JP4354980B2 - 生物学的に活性なタンパク質の製造のための新規の方法 - Google Patents
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Description
発明の背景
TGF−β様タンパク質、即ち、 TGF−β超科は胎芽の発育又は組織の再生の如き数多くの生物学的調節経路における中心的な役割を果たす。これらは非常に有能な生物学的因子であり、それらは多種多様の目的のために治療的にも利用されうる。 TGF−β超科の最も良く知られる構成員は TGF−βそれ自体である。
発明の目的
本発明の目的は生物活性二量体型 TGF−β様タンパク質をその変性又はそうでなければ非天然形態から作り出すための改良方法を提供することにある。この目的は、そのタンパク質の単量体を有機溶媒、例えば DMSO, DMF又はDMSOと DMFとの混合物を含んで成る界面活性剤非含有フォルディングバッファーで処理したとき、大量の所望の二量体型生成物が、予測し得なかった収量において生成されるという予測し得なかった発見により達成される。
発明の詳細な説明
本発明は二量体型の生物活性β型トランスフォーミング増殖因子(TGF−β)−様タンパク質の製造のための改良方法に関し、この方法は界面活性剤非含有フォルディング条件に前記 TGF−β様タンパク質の変性単量体を委ねることを含んで成る。
TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3; BSC−1サル腎細胞のコンディショニング培地から単離された増殖インヒビター(即ち、ポリエルギン;Holley, R.W.ら (1980) PNAS77, 5989-5992 ; Ristow, H.J.(1986) PNAS 83, 5531-5533);ニワトリの胚芽軟質細胞由来の TGF−β4(Jackowlew, S.B.ら (1988) Molecular Endocrinology 2, 1186-1195) ; アフリカツメガエル由来の TGF−β5 (Kondaiah, P.ら (1990) J.Biol.Chem. 265, 1089-1093); TGF−β−関連インヒビン及びアクチビン(卵胞刺激ホルモンの下垂体分泌を調節する性腺タンパク質); Mullerian阻害物質(MIS;これは雄の哺乳動物胎児におけるミュラー管の発育を阻害する);骨形態発生タンパク質(BMP、軟骨及び骨の形成の誘導に関与するポリペプチド群;今日知られるこの群の構成員は BMP−2, BMP−3, BMP−4, BMP−5, BMP−6, BMP−7, BMP−8及び BMP−9である);ショウジョウバエのデカペンタプレジック(decapentaplegic) 遺伝子複合体由来の転写体(dpp、これはハエ胎芽の形態発生のコントロールを担う);Vg−1(アフリカツメガエル転写体の産物であり、卵母細胞の植物極に存在する);並びに Vgr−1、即ちVg−1関連哺乳動物遺伝子 (Mason, Aら (1986) Biochem.Biophys.Res.Commun. 135, 957-964;Cate, R.ら (1986) Cell 45, 685-698;Wozney,J.M.ら (1988) Science 242, 1528-1534; Padgett, R.ら (1986)Nature 325, 81-84 ; Weeks, D.L. and Melton, D.A. (1987) Cell 51, 861-868 ; Lyons, K.ら (1989) PNAS 86, 4554-4558)。
−線維芽細胞に対する TGF−βの細胞移動促進活性 (Postlethwaithe, A.E.ら (1987) J.Exp.Med. 165, 251 ; Burk, R. (1973) PNAS 70, 369に従って改良) ;
−ヒトA375黒色腫細胞の増殖に対する TGF−βの阻害作用(Brown,T.J.ら (1987) J.Immunol. 139, 2977) ;
− CCL−64細胞 DNA合成阻害アッセイ (Graycar, J.Lら (1989) Molecular Endocrinology 3 : 1977-1986)又は
−以降の実施例に記載の連続ミンクの肺上皮細胞系Mv−1−Lu (ATCC/CCL64)の増殖の阻害;
