JP4351910B2 - 集合組織化された準安定アルミニウム合金スパッタリング・ターゲット - Google Patents

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Description

近年、製造業者は、アルミニウム−銅、アルミニウム−ケイ素及びアルミニウム−ケイ素−銅の合金などのアルミニウム合金からスパッタリング・ターゲットを製造するために、いくつかの加工技術に依っていた。製造業者は従来、微細粒化アルミニウム合金ターゲットを製造するために、冷間加工と焼鈍の組合せに依っていた。焼鈍は結晶粒を再結晶化して、スパッタリングに有用な結晶粒集合組織を作る。これらの焼鈍されたターゲットの最終の結晶粒サイズは通常、30〜75μmの範囲である。ターゲットの結晶粒サイズをこれらのレベルより小さくすると、スパッタリングの均一性がさらに改善されるであろう。
ターゲットの製造業者は、微細アルミニウム合金微細組織を作るために、剪断押出し(ECAE)に依っていた。ナカシマ等の「剪断プレスにおける超微細結晶粒の成長への剪断の影響」、Acta.Mater.、Vol.46、(1998)、pp.1589−1599、及び、バリーブ(R.Z.Valiev)等の「大量の塑性変形を受けた超微粒化金属及び合金の組織と機械的挙動」、Phys.Metal.Metallog.、Vol.85、(1998)、pp.367−377は、結晶粒サイズを小さくするためにECAEを用いる例を提供する。ECAEは、加工材の形状を大きく変化させることなく、非常に大量の歪みを金属に導入する。この方法は結晶粒サイズを小さくするには有効であるが、均一なスパッタリングを容易にするように結晶粒を配列させることも、あるいは、許容できる歩留りを提供することもないと思われる。この低い歩留りは、方形プレートでのみ操作が行われ、従って、方形プレートから円形のターゲットを切り出す非効率な段階を必要とするECAE法に原因がある。
金属に微細結晶粒組織を生み出す別の機械的方法は、「繰り返し(accumulative)ロール接合」であり、アルミニウム板が繰り返し積層および圧延されて、超微細結晶粒サイズに必要とされる十分な歪みが付与される。ツジ(N.Tsuji)等、「繰り返しロール接合(ARB)法により製造された超微粒化バルク鋼」、Scripta.Mater.、Vol.40、(1999)、pp.795−800。繰り返される積層および圧延により、アルミニウムが臨界厚さに達した後も、圧延を続けることができる。この方法は、いくつかの製品を製造するには有用であるが、この方法は、最終製品に望ましくない酸化物を導入することが多い。
研究者等は、アルミニウム合金板パネルの成形限界を広げるために、極低温加工を用いることを検討した。例えば、セリネス(Selines)他は、米国特許第4159217号に、アルミニウム板を変形させる極低温処理工程を開示する。この極低温処理工程は、−196℃での伸びと成形性を増大させる。さらに、同様の研究では、自動車用の板パネルの成形性を増すことに焦点が置かれた。重要な参考文献として、以下のものが含まれる。すなわち、i)アサオ(H.Asao)等、「極低温加工の研究I.面心立方金属及び合金の極低温での変形挙動と機構」、J.Jpn.Soc.Technol.Plast.、Vol.26、(1985)、pp.1181−1187、及び、ii)アサオ(H.Asao)等、「極低温加工の研究II.面心立方金属及び合金の変形挙動への温度交換の影響」、J.Jpn.Soc.Technol.Plast.、Vol.29、(1988)、pp.1105−1111。
ロー(Lo)他は、「微細結晶粒と微細析出物を有するランダム配向アルミニウム合金スパッタリング・ターゲットの製造方法」という名称の米国特許第5766380号において、アルミニウム合金スパッタリング・ターゲットを製造する極低温法を開示する。この方法では、望ましい集合組織に結晶粒を再結晶させる、最終的な焼鈍段階を伴う極低温加工が用いられる。同様に、リウ(Y.Liu)は、米国特許第5993621号において、チタン・スパッタリング・ターゲットの結晶学的集合組織を操作し改善するために、極低温加工及び焼鈍を用いている。
