本発明にかかる実施の形態を説明するにあたって、まず、本明細書において用いられている「用語」の定義について説明する。
用語「レシピ」とは、動作プログラムのことであり、例えば、部品実装装置又は部品実装方法において行なわれる動作を自動実行する際に実行される動作プログラムのことである。
用語「タイミング信号」とは、上記レシピを実行している際に、その動作内容に応じて出力(若しくは送信)される信号であって、出力先に自己の動作の実施内容あるいは実施状態を伝達することを目的としたメッセージ信号のことである。なお、以下に説明する本発明の夫々の実施の形態においては、このタイミング信号を、「イベント」と呼んで用いている。
用語「部品」とは、電子部品、機械部品、光学部品などを含む部品であって、例えば、電子部品としては、チップ部品(抵抗体やコンデンサ等)やIC部品(ベアICチップやIC内蔵部品等)、さらに、電子回路接続型部品(コネクタ部品等)がある。また、このような部品は、主として、キャリアテープに収納されて、部品供給カセット等により供給される場合、あるいは、部品供給トレイ上に配置収納された状態で供給される場合がある。
用語「基板」とは、その内部や表面に電子回路や光電回路等が形成された回路形成体のことであって、樹脂基板、紙−フェノール基板、セラミック基板、ガラス・エポキシ(ガラエポ)基板、フィルム基板などの回路基板、単層基板若しくは多層基板などの回路基板、部品、筐体、又は、フレームなど、回路が形成されている対象物を意味するものである。
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる部品実装装置の一例である部品実装装置100の構成を模式的に示す模式説明図を図1に示す。
(部品実装装置の全体構成)
図1に示すように、部品実装装置100は、複数の部品1を取り出し可能に供給する部品供給部の一例である部品供給装置6と、上記供給される夫々の部品1が実装される基板2を解除可能に保持する基板保持部の一例であるステージ5と、部品供給装置6から取り出し可能に供給される夫々の部品1を保持して取り出すとともに、ステージ5にて保持された基板2に、上記保持した夫々の部品1の実装を行なうヘッド部4と、このヘッド部4の基板2の大略表面沿いの方向の移動動作を行う基板移動装置の一例であるXYロボット8とを備えている。
また、図1に示すように、ヘッド部4の下面には、部品1をその上面において解除可能に保持する部品保持部材の一例である吸着ノズル3を複数本、例えば、10本備えられている。また、夫々の吸着ノズル3は、個別に部品1の吸着又は吸着保持解除を行うことが可能となっているとともに、基板2の表面に大略直交する方向沿いに、夫々の吸着ノズル3を個別に昇降させることが可能となっている。
また、図1に示すように、XYロボット8は、ヘッド部4を支持するとともに、図示X軸方向にヘッド部4を進退移動させるX軸ロボット8aと、X軸ロボット8aを支持するとともに、図示Y軸方向にX軸ロボット8aを進退移動させるY軸ロボット8bとを備えている。これにより、ヘッド部4、すなわち、ヘッド部4が備える夫々の吸着ノズル3の図示X軸方向又はY軸方向の移動を行なうことが可能となっている。なお、図示X軸方向とY軸方向とは、基板2の表面に大略平行な方向であって、かつ、互いに直交する方向である。
また、部品供給装置6は、複数の部品1をキャリアテープに取り出し可能に収納されたいわゆるテーピング部品を装備するとともに、上記装備されたテーピング部品を送り移動させることで、収納されている部品1を取り出し可能な状態とさせる複数の部品供給カセット7を、図示X軸方向沿いに互いに隣接させて備えている。また、夫々の部品供給カセット7は、上記取り出し可能な状態とされる部品1を位置させる部品取出し位置7aを、X軸方向に沿って1列に配列されるように配置されて備えている。
また、ステージ5は部品実装装置100の機台10上に配置されており、また、ステージ5の上部には、図示X軸方向右側より基板2をステージ5に搬送して供給するとともに、ステージ5より図示X軸方向左側へ基板2を搬送して排出する基板搬送装置9が備えられている。
また、部品実装装置100は、部品実装装置100が備える夫々の構成部であるヘッド部4、部品供給装置6、XYロボット8、基板搬送装置9等の夫々の動作を互いに関連付けながら、夫々の動作の制御を行う制御システムを備えているが、この制御システムの構成についての詳細な説明は、後述するものとする。
(ヘッド部と部品供給装置の構成)
次に、部品実装装置100が備えるヘッド部4の夫々の吸着ノズル3と、部品供給装置6の夫々の部品供給カセット7との互いの配置関係について、図2に示す一部透過の模式平面説明図を用いて説明する。なお、図2の模式平面説明図においては、説明の理解を容易とするために、部品供給装置6が装備する複数の部品供給カセット7のうちの6台の部品供給カセット7を表示しているが、部品供給装置6における部品供給カセット7の装備台数は、このような台数のみに限定されるものではなく、その実施態様に応じて、自由に決定できるものである。
図2に示すように、ヘッド部4は、10本の吸着ノズル3を、図示X軸方向に5本、図示Y軸方向に2本、すなわち、5行2列(あるいは、2行5列)に配列させて備えている。また、図示X軸方向には、夫々の吸着ノズル3が一定の間隔ピッチP1にて配列されている。具体的には、図2において、図示Y軸方向下側の列には、合計5本の吸着ノズル3として、図示左側より右側に向けて順に、吸着ノズル3−1、3−2、3−3、3−4、及び3−5が配列されている。また、図示Y軸方向上側の列には、合計5本の吸着ノズル3として、図示左側より右側に向けて順に、吸着ノズル3−6、3−7、3−8、3−9、及び3−10が配列されている。なお、後述において、ヘッド部4が備える夫々の吸着ノズル3を特定して用いる場合には、「吸着ノズル3−N」(ただし、Nは、1〜10のいずれかの整数)として特定するものとし、一方、夫々の吸着ノズル3を特定せずに用いる場合には、単に「吸着ノズル3」と用いるものとする。
一方、部品供給装置6においては、複数の部品供給カセット7の一例として、6台の部品供給カセット7が、その上記テーピング部品の上記送りの方向を図示Y軸方向沿いとして、かつ、夫々が備える部品取出し位置7aが図示X軸方向に沿って一定の間隔ピッチP2にて配列されている。具体的には、図2において、図示左側より右側に向けて順に、部品供給カセット7−1、7−2、7−3、7−4、7−5、7−6、及び7−7が配列されている。なお、後述において、部品供給装置6が備える夫々の部品供給カセット7を特定して用いる場合には、「部品供給カセット7−Z」(ただし、Zは、1〜6のいずれかの整数)として特定するものとし、一方、夫々の部品供給カセット7を特定せずに用いる場合には、単に「部品供給カセット7」と用いるものとする。