のいづれかとして規定する。
実施例1:E.コリの中での TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3の発現
実施例1A:一般方法
細菌株:
−E.コリ K12/LC137 : htpRam, lonR9, lacam, malam, trpam, phoam, rspL, tsx::Tn10, supCts (Goff, S.A.ら (1984) PNAS 81, 6647-6651)。
プラスミド:
−pPLMu (Buell, G.ら (1985) Nucleic Acids Res. 13, 1923-1938) : このプラスミドはファージMu ner遺伝子リボソーム結合部位をもつバクテリオファージλPL プロモーターを担持する(Van Leerdam, E.ら (1982) Virology 123, 19-28)。
−pcl857:熱不安定性λCl857 レプレッサーをコードし、且つカナマイシンに対する耐性を授けるプラスミド(Remault, E.ら (1983)Gene 22, 103-113)。
SDS−ゲル電気泳動:
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)及びタンパク質染色はBIORAD由来のMiniprotean IIセル及び厚さ1mmの18%のポリアクリルアミドゲルを利用して既に説明されている通り (Laemmli, U.K. (1970) Nature 227, 680-685) に実施する。
熱誘導:
40μgづつのアンピシリン及びカナマイシン(LB/ amp/kan)を含む20mlの培養チューブ中の7mlのLB−培地 (Maniatisら (1982)、Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory, New York) に単一のコロニーを接種し、そして振盪しながら一夜30℃でインキュベートする。この一夜培養物5mlを 100mlのエーレンマイヤーフラスコ中の15mlのLB/ amp/kan に加える。このフラスコを42℃の浴槽シェーカーに移す。移す前に2mlのサンプルを取り(非誘導条件)、そして移してから1時間間隔で1mlづつのサンプルを取る(誘導条件)。細胞を遠心分離(5min ; 10,000rpm ; エッペンドルフ遠心機で)によりペレット化し、そして上清液を捨てる。このペレットを SDS−PAGE用の 100μlのサンプルバッファーに再懸濁し、そして95℃で 10min加熱する。5μlのアリコートを SDS−PAGEに載せる。
コンピテント細胞の調製:
コンピテントE.コリ細胞はManiatisら (1982) 、Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkに記載の塩化カルシウム手順により調製する。プラスミドpcl857を担持する細胞を30℃で増殖させる。
実施例1B:発現ベクターpPLMu.hTGF−β1, pPLMu.hTGF−β2及びpPLMu.hTGF−β3の構築並びに TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3の発現
TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3それぞれのコード配列(配列表に示す)を NcoIで消化しておいたプラスミドPGem−5ZF(+) (Promega) の中にクローニングし、仔牛小腸アルカリ性ホスファターゼ (Boehringer) で脱リン酸化し、そしてクレノウポリメラーゼ(Gibco−BRL)で補完 (フィル・イン) する。得られる構築体をpGKM125 (TGF−β1),pGKM740 (TGF−β2) 及びpGKM126 (TGF−β3) と命名し、そしてコンピテントE.コリ Y1090細胞を形質転換するのに用いる。 TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3をコードする適正なインサートを担持するクローンをそれぞれE.コリ Y1090/pGKM125 (TGF−β1)、E.コリ Y1090/pGKM740 (TGF−β2)及びE.コリ Y1090/pGKM126 (TGF−β3)と命名する。
