JP4349553B2 - バックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はテレビカメラに適した固定焦点の広角レンズに関し、特に、3群構成で長いバックフォーカスを有する固定焦点の広角レンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば、シネマ用の映像を撮像し得る、いわゆるEシネマ用カメラと称されるテレビ放送用撮像カメラが知られている。
【0003】
このEシネマ用カメラに用いられる広角レンズは、通常のテレビ放送用撮像カメラに比して、さらなる広角化および結像面全域における高性能化が要求される。
また、このようなEシネマ用カメラにおいて固体撮像素子を用いる場合には、通常のテレビ放送用撮像カメラと同様に、撮影レンズと固体撮像素子との間にローパスフィルタや赤外カットフィルタが配設されるため、撮影レンズのバックフォーカスを長くする必要がある。さらに、各原色光毎に撮像素子を用いたいわゆる多板式のものにおいては、各固体撮像素子の前段において色分解プリズムが配設されるため、撮影レンズのバックフォーカスはさらに長く設定する必要がある。
【0004】
一方、上述したようなテレビ放送用撮像カメラにおいて、フォーカシングに伴う諸収差変動や画角変動を抑制するためインナーフォーカス方式を採用することが好ましい。
【0005】
このような各種の要求を満足させたものとして本出願人が既に開示している、特開平4-118612号公報に記載されたものが知られている。この公報記載の技術は、レトロフォーカス型の高性能広角レンズであって、画角を90゜以上としても十分に良好な性能を得ることが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した公報記載の広角レンズにおいては、前群を構成するレンズ(前玉)の有効系を大幅に小さくすることが難しく、最近の撮像カメラのコンパクト化という要請に対して必ずしも満足し得るものとはなっていなかった。
【0007】
例えば、同公報に記載の第1実施例の広角レンズにおいては、焦点距離が5.0mm、Fナンバが1.8、画角95.5度の条件下(イメージサークルφ11.0mm)において前玉有効径がφ95.0mmとなっており、これを半分程度のサイズにしたいという要求があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、レトロフォーカス型の高性能広角レンズにおいて、前玉有効径を大幅に小さくすることが可能で、撮像カメラのコンパクト化を図りうるバックフォーカスの長い広角レンズを提供することを目的とするものである。
【0009】
一方、上述したような撮像カメラ用広角レンズにおいて、フォーカシングに伴なう諸収差変動や画角変動を抑制するためインナーフォーカス方式を採用するものが知られている。
この種の撮像カメラ用広角レンズにおいてインナーフォーカス方式を採用したものとしては、上記公報記載のもののほか、特開2000-131606号公報に記載された広角レンズが知られている。この公報記載のものは、2群構成とされ、前群を構成する2つのレンズ群のうち結像面側の正レンズ群(第1−2群)が前後に移動することによってフォーカシングを行なうように構成されている。
【0010】
しかしながら、この公報記載の広角レンズは、全系の焦点距離に対するバックフォーカスの比(レトロ比)が2.6程度であり、必ずしもバックフォーカスが十分とはなっていなかった。
【0011】
また、前述した特開平4-118612号公報に記載されたものにおいては、前群を構成する2つのレンズ群のうち結像面側のレンズ群を移動させるとともに後群をも移動させることによってフォーカシングを行なうように構成されており、フォーカシングのためのメカ的機構が複雑化する。さらに、フォーカシングに伴なう画角の変動が少なくないことから、前述したEシネマ用カメラ等に搭載することが必ずしも適切とはいえない場合も生じる。
【0012】