また、夫々の吸着ノズル3の間隔ピッチP1は、夫々の部品供給カセット7(あるいは、夫々の部品取出し位置7a)の間隔ピッチP2の整数倍の寸法となっており、本第1実施形態においては、例えば、間隔ピッチP1と間隔ピッチP2とが同じ寸法となっている。ヘッド部4と部品供給装置6とがこのような関係を有していることにより、複数の吸着ノズル3を複数の部品取出し位置7aの上方に、同時に配置させることが可能となり、複数の吸着ノズル3による複数の部品1の同時的な保持取出しを行なうことが可能となっている。
(部品実装装置による部品実装動作)
次に、このような構成の部品実装装置100において行なわれる夫々の部品1の基板2への実装動作について説明する。なお、このような実装動作は、部品実装装置100における上記制御システムにより制御されながら行なわれる。
まず、図1に示す部品実装装置100において、夫々の部品1が実装されるべき基板2が、基板搬送装置9に供給されて、基板搬送装置9により図示X軸方向右側より左側に向けて搬送されて、ステージ5により解除可能に保持される。なお、このように基板搬送装置9に供給されるような基板2には、例えば、基板2の表面に形成されている多数の電極(図示しない)上に、部品1を接合可能とすべく、半田等の接合材料が印刷等により供給されており、部品実装装置100において、夫々の部品1を当該基板2の上記夫々の電極上に、接合材料を介在させて実装することで、夫々の部品1と基板2の上記夫々の電極との電気的な導通を得ることができる。
次に、部品供給装置6の上方に向けてのヘッド部4の移動動作が、XYロボット8により開始される。このヘッド部4の移動動作と並行して、ヘッド部4においては、部品1の吸着保持による取り出しを行なう1本又は複数本の吸着ノズル3の予備的な下降動作が開始される。この予備的な下降動作は、吸着ノズル3による部品1の保持取出しの際に、当該保持取出しに要する時間を短縮化させるべく、吸着ノズル3の先端部が、部品実装装置100の機台10上に配置された他の構成部に干渉しないような高さ位置まで下降されて、当該高さ位置を下降待機高さ位置(部品保持待機高さ位置の一例でもある)として下降待機状態とされる。さらに、このヘッド部4の移動動作及び上記1本又は複数本の吸着ノズル3の予備的な下降動作と並行して、部品供給装置6において、夫々の部品1の保持取出しが行なわれる1又は複数の部品供給カセット7における部品取出し位置7aへの部品1の送り動作が開始される。
その後、XYロボット8によるヘッド部4の上記移動動作が完了して、上記1本又は複数本の吸着ノズル3が、上記1又は複数の部品供給カセット7の部品取出し位置7aの上方に位置されるとともに、上記1又は複数の部品供給カセット7において、夫々の部品取出し位置7aに位置された部品1が、例えば、シャッター(図示しない)を開く、あるいは、キャリアテープを覆っているカバーテープを剥離して、収納されている部品1を露出させる等により取り出し可能な状態とされる。さらに、これらの動作とともに、ヘッド部4においては、上記下降待機状態とされている上記1本又は複数本の吸着ノズル3の下降動作が開始される。そして、上記1本又は複数本の吸着ノズル3の先端部が夫々の部品1の上面に当接されると、それとともに、吸着保持が行なわれる。その後、上記夫々の吸着ノズル3の上昇動作が開始されて、夫々の部品1の部品供給カセット7よりの保持取出しが行なわれる。なお、その後、さらにヘッド部4が備える他の吸着ノズル3により部品1の取り出しを行なうような場合にあっては、上述の動作を繰り返すことにより行なうことができる。
次に、XYロボット8によるヘッド部4の基板2の上方への移動動作が開始される。また、このヘッド部4の移動動作とともに、最初に部品1の実装動作を行う吸着ノズル3の上記予備的な下降動作が開始されて、上記下降待機高さ位置にて下降待機された状態とされる。その後、上記吸着ノズル3により吸着保持された部品1と、基板2における当該部品1の実装位置との位置合わせが、XYロボット8によるヘッド部4の移動動作により行なわれる。そして、上記吸着ノズル3が上記下降待機高さ位置からさらに下降動作されて、部品1が基板2の実装位置に実装される。その後、上記吸着ノズル3による部品1の吸着保持が解除されて、それとともに、吸着ノズル3が上昇される。なお、ヘッド部4のその他の吸着ノズル3により保持されている部品1の基板2への実装を行なうような場合にあっては、上述の動作を繰り返すことにより行なうことができる。
その後、このような部品保持取出し動作及び部品実装動作を複数回繰り返して行うことにより、複数の部品1が基板2に実装される。夫々の部品1が実装された基板2は、ステージ5による保持が解除されて、基板搬送装置9により図示X軸方向左向きに搬送されて、部品実装装置100より排出される。
なお、図1においては示していないが、部品供給カセット7から取り出されて吸着ノズル3により吸着保持されている部品1の保持状態の画像を撮像可能な部品撮像装置が、機台10の上面に備えられているような場合であってもよい。このような場合にあっては、当該部品撮像装置により撮像された画像に基づいて、吸着ノズル3による部品1の保持状態を認識することができ、当該認識結果に基づいて、部品1の保持姿勢の補正を行ない得る。
また、ヘッド部4が備える夫々の吸着ノズル3は、その軸心回りに回転移動可能とされているような場合であってもよい。このような場合にあっては、部品1の保持取出し後、実装動作までの間に、基板2への部品1の装着位置や姿勢に基づいて、上記回転移動が行なわれる。
(制御システムの構成)
次に、部品実装装置100が備える上記制御システムの構成について説明する。部品実装装置100が備える制御システムは、従来の部品実装装置における制御方式のように、1つの制御装置で、複数の構成部の動作の制御を集中的に行なう「集中制御方式」を採用するのではなく、夫々の構成部自体に個別に分散ユニットと呼ばれる制御装置を備えさせて、夫々の分散ユニット同士を対話(すなわち通信)させて、互いの動作を関連付けながら、夫々の構成部の制御を行うという「分散制御方式」を用いている。このような上記制御システムの一例である分散制御システム101の構成を模式的に示す制御ブロック図を図3に示す。なお、図3に示す制御ブロック図においては、その構成の説明の理解を容易とするため、分散制御システム101が備える主要な構成部分のみを示している。従って、分散制御システム101の詳細な構成については、図3に示すものに限定して解釈されるものではない。
