JP4354980B2 - 生物学的に活性なタンパク質の製造のための新規の方法 - Google Patents

生物学的に活性なタンパク質の製造のための新規の方法 Download PDF

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Description

本発明は界面活性剤非含有バッファー中での生物学的に活性な二量体型 TGF−β(β型トランスフォーミング増殖因子)様タンパク質の調製のためのフォルディング方法に関する。
発明の背景
TGF−β様タンパク質、即ち、 TGF−β超科は胎芽の発育又は組織の再生の如き数多くの生物学的調節経路における中心的な役割を果たす。これらは非常に有能な生物学的因子であり、それらは多種多様の目的のために治療的にも利用されうる。 TGF−β超科の最も良く知られる構成員は TGF−βそれ自体である。
TGF−βは当初ヒト血小板、ヒト胎盤及びウシの腎臓から均質となるまで精製され、そして約25,000Daの分子量を有するホモ二量体型タンパク質と同定されている。最初は、未形質転換 NRK細胞の定着非依存性増殖を誘導するように EGF又は TGF−αと相乗的に作用できる能力により特徴付けられたが、最近になり、 TGF−βが多種多様な正常及び新生細胞の双方に対して莫大な調節作用を発揮することが示され、細胞活性の多機能調節因子としてのこのタンパク質の重要性が示唆されるようになった。細胞又は組織のタイプ、並びにその他の増殖因子の有無に依存して、 TGF−βは有糸分裂、細胞増殖及び成長を刺激しうるか、又はこれらの過程を効率的に阻害しうるか、又はその他の作用、例えば脂質生成、筋発生、軟骨形成、骨形成及び免疫細胞機能の調節、化学走性の刺激、又は分化の誘導もしくは阻害を発揮しうる。 TGF−βの多くの作用は細胞又は組織のストレス又は負傷に対する応答性及びその結果としての損傷の修復に関連する。炎症発生の後、 TGF−βは顆粒組織の形成に主要たる役割を果たし、フィブロネクチン、コラーゲン及び数種のプロテアーゼインヒビターの如き細胞外マトリックスの形成に関与する遺伝子の発現性を増大させ、そしてフィブロプラストによるコラーゲン−マトリックス収縮を刺激し、従って接続組織の収縮における役割の可能性が示唆される。
ところで、 TGF−β1, TGF−β2, TGF−β3, TGF−β4及び TGF−β5と命名された5種類の機能的且つ構造的に近縁する TGF−βが今までに述べられている。最初の3種はヒトにおいても見い出されている。
TGF−βは全て 390〜412 個のアミノ酸前駆体として合成され、これはC末端側の 112個のアミノ酸より成る成熟形態となるようにタンパク質分解を受ける。その成熟生物活性形態においては、 TGF−βはそれぞれ 112個のアミノ酸の2本のポリペプチド鎖の酸性及び熱安定性ジスルフィド連結型ホモ二量体である。ヒトの TGF−β1(Derynck, R.ら (1985) Nature 316, 701-705)、ネズミの TGF−β1(Derynck, R.ら (1986) J.Biol.Chem. 261, 4377-4379)及びサルの TGF−β1(Sharples, Kら (1987) DNA 6, 239-244) の完全アミノ酸配列は著しい配列保存性を示し、1個のアミノ酸残基のみで相違する。ヒト TGF−β1、ヒト TGF−β2 (de Martin, Rら (1987) EMBO J. 6, 3673-3677; Marquardt, H.ら (1987) J.Biol.Chem. 262, 12127-12131)及びヒト TGF−β3(Ten Dijke, P.ら (1988) PNAS 85, 4715-4719) のアミノ酸配列の対比はこれら3種のタンパク質がその成熟形態において約70〜80%の配列同一性を示すことが実証されている。ヘテロ二量体型 TGF−β1,2がブタの血小板から単離されており、そして TGF−β2の1個のサブユニットにジスルフィド連結した TGF−β1の1個のサブユニットより成る (Cheifetz, S.ら (1987) Cell 48, 409-415) 。
最近、様々な治療方式において試験できるよう十分な量で得るために TGF−βを、天然起源(例えば血小板)からこれらの因子を単離するのではなく、組換技術を介して製造することを狙いとする試みがなされている。しかしながら、生物学的に活性な組換 TGF−βを得ることが非常に難しいことが実証された。配列表においてSEQID No.1〜6で示す配列からわかる通り、 TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3の成熟形態を含む 112個のアミノ酸は9個のシステイン残基を含む。 TGF−β2に関して示されている通り、この9個のシステイン残基は4本の分子内及び1本の分子内ジスルフィド結合を形成している〔Schlunegger, M.P. and Gruetter, M.G., Nature 358:430-434 (1992)〕。 TGF−βの異種発現は、適正な一次構造は有するものの、適正な二次又は三次構造となるように適正にフォルディングせず、従って生物活性を欠いた生成物を招きうる。
天然 TGF−β分子の複雑さを考慮すると、関連の TGF−β遺伝子をより高等な生物より誘導された細胞の中で発現せしめることが好都合と一般に考えられる。組換 TGF−β2の発現は真核系において達成されうるが、得られる生物学的に活性な適正にフォルディングされた物質の収量は満足たるものからかけ離れている。
従って、微生物宿主において生物活性 TGF−βを製造する試みがなされている。しかしながら、例えば細菌においては、その細胞内条件は適正なフォルディング、ジスルフィド結合形成及びジスルフィド安定化二量化であって活性にとって明らかに本質的な事象を誘導するようなものではない。即ち、ヨーロッパ特許出願EP−A−0,268,561 に記載の如き、ラムダプロモーターのコントロール下でのE.コリE.coli)における関連遺伝子の発現ではごくわずかな生物活性 TGF−βしか得られない。別の報告には、 trpプロモーターのコントロール下でのE.コリにおける TGF−β cDNA の発現が記述され、 SDSポリアクリルアミドゲルのオートラジオグラフィーにおいて13,000Daの見かけ上の分子量を有する放射能ラベルされたタンパク質バンドが生み出されているが、しかし活性は全く測定されなかった(Urushizaki, Yら (1987) Tumor Res. 22, 41-55)。
組換タンパク質が細菌(例えばE.コリ)発現系において高レベルで産生されるとき、それらは往々にして封入体又はリフラクチル体(R体)と呼ばれる高度に不溶性の細胞内沈殿物の形態で認められ、これらは位相差顕微鏡のもとで細胞の囲い内で見える輝点として認識されうる。可溶性細菌タンパク質から容易に分離できうるこれらの封入体は、その天然の対応物の機能活性を発揮せず、それ故商品としての価値のないほとんど変性及び還元された形態の組換タンパク質を含む。従って、組換えリフラクチル・タンパク質は、それをその変性形態に保つのに適当な条件下で可溶化し、次いで変性したほどけ形態から適正な機能的に活性な三次元構造へと転移させるためにフォルディングさせるべきであることが一般的に同意され、そのコンホメーションは比較的弱い原子価力、例えば水素結合、疎水性相互作用及び帯電相互作用により安定化されるものである。システイン含有タンパク質の場合、このプロセスはジスルフィド結合の形成も包括しうる。ジスルフィド結合の形成を化学的に促進せしめる場合、不適正な分子内結合の形成を、そして二量又は多量体型タンパク質の場合、分子間結合が阻止又は最小限化されるべきであり、その理由は所望されない不適正にフォルディングされた異性体は不均一な物質をもたらし得、それ故所望の構造を有するタンパク質の更なる精製を複雑にするか、又は低い活性を有するタンパク質をもたらしうるからである。
タンパク質のフォルディングは通常強力な変性条件下でのタンパク質の可溶化、その後のタンパク質のフォルディングを可能にするためのカオトロピズム濃度の低下を含んで成る多段式プロセスにおいて実施される。しかしながら、かかる手法は TGF−βのフォルディングにおいて失敗している。ヨーロッパ特許出願EP−A 0,433,224 において、生物活性二量体型 TGF−β様タンパク質の製造について成功を収めた方法が記載され、それにおいては界面活性剤がフォルディングバッファーの中に入ったまま TGF−β様タンパク質のフォルディングを可能にする温和な界面活性剤を使用している。
