JP4359437B2 - ハイポイドギヤの設計方法、及び、これを用いて設計されたハイポイドギヤ - Google Patents

ハイポイドギヤの設計方法、及び、これを用いて設計されたハイポイドギヤ Download PDF

Info

Publication number
JP4359437B2
JP4359437B2 JP2003027444A JP2003027444A JP4359437B2 JP 4359437 B2 JP4359437 B2 JP 4359437B2 JP 2003027444 A JP2003027444 A JP 2003027444A JP 2003027444 A JP2003027444 A JP 2003027444A JP 4359437 B2 JP4359437 B2 JP 4359437B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gear
pinion gear
power transmission
hypoid
transmission efficiency
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003027444A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2004239322A (ja
Inventor
正樹 狩野
康平 斎木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Subaru Corp
Original Assignee
Fuji Jukogyo KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Jukogyo KK filed Critical Fuji Jukogyo KK
Priority to JP2003027444A priority Critical patent/JP4359437B2/ja
Publication of JP2004239322A publication Critical patent/JP2004239322A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4359437B2 publication Critical patent/JP4359437B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Gears, Cams (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リングギヤにピニオンギヤが噛合されて構成されるハイポイドギヤの設計方法、及び、これを用いて設計されたハイポイドギヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両の変速機やアクスル等に用いられるハイポイドギヤの基本諸元は、当該ハイポイドギヤに要求される仕様に基づき、周知のグリーソンプログラムを用いて算出される。グリーソンプログラムは、ハイポイドギヤの強度等に主眼を置いて諸元を算出するものであり、同時に、算出した諸元に基づくある特定の負荷状態での動力伝達効率を算出する。
【0003】
また、グリーソンプログラム等によって基本諸元が算出されたハイポイドギヤにおけるピニオンギヤの捩れ角を、所定の推奨値とするための手段として、例えば(9)式に示すグリーソン推奨式が知られている。
【0004】
ψp=25+5・(Zg/Zp1/2+(90・E/D) …(9)
ここで、ψp:ピニオンギヤの捩れ角
g:リングギヤの歯数
p:ピニオンギヤの歯数
E:ピニオンギヤのリングギヤに対するオフセット量
D:リングギヤのピッチ円半径
である。
【0005】
このようなグリーソンプログラム等を用いて基本諸元が決定されたハイポイドギヤにおいて、静粛性の向上等を目的として、例えば特許文献1には、ハイポイドギヤのリングギヤ歯面をグリーソンプログラムを用いたリングギヤセッティング計算によって決定した後、リングギヤ歯面とピニオンギヤ歯面との間のトータル噛合率を算出し、算出したトータル噛合率が目標値となるまで、カッタ圧力角を変更することにより、ドライブ側圧力角とコースト側圧力角の少なくとも何れかを変更する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−32908号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、車両等においては、排ガス規制や地球温暖化等に対応して燃費を更に向上することが求められている。このような要求への対策として、ハイポイドギヤによる動力伝達効率の向上を図ることが考えられる。特に、フロント側とリヤ側とで2セットのハイポイドギヤを必要とする4輪駆動車においては、ハイポイドギヤによる動力伝達ロスが全体の約半分を占めるため、ハイポイドギヤの伝達効率を向上させることは重要となる。