本発明はこのような事情にも鑑みなされたもので、上記目的に加え、特にEシネマ用等のテレビ放送用撮像カメラに用いられる、インナーフォーカス方式を採用した広角レンズにおいて、フォーカシングのメカ的機構を複雑にすることなく、またフォーカシングに伴なう画角変動を大きくすることなくフォーカシングに伴なう諸収差の変動を抑制することができ、さらに、バックフォーカスを十分に確保することができるバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズを提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によるバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズは、物体側より順に、全体として負の屈折力を有する第1レンズ群、絞りと該絞りの前後近傍に配置された、負レンズと正レンズを接合してなる接合レンズを少なくとも1組備えてなる第2レンズ群、および全体として正の屈折力を有する第3レンズ群が配列されてなるレトロフォーカスタイプの広角レンズにおいて、
前記第1レンズ群が、物体側から複数枚の負レンズと複数枚の正レンズをこの順に配列されるとともに、物体側から順に、少なくとも1枚の正レンズを備え全体として負の屈折力を有する第1aレンズ群、少なくとも1組の正レンズおよび負レンズを備え全体として負の屈折力を有する第1bレンズ群、少なくとも1組の正レンズおよび負レンズからなる接合レンズを備えた第1cレンズ群からなるように構成され、
前記第1bレンズ群は、物体側からこの順に配列された、凸面を結像面側に向けた正レンズと物体側の面よりも強い曲率の面を結像面側に向けた負レンズとからなり、
無限遠物点から至近物点にフォーカスする際には、前記第1bレンズ群を物体側に繰り出して行うことを特徴とするものである。
【0015】
また、前記第1aレンズ群が、物体側から順に、少なくとも2枚の負レンズからなる第1anレンズ群と少なくとも1枚の正レンズからなる第1apレンズ群からなり、前記第1anレンズ群の焦点距離をf1an、前記第1apレンズ群の焦点距離をf1apとしたとき、下記条件式(1)を満足することが望ましい。
0.27≦|f1an/f1ap|≦0.45 ・・・・・・・(1)
【0016】
また、前記第1bレンズ群に含まれる正レンズの合成焦点距離をf1bp、前記第1bレンズ群に含まれる負レンズの合成焦点距離をf1bnとしたとき、下記条件式(2)を満足することが望ましい。
1.5≦|f1bp/f1bn|≦3.5 ・・・・・・・(2)
【0017】
また、前記第3レンズ群が、物体側から順に、第3aレンズ群および第3bレンズ群を配列されてなり、前記第1レンズ群、前記第2レンズ群および前記第3aレンズ群の合成焦点距離がほぼ無限大となるように構成し、前記第3bレンズ群を光軸に沿って移動させることによりバックフォーカス長を調整することが望ましい。
【0018】
また、本発明による撮像装置は、上記いずれかのバックフォーカスの長い広角レンズを筐体内に収納してなることを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1には本発明の実施形態に係るバックフォーカスの長い広角レンズが示されている(後述する実施例1のレンズ構成が代表して示されている)。
【0020】
この広角レンズは、例えば、Eシネマ用の撮像カメラに搭載されるもので、物体側より順に、全体として負の屈折力を有する第1レンズ群G1、絞り3と該絞り3の前または後に近接して配置された、負レンズと正レンズを接合してなる接合レンズを少なくとも1組備えてなる第2レンズ群G2、および全体として正の屈折力を有する第3レンズ群G3が配列されてなるレトロフォーカスタイプの広角レンズである。また、前記第1レンズ群G1は、物体側から複数枚の負レンズと複数枚の正レンズをこの順に配列されてなるとともに、物体側から順に、少なくとも1枚の正レンズを有し全体として負の屈折力を有する第1aレンズ群G1a、少なくとも1組の正レンズおよび負レンズを有し全体として負の屈折力を有する第1bレンズ群G1b、少なくとも1組の正レンズおよび負レンズからなる接合レンズを備えた第1cレンズ群G1cからなるように構成されている。この広角レンズに入射した光束は、3色分解光学系(ローパスフィルタ等を含む)2を介して固体撮像素子の結像面1上に結像される。
【0021】
このように、本実施形態の広角レンズにおいては、第1レンズ群G1を物体側から複数枚(例えば3枚とする)の負レンズと複数枚(例えば2枚とする)の正レンズをこの順に配列するように構成しており、光線軌跡を結像面側からみた場合、複数枚の正レンズ(図1の広角レンズではL4、L5)によって一旦絞り込まれ、次に複数枚の負レンズ(図1の広角レンズではL1、L2、L3)によって大きく発散せしめられる状態となるため、前玉有効径を小さなものとしつつ広画角化を達成することができ、レンズ系全体のコンパクト化を達成することができる。
【0022】
