JP4357006B2 - 多結晶半導体薄膜の形成方法及び薄膜トランジスタの製造方法 - Google Patents
多結晶半導体薄膜の形成方法及び薄膜トランジスタの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は様々な用途に用いられている多結晶半導体薄膜の形成方法、並びに液晶ディスプレイや,画像読み取り用センサ及びRAM(Random Access Memory)の負荷等に用いられている薄膜トランジスタ( thin film transistor:TFT)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
以下、液晶ディスプレイ用に開発が進められている多結晶シリコン薄膜トランジスタとその製造方法について図面を用いて説明する。
【0003】
近年薄膜トランジスタを用いて液晶表示を行う技術分野では、高価な石英基板ではなく安価なガラス基板を使用できる比較的低温(概ね600℃以下)においてその作成が可能な多結晶シリコン薄膜を用いた薄膜トランジスタ(以下、poly-Si TFTと略記する)が注目を集めている。低温で多結晶シリコンを形成する手法の一つに、レーザーアニールを用いて非晶質シリコンを溶融・結晶化させる方法がある。この方法の欠点はレーザーとしてパルス・レーザーを用い、このパルス・レーザーを重ね合わせて照射することにより、半導体膜を溶融・結晶化するため、パルス重ね合せ部分における半導体膜の結晶性が低下し、パルス重ね合せ部分におけるトランジスタ特性が悪いことである。この欠点を解消できる方法として、例えば、Extended Abstracts of the 1991 International Conference on Solid State Devices and Materials, Yokohama, 1991, p.p.623-625 に、エキシマ・レーザー照射時に基板を加熱する方法が提案されている。以下、かかる方法について図5を用いて簡単に説明する。図5は従来の薄膜トランジスタ(TFT)の構成を示す断面図であり、図において、1はガラス基板、4aは多結晶シリコン層、5はゲート絶縁層、6はゲート電極、7はソース領域、8はドレイン領域、9は層間絶縁層、10はコンタクトホール、11はソース電極、12はドレイン電極である。
【0004】
まずガラス基板1上に非晶質シリコン層を全面に堆積した後、基板を400℃に加熱してエキシマレーザーを照射し基板上の非晶質シリコン層を局所的に加熱溶融して結晶化させ、そして、フォトリソグラフィーとエッチング技術を用いて所望の島状のパターンとなるようパターニングして多結晶シリコン層4aを得る。次にAP(Atomospheric Vapor )−CVD(Chemical Vapor Deposition )法により例えばSiO2 からなるゲ−ト絶縁層5を形成する。次に、ゲ−ト電極6を形成し、続いてドナーもしくはアクセプタとなる不純物を多結晶シリコン層4aに部分的に導入して、ソ−ス領域7とドレイン領域8を形成する。次に、層間絶縁層9を形成した後、ゲ−ト絶縁層5及び層間絶縁層9にコンタクト・ホール10を形成し、そして最後にコンタクト・ホール10介してソース電極11及びドレイン電極12を形成する。また、このようなpoly-Si TFTでは、非晶質シリコンを半導体層として用いるトランジスタよりも大きな電界効果移動度(以下、単に移動度とも呼ぶ。)を有するので、不純物としてボロンもしくはリンを用いることによりPチャンネル及びNチャンネルトランジスタを選択的に作成することができる。従って、CMOS( complementary-MOS)回路を形成することができ、画素トランジスタの駆動回路を同一基板上に作り込むことも可能である(特に図示はしない)。
【0005】