従来技術(Tamら、J.Am.Chem.Soc. 113:6657-6662, 1991)よりわかる通り、ペプチドの中でのジスルフィド結合の選択的且つ効率的な形成を促進するためにジメチルスルホキシド(DMSO)が使用できうる。この方法は選択的であり、即ち副反応がなく、そして広いpH域が適用されうる。しかしながら、適正なジスルフィド結合の形成は約30個のアミノ酸までのペプチドにしか、示されていない。別の公開物 (Bentleら、米国特許第 4,731,440号) において、ジメチルスルホン又はジメチルスルホンと尿との混合物が封入体からのソマトトロピンの可溶化のために使用されている。この可溶化タンパク質はこのタンパク質のジメチルスルホン含有溶液を温和な酸化剤と接触させることにより再生されうる。
驚くべきことに、 TGF−β様タンパク質は、可溶化された単量体を、有機溶媒、例えば DMSO, DMF又はDMSOと DMFとの混合物を含んで成る界面活性剤非含有フォルディングバッファーで処理することにより活性な二量体へとリフォルディングされうることがこの度見い出された。
発明の目的
本発明の目的は生物活性二量体型 TGF−β様タンパク質をその変性又はそうでなければ非天然形態から作り出すための改良方法を提供することにある。この目的は、そのタンパク質の単量体を有機溶媒、例えば DMSO, DMF又はDMSOと DMFとの混合物を含んで成る界面活性剤非含有フォルディングバッファーで処理したとき、大量の所望の二量体型生成物が、予測し得なかった収量において生成されるという予測し得なかった発見により達成される。
発明の詳細な説明
本発明は二量体型の生物活性β型トランスフォーミング増殖因子(TGF−β)−様タンパク質の製造のための改良方法に関し、この方法は界面活性剤非含有フォルディング条件に前記 TGF−β様タンパク質の変性単量体を委ねることを含んで成る。
本発明に関する「 TGF−β−様タンパク質」は以下の TGF−β超科の構成員の単量体のアミノ酸配列の少なくとも一つに対して75%以上の相同性を有する配列をその単量体において有するタンパク質を意味する:
TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3; BSC−1サル腎細胞のコンディショニング培地から単離された増殖インヒビター(即ち、ポリエルギン;Holley, R.W.ら (1980) PNAS77, 5989-5992 ; Ristow, H.J.(1986) PNAS 83, 5531-5533);ニワトリの胚芽軟質細胞由来の TGF−β4(Jackowlew, S.B.ら (1988) Molecular Endocrinology 2, 1186-1195) ; アフリカツメガエル由来の TGF−β5 (Kondaiah, P.ら (1990) J.Biol.Chem. 265, 1089-1093); TGF−β−関連インヒビン及びアクチビン(卵胞刺激ホルモンの下垂体分泌を調節する性腺タンパク質); Mullerian阻害物質(MIS;これは雄の哺乳動物胎児におけるミュラー管の発育を阻害する);骨形態発生タンパク質(BMP、軟骨及び骨の形成の誘導に関与するポリペプチド群;今日知られるこの群の構成員は BMP−2, BMP−3, BMP−4, BMP−5, BMP−6, BMP−7, BMP−8及び BMP−9である);ショウジョウバエのデカペンタプレジック(decapentaplegic) 遺伝子複合体由来の転写体(dpp、これはハエ胎芽の形態発生のコントロールを担う);Vg−1(アフリカツメガエル転写体の産物であり、卵母細胞の植物極に存在する);並びに Vgr−1、即ちVg−1関連哺乳動物遺伝子 (Mason, Aら (1986) Biochem.Biophys.Res.Commun. 135, 957-964;Cate, R.ら (1986) Cell 45, 685-698;Wozney,J.M.ら (1988) Science 242, 1528-1534; Padgett, R.ら (1986)Nature 325, 81-84 ; Weeks, D.L. and Melton, D.A. (1987) Cell 51, 861-868 ; Lyons, K.ら (1989) PNAS 86, 4554-4558)。
「 TGF−β−様タンパク質」の意味の中に含まれるのは種々の TGF−β様タンパク質のサブユニット、又はこの親分子の生物活性の一部又は全部を保持している上記のタンパク質のフラグメント又は突然変異体を含むヘテロ二量体である。
好適な意味において、本明細書における「 TGF−β−様タンパク質」なる語は TGF−β超科の任意のタンパク質を意味する。より好適な意味において、これは以下の TGF−β超科のタンパク質より成る群から選ばれるタンパク質を意味する:哺乳動物起源、例えばサル、ネズミ、ブタ、ウマ又はウシの TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3並びに 112個づつのアミノ酸の2種類のサブユニットより成るヘテロ二量体型 TGF−β、並びに TGF−βのフラグメント及び突然変異体、例えばそれぞれの TGF−βの一部が入れ替っているハイブリド分子; BSC−1サル腎細胞のコンディショニング培地から単離された増殖インヒビター(即ち、ポリエルギン) ;ニワトリ胚芽軟質細胞由来の TGF−β4; アフリカツメガエル由来の TGF−β5; TGF−β関連インヒビン及びアクチビン(卵胞刺激ホルモンの下垂体分泌を調節する性腺タンパク質); Mullerian阻害物質(MIS;これは雄の哺乳動物胎児のミュラー管の発育を阻害する);骨形態発生タンパク質(BMP;軟骨及び骨の形成の誘導に関与するポリペプチドの群;今日知られるこの群の構成員は BMP−2, BMP−3, BMP−4, BMP−5, BMP−6, BMP−7, BMP−8及び BMP−9);ショウジョウバエのデカペンタプレジック遺伝子複合体の転写体(dpp;これはハエ胎芽の形態発生のコントロールを担う);Vg−1(アフリカツメガエル転写体の産物;これは卵母細胞の植物極に存在する);並びに Vgr−1、即ち、Vg−1関連哺乳動物遺伝子。「 TGF−β様タンパク質」の意味の中に更に含まれるのは種々の TGF−β様タンパク質のサブユニットを含むヘテロ二量体、又はその親分子の生物活性の一部又は全てを保持する上記のタンパク質のフラグメント又は突然変異体である。
より好ましい TGF−β様タンパク質は、 TGF−β1, TGF−β2, TGF−β3、ヘテロ二量体型 TGF−β、 TGF−βのフラグメント又は突然変異体、例えばそれぞれの TGF−βの一部が入れ替っているハイブリド分子、 BMP、インヒビン及びアクチビンから選ばれる。より好ましいのは BMP−2, TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3、並びにそのヘテロ二量体並びにフラグメント及び突然変異体、例えばそれぞれの TGF−βの一部が入れ替っているハイブリド分子、好ましくは主としてハイブリド TGF−β1−3、ハイブリド−β2−3及びハイブリド TGF−β3−2又は TGF−β1−2であって、N−からC−末端の順序で、ヒト TGF−β1のN末端側の44個のアミノ酸及び TGF−β2のC末端側の68個のアミノ酸より成るものである。更により好ましいのは配列表の中でSEQ ID No.1,3,5,7,9又は11に示すアミノ酸配列を有するものである。最も好適な TGF−β様タンパク質は TGF−β3である。
本発明の目的のための TGF−βの生物活性は、
−線維芽細胞に対する TGF−βの細胞移動促進活性 (Postlethwaithe, A.E.ら (1987) J.Exp.Med. 165, 251 ; Burk, R. (1973) PNAS 70, 369に従って改良) ;
−ヒトA375黒色腫細胞の増殖に対する TGF−βの阻害作用(Brown,T.J.ら (1987) J.Immunol. 139, 2977) ;
− CCL−64細胞 DNA合成阻害アッセイ (Graycar, J.Lら (1989) Molecular Endocrinology 3 : 1977-1986)又は
−以降の実施例に記載の連続ミンクの肺上皮細胞系Mv−1−Lu (ATCC/CCL64)の増殖の阻害;
のいづれかとして規定する。
任意の起源又は手法に由来する単量体型 TGF−β様タンパク質は本法に従って対応の二量体型生物活性 TGF−β様タンパク質へとフォルディングされうる。例えば、 TGF−β様タンパク質の単量体は天然起源に由来するか、又は当業界公知の方法により組換 DNA技術を介してもしくは合成的に製造されうる。単量体が夾雑物に原因してin vitroフォルディングに適さない場合、可溶化及び変性化単量体をクロマトグラフィーにより、例えば Sephacryl S−100 HRの如きでのサイズ排除クロマトグラフィーにより精製できうる。
