JP4352514B2 - エチレンの三量化触媒及びこの触媒を用いたエチレンの三量化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレンの三量化触媒及びこの触媒を用いたエチレンの三量化方法に関する。さらに詳しくは、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の原料コモノマーとして有用な1−ヘキセンをエチレンから効率よく、かつ高選択的に製造するエチレンの三量化触媒、及びその触媒を用いたエチレンの三量化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレンを三量化して1−ヘキセンを得る方法において、クロム化合物を触媒として用いることは公知である。例えば、特開昭62−265237号公報にはクロム化合物、ポリヒドロカルビルアルミニウムオキシド及びドナー配位子からなる触媒系が開示されている。特開平6−239920号公報には、クロム化合物、ピロール含有化合物、金属アルキル化合物及びハライドからなる触媒系が、また特開平8−59732号公報には、クロム化合物、金属アルキル化合物及び酸アミドまたはイミド化合物からなる触媒系が開示されている。
【0003】
また、特開平6−298673号公報には、クロミウム塩の多座配位子であるホスフィン、アルシン及び/またはスチビンとの配位錯体とアルミノキサンからなる触媒が開示されている。さらに、特開平10−7712号公報には、特定の窒素配位子が配位したクロムの塩素錯体やアルキル錯体とアルミニウム化合物からなる触媒が、特開平10−231317号公報には、環状ポリアミンまたはヒドロトリス(ピラゾリル)ボレートが配位したクロム錯体とアルキルアルミニウム化合物からなる触媒が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開昭62−265237号公報に記載の方法では、1−ヘキセンと同時にポリエチレンが多く副生する欠点がある。また、触媒の構成成分であるポリヒドロカルビルアルミニウムオキシド(アルミノキサンとも称する)は、アルキルアルミニウムと水を反応させて得られる重合体であるため、一定の品質を有するポリヒドロカルビルアルミニウムオキシドの合成が難しい。それ故、エチレンの三量化反応においても再現性のよい反応を行うことができないという問題があった。
【0005】
特開平6−239920号公報に記載の方法は、ポリエチレンの副生が少なく、この点ではかなり改善している。しかし、触媒の構成成分であるピロール含有化合物は、空気に対して極めて不安定な物質であるため着色して劣化しやすい。従って、取り扱いが難しいばかりか、反応終了後には着色成分を除去するための処理または新たな装置を必要とする等、工業的な触媒としては十分なものではなかった。また、特開平8−59732号公報に記載の方法では、触媒の構成成分である酸アミドまたはイミド化合物の中で活性を得るには、ある特定のイミド化合物、即ちマレイミドを用いる必要がある。マレイミドは溶解性が低いため触媒調製が煩雑であり、しかも、マレイミドは入手が難しいばかりか高価であり、経済性の面においても問題がある。
【0006】
一方、特開平6−298673号公報に記載の方法では、再現性よく合成することのできないアルミノキサンを用いなければいけないという問題があった。また、特開平10−7712号公報に記載の方法は、触媒活性が低いという問題があった。さらに、特開平10−231317号公報に記載の方法は、1−ヘキセンよりもポリエチレンの生成が多いばかりか、オリゴマー中の1−ヘキセン選択性も低いという欠点があった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的はLLDPEの原料コモノマーとして有用な1−ヘキセンをエチレンから効率よく、かつ高選択的に製造し、しかも取り扱いの容易なエチレンの三量化触媒、及びこの触媒を用いたエチレンの三量化方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の多座配位子が配位したクロム錯体とアルキル金属化合物からなるエチレンの三量化触媒は、安定で取り扱いが容易であり、しかもこれを用いると高い活性でエチレンの三量化反応が進行し、高選択的に1−ヘキセンが生成することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位したクロム錯体とアルキル金属化合物からなるエチレンの三量化触媒及びそれを用いたエチレンの三量化方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0011】
本発明においては、エチレンの三量化触媒を構成する一成分として、下記一般式(1)
ACrBn (1)
(式中、nは1〜3の整数である。Aは三脚型構造を有する中性の多座配位子であり、Bは水素原子、ハロゲン原子、直鎖または分岐状のアルキル基からなる群より選ばれる1種以上を表す。)
で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位したクロム錯体が用いられる。
【0012】
ここで、クロム錯体に配位させる三脚型構造を有する中性の多座配位子として用いられるものは特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、j,k,mはそれぞれ独立して0〜6の整数である。D1はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、L1はそれぞれ独立して、周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基を表す。また、G1は炭素またはケイ素、R1は水素基、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアリール基を表す。)
または下記一般式(3)
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、a,b,cはそれぞれ独立して0〜6の整数であり、uは0または1の整数である。D2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、L2はそれぞれ独立して、周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基を表す。また、G2は窒素またはリン、R2は酸素またはイオウを表す。)
で示される三座配位子が好適なものとして挙げられる。
【0017】