図3に示すように、分散制御システム101は、ヘッド部4に備えられて、かつ、ヘッド部4における動作の制御を行うヘッド部制御部の一例であるヘッド部用分散ユニット40と、部品供給装置6に備えられて、かつ、部品供給装置6における動作の制御を行う部品供給部制御部の一例である部品供給用分散ユニット50と、XYロボット8に備えられて、かつ、XYロボット8における動作の制御を行う移動装置制御部の一例であるXYロボット用分散ユニット60とを備えている。また、分散制御システム101は、夫々の分散ユニット(ヘッド部用分散ユニット40、部品供給用分散ユニット50、及びXYロボット用分散ユニット60の夫々を総称したもののことをいう。以降同じ。)の制御に関して統括的な役割を担う主制御部の一例であるMMC30を備えており、MMC30と夫々の分散ユニットとの間には、分散ユニットの一例であり、MMC30と夫々の分散ユニットとの間の情報の通信の制御(通信インターフェース)を行う通信制御部35(例えば、CAN通信制御部)が備えられている。なお、夫々の分散ユニットは、部品実装装置100が備える夫々の構成部(例えば、ヘッド部等)に備えられているのに対して、MMC30は、部品実装装置100の装置本体側に備えられている。
また、分散制御システム101における情報通信には、一例として、CAN(Controller Area Network)と呼ばれるシリアル・バス通信規格を用いる。このCANを用いることにより、夫々の分散ユニットやMMC30いずれかがマスタとなって、一対多(すなわち、上記マスタ対それ以外)の通信を行うことが可能となる。また、受渡しが行なわれる情報であるメッセージを、受信側の入出力部でフィルタリングすることにより、擬似的に、一対一の通信を行なうことも可能である。すなわち、夫々の分散ユニットとMMC30との間で対話するように、情報の通信を行なうことが可能となり、後述するようなレシピやイベントの送信に適している。なお、分散制御システムにおいて、1つのみの分散ユニットが備えられているような場合にあっては、上記のような一対多の通信は必要ではないので、例えば、RS422のような一対一のシリアル通信方式を採用することができる。
図3に示すように、MMC30は、夫々の分散ユニットにおいて行なわれる夫々の動作制御を実施するための動作プログラムである夫々のレシピを作成するレシピ作成部33と、当該作成された夫々のレシピを通信制御部35を通じて、夫々の分散ユニットに送信可能であって、かつ、夫々の分散ユニットから送信される情報を通信制御部35を通じて受信可能であるレシピ送信部の一例である入出力部32とを備えている。さらに、MMC30は、レシピ作成部33にて作成された夫々のレシピ、あるいは、入出力部32から入力された情報等を、取り出し可能に記憶する主メモリ部34と、レシピ作成部33におけるレシピ作成動作、入出力部32における情報の入出力、及び主メモリ部34におけるデータの記憶/読み出し等の夫々の動作を統括的に行う主CPU31が備えられている。
また、図3に示すように、ヘッド部用分散ユニット40は、MMC30から送信されるレシピ等の情報を入力(受信)可能であって、かつ、他の分散ユニットやMMC30に情報を出力(送信)可能な入出力部42と、上記レシピ等の情報やデータを取り出し可能に記憶するメモリ部43とを備えている。さらに、ヘッド部用分散ユニット40は、送信されたレシピを実行するレシピ実行部としての機能を備えているヘッド用CPU41と、当該レシピの実行に基づいて、ヘッド部4の動作を駆動制御するヘッド用ドライバ45と、実際のヘッド部4の動作の駆動量を検出するセンサ部44とを備えている。なお、ヘッド用CPU41は、センサ部44により検出された駆動量に基づいて、ヘッド用ドライバ45による駆動制御量の制御を行う。
さらに、ヘッド部用分散ユニット40において、ヘッド用CPU41は、レシピ実行に基づくヘッド部4の駆動制御量のセンサ部44の検出結果に基づいて、その動作状態を示す信号である「イベント」と呼ばれるタイミング信号を作成するとともに、当該作成されたイベントを入出力部42より他の分散ユニットに送信する機能を有している(すなわち、イベント作成部あるいはタイミング信号作成部としての機能をも有している)。また、逆に、他の分散ユニットにて作成されて送信されたイベントに基づいて、ヘッド用CPU41は、メモリ部43に記憶されているレシピの実行を開始、あるいは終了させる等の動作を行う機能をも有している。
また、図3に示すように、ヘッド部用分散ユニット40以外の夫々の分散ユニットも同様な構成を有している。
部品供給用分散ユニット50は、レシピの実行及びイベントの作成を行なう部品供給用CPU51と、部品供給装置6の動作を駆動制御する部品供給用ドライバ55と、部品供給装置6の実際の駆動量の検出を行なうセンサ部54と、レシピ等のデータを取り出し可能に記憶するメモリ部53と、レシピやイベント等の情報の送受信を行う入出力部52とを備えている。なお、部品供給装置6において、駆動されるモータ等が存在しないような場合も考えられるため、そのような場合にあっては、部品供給用分散ユニット50に、部品供給用ドライバ55が備えられていないような場合であってもよい。
また、XYロボット用分散ユニット60は、レシピの実行及びイベントの作成を行うXYロボット用CPU61と、XYロボット8の動作を駆動制御するXYロボット用ドライバ65と、XYロボット8の実際の駆動量の検出を行なうセンサ部64と、レシピ等のデータを取り出し可能に記憶するメモリ部63と、レシピやイベント等の情報の送受信を行う入出力部62とを備えている。
なお、例えば、入出力部32、42、52、及び62の夫々に、CAN通信機能を有するICを備えさせることで、分散制御システム101において、上記CAN通信を行なうことが可能となる。
また、分散制御システム101においては、上述のように、CAN通信を行うような場合について説明したが、このような場合にのみ限定されるものではなく、例えば、CAN以外の通信が用いられるような場合であっても構わない。
(部品実装装置における動作制御の内容)
次に、このような構成を有する分散制御システム101において行なわれる制御動作について説明するに先立って、部品実装装置100において行なわれる部品実装のための複数の動作(あるいは工程)の内容について、図4に示す部品実装の手順を示すフローチャートを用いて説明する。