フォルディングされる前に、この単量体型 TGF−β−様タンパク質は変性(即ち、ほどけ)可溶化形態において存在していなくてはならない。タンパク質を効率的に変性及び溶解できるのは当業界に公知のいわゆるカオトロピック剤であり、これは水性溶液で、且つ適当な濃度で、対応のタンパク質の立体形状をその表面の改変を通じて、即ち水和状態、溶媒環境又は溶媒−界面相互作用の変化を通じて変化させるものである。かかるカオトロピック剤又は変性剤の例には尿素、グアニジン塩酸塩、チオシアン酸ナトリウム(約4〜約9Mの濃度域)、及び界面活性剤、例えばSDS(これは0.01〜2%程度の濃度で添加)が含まれる。また、 TGF−β様タンパク質を含む水性溶液の約2〜約4のpHに至る、例えば低分子量脂肪族有機酸、好ましくは2,3又は4個のC原子を有するかかる酸、より好ましくは酢酸による酸性化、並びに例えばpH10以上の塩基性条件、更には高温が、単量体の変性及び可溶化をもたらすであろう。
次いでこの単量体を、生物活性二量体の回復を可能にする「フォルディング条件」にかける。「フォルディング条件」とは、その条件下で分子内及び分子間ジスルフィド結合の形成が促進され、そしてその変性単量体が生物活性に係るコンホメーションを帯びるようにする条件をいう。このプロセスはこの単量体の一次構造(即ち、アミノ酸配列)の任意の変化には関与しないが、生物活性に結びつく二量体型生成物の三次元コンホメーションの形成には関連する。このプロセスはジスルフィド結合の形成、及び二量体型生物活性構造への単量体の会合を含む。
この目的のため、変性単量体を本発明に従い、有機溶媒を含んで成るフォルディングバッファーで処理する。好適な有機溶媒はDMSO、ジメチルスルホン(DMSO2) 、 DMF、並びに DMSO, DMSO2及び DMFより成る群の2又は3の構成員の任意の混合物より選ばれる。好適な有機溶媒は DMSO, DMF及びその任意の混合物より成る群から選ばれる。
フォルディングは中性又はアルカリ性のpH、及び妥当な温度、例えば約0℃〜約40℃で行われうる。好適なpHは約7〜約10であり、DMSOの場合は約9〜9.5 がより好ましく、そして DMFの場合はpH 8.5がより好ましい。
本発明に従うフォルディングのために利用されうる慣用のバッファー系はpH6〜10において十分な緩衝能を供するバッファーである。タンパク質のフォルディングに対して阻害作用を有さない全てのバッファーが本発明において適用可能である。
例えば、適当なバッファーはトリス−、ビス−トリス、又はピペラジンバッファーである。これらのバッファーは更に、所望するなら塩、及び所望するなら塩基性アミノ酸を含みうる。
フォルディングバッファーにおいて利用できうる塩は、例えば3Mに至る濃度のNa+ , Li+ , K+ , NH4 + , Mg+ , Ca2+もしくはMn2+と、Cl- , F- ,Br- ,J- ,HCO3 - , SO4 2- 、リン酸、酢酸、シアン酸もしくはロダン酸との塩、又はその他のアルカリ金属−もしくはアルカリ土類金属−ハロゲンもしくは偽ハロゲン化合物である。1〜2Mの濃度のNaClが好ましい。
フォルディングバッファーの中に使用できる塩基性アミノ酸は例えば好ましくは 0.5Mの濃度のアルギニンである。
本発明に従うフォルディングのためには、DMSOは約10〜約50%、より好ましくは約20〜約50%、更により好ましくは約30〜約50%、最も好ましくは約40%の濃度において使用できうる。
フォルディングバッファー中のDMSOは DMFと交換してよい。 DMFは約10〜約50%、より好ましくは約20〜約50%、更により好ましくは約30〜約50%、最も好ましくは約30〜約40%の濃度において使用できうる。
DMSOと DMFとの混合物は双方の溶媒を合わせて約10〜約50%の濃度において使用できうる。
DMSO又は DMFは従って DMSO2と置き換えてよい。
本発明の好適な態様において、このフォルディングバッファーは更に還元物質を含む。タンパク質又はペプチドのジスルフィド結合性を高める適当な還元物質は例えば還元型のグルタチオン、還元型のジチオスレイトール、還元型のβ−メルカプトエタノール、還元型のメルカプトメタノール、システイン及びシステアミンより成る群から選ばれる低分子量スルフヒドリル試薬である。適当な濃度は例えば約1〜100mM 、好ましくは約1〜約10mM、より好ましくは約 2.5mMである。
本発明において使用するのに好適な還元型スルフヒドリル化合物は還元型グルタチオン、システイン、システアミン及びβ−メルカプトエタノールより成る群から選ばれる。還元型グルタチオンが最も好適な化合物である。
フォルディングは妥当な温度、例えば約0〜約40℃、好ましくは約4℃で、妥当な時間、例えば約2〜約 720hかけて行う。フォルディングの時間は利用する温度に依存するため、温度を任意の所望のフォルディング時間のために最適化し得、そしてその逆も真なりである。
本発明に係る二量体型生物活性 TGF−β様タンパク質の製造は一段手順で実施し得、それにおいては前記タンパク質の単量体をフォルディングバッファーに移し、そしてその反応混合物を例えば2時間から7日以上の期間、例えば0℃〜40℃の温度、好ましくは4℃において、フォルディング及び二量化を連続的に行いながらインキュベートする。フォルディング反応の際のタンパク質濃度はかなり重要であり、その理由は、高すぎてしまうと、単量体は著しく凝集してしまい、所望されないほど高次元のオリゴマーの形成が起きてしまうからである。タンパク質濃度が約2mg/ml未満であると、二量体型生成物の最終収率は高まり、0.01〜0.5 mg/mlの濃度域が好ましい。
フォルディング後、生物活性二量体を精製し、不完全にフォルディングした TGF−β様タンパク質、並びに不純物、特にこのポリペプチドを微生物宿主細胞において製造するときに調製品の中に存在しうるパイロジェン又はその他の内毒素を除去する。二量体の分離はクロマトグラフィー、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、又はイオン交換クロマトグラフィー(例えばMono Sカラム上)、及び逆相HPLCにより行う。
本発明は更に、本発明の方法に従って製造した二量体型生物活性 TGF−β様タンパク質に関する。これらの TGF−β様タンパク質は様々な治療方式に利用できる。
以下の実施例は本発明の例示であり、限定するものではない。
実施例1:E.コリの中での TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3の発現
実施例1A:一般方法
細菌株:
−E.コリ K12/LC137 : htpRam, lonR9, lacam, malam, trpam, phoam, rspL, tsx::Tn10, supCts (Goff, S.A.ら (1984) PNAS 81, 6647-6651)。
プラスミド:
−pPLMu (Buell, G.ら (1985) Nucleic Acids Res. 13, 1923-1938) : このプラスミドはファージMu ner遺伝子リボソーム結合部位をもつバクテリオファージλPL プロモーターを担持する(Van Leerdam, E.ら (1982) Virology 123, 19-28)。
−pcl857:熱不安定性λCl857 レプレッサーをコードし、且つカナマイシンに対する耐性を授けるプラスミド(Remault, E.ら (1983)Gene 22, 103-113)。
SDS−ゲル電気泳動:
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)及びタンパク質染色はBIORAD由来のMiniprotean IIセル及び厚さ1mmの18%のポリアクリルアミドゲルを利用して既に説明されている通り (Laemmli, U.K. (1970) Nature 227, 680-685) に実施する。
熱誘導:
40μgづつのアンピシリン及びカナマイシン(LB/ amp/kan)を含む20mlの培養チューブ中の7mlのLB−培地 (Maniatisら (1982)、Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory, New York) に単一のコロニーを接種し、そして振盪しながら一夜30℃でインキュベートする。この一夜培養物5mlを 100mlのエーレンマイヤーフラスコ中の15mlのLB/ amp/kan に加える。このフラスコを42℃の浴槽シェーカーに移す。移す前に2mlのサンプルを取り(非誘導条件)、そして移してから1時間間隔で1mlづつのサンプルを取る(誘導条件)。細胞を遠心分離(5min ; 10,000rpm ; エッペンドルフ遠心機で)によりペレット化し、そして上清液を捨てる。このペレットを SDS−PAGE用の 100μlのサンプルバッファーに再懸濁し、そして95℃で 10min加熱する。5μlのアリコートを SDS−PAGEに載せる。