以上のようにして作製されたpoly-Si TFTでは、基板加熱により移動度のバラツキが±10%以内に抑えられるとされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記のようにして作製された,その移動度のバラツキが±10%以内に抑えられたpoly-Si TFTであっても、これを用いて液晶ディスプレイを作製した場合、画像上に移動度の低い部分が筋状のムラとなって現われ、表示品位が低くなってしまうという課題がある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、結晶の均一性に優れた多結晶半導体薄膜を形成できる多結晶半導体薄膜の形成方法、及び移動度のバラツキが極めて小さい薄膜トランジスタの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる多結晶半導体薄膜の形成方法は、基板の主面上に形成された多結晶化すべき非晶質半導体薄膜に、パルス状レーザービームを、各ショット毎にその前記非晶質半導体薄膜への照射領域が所定ピッチで移動するよう照射して、前記非晶質半導体薄膜全域を溶融・結晶化する多結晶半導体薄膜の形成方法において、前記パルス状レーザービームの前記非晶質半導体薄膜への照射領域の移動ピッチをPとし、前記パルス状レーザービームのエネルギー強度プロファイルにおける,前記非晶質半導体薄膜の結晶化を開始させる強度ETHを与える前記パルス状レーザービームの照射面での位置をX(ETH)とし、前記非晶質半導体薄膜のその厚み方向の全体を完全に結晶化させる強度E0 を与える前記パルス状レーザービームの照射面での位置をX(E0) としたとき、下記式を満足するように、前記パルス状レーザービームの前記非晶質半導体薄膜への照射領域を移動させることを特徴とするものである。
【0009】
【数2】
【0010】
また、本発明にかかる多結晶半導体薄膜の形成方法は、前記非晶質半導体薄膜全域を溶融・結晶化することにより得られた多結晶半導体薄膜に、前記パルス状レーザービームが有する最大のエネルギー強度よりも大きなエネルギー強度を有するレーザービームを走査・照射することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明にかかる多結晶半導体薄膜の形成方法は、前記非晶質半導体薄膜全域を溶融・結晶化することにより得られた多結晶半導体薄膜に、水素をドーピングすることを特徴とするものである。
【0013】
次に、本発明にかかる薄膜トランジスタの製造方法は、その能動層が多結晶半導体薄膜からなる薄膜トランジスタの製造方法において、前記多結晶半導体薄膜を前記の多結晶半導体薄膜の形成方法により形成することを特徴とするものである。
【0014】
本発明者は、前記構成を得るために非晶質シリコン膜をレーザーアニールにより結晶化した時の結晶化のメカニズムについて研究した。以下これについて説明する。
【0015】
図6はパルス状エキシマレーザービームの1ショットの空間的エネルギープロファイルを説明するための図で、図6(a) はエキシマレーザービームの1ショットのビーム形状を模式的に示した図、図6(b) は図6(a) のA−A’線に対応するビームのエネルギー分布を示した図である。図6(a) において、外側の斜線により特定されてる領域はビームのエッジ領域である。図6(a) ,図6(b) からビームのエッジ部では次第にエネルギーが低くなりついには0になっていることがわかる。また、図7はエキシマレーザーアニールでしばしば用いられるエキシマレーザービームの走査照射方式(ステップ・アンド・リピート照射方法)を説明するための図で、図7(a) は被アニール体(非晶質シリコン膜)のレーザー照射面におけるレーザの照射状態を模式的に示した図であり、図7(b) はこの照射方法により多結晶化したシリコン膜を用いて薄膜トランジスタを形成した場合の図7(a) B−B’線に対応する移動度の変化状態を示した図である。図7(b) において、斜線により特定されてる領域はレーザービーム中央のエネルギー強度が高い領域、白抜きの領域はレーザービームエッジのエネルギー強度が低い領域であり、第1回目の走査で図の右側方向に順次レーザービームを移動させ、第2回目の走査で図の左側方向に順次レーザービームを移動させている。図7(a) ,図7(b) から、レーザービームの各ショットの重ね合せ部分(ビームエッジを含む部分)で移動度が低くなっていることがわかる。本発明者は、鋭意研究の結果、この薄膜トランジスタの局所的な移動度の低下に、半導体膜に照射するパルス状レーザービームのエネルギー強度が大きく影響を与えていることをつきとめた。
【0016】
即ち、前記したようにパルス状エキシマレーザービーム(の1ショット)はエネルギー強度の分布をもっており、このレーザービームは
(1)前駆体(結晶化がなされる前の)半導体膜の結晶化が開始するエネルギー強度(閾値エネルギー強度)未満の強度を有する領域,