本発明は、スパッタリング・ターゲットをスパッタリングするためのスパッタリング・ターゲット面を有するアルミニウム合金スパッタリング・ターゲットに係るものである。このスパッタリング・ターゲット面は集合組織化された準安定結晶粒組織を有する。集合組織化された準安定結晶粒組織では、(200)方向の結晶粒配向率が少なくとも35パーセントである。スパッタリング・ターゲットをスパッタリングする間、集合組織化された準安定結晶粒組織は安定している。集合組織化された準安定結晶粒組織の結晶粒サイズは5μm未満である。
アルミニウム合金スパッタリング・ターゲットの成形方法は、最初に、アルミニウム合金ターゲット素材を−50℃より低い温度に冷却する段階を含む。アルミニウム合金ターゲット素材は、ある結晶粒サイズの結晶粒を有する。次に、冷却されたアルミニウム合金ターゲット素材を変形させることにより、ターゲット素材に塑性歪みを導入し、結晶粒の結晶粒サイズを小さくして集合組織化された準安定結晶粒組織とする。最後に、集合組織化された準安定結晶粒組織の保持に十分な低い温度で、アルミニウム合金ターゲット素材を仕上げることにより、最終のスパッタリング・ターゲットとする。
アルミニウム合金素材の変形温度を少なくとも−50℃まで下げることにより、超微細結晶粒サイズを有する集合組織化された準安定結晶粒組織が得られることが見出された。有利には、この方法により、最密方向に優先的に集合組織化されたターゲットが製造される。準安定製品は、200℃より低い温度でのスパッタリングに対して、許容しうる安定性を示す。
この方法により、約10パーセント未満の再結晶粒を有するアルミニウム合金スパッタリング・ターゲットが製造される。有利には、このスパッタリング・ターゲットは、約5パーセント未満の再結晶粒を含む。最も有利には、このスパッタリング・ターゲットは、約2パーセント未満の再結晶化結晶粒を含む。
この方法は、アルミニウム合金ターゲットに対して効果的である。極低温工程は、アルミニウム−銅、アルミニウム−ケイ素、アルミニウム−銅−ケイ素及びアルミニウム−ケイ素−銅の合金において、特に効果的である。通常の合金には、銅とケイ素が、合わせて約0.2から5重量パーセントまでの間の量が含まれているであろう。特に言及されなければ、本明細書では全ての組成を重量パーセントで表す。具体的な合金の例には、Al−0.5Cu及びAl−1Si−0.5Cuが含まれる。
最終の結晶粒は、約5μm未満の結晶粒サイズを有する。本明細書では、結晶粒サイズは、ASTM E−112による結晶粒サイズを表し、極低温加工により形成された粒界と大角度(high angle)亜粒界の両方を用いる。本明細書では、大角度亜粒界は、約15度を超える亜結晶粒と亜結晶粒との不整合角である。これは、標準的なアルミニウム合金スパッタリング・ターゲットを凌ぐ、結晶粒サイズのかなりの改善を示している。さらに、この方法は、有利には、約2μm未満のレベルに結晶粒サイズを保つことができる。最も有利には、この方法は、約1μm未満のレベルに結晶粒サイズを保つことができる。
さらに、この方法では、(200)結晶粒配向率が優勢になる。本明細書では、配向率は、パーセントで表され、スパッタリング・ターゲット面に垂直な方向に測定した、全結晶粒に対する特定の結晶粒配向の相対的割合と定義される。例えば、X線のピーク強度を測定して、それをランダム配向の粉末基準物で測定されたそのピークの相対強度で割ることにより、結晶粒配向率が計算される。次に、この比に100パーセントを掛けて、そして正規化される。すなわち各強度とそれらの対応する相対強度との結晶粒配向率の合計で割られる。
