JP4357094B2 - 回転陽極型x線管及びそれを内蔵したx線管装置 - Google Patents

回転陽極型x線管及びそれを内蔵したx線管装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、回転陽極型X線管およびそれを内蔵したX線管装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転陽極型X線管は、真空外囲器内に円盤状回転陽極、この回転陽極のタ一ゲット部に電子ビームを照射する陰極構体、回転陽極が連結された回転体、この回転体との間に軸受が形成された固定体などが配置されている。真空外囲器外には、回転体を回転させるための回転磁界を発生するステータコイルが配置されている。
【0003】
このような構成の回転陽極型X線管やステータコイルは、通常、絶縁媒体が充填され循環されるように構成されたX線管収容容器内に収納されたX線管装置として、CTスキャナ等のX線装置に搭載され、使用に供される。このX線管装置において、回転陽極型X線管と収容容器との隙間に流される絶縁媒体は、動作中に高電位差となる部材間の電気的な絶縁を確保するとともに、回転陽極型X線管を冷却するためにも必要なものである。
【0004】
上記した構成において、真空外囲器外に配置されたステータコイルが回転磁界を発生し、この回転磁界によって陽極タ一ゲットを回転させる。この状態で、陰極から陽極タ一ゲット部に電子ビームを衝突させ、陽極タ一ゲット部からX線を発生させる。
【0005】
ところで、回転陽極型X線管では、回転体と固定体との間に軸受が設けられる。軸受としては、玉軸受のようなころがり軸受、あるいは、軸受面にらせん溝を形成し、軸受面やらせん溝に、ガリウム(Ga)やガリウムーインジウムー錫(Ga−In−Sn)合金などの液体金属潤滑剤を満たした動圧式すべり軸受が用いられている。
【0006】
動圧式すべり軸受を用いた回転陽極型X線管については、特公平3−77617号や特開平3−182037号、特開平5−144396号、特開平8−241686号の各公報、および、米国特許第5838763号明細書などに開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
回転陽極型X線管に用いられる動圧式すべり軸受は、軸受面がたとえば20μm程度の微小な間隙に保たれ、らせん溝および軸受間隙に液体金属潤滑剤が充填されている。この場合、液体金属潤滑剤が軸受間隙の全体にくまなく行き渡らないと、すべり軸受の動圧が十分に得られず、安定な軸受動作が維持されない。極端な場合は、軸受面どうしがかじり合いを起こし、回転不能になったり、破損を引き起こしたりする。
【0008】
また、従来実用になっている動圧式すべり軸受は、片持ち構造となっている。そのため、回転陽極の重量が大きいほど、X線管収容容器に固定する軸受固定体の端部に大きな応力がかかり、機械的な安定性に問題が生じる。また、軸受部分の液体金属潤滑剤が受ける遠心力などの影響によって圧力にアンバランスが生じると、液体金属潤滑剤が軸受から漏れ易く、円盤状回転陽極が円滑に回転できなくなることが考えられる。
【0009】
このような問題を解決するために、動圧式すべり軸受を両持ち構造にする発明が、例えば米国特許第5838763号明細書に開示されている。これは、軸受の固定体の両側が回転中心軸に沿って延長されて真空外囲器にそれぞれ結合されている。また、固定体は中空状になっており、冷却用の絶縁媒体が流通できるようになっている。
【0010】
このような構成の回転陽極型X線管においては、高電位差となる回転陽極や軸受固定体延長部と、陰極構造体との間を放電防止に十分な空間距離にする必要があるため、X線管の軸方向の長さおよび半径方向の直径を不所望に大きくせざるを得ないという不都合がある。
【0011】