実施例1C:形質転換体の発酵
40mg/lのアンピシリン及びカナマイシンを有する 750mlのLB培地を含む2lのエーレンマイヤーフラスコ中のE.コリ LC137/ pPLMu.h.TGF−β1、E.コリ LC137/ pPLMu.h.TGF−β2及びE.コリ LC137/ pPLMu.h.TGF−β3の一夜培養物を30℃で増殖させる。 300mlの一夜培養物を2lのエーレンマイヤーフラスコ中の上記の抗生物質を含むLB培地 750mlに加え、そして65℃の湯浴の中で約 3.5分振盪することにより42℃に加熱する。次いでフラスコを42℃のシェーカーに移し、そして3時間インキュベートする。これらのフラスコを氷冷水槽の中で12℃にまで冷やし、そして GSAローター(Sorvall) の中で8,000rpmでの10分遠心分離の後に集める。
実施例2:サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の中での TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3の発現
成熟 TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3のコード配列を酵母酸性ホスファターゼの誘導性プロモーター(PH05)のコントロール下でサッカロマイセス・セレビジエの中で発現させる。
A.プラスミド pJDB207/PH05−RIT12 の構築、
B.プラスミドpJDB207R/PH05− TGF−β1,pJDB207R/PH05− TGF−β2及びpJDB207R/PH05− TGF−β3の構築。
実施例2A:プラスミド pJDB207/PH05−RIT12 の構築
プラスミドp31RIT12(ヨーロッパ特許出願EP 277.313) を制限エンドヌクレアーゼ SalIにより線状化する。エチジウムブロミドの存在下での部分HindIII 消化は、 276bpの SalI/BamHI pBR322 配列、 534bpの酵母酸性ホスファターゼPH05プロモーター、酵母インベルターゼシグナル配列 (19個のアミノ酸をコード) 及びPH05転写ターミネーターを含んで成る1kbの SalI/HindIII フラグメントをもたらす。この1kbのp31RIT12の SalI/HindIII フラグメントを、 SalI及びHindIII で切っておいた酵母−E.コリシャトルベクターpJD207(Beggs, J.D. : Molecular Genetics in yeast, Alfred Benzon Symposium 16, Copenhagen, 1981, pp.383-389) にクローニングする。この1kbのインサートを含む得られるプラスミドを pJDB207/PH05−RIT12 と命名する。
実施例2B:プラスミドpJDB207R/PH05− TGF−β3の構築
プラスミドpGKM740 (TGF−β3)(実施例1.G参照)を NcoIで切る。その接着末端をクレノウ DNAポリメラーゼによる反応で補完する。EcoRIリンカー(5′−CCGGAATTCCGG;Biolabs)を加え、そしてその混合物をライゲーションする。得られる環状プラスミドをpGKMA668(TGF−β3) と称し、そしてEcoRI及び SalIにより切断する。 0.4kbのEcoRI/ SalIフラグメントをアガロースゲルから単離し、精製し、そして滅菌水の中に25μg/mlの濃度で再懸濁する。このフラグメントは TGF−β3の成熟コード配列を含み、成熟 TGF−β3のアミノ酸 Ala1を規定するコドン GCTに対して枠内に (in frame to) ATGを有する。
実施例2C:S.セレビジエ株 GRF18の形質転換
サッカロマイセス・セレビジエ株GRF18( MATα, his3−11, his3−15, Leu2−3, Leu−112, can R , DSM3665 ) を次のプラスミドにより
pJDB207R/PH05− TGF−β1
pJDB207R/PH05− TGF−β2
pJDB207R/PH05− TGF−β3
Hinnen, A.ら (1978) PNAS 75, 1929 に記載の形質転換プロトコールを利用して形質転換させる。