上記一般式(2)及び(3)において、D1及びD2としては特に限定されるものではないが、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基等が挙げられる。また、その置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基類、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基類等が挙げられる。
【0018】
一般式(2)及び(3)において、L1及びL2で示される周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基は特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基類、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基類、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のアルキルチオ基類、フェニルチオ基、トリルチオ基等のアリールチオ基類、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基等のジアルキルアミノ基類、ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基類、メチルフェニル基等のアルキルアリールアミノ基類、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基等のジアルキルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、ジトリルホスフィノ基等のジアリールホスフィノ基、メチルフェニルホスフィノ基等のアルキルアリールホスフィノ基類が挙げられる。
【0019】
また、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、オキサゾリル基、チアゾール基等の周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する複素環基類が挙げられる。これらの複素環基類の環上の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、フェニル基等が挙げられる。
【0020】
一般式(2)におけるR1は特に限定されるものではないが、例えば、水素基類、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、シアノエチル基、アリル基、トリフルオロプロピル基等の炭素数1〜10のアルキル基類またはフェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基等の炭素数1〜10のアリール基類が挙げられる。
【0021】
上記一般式(2)及び(3)で示される三脚型構造を有する中性の三座配位子は特に限定されるものではないが、例えば、周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基を持つ多座配位子としては、トリス(メトキシメチル)メタン、1,1,1−トリス(メトキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(メトキシメチル)プロパン、1,1,1−トリス(メトキシメチル)ブタン、1,1,1−トリス(エトキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(プロポキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(ブトキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(フェノキシメチル)エタン等の含酸素三座配位子類、1,1,1−トリス(メチルチオメチル)エタン、1,1,1−トリス(ブチルチオメチル)エタン、1,1,1−トリス(フェニルチオメチル)エタン等の含イオウ三座配位子類、1,1,1−トリス(ジメチルアミノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジフェニルアミノメチル)エタン等の含窒素三座配位子類、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジメチルホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジエチルホスフィノメチル)エタン等の含リン三座配位子類が挙げられる。
【0022】
さらに、周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する複素環基を持つ多座配位子としては、トリフリルメタン、トリス(5−メチル−2−フリル)メタン、トリス(5−エチル−2−フリル)メタン、トリス(5−ブチル−2−フリル)メタン、1,1,1−トリフリルエタン、トリフリルアミン、トリフリルホスフィン、トリフリルホスフィンオキシド等の含酸素三座配位子類、トリス(チエニル)メタン等の含イオウ三座配位子類、トリス(ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジイソプロピル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジフェニル−1−ピラゾリル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)プロパン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)ブタン、トリス(2−ピリジル)メタン、トリス(6−メチル−2−ピリジル)メタン、トリス(2−ピリジル)アミン、トリス(2−ピリジル)ホスフィン、トリス(2−ピリジル)ホスフィンオキシド、トリス(2−ピリジル)ヒドロキシメタン、トリス(1−イミダゾリル)メタン等の含窒素三座配位子類が挙げられる。
【0023】