この発明は、上記した不都合を解消し、とくに陰極構体側の耐電圧性能を十分維持するとともにコンパクトな回転陽極型X線管およびそれを内蔵したX線管装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明の回転陽極型X線管は、電子ビームの照射を受けてX線を放出する回転陽極と、この回転陽極に対向して設けられ前記電子ビームを放出する陰極構体と、前記回転陽極に連結された回転体と、この回転体の内側に配置された固定体と、前記回転体及び固定体の間に設けられた軸受と、前記回転陽極及び前記陰極構体、前記回転体、前記固定体を内部に収容し一部にX線透過窓が設けられた真空外囲器とを具備した回転陽極型X線管において、上記固定体は、上記回転陽極の中心部を貫通するとともに上記陰極構体側および陽極側の両端部が上記真空外囲器の一部にそれぞれ結合され且つ上記陰極構体側は回転中心軸に対し斜めに延長して前記真空外囲器への結合部が回転中心軸に対して前記陰極構体と反対側にずれた位置にあることを特徴とする。
【0013】
また、この発明のX線管装置は、収容容器内に請求項3記載のX線管が収容されており、このX線管の絶縁性冷却媒体が通る貫通孔を有する固定体の延長端部が、直接または電気絶縁体製のパイプを介して前記収容容器の壁に設けられた絶縁性冷却媒体流通孔に接続されていることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。符号11はX線管収容容器であり、この収容容器11の内部に回転陽極型X線管12が収納されている。収容容器11の主要部分はアルミニウムの鋳物で構成され、内面の一部には、X線が漏れないように図示しない鉛板が張られている。
【0015】
また、収容容器11の端壁11aは平坦に構成され、この端壁11aに絶縁性冷却媒体たとえば絶縁油或いは絶縁ガスのような絶縁媒体を導入または排出する図示しない流通孔が設けられている。さらに、この収容容器11の側壁部分11bにはX線を出力するX線出力窓13が設けられ、収容容器11と回転陽極型X線管12との隙間には絶縁媒体が満たされ、この絶縁媒体は図示しない外部の熱交換器やポンプ等により循環可能になっている。
【0016】
回転陽極型X線管12は真空外囲器14を有し、この真空外囲器14は、直径の大きい金属製径大部分14aや、直径の小さいガラス製径小部分14b、この径小部分14bの開口端部を閉塞する金属製のシールリング14cなどから構成されている。径大部分14aと径小部分14bとは、金属製の連結部材15で連結されている。径大部分14aのX線出力窓13に対応する位置には、X線を透過するX線透過窓14dが設けられている。
【0017】
真空外囲器の径大部分14aの内側には、円盤状の回転陽極16が配置され、この円盤状回転陽極16の上面側には所定厚さの陽極ターゲット部17が環状に設けられている。そして、回転陽極ターゲット部17と対向する位置に、たとえば大小2つの電子放出フィラメント18を備える陰極構体19が配置されている。この陰極構体19は、先端の合致部分20aが気密溶接された一対の封着用金属円筒20を介して真空外囲器の端壁14eのX線透過窓14dに近い領域に気密接合されたリング状絶縁セラミックス21によって保持されている。
【0018】
円盤状回転陽極16は、ナット22によって円筒状回転体23の図示上端部23aに固定されている。回転体23の下方部の外周には銅製のロータ円筒24の一部が固着され、その他の多くの部分には断熱間隙25が設けられている。
【0019】
そして、回転体23の内側には円柱状の固定体26が挿入されている。これら回転体23と固定体26とは、動圧式すべり軸受の主要構成部材である。そのため、固定体26は、図3にも詳細に示すように、中間部の窪み27の上下両側に2組のラジアル方向動圧式すべり軸受28,29のためのヘリンボンパターンらせん溝28a,29aが形成されている。また、図示下方には直径の大きい径大部30が設けられており、その上下面に一対のスラスト方向動圧式すべり軸受31,32のためのサークル状ヘリンボンパターンらせん溝31a,32aが形成されている。
【0020】
さらに、固定体の上部には径小延長部33が設けられ、下部には径大延長部34が設けられている。固定体の上部径小延長部33の根元部分には、液体金属潤滑剤が図の上方に漏れるのを防止するポンプ用らせん溝35が形成され、またその肩部には同様に潤滑剤漏出防止ポンプ用のらせん溝36が形成されている。
【0021】
回転体23の図示上方部分23aの内側空間23bは、その内径が大きく形成されている。そして、この内側空間23bの底部となる固定体26の肩部付近のポンプ用のらせん溝35,36に接し、この開口領域を塞ぐように、第1のスラストリング37が回転体に図示しない複数個のねじで固定されている。
【0022】