コンピテント細胞の調製:
コンピテントE.コリ細胞はManiatisら (1982) 、Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkに記載の塩化カルシウム手順により調製する。プラスミドpcl857を担持する細胞を30℃で増殖させる。
実施例1B:発現ベクターpPLMu.hTGF−β1, pPLMu.hTGF−β2及びpPLMu.hTGF−β3の構築並びに TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3の発現
TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3それぞれのコード配列(配列表に示す)を NcoIで消化しておいたプラスミドPGem−5ZF(+) (Promega) の中にクローニングし、仔牛小腸アルカリ性ホスファターゼ (Boehringer) で脱リン酸化し、そしてクレノウポリメラーゼ(Gibco−BRL)で補完 (フィル・イン) する。得られる構築体をpGKM125 (TGF−β1),pGKM740 (TGF−β2) 及びpGKM126 (TGF−β3) と命名し、そしてコンピテントE.コリ Y1090細胞を形質転換するのに用いる。 TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3をコードする適正なインサートを担持するクローンをそれぞれE.コリ Y1090/pGKM125 (TGF−β1)、E.コリ Y1090/pGKM740 (TGF−β2)及びE.コリ Y1090/pGKM126 (TGF−β3)と命名する。
E.コリ Y1090/pGKM125 、E.コリ Y1090/pGKM740 及びE.コリ Y1090/pGKM126 細胞をLB培地の中で増殖させ、そしてプラスミド DNAをBirnboim, H.C.及びDoly, H. (1979) Nucleic Acids Research 7, 1513の方法により調製する。5μgのプラスミド DNAを50μlの制限バッファーの中で、 NcoIと SalI(pGKM125) 、 NcoIとEcoRV(pGKM740) 又は NcoI単独(pGKM126) のいづれかで、供給者 (Boehringer) の推奨に従って完全に切断する。 DNAを5μlの3Mの酢酸ナトリウム、 100mMの MgCl2,5mMのEDTA及び 150μlのエタノールの添加により沈殿させる。−70℃で15分インキュベートした後、 DNAを Sorvall遠心機の中のSS34ローターにおいて13,000gで15分の遠心によりペレットにする。上清液を捨て、そしてペレットを0.25%のブロモフェノールブルー及び0.25%のキシレンシアノールを含む80μlの 0.089Mのトリス−ボレート、 0.089Mの硼酸及び 0.002MのEDTA(TBEバッファー) の中に再懸濁する。20μlのサンプルを4個、 0.5μg/mlのエチジウムブロミドを含む TBEバッファーの中で1%のアガロースゲルを通じて50ボルトにおいて、ブロモフェノールブルーマーカーが長さ10cm厚さ 0.8cmのゲルの底に達するまで電気泳動させる。成熟 TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3それぞれをコードする DNAフラグメントを短波UV光で可視化し、レーザー刃で切り出し、そして Schleicher & Schuell Biotrap装置の中で 200mampを 1.5時間適当してゲル断片から電気溶出させる。溶出した DNAフラグメントを沈殿させ(前記参照)、そして20μlのTEに再懸濁する。
5μlのプラスミド pPLMuを NcoIと SalI、 NcoIとEcoRV、又は NcoI単独のいづれかでの消化により線状化し、そしてフラグメント DNAについて前述した通りにゲル精製する。 100ngの線状化且つ精製した pPLMuベクター DNA及び3倍モル当量の対応の精製フラグメント DNAを4℃で15時間、1単位の DNAリガーゼ (Boehringer)を含む20μlのライゲーションバッファー(70mMのトリス/HCl 、pH 7.5、10mMの MgCl2、5mMの DTT、 0.1mMのアデノシン−三リン酸)の中でインキュベートする。
10μlのライゲーション混合物をプラスミドpcl857を担持する 200μlの低温(4℃)コンピテントE.コリ LC137細胞に加える。30分後、細胞を42℃の湯浴の中での 1.5分のインキュベーションにより加熱ショックにかける。2mlのLB培地を加え、そしてこの培養物を30℃で60分振盪する。 200μlのアリコートをアンピシリン及びカナマイシンを含むLBプレート上でプレート培養する。個々のコロニーを培養し、そしてプラスミド DNAを分析する。 pPLMu中での TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3をコードする DNAフラグメントのサブクローニングはプラスミドpPLMu.hTGF−β1,pPLMu.hTGF−β2及びpPLMu.hTGF−β3のそれぞれをもたらす。上記の構築体を含むクローンをそれぞれ、E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β1、E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β2及びE.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β3と称する。
E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β1、E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β2及びE.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β3細胞を熱誘導し(実施例1A参照)、そして発現したタンパク質を SDS−PAGEにより分析する。 TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3は全て熱誘導して2時間後に約12,000Daの見かけ上の分子量で泳動する熱誘導タンパク質として認定される。
実施例1C:形質転換体の発酵
40mg/lのアンピシリン及びカナマイシンを有する 750mlのLB培地を含む2lのエーレンマイヤーフラスコ中のE.コリ LC137/ pPLMu.h.TGF−β1、E.コリ LC137/ pPLMu.h.TGF−β2及びE.コリ LC137/ pPLMu.h.TGF−β3の一夜培養物を30℃で増殖させる。 300mlの一夜培養物を2lのエーレンマイヤーフラスコ中の上記の抗生物質を含むLB培地 750mlに加え、そして65℃の湯浴の中で約 3.5分振盪することにより42℃に加熱する。次いでフラスコを42℃のシェーカーに移し、そして3時間インキュベートする。これらのフラスコを氷冷水槽の中で12℃にまで冷やし、そして GSAローター(Sorvall) の中で8,000rpmでの10分遠心分離の後に集める。
実施例2:サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の中での TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3の発現
成熟 TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3のコード配列を酵母酸性ホスファターゼの誘導性プロモーター(PH05)のコントロール下でサッカロマイセス・セレビジエの中で発現させる。
発現ベクターは2段階で構築する:
A.プラスミド pJDB207/PH05−RIT12 の構築、
B.プラスミドpJDB207R/PH05− TGF−β1,pJDB207R/PH05− TGF−β2及びpJDB207R/PH05− TGF−β3の構築。
ここでA)は酵母ベクター及びPH05転写ターミネーターを供し、そしてB)はPH05プロモーターのコントロール下にある成熟 TGF−β1, TGF−β2及び TGF−β3のそれぞれをコードするインサートをもつ発現カセットを供する。
実施例2A:プラスミド pJDB207/PH05−RIT12 の構築