最終のスパッタリング・ターゲット面では、有利には、(200)方向の結晶粒配向率が少なくとも約35パーセントである。最も有利には、スパッタリング・ターゲット面は、少なくとも約40パーセントの(200)方向を有する。さらに、スパッタリング・ターゲット面の結晶粒配向率は、最も有利には、(200)方向の配向率が少なくとも約35パーセント、(111)、(220)及び(311)方向の配向率が各々約5〜35パーセントである。(200)方向が多く、(111)、(220)及び(311)方向の釣り合ったこの組合せにより、スパッタリング・ターゲット面による最も均一なスパッタリング特性が得られる。
最初に約−50℃より低い温度にアルミニウム合金ターゲット素材を冷却することにより、素材を変形させる準備がなされる。冷却媒体は、固体又は液体のCO、液体窒素、液体アルゴン、ヘリウム、あるいは他の超低温液体の組合せとすることができる。有利には、この方法では、素材を約−80℃まで冷却する。最も有利には、この方法では、素材を少なくとも約−196℃すなわち77Kまで冷却する。ほとんどの用途での最も実用的な温度は、77Kである(大気圧の液体窒素温度)。
冷却後、冷却されたアルミニウム合金ターゲット素材を変形させることにより、アルミニウム合金ターゲット素材に大量の塑性歪みが導入され、結晶粒の結晶粒サイズが小さくされる。結晶粒サイズの小さくなるメカニズムは、元の結晶粒の亜結晶粒への強制的再分割であり、亜結晶粒の亜粒界が、極度の塑性歪みを与えられ続けて、最終的に大角度粒界へと成長する。極低温での変形は、変形中に起こる動的回復の度合いを限定し、このことが、元の結晶粒内部での大角度粒界の発達を容易にする。最終生成物の集合組織化された準安定ミクロ組織は、元の粒界に対して相対的に小さな割合で変形誘起大角度粒界を含む。変形方法には、アルミニウム合金の結晶粒サイズを超微細にするための、プレス、圧延、鍛造などの方法が含まれる。変形の間、ターゲット素材の発熱を抑えることが重要である。さらに、ターゲット素材に少なくとも約50パーセントの工学歪みを持たせると有利である。この歪みにより、集合組織化された準安定ミクロ組織がターゲットの全厚さを通して確実に均一になる。
圧延は、結晶粒サイズを小さくし、結晶粒集合組織を制御する最も有利な方法であることが実証された。とりわけ、パス間での再冷却を伴う多段パス圧延は、最も有利な結果を与える。
最終のスパッタリング・ターゲットへのアルミニウム合金ターゲット素材の仕上げは、超微細結晶粒サイズの保持に十分な温度で行われる。スパッタリング・ターゲットが、高すぎる温度で仕上げられると、利点のある結晶粒サイズの低下が損なわれる。有利には、仕上げは、結晶粒の成長を抑えるために、約200℃より低い温度で行われる。仕上げ温度を約100℃より低い温度に下げることにより、仕上げの間の結晶粒の成長の機会は、さらに少なくなる。最も有利には、仕上げは大気温度で行われる。
同様に、集合組織化された準安定結晶粒サイズでは、約200℃より低い温度でスパッタリングすることが重要である。スパッタリングの温度を200℃未満に保つことにより、スパッタリング中の結晶成長が抑えられ、そのターゲットの寿命が終わるまで、スパッタリングの均一性を容易にする。最も有利には、スパッタリングは、約150℃未満の温度に保たれたターゲットで行われる。
例1
直径57mm(2.25インチ)、厚さ25.4mm(1.0インチ)の寸法のAl−0.5Cuの小さい試験片を、極低温変形を行うために、液体窒素で冷却した。試験片を2工程で12.7mm(0.5インチ)の高さにプレスした。第2のプレス工程の前に、試験片を液体窒素温度(−196℃すなわち77Kに可能な範囲で近い温度)に再冷却した。次に、極低温プレスされた試験片を6.4mm(0.25インチ)の最終厚さに極低温圧延した。極低温圧延中、各圧延パスの後、液体窒素で再冷却した。最初の冷却及び再冷却段階は、加工材がその表面を囲む液体窒素を沸騰させなくなるまで続けられた。