(2)前駆体半導体膜の結晶化が開始する閾値エネルギー強度から前駆体半導体薄膜がその厚み方向の全体が完全に結晶化するエネルギー強度(完全結晶化エネルギー強度)までの強度を有する領域,
(3)前記完全結晶化エネルギー強度以上で設定された最大エネルギー強度までの強度を有する領域の3つの領域,を有している。
【0017】
このため、▲1▼第1ショット目でレーザービームの前記(1)の領域が照射された前駆体半導体膜の領域は、第1ショット目照射後はもとの前駆体のままであるが、かかる領域には第2ショット目以降において、レーザービームが定寸移動して前駆体半導体膜へのレーザービームの照射領域が移動していることにより、レーザービームのうちの前記(3)の完全結晶化エネルギー強度以上のエネルギー強度を有する領域が照射されて、完全結晶化がなされる。
【0018】
また、▲2▼第1ショット目でレーザービームの前記(3)の領域が照射された前駆体半導体膜の領域は、この第1ショット目で完全結晶化がなされる。
ところが、▲3▼第1ショット目でレーザービームの前記(2)の領域が照射された前駆体半導体膜の領域は、第1ショット目の照射により非晶質部分と多結晶部分が混在し、第2ショット目以降においてレーザービームの前記(3)の領域が照射されると、第1ショット目で部分的に結晶化した部分が種結晶となってその厚み方向の全体にかけて結晶化されるので、前記▲1▼,▲2▼で説明した領域とは異なった結晶性を有するものとなり、薄膜トランジスタとした場合に、前記▲1▼,▲2▼で説明した領域とはその移動度が異なることとなる。
【0019】
従って、本発明者は前駆体半導体膜の全域にわたり、第1ショット目でレーザービームの前記(2)の領域が照射され、第2ショット目以降でレーザービーム前記(3)の領域が照射されて結晶化されるよう、レーザービームを前駆体半導体膜の一端から半導体膜の全域にかけて定寸移動させていけば、前駆体半導体膜の全域が、前記▲3▼で説明した,第1ショット目で結晶化した部分が種結晶となって第2ショット目以降でその厚み方向の全体にかけて結晶化がなされたものとなり、その全域にかけて結晶性が均一な多結晶半導体膜を得ることができると考え、前記構成からなる本発明の多結晶半導体膜の形成方法、並びに薄膜トランジスタ及びその製造方法を想到したのである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の多結晶半導体薄膜の形成方法においては、基板の主面状に形成された多結晶化すべき半導体薄膜に、パルス状レーザービームを、各ショット毎にその前記半導体薄膜への照射領域が所定ピッチで移動するよう照射して、前記半導体薄膜全域を溶融・結晶化する多結晶半導体薄膜の形成方法において、前記パルス状レーザービームの前記半導体薄膜への照射領域の移動ピッチをPとし、前記レーザービームのエネルギー強度プロファイルにおける,前記多結晶化すべき半導体薄膜の結晶化を開始させる強度ETHを与える前記レーザービームの照射面での位置をX(ETH)とし、前記多結晶化すべき半導体薄膜のその厚み方向の全体を完全に結晶化させる強度E0を与える前記レーザービームの照射面での位置をX(E0)としたとき、下記式を満足するように、前記パルス状レーザービームの前記半導体薄膜への照射領域を移動させるようにしたから、前記パルス状レーザービームが各ショット毎に前記移動ピッチPで移動すると、第1ショット目のレーザービームの照射によって半導体膜に非晶質部分と多結晶部分が混在した領域が形成される第1の結晶化プロセスと、この領域に第2ショット目以降のレーザービームが照射されることにより,当該領域において前記第1ショット目で結晶化した結晶が種結晶となってその厚み方向の全体にかけて結晶化がなされる第2の結晶化プロセスとからなる結晶化プロセスにより、前記半導体膜の全域が結晶化されることとなり、その結果、前記半導体膜がその全域において均一な結晶性を有する多結晶半導体膜に改質される。
【0021】
【数3】
【0022】
また本発明においては、前記構成の好ましい例として、前記多結晶化すべき半導体薄膜にパルス状レーザービームを照射する前に、前記多結晶化すべき半導体薄膜を加熱処理して当該半導体薄膜中に含有されている水素を除去するようにすると、前記半導体膜の結晶化プロセスが水素に阻害されることなく進行し、前記半導体膜がその全域においてより均一な結晶性を有する多結晶半導体膜に改質される。
【0023】