プラスミドp31RIT12(ヨーロッパ特許出願EP 277.313) を制限エンドヌクレアーゼ SalIにより線状化する。エチジウムブロミドの存在下での部分HindIII 消化は、 276bpの SalI/BamHI pBR322 配列、 534bpの酵母酸性ホスファターゼPH05プロモーター、酵母インベルターゼシグナル配列 (19個のアミノ酸をコード) 及びPH05転写ターミネーターを含んで成る1kbの SalI/HindIII フラグメントをもたらす。この1kbのp31RIT12の SalI/HindIII フラグメントを、 SalI及びHindIII で切っておいた酵母−E.コリシャトルベクターpJD207(Beggs, J.D. : Molecular Genetics in yeast, Alfred Benzon Symposium 16, Copenhagen, 1981, pp.383-389) にクローニングする。この1kbのインサートを含む得られるプラスミドを pJDB207/PH05−RIT12 と命名する。
実施例2B:プラスミドpJDB207R/PH05− TGF−β3の構築
プラスミドpGKM740 (TGF−β3)(実施例1.G参照)を NcoIで切る。その接着末端をクレノウ DNAポリメラーゼによる反応で補完する。EcoRIリンカー(5′−CCGGAATTCCGG;Biolabs)を加え、そしてその混合物をライゲーションする。得られる環状プラスミドをpGKMA668(TGF−β3) と称し、そしてEcoRI及び SalIにより切断する。 0.4kbのEcoRI/ SalIフラグメントをアガロースゲルから単離し、精製し、そして滅菌水の中に25μg/mlの濃度で再懸濁する。このフラグメントは TGF−β3の成熟コード配列を含み、成熟 TGF−β3のアミノ酸 Ala1を規定するコドン GCTに対して枠内に (in frame to) ATGを有する。
PH05プロモーターを 534bpのBamHI/EcoRIフラグメント上のプラスミドp31RIT12 (上記参照) から単離する。プラスミドpJD207/PH05−RIT12 をBamHI及び XhoIで切断する。大型の 6.8kbのBamHI/ XhoIフラグメントを単離する。PH05転写ターミネーターはフラグメント上に残ったままである。BamHI/EcoRIPH05プロモーターフラグメント、 TGF−β3をコードするEcoRI/ SalIフラグメント、及びBamHI/ XhoIベクターフラグメントをライゲーションする。PH05プロモーターのコントロール下にある TGF−β3遺伝子が pJDB207の中に反時計方向でクローニングされている一の適正なクローンをpJDB207R/PH05− TGF−β3と命名する。
似たようにして、成熟 TGF−β1及び TGF−β2をS.セレビジエの中で発現させる。 TGF−β1及び TGF−β3のコード配列を含むプラスミドはそれぞれ pGKM125及び pGKM126である(実施例1.G参照)。これらのプラスミドを NcoIで消化し、EcoRIリンカーを付加し、そしてライゲーションした後、得られる環状プラスミドをEcoRI及び SalIで切断する。EcoRI/ SalIフラグメントを上記の通りにして pJDB207の中にクローニングする。得られるプラスミドをpJDB207R/PH05− TGF−β1及びpJDB207R/PH05− TGF−β3と呼ぶ。
実施例2C:S.セレビジエ株 GRF18の形質転換
サッカロマイセス・セレビジエ株GRF18( MATα, his3−11, his3−15, Leu2−3, Leu−112, can R , DSM3665 ) を次のプラスミドにより
pJDB207R/PH05− TGF−β1
pJDB207R/PH05− TGF−β2
pJDB207R/PH05− TGF−β3
Hinnen, A.ら (1978) PNAS 75, 1929 に記載の形質転換プロトコールを利用して形質転換させる。
形質転換した酵母細胞をロイシンを欠く酵母最小培地プレート上で選別する。個々の形質転換コロニーを単離し、そして以下の通りに呼ぶ:
サッカロマイセス・セレビジエ GRF18/pJDB207R/PH05− TGF−β1
サッカロマイセス・セレビジエ GRF18/pJDB207R/PH05− TGF−β2及び
サッカロマイセス・セレビジエ GRF18/pJDB207R/PH05− TGF−β3。
実施例2D:S.セレビジエ形質転換体の発酵及び細胞抽出物の調製
上記の酵母形質転換体はPH05プロモーターコントロール式発現カセットを含み、それ故 TGF−β1, TGF−β2又は TGF−β3の発現のためのプロモーターの抑制を必要とする。形質転換体をそれぞれ、アミノ酸は含まないが (NH4)2SO4の代わりに10g/lのL−アスパラギン、1g/lのL−ヒスチジン及び20g/lのグルコースを含む Difco酵母窒素ベースの処方に従って調製した酵母高Pi最小培地の中で2段予備培養(10ml及び50ml)で増殖させる。第2予備培養物の細胞を 0.9%のNaClで洗い、そして全ての細胞を、アミノ酸は含まないが0.03g/lのKH2PO4、10g/lのL−アスパラギン、1g/lのヒスチジン及び20g/lのグルコースを含む Difco酵母窒素基礎培地の処方に従って調製した 100mlの低Pi最小培地に接種するために用いる。この培養物を30℃にて180rpmで撹拌する。
10mlの培養物由来の細胞を5h,24h及び48h目において 3000rpmでの遠心により集め、そして 0.9%のNaClの中で1回洗う。細胞ペレットを溶解バッファー〔66mMのリン酸カリウムpH 7.4、4mMのZwittergent (Calbiochem)〕の中に再懸濁する。8gのガラスビーズ(直径 0.5〜0.75mm) を加え、そしてこの懸濁物をVortex Mix上で2分づつ4〜5回低温で強く振盪させる。その細胞抽出物をデカンテーションしてガラスビーズから除去する。抽出物中の細胞破片を 3000rpmで4℃にて5分間の遠心により沈降させる。上清液及びペレットを分け、そして−20℃で保存する。
実施例3
実施例3A:E.コリからの不溶性単量体型 TGF−β3の回収
E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β3を実施例1Cに記載の通りにして発酵させる。細胞破壊及び不溶性 TGF−β3の回収を4℃で実施する。約18gのウェット細胞を60mlの 0.1Mのトリス/HCl 、10mMのEDTA、1mMのPMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド)、pH 8.3(破壊バッファー)に懸濁する。細胞をフレンチプレス (SLM Instruments.Inc.) にその製造者の仕様書に従って2回通し、そしてその容量を破壊バッファーで 200mlにする。その懸濁物を15,000gで20分遠心する。得られるペレットを1MのNaClを含む 100mlの破壊バッファーに懸濁し、そして上記の通りに10分遠心する。そのペレットを1%のトリトンX−100 (Pierce)を含む 100mlの破壊バッファーに懸濁し、そして再び上記の通りに10分遠心する。洗浄したペレットを次に50mlの20mMのトリス/HCl 、1mMのEDTA、1mMのPMSF、1%の DTTに懸濁し、そしてテフロン(登録商標)製組織グラインダーでホモジナイズする。得られる懸濁物は不溶性形態の粗単量体型 TGF−β3を含む。
実施例3B:単量体型 TGF−β3の可溶化及び精製
実施例3Aに従って得られる TGF−β3懸濁物10mlを10%の酢酸でpH 2.5にまで酸性化し、そしてエッペンドルフ遠心機で室温で10分遠心する。その上清液を Sephacryl S−100 カラム (Pharmacia, 2.6×78cm) で、10%の酢酸中で 1.4ml/min の流速においてクロマトグラフィーにかける(他方、このクロマトグラフィーは Sephacryl S−100 HR (Pharmacia)で行ってよく、そしてカラムは1%の酢酸又は5mMの HClで流す)。190min〜220minで溶出する単量体型変性 TGF−β3をプールする。この材料を生物活性二量体型 TGF−β3を得るためのフォルディングのために(実施例4)、又は更なる精製及び構造分析のために(実施例3D)使用する。
実施例3C:サッカロマイセス・セレビジエからの単量体型 TGF−β3の回収
上記の通りに実施した 500ml発酵から得られる破壊細胞のペレットを20mlの4Mの尿素、 0.1Mのトリス、1%の DTT、pH 8.0に懸濁する。この混合物を室温に30分保ち、5分毎に断続的にボルテキシングにかける。不溶性材料を30,000g、30分、40℃の遠心分離により除去し、そしてその上清液を酢酸でpH 2.5に調整し、そして5%の酢酸に対して4℃で一夜かけて徹底的に透析する。その溶液を上記の通りに遠心し、そして清浄な上清液をYM10膜 (Amicon) 上での限外濾過により4mlの最終容量となるまで濃縮する。次いでこのサンプルを Sephacryl S−100 HR (Pharmacia)で5%の酢酸において、実施例3Bに記載の通りにしてクロマトグラフィーにかけ、単量体型 TGF−β3が得られる。