サッカロマイセス・セレビジエ GRF18/pJDB207R/PH05− TGF−β1
サッカロマイセス・セレビジエ GRF18/pJDB207R/PH05− TGF−β2及び
サッカロマイセス・セレビジエ GRF18/pJDB207R/PH05− TGF−β3。
実施例2D:S.セレビジエ形質転換体の発酵及び細胞抽出物の調製
上記の酵母形質転換体はPH05プロモーターコントロール式発現カセットを含み、それ故 TGF−β1, TGF−β2又は TGF−β3の発現のためのプロモーターの抑制を必要とする。形質転換体をそれぞれ、アミノ酸は含まないが (NH4)2SO4の代わりに10g/lのL−アスパラギン、1g/lのL−ヒスチジン及び20g/lのグルコースを含む Difco酵母窒素ベースの処方に従って調製した酵母高Pi最小培地の中で2段予備培養(10ml及び50ml)で増殖させる。第2予備培養物の細胞を 0.9%のNaClで洗い、そして全ての細胞を、アミノ酸は含まないが0.03g/lのKH2PO4、10g/lのL−アスパラギン、1g/lのヒスチジン及び20g/lのグルコースを含む Difco酵母窒素基礎培地の処方に従って調製した 100mlの低Pi最小培地に接種するために用いる。この培養物を30℃にて180rpmで撹拌する。
実施例3
実施例3A:E.コリからの不溶性単量体型 TGF−β3の回収
E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β3を実施例1Cに記載の通りにして発酵させる。細胞破壊及び不溶性 TGF−β3の回収を4℃で実施する。約18gのウェット細胞を60mlの 0.1Mのトリス/HCl 、10mMのEDTA、1mMのPMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド)、pH 8.3(破壊バッファー)に懸濁する。細胞をフレンチプレス (SLM Instruments.Inc.) にその製造者の仕様書に従って2回通し、そしてその容量を破壊バッファーで 200mlにする。その懸濁物を15,000gで20分遠心する。得られるペレットを1MのNaClを含む 100mlの破壊バッファーに懸濁し、そして上記の通りに10分遠心する。そのペレットを1%のトリトンX−100 (Pierce)を含む 100mlの破壊バッファーに懸濁し、そして再び上記の通りに10分遠心する。洗浄したペレットを次に50mlの20mMのトリス/HCl 、1mMのEDTA、1mMのPMSF、1%の DTTに懸濁し、そしてテフロン(登録商標)製組織グラインダーでホモジナイズする。得られる懸濁物は不溶性形態の粗単量体型 TGF−β3を含む。
実施例3B:単量体型 TGF−β3の可溶化及び精製
実施例3Aに従って得られる TGF−β3懸濁物10mlを10%の酢酸でpH 2.5にまで酸性化し、そしてエッペンドルフ遠心機で室温で10分遠心する。その上清液を Sephacryl S−100 カラム (Pharmacia, 2.6×78cm) で、10%の酢酸中で 1.4ml/min の流速においてクロマトグラフィーにかける(他方、このクロマトグラフィーは Sephacryl S−100 HR (Pharmacia)で行ってよく、そしてカラムは1%の酢酸又は5mMの HClで流す)。190min〜220minで溶出する単量体型変性 TGF−β3をプールする。この材料を生物活性二量体型 TGF−β3を得るためのフォルディングのために(実施例4)、又は更なる精製及び構造分析のために(実施例3D)使用する。
実施例3C:サッカロマイセス・セレビジエからの単量体型 TGF−β3の回収
上記の通りに実施した 500ml発酵から得られる破壊細胞のペレットを20mlの4Mの尿素、 0.1Mのトリス、1%の DTT、pH 8.0に懸濁する。この混合物を室温に30分保ち、5分毎に断続的にボルテキシングにかける。不溶性材料を30,000g、30分、40℃の遠心分離により除去し、そしてその上清液を酢酸でpH 2.5に調整し、そして5%の酢酸に対して4℃で一夜かけて徹底的に透析する。その溶液を上記の通りに遠心し、そして清浄な上清液をYM10膜 (Amicon) 上での限外濾過により4mlの最終容量となるまで濃縮する。次いでこのサンプルを Sephacryl S−100 HR (Pharmacia)で5%の酢酸において、実施例3Bに記載の通りにしてクロマトグラフィーにかけ、単量体型 TGF−β3が得られる。