室温の金属を液体窒素に侵漬した直後には、金属表面に隣接する液体は非常に急速に沸騰するので、それが加工材を取り囲む安定なガスの膜を形成した。すなわち「膜沸騰」が起こった。膜沸騰の間は、ガスが障壁となり熱伝達が制限された。加工材の温度が低下し、金属が−196℃に近づくと、ガス膜の障壁が壊れ始め、沸騰するより前に液体が金属表面に接触した。熱伝達は、この「核沸騰」現象の間は比較的迅速であった。核沸騰中の沸騰速度は、膜沸騰のそれよりかなり大きかった。実寸大での試行による興味深い観察によると、加工材が−196℃に近づいた時、聞き取ることができる沸騰状態の変化により、膜沸騰から核沸騰への移行が知られた。
比較のために、同様の試験片に対して冷却段階なしに、極低温変形試験片と同じ加工量のプレスおよび圧延を行った(すなわち、周囲温度で変形を実施した)。
微小回折分析が、極低温変形加工により変形された試験片と、室温で変形された対照試験片のミクロ組織との比較に有用であった。変形されたままの状態で各試験片を分析することにより、2つの明瞭に識別できる組織が得られた。室温で変形された試験片のTEM微小回折分析は、小角度(low angle)亜結晶粒組織を示した(図1A)。この小角度亜結晶粒組織は、室温で変形されたアルミニウム合金の特徴であった。対照的に、極低温で加工されたAl−0.5Cu試験片のTEM像では、亜粒界の間に大角度粒界が含まれていた(図1B)。
この研究での、周囲温度及び極低温変形された試験片の変形されたままのAl−0.5Cu試料の結晶学的集合組織が、図2で比較されている。図2の比較試験片Aは、周囲温度で変形されたAl−0.5Cu試料の変形されたままの集合組織を示しており、一方、極低温試験片1は、極低温で変形されたAl−0.5Cu試料の変形されたままの集合組織を示している。望ましいものとして知られている、従来技術(かなり粗大な結晶粒)の結晶学的集合組織もまた、周囲温度で加工され焼鈍された試料について図2に示されている(比較試験片B)。準安定−未再結晶ターゲットの集合組織は、比較ターゲット試料と比較して有利である。
例2
3つのAl−0.5Cu小形ビレットについて実施された実験的加工により、極低温加工により付与される強度の増加が定量的に求められた。評価された3つの加工経路は、1)室温でのプレスおよび圧延の後の再結晶化熱処理を含む標準的な加工、2)室温でのプレスおよび極低温圧延を含む部分的極低温加工、および3)極低温プレスおよび極低温圧延を含む完全な極低温加工であった。極低温加工は例1に記載した冷却および再冷却法に従った。
図3を参照すると、市販の再結晶化Al−0.5Cuターゲット素材(比較素材B)の硬さは、完全及び部分極低温加工ターゲット素材のそれより約40ポイント小さかった。この硬さ試験により、部分的極低温加工試料(極低温素材2)と完全な極低温加工試料(極低温素材3)との間には、測定可能な硬さの違いがないことが明らかになった。
極低温加工ターゲットの別の利点は、それらの増大した強度である(塑性変形により生じる歪(deflection)抵抗性)。可能な強度の増加を定量化するために、Al−0.5Cuの小形ビレットについて、ASTM E−8による機械的試験の試験片を作製する実験的加工が実施された。前記のとおり、標準的な加工法で製作された試験片を含む試験片が極低温加工試験片(極低温プレスおよび極低温圧延された試験片、焼鈍処理なし)と比較された。
図4を参照すると、標準の再結晶化Al−0.5Cuターゲット素材の降伏強さ(比較素材D及びE)は、極低温加工ターゲット素材(極低温素材4)のそれより約175MPa小さかった。図4は、比較用のECAE法による超微細結晶粒Al−0.5Cu(比較素材F)の公表データ、およびT6条件による市販アルミニウム合金6061の公表データを比較のために含んでいる。
例3
直径13.0cm(5.1インチ)、長さ31.8cm(12.5インチ)のAl−0.5Cuの5つの円柱形ビレットを、実寸大加工の試料に用いた。この試験では、200℃で4時間の最終の焼鈍段階を行うか、あるいは行わないで、部分的又は完全極低温変形法を用い、回転成形された5つの大きなエンデュラ(Endura)用Al−0.5Cuターゲットが作製された。エンデュラ用ターゲットは、直径323mm、厚さ19.56mmの寸法であった。5つのターゲットを以下に列挙する条件で加工した。
番号 プレス 圧延 焼鈍
5 極低温 極低温 200
6 極低温 極低温 なし
7 室温 極低温 なし
8 極低温 極低温 200
9 室温 極低温 なし
ビレットの極低温プレスは、1)31.8cmから20.3cmへ(12.5インチから8.0インチへ)[減少率36%]、2)20.3cmから12.7cmへ(8.0インチから5.0インチへ)[減少率38%]、3)12.7cmから8.9cmへ(5.0インチから3.5インチへ)[減少率30%]、及び4)8.9cmから4.7cmへ(3.5インチから1.85インチへ)[減少率47%]の4つのプレス工程を含んでいた。すえ込み(upset)によるプレス工程全体の減少率は85%、あるいは真歪み1.9であった。液体窒素の槽にビレットを侵漬することにより、ビレットを極低温にした。周囲温度でプレスされた試料は1工程でプレスされた。
5つのビレットを全てターゲット素材に変形させた後、極低温圧延により、素材をそれらの最終厚さまで薄くした。前記のとおり、ターゲット素材を液体窒素に侵漬することにより、加工材の温度を−196℃に下げた。極低温圧延により、ターゲット素材を、直径33cm(13インチ)で厚さ4.7cm(1.85インチ)のディスク形状から直径45.7cm(18インチ)で厚さ2.4cm(0.95インチ)のディスク形状に変形させた。1パスあたりの減少率は、厚さ全体を通して均一な変形を保つためにできるだけ大きくした。極低温圧延では、素材の厚さが3.0cm(1.2インチ)の厚さに近づくまで、ターゲット素材を0.254cm(0.100インチ)/パスで薄くした。次に、0.127cm(0.050インチ)/パスの更なる約4回のパスにより、素材をそれらの最終の指定された寸法である、直径45.7cmで厚さ2.4cmまで変形させた(全体で10〜12回のパス)。これらのターゲット素材は、プレス段階で加工された加工材より薄いので、各圧延パスの間の再冷却時間はずっと短かった。
前記のとおりターゲット素材を極低温成形した後、回転成形により、平坦なターゲット素材を、特徴的な「山高帽(high hat)」フランジを有するエンデュラ形状ターゲットに変えた。極低温加工されたターゲット素材を回転成形するには、焼鈍された素材の通常の回転成形に比べてターゲットを変形させる付加的力が必要であった。
極低温加工されたターゲット素材を、回転成形工程の準備のために、周囲温度で粗仕上げした。図5を参照すると、粗仕上げされた5つの素材全て(極低温素材5〜9)の配向率は類似していた。このことは、この実施例での加工パラメータの相違が集合組織の成長にそれ程影響を与えなかったことを示している。しかし、(111)成分の配向率は、5つの素材全てにおいて予想外に大きかった。この予想外の結果は、ターゲット素材の真の集合組織を変化させる粗仕上げ作業によるものであったかもしれない。
例4
2つの小さいAl−0.5Cu試験片を、例1に記載した極低温加工条件で加工して、安定性試験用の集合組織化準安定結晶粒組織を作製した。次に、これらの試料を、100℃、200℃及び300℃で4時間熱処理して、高温での準安定結晶粒の安定性を評価した。図6を参照すると、100℃と200℃との間のある温度で、(全く同じように加工された試料10及び11において)結晶粒は粗くなる。この理由から、200℃未満の温度でスパッタリングすることに利点がある。
例5
例3に記載された極低温加工段階を用いて作製されたAl−0.5Cuのエンデュラ用ターゲットのスパッタリング試験を、アプライド・マテリアルズ(Applied Materials)のエンデュラ・スパッタリング装置で実施した。ターゲットからウェハまでの距離52mm、スパッタリング出力11kW、および2.3mTorrのアルゴン圧力で、ウェハへの被着が、200℃の温度、53.5秒のサイクルで行われた。ターゲットの測定された寿命期間中の平均Rsの均一性(49の位置で測定された被着膜の均一性の間接測定)は、1σで0.93%であったが、これは良好な結果である。
超微粒化Al−0.5Cuターゲットでの別の観察によれば、スパッタリング中の微小なアーク放電現象は概ね無かった。最初にターゲットを取り付けた直後に起こった、いくつかの微小なアーク放電現象を別にして、試験ターゲットのスパッタリング中、他の如何なる時にも微小なアーク放電の発生は観察されなかった。
本発明方法により、円形ターゲット及び板状矩形ターゲットを含めて、任意の形状のターゲットを製造することができる。さらに、この方法で成形されたターゲットの強度は大きいので、直接一体構造にターゲットを成形することも可能である。このことにより、ターゲットを支持板に接合することに伴うコストが省かれ、スパッタリング・ターゲットの使用できる厚さが増す。この方法を用いて、一体構造のアルミニウム合金ターゲットに、最小で0.2〜0.5μmのように微細な結晶粒サイズを実現することが可能である。この超微細集合組織化された準安定組織を保つために、冷却スパッタリング・ターゲット、例えば水冷スパッタリング・ターゲットを用いると、特に利点がある。
スパッタリング・ターゲットの結晶粒サイズが小さくなったことにより、200℃を超える温度で焼鈍された従来のアルミニウム合金スパッタリング・ターゲットよりも、スパッタリングの均一性が向上する。さらに、本方法により、従来の鍛練法よりも一定の製品が得られる。さらに、この方法で作製されたターゲットの降伏強さは、100MPaを超え、あるいは150MPaさえも超える。この大きさの降伏強さは、スパッタリング・ターゲットの歪曲(distortion)を少なくするはずである。最後に、このターゲットは、均一なスパッタリングをさらに容易にする、好ましい(200)集合組織を示す。
本発明について、特定の好ましい実施例を参照して、詳細に述べたが、当分野の技術者は、特許請求の範囲の原理と範囲内で、本発明の他の実施例が存在することを理解することができるであろう。
周囲温度で加工されたAl−0.5Cuターゲット素材から採取された試料の、小角度亜粒界不整合の測定値を含む、33000倍の倍率で取られた透過型電子顕微鏡写真。 極低温加工されたAl−0.5Cuターゲット素材から採取された試料の、33000倍の倍率の透過型電子顕微鏡写真。 比較方法による、および周囲温度で変形されたままのAl−0.5Cu、並びに極低温変形されたAl−0.5Cu試験片の結晶学的集合組織の比較図。 極低温加工Al−0.5Cu試験片で達成された硬さ(15W表面ロックウェル硬さ)の増加を比較方法と比較して示す図。 極低温加工Al−0.5Cu試験片で達成された降伏強さ(MPa)の増加を、比較方法及び6061 T6アルミニウム合金と比較して示す図。 極低温加工を用いて加工された、粗仕上げされたターゲット素材の配向率を示す図。 極低温加工ターゲットの焼鈍温度に対して結晶粒サイズを描いた図。

Claims (10)

  1. アルミニウム合金スパッタリング・ターゲットにおいて、
    前記スパッタリング・ターゲットが、前記スパッタリング・ターゲットをスパッタリングするためのスパッタリング・ターゲット面を有し、
    前記スパッタリング・ターゲット面が、少なくとも約35パーセントの(200)方向の結晶粒配向率を有する集合組織化された準安定結晶粒組織を有し、
    前記スパッタリング・ターゲットをスパッタリングする間、前記集合組織化された準安定結晶粒組織が安定しており、
    前記集合組織化された準安定結晶粒組織の結晶粒サイズが約5μm未満であるアルミニウム合金スパッタリング・ターゲット。