実施例3D:RP−HPLCによる単量体型 TGF−β3の更なる精製
Sephacryl S−100 カラムからのプール画分のアリコート(実施例3B)をVydac 214 TP 5415 HPLC逆相カラム(4.6×150mm 、The Separation Group, Hesperia, CA, USA)で精製する。このカラムを 0.1%の TFAの水溶液70%と0.08%の TFAのアセトニトリル溶液30%との混合物で平衡にし、そしてその生成物を 0.1%の TFAの水溶液55%と0.08%の TFAのアセトニトリル溶液45%との混合物で終了する1ml/min の流速で30分にわたる線状勾配により溶出させる。溶出は 216nmでの吸収でモニターし、そして個々のピークをUV吸収に従って手動で集める。変性した単量体型 TGF−β3は 21.5minで溶出する。分離のために利用する個々の逆相カラムに依存して、同一の TGF−β3の調製品がそれぞれ 16min及び 18min前後で溶出する。
TGF−β3画分を上記と同じカラム及び溶媒系を利用するRP−HPLCにより分析する。 TGF−β3を 0.1%の TFAの水溶液 100%で開始し、この TFAの水溶液30%と0.08%の TFAのアセトニトリル溶液70%との混合物で終了する 42minにわたる線状勾配により溶出させる。 TGF−β3は 30.4min後に単一ピークとして溶出する。使用する個々のカラムに依存して、 29min及び 29.9minの滞留時間が得られる。
実施例3E: SDS−PAGEによる単量体型 TGF−β3の分析
Sephacryl S−100 カラム(実施例3.B)又は逆相カラム(実施例3.D)の個々のアリコートを真空乾燥し、そしてクマジーブルーR−250 で染色した15%のポリアクリルアミドスラブゲルでの SDS−PAGEにより分析する。見かけ上分子量約12,000Daの一本のバンドが得られ、これは還元型の天然のブタ TGF−β3と区別できなかった。
実施例3F:単量体型 TGF−β3のN末端アミノ酸配列の決定
実施例3B由来の TGF−β3を真空エバポレーションにかけ、25μlの 0.1Mの酢酸に溶かし、そして気相タンパク質シーケンサーモデル470A (Applied Biosystems) でのアミノ酸配列決定にかける。
N末端アミノ酸配列は配列表の中のSEQ ID No.6に示すものと同一である。
実施例4:ジメチルスルホキシド(DMSO)含有バッファーの中での TGF−β3のin vitroフォルディング
上記の通りにして得た TGF−β3を 0.1Mのトリス、1MのNaCl、 0.5Mのアルギニン、5mMの還元型グルタチオン、及び40%(v/v)のDMSOのそれぞれより成るバッファーの中で4℃にてフォルディングする。バッファーのpHはNaOHでpH 9.5に調整する。 TGF−β3の最終濃度は 0.1mg/mlとする。4℃で7日後、その溶液を濃酢酸でpH 3.5に酸性化し、YM10膜 (Amicon) の付いたAmicon撹拌式セルの中での限外濾過により約10倍濃縮する。その濃縮溶液を 0.1Mの酢酸によりもとの容量に希釈し、そして再度濃縮する。この手順を2回繰り返す。次いでこの溶液を以降に記載の通りにしてイオン交換クロマトグラフィーにかける。
実施例5:ジメチルホルムアミド(DMF)含有バッファーの中での TGF−β3のin vitroフォルディング
上記の通りにして得られた TGF−β3を 0.1Mのトリス、1MのNaCl、 0.5Mのアルギニン、5mMの還元型グルタチオン及び30%(v/v)の DMFそれぞれより成るバッファーの中で4℃にてフォルディングする。バッファーのpHはpH 8.5に調整する。 TGF−β3の最終濃度は 0.1mg/mlとする。4℃で7日後、その溶液を濃酢酸でpH 3.5に酸性化し、YM10膜 (Amicon) の付いたAmicon撹拌式セルの中での限外濾過により約10倍濃縮する。その濃縮溶液を 0.1Mの酢酸でもとの容量に希釈し、そして再濃縮する。この手順を2回繰り返す。次いでこの溶液を以降に記載の通りにしてイオン交換クロマトグラフィーにかける。
実施例6:カチオン交換クロマトグラフィーによる二量体型生物活性 TGF−β3の単離
約10〜50mgの TGF−β3を含む実施例4又は5それぞれにおいて得られる溶液を HiLoad 26/10 S−Sepharose 高性能カラム(Pharmacia) に載せる。このカラムをまず20mMの酢酸ナトリウム、30%のイソプロピルアルコール、pH 4.0 (バッファーA)により5分洗い、次いで 0.2MのNaClを含むバッファーAで始まり、そして 0.5MのNaClを含むバッファーAで終わる45分にわたる線状勾配により溶出させる。溶出は 280nmでモニターし、そして手動式に分画する。画分を非還元 SDS−PAGEにより二量体型 TGF−β3について、及びin vitroバイオアッセイにより生物活性において検定する。
実施例7:二量体型 TGF−β3の更なる精製及び特性決定
実施例7A:HPLCによる精製
二量体型生物活性 TGF−β3を含む画分をプールし、 0.1Mの酢酸に対して透析するか又は同容量の 0.1%の TFA水溶液で希釈し、そしてVydac 214 TP 510カラム(1cm×25cm、The Separations Group, USA) でのRP−HPLCにかける。そのカラムを75%の溶媒A〔 0.1%の TFA水溶液〕及び25%の溶媒B〔0.08%の TFAのアセトニトリル溶液〕の混合物により 4.5ml/min の流速で平衡にする。サンプルの添加後、そのカラムを 235nmでモニターした吸収が基底値に到達するまで平衡条件下で洗浄する。次いでカラムをこの平衡条件で始まり、そして45%の溶媒Aと55%の溶媒Bの混合物で終わる線状勾配により30分以内で溶出させる。溶出液を手動式に分画し、そして非還元 SDS−PAGE及びin vitroバイオアッセイにより分析する。
実施例7B: SDS−PAGEによる分析
実施例7Aの精製 TGF−β3のアリコートを真空乾燥し、そしてクマジーブルーR−250 で染色する15%のポリアクリルアミドスラブゲルでの SDS−PAGE (Laemmli, U.K. (1970) Nature 227, 680)により分析する。還元させていないサンプルは約 25kDaの見かけ上の分子量の一本のバンドを示し、一方還元サンプルは約 12.5kDaにおいてバンドを示す。
実施例7C:分子量決定
実施例7A由来の精製 TGF−β3を電子スプレー式イオン化質量分析器(ESI−MS) により分析する。全質量は理論的に期待される値に非常に近いことがわかる。
実施例7D:アミノ酸分析
アミノ酸分析はKnecht, R. and Chang, J.-X., Analytical Chemistry 58 : 2375-2379 (1986) に記載の通りに実施する。その結果は理論通りであった。
実施例7E:N−末端アミノ酸配列の決定
10〜20μgの実施例7Aの TGF−β3を真空エバポレーションし、25μlの10mMの酢酸に溶かし、そして気相シーケンサーモデル477A (Applied Biosystems) でのアミノ酸配列決定にかける。最初の10個の残基のアミノ酸配列は理論通りであった。
実施例7F: Asp−Nプロテアーゼによるタンパク質分解断片化
92μg (6.7mmole) の TGF−β3を還元し、4−ビニルピリジルエチル化し、真空遠心分離で乾かし、そして 200μlの5mMの HClに再溶解する。10mMの Zwittergent 3−12界面活性剤 (Calbiochem Corporation, La Jolla, CA) を含む 200μlの 0.2Mのトリス−酢酸バッファーpH 7.8を加え、そしてタンパク質溶液と混合する。切断は2μg(50μlの水に溶解)のエンドプロテイナーゼ Asp−N (シュードモナス・フラギ(Pseudomonas fragi) 突然変異体、 Sequence Grade, Boehringer Mannheim Biochemica, FRG由来) により37℃で実施する。13時間後、50μlの10%(v/v)の TFAを加え、そしてその混合物を Vydac 218 TP 5415カラム(4.6mm×150mm、The Separations Group)での、5〜45%(v/v)のアセトニトリルの 0.1%の TFA溶液/水溶液の 0.1ml/min の流速での 40minでの線状勾配によるRP−HPLCにより分離させる。単離したペプチドを電子スプレーイオン化質量分析器 ESI−MSにより分析する。決定される分子量は予測した Asp−Nフラグメントに関する計算値と良好に一致する。