【0008】
しかしながら、従来のハイポイドギヤにおいては、動力伝達効率自体を積極的に向上させるための具体的な対策及び諸元の設定等が十分に検討されていなかった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、動力伝達効率を効果的に向上させることのできるハイポイドギヤの設計方法、及び、これを用いて設計されたハイポイドギヤを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、要求される仕様に基づいて算出したハイポイドギヤの基本諸元のうちの少なくとも何れか1つを、ピニオンギヤのリングギヤに対する歯筋方向滑り率の算出項と、上記ピニオンギヤの上記リングギヤに対する歯形方向滑り率の算出項とを有して構成される動力伝達効率の計算式に基づいて、上記ハイポイドギヤの動力伝達効率が向上する側に補正することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、請求項1記載の発明において、上記動力伝達効率の計算式は、
η=〈1+(Tmax/T)1/2・{μ・secφ
・[〔cosψg・(tanψp−tanψg)〕2
+〔A・(1−E/D)162]1/2}+B〉-1
で規定されることを特徴とする。
【0012】
ここで、Tmax:歯車の許容トルク
T:入力トルク
μ:摩擦係数
φ:圧力角
ψp:ピニオンギヤの捩れ角
ψg:リングギヤの捩れ角
E:ピニオンギヤのリングギヤに対するオフセット量
D:リングギヤのピッチ円半径
A:E=0である場合の歯形方向滑り率
B:ベアリングロス
であり、歯筋方向滑り率の算出項は、cosψg・(tanψp−tanψg)〕2であり、歯形方向滑り率の算出項は〔A・(1−E/D)162である。
【0013】
また、請求項3記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、請求項1または請求項2記載の発明において、上記基本諸元として算出された上記ピニオンギヤの上記リングギヤに対するオフセット量を上記動力伝達効率の計算式に基づいて補正することによって、上記動力伝達効率を向上させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、請求項3記載の発明において、上記ピニオンギヤの上記リングギヤに対するオフセット量は”0”ではないことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の発明において、上記基本諸元として算出された上記ピニオンギヤの捩れ角を上記動力伝達効率の計算式に基づいて補正することによって、上記動力伝達効率を向上させることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、請求項5記載の発明において、上記ピニオンギヤの歯数を増加させることで上記ピニオンギヤの捩れ角を減少させることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、請求項5記載の発明において、上記ピニオンギヤの歯数はそのままの状態で、上記ピニオンギヤの捩れ角自体を補正することを特徴とする。
【0018】
また、請求項8記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、請求項7記載の発明において、上記ピニオンギヤの捩れ角自体の補正に、上記ピニオンギヤと上記リングギヤとのギヤ比に応じた制限を加えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、請求項5記載の発明において、上記リングギヤに対する上記ピニオンギヤの歯当たり位置を変化させることによって、動力伝達に寄与する実質的な上記ピニオンギヤの捩れ角を補正することを特徴とする。
【0020】
まあ、請求項10記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、請求項1または請求項2記載の発明において、上記基本諸元として算出された上記ピニオンギヤの上記リングギヤに対するオフセット量を上記動力伝達効率の計算式に基づいて補正する手順と、上記基本諸元として算出された上記ピニオンギヤの捩れ角を上記動力伝達効率の計算式に基づいて補正する手順とを有し、上記ピニオンギヤの捩れ角を補正する手順は、上記ピニオンギヤの歯数を増加させることで上記ピニオンギヤの捩れ角を減少させる手順と、上記リングギヤに対する上記ピニオンギヤの歯当たり位置を変化させることによって、動力伝達に寄与する実質的な上記ピニオンギヤの捩れ角を補正する手順と、上記ピニオンギヤの捩れ角自体を補正する手順とを備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項11記載の発明によるハイポイドギヤの設計方法は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の発明において、上記基本諸元として算出された上記ピニオンギヤと上記リングギヤとの捩れ角の差を上記動力伝達効率の計算式に基づいて補正することによって、上記動力伝達効率を向上させることを特徴とする。