また、この広角レンズは、無限遠物点から至近物点にフォーカスする際には、第1bレンズ群G1bを光軸Xに沿って物体側に移動させて行い、至近物点から無限遠物点にフォーカスする際には、第1bレンズ群G1bを光軸Xに沿って結像面側に移動させて行なうインナーフォーカスタイプとされており、第1bレンズ群G1bのみの移動によりフォーカシングを行なうように構成されているのでフォーカシングを行なうためのメカ的機構が簡易となり、製造コストも廉価となる。また、フォーカシングを行なう際に、物体距離の変化に伴なう像面特性が向上するとともに、フォーカシングに伴なう画角変動を抑制することができる。
【0023】
また、この広角レンズは、第1aレンズ群G1aが、物体側から順に、少なくとも2枚の負レンズからなる第1anレンズ群G1anと少なくとも1枚の正レンズからなる第1apレンズ群G1apからなり、前記第1anレンズ群G1anの焦点距離をf1an、前記第1apレンズ群G1apの焦点距離をf1apとしたとき、下記条件式(1)を満足するように構成されている。
0.27≦|f1an/f1ap|≦0.45 ・・・・・・・(1)
【0024】
この条件式(1)の下限を下回ると、物体距離の変化に伴なうコマ収差や歪曲収差の変動が大きくなり、フォーカシングによる性能の変化が大きくなる。一方、その上限を上回ると画角の変化に伴なうコマ収差の変動が大きくなり撮像画面全域で均一な性能を得ることが困難となる。
【0025】
またこの広角レンズは、第1bレンズ群G1bに含まれる正レンズの合成焦点距離をf1bp、第1bレンズ群G1bに含まれる負レンズの合成焦点距離をf1bnとしたとき、下記条件式(2)を満足するように構成されている。
1.5≦|f1bp/f1bn|≦3.5 ・・・・・・・(2)
【0026】
この条件式(2)の下限を下回ると,物体距離の変化に伴なうコマ収差の変動が大きくなり、フォーカシングによる性能の変化も大きくなる。一方、その上限を上回ると画角の変化に伴なうコマ収差の変動が大きくなり撮像画面全域で均一な性能を得ることが困難となる。
【0027】
また、前記第3レンズ群G3は、物体側から順に、第3aレンズ群G3aおよび第3bレンズ群G3bを配列されてなり、前記第1レンズ群G1、前記第2レンズ群G2および前記第3aレンズ群G3aの合成焦点距離がほぼ無限大となるように構成され、前記第3bレンズ群G3bを光軸Xに沿って移動させることによりバックフォーカス長を調整するように構成されている。
このように構成することにより、広角レンズをカメラ本体に接続した際に生じる光軸方向の機械的誤差を、機構的に複雑にすることなく容易に調整することが可能となる。
【0028】
【実施例】
<実施例1>
この実施例1に係る広角レンズは、前述したように図1に示す如き構成とされている。
【0029】
以下、詳細なレンズ構成を述べる。各レンズ群および各レンズは物体側より順にレンズ番号が増加するようになっている。
第1aレンズ群G1aは、凹面を結像面側に向けた負のメニスカスレンズからなる第1レンズL1、第2レンズ群L2、第3レンズL3および強い曲率の面を結像面側に向けた両凸レンズからなる第4レンズL4からなる。なお、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3により第1anレンズ群G1anが構成され、第4レンズL4により第1apレンズ群G1apが構成される。
【0030】
また、第1bレンズ群G1bはフォーカスレンズ群であって、凸面を結像面側に向けた正のメニスカスレンズからなる第5レンズL5および強い曲率の面を結像面側に向けた両凹レンズからなる第6レンズL6からなる。
また、第1cレンズ群G1cは、強い曲率の面を結像面側に向けた両凸レンズからなる第7レンズL7および強い曲率の面を物体側に向けた両凹レンズからなる第8レンズL8の接合レンズからなる。
【0031】
次に、第2レンズ群G2は、凹面を結像面側に向けた負のメニスカスレンズからなる第9レンズL9および強い曲率の面を物体側に向けた両凸レンズからなる第10レンズL10の接合レンズ、ならびに絞り3からなる。
【0032】
また、第3aレンズ群G3aは、凹面を物体側に向けた負のメニスカスレンズからなる第11レンズL11、両凸レンズからなる第12レンズL12、ならびに強い曲率の面を結像面側に向けた両凹レンズからなる第13レンズL13および両凸レンズからなる第14レンズL14の接合レンズからなる。
また、第3bレンズ群G3bは、バックフォーカス調整群であって、凹面を結像面側に向けた負のメニスカスレンズからなる第15レンズL15および強い曲率の面を物体側に向けた両凸レンズからなる第16レンズL16の接合レンズ、ならびに強い曲率の面を物体側に向けた両凸レンズからなる第17レンズL17からなる。