図4に示すフローチャートにおいては、部品供給装置6により供給された部品1がヘッド部4により保持取出しされて、XYロボット8により移動され、基板2へ実装されるまでにおけるヘッド部4の動作(図4のフローチャートの中央の列に示すフロー)、部品供給装置6の動作(同図左端の列に示すフロー)、及びXYロボット8の動作(同図右端の列に示すフロー)を示している。
まず、ヘッド部4の動作に注目すると、部品実装においてヘッド部4が行なう動作には、大きく2つの工程がある。1つの工程は、吸着ノズル3により部品1を吸着保持して部品供給カセット7から取り出す動作が行なわれる「部品保持取出し工程」であり、もう1つの工程は、当該吸着保持された部品1を基板2に実装する動作が行なわれる「部品実装工程」である。
さらに、図4に示すように、この部品保持取出し工程には、上述した吸着ノズル3の上記予備下降動作である「部品保持準備動作」(ステップS1)と、上記予備下降動作が行われて、下降待機高さ位置に位置された状態の吸着ノズル3をさらに下降させて、部品1の吸着保持を行ない、その後上昇して部品1の取り出しを行なう動作である「部品保持本動作」(ステップS2)とを含んでいる。このような部品保持取出し工程(すなわち、ステップS1及びS2)が行なわれると、ステップS3において、次の部品保持取出し工程を行なうかどうかが判断されて、実施されるべきすべての部品保持取出し工程が完了するまで、ステップS1及びS2が繰り返される。すべて完了すると、部品実装工程が開始される。
また、図4に示すように、部品実装工程には、上記部品1を保持している状態の吸着ノズル3の予備的な下降動作である「部品実装準備動作」(ステップS4)と、上記予備的な下降動作が行われて、下降待機高さ位置に位置された状態の吸着ノズル3をさらに下降させて、部品1の基板2への接合を行なうとともに、吸着ノズル3による吸着保持を解除して、吸着ノズル3を上昇させる部品1の実装を行なう動作である「部品実装本動作」(ステップ5)とを含んでいる。このような部品実装工程(すなわち、ステップS4及びS5)が行なわれると、ステップS6において、次の部品実装工程を行なうかどうかが判断されて、実施されるべきすべての部品実装工程が完了するまで、ステップS4及びS5が繰り返される。すべて完了すると、ヘッド部4による動作が完了したこととなる。
次に、部品供給装置6の動作に注目すると、部品実装において部品供給装置6より部品1を取り出し可能に供給する動作が行なわれる「部品供給工程」が、部品供給装置6にて行なわれる。図4に示すように、部品供給工程には、上述した部品供給カセット7における部品取出し位置7a(あるいは、その近傍)への部品1の送り動作に代表される「部品供給準備動作」(ステップS11)と、上記部品取出し位置7a(若しくはその近傍)に位置された部品1を、例えばシャッターを開く等(若しくはその近傍より部品取出し位置7aに位置させて、シャッターを開く等)により取り出し可能な状態とさせる動作である「部品供給本動作」(ステップS12)とを含んでいる。このような部品供給工程(すなわち、ステップS11及びS12)が行なわれると、ステップS13において、次の部品供給工程を行なうかどうかが判断されて、実施されるすべての部品供給工程が完了するまで、ステップS11及びS12が繰り返される。すべて完了すると、部品供給工程が完了し、部品供給装置6による動作が完了したこととなる。
次に、XYロボット8の動作に注目すると、部品実装においてXYロボット8が行なう動作には、大きく2つの工程がある。1つの工程は、ヘッド部4を部品供給装置6の上方に向けて移動させる動作である「部品保持取出し工程のためのヘッド移動工程」(ステップS21)であり、もう1つの工程は、ヘッド部4を基板2の上方に向けて移動させる動作である「部品実装工程のためのヘッド移動工程」(ステップS23)である。
図4に示すように、ステップS21にて、部品保持取出し工程のためのヘッド移動工程が行なわれると、ステップS22において、次の部品保持取出しのためのヘッド移動工程を行なうかどうかが判断されて、実施されるべきすべての上記工程が完了するまで、ステップS21が繰り返される。すべて完了すると、次の工程である部品実装工程のためのヘッド移動工程(ステップS23)が開始される。
ステップS23にて、部品実装工程のためのヘッド移動工程が行なわれると、ステップS24において、次の部品実装工程のためのヘッド移動工程を行なうかどうかが判断されて、実施されるべきすべての上記工程が完了するまで、ステップS23が繰り返される。すべて完了すると、XYロボット8による動作が完了したこととなる。
(分散制御システムの制御動作)
次に、このような分散制御システム101において行なわれる部品実装における主要な制御動作について以下に説明する。
(部品保持取出し工程における制御動作)
まず、ヘッド部4による部品供給装置6からの部品1の部品保持取出し工程が行なわれる場合における、MCC30、ヘッド部用分散ユニット40、及び部品供給用分散ユニット50の夫々の情報通信、すなわち、レシピやイベントの受渡し状態を模式的に示す模式説明フロー図を図5及び図6に示し、これらの動作手順のフローチャートを図7に示す。なお、以下の説明においては、複数のレシピ及びイベントが取り扱われるが、上記複数のレシピをR1〜R3で示し、上記複数のイベントをI1〜I7で示す。また、図5及び図6においては、ヘッド部4が備える10本の吸着ノズル3を特定して用いる場合には、例えば、吸着ノズル3−1については、ノズル番号として「N=1」と表示しており、また、部品供給装置6が備える6台の部品供給カセット7を特定して用いる場合には、例えば、部品供給カセット7−2については、カセット番号として「Z=2」と表示している。
まず、図7におけるステップS31にて、MMC30においてヘッド部用分散ユニット40及び部品供給用分散ユニット50で実施されるべき複数のレシピが作成され、ステップS32にて、作成された夫々のレシピが、MMC30から夫々の分散ユニット40及び50に送信される。
具体例を挙げて説明すると、図5に示すように、例えば、ヘッド部4が備える1又は複数の吸着ノズル3に、部品1を3回の部品保持取出し工程を行なって、夫々の部品1を保持取出しさせた後に、ヘッド部4による部品実装工程を実施するような場合にあっては、MMC30にて、夫々の部品保持取出し工程毎にレシピを作成、すなわち、3つのレシピR1、R2、及びR3を作成する。