【0022】
また、請求項12記載の発明によるハイポイドギヤは、要求される仕様に基づいて算出した基本諸元のうちの少なくとも何れか1つが、請求項1乃至請求項11の何れかに記載のハイポイドギヤの設計方法によって補正されたことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図面は本発明の実施の一形態に係わり、図1はハイポイドギヤの概略構成を示す斜視図、図2は歯筋方向滑り率の算出方法を導出するための説明図、図3は基本諸元で構成されたハイポイドギヤへの伝達トルクと動力伝達効率との関係を示す図表、図4はオフセット量と各滑り率との関係を示す図表、図5はピニオンギヤの歯数と動力伝達効率との関係を示す図表、図6は各歯当たり位置でのオフセット量と動力伝達効率との関係を示す図表、図7はピニオンギヤの捩れ角と動力伝達効率との関係を示す図表、図8はギヤ比と補正可能な捩れ角との関係を示す図表である。
【0024】
図1において符号1は、例えば4輪駆動車のフロントディファレンシャル装置に駆動力を伝達するためのハイポイドギヤを示し、このハイポイドギヤ1は、大径のリングギヤ2と、このリングギヤ2に噛合する小径のピニオンギヤ3とを有して構成されている。
【0025】
ここで、図1において、リングギヤ2の軸4方向に沿う方向をz方向、ピニオンギヤ3の軸5方向に沿う方向をx方向、これらに直交する方向をy方向として説明する。
【0026】
このハイポイドギヤ1は、搭載される車両に要求される仕様等に基づいて、周知のグリーソンプログラムを用いて算出した基本諸元に対し、動力伝達効率ηを考慮した各種補正(後で詳述する)を行うことにより、最終的な諸元が設定されるものである。
【0027】
ここで、本実施の形態において、グリーソンプログラムを用いて算出されたハイポイドギヤ1の主要な基本諸元は、例えば、
リングギヤ2の歯数:Zg=40
ピニオンギヤ3の歯数:Zp=9
ギヤ比:(Zg/Zp)=4.44
リングギヤ2の捩れ角:ψg=32(deg)
ピニオンギヤ3の捩れ角:ψp=50(deg)
リングギヤ2のピッチ円半径:D=170(mm)
ピニオンギヤ3のリングギヤ2に対するオフセット量:E=23(mm)
リングギヤ2のピッチ角:Γ=74(deg)
ピニオンギヤ3のピッチ角:γ=14(deg)
リングギヤ2の円錐距離:Ag=88.16(mm)
ピニオンギヤ3の円錐距離:Ap=97.94(mm)
リングギヤ2とピニオンギヤ3との軸角:Σ=90(deg)
リングギヤ2とピニオンギヤ3との摩擦係数:μ=0.05
圧力角:φ=17(deg)
であるものとして説明する。
【0028】
ところで、動力伝達効率ηを算出するための計算式としては、(1)式に示すグリーソンColemanの計算式が広く知られている。グリーソンColemanの計算式は、ベアリングロスをB(例えば、B=1/100(1%))とすると、
η=〈1+(Tmax/T)1/2・{μ・secφ
・〔(tanψp−tanψg2+A21/2+B}〉-1 …(1)
で表される。
【0029】
ここで、Tmaxは歯車の許容トルク、Tは入力トルクである。また、(1)式中、(Tmax/T)1/2は動力伝達効率ηに対する荷重の影響を示す項であり、μ・secφは動力伝達効率ηに対する摩擦係数の影響を示す項である。さらに、(1)式中、(tanψp−tanψg)は歯筋方向滑り率の算出項であり、Aは歯形方向滑り率の算出項である。なお、(1)式において、歯形滑り率の算出項は、例えば、A=0.15の固定値に規定されている。
【0030】
本出願人は、このグリーソンColemanの計算式に基づいて精査研究を行った結果、動力伝達効率ηをより高精度に算出するための計算式として、(2)式に示す新たな計算式を見いだした。
【0031】
η=〈1+(Tmax/T)1/2・{μ・secφ
・[〔cosψg・(tanψp−tanψg)〕2
+〔A・(1−E/D)162]1/2}+B-1〉 …(2)
ここで、図2を参照して、(2)式における歯筋方向の滑り率の滑り率及び歯形方向の滑り率の算出項の導出方法について説明する。
【0032】
図2において、リングギヤ2の凹歯面とピニオンギヤ3の凸歯面との噛合部をピッチ点Pとし、このピッチ点Pにおけるリングギヤ2の周速度をVg、ピッチ点Pにおけるピニオンギヤ3の周速度をVp とする。なお、図中符号2a,2b,2cは、リングギヤ2の小端、リングギヤ2の大端、及びリングギヤ2のピッチ円をそれぞれ示す。また、符号3a,3bは、ピニオンギヤ3の小端、及びピニオンギヤ3の大端をそれぞれ示す。