また、固定体下方部分の径大部30の下面側には、この部分のらせん溝32aに接し且つ回転体下方の開口領域を塞ぐように、第2のスラストリング38が回転体に図示しない複数個のねじで固定されている。そして、固定体下方の径大延長部34には、シール用金属ディスク39が気密溶接され、このディスク39の外周突出部がシールリング14cに気密溶接されている。そして、各軸受領域を含む軸受間隙や中央の窪み27には、少なくとも動作中に液状である例えばGa合金等の金属潤滑剤が供給される。
【0023】
さて、固定体上部の径小延長部33は、回転中心軸Cに沿って回転陽極16の上面部すなわち回転体の径大な上端部23aの開口部付近まで延長されている。そしてこの径小延長部33の先端部に、斜めに伸びる金属棒からなる固定体支持アーム40の一端部40aが溶接により一体的に結合されている。この固定体支持アーム40の他端部40bは、真空外囲器の端壁14eの一部すなわち中心軸Cに対して陰極構体19とは反対側の位置に設けられたリング状絶縁セラミックス41の中央部に機械的に固定されている。
【0024】
リング状絶縁セラミックス41は、先端の合致部分42aが気密溶接された一対の封着用金属円筒42を介して真空外囲器の端壁14eに気密接合されている。また、絶縁セラミックス41の中央透孔には、金属パイプ43が気密接合されており、この金属パイプ43の内側に固定体支持アーム40の先端部が密に挿入され、先端が気密溶接部44で真空気密に連結されている。
【0025】
こうして、軸受の固定体の陰極構体側は、中心軸Cを挟んで陰極構体19およびX線透過窓14dとは反対側に斜めに延長されて、真空外囲器の一部に電気的に絶縁され機械的に結合されている。この実施形態の場合、この結合部は固定体支持アームの先端気密溶接部44である。
【0026】
なお、回転陽極型X線管12は、X線管収容容器11の内部に、X線透過窓14dとX線出力窓13とが一致するようにして収容、固定されている。また、収容容器11のフランジ45に壺状の絶縁体製保持枠46が固定され、この保持枠46の底部に金属リング47が固定されている。そして、この金属リング47の中央透孔にX線管の真空外囲器外に伸びた固定体下端部34が密に挿入され、その雄ねじ部にナット48が螺合され、締付け固定されている。なお、収容容器11のフランジ45には、ステータコイル49の鉄芯50が固定されている。なお、X線管の陰極構体側は、図示しない絶縁体により収容容器に機械的に保持されている。なお、固定体下端部34は陽極端子を兼ねている。
【0027】
また、図示しない絶縁油など絶縁媒体の導入ホースおよび排出ホースが収容容器に接続され、これらは外部の図示しない熱交換器や循環用ポンプに接続されている。そして、このX線管装置を搭載した例えばCTスキャナにおいては、X線管の真空容器の金属製部分および収容容器が接地Eとなるように接続され、陽極端子である固定体下端部34に一方の高電圧電源51のプラス極が電気的に接続され、陰極構体19にフィラメント加熱電源52が接続されるとともに、他方の高電圧電源53のマイナス極がフィラメント18に電気的に接続されている。これらの高電圧電源51,53は、中性点接地方式の電源であり、それぞれの電源電圧は例えば70kVであり、それによって陰極構体のフィラメント18と回転陽極16との間には140kVの高電圧が印加されて動作させられる。そして、X線54が出力窓13から外部に放射される。
【0028】
また、X線管装置の動作において、X線管の固定体26は、その下端部34が絶縁媒体により冷却されるとともに、支持アームの先端部40bも絶縁媒体に接して冷却される。なお支持アームの真空外囲器から外部に露出した先端部40bを絶縁物で覆って、収容容器との間の耐電圧性を高めるように構成してもよい。
【0029】
このような本発明の構成によれば、X線管の動圧式すべり軸受を構成している固定体の陰極構体側延長端部が、中心軸Cからずれた方向に折曲げ延長されている。そして、この延長端部40bは、陰極構体19およびX線透過窓14dとは反対側に中心軸Cからずれた位置で真空外囲器の一部に機械的に結合されている。それによって、動作中に陰極構体と軸受の固定体との間に高い電位差があっても、両者間の距離が放電防止に必要な空間距離を十分確保できる。
【0030】
