方の挟み込み治具40の先端が他方の挟み込み治具40内の径方向に重ね合わされた導体セグメント50のつなぎ部53a、53bを押し付けているので、つなぎ部53a、53bは確実に保持され、安定した溶接作業を行うことができる。
また、挟み込み治具40の先細の先端部同士が当接した、図20及び図21に示された従来のものと比較して銅製の治具40は破損しにくくなり、本願の発明者が実験したところ、挟み込み治具40の寿命が約10倍に延びる結果が得られた。
この参考例5の固定子30Dでは、図9に示されるように、内周側接続部36a及び外周側接続部36bが、周方向に1/2スロットずれて、かつ、径方向に間隙Aを有するように配列されている。他の構成は上記参考例2と同様である。
この参考例5では、内周側接続部36aと外周側接続部36bとの間隙が参考例2と比較してさらに広く確保することができるので、TIG溶接時に隣接する接続部36a、36bを巻き込んで溶接するようなことが防止され、溶接作業性及び歩留まりをさらに向上させることができる。
この時も、一方の挟み込み治具40の先端が他方の挟み込み治具40内の径方向に重ね合わされた導体セグメント50のつなぎ部53a、53bを押し付けているので、つなぎ部53a、53bは確実に保持され、安定したTIG溶接作業を行うことができる。
図12はこの発明の参考例6の車両用交流発電機の固定子30Eの巻線図である。
図12はa相固定子巻線部161の巻線図であり、b相固定子巻線部、c相固定子巻線図は示されていない。なお、この図では図中、実線はリヤブラケット2側の導線100を示し、点線はフロントブラケット1側の導線100を示している。
実際には、導線100が巻装されるスロット15aを1つずつずらして6相分の固定子巻線部161が形成され、固定子巻線部161が3相分ずつ星型結線されて2組の3相固定子巻線が形成される。
この固定子30Eの固定子鉄心15Aには、回転子7の磁極数(16)に対応して、3相固定子巻線を2組収容するように、スロット15aが96箇所に等間隔に形成されている。また、固定子巻線101は、1本の導線100が、固定子鉄心15Aの端面側のスロット15a外で折り返されて、6スロット数毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように波巻きされて巻装された複数の巻線部161から構成されている。
つまり、各スロット15a内において第1層目からフロントブラケット1側に導出された導線100は、6スロット離れたスロット15a内の第2層目に導入され、リアブラケット2側に導出された後、再び6スロット離れたスロット15a内の第1層目に導入される。また、第4層目からフロントブラケット1側に導出された導線100は、6スロット離れたスロット15a内の第3層目に導入され、リアブラケット2側に導出された後、再び6スロット離れたスロット15a内の第4層目に導入される。なお、導線100は、絶縁被覆された一連の銅線材が用いられている。
図14はこの発明の実施の形態1の固定子30Fの要部をフロントブラケット1から視たときの斜視図であり、スロット15a内の第1層目から延出した第1の導線部110aの軸線方向に延びた先端部Dと、周方向に6スロット離れたスロット15a内の第2層目から延出された第2の導線部110bの軸線方向に延びた先端部Dとは連続的に接続され、一連の導線110で構成されている。また、スロット15a内の第3層目から延出した第1の導線部110aの軸線方向に延びた先端部Eと、周方向に6スロット離れたスロット15a内の第4層目から延出された第2の導線部110bの軸線方向に延びた先端部Eとは連続的に接続され、一連の導線110で構成されている。両先端部D、Eは、1/2スロット15a分周方向に離れているとともに、内周側の先端部Eは外周側の先端部Dよりも高く配置されている。
また、内周側の先端部Eは外周側の先端部Dよりも高く配置されているので、先端部Dと先端部Eとの間の距離が大きくなり、振動による短絡の発生を抑制することができる。
また、回転子の回転により生じた冷却風は固定子巻線のコイルエンドを円滑に通過し、固定子は効率的に冷却され、固定子の温度上昇が抑えられる。
また、内周側接続部と固定子鉄心の端面との間の距離と、外周側接続部と固定子鉄心の端面との間の距離とは異なるので、外周側接続部と内周側接続部との間の隙間を大きく確保でき、振動に起因するショートの発生を抑えることができる。
また、第1のスロット内の第1層目から延出した第1の導線部の先端部と第2のスロット内の第2層目から延出された第2の導線部の先端部とが接続された外周側接続部と、前記第1のスロット内の第3層目から延出した第1の導線部の先端部と前記第2のスロット内の第4層目から延出された第2の導線部の先端部とが接続された内周側接続部とは1/2スロット分離れているので、周方向において等分間隔で内周側接続部と外周側接続部とが交互に配列され、回転子の回転により生じた冷却風は固定子巻線のコイルエンドを均等に通過し、固定子は偏ることなく効率的に冷却され、固定子は平均的に温度上昇が抑えられる。
また、第1の導線部及び第2の導線部は一連の導線であり、接続部では連続的に接続されているので、接続部では溶接等の作業が不要であり、固定子巻線が簡単に形成される。
Claims (5)
- 回転方向に沿ってN極、S極を交互に形成する回転子と、この回転子を囲った固定子鉄心及びこの固定子鉄心の軸線方向に延び、かつ周方向に所定ピッチで複数形成されたスロットに装着された多相固定子巻線とを有し、
前記多相固定子巻線は、前記固定子鉄心の端面の前記スロット外において、前記スロット内の第1層目及び第3層目から延出した第1の導線部の軸線方向に延びた先端部と、周方向に所定スロット数離れたスロット内の第2層目及び第4層目から延出された第2の導線部の軸線方向に延びた先端部とが、それぞれ接続された複数の接続部を有し、かつ接続部が周方向に複数列に配列されたコイルエンドが形成されている交流発電機であって、
各接続部はそれぞれ周方向にずれて設けられており、
前記固定子鉄心の内周側にある各内周側接続部同士は同じ高さであり、また前記固定子鉄心の外周側にある各外周側接続部同士は同じ高さであり、
また、各前記内周側接続部と前記固定子鉄心の端面との間の距離と、各前記外周側接続部と前記固定子鉄心の端面との間の距離とは、異なり、
第1のスロット内の第1層目から延出した前記第1の導線部の先端部と第2のスロット内の第2層目から延出された前記第2の導線部の先端部とが接続された外周側接続部と、前記第1のスロット内の第3層目から延出した前記第1の導線部の先端部と前記第2のスロット内の第4層目から延出された前記第2の導線部の先端部とが接続された内周側接続部とは1/2スロット分離れており、
前記第1の導線部、前記第2の導線部及び前記接続部は、一連の導線で構成されている交流発電機。 - 第1の導線部の先端部と第2の導線部の先端部とが径方向において重なって接続部が形成されている請求項1に記載の交流発電機。
- 前記回転子の回転で生じた冷却風を前記固定子鉄心の内周側から外周側に案内するように前記接続部が径方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の交流発電機。
- 前記内周側接続部と、前記外周側接続部とは径方向において隙間がある請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の交流発電機。
- 前記接続部は絶縁性樹脂で被覆されている請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の交流発電機。
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