【0033】
図2に示すように、ハイポイドギヤ1においては、ピニオンギヤ3がリングギヤ2に対してオフセット量Eでオフセットされる場合、ピニオンギヤ3の捩れ角ψpはリングギヤ2の捩れ角ψgよりも相対的に大きく設定され、また、動力伝達時における各周速度Vg,Vpの大きさ及び方向も異なる。しかし、両ギヤ2,3は噛合されているため、ピッチ点Pにおける各周速度Vg,Vpの歯面に垂直な成分は等しくなる。すなわち、
p・cosψp=Vgcosψg …(3)
となる。
【0034】
また、各周速度Vg,Vpの歯筋方向成分は、それぞれVg・sinψg,Vp・sinψpであり、両者の差が歯筋方向の滑り速度VSLとなる。すなわち、
SL=Vp・sinψp−Vg・sinψg …(4)
となる。
【0035】
従って、(3)式を(4)式に代入して整理すると、歯筋方向滑り速度は、
SL=(Vg・cosψg)・(tanψp−tanψg) …(5)
となる。
【0036】
そして、(5)式を変形すると、歯筋方向滑り率(VSL/Vg)が、
SL/Vg=cosψg・(tanψp−tanψg) …(6)
として導出できる。
【0037】
なお、歯筋方向滑り率(VSL/Vg)は、両ギヤ2,3の関係から、
SL/Vg=〔E/(Ap・tanγ+AgtanΓ)〕
・(sinΣ・secψp/cosγ・cosΓ) …(7)としても表される。
【0038】
ところで、ハイポイドギヤ1のオフセット量Eが仮にE=0であるとすると、各ギヤ2,3の捩れ角ψg,ψpは等しくなり、周速度Vg,Vpも等しくなる。このときの滑りは、ヘリカルギヤと同様に、歯形方向のみに生じる。すなわち、各ギヤ2,3の歯面は、ピッチ点を通過する前は互いに接近する方向に作用し、通過後は互いに離間する方向に作用する。このため、これらの間には歯形方向の滑りが生じる。この場合の歯形方向滑り率は、ヘリカルギヤ並みのであり、約0.15である。
【0039】
また、両ギヤ2,3にオフセットがある場合、これらの周速度Vg,Vpが変化し、歯当たり位置が噛合の進行に伴って歯筋方向にも変化するため、ピニオンギヤ3直径が増加されるとともに、両ギヤ2,3間の圧力角φが減少され、実質的な歯形方向滑り率(VSP/Vg)が小さくなる。これらのことを考慮すると、歯形方向滑り率(VSP/Vg)は、
SP/Vg=0.15・〔1−(E/D)〕16 …(8)
と近似できる。
【0040】
次に、グリーソンプログラムを用いて算出した基本諸元を、(2)式の動力伝達効率ηの計算式に基づいて補正する場合の各具体例について説明する。ここで、図3からも明らかなように、ハイポイドギヤ1の動力伝達効率ηは、伝達トルク(T/Tmax)が大きくなるにつれて高くなり、実用燃費荷重範囲内(通常走行時の軽負荷範囲内)の入力トルクTでは動力伝達効率ηが比較的低いことがわかる。燃費向上等を実現するためには、特に、この範囲内での動力伝達効率ηを向上させることが望ましい。そこで、ハイポイドギヤ1の基本諸元を(2)式に基づいて補正する場合の一例として、主として、実用燃費荷重範囲内での入力トルクT(例えば、T=Tmax/10)に対応させて動力伝達効率ηを向上させる場合について説明する。
【0041】
(オフセット量Eの補正)
(2)式からも明らかなように、歯筋方向滑り率と歯形方向滑り率との合成滑り率を小さくすることにより、動力伝達効率ηの向上が可能であることがわかる。
【0042】
ところで、オフセット量Eを補正する場合においては、ハイポイドギヤ1の噛合性を確保する必要がある。この点を考慮し、オフセット量Eの変化に応じ、例えば上述した(9)式のグリーソン推奨式を用いてピニオンギヤ3の捩れ角ψpを変化させたとすると、(6)式からも明らかなように、ハイポイドギヤ1の歯筋方向滑り率は、オフセット量Eの減少に伴って増大することがわかる(図4中破線参照)。
【0043】
一方、歯形方向滑り率は、(8)式からも明らかなように、オフセット量Eの増加に伴って増大することがわかる(図4中1点鎖線参照)。
【0044】
従って、これらの合成滑り率(図4中実線参照)に基づいて、本実施の形態におけるハイポイドギヤ1では、オフセット量Eを基本諸元のE=23(mm)からE=5(mm)近傍へと補正することにより、動力伝達効率ηを最も高めることができる。この場合、オフセット量Eの補正によって、動力伝達効率ηを3〜6%程度の改善代で改善可能であることが確認された。
【0045】
なお、図4に示す関係から、本出願人は、動力伝達効率ηを最も良好とするためのオフセット量Eは、”0”ではないことを知見した。
【0046】
(ピニオンギヤの歯数Zpの補正による捩れ角ψpの補正)
(2)式からも明らかなように、ピニオンギヤ3とリングギヤ2の捩れ角の差ψp−ψgを小さくして歯筋方向の滑り率を減少させることにより、動力伝達効率ηの向上が可能であることがわかる。