そのため、回転陽極型X線管およびそれを内蔵したX線管装置を特に管軸方向の長さ或いは半径方向の直径を不所望に大きくせず、コンパクトに構成しながら、放電の発生のおそれは少ない。そして、これは回転陽極を支持する軸受の固定体を両側で真空外囲器に結合保持するタイプなので、質量が比較的大きい回転陽極をも安定に支持し、信頼性の高い動作を維持することができる。
【0031】
次に、図4に示す実施形態を説明する。図1乃至図3に示した実施形態と同一部分は同一符号であらわし、重複した説明を省略する。この実施形態においては、固定体26の上部径小延長部33に固定体支持アーム40の一端部40aがろう接により一体結合され、そして回転中心軸Cに対して陰極構体19およびX線透過窓14dとは反対方向に垂直に延長され、その端部40bが真空外囲器の金属製径大部側壁14aの内面にろう接により固定されたセラミックス製絶縁碍子55の先端に固着されている。
【0032】
この実施形態によれば、軸受構成部材である固定体の陰極構体側延長端部が、中心軸Cからずれた位置、すなわち陰極構体19およびX線透過窓14dとは反対方向に延長されて真空外囲器の側壁に絶縁碍子を介して固定されているので、陰極構体と接地電位部材との間の耐電圧性およびコンパクト性が十分維持される。
【0033】
図5に示す実施形態は、回転陽極を真空外囲器の金属製部分とともに接地電位にして動作させる場合に適する回転陽極型X線管およびそれを内蔵したX線管装置である。なお、前述の実施形態と同一部分は同一符号であらわし、重複した説明を省略する。
【0034】
すなわち、固定体26の上部径小延長部33に結合された固定体支持アーム40は、回転中心軸Cに対して陰極構体19およびX線透過窓14dとは反対側に斜めに延長され、その端部40bが真空外囲器の金属製端壁14eに溶接部44で直接固定されている。なお、符号14fは、予め分割して製作した真空外囲器の金属製径大円筒側壁14aと端壁14eとの気密溶接部をあらわしている。
【0035】
この実施形態によれば、軸受構成部材である固定体の陰極構体側延長端部が、中心軸Cからずれた位置、すなわち陰極構体19およびX線透過窓14dとは反対側に中心軸Cからずれた位置で真空外囲器の端壁に直接固定されているので、製作が比較的容易で、陰極構体と接地電位部材との間の耐電圧性およびコンパクト性が十分維持される。なお、この回転陽極型X線管及びX線管装置は、回転陽極を接地電位で動作させるのに適している。
【0036】
図6に示す実施形態は、動圧式すべり軸受の構成部材である固定体26が中空体で構成され、その内部に絶縁油等の絶縁媒体を流通させ得るように構成した回転陽極型X線管、およびそれを内蔵したX線管装置である。なお、前述の実施形態と同一部分は同一符号であらわし、重複した説明を省略する。
【0037】
すなわち、固定体上部のパイプ状径小延長部33に、中継用短円筒体56が気密結合されている。そして、この短円筒体56にパイプ状の固定体支持アーム40の一端部40aが結合され、回転中心軸Cに対して陰極構体19およびX線透過窓14dとは反対側に斜めに延長され、その他端部40bが真空外囲器の金属製端壁14eの一部に設けられた絶縁セラミックス41の中央透孔に気密接合された金属パイプ43を貫通して先端部が気密溶接部44で真空気密に結合されている。
【0038】
さらに、このパイプ状固定体支持アームの他端部40bと金属パイプ43との接合部の外周には、絶縁媒体を案内する電気絶縁体製のパイプ57の一端部が密に嵌合され、その他端部がX線管収容容器11の端壁11aに形成された絶縁媒体流通孔11gに密に嵌合され、接続されている。なお、そのすぐ近くにもう一つの絶縁媒体流通孔11hが設けられている。
【0039】
この実施形態の回転陽極型X線管及びX線管装置の動作においては、中性点接地方式の高電圧電源を接続して、回転陽極16にプラスの高電位を、陰極構体のフィラメント18にマイナスの高電位を与える。そして、収容容器11の一方の絶縁媒体流通孔11gから矢印Yiのように絶縁油等の絶縁媒体を導入し、パイプ状の固定体支持アーム40から中空状固定体26の内部を通して図示下端から収容容器11内に流動させ、他方の絶縁媒体流通孔11hから矢印Yoのように排出させる。なお、絶縁油等の絶縁媒体は、図示しない外部の熱交換器やポンプにより循環させられる構成になっている。
【0040】
この実施形態によれば、動圧式すべり軸受部分が効率的に冷却されるとともに、陰極構体と高電位差となる導電部材との間の耐電圧性およびコンパクト性が十分維持される。