更に本発明の多結晶半導体薄膜の形成方法においては、前記の多結晶半導体薄膜の形成方法により得られた多結晶半導体薄膜に、前記パルス状レーザービームが有する最大のエネルギー強度よりも大きなエネルギー強度を有するレーザービームを走査・照射するようにしたから、前記多結晶半導体薄膜中の転位及び点欠陥等の結晶欠陥が緩和され、結晶性がより良好なものとなる。
【0024】
更に本発明の多結晶半導体薄膜の形成方法においては、前記の多結晶半導体薄膜の形成方法により得られた多結晶半導体薄膜に、水素をドーピングするようにしたから、多結晶の粒界にあるダングリング・ボンドが補償され、結晶性がより良好なものとなる。
【0025】
更に本発明の薄膜トランジスタにおいては、その能動層が多結晶半導体薄膜からなる薄膜トランジスタにおいて、前記多結晶半導体薄膜を前記の多結晶半導体薄膜の形成方法により形成されたものにしたから、その能動層がその全域において均一な結晶性を有する多結晶半導体薄膜で構成された,移動度のバラツキが極めて小さい薄膜トランジスタを得ることができる。
【0026】
更に本発明の薄膜トランジスタの製造方法においては、その能動層が多結晶半導体薄膜からなる薄膜トランジスタの製造方法において、前記多結晶半導体薄膜を前記の多結晶半導体薄膜の形成方法により形成するようにしたから、前記の移動度のバラツキが極めて小さい薄膜トランジスタを合理的に製造することができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(実施例1)
図1は本発明の実施例1による多結晶半導体薄膜の形成工程を示す工程断面図である。以下、この図に従って多結晶半導体薄膜の形成工程を説明する。
【0028】
ガラス基板中の不純物の拡散を防ぐバッファー層としてのSiO2 膜(図示せず。)を被着したガラス基板1(コ−ニング社製#7059ガラス(商品名))上に例えばシラン(SiH4)と水素(H2)を原料ガスとして用いたプラズマCVD法により膜厚85nmの非晶質シリコン薄膜2を形成し、次いでこの非晶質シリコン薄膜2に波長308nm,パルス幅45nsecのXeClエキシマ・レーザービーム3を各ショット毎に所定ピッチPにて定寸移動させながら溶融し、結晶化して(図1(a))、非晶質シリコン薄膜2を多結晶シリコン膜5に改質する(図1(b))。
【0029】
図3は膜厚85nmの非晶質シリコンにXeClエキシマレーザーを照射した時の紫外光の反射率を示している。紫外光反射率は非晶質シリコンが多結晶化することにより上昇するので、紫外光反射率の変化から多結晶化の進行具合いを見積ることが出来る。この場合、紫外光反射率は、レーザーのエネルギー強度(密度)が約160mJ/cm2 である時から上昇を始め、約250mJ/cm2 での時に飽和しているので、約160mJ/cm2 が前駆体である非晶質シリコン薄膜の結晶化閾値エネルギー強度(密度)で、約250mJ/cm2 が完全結晶化エネルギー強度(密度)であることがわかる。
【0030】
本実施例では、前記波長308nm,パルス幅45nsecのXeClエキシマレーザー照射工程において、レーザーのエネルギー強度(密度)を、完全結晶化エネルギー強度(密度)250mJ/cm2 よりやや高い260mJ/cm2 に設定して照射した。
【0031】
図4はこのパルス状XeClエキシマレーザーの設定エネルギー(密度)を260mJ/cm2 にした場合の、被照射体である非晶質シリコン表面における(1ショット目の)レーザーのエネルギー強度(密度)のプロファイルである。図において、ETHは結晶化閾値エネルギー強度(密度)、E0 は完全結晶化エネルギー強度(密度)、X(ETH)はレーザーのエネルギー(密度)が結晶化閾値エネルギー強度(密度)ETHとなる非晶質シリコン表面でのレーザーのエッジ端部(基準点)からの位置、X(E0 )はレーザーのエネルギー強度(密度)が完全結晶化エネルギー強度(密度)E0 となる非晶質シリコン表面でのレーザーのエッジ端部(基準点)からの位置である。この図から、レーザーのエネルギー強度(密度)が結晶化閾値エネルギー強度(密度)ETHである160mJ/cm2 となる位置と、完全結晶化エネルギー強度(密度)E0 である250mJ/cm2 となる位置との間の距離(長さ)が約1mmであることが分かる。本実施例では、照射ピッチPが、P≦ X(E0)−X(ETH)=1mmを満たすもの、すなわち、照射ピッチP1が1mm以下となるようパルス状XeClエキシマレーザーを各ショット毎に定寸移動させて、非晶質シリコン薄膜2を溶融・結晶化することにより、極めて均一な結晶性を有する多結晶シリコン膜5を得ることができた。より詳細には、生産性を考慮して、照射ピッチPを1mmに設定して照射を行った。図4中の一点鎖線で示す特性線(プロファイル)a,bは、1ショット目のレーザー光(図中の実線の特性線(プロファイル))を照射した後、照射ピッチPを1mmにして順次照射した2ショット目,3ショット目のレーザー光の特性線(プロファイル)を示している