同定されたフラグメントは残基1及び2を除き、完全アミノ酸配列をカバーする。これらのアミノ酸はタンパク質全体のN末端配列決定により、及びV8フラグメントの分析により同定する。
実施例7G:V8プロテアーゼによるタンパク質分解断片化
実施例11に類似して、 Asp−Nプロテアーゼにより、4−ビニルピリジル化 TGF−β3をプロテアーゼV8により消化し、そしてそのフラグメントをRP−HPLCにより分離し、そして ESI−MSにより分析する。決定される分子量は理論値により一致し、 TGF−β3の同定を実証する。同定されたフラグメントは 112個のアミノ酸残基の全配列をカバーする。
実施例8:フォルディングした TGF−βについてのin vitro活性試験:ミンク肺上皮細胞(Mv−1−Lu)酸性ホスファターゼアッセイ
TGF−β又はハイブリドタンパク質をin vitroで連続ミンク肺上皮細胞系Mv−1−Lu(ATCC/CCL64)の増殖を阻害する化合物の効能を測定する細胞バイオアッセイでスクリーニングする。Mv−1−Lu細胞系は TGF−βのバイオアッセイにおける高感度なリポーターであると実証されており、シグモイド型の濃度応答を示し、約10〜50pg/mlのリポートEC50を有す (Tuckerら、Science 1984 ; 226 : 705-707;Absherら、J.Immunol Methods 1991 ; 138 : 301-303;Danielpourら、J.Cell Physiol. 1989 ; 138 : 79-86) 。増殖が TGF−βにより強く阻害されるMv−1−Lu細胞はこのサイトカインの分析バイオアッセイの開発に最も適する細胞系であると現在考えられている (Kelleyら、Exp Lung Res 1992 ; 18 : 877-887;Meager,J Immunol Methods 1991 ; 141 : 1-14)。アッセイは96穴マイクロタイタープレートの中で、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, Rockville MD, USA由来の46継代目においてオリジナル的に得られる細胞を利用して実施する。細胞を TGF−β標準品又はサンプルの希釈系列を含む増殖培地(5%v/vの胎児牛血清を有する最小必須培地)の中に低密度(ウェル当り5000細胞) で播種する。次にアッセイを37℃にて多湿5% CO2インキュベーターの中で72時間インキュベートする。細胞増殖の阻害は高感度酵素的細胞染色法(これは各ウェルの中で産生される酸性ホスファターゼの量の比色換算値を供する)により決定され、染色の強さは各ウェルの中に存在する細胞の数に対応する。各ウェルの吸収O.D.を 405nmで決定し、そしてアッセイデーターをプロットし、そして適当なPCソフトウェアプログラムにより分析する。このアッセイにおいて、1単位(U)の活性はMv−1−Lu細胞増殖の最大阻害の半分に必要な TGF−βの量として記述する。
実施例9:フォルディングした TGF−β3の in vivo活性試験
実施例9A:老齢マウスにおける部分的に厚みを帯びた創傷の治癒
創傷治癒過程は年齢を追うごとに悪くなることが知られ (Grove G.L. (1982) Arch.Dermatol.Res. 272:381)、従って老人医療分野における主たる問題を占める。従って、部分的に厚みを帯びた創傷 (II度火傷により生成)の治癒に及ぼすフォルディングした活性二量体型 TGF−β3の in vivo生物効果を部分欠陥又は損われた創傷修復状況で、即ち老齢動物で、 Schultz, G.S.ら (1987) Science 235 :350 に記載のものと類似する以下のプロトコールを利用して調べる。
1個の中皮熱傷を麻酔したC57/BL6マウス(生後 450日以上)(その背中は予め毛剃りしてあり、そして市販クリーム型除毛剤で脱毛しておいた) の背胸部上に、80℃の湯浴に平衡化しておいたしんちゅうテンプレート(1×1cm、8g)の10秒間の適用により施す。得られる水疱を外科的に除去し、そして火傷を5日間にわたり毎日様々な量 (500ng, 100ng又は10ng)のフォルディングした活性二量体型 TGF−β3を含む25μlの無菌ビヒクルバッファー溶液(10mMのヒスチジン、 140mMのNaCl、pH 7.4の溶液中の 0.8%w/vのヒドロキシプロピルセルロースより成る)又はバッファーのみの適用により処置するか、又は未処置のままにしておく。局部塗布した材料は無菌、無内毒素、且つ無パイロジェンであり、そしてマウスは全て実験中個別のカゴに入れておいた。各実験グループは5匹の動物より成る。
TGF−β3による処置の5日後、マウスを麻酔し、水疱(あるなら)を火傷から外科的に除去し、そして火傷を写真撮影する。上皮を再生した火傷の領域の外形を均一な厚みの透明オーバーヘッドプロジェクターフィルム上において抽き、そして治癒した各オリジナルの火傷領域の率を面積測定法により算定する。結果を、実験の際に未処置のままにしておいた同一の中皮火傷を負った若齢(生後56〜84日)のC57/BL6マウスにおける上皮再生過程とも比較した。
面積測定分析の結果は、適当なビヒクルバッファー中のフォルディングした活性二量体型 TGF−β3の5日間にわたる毎日の局部塗布が、ビヒクルバッファーのみ又は未処置の創傷と比較したときに、用量依存式に老齢マウスでの部分的に厚みを帯びた創傷の上皮再生を刺激及び加速することを示した。若齢マウスは局部塗布する TGF−β3を全く抜きにして、その創傷を有効に再上皮形成するのに十分に見かけ上有能である。長期分析は、強められた上皮形成過程を、 TGF−β3処置創傷における6日目での再生表皮の角質増殖症を伴って示す。
実施例9B:成ラットにおける全体に厚みを帯びた創傷の治癒
フォルディングした活性二量体型 TGF−β3の生物効果も創傷修復の第2 in vivoモデル、即ち、Mustoe, T.A.ら (1987) Science 237 :1333に記載のものと類似の以下のプロトコールを利用する成ラットにおける全体に厚みを帯びた創傷(外科的切開により作成)の治癒に基づいて調べる。
1個の全体に厚みを帯びた長さ5cmの直線切開を 1.5cm×2で、背中を予め毛剃りしておき、且つ市販のクリームタイプ除毛剤で脱毛しておいたペントバルビトン麻酔した雄のWistarラット(300×350 g) の背中線の両側に施す。この実験グループにおいて、左側の切開(背側の最上部から見て)の縁に、様々な量(2μg,1μg, 0.1μg又は0.01μg)のフォルディングした活性二量体型 TGF−β3を含む無菌ビヒクルバッファー(10mMのヒスチジン、 140mMのNaCl、pH 7.4の溶液中の 0.8%w/vのヒドロキシプロピルセルロースより成る)の一回の局部塗布(100μl)を施す。逆側の右側切開の縁には前記ビヒクルバッファー中の対応の等量の偽薬コントロール(牛血清アルブミン)を施し、そしてコントロール動物における切開の縁においては、左側の切開にはビヒクルバッファーのみを施し、そして右側切開においては外科切開後処置を施しておかない。局部塗布する材料は全て無菌、無内毒素及び無パイロジェンである。各創傷の縁を5−0 Ethilonの5針の均等に施した介在式水性マットレス縫合糸で接合させる。動物は全て個別にカゴに入れ、そして創傷は処置後21日以内の様々な期間にわたり治癒のために放置する。殺した後、背皮全体を各動物から剥ぎ、そして全ての皮下脂肪を外科用メスを用いて各皮層の下側から慎重に除去する。2本の平行な外科メスより成るテンプレート(刃間の距離は8mm)を引張強さ測定のための皮膚片(各切開上の縫合の間)を切り出すために用いる。サンプルを長期分析のために各切開の一端から採取する。各切り出した皮膚サンプルにより寛容される最大負荷を万能引張強さ装置モデル144501 (Zwick, Ulm, FRG)で測定する。
測定は、油圧式クランプで固定しておいた、且つ10mm/分の速度で破断点に至るまで延伸した30mm×8mmの片で行い、最大負荷をチャートレコーダーで記録する。測定は各創傷由来の三重測定サンプルで行い、そして実験グループは4匹の動物より成る。感染症又は過剰な出血の徴候を示す創傷(全創傷の3%未満)については破断強さの測定を行わない。
引張強さ測定の結果は、適当なビヒクルバッファー中のフォルディングした活性二量体型 TGF−β3の一回の局部塗布が、コントロールグループと比較したときに、2倍に至るまで破断強さを強め、そして成ラットの全体に厚みを帯びた切開創傷を21日間にわたり用量依存式で治癒を加速せしめることを実証する。長期分析は、コントロール創傷と比べたとき、21日間にわたり TGF−β3処置した創傷における単核細胞、線維芽細胞の流入、及びコラーゲン産生の著しい増大を示す。一過性の角質増殖症も処置後14日まで TGF−β3処置創傷においても明示される。