【0047】
ピニオンギヤ3とリングギヤ2の捩れ角の差ψp−ψgは、ハイポイドギヤ1の形状的な特徴から、(9)式からも明らかなように、ピニオンギヤ3の歯数Zpを増加補正することにより減少側に補正することができる。
ψ p =25+5・(Z g /Z p 1/2 +(90・E/D) …(9)
ここで、ψ p :ピニオンギヤの捩れ角
g :リングギヤの歯数
p :ピニオンギヤの歯数
E:ピニオンギヤのリングギヤに対するオフセット量
D:リングギヤのピッチ円半径
である。
【0048】
この場合、図5からも明らかなように、ピニオンギヤ3の歯数Zpを、例えば基本諸元であるZp=9からZp=12へと補正することにより、動力伝達効率ηを1%程度改善することができ、さらにZp=12以上へと補正することにより、〜2.6%程度までの改善代で改善可能であることが確認された。なお、歯数Zpを大幅に増加補正する場合には、ピニオンギヤ3の大径化を伴う。
【0049】
(歯当たり位置の変更によるピニオンギヤの捩れ角ψpの補正)
(2)式からも明らかなように、ピニオンギヤ3とリングギヤ2の捩れ角の差ψp−ψgを小さくして歯筋方向の滑り率を減少させることにより、動力伝達効率ηの向上が可能であることがわかる。
【0050】
ピニオンギヤ3とリングギヤ2の捩れ角の差ψp−ψgは、ハイポイドギヤ1の形状的な特徴から、リングギヤ2に対する歯当たり位置を基本位置である中央から大端2b寄りに補正することで、実質的に小さく補正することができる。ハイポイドギヤ1の歯当たり位置の変更は、歯面加工により容易に実現することができる。
【0051】
この場合、歯当たり位置を中央(図6中破線参照)から大端2b寄り(図6中実線参照)に補正することで、基本諸元のハイポイドギヤ1において、動力伝達効率ηを2%程度の改善代で改善可能であることが確認された。なお、図からも明らかなように、歯当たり位置を小端2a寄り(図6中1点鎖線参照)に補正した場合、動力伝達効率ηは低下する。
【0052】
(ピニオンギヤの捩れ角ψp自体の補正)
(2)式からも明らかなように、ピニオンギヤ3とリングギヤ2の捩れ角の差ψp−ψgを小さくして歯筋方向の滑り率を減少させることにより、動力伝達効率ηの向上が可能であることがわかる。
【0053】
この場合、図7からも明らかなように、ピニオンギヤ3の歯数Zpはそのままの状態で、捩れ角ψp自体を基本諸元であるψp=50(deg)からψp=41へと補正することにより、動力伝達効率ηを〜1.7%程度までの改善代で改善可能であることが確認された。
【0054】
ここで、ハイポイドギヤ1の噛合性を確保する必要性から、ピニオンギヤ3の捩れ角ψp自体の補正には、例えば図8に示すように、ギヤ比(Zg/Zp)に応じた所定の制限を加える必要がある。
【0055】
ここで、動力伝達効率ηの向上を効率的に行うためには、上述した各補正を改善代が大きなものから行うことが望ましく、本実施の形態においては、例えば、(オフセット量Eの補正)、(ピニオンギヤの歯数Zpの補正による捩れ角ψpの補正)、(歯当たり位置の変更によるピニオンギヤの捩れ角ψpの補正)、(ピニオンギヤの捩れ角ψp自体の補正)の順で行うことが望ましい。
【0056】
なお、上述の実施の形態においては、4輪駆動車のフロントディファレンシャル装置に駆動力を伝達するためのハイポイドギヤの設計についての一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の用途のハイポイドギヤの設計についても適用が可能であることは勿論である。
【0057】
また、動力伝達効率η向上のための基本諸元の補正は、例えばピニオンギヤ3の捩れ角ψp等の補正に限定する場合においては、上述の(1)式に基づくものであってもよい。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ピニオンギヤのリングギヤに対する歯筋方向滑り率と、ピニオンギヤのリングギヤに対する歯形方向滑り率とが適切な値となるよう基本諸元を補正することにより、ハイポイドギヤによる動力伝達効率を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハイポイドギヤの概略構成を示す斜視図
【図2】歯筋方向滑り率の算出方法を導出するための説明図
【図3】基本諸元で構成されたハイポイドギヤへの伝達トルクと動力伝達効率との関係を示す図表
【図4】オフセット量と各滑り率との関係を示す図表
【図5】ピニオンギヤの歯数と動力伝達効率との関係を示す図表
【図6】各歯当たり位置でのオフセット量と動力伝達効率との関係を示す図表
【図7】ピニオンギヤの捩れ角と動力伝達効率との関係を示す図表
【図8】ギヤ比と補正可能な捩れ角との関係を示す図表
【符号の説明】
1 … ハイポイドギヤ
2 … リングギヤ
3 … ピニオンギヤ