部品供給用分散ユニット50に送信される部品供給工程用のレシピR1には、1回目に実施される部品保持取出し工程にて部品1が取り出されるべき部品供給カセット7(あるいは、部品取出し位置7a)を部品供給用分散ユニット50にて認識することができるように、カセット番号の情報が、例えば、「Z=1、2、3」(この場合、部品供給カセット7−1、7−2、7−3を示している)というように含まれて作成されている。同様に、レシピR2には、次の部品保持取出し工程にて部品1が取り出されるべきカセット番号の情報が、「Z=4、5」と、レシピR3には、「Z=1、3、5」との情報が含まれるように作成されている。
一方、ヘッド部用分散ユニット40に送信される部品保持取出し工程用のレシピR1には、1回目に実施される部品保持取出し工程にて部品1を吸着保持するべき吸着ノズル3を、ヘッド部用分散ユニット40にて認識することができるように、ノズル番号の情報が、例えば、「N=1、2、3」(この場合、吸着ノズル3−1、3−2、3−3を示している)というように含まれて作成されている。同様に、レシピR2には、「N=4、5」との情報が、レシピR3には、「N=6、8、10」との情報が含まれるように作成されている。また、ヘッド部用分散ユニット40に送信される夫々のレシピR1〜R3には、上記夫々のノズル番号の情報に加えて、さらに、夫々の吸着ノズル3がどの部品供給カセット7から部品1の保持取出しを行なうのかというカセット番号の情報も、図5に示すように含まれている。
また、MMC30より、夫々の分散ユニット40及び50にレシピを送信する順序は、いずれが先の場合であっても良いが、部品実装全体の動作を考えた場合、ヘッド部4は、部品保持取出し工程及び部品実装工程の2つの工程を行なう必要があるのに対して、部品供給装置6は、上記部品供給工程のみしか行なわないことを考慮すると、部品供給用分散ユニット40へのレシピ送信を先に行なう方が、レシピ送信に要する時間が、部品実装へ与える影響をより少なくすることができ、より効率的なレシピ送信とすることができるので好ましい。
次に、図7に示すように、ステップS33において、ヘッド部用分散ユニット40において、受信された夫々のレシピR1〜R3のうちの1番目に実施されるべきレシピR1の実行が開始されるとともに、ステップS40において、部品供給用分散ユニット50において、受信された夫々のレシピR1〜R3のうちの1番目に実施されるべきレシピR1の実行が開始される。なお、夫々の分散ユニット40及び50において、レシピR1の開始は、受信されたレシピR1に基づいて、夫々のCPU41又は51にて開始の可否が判断されて行なわれるような場合であってもよく、あるいは、MMC30から、夫々の分散ユニット40及び50に、夫々のレシピR1〜R3の送信とは別に、1番目のレシピR1を開始する指令信号を送信して、当該開始が行なわれるような場合であってもよい。
その後、図7に示すように、ヘッド部用分散ユニット40において、レシピR1に基づいて、部品保持準備動作が開始される(ステップS34)。具体的には、レシピR1に含まれているノズル番号の情報により、ノズル番号N=1、2、3の夫々の吸着ノズル3の上記下降待機高さ位置までの下降動作が開始される。一方、部品供給用分散ユニット50においては、レシピR1に基づいて、部品供給準備動作が開始される(ステップS41)。具体的には、レシピR1に含まれているカセット番号の情報により、カセット番号Z=1、2、3の夫々の部品供給カセット7において、部品取出し位置7aへの部品1の送り動作が開始される。その後、ステップS42にて、部品供給準備動作が完了したかどうか、すなわち、上記夫々の部品供給カセット7において、部品取出し位置7aに部品1が位置されたかどうかが判断されて、上記完了するまで、当該動作が継続して行なわれる。当該動作が完了したことが確認されると、ステップS43にて、夫々の部品供給カセット7は待機状態とされる。
ヘッド部用分散ユニット40においては、ステップS35にて、部品保持準備動作が完了したかどうか、すなわち、上記夫々の吸着ノズル3が上記下降待機高さ位置にまで下降されたかどうかが判断されて、上記完了するまで、当該動作が継続して行なわれる。当該動作が完了したことが確認されると、ステップS36にて、ヘッド部用分散ユニット40から部品供給用分散ユニット50へ、イベントI1が送信されて、上記動作が完了したことを部品供給用分散ユニット50に認識させる。なお、イベントI1を送信した後、ヘッド部用分散ユニット40は待機状態とされる(ステップS37)。
一方、部品供給用分散ユニット50においては、ヘッド部用分散ユニット40からのイベントI1の受信があるまで、上記待機状態が継続される(ステップS44)。イベントI1の受信があると、レシピR1に基づいて、部品供給本動作が実施される(ステップS45)。具体的には、夫々の部品供給カセット7において、部品取出し位置7aに位置された部品1を吸着ノズル3により取り出し可能な状態とさせるべく、例えば、部品1を保護しているシャッターを開状態とさせる等の動作を行う。その後、部品供給本動作が完了すると、部品供給用分散ユニット50よりヘッド部用分散ユニット50に、上記夫々の部品供給カセット7にて部品1が取り出し可能な状態とされた旨の情報を伝達するためのイベントI2が送信される(ステップS46)。なお、部品供給カセット7において、イベントI1の受信を受けてから、上記部品供給本動作を開始する理由としては、例えば、シャッターを開状態とさせたり、カバーテープの剥離動作を行うような部品供給本動作が行なわれると、部品1は取り出し可能な状態とされるものの、その反面、部品1が外界より影響が受けやすい状態とされるため、少しでもこの状態とされている時間を短くして、部品1が影響を受ける可能性を低減させるためである。このようにすることで、部品1の保持取出し精度を向上させることができる。
ヘッド部用分散ユニット40において、ステップS38にて、イベントI2の受信が確認されると、それまでの待機状態が解除されて、レシピR1に基づいて、部品保持本動作が実施される(ステップS39)。具体的には、上記下降待機高さ位置に位置された状態の吸着ノズル3−1、3−2、及び3−3がさらに下降されて、部品供給カセット7−1、7−2、及び7−3の夫々の部品取出し位置7aにて部品1を吸着保持し、その後、上昇されることにより、部品1の保持取出し動作が行なわれる。このように、イベントI2を受信したことをもって、部品保持本動作の実施を開始させることにより、確実に保持取出しが可能とされた部品1に対して、当該動作を施すことができ、吸着ノズル3の下降による部品供給カセット7との干渉等のエラー発生を未然に防止することができる。