【0033】
この実施例1に係る広角レンズの各レンズ面の曲率半径R(mm)、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D(mm)、各レンズのd線における、屈折率Nおよびアッベ数νの値は表1に示すようになっている。なお表中の数字は物体側からの順番を表すものである(表2、3、4において同じ)。
【0034】
【表1】
【0035】
なお、実施例1における、全系の焦点距離f(mm)、バックフォーカスBf(mm)およびFナンバFNoを表5(後述する)に、第1anレンズ群の焦点距離f1an、第1apレンズ群の焦点距離f1ap、および条件式(1)に係る値を表6(後述する)に、第1bレンズ群に含まれる正レンズの合成焦点距離f1bp、第1bレンズ群に含まれる負レンズの合成焦点距離f1bnおよび条件式(2)に係る値を表7(後述する)に示す。表6、7に示すように条件式(1)、(2)はともに満足されている。
【0036】
また、実施例1の前玉有効径はφ50.0mmであり広角レンズのコンパクト化を図ることができる。
【0037】
さらに、図5は無限遠(INF)および至近(MOD;前玉から300mmの位置であり、フォーカス群の繰り出し量は1.31mmである)にフォーカス調整した場合の実施例1における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーション、倍率色収差)を示す収差図である。図5から明らかなように、実施例1の広角レンズは諸収差が良好なものとされている。
【0038】
<実施例2>
実施例2に係る広角レンズ構成を図2に示す。
【0039】
実施例2に係る広角レンズの構成および作用は実施例1とほぼ同様であるが、主として、第1aレンズ群G1aの物体側から3番目のレンズである第3レンズL3が強い曲率の面を結像面側に向けた両凹レンズからなり、第1bレンズ群G1bの物体側から1番目のレンズである第5レンズL5が強い曲率の面を結像面側に向けた両凸レンズからなり、第3aレンズ群G3aが5枚のレンズL11〜L15から構成されている点等において異なっている。
【0040】
この実施例2に係る広角レンズの各レンズ面の曲率半径R(mm)、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D(mm)、各レンズのd線における、屈折率Nおよびアッベ数νの値は表2に示すようになっている。
【0041】
【表2】
【0042】
なお、実施例2における、全系の焦点距離f(mm)、バックフォーカスBf(mm)およびFナンバFNoを表5(後述する)に、第1anレンズ群の焦点距離f1an、第1apレンズ群の焦点距離f1ap、および条件式(1)に係る値を表6(後述する)に、第1bレンズ群に含まれる正レンズの合成焦点距離f1bp、第1bレンズ群に含まれる負レンズの合成焦点距離f1bnおよび条件式(2)に係る値を表7(後述する)に示す。表6、7に示すように条件式(1)、(2)はともに満足されている。
【0043】
また、実施例2の前玉有効径はφ61.6mmであり広角レンズのコンパクト化を図ることができる。
【0044】
さらに、図6は無限遠(INF)および至近(MOD;前玉から300mmの位置であり、フォーカス群の繰り出し量は0.77mmである)にフォーカス調整した場合の実施例2における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーション、倍率色収差)を示す収差図である。図6から明らかなように、実施例2の広角レンズは諸収差が良好なものとされている。
【0045】
<実施例3>
実施例3に係る広角レンズ構成を図3に示す。
【0046】
実施例3に係る広角レンズの構成および作用は実施例1とほぼ同様であるが、主として、第1aレンズ群G1aの物体側から4番目のレンズである第4レンズL4が凸面を結像面側に向けた正のメニスカスレンズである点等において異なっている。
【0047】
この実施例3に係る広角レンズの各レンズ面の曲率半径R(mm)、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D(mm)、各レンズのd線における、屈折率Nおよびアッベ数νの値は表3に示すようになっている。
【0048】
【表3】
【0049】