尚、本実施例1では、レーザーの設定エネルギー強度(密度)を260mJ/cm2 にしたが、これに限定されるものではなく、完全結晶化エネルギー強度(密度)250mJ/cm2 以上で、薄膜が爆発的な結晶化を示すエネルギー強度(密度)である500mJ/cm2 以下であればよい。
【0032】
また、本実施例1では前駆体半導体薄膜としての非晶質シリコン薄膜をプラズマCVD法により形成したが、このプラズマCVD法による非晶質シリコン薄膜は水素を含有するので、エキシマレーザーを照射する前に400℃から450℃程度に加熱して膜中の水素を除去することが好ましく、これにより、より均一な結晶性の多結晶半導体膜を形成することができる。
【0033】
(実施例2)
図2は本発明の実施例2による薄膜トランジスタの製造工程を示す工程別断面図である。以下、この図に従って薄膜トランジスタの製造工程を説明する。
【0034】
先ず、前記実施例1の多結晶半導体膜の形成工程と同様にして、ガラス基板中の不純物の拡散を防ぐバッファー層としてのSiO2 膜(図示せず。)を被着したガラス基板1(コ−ニング社製#7059ガラス(商品名))上に例えばシラン(SiH4)と水素(H2)を原料ガスとして用いたプラズマCVD法により膜厚85nmの非晶質シリコン薄膜2を形成し、次いでこの非晶質シリコン薄膜2に波長308nm,パルス幅45nsecのXeClエキシマ・レーザービーム3を、設定エネルギー強度(密度)260mJ/cm2 で各ショット毎に1mmピッチで定寸移動させながら照射して溶融・結晶化させ(図2(a))、非晶質シリコン薄膜2を多結晶シリコン膜(層)4に改変する(図2(b))。
【0035】
次に、多結晶シリコン膜(層)4を覆うようにSiO2 からなるゲート絶縁層5を常圧CVD法を用いて100nmの厚みで堆積形成し、続いてゲート絶縁層5上に例えばスパッタ法によりクロム(Cr)膜を被着し、フォトリソグラフィー及びエッチング技術を用いてこのCr膜をパターニングしてゲート電極6を形成した後、このゲート電極6をマスクとして用いて、リン,アルミニウム等のドナーとなる不純物元素、またはボロン,砒素等のアクセプタとなる不純物元素を質量分離を行わないイオンドーピング法,或いは,バケットタイプイオンドープ法(このバケットタイプイオンドープ法は例えばExtended Abstracts of the 22nd (1990) International Conference on Solid State Devices and Materials, p. 971または p.1197に記載されている。)を用いてドーピングして、多結晶シリコン膜(層)4にソ−ス及びドレイン領域7及び8を作る(図2(c))。
【0036】
次に、前記導入された不純物を活性化させるために多結晶シリコン膜(層)4を300〜600℃程度で熱処理した後、ゲート絶縁層5及びゲート電極6を覆うように、層間絶縁用として例えばAP−CVD法によりSiO2 からなる層間絶縁層9を形成し、次いでゲート絶縁層5及び層間絶縁層9にコンタクト・ホ−ル10を形成し、この後、アルミニウム(Al)膜をスパッタ法で堆積形成し、フォトリソグラフィー及びエッチング技術を用いてこのアルミニウム(Al)膜をパターニングしてソース電極及びドレイン電極11を形成すると、多結晶シリコンTFTが完成する(図2(d))。
【0037】