その後、ステップS47にて次のレシピを実施するかどうかが判断される。ヘッド部用分散ユニット40、及び部品供給用分散ユニット50にて、既に受信しているレシピR2について、上述の夫々の手順と同様にレシピR2が実施される。図6に示すように、このレシピR2に基づく部品保持取出し工程の実施においては、「ノズル番号N=4、5」の夫々の吸着ノズル3による「カセット番号Z=4、5」の夫々の部品供給カセット7からの部品1の吸着保持取出しが行なわれる。また、その後のレシピR3に基づく部品保持取出し工程の実施においては、「ノズル番号N=6、8、10」の夫々の吸着ノズル3による「カセット番号Z=1、3、5」の夫々の部品供給カセット7からの部品1の吸着保持取出しが行なわれる。ヘッド部用分散ユニット40におけるレシピR3の実施が完了すると、当該完了したことの情報を伝達するためのイベントI7が、ヘッド部用分散ユニット40からMMC30に送信されて、MMC30にて、送信したすべてのレシピR1〜R3に基づく部品保持取出し工程が完了したことが認識される。
なお、ヘッド部用分散ユニット40と部品供給用分散ユニット50との間で受け渡されるイベントは、図5に示すように、イベントI1とI2の1つずつであるような場合に代えて、図6に示すように、複数のイベントI1〜I6の受渡しが行なわれるような場合であってもよい。例えば、このような夫々のイベントI1〜I6の内容やその送信のタイミングについて、図8に示す吸着ノズル3の先端高さ位置との関係で説明する。なお、図8は、任意の吸着ノズル3が部品保持取出し工程を行なう場合のその先端高さ位置H0〜H2と、時間T0〜T5との関係を示したものである。
図8に示すように、その昇降高さ位置(あるいは昇降位置)における上端高さ位置H2に位置された状態の吸着ノズル3が、時間区分T0〜T1にて、下降されて、時間T1にて下降待機高さ位置H1に位置される。このとき、例えば、この情報を部品供給用分散ユニット50に伝達するために、イベントI1が送信される。このイベントI1を受信した部品供給用分散ユニット50は、上記部品供給本動作を開始することができる。
その後、時間区分T2〜T3にて、上記下降待機高さ位置H1から吸着保持高さ位置H0に吸着ノズル3が下降されて部品1の吸着保持が行なわれるが、この時間T2のタイミングで、例えば、上記下降待機高さ位置H1からの最終的な下降を開始するという情報の伝達を目的としたイベントI3が送信される。部品供給カセット7に収容されている部品1の種類によっては、吸着保持の直前にカバーテープを剥離する等の保持可能な状態とさせる最終的な動作を行う必要がある場合も有るからである。
部品1を吸着保持した吸着ノズル3は、時間T4にて上昇が開始されて、上記上端高さ位置H2に位置されると、例えば、その旨の情報を伝達するイベントI5が部品供給用分散ユニット50に送信される。このイベントI5を受信した部品供給用分散ユニット50においては、次の部品1の送り動作を、このイベントI5に基づいて開始することができる。なお、夫々のイベントI1、I3、及びI5を受信した部品供給用分散ユニット50においては、夫々のイベントに基づいて何らかの動作を行う場合であってもよく、また、収納されている部品1の種類等により必要無い場合には、動作を行わない場合であってもよい。このような動作の要否は、受信しているレシピに基づいて、部品供給用CPU51にて判断される。また、受信した夫々のイベントI1、I3、及びI5に基づいて、何らかの動作を行った場合には、部品供給用分散ユニット50は、当該動作に基づくイベントI2、I4、及びI6を、図6に示すように、ヘッド部用分散ユニット40に送信するような場合であってもよい。
また、部品供給用分散ユニット50において、図3に示すブロック図のような構成を有する場合に代えて、図9のブロック図に示すように、さらに、複数のレシピをその内容に基づいて統合する機能を備えたレシピ統合部56が設けられているような場合であってもよい。このような場合にあっては、例えば、部品供給用分散ユニット50にて受信したレシピR1における「カセット番号Z=1、2、3」と、レシピR2における「カセット番号Z=4、5」とが、レシピ統合部56により統合されて、レシピR1及びR2を、統合されたレシピとして「カセット番号Z=1、2、3、4、5」の夫々の部品供給カセット7にて、部品1の送り動作が同時的に行なわれ、より効率的な部品送り動作を行うことができる。
(部品保持取出し工程におけるエラー発生の際の対応動作)
また、部品保持取出し工程において、MMC30からヘッド部用分散ユニット40及び部品供給用分散ユニット50の夫々にレシピR1〜R3の送信を行なった後に、動作エラーが発生した場合の対応制御動作例について、図10に示す模式フロー図に基づいて説明する。
図10に示すように、このような動作エラーとして、例えば、部品供給装置6におけるカセット番号Z=5の部品供給カセット7−5にて部品切れが発生した場合には、部品供給用分散ユニット50からヘッド部用分散ユニット40及びMMC30に、当該部品切れのエラー情報が送信される。このエラー情報を受けたヘッド部用分散ユニット40においては、例えば、上記レシピR1及びR2を実施済みで、レシピR3についてはまだ未実施の場合にあっては、受信されているレシピR3の「カセット番号Z=1、3、5」との情報と、上記エラー情報の「部品切れカセット番号Z=5」とが重複していることが、ヘッド用CPU41で判断されて、当該レシピR3の実施が開始待ちとされる。
一方、MMC30においては、上記エラー情報に基づいて、部品切れの発生したカセット番号Z=5の部品供給カセット7−5と同じ種類の部品1が収容されている部品供給カセット7や、吸着保持を行なう吸着ノズル3のノズル番号等が総合的に判断されて、例えば、レシピR3をレシピR3aと修正して(レシピ作成部33にて修正実施)、夫々の分散ユニット40及び50に送信する(入出力部32より送信)。
具体的には、MMC30においては、例えば、図3に示す主メモリ34、あるいは、図3においては示さないがデータベース部等において、予め、部品供給装置6におけるどの部品供給カセット7にどのような種類や特性を有する部品1が収納されているかを認識することができる情報が入力されており、当該エラー情報を受けて、主CPU31が主メモリ34あるいは上記データベース部より部品供給カセット7に関する情報が取り出されて、部品供給カセット7−5に収納されている部品1と、同じ種類、同じ特性を有する部品1、あるいは代替して使用可能な部品1がどの部品供給カセット7に収納されているかどうかが判断される。当該判断の結果に基づいて、レシピ作成部33にて、レシピR3がレシピR3aに修正されて、入出力部32より夫々の分散ユニット40及び50にレシピR3aが送信される。