本発明において、上記一般式(1)のBで用いられるハロゲン原子は特に限定されるものではないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子等が挙げられる。また、直鎖または分岐状のアルキル基としては特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基またはフェニル基等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(1)で示されるクロム錯体の具体的な例としては特に限定されるものではないが、例えば、トリス(メトキシメチル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(メトキシメチル)メタンクロム(ベンジル)ジクロライド(III)、1,1,1−トリス(メトキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(エトキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ブトキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(フェノキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、トリフリルメタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(メチルチオメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジメチルアミノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、トリス(ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロム(ヒドリド)ジクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロム(ベンジル)ジクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロム(エチル)ジクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリベンジル(III)、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)エタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジイソプロピル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジフェニル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(2−ピリジル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(6−メチル−2−ピリジル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(2−ピリジル)アミンクロムトリクロライド(III)、トリス(1−イミダゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジメチルホスフィノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジエチルホスフィノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)等が挙げられる。
【0025】
これらのうち触媒活性の面から、一般式(1)で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子としては、複素環基を持つ含窒素三座配位子類が好ましく用いられ、より好ましくはトリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンが用いられる。また、Bとしてはハロゲン原子が好ましく用いられる。さらに好ましい三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位したクロム錯体としては、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)等が用いられる。
【0026】
本発明において、上記の三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位したクロム錯体の合成法は特に限定されるものではないが、例えば、多座配位子とクロム化合物とから公知の錯体形成法[例えば、Inorg.Chem.,25,1080(1986)等]により容易に合成することができる。この場合、使用できるクロム化合物としては特に限定されるものではないが、例えば、塩化クロム(III)、塩化クロム(II)、臭化クロム(III)、臭化クロム(II)、ヨウ化クロム(III)、ヨウ化クロム(II)、フッ化クロム(III)、フッ化クロム(II)、トリス(テトラヒドロフラン)クロムトリクロライド(III)、トリス(1,4−ジオキサン)クロムトリクロライド(III)、トリス(ジエチルエーテル)クロムトリクロライド(III)、トリス(ピリジン)クロムトリクロライド(III)、トリス(アセトニトリル)クロムトリクロライド(III)等が挙げられる。
【0027】
前記の多座配位子とクロム化合物を反応させ、クロム錯体を形成させる際のクロム金属の濃度は特に制限されない。また、ここで用いられる溶媒としては特に限定されるものではないが、有機溶媒が好ましく用いられる。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。また、上記溶媒はそれぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0028】
また、錯体形成反応は、−80℃から使用する反応溶媒の沸点までの任意の温度で行われ、好ましくは20〜200℃である。反応溶媒の沸点以上の温度で錯形成反応を行う場合には、加圧下で行うこともできる。反応時間は特に制限されず、通常1分〜48時間、好ましくは5分〜24時間である。なお、反応時のすべての操作は、空気と水分を避けて行なうことが望ましい。また、原料及び溶媒は十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0029】
さらに別途合成法として、上記の方法により合成した三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位したクロムハロゲン錯体を原料に、アルキル金属化合物や金属ヒドリド化合物を溶媒中で反応させて、本発明に用いる三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位したクロム錯体を合成してもよい。
【0030】
多座配位子が配位したクロム錯体は、通常固体として沈殿するので、ろ別により反応溶媒から分離できる。さらに、必要に応じて、上記溶媒を用いて洗浄を行い、次いで乾燥してエチレンの三量化触媒の構成成分の一つであるクロム錯体が合成される。なお、沈殿しない場合は、溶媒留去、貧溶媒の添加あるいは冷却処理等により沈殿させることができる。
【0031】