このような本実施例の多結晶シリコンTFTは、能動層となる多結晶シリコン膜(層)4の結晶性がその全域にわたって均一であることから、移動度のバラツキが小さいものとなる。特に、前記製造工程におけるレーザー結晶化以降,TFT完成までのいずれかの工程の後に、水素をドーピングする工程もしくは水素雰囲気下での熱処理(300〜400℃)工程もしくは水素プラズマ処理工程を付加することにより、多結晶シリコン膜(層)4における多結晶の粒界にあるダングリング・ボンドが補償されて、結晶性の均一化がより高いレベルでなされることとなり、TFTの移動度のバラツキは3%程度の極めて小さいものとなる。また、前記工程では特に明記していないが、オフ特性を改善するためLDD(Lightly doped drain )構造を採用することも可能である。また、前記のボロン,砒素等のアクセプタとなる不純物元素及びリン,アルミニウム等のドナーとなる不純物元素の両方を選択的に用いることにより、Pチャンネル及びNチャンネルトランジスタを選択的に作成して、CMOS回路を基板上に作り込むことも可能である。
【0038】
(実施例3)
本実施例3は前記実施例2よりも更に能動層となる多結晶シリコン膜(層)の特性が向上した薄膜トランジスタを得るために、前記実施例2と同様にエキシマレーザーを設定エネルギー260mJ/cm2 で走査しながら非晶質シリコン薄膜2に照射して多結晶シリコン膜(層)4を得た後、この多結晶シリコン膜(層)4にエキシマレーザーを設定エネルギー強度(密度)390mJ/cm2 で走査しながら照射して、結晶内部の転位及び点欠陥等の結晶欠陥を減少させ、この後、前記実施例2と同様にして薄膜トランジスタに形成を行うものである。ここで、多結晶シリコン膜(層)4に照射するエキシマレーザーの設定エネルギー強度(密度)は、多結晶シリコン膜(層)4が溶融して爆発的な結晶化を起こすエネルギー強度(密度)より小さいもので、結晶の原子の配列状態が変化するに必要な強度(密度)である。
【0039】
尚、前記実施例2,3では、ゲート電極6材料としてCrを用いたが、本発明においては、ゲート電極材料として、アルミニウム(Al),タンタル(Ta),モリブデン(Mo),クロム(Cr)及びチタン(Ti)から選ばれる1種の金属または2種以上の金属の合金、不純物を多量に含む多結晶シリコン、多結晶SiGe合金を用いても同様の効果を得ることができる、また、ゲート電極6をITO(錫添加酸化インジウム)膜等の透明導電層で構成しても同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、前記実施例2,3では、ソース電極11およびドレイン電極12材料としてアルミニウム(Al)を用いたが、本発明においては、ソース電極およびドレイン電極材料として、アルミニウム(Al),タンタル(Ta),モリブデン(Mo),クロム(Cr)及びチタン(Ti)から選ばれる1種の金属または2種以上の金属の合金を用いても同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、前記実施例2,3では、ゲート絶縁層5をSiO2 からなるものとしたが、本発明においては、例えば、窒化シリコン、酸化タンタル、酸化アルミニウム等の他の絶縁性物質によりゲート絶縁層を形成しても同様の効果を得ることができる。また、ゲート絶縁層5の堆積方法としても、前記の常圧CVD法に限定されるものではなく、ECR(Eiectron Cyclotron Resonance)−CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法、スパッタ法等を用いることができる。
【0042】
また、前記実施例1〜3ではXeClエキシマレーザーを用いたが、本発明においてKrレーザー,Arレーザー等の他のレーザーアニール用光源を適用できることは言うまでもない。
【0043】
また、前記実施例1〜3では、結晶化閾値エネルギー強度(密度)ETHが160mJ/cm2 、完全結晶化エネルギー強度(密度)E0 が250mJ/cm2 であったが、これは非晶質半導体薄膜の材料,膜厚,レーザーの種類等のパラメータに大きく依存するものであり、前記値に限定されるものではない。また、X( E0)−X(ETH)は1mmであったが、これもレーザービームの設定エネルギー,ビーム径等に依存するものであり、前記値に限定されるものではない。
【0044】
また、前記実施例1〜3では、基板1としてコ−ニング社製#7059ガラス(商品名)からなるガラス基板を用いたが、本発明においては他の材料組成のガラス基板,石英基板またはサファイア基板等の他の絶縁性基板を適用できることは言うまでもない。
【0045】