その結果、例えば、ヘッド部用分散ユニット40には、修正されたレシピR3aとして、「ノズル番号N=6、8、10、カセット番号Z=2、4、6」との情報が送信されるとともに、部品供給用分散ユニット50には、修正されたレシピR3aとして、「カセット番号Z=2、4、6」との情報が送信される。その後、夫々の分散ユニット40及び50において、既に受信している先のレシピR3を、修正されたレシピR3aに置換して、修正されたレシピR3aに基づいて、夫々の動作が行なわれる。
なお、送信されたエラー情報に基づいて、既に送信済みのレシピを修正することが不可能と、MMC30が判断した場合には、MMC30にて当該レシピの実施をスキップさせる旨の信号を、夫々の分散ユニット40及び50に送信するか、あるいは、新たなレシピを作成して、夫々の分散ユニット40及び50に送信するような場合であってもよい。
(部品実装工程における制御動作)
次に、ヘッド部4による保持された部品1の基板2への部品実装工程が行なわれる場合における、MMC30、ヘッド部用分散ユニット40、及びXYロボット用分散ユニット60の夫々の間における情報通信、すなわち、レシピやイベントの受け渡し状態を模式的に示す模式説明フロー図を図11に示し、その動作手順のフローチャートを図12に示す。また、ヘッド部用分散ユニット40とXYロボット用分散ユニット60との間で送受信が行なわれるイベントの送信タイミングを説明するための、XYロボット8と吸着ノズル3の動作の関係図を図13に示す。
まず、図13を用いて、XYロボット8によるヘッド部4の移動動作と、部品実装のための吸着ノズル3の昇降動作との関係について、一例として示す図13の模式説明図を用いて説明する。なお、図13においては、上段にXYロボット8によるヘッド部4のXY移動の有無状態と時間との関係を示し、下段にヘッド部4における吸着ノズル3の部品実装のための昇降動作におけるその先端の高さ位置と時間との関係を示し、上段及び下段の関係の理解を容易とするために、時間(時間T0〜T6)軸を共通としている。
図13に示すように、基板2における部品1の実装位置の上方に向けてXYロボット8によりヘッド部4がX軸方向又はY軸方向に移動(以降、XY移動とする)されており、その移動速度が減速されながら、上記実装位置を含むその近傍の所定の範囲の位置(所定の領域)である「タイミング・ゾーン」と呼ばれる領域に、当該部品実装が行なわれる吸着ノズル3が、時間T0において到達される。このタイミング・ゾーンへの到達が後述するイベントの送信により、ヘッド部用分散ユニット40にて認識されると、昇降における上端高さ位置H2に位置されている状態の上記吸着ノズル3の下降が開始され、時間T1にて下降待機高さ位置H1に位置されると、当該下降が一時的に停止される。
その後、XY移動が継続されている吸着ノズル3が、時間T2において、部品実装位置に到着すると、XYロボット8によるヘッド部4の移動が停止される。この部品実装位置への到着が後述するイベントの送信により、ヘッド部用分散ユニット40にて認識されると、下降待機高さ位置H1に位置されている状態の吸着ノズル3の下降が開始されて、時間T3にて下端高さ位置H0に位置されるとともに、吸着保持されている部品1が、基板2の部品実装位置に接合される。その後、吸着ノズル3による部品1の吸着保持が解除されて、時間T4にて当該吸着ノズル3の上昇が開始される。時間T5にて、吸着ノズル3が下降待機高さ位置H1に達したことが、イベントの送信等により、XYロボット用分散ユニット60に認識されると、XYロボット8によるヘッド部4の移動が開始される。その後、吸着ノズル3は、時間T6にて上端高さ位置H2に位置される。
ここで、上記タイミング・ゾーンの決定(設定)方法について説明する。部品実装におけるタクトを短縮するためには、XY移動中の吸着ノズル3の高さをできるだけ低く保ち、部品実装位置に到着してからの吸着ノズル3の下降量を小さくしたい。しかし、例えば、部品供給装置6からの部品取出し工程後、基板2への部品1の実装を行なうためには、基板搬送装置9の搬送レールなど、部品取出し位置7aと部品実装位置の間の障害物と、吸着ノズル3及び吸着保持された部品1とが、互いに干渉しないような高さ位置まで、吸着ノズル3を上昇させた状態で、上記XY移動を行なう必要がある。タイミング・ゾーンは、それらの障害物の位置や吸着ノズル3で吸着保持中の部品1のサイズを勘案して決定されるとともに、このタイミング・ゾーンに到達したことが検出されることで、吸着ノズル3が安全に下降待機高さ位置H1まで下降することができる基板2の上方のエリア内に、吸着ノズル3が移動されたことを認識することができる。
ただし、このタイミング・ゾーンは必ずしも必要ではない。例えば、機台10上において機構的に一番高い位置が上記搬送レールであるような場合において、当該搬送レールよりも、さらに基板2上への実装済みの部品1の高さの方が高いような場合にあっては、上記搬送レールを超えたからといって、吸着ノズル3を下降させる訳にはいかない。このような場合には、タイミング・ゾーン=0(ゼロ)、すなわち、吸着ノズル3が部品実装位置に到着してから、吸着ノズル3をH2からH0まで一動作で下降させる。
次に、図11の模式説明フロー図と、図12のフローチャートを用いて説明する。
まず、図12におけるステップS51にて、MMC30において、ヘッド部用分散ユニット40及びXYロボット用分散ユニット60で実施されるべきレシピが作成され、ステップS52にて、作成された夫々のレシピが、MMC30から夫々の分散ユニット40及び60に送信される。
具体例を挙げて説明すると、図11に示すように、例えば、ヘッド部4において複数の吸着ノズル3により部品1の保持が行われているような場合にあっては、各々の吸着ノズル3により行なわれる部品実装工程毎にレシピR11、R12が作成され、夫々の部品実装工程開始前毎に送信される。
ヘッド部用分散ユニット40に送信される部品実装工程用のレシピR11には、最初に部品実装工程が実施される吸着ノズル3が、ヘッド部用分散ユニット40にて認識することができるように、ノズル番号の情報が、例えば、「N=1」というように含まれている。同様に、次に実施されるレシピR12には、「N=2」との情報が含まれている。