【0041】
また、X線管収容容器の一対の流通孔11g,11hを共通の1つの端壁部分に近接して設けているので、熱交換器や循環用ポンプ等と接続するホースを隣接して設けることができ、装置全体を小型化できる。
【0042】
なお、絶縁媒体は、上記の例と反対に、収容容器の流通孔11hから導入してX線管と収容容器との間を流動させて固定体26の図示下方から上方に流動させ、パイプ状の固定体支持アーム40を通してから絶縁パイプ57を経て流通孔11gから排出させるように構成することもできる。
【0043】
図7および図8に示す実施形態は、固定体上部のパイプ状径小延長部33に連結した中継用短円筒体56に、2個のパイプ状固定体支持アーム40,40を結合し、互いに180度反対方向に斜めに延長してそれぞれの端部40b,40bを中心軸Cからずれた位置に設けられた絶縁セラミックス41,41の中心部に結合したものである。なお、前述の各実施形態と同一部分は同一符号であらわし、重複した説明を省略する。
【0044】
ところで、図面上の複雑化を避けるために、図7には陰極構体やX線透過窓等の関連部分を記載していない。しかし、それらとの関係は図8に示してある。すなわち、回転陽極型X線管の真空外囲器のX線透過窓14dの近傍に陰極構体19およびそれを支持する絶縁セラミックス21が設けられている。そして、中心軸Cから互いに反対方向にずれた位置に各パイプ状固定体支持アーム40,40が折曲げ延長され、各絶縁セラミックス41,41の中央部にそれぞれの端部40b,40bが固定されている。
【0045】
この実施形態によれば、2箇所の絶縁媒体流通孔11gから矢印Yiのように絶縁油等の絶縁媒体を導入し、2個のパイプ状の固定体支持アーム40を通して中継用短円筒体56の内部で合流させ、中空状固定体26の内部を通して図示下端から収容容器内に流動させ、他方の絶縁媒体流通孔11hから矢印Yoのように排出させる。
【0046】
それによって、動圧式すべり軸受部分がさらに効率的に冷却されるとともに、固定体の陰極構体側が対称的な2箇所で真空外囲器に結合されているので、回転陽極の機械的な支持がより安定である。したがって、例えばCTスキャナ等の高い重力加速度が加わる用途にも十分耐えることができ、且つ高電位差となる導電部材との間の耐電圧性およびコンパクト性が十分維持される。
【0047】
図9に示す実施形態は、軸受の中空状固定体の陰極構体側のパイプ状固定体支持アーム40の端部40bが、真空外囲器12の金属製端板14eを貫通して気密溶接部44で結合したものである。この結合位置は、前述の実施形態と同様に、中心軸Cに対して陰極構体19と反対側にずれた位置にある。そして、収容容器11の端板に設けられた絶縁媒体流通孔11gと支持アームの端部40bとは、金属製の案内パイプ58で絶縁媒体を案内可能に接続され、且つ電気的にも短絡接続されている。
【0048】
この実施形態の回転陽極型X線管およびX線管装置は、回転陽極を収容容器とともに接地電位で動作させるのに適している。そして、陰極構体側の耐電圧性は必要十分確保されるとともに、コンパクト性も十分維持される。
【0049】
ところで、動圧式すべり軸受の構成部材である固定体の陰極構体側の延長端部を真空外囲器に結合する位置は、高電位差となる部材間の放電を未然に防止するために、例えば図10に斜線Pで示した領域に設定することが望ましい。すなわち、中心軸Cからずれた位置であって、陰極構体19およびX線透過窓14dから耐電圧性能が得られる距離だけ離れた領域に固定体の陰極構体側延長端部を機械的に結合する。もちろん、固定体の陰極構体側延長端部を真空外囲器の金属製部分から電気的に絶縁して結合する場合は、この電気的な絶縁のための絶縁部材が占める領域を加味して結合位置を定める。
【0050】
なお、以上述べた実施形態は、軸受が動圧式すべり軸受を有する回転陽極型X線管の場合であるが、この発明はそれに限らず、玉軸受のようなころがり軸受を持つ回転陽極型X線管にも適用できる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、長期にわたって軸受の動作が安定化し、あるいは、長期にわたって耐電圧性能を維持でき且つコンパクトな回転陽極型X線管、およびこれを内蔵したX線管装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す縦断面図。