実施例3D:RP−HPLCによる単量体型 TGF−β3の更なる精製
Sephacryl S−100 カラムからのプール画分のアリコート(実施例3B)をVydac 214 TP 5415 HPLC逆相カラム(4.6×150mm 、The Separation Group, Hesperia, CA, USA)で精製する。このカラムを 0.1%の TFAの水溶液70%と0.08%の TFAのアセトニトリル溶液30%との混合物で平衡にし、そしてその生成物を 0.1%の TFAの水溶液55%と0.08%の TFAのアセトニトリル溶液45%との混合物で終了する1ml/min の流速で30分にわたる線状勾配により溶出させる。溶出は 216nmでの吸収でモニターし、そして個々のピークをUV吸収に従って手動で集める。変性した単量体型 TGF−β3は 21.5minで溶出する。分離のために利用する個々の逆相カラムに依存して、同一の TGF−β3の調製品がそれぞれ 16min及び 18min前後で溶出する。
実施例3E: SDS−PAGEによる単量体型 TGF−β3の分析
Sephacryl S−100 カラム(実施例3.B)又は逆相カラム(実施例3.D)の個々のアリコートを真空乾燥し、そしてクマジーブルーR−250 で染色した15%のポリアクリルアミドスラブゲルでの SDS−PAGEにより分析する。見かけ上分子量約12,000Daの一本のバンドが得られ、これは還元型の天然のブタ TGF−β3と区別できなかった。
実施例3F:単量体型 TGF−β3のN末端アミノ酸配列の決定
実施例3B由来の TGF−β3を真空エバポレーションにかけ、25μlの 0.1Mの酢酸に溶かし、そして気相タンパク質シーケンサーモデル470A (Applied Biosystems) でのアミノ酸配列決定にかける。
実施例4:ジメチルスルホキシド(DMSO)含有バッファーの中での TGF−β3のin vitroフォルディング
上記の通りにして得た TGF−β3を 0.1Mのトリス、1MのNaCl、 0.5Mのアルギニン、5mMの還元型グルタチオン、及び40%(v/v)のDMSOのそれぞれより成るバッファーの中で4℃にてフォルディングする。バッファーのpHはNaOHでpH 9.5に調整する。 TGF−β3の最終濃度は 0.1mg/mlとする。4℃で7日後、その溶液を濃酢酸でpH 3.5に酸性化し、YM10膜 (Amicon) の付いたAmicon撹拌式セルの中での限外濾過により約10倍濃縮する。その濃縮溶液を 0.1Mの酢酸によりもとの容量に希釈し、そして再度濃縮する。この手順を2回繰り返す。次いでこの溶液を以降に記載の通りにしてイオン交換クロマトグラフィーにかける。
実施例5:ジメチルホルムアミド(DMF)含有バッファーの中での TGF−β3のin vitroフォルディング
上記の通りにして得られた TGF−β3を 0.1Mのトリス、1MのNaCl、 0.5Mのアルギニン、5mMの還元型グルタチオン及び30%(v/v)の DMFそれぞれより成るバッファーの中で4℃にてフォルディングする。バッファーのpHはpH 8.5に調整する。 TGF−β3の最終濃度は 0.1mg/mlとする。4℃で7日後、その溶液を濃酢酸でpH 3.5に酸性化し、YM10膜 (Amicon) の付いたAmicon撹拌式セルの中での限外濾過により約10倍濃縮する。その濃縮溶液を 0.1Mの酢酸でもとの容量に希釈し、そして再濃縮する。この手順を2回繰り返す。次いでこの溶液を以降に記載の通りにしてイオン交換クロマトグラフィーにかける。
実施例6:カチオン交換クロマトグラフィーによる二量体型生物活性 TGF−β3の単離
約10〜50mgの TGF−β3を含む実施例4又は5それぞれにおいて得られる溶液を HiLoad 26/10 S−Sepharose 高性能カラム(Pharmacia) に載せる。このカラムをまず20mMの酢酸ナトリウム、30%のイソプロピルアルコール、pH 4.0 (バッファーA)により5分洗い、次いで 0.2MのNaClを含むバッファーAで始まり、そして 0.5MのNaClを含むバッファーAで終わる45分にわたる線状勾配により溶出させる。溶出は 280nmでモニターし、そして手動式に分画する。画分を非還元 SDS−PAGEにより二量体型 TGF−β3について、及びin vitroバイオアッセイにより生物活性において検定する。