本発明においては、三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位したクロム錯体のうち、その多座配位子がfacialに配位したクロム錯体を用いることが好ましい。多座配位子がfacialに配位したクロム錯体を用いることにより、ポリエチレンの副生が抑えられる等の効果が認められる。ここで、多座配位子がfacialに配位した錯体とは、多座配位子により3つの配位座が占有された6配位八面体型錯体の異性体の一つである[化学選書 有機金属化学−基礎と応用−、143頁(裳華房)]。即ち、多座配位子により3つの配位座が占有された6配位八面体型錯体において、多座配位子が、3つの配位座が互いにシス位になるような配置で配位していることを意味する。
【0032】
本発明において使用されるアルキル金属化合物は特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(4)
RpMXq (4)
(式中、pは0<p≦3であり、qは0≦q<3であって、しかもp+qは1〜3である。Mはリチウム、マグネシウム、亜鉛、ボロンまたはアルミニウムを表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基からなる群より選ばれる1種以上を表し、Xは水素原子、アルコキシド基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上を表す。)
で示される化合物が好適なものとして挙げられる。
【0033】
上記一般式(4)において、炭素数1〜10のアルキル基は特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基またはオクチル基等が挙げられる。アルコキシド基としては特に限定されるものではないが、例えば、メトキシド基、エトキシド基、ブトキシド基またはフェノキシド基等が挙げられる。アリール基としては特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては特に限定されるものではないが、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられる。
【0034】
なお、上記一般式(4)において、MがAlで、pとqがそれぞれ1.5のとき、AlR1.5X1.5となる。このような化合物は、理論的には存在しないが、通常、慣用的にAl2R3X3のセスキ体として表現されており、これらの化合物も本発明に含まれる。
【0035】
上記一般式(4)で示されるアルキル金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ジエチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、エチルクロロマグネシウム、エチルブロモマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジシクロヘキシルフェニルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジシクロヘキシルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド等が挙げられる。
【0036】
これらのうち入手の容易さ及び活性の面から、アルキルアルミニウム化合物が好ましく用いられ、さらに好ましくはトリエチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムが用いられる。これらのアルキル金属化合物は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0037】
アルキル金属化合物の使用量は、クロム錯体1モルに対して0.1〜10000当量であり、好ましくは3〜3000当量、より好ましくは5〜2000当量である。
【0038】
本発明の三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位したクロム錯体とアルキル金属化合物からなるエチレンの三量化触媒は、前記のクロム錯体とアルキル金属化合物を原料に、溶媒中で接触させることにより調製できる。接触方法は特に制限されない。
【0039】
この触媒を調製する際のクロム錯体の濃度は特に制限されないが、通常、溶媒1lあたり0.001マイクロモル〜100ミリモル、好ましくは0.01マイクロモル〜10ミリモルの濃度で使用される。これより小さい触媒濃度では十分な活性が得られず、逆にこれより大きい触媒濃度では、触媒活性が増加せず経済的でない。また、ここで用いられる溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類及び塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等の塩素化炭化水素類が挙げられる。また反応生成物、即ち、1−ヘキセンを溶媒として用いることもできる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。ここで、エチレンの三量化反応時のクロム錯体濃度をコントロールする目的で、必要に応じて濃縮や希釈しても差し支えない。
【0040】
また、前記のクロム錯体とアルキル金属化合物を接触させる際の温度は−100〜250℃、好ましくは0〜200℃である。接触時間は特に制限されず、1分〜24時間、好ましくは2分〜2時間である。なお、接触時のすべての操作は、空気と水分を避けて行なうことが望ましい。また、原料及び溶媒は十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0041】
本発明のエチレンの三量化反応は、前記のクロム錯体とアルキル金属化合物からなる触媒とエチレンを接触させることにより行うことができる。接触方法は特に制限されないが、例えば、三量化反応の原料であるエチレンの存在下に、クロム錯体及びアルキル金属化合物を接触させて、接触と同時に三量化反応を開始する方法、またはクロム錯体とアルキル金属化合物を前もって接触させた後、エチレンと接触させて三量化反応を行う方法が採られる。具体的には、前者の場合は、(1)クロム錯体、アルキル金属化合物及びエチレンをそれぞれ同時に独立に反応系に導入する、(2)アルキル金属化合物を含む溶液にクロム錯体及びエチレンを導入する、(3)クロム錯体を含む溶液にアルキル金属化合物及びエチレンを導入する、という方法によりエチレンの三量化反応を行うことができる。また、後者の場合は、(1)クロム錯体を含む溶液にアルキル金属化合物を導入した後、エチレンと接触させる、(2)アルキル金属化合物を含む溶液にクロム錯体を導入した後、エチレンと接触させる、という方法によりエチレンの三量化反応を行うことができる。なお、これらの原料の混合順序は特に制限されない。
【0042】