  2. 前記集合組織化された準安定結晶粒組織が約10パーセント未満の再結晶粒を有する請求項1に記載されたアルミニウム合金スパッタリング・ターゲット。
  3. アルミニウム合金スパッタリング・ターゲットにおいて、
    前記アルミニウム合金が、アルミニウム−銅、アルミニウム−ケイ素、アルミニウム−ケイ素−銅及びアルミニウム−銅−ケイ素の合金からなる群から選択され、
    前記スパッタリング・ターゲットが、前記スパッタリング・ターゲットをスパッタリングするためのスパッタリング・ターゲット面を有し、
    前記スパッタリング・ターゲット面が、集合組織化された準安定結晶粒組織を有し、
    前記集合組織化された準安定結晶粒組織が、少なくとも約35パーセントの(200)方向の結晶粒配向率を有し、
    前記スパッタリング・ターゲットをスパッタリングする間、前記集合組織化された準安定結晶粒組織が安定しており、
    前記集合組織化された準安定結晶粒組織の結晶粒サイズが1μm未満であるスパッタリング・ターゲット。
  4. 前記集合組織化された準安定結晶粒組織が約2パーセント未満の再結晶粒を有する請求項3に記載されたアルミニウム合金スパッタリング・ターゲット。
  5. 前記集合組織化された準安定結晶粒組織が、少なくとも約40パーセントの(200)方向の結晶粒配向率と、それぞれ約5〜35パーセントの(111)、(220)及び(311)方向の結晶粒配向率を有する請求項3に記載されたアルミニウム合金スパッタリング・ターゲット。
  6. 前記アルミニウム合金が、重量パーセントで、Al−0.5Cuであり、前記ターゲットが少なくとも100MPaの降伏強さを有する請求項3に記載されたアルミニウム合金スパッタリング・ターゲット。
  7. 前記スパッタリング・ターゲットが一体構造体である請求項3に記載されたアルミニウム合金スパッタリング・ターゲット。
  8. アルミニウム合金スパッタリング・ターゲットの成形方法において、該方法が、
    a)結晶粒を有し、該結晶粒が結晶粒サイズを有するアルミニウム合金ターゲット素材を約−50℃より低い温度に冷却する段階と、
    b)冷却された前記アルミニウム合金ターゲット素材を変形させることにより前記アルミニウム合金ターゲット素材に塑性歪みを導入して、前記結晶粒の結晶粒サイズを小さくし、集合組織化された準安定結晶粒組織を形成する段階と、
    c)最終のスパッタリング・ターゲットの前記集合組織化された準安定結晶粒組織の保持するために、約200℃より低い温度で、前記アルミニウム合金ターゲット素材を仕上げて前記最終のスパッタリング・ターゲットとする段階とを含むアルミニウム合金スパッタリング・ターゲットの成形方法。
  9. アルミニウム合金スパッタリング・ターゲットの成形方法において、該方法が、
    a)結晶粒を有し、該結晶粒が結晶粒サイズを有するアルミニウム合金ターゲット素材を、約−80℃より低い温度に冷却する段階と、
    b)前記冷却されたアルミニウム合金ターゲット素材を変形させることにより前記アルミニウム合金ターゲット素材に塑性歪みを導入して、前記結晶粒の結晶粒サイズを小さくし、集合組織化された準安定結晶粒組織を形成する段階と、
    c)最終のスパッタリング・ターゲットの前記集合組織化された準安定結晶粒組織を保持するために、約200℃より低い温度で前記アルミニウム合金ターゲット素材を仕上げて前記最終のスパッタリング・ターゲットとする段階とを含むアルミニウム合金スパッタリング・ターゲットの成形方法。
  10. スパッタリングの間、前記集合組織化された準安定結晶粒組織を保持するために、前記アルミニウム合金ターゲットを約150℃より低い温度でスパッタリングする段階を更に含む請求項9に記載されたアルミニウム合金スパッタリング・ターゲットの成形方法。
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