Claims (12)

  1. 要求される仕様に基づいて算出したハイポイドギヤの基本諸元のうちの少なくとも何れか1つを、ピニオンギヤのリングギヤに対する歯筋方向滑り率の算出項と、上記ピニオンギヤの上記リングギヤに対する歯形方向滑り率の算出項とを有して構成される動力伝達効率の計算式に基づいて、上記ハイポイドギヤの動力伝達効率が向上する側に補正することを特徴とするハイポイドギヤの設計方法。
  2. 上記動力伝達効率(η)の計算式は、
    η=〈1+(Tmax/T)1/2・{μ・secφ
    ・[〔cosψg・(tanψp−tanψg)〕2
    +〔A・(1−E/D)162]1/2}+B〉-1
    で規定されることを特徴とする請求項1記載のハイポイドギヤの設計方法。
    ここで、Tmax:歯車の許容トルク
    T:入力トルク
    μ:摩擦係数
    φ:圧力角
    ψp:ピニオンギヤの捩れ角
    ψg:リングギヤの捩れ角
    E:ピニオンギヤのリングギヤに対するオフセット量
    D:リングギヤのピッチ円半径
    A:E=0である場合の歯形方向滑り率
    B:ベアリングロス
    であり、歯筋方向滑り率の算出項は、〔cosψg・(tanψp−tanψg)〕であり、歯形方向滑り率の算出項は〔A・(1−E/D)16〕である。
  3. 上記基本諸元として算出された上記ピニオンギヤの上記リングギヤに対するオフセット量を上記動力伝達効率の計算式に基づいて補正することによって、上記動力伝達効率を向上させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイポイドギヤの設計方法。
  4. 上記ピニオンギヤの上記リングギヤに対するオフセット量は”0”ではないことを特徴とする請求項3記載のハイポイドギヤの設計方法。
  5. 上記基本諸元として算出された上記ピニオンギヤの捩れ角を上記動力伝達効率の計算式に基づいて補正することによって、上記動力伝達効率を向上させることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のハイポイドギヤの設計方法。
  6. 上記ピニオンギヤの歯数を増加させることで上記ピニオンギヤの捩れ角を減少させることを特徴とする請求項5記載のハイポイドギヤの設計方法。
  7. 上記ピニオンギヤの歯数はそのままの状態で、上記ピニオンギヤの捩れ角自体を補正することを特徴とする請求項5記載のハイポイドギヤの設計方法。
  8. 上記ピニオンギヤの捩れ角自体の補正に、上記ピニオンギヤと上記リングギヤとのギヤ比に応じた制限を加えることを特徴とする請求項7記載のハイポイドギヤの設計方法。
  9. 上記リングギヤに対する上記ピニオンギヤの歯当たり位置を変化させることによって、動力伝達に寄与する実質的な上記ピニオンギヤの捩れ角を補正することを特徴とする請求項5記載のハイポイドギヤの設計方法。
  10. 上記基本諸元として算出された上記ピニオンギヤの上記リングギヤに対するオフセット量を上記動力伝達効率の計算式に基づいて補正する手順と、
    上記基本諸元として算出された上記ピニオンギヤの捩れ角を上記動力伝達効率の計算式に基づいて補正する手順とを有し、
    上記ピニオンギヤの捩れ角を補正する手順は、
    上記ピニオンギヤの歯数を増加させることで上記ピニオンギヤの捩れ角を減少させる手順と、
    上記リングギヤに対する上記ピニオンギヤの歯当たり位置を変化させることによって、動力伝達に寄与する実質的な上記ピニオンギヤの捩れ角を補正する手順と、
    上記ピニオンギヤの捩れ角自体を補正する手順とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のハイポイドギヤの設計方法。
  11. 上記基本諸元として算出された上記ピニオンギヤと上記リングギヤとの捩れ角の差を上記動力伝達効率の計算式に基づいて補正することによって、上記動力伝達効率を向上させることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のハイポイドギヤの設計方法。
  12. 要求される仕様に基づいて算出した基本諸元のうちの少なくとも何れか1つが、請求項1乃至請求項11の何れかに記載のハイポイドギヤの設計方法によって補正されたことを特徴とするハイポイドギヤ。
JP2003027444A 2003-02-04 2003-02-04 ハイポイドギヤの設計方法、及び、これを用いて設計されたハイポイドギヤ Expired - Fee Related JP4359437B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003027444A JP4359437B2 (ja) 2003-02-04 2003-02-04 ハイポイドギヤの設計方法、及び、これを用いて設計されたハイポイドギヤ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003027444A JP4359437B2 (ja) 2003-02-04 2003-02-04 ハイポイドギヤの設計方法、及び、これを用いて設計されたハイポイドギヤ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004239322A JP2004239322A (ja) 2004-08-26
JP4359437B2 true JP4359437B2 (ja) 2009-11-04