なお、実施例3における、全系の焦点距離f(mm)、バックフォーカスBf(mm)およびFナンバFNoを表5(後述する)に、第1anレンズ群の焦点距離f1an、第1apレンズ群の焦点距離f1ap、および条件式(1)に係る値を表6(後述する)に、第1bレンズ群に含まれる正レンズの合成焦点距離f1bp、第1bレンズ群に含まれる負レンズの合成焦点距離f1bnおよび条件式(2)に係る値を表7(後述する)に示す。表6、7に示すように条件式(1)、(2)はともに満足されている。
【0050】
また、実施例3の前玉有効径はφ58.0mmであり広角レンズのコンパクト化を図ることができる。
【0051】
さらに、図7は無限遠(INF)および至近(MOD;前玉から300mmの位置であり、フォーカス群の繰り出し量は0.62mmである)にフォーカス調整した場合の実施例3における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーション、倍率色収差)を示す収差図である。図7から明らかなように、実施例3の広角レンズは諸収差が良好なものとされている。
【0052】
<実施例4>
実施例4に係る広角レンズ構成を図4に示す。
【0053】
実施例4に係る広角レンズの構成および作用は実施例1とほぼ同様であるが、主として、第1bレンズ群G1bの物体側から1番目のレンズである第5レンズL5が強い曲率の面を結像面側に向けた両凸レンズからなり、第3aレンズ群G3aが3枚のレンズL11〜L13から構成されている点等において異なっている。
【0054】
この実施例4に係る広角レンズの各レンズ面の曲率半径R(mm)、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D(mm)、各レンズのd線における、屈折率Nおよびアッベ数νの値は表4に示すようになっている。
【0055】
【表4】
【0056】
なお、実施例4における、全系の焦点距離f(mm)、バックフォーカスBf(mm)およびFナンバFNoを表5(後述する)に、第1anレンズ群の焦点距離f1an、第1apレンズ群の焦点距離f1ap、および条件式(1)に係る値を表6(後述する)に、第1bレンズ群に含まれる正レンズの合成焦点距離f1bp、第1bレンズ群に含まれる負レンズの合成焦点距離f1bnおよび条件式(2)に係る値を表7(後述する)に示す。表6、7に示すように条件式(1)、(2)はともに満足されている。
【0057】
また、実施例4の前玉有効径はφ61.7mmであり広角レンズのコンパクト化を図ることができる。
【0058】
さらに、図8は無限遠(INF)および至近(MOD;前玉から300mmの位置であり、フォーカス群の繰り出し量は0.64mmである)にフォーカス調整した場合の実施例4における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーション、倍率色収差)を示す収差図である。図8から明らかなように、実施例4の広角レンズは諸収差が良好なものとされている。
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
なお、本発明のバックフォーカスの長い広角レンズとしては、上記実施例のものに限られるものではなく種々の態様の変更が可能であり、例えば各レンズ群を構成するレンズの形状、およびレンズの枚数は適宜選択し得る。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズによれば、第1レンズ群を、物体側から複数枚の負レンズと複数枚の正レンズをこの順に配列するように構成しているため、光線軌跡を結像面側からみた場合、複数枚の正レンズによって一旦絞り込まれ、次に複数枚の負レンズによって大きく発散せしめられる状態となるため、前玉有効径を小さなものとしつつ広画角化を達成することができ、レンズ系全体のコンパクト化を達成することができる。
【0064】
また、この広角レンズは、無限遠物点から至近物点にフォーカスする際には、第1bレンズ群のみを光軸に沿って物体側に移動させて行なうインナーフォーカスタイプとすることで、フォーカシングを行うためのメカ的機構が簡易となり、製造コストも廉価となる。また、フォーカシングを行なう際に、物体距離の変化に伴なう像面特性が向上し、フォーカシングに伴なう画角変動を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1に係るバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズの構成図