実施例7:二量体型 TGF−β3の更なる精製及び特性決定
実施例7A:HPLCによる精製
二量体型生物活性 TGF−β3を含む画分をプールし、 0.1Mの酢酸に対して透析するか又は同容量の 0.1%の TFA水溶液で希釈し、そしてVydac 214 TP 510カラム(1cm×25cm、The Separations Group, USA) でのRP−HPLCにかける。そのカラムを75%の溶媒A〔 0.1%の TFA水溶液〕及び25%の溶媒B〔0.08%の TFAのアセトニトリル溶液〕の混合物により 4.5ml/min の流速で平衡にする。サンプルの添加後、そのカラムを 235nmでモニターした吸収が基底値に到達するまで平衡条件下で洗浄する。次いでカラムをこの平衡条件で始まり、そして45%の溶媒Aと55%の溶媒Bの混合物で終わる線状勾配により30分以内で溶出させる。溶出液を手動式に分画し、そして非還元 SDS−PAGE及びin vitroバイオアッセイにより分析する。
実施例7B: SDS−PAGEによる分析
実施例7Aの精製 TGF−β3のアリコートを真空乾燥し、そしてクマジーブルーR−250 で染色する15%のポリアクリルアミドスラブゲルでの SDS−PAGE (Laemmli, U.K. (1970) Nature 227, 680)により分析する。還元させていないサンプルは約 25kDaの見かけ上の分子量の一本のバンドを示し、一方還元サンプルは約 12.5kDaにおいてバンドを示す。
実施例7C:分子量決定
実施例7A由来の精製 TGF−β3を電子スプレー式イオン化質量分析器(ESI−MS) により分析する。全質量は理論的に期待される値に非常に近いことがわかる。
実施例7D:アミノ酸分析
アミノ酸分析はKnecht, R. and Chang, J.-X., Analytical Chemistry 58 : 2375-2379 (1986) に記載の通りに実施する。その結果は理論通りであった。
実施例7E:N−末端アミノ酸配列の決定
10〜20μgの実施例7Aの TGF−β3を真空エバポレーションし、25μlの10mMの酢酸に溶かし、そして気相シーケンサーモデル477A (Applied Biosystems) でのアミノ酸配列決定にかける。最初の10個の残基のアミノ酸配列は理論通りであった。
実施例7F: Asp−Nプロテアーゼによるタンパク質分解断片化
92μg (6.7mmole) の TGF−β3を還元し、4−ビニルピリジルエチル化し、真空遠心分離で乾かし、そして 200μlの5mMの HClに再溶解する。10mMの Zwittergent 3−12界面活性剤 (Calbiochem Corporation, La Jolla, CA) を含む 200μlの 0.2Mのトリス−酢酸バッファーpH 7.8を加え、そしてタンパク質溶液と混合する。切断は2μg(50μlの水に溶解)のエンドプロテイナーゼ Asp−N (シュードモナス・フラギ(Pseudomonas fragi) 突然変異体、 Sequence Grade, Boehringer Mannheim Biochemica, FRG由来) により37℃で実施する。13時間後、50μlの10%(v/v)の TFAを加え、そしてその混合物を Vydac 218 TP 5415カラム(4.6mm×150mm、The Separations Group)での、5〜45%(v/v)のアセトニトリルの 0.1%の TFA溶液/水溶液の 0.1ml/min の流速での 40minでの線状勾配によるRP−HPLCにより分離させる。単離したペプチドを電子スプレーイオン化質量分析器 ESI−MSにより分析する。決定される分子量は予測した Asp−Nフラグメントに関する計算値と良好に一致する。
実施例7G:V8プロテアーゼによるタンパク質分解断片化
実施例11に類似して、 Asp−Nプロテアーゼにより、4−ビニルピリジル化 TGF−β3をプロテアーゼV8により消化し、そしてそのフラグメントをRP−HPLCにより分離し、そして ESI−MSにより分析する。決定される分子量は理論値により一致し、 TGF−β3の同定を実証する。同定されたフラグメントは 112個のアミノ酸残基の全配列をカバーする。
実施例8:フォルディングした TGF−βについてのin vitro活性試験:ミンク肺上皮細胞(Mv−1−Lu)酸性ホスファターゼアッセイ
TGF−β又はハイブリドタンパク質をin vitroで連続ミンク肺上皮細胞系Mv−1−Lu(ATCC/CCL64)の増殖を阻害する化合物の効能を測定する細胞バイオアッセイでスクリーニングする。Mv−1−Lu細胞系は TGF−βのバイオアッセイにおける高感度なリポーターであると実証されており、シグモイド型の濃度応答を示し、約10〜50pg/mlのリポートEC50を有す (Tuckerら、Science 1984 ; 226 : 705-707;Absherら、J.Immunol Methods 1991 ; 138 : 301-303;Danielpourら、J.Cell Physiol. 1989 ; 138 : 79-86) 。増殖が TGF−βにより強く阻害されるMv−1−Lu細胞はこのサイトカインの分析バイオアッセイの開発に最も適する細胞系であると現在考えられている (Kelleyら、Exp Lung Res 1992 ; 18 : 877-887;Meager,J Immunol Methods 1991 ; 141 : 1-14)。アッセイは96穴マイクロタイタープレートの中で、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, Rockville MD, USA由来の46継代目においてオリジナル的に得られる細胞を利用して実施する。細胞を TGF−β標準品又はサンプルの希釈系列を含む増殖培地(5%v/vの胎児牛血清を有する最小必須培地)の中に低密度(ウェル当り5000細胞) で播種する。次にアッセイを37℃にて多湿5% CO2インキュベーターの中で72時間インキュベートする。細胞増殖の阻害は高感度酵素的細胞染色法(これは各ウェルの中で産生される酸性ホスファターゼの量の比色換算値を供する)により決定され、染色の強さは各ウェルの中に存在する細胞の数に対応する。各ウェルの吸収O.D.を 405nmで決定し、そしてアッセイデーターをプロットし、そして適当なPCソフトウェアプログラムにより分析する。このアッセイにおいて、1単位(U)の活性はMv−1−Lu細胞増殖の最大阻害の半分に必要な TGF−βの量として記述する。
実施例9:フォルディングした TGF−β3の in vivo活性試験
実施例9A:老齢マウスにおける部分的に厚みを帯びた創傷の治癒
創傷治癒過程は年齢を追うごとに悪くなることが知られ (Grove G.L. (1982) Arch.Dermatol.Res. 272:381)、従って老人医療分野における主たる問題を占める。従って、部分的に厚みを帯びた創傷 (II度火傷により生成)の治癒に及ぼすフォルディングした活性二量体型 TGF−β3の in vivo生物効果を部分欠陥又は損われた創傷修復状況で、即ち老齢動物で、 Schultz, G.S.ら (1987) Science 235 :350 に記載のものと類似する以下のプロトコールを利用して調べる。
実施例9B:成ラットにおける全体に厚みを帯びた創傷の治癒
フォルディングした活性二量体型 TGF−β3の生物効果も創傷修復の第2 in vivoモデル、即ち、Mustoe, T.A.ら (1987) Science 237 :1333に記載のものと類似の以下のプロトコールを利用する成ラットにおける全体に厚みを帯びた創傷(外科的切開により作成)の治癒に基づいて調べる。
実施例10:可溶化単量体型ハイブリド TGF−βタンパク質の調製