実施例10:可溶化単量体型ハイブリド TGF−βタンパク質の調製
5mlのプラスミド pPLMuを NcoI及び SalIでの消化により線状にし、そしてフラグメント DNAに関して上記した通りにゲル精製する。 100ngの線状化、且つ精製した pPLMuベクター DNA並びに配列表に示すハイブリド TGF−β1−3, TGF−β2−3及び TGF−β3−2のそれぞれをコードする3倍モル当量の対応の精製フラグメント DNAを4℃で15時間、1単位の DNAリガーゼ (Boehringer)を含む20mlのライゲーションバッファー(70mMのトリス−HCl 、pH 7.5、10mMの MgCl2、5mMの DTT、 0.1mMのアデノシン三リン酸)の中でインキュベートする。10mlのライゲーション混合物をプラスミドpcl857を担持する 200mlの低温(4℃)コンピテントE.コリ LC137細胞)に加える。30分後、細胞を42℃の湯浴の中での 1.5分のインキュベーションにより加熱ショックせしめる。2mlのLB培地を加え、そしてその培養物を30℃で 60min振盪する。 200mlのアリコートをアンピシリン及びカナマイシンを含むLBプレート上にプレートし、そして30℃で22hインキュベートする。個々のコロニーを培養し、そしてプラスミド DNAを分析する。 pPLMuの中での TGF−β1−3, TGF−β2−3及び TGF−β3−2をコードする DNAフラグメントのサブクローニングはプラスミド pPLMu.TGF−β1 (44/45)β3, pPLMu.TGF−β2 (44/45)β3及び pPLMu.TGF−β3 (44/45)β2のそれぞれをもたらす。上記の構築体を含むクローンをE.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β1 (44/45)β3、E.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β2 (44/45)β3及びE.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β3 (44/45)β3とそれぞれ呼ぶ。
E.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β1 (44/45)β3、E.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β2 (44/45)β3及びE.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β3 (44/45)β3を以下の通り(実施例3Aも参照のこと)に熱誘導し、そして発現したタンパク質を SDS−PAGEにより分析する。 TGF−β1−3, TGF−β2−3及び TGF−β3−2は全て熱誘導して2h後に熱誘導化タンパク質として出現し、約12,000Daの見かけ上の分子量をもって泳動した。
E.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β1 (44/45)β3、E.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β2 (44/45)β3及びE.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β3 (44/45)β3の、40mg/lのアンピシリン及びカナマイシンを有する 750mlのLB培地を含む2lのエーレンマイヤーフラスコ中の一夜培養物を30℃で増殖させる。 300mlの一夜培養物を2lのエーレンマイヤーフラスコ中の上記の抗生物質を含む 750mlのLB培地に加え、そして65℃の湯浴の中で約 3.5分振盪することにより42℃に加熱する。次いでこのフラスコを42℃のシェーカーに移し、そして3hインキュベートする。このフラスコを氷冷水槽の中で12℃に冷却し、そして細胞を GSAローター(Sorvall) の中での 8000rpmでの10分の遠心分離により集める。
単量体型可溶化 TGF−β1−3ハイブリドの製造のための下記の手順も TGF−β2−3及び TGF−β3−2の可溶化に適用する。
E.コリ LC137/ pPLMu.TGF−β1 (44/45)β3細胞を上記の通りに発酵させ、そして封入体を下記の通りにして調製する。細胞破壊及び封入体の回収は4℃で行う。約18gのウェット細胞を60mlの 0.1Mのトリス/HCl 、10mMのEDTA、1mMのPMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド)、pH 8.3 (破壊バッファー)の中に懸濁する。この細胞をフレンチプレス(SLM Instruments, Inc.) にその製造者の仕様書に従って2回通し、そしてその容量を破壊バッファーで 200mlにする。その懸濁物を15,000gで20分遠心する。得られるペレットを1MのNaClを含む 100mlの破壊バッファーに懸濁し、そして上記の通りに10分遠心する。そのペレットを1%のトリトンX−100 (Pierce)を含む 100mlの破壊バッファーに懸濁し、そして再び上記の通りに10分遠心する。 0.3gの洗浄ペレットを10mlの20mMのトリス/HCl 、1mMのEDTA、1mMのPMSF、 0.1%の DTT、pH 8.0に懸濁し、そして室温で1h磁気撹拌する。そのサンプルを濃酢酸でpH 2.5にし、そしてテフロン(登録商標)製組織ホモジナイザーでホモジナイズし、そして Centricon H−401 遠心機(Kontron Instruments)の中で固定角ローターA.8.24を用い、 60min、15℃、 12,000rpmで遠心する。透明な上清液の酢酸をYM05フィルターの付いたAmicon8010撹拌式セルの中で10mMの HClにより、繰り返し濃縮及び10mMの HClによるその溶液の希釈により交換する。
実施例11:種々の TGF−β及び TGF−β−ハイブリドによる一連のリフォルディング実験
本発明の多様性及び広範囲の適用性は以下の一連の実施例にまとめた結果により例示される。in vitroタンパク質リフォルディング実験に利用した特定の条件及び個々のタンパク質を列挙する。その他の実験条件は実施例4に記載の通りである。生物活性はin vitroタンパク質フォルディングを開始してから3及び7日後に決定した。
Figure 0004354980
RSH :表に記載のスルフヒドリル試薬
GSH :還元型グルタチオン
DMSO :ジメチルスルホキシド
DMF :ジメチルホルムアミド
β3 : TGF−β3
β2 : TGF−β2
β1-3 : TGF−β1−3ハイブリド
β3-2 : TGF−β3−2ハイブリド
β2-3 : TGF−β2−3ハイブリド
活性 : +:実施例8記載のin vitroバイオアッセイにおける中度の活性
++:実施例8記載のin vitroバイオアッセイにおける高度の活性
微生物の寄託
以下の微生物をDeutsche Sammlung von Mikroorganismen (DSM), Mascheroder Weg 1b, D-3300 Braunschweig (FRG)に寄託した:
微 生 物 寄託日 受託番号
E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β1 1998年11月28日 DSM5656
E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β2 1998年11月28日 DSM5657
E.コリ LC137/pPLMu.hTGF−β3 1998年11月28日 DSM5658
サッカロマイセス・セレビジエGRF18 1986年3月4日 DSM3665

Claims (3)

  1. 二量体型生物活性β3型トランスフォーミング増殖因子(TGF−β3)、またはその塩の製造のための方法であって、前記TGF−β3の変性単量体をフォルディングバッファーで処理することを含んで成り、ここで当該フォルディングバッファーは還元型のグルタチオンと、DMSO(ジメチルスルホキシド)とから成り、かくて単量体のTGF−β3を生物学的活性の結びつくその三次元コンホメーションへとフォルディングさせ、ここで当該DMSOは30〜50容量%で使用され、かつ当該バッファーのpHは9〜9.5である、方法。
  2. 前記バッファーが0℃〜40℃の温度を有する、請求項1記載の方法。
  3. 前記還元型のグルタチオンを1〜100mMの濃度において使用する、請求項1又は2に記載の方法。
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