【図2】 本発明の実施例2に係るバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズの構成図
【図3】 本発明の実施例3に係るバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズの構成図
【図4】 本発明の実施例4に係るバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズの構成図
【図5】 無限遠(INF)および至近(MOD)にフォーカス調整した場合の実施例1における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーション、倍率色収差)を示す収差図
【図6】 無限遠(INF)および至近(MOD)にフォーカス調整した場合の実施例2における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーション、倍率色収差)を示す収差図
【図7】 無限遠(INF)および至近(MOD)にフォーカス調整した場合の実施例3における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーション、倍率色収差)を示す収差図
【図8】 無限遠(INF)および至近(MOD)にフォーカス調整した場合の実施例4における諸収差(球面収差、非点収差、ディストーション、倍率色収差)を示す収差図
Claims (5)
- 物体側より順に、全体として負の屈折力を有する第1レンズ群、絞りと該絞りの前後近傍に配置された、負レンズと正レンズを接合してなる接合レンズを少なくとも1組備えてなる第2レンズ群、および全体として正の屈折力を有する第3レンズ群が配列されてなるレトロフォーカスタイプの広角レンズにおいて、
前記第1レンズ群が、物体側から複数枚の負レンズと複数枚の正レンズをこの順に配列されるとともに、物体側から順に、少なくとも1枚の正レンズを備え全体として負の屈折力を有する第1aレンズ群、少なくとも1組の正レンズおよび負レンズを備え全体として負の屈折力を有する第1bレンズ群、少なくとも1組の正レンズおよび負レンズからなる接合レンズを備えた第1cレンズ群からなるように構成され、
前記第1bレンズ群は、物体側からこの順に配列された、凸面を結像面側に向けた正レンズと物体側の面よりも強い曲率の面を結像面側に向けた負レンズとからなり、
無限遠物点から至近物点にフォーカスする際には、前記第1bレンズ群を物体側に繰り出して行うことを特徴とするバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズ。 - 前記第1aレンズ群は、物体側から順に、少なくとも2枚の負レンズからなる第1anレンズ群と少なくとも1枚の正レンズからなる第1apレンズ群からなり、前記第1anレンズ群の焦点距離をf1an、前記第1apレンズ群の焦点距離をf1apとしたとき、下記条件式(1)を満足することを特徴とする請求項1記載のバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズ。
0.27≦|f1an/f1ap|≦0.45 ・・・・・・・(1) - 前記第1bレンズ群に含まれる正レンズの合成焦点距離をf1bp、前記第1bレンズ群に含まれる負レンズの合成焦点距離をf1bnとしたとき、下記条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1または2記載のバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズ。
1.5≦|f1bp/f1bn|≦3.5 ・・・・・・・(2) - 前記第3レンズ群は、物体側から順に、第3aレンズ群および第3bレンズ群を配列されてなり、前記第1レンズ群、前記第2レンズ群および前記第3aレンズ群の合成焦点距離がほぼ無限大となるように構成し、前記第3bレンズ群を光軸に沿って移動させることによりバックフォーカス長を調整することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載のバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズ。
- 請求項1から4のうちいずれか1項記載のバックフォーカスの長い固定焦点の広角レンズを筐体内に収納してなることを特徴とする撮像装置。
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