【図2】図1の2−2における横断面図。
【図3】図1の固定体の要部を示す側面図。
【図4】この発明の他の実施例を示す縦断面図。
【図5】この発明のさらに他の実施例を示す縦断面図。
【図6】この発明のさらに他の実施例を示す縦断面図。
【図7】この発明のさらに他の実施例を示す縦断面図。
【図8】図7の8−8における横断面図。
【図9】この発明のさらに他の実施例を示す縦断面図。
【図10】この発明の固定体延長端部と真空外囲器との結合領域を示す横断面図。
【符号の説明】
11…X線管収容容器、
12…回転陽極型X線管、
e…電子ビーム、
54…X線、
16…回転陽極、
19…陰極構体、
23…回転体、
26…固定体、
28、29…軸受、
14d…X線透過窓、
14…真空外囲器、
C…回転中心軸、
40…固定体の延長支持アーム、
40b…固定体延長端部(結合部)、
44…結合部、
28a,28b,31a,32a…動圧式すべり軸受のらせん溝、
57…絶縁体製パイプ
11g,11h…冷却媒体流通孔。

Claims (6)

  1. 電子ビームの照射を受けてX線を放出する回転陽極と、この回転陽極に対向して設けられ前記電子ビームを放出する陰極構体と、前記回転陽極に連結された回転体と、この回転体の内側に配置された固定体と、前記回転体及び固定体の間に設けられた軸受と、前記回転陽極及び前記陰極構体、前記回転体、前記固定体を内部に収容し一部にX線透過窓が設けられた真空外囲器とを具備した回転陽極型X線管において、上記固定体は、上記回転陽極の中心部を貫通するとともに上記陰極構体側および陽極側の両端部が上記真空外囲器の一部にそれぞれ結合され且つ上記陰極構体側は回転中心軸に対し斜めに延長して前記真空外囲器への結合部が回転中心軸に対して前記陰極構体と反対側にずれた位置にあることを特徴とする回転陽極型X線管。
  2. 電子ビームの照射を受けてX線を放出する回転陽極と、この回転陽極に対向して設けられ前記電子ビームを放出する陰極構体と、前記回転陽極に連結された回転体と、この回転体の内側に配置された固定体と、前記回転体及び固定体の間に設けられた軸受と、前記回転陽極及び前記陰極構体、前記回転体、前記固定体を内部に収容し一部にX線透過窓が設けられた真空外囲器とを具備し、上記固定体は、上記回転陽極の中心部を貫通するとともに上記陰極構体側および陽極側の両端部が上記真空外囲器の一部にそれぞれ結合され且つ上記陰極構体側は回転中心軸に対し斜めに延長して前記真空外囲器への結合部が前記回転陽極及び回転体の回転中心軸からずれた位置にある回転陽極型X線管において、上記固定体の上記陰極構体側端部は、複数方向に分岐して延長され、これら各分岐延長端部が回転中心軸からずれた位置で上記真空外囲器にそれぞれ結合されている回転陽極型X線管。
  3. 上記固定体には、その長さ方向に絶縁性冷却媒体が通る貫通孔が設けられている請求項1記載の回転陽極型X線管。
  4. 上記軸受は、上記回転体と固定体とが狭い軸受間隙を介して接する軸受面にらせん溝が形成されるとともに、前記軸受間隙およびらせん溝に液体金属潤滑剤が供給された動圧式すべり軸受である請求項1記載の回転陽極型X線管。
  5. 収容容器内に請求項3記載のX線管が収容されており、このX線管の絶縁性冷却媒体が通る貫通孔を有する固定体の延長端部が、直接または電気絶縁体製のパイプを介して前記収容容器の壁に設けられた絶縁性冷却媒体流通孔に接続されているX線管装置。
  6. 電子ビームの照射を受けてX線を放出する接地電位の回転陽極と、この回転陽極に対向して設けられ前記電子ビームを放出する陰極構体と、前記回転陽極に連結された回転体と、この回転体の内側に配置された固定体と、前記回転体及び固定体の間に設けられた軸受と、前記回転陽極及び前記陰極構体、前記回転体、前記固定体を内部に収容し一部にX線透過窓が設けられ一部が金属製の真空外囲器とを具備した回転陽極型X線管において、上記固定体は、上記回転陽極の中心部を貫通するとともに上記陰極構体側および陽極側の両端部が上記真空外囲器の一部にそれぞれ結合され且つ上記陰極構体側は回転中心軸に対し斜めに延長して前記真空外囲器への結合部が真空外囲器の金属製部分で回転中心軸に対して前記陰極構体と反対側にずれた位置にあることを特徴とする回転陽極型X線管。
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