本発明におけるエチレンの三量化反応の温度は、−100〜250℃であるが、好ましくは0〜200℃である。反応圧力は、反応系がエチレン雰囲気であれば特に制限されないが、通常、絶対圧で0.01〜3000kg/cm2であり、好ましくは0.1〜300kg/cm2である。また、反応時間は温度や圧力に左右され、一概に決めることはできないが、通常、5秒〜6時間である。また、エチレンは、前記の圧力を保つように連続的に供給してもよいし、反応開始時に前記圧力で封入して反応させてもよい。原料ガスであるエチレンには、反応に不活性なガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が含まれていても何ら差し支えない。なお、エチレンの三量化反応のすべての操作は、空気と水分を避けて行うことが望ましい。また、エチレンは十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0043】
本反応は、回分式、半回分式、連続式のいずれでも実施できる。エチレンの三量化反応終了後、反応液に、例えば、水、アルコール、水酸化ナトリウム水溶液等の失活剤を添加して反応を停止させることができる。失活した廃クロム触媒は公知の脱灰処理方法、例えば、水またはアルカリ水溶液による抽出等で除去できる。生成した1−ヘキセンは、公知の抽出法や蒸留法により反応液より分離される。また、副生するポリエチレンは、反応液出口で公知の遠心分離法や1−ヘキセンを蒸留分離する際の残渣として分離除去することができる。
【0044】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の概要を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
ガスクロマトグラフィーによる分析:
反応液中に含まれる炭素数4〜8の生成物の定量は、GLサイエンス製 TC−1のカラムを装着した島津製作所製 ガスクロマトグラフ(GC−14A)を用いて分析した。分析条件は、窒素キャリアを用い、インジェクション温度280℃、検出器温度280℃に設定し、内部標準としてn−ヘプタンを用いた。分析は、このガスクロマトグラフに反応液を1.0μl注入した後、カラムの温度を40℃から250℃まで昇温することにより行った。
【0046】
また、炭素数10以上の生成物は、上記ガスクロマトグラフとは別途用意したGLサイエンス製 TC−1のカラムを装着した島津製作所製 ガスクロマトグラフ(GC−14A)を用いて分析した。分析条件は、窒素キャリアを用い、インジェクション温度300℃、検出器温度300℃に設定し、内部標準としてn−ヘプタンを用いた。分析は、このガスクロマトグラフに反応液を1.5μl注入した後、カラムの温度を50℃から300℃まで昇温することにより行った。
【0047】
気体中に含まれる生成物は、クロムパック製 Al2O3/KClのカラムを装着した島津製作所製 ガスクロマトグラフ(GC−9A)を用いて分析した。分析条件は、窒素キャリアを用い、インジェクション温度200℃、検出器温度200℃及びカラム温度120℃に設定し、絶対検量線法を用いた。分析は、このガスクロマトグラフに回収した気体を0.2ml注入することにより行った。
【0048】
参考例1
内容積100mlのシュレンク管に、J.Amer.Chem.Soc.,92,5118(1970)に記載の方法で合成した三脚型構造を有するトリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン 126mg、トリス(テトラヒドロフラン)クロムトリクロライド(III)143mg、テトラヒドロフラン20mlを加え、窒素雰囲気下で12時間攪拌した。生成した結晶をろ別し、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)(以下、錯体Aと称する。)を得た。
【0049】
実施例1
温度計及び攪拌装置を備えた内容積150mlのガラス製耐圧反応容器に、参考例1で合成した錯体Aを7.3mgと乾燥したトルエン80mlを入れ、混合撹拌した。
【0050】
反応容器を80℃に加熱し、撹拌速度を1400rpmに調整後、エチレン圧により0.150mol/lのトリイソブチルアルミニウム/シクロヘキサン溶液1.6mlを導入して、エチレンの三量化反応を開始した。反応容器内の絶対圧力を5kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。30分後、反応容器中に水を窒素で圧入することによって触媒を失活させて反応を停止した。
【0051】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液中にはポリエチレン等の固体分は認められなかった。反応液及び回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。結果を表1に示す。
【0052】
実施例2
トリイソブチルアルミニウム/シクロヘキサン溶液を加える前に、53.3mmol/lのn−ブチルリチウム/シクロヘキサン溶液を1.5ml加えたこと以外、実施例1と同様にして反応を行なった。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位したクロム錯体とアルキル金属化合物からなるエチレンの三量化触媒は、安定で取り扱いが容易であり、しかもこれを用いるとエチレンから効率よく、かつ高選択的に1−ヘキセンを製造することができる。
Claims (3)
- 下記一般式(1)
ACrBn (1)
(式中、nは1〜3の整数である。Aは三脚型構造を有する中性の多座配位子であり、Bはハロゲン原子を表す。)で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位したクロム錯体とアルキル金属化合物からなるエチレンの三量化触媒であって、三脚型構造を有する中性の多座配位子が、下記一般式(2)
R p MX q (4)
(式中、pは3であり、qは0である。Mはリチウムまたはアルミニウムを表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基からなる群より選ばれる1種以上を表し、Xは水素原子、アルコキシド基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上を表す。)で示される化合物であることを特徴とするエチレンの三量化触媒。 - 三脚型構造を有する中性の多座配位子がfacialに配位したクロム錯体を用いることを特徴とする請求項1に記載のエチレンの三量化触媒。
- 請求項1又は請求項2に記載のエチレンの三量化触媒の存在下で、エチレンを三量化することを特徴とするエチレンの三量化方法。
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