Family

ID=32955173

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003027444A Expired - Fee Related JP4359437B2 (ja) 2003-02-04 2003-02-04 ハイポイドギヤの設計方法、及び、これを用いて設計されたハイポイドギヤ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4359437B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4554317B2 (ja) * 2004-09-24 2010-09-29 富士重工業株式会社 直交歯車対の設計装置
EP2350493B1 (en) * 2008-11-25 2013-12-18 The Gleason Works Hypoid gears with low shaft angles
WO2017030222A1 (ko) * 2015-08-20 2017-02-23 부산대학교 산학협력단 인볼류트형 하이포이드 기어의 치형 설계 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP2004239322A (ja) 2004-08-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2005068878A1 (ja) ラックピ二オン式操舵装置
CN101135357B (zh) 具有双圆弧齿廓的谐波齿轮传动
CN105452731B (zh) 平行万向节传动方式的铁路车辆用齿轮装置
JP6136896B2 (ja) 電動機制御装置
US8910545B2 (en) Wave gear device provided with tapered flexible externally toothed gear
JP2009121499A (ja) ウォームギヤおよび電動パワーステアリング装置
US20140331802A1 (en) Worm gear mechanism
CN110375054B (zh) 一种基于齿廓倾斜偏差的非对称齿轮设计方法
JP4359437B2 (ja) ハイポイドギヤの設計方法、及び、これを用いて設計されたハイポイドギヤ
JPH05340463A (ja) 平歯車の歯形修正方法および歯形修正平歯車対
JP7260287B2 (ja) アクスル・ドライブ・システム
JP2003222201A (ja) 遊星歯車減速機及びこの減速機を用いた駆動装置
CN107709754B (zh) 具有修正的齿轮几何形状的小齿轮起动器传动装置
JP5273460B2 (ja) 操舵機構の設計方法
JP4474250B2 (ja) 円錐形インボリュート歯車対の設計方法及び円錐形インボリュート歯車対
WO2005056367A1 (ja) 電動パワーステアリング装置
JP2016084134A (ja) ステアリング装置の製造方法
JP4583856B2 (ja) 円錐形インボリュート歯車対の設計評価装置
JP4115320B2 (ja) 動力伝達シャフト
JP4474251B2 (ja) 円錐形インボリュート歯車対
JP5211300B2 (ja) 3軸歯車装置
CN113158479B (zh) 圆柱齿轮传动效率计算方法、计算机装置及可读存储介质
CN114278715B (zh) 一种谐波减速器的齿廓设计方法
JP2018135964A (ja) フェースギア伝達装置
JP2019002449A (ja) はすば歯車装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060124

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20081211

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090203

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090331

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090804

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090810

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120814

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4359437

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120814

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130814

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees