JP4350885B2 - 内臓脂肪量抑制用組成物の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内臓脂肪の蓄積抑制および内臓脂肪の蓄積に起因する肥満症の改善・治療に使用する内臓脂肪量抑制用組成物の製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食生活における高カロリー化および運動不足により、肥満者の数が急増し、このことが社会問題となっている。通常、肥満は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回った時に生じる余剰のエネルギーが脂肪として蓄積されることにより生じる。このようにして蓄積された脂肪は、皮下脂肪と内臓脂肪に大別されるが、そのうちの内臓脂肪の蓄積が、糖尿病,動脈硬化,高血圧等の成人病やさまざまな肥満合併症の要因と考えられているため、中高年によくみられる腹部の肥満は軽視できない。また、このような肥満の問題は、ヒトのみでなく、ペットや家畜等の動物においてもみられる。
【0003】
上記肥満の解消法としては、一般的には、エネルギーの消費および脂肪の燃焼を促すための運動、脂肪や糖分の摂取量および食事量全体を制限する食事療法、食欲抑制剤等の薬剤の使用が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記運動は時間と労力を必要とするため、忙しい社会生活において継続的に行うことが困難である。また、上記食事療法は、食事量等が制限されることにより過度のストレスがかかることから、日常生活で実行することは非常に困難である。しかも、誤った食事療法を行うと、かえって健康を害するおそれがある。また、上記薬剤の使用は、副作用を生じる場合も多く、軽度の肥満の解消および肥満防止のために使用するには危険性が高すぎる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、副作用を生じることなく、内臓脂肪の蓄積抑制効果および内臓脂肪の蓄積に起因する肥満症の改善・治療効果を期待できる内臓脂肪量抑制用組成物の製法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の内臓脂肪量抑制用組成物の製法は、黒大豆の種皮を、エタノールおよび水の少なくとも一方からなる溶媒中にリン酸を含有したものに浸漬し、上記種皮中の色素成分を上記溶媒に抽出する工程と、この溶液を合成吸着樹脂が充填されたカラムに通液し、上記溶液中の色素成分をカラムに吸着させる工程と、上記吸着された色素成分を脱着させ、そのものから溶媒を除去する工程とを備えているという構成をとる。
【0007】
すなわち、本発明者らは、上記課題を解決すべく、一連の研究を重ねた。この研究の過程で、肥満状態のラットに、粉砕した黒大豆を混合した飼料を与え続けたところ、肥満が改善されることを見出した。また、ラットを使った実験により、黒大豆には、腹部脂肪の沈着を防止する作用もあることを見出した。さらに、このような黒大豆の作用は、ラットに限らず、ヒトを含むその他の動物に対しても同様に得られることを見出した。そして、本発明者らは、黒大豆の成分について一連の研究を重ねた結果、黒大豆の種皮の色素成分であるアントシアニンが、内臓脂肪の蓄積に起因する肥満を改善し、腹部脂肪の沈着を効果的に制御するための有効成分であることを突き止め、更なる研究の結果、上記本発明の製法により、黒大豆の種皮から、内臓脂肪量の抑制に有為な作用効果を示す内臓脂肪量抑制用組成物を効率的に得ることができるようになることを突き止め、本発明に到達した。
【0008】
そして、上記本発明の製法により得られる内臓脂肪量抑制用組成物は、それ自体を経口投与してもよいが、それを用いて飲食品とした場合、このものを通常の飲食品と同様に継続して飲食することにより、内臓脂肪の蓄積抑制効果および内臓脂肪の蓄積に起因する肥満症の改善・治療効果が得られるようになる。
【0009】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0010】
本発明の製法により得られる内臓脂肪量抑制用組成物は、黒大豆の種皮からの抽出により得られるものである。
【0011】
そして、上記内臓脂肪量抑制用組成物はアントシアニンを有効成分とするものであり、このアントシアニンは、例えば、下記の一般式(1)で表される。
【0012】
【化1】
【0013】
そして、上記一般式(1)で表されるアントシアニンとしては、具体的には、下記の式(2)に示すシアニジン−3−モノグルコサイド(クリサンテミン),下記の式(3)に示すデルフィニジン−3−モノグルコサイド,下記の式(4)に示すシアニジンや、ペラルゴニジン,デルフィニジン,ペオニジン,ペチュニジンおよびマルビジンがあげられる。なかでも、シアニジン−3−モノグルコサイド,デルフィニジン−3−モノグルコサイドおよびシアニジンは、内臓脂肪の蓄積抑制効果および内臓脂肪の蓄積に起因する肥満症の改善・治療効果が顕著に得られる。
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
本発明では、上記特定のアントシアニンは、先述のように黒大豆の種皮から得たものである。なお、上記特定のアントシアニンの生産効率が高い細胞(黒大豆の種皮の細胞)だけを組織培養して、上記特定のアントシアニンを効率的に得られるようにしてもよい。
【0018】
また、上記特定のアントシアニンの抽出の際に、その抽出溶媒の温度は、特に限定されるものではなく、常温で行ってもよいが、高温で行うと、上記アントシアニンが抽出されやすくなるため、より好ましい。また、上記抽出方法において、上記抽出媒体を還流させて抽出してもよい。
【0019】
上記抽出溶媒としては、アルコール系溶媒,アセトン等の有機溶媒あるいは水を用いることができ、その溶媒中にはリン酸等が添加される。そして、これらの抽出溶媒は単独であるいは二種以上混合して用いられる。なお、上記アルコール系溶媒としては、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール,ブタノール,イソブタノール等があげられ、なかでもエタノールは、毒性が低く、沸点が比較的低いために抽出後の除去が容易であり、しかも入手が容易であるため、より好ましい。また、エタノールを抽出溶媒に用いた場合、抽出効率を高くし、不純物の割合を少なくするという観点から、エタノール:水=1:9〜9:1(容積比)で混合したものを用いることが好ましい。
【0020】
このようにして得られたアントシアニンは、例えば、合成吸着樹脂,活性炭,イオン交換樹脂,ゲル濾過剤等により精製を行い、目的とするアントシアニンの精製効率や純度を上げることができる。なお、精製条件を設定する際には、活性成分の化学的性質を充分に考慮するのが好ましい。例えば、上記特定のアントシアニンは、一般に、先に述べたようにして得られた抽出物の溶液を、合成吸着樹脂(HP20、三菱化学社製)が充填されたカラムに通液し、吸着された色素成分を溶出することによって精製を行うことができる。このとき、吸着された色素成分を溶出させるには、メタノール,エタノール,アセトン等の活性成分を溶解しうる溶媒を通液することにより溶出させることができる。
【0021】
本発明の製法により得られる内臓脂肪量抑制用組成物は、上述のようにして得られたアントシアニンを有効成分とするものであり、これをそのまま直接使用してもよいが、一般には、これを適当な液状担体に溶解あるいは分散させたり、適当な粉末担体に混合させたものを使用する。そして、上記アントシアニンが有効成分となるための含有量は、通常、液剤では0.001〜0.5重量%(以下、「%」と略す)の範囲であると好適であり、粉剤の場合は0.5〜40%の範囲であると好適であり、粒剤の場合は0.5〜40%の範囲であると好適である。
【0022】
さらに、本発明の製法により得られる内臓脂肪量抑制用組成物は、それを飲食品に関与させた形態として提供される。上記飲食品としては、例えば、健康食品,特定保健用食品,清涼飲料水,お茶,ゼリー,ヨーグルト,プリン,アイスクリーム,アイスキャンデー,アメ,チョコレート,パン,ケーキ,ハム,ミートソース,カレー,ミルク,シチュー等があげられる。そして、これらの飲食品において、上記アントシアニンの含有量が0.002〜2%の範囲であると好適である。なお、上記飲食品は、例えば、シュクロース,フルクトース,グルコース等のカロリー性甘味料を実質的に含有せずに、アスパルテーム,サッカリン,エリスリトール,キシリトール,D−キシロース等の非糖質性甘味料で甘味付与されたものがより好ましい。さらに、上記飲食品において、動物性脂肪を実質的に含有せずに、脱脂粉乳や植物油等のカロリーの少ない代替品を用いたものが、より好ましい。
【0023】
本発明の製法により得られる内臓脂肪量抑制用組成物は、ヒトのみでなく、ペットや家畜等の動物においても内臓脂肪の蓄積抑制効果および内臓脂肪の蓄積に起因する肥満症の改善・治療効果が得られるものであり、その投与量は、投与対象とする生物の違い、内臓脂肪蓄積改善あるいは内臓脂肪蓄積予防のいずれを目的とするのかといった違い、投与される者の性別、体重、年齢等の条件に応じて適宜設定される。例えば、成人に対しては、上記アントシアニンを1日あたり1〜400mgとなるよう、数回に分けて投与することができる。また、ペットや家畜等の動物においては、動物用飼料に上記化合物を0.01〜0.5%の範囲で含有させ、1 日当たり1〜400mg/kg体重の範囲となるよう投与するのが好ましい。
【0024】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0025】
【実施例1〜3、比較例1〜2】
〔アントシアニンの抽出〕
まず、黒大豆(光黒)の種皮100gを用意し、これに3%リン酸含有−30%エタノール溶液を上記種皮に対して10倍量加え、4℃で一晩攪拌抽出する作業を2回繰り返し行い、これによって得られた溶液を減圧濃縮乾燥することにより、黒大豆の色素成分であるアントシアニンを高含有する抽出物を得た。そして、このようにして得られた抽出物を精製するため、まず、上記抽出物を0.5%リン酸溶液に溶解し、ついで、この溶液を合成吸着樹脂(HP20)が充填されたカラムに通液することにより、色素成分をカラムに吸着させた。そして、このカラムに、0.5%リン酸溶液(フラクション1)、0.5%リン酸含有−50%エタノール溶液(フラクション2)、エタノール(フラクション3)をこの順に通液して、カラムに吸着された色素成分を溶出した。このようにして通液されたフラクション1〜3に、もとの抽出物に含有していた色素成分がほぼ100%溶出されており、逆相カラム(YMC−Pack ODS−AM−303、ワイエムシイ社製)を用いたHPLC(DP−8020、東ソー社製)における分析により、その色素成分のほとんどがフラクション2に溶出されていることがわかった。そして、上記フラクション2から溶媒を除去することにより、アントシアニン(色素成分)を90%以上の高純度で含有する抽出物が得られた。
【0026】
〔腹部脂肪の沈着を抑制する効果をみるための試験(動物実験)〕
初体重273〜335gの10週齢のSD系雌性ラット25匹を用意し、これを1群5匹のグループに分けた。ついで、上記グループのうち、1グループを除いた全グループのラットに対し、両側卵巣を摘出して人為的に更年期状態にする施術を施し、肥満になりやすくした。そして、卵巣の摘出を行わなかった上記1グループには、基本飼料(CLEA精製飼料、日本クレア社製)のみを30日間投与しつづけた(比較例1)。なお、上記基本飼料には大豆は含まれていない。また、卵巣摘出を行ったグループのうち、対照群には、上記基本飼料のみを、卵巣摘出5日後から30日間投与しつづけ(比較例2)、投与群には、上記基本飼料に、上述のようにして黒大豆の種皮のみから抽出され精製された抽出物をそれぞれ、0.02%(実施例1),0.05%(実施例2),0.10%(実施例3)の割合で配合したものを、卵巣摘出5日後から30日間投与しつづけた。なお、この試験に用いられるラットはすべて、一匹ずつステンレスケージで飼育され、1日2食を同じ時間帯に与えられた。そして、その飼料における基本飼料の量はいずれのラットに対しても同量にした。
【0027】
そして、飼育期間終了後、ラットを解剖し、その腹部における腸管膜脂肪(内臓脂肪)を取り出して重量を測定し、ラットの体重に対する内臓脂肪の割合を求めた。その結果を、以下の表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
したがって、上記表1に示すように、卵巣を摘出して肥満になりやすくしたラットであっても、基本飼料に黒大豆の種皮のみから得られたアントシアニンを含有させたものを投与し続けることにより、その内臓脂肪の割合が、基本飼料のみを投与し続けたラットよりも低い値を示した。このように、アントシアニンには、腹部脂肪の沈着を抑制する効果があることがわかる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の内臓脂肪量抑制用組成物の製法のように、黒大豆の種皮を、エタノールおよび水の少なくとも一方からなる溶媒中にリン酸を含有したものに浸漬し、上記種皮中の色素成分を上記溶媒に抽出する工程と、この溶液を合成吸着樹脂が充填されたカラムに通液し、上記溶液中の色素成分をカラムに吸着させる工程と、上記吸着された色素成分を脱着させ、そのものから溶媒を除去する工程とにより、上記内臓脂肪量抑制用組成物を製造すると、毒性を生じず、目的とする組成物を得ることができる。特に、上記溶媒が、エタノール:水=1:9〜9:1(容積比)で混合したものであると、抽出後の溶媒除去も容易であり、また、上記内臓脂肪量抑制用組成物の抽出効率が高くなるとともに、不純物の割合を少なくすることができる。
【0031】
そして、上記製法により得られた内臓脂肪量抑制用組成物を用いた飲食品は、黒大豆の種皮のアントシアニンを有効成分として含有し、このものを通常の飲食品と同様に継続して飲食することにより、内臓脂肪の蓄積抑制効果および内臓脂肪の蓄積に起因する肥満症の改善・治療効果が得られるようになる。
Claims (2)
- 黒大豆の種皮を、エタノールおよび水の少なくとも一方からなる溶媒中にリン酸を含有したものに浸漬し、上記種皮中の色素成分を上記溶媒に抽出する工程と、この溶液を合成吸着樹脂が充填されたカラムに通液し、上記溶液中の色素成分をカラムに吸着させる工程と、上記吸着された色素成分を脱着させ、そのものから溶媒を除去する工程とを備えていることを特徴とする内臓脂肪量抑制用組成物の製法。
- 上記溶媒が、エタノール:水=1:9〜9:1(容積比)で混合した溶媒である請求項1記載の内臓脂肪量抑制用組成物の製法。
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