また、前記実施例1〜3では、非晶質半導体薄膜として非晶質シリコン層を用いたが、本発明においては、他の非晶質半導体材料、例えば非晶質のゲルマニウム(Ge),非晶質のシリコン・ゲルマニウム合金(SiGe)等からなる非晶質半導体薄膜を適用できることは言うまでもない。また、非晶質半導体材料の堆積方法としてプラズマCVDを用いたが、他の堆積方法、例えば熱CVD,ECR−CVD、リモートプラズマCVD、スパッタ法等を適用できることは言うまでもない。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、その全域において結晶性の均一化が図られた多結晶半導体薄膜が形成することができる。また、本発明によれば、移動度のバラツキが極めて小さい薄膜トランジスタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による多結晶半導体薄膜の形成工程を示す工程断面図である。。
【図2】本発明の実施例2による薄膜トランジスタの製造工程を示す工程別断面図である。
【図3】膜厚85nmの非晶質シリコンにXeClエキシマレーザーを照射した時の紫外光反射率の照射エネルギー依存性を示した図である。
【図4】XeClエキシマレーザーの設定エネルギー(密度)を260mJ/cm2 にした場合の、被照射体である非晶質シリコン表面におけるレーザーのエネルギー強度(密度)のプロファイルを示した図である。
【図5】従来の薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。
【図6】図6(a) はエキシマレーザービームの1ショットのビーム形状を模式的に示した図であり、図6(b) は図6(a) のA−A’線に対応するビームのエネルギー分布を示した図である。
【図7】図7(a) は被アニール体(非晶質シリコン膜)のレーザー照射面におけるレーザの照射状態を模式的に示した図であり、図7(b) はこの照射方法により多結晶化したシリコン膜を用いて薄膜トランジスタを形成した場合の図7(a) B−B’線に対応する移動度の変化状態を示した図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 非晶質シリコン層
3 エキシマ・レーザー光
4,4a 多結晶シリコン層
5 ゲ−ト絶縁層
6 ゲ−ト電極
7 ソース領域
8 ドレイン領域
9 層間絶縁層
10 コンタクト・ホール
11 ソース電極
12 ドレイン電極
Claims (5)
- 基板の主面上に形成された多結晶化すべき非晶質半導体薄膜に、パルス状レーザービームを各ショット毎にその前記非晶質半導体薄膜への照射領域が所定ピッチで移動するよう照射して、前記非晶質半導体薄膜全域を溶融・結晶化する多結晶半導体薄膜の形成方法において、
前記パルス状レーザービームの前記非晶質半導体薄膜への照射領域の移動ピッチをPとし、前記パルス状レーザービームのエネルギー強度プロファイルにおける,前記非晶質半導体薄膜の結晶化を開始させる強度ETHを与える前記パルス状レーザービームの照射面での位置をX(ETH)とし、前記非晶質半導体薄膜のその厚み方向の全体を完全に結晶化させる強度E0 を与える前記パルス状レーザービームの照射面での位置をX(E0) としたとき、下記式を満足するように、前記パルス状レーザービームの前記非晶質半導体薄膜への照射領域を移動させることを特徴とする多結晶半導体薄膜の形成方法。
- 前記非晶質半導体薄膜に前記パルス状レーザービームを照射する前に、前記非晶質半導体薄膜を加熱処理することにより前記非晶質半導体薄膜中に含有されている水素を除去する請求項1に記載の多結晶半導体薄膜の形成方法。
- 前記非晶質半導体薄膜全域を溶融・結晶化することにより得られた多結晶半導体薄膜に、前記パルス状レーザービームが有する最大のエネルギー強度よりも大きなエネルギー強度を有するレーザービームを走査・照射する請求項1に記載の多結晶半導体薄膜の形成方法。
- 前記非晶質半導体薄膜全域を溶融・結晶化することにより得られた多結晶半導体薄膜に、水素をドーピングする請求項1に記載の多結晶半導体薄膜の形成方法。
- その能動層が多結晶半導体薄膜からなる薄膜トランジスタの製造方法において、
前記多結晶半導体薄膜を請求項1〜4のいずれかに記載の多結晶半導体薄膜の形成方法により形成することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
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