5mlのプラスミド pPLMuを NcoI及び SalIでの消化により線状にし、そしてフラグメント DNAに関して上記した通りにゲル精製する。 100ngの線状化、且つ精製した pPLMuベクター DNA並びに配列表に示すハイブリド TGF−β1−3, TGF−β2−3及び TGF−β3−2のそれぞれをコードする3倍モル当量の対応の精製フラグメント DNAを4℃で15時間、1単位の DNAリガーゼ (Boehringer)を含む20mlのライゲーションバッファー(70mMのトリス−HCl 、pH 7.5、10mMの MgCl2、5mMの DTT、 0.1mMのアデノシン三リン酸)の中でインキュベートする。10mlのライゲーション混合物をプラスミドpcl857を担持する 200mlの低温(4℃)コンピテントE.コリ LC137細胞)に加える。30分後、細胞を42℃の湯浴の中での 1.5分のインキュベーションにより加熱ショックせしめる。2mlのLB培地を加え、そしてその培養物を30℃で 60min振盪する。 200mlのアリコートをアンピシリン及びカナマイシンを含むLBプレート上にプレートし、そして30℃で22hインキュベートする。個々のコロニーを培養し、そしてプラスミド DNAを分析する。 pPLMuの中での TGF−β1−3, TGF−β2−3及び TGF−β3−2をコードする DNAフラグメントのサブクローニングはプラスミド pPLMu.TGF−β1 (44/45)β3, pPLMu.TGF−β2 (44/45)β3及び pPLMu.TGF−β3 (44/45)β2のそれぞれをもたらす。上記の構築体を含むクローンをE.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β1 (44/45)β3、E.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β2 (44/45)β3及びE.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β3 (44/45)β3とそれぞれ呼ぶ。
実施例11:種々の TGF−β及び TGF−β−ハイブリドによる一連のリフォルディング実験
本発明の多様性及び広範囲の適用性は以下の一連の実施例にまとめた結果により例示される。in vitroタンパク質リフォルディング実験に利用した特定の条件及び個々のタンパク質を列挙する。その他の実験条件は実施例4に記載の通りである。生物活性はin vitroタンパク質フォルディングを開始してから3及び7日後に決定した。
GSH :還元型グルタチオン
DMSO :ジメチルスルホキシド
DMF :ジメチルホルムアミド
β3 : TGF−β3
β2 : TGF−β2
β1-3 : TGF−β1−3ハイブリド
β3-2 : TGF−β3−2ハイブリド
β2-3 : TGF−β2−3ハイブリド
活性 : +:実施例8記載のin vitroバイオアッセイにおける中度の活性
++:実施例8記載のin vitroバイオアッセイにおける高度の活性
微生物の寄託
以下の微生物をDeutsche Sammlung von Mikroorganismen (DSM), Mascheroder Weg 1b, D-3300 Braunschweig (FRG)に寄託した:
微 生 物 寄託日 受託番号
E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β1 1998年11月28日 DSM5656
E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β2 1998年11月28日 DSM5657
E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β3 1998年11月28日 DSM5658
サッカロマイセス・セレビジエGRF18 1986年3月4日 DSM3665
Claims (3)
- 二量体型生物活性β3型トランスフォーミング増殖因子(TGF−β3)、またはその塩の製造のための方法であって、前記TGF−β3の変性単量体をフォルディングバッファーで処理することを含んで成り、ここで当該フォルディングバッファーは還元型のグルタチオンと、DMSO(ジメチルスルホキシド)とから成り、かくて単量体のTGF−β3を生物学的活性の結びつくその三次元コンホメーションへとフォルディングさせ、ここで当該DMSOは30〜50容量%で使用され、かつ当該バッファーのpHは9〜9.5である、方法。
- 前記バッファーが0℃〜40℃の温度を有する、請求項1に記載の方法。
- 前記還元型のグルタチオンを1〜100mMの濃度において使用する、請求項1又は2に記載の方法。
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