一方、XYロボット用分散ユニット60に送信されるヘッド移動工程用のレシピR11には、最初に部品実装工程が実施される吸着ノズル3に保持されている部品1の基板2への実装位置の位置情報(あるいは、当該実装位置へ移動するための移動位置の位置情報)が、例えば、XY座標の形式で「(X、Y)」というように含まれており、レシピR12にも同様な形式の情報が含まれている。
また、MMC30より、夫々の分散ユニット40及び60にレシピを送信する順序は、いずれが先の場合であっても良いが、ヘッド部4が部品実装位置の上方に位置されるようにXY移動が行なわれないことには、吸着ノズル3の下降による部品実装を行なうことができないことを考慮すれば、XYロボット用分散ユニット60へのレシピの送信を先に行なう方が、より効率的に部品実装を行なうことができるので好ましい。
次に、図12に示すように、ステップS58において、XYロボット用分散ユニット60において、受信されたレシピR11の実行が開始されるとともに、ステップS53において、ヘッド部用分散ユニット40において、受信されたレシピR11の実行が開始される。なお、夫々の分散ユニット40及び60において、レシピR11の開始は、受信されたレシピR11に基づいて、夫々のCPU41又は61にて開始の可否が判断されて行なわれるような場合であってもよく、あるいは、MMC30から、夫々の分散ユニット40及び60に、夫々のレシピR11の送信とは別に、レシピR11を開始する指令信号を送信して、当該開始が行なわれるような場合であってもよい。
その後、図12に示すように、XYロボット用分散ユニット60において、レシピR11に基づいて、部品実装工程のためのヘッド移動工程が開始される(ステップS59)。具体的には、ヘッド部4が上記部品実装位置の上方に位置されるように、XYロボット8によるXY移動が開始される。その後、当該XY移動により、ヘッド部4が、上記タイミング・ゾーン内に到達したことが確認されると(ステップS60)、上記到達の情報の伝達を目的として、XYロボット用分散ユニット60よりヘッド部用分散ユニット40へイベントI11が送信される(ステップS61)。
一方、ヘッド部用分散ユニット40においては、ステップS54において、XYロボット用分散ユニット60からのイベントI11の受信があるまで、レシピR11に基づく動作の開始が待機状態とされており、イベントI11の受信があると、レシピR11に基づいて、部品実装準備動作の実施が開始される。具体的には、ノズル番号N=1の吸着ノズル3が上端高さ位置H2から下降待機高さ位置H1にまで下降される。
それとともに、継続してXY移動の制御を行なっているXYロボット用分散ユニット60においては、部品実装位置の上方に到着したかどうかが判断されて(ステップS62)、当該到着したことが判断されると、ヘッド部用分散ユニット40に当該到着した旨の情報を伝達するためのイベントI12が送信される。
ヘッド部用分散ユニット40においては、ステップS56にて、イベントI12の受信があるまで、下降高さ位置H1にて吸着ノズル3の下降が待機状態とされており、イベントI12の受信があると、レシピR11に基づいて、部品実装本動作の実施が開始される。具体的には、ノズル番号N=1の吸着ノズル3が下降待機高さ位置H1から下限高さ位置H0にまで下降されて、吸着保持されている部品1が基板2の部品実装位置に接合される。その後、当該吸着ノズル3による部品1の吸着保持が解除されて、吸着ノズル3が上昇され、部品1が基板2に実装される。
その後、ステップS64にて次のレシピを受信して実施するかどうかが判断されて、実施する場合には、上記夫々の手順を繰り返し、一方、実施しない場合には、部品実装工程が終了する。
なお、このようにステップS64にて次のレシピの実施の可否が判断されるような場合に代えて、図11及び図12に示すように、ステップS63実施後に、MMC30が次のレシピR12を、XYロボット用分散ユニット60に送信するような場合であってもよい。このような場合にあっては、図11に示すように、部品1の実装後、上昇される吸着ノズル3が下降待機高さ位置H1にまで上昇された時に、当該情報の伝達を目的として、ヘッド部用分散ユニット40からXYロボット用分散ユニット60にイベントI13が送信されて、XYロボット用分散ユニット60において、イベントI13の受信に基づいて、次のレシピR12の実施を開始させることができ、より効率的に部品実装工程を行ない得るからである。さらに、その後、最初の部品実装工程を完了した状態にあるヘッド部用分散ユニット40に、MMC30から次のレシピR12が送信されて、XYロボット用分散ユニット60からのイベントI11の受信を待って、レシピR12が実施される。なお、ヘッド部用分散ユニット40にて、レシピR12に基づく部品実装工程が完了すると、MMC30に対して、イベントI14の送信を行ない、レシピR12に基づく部品実装工程が当該完了した旨を伝達することができる。
また、当該部品実装工程が行なわれるような場合においても、いずれかの分散ユニット40又は60において、制御動作中にエラーが検出された場合には、上記部品保持取出し工程の場合と同様に、当該エラー情報をMMC30に送信することにより、MMC30にて状況に応じて、既に送信済みのレシピを修正するか、あるいは、新たなレシピを作成するか、あるいは、当該レシピをスキップさせる等により対応することができる。
なお、このような部品実装工程におけるエラー発生の有無の検出方法の一例としては、部品1の実装後における吸着ノズル3の上昇時に、吸着ノズル3による真空吸着をON状態とさせて、その真空圧力を検出することにより、部品1が実装されたかどうかを検出することができる。また、このようにエラーが検出された場合には、当該エラー発生の状況に応じて、当該部品1を廃棄させること、あるいは、部品実装装置100を停止させることもできる。
(部品供給装置が部品供給トレイ形式である場合の部品保持取出し工程)
次に、本第1実施形態にかかる部品実装装置100の変形例として、部品供給装置6が、夫々の部品供給カセット7を備えるのではなく、複数の部品供給トレイを備えるような部品供給装置である場合における部品保持取出し工程の制御動作について説明する。
このような部品供給トレイは、その上面に複数の電子部品が取り出し可能に配置されている。また、上記部品供給装置には、このような部品供給トレイが複数枚収納されており、選択された所望の部品供給トレイが引き出されて、例えば、部品実装装置100における機台10上に配置させて、吸着ノズル3により部品1の取り出しを可能な状態とさせることができる。なお、このように上記部品供給トレイにより供給される部品1としては、例えば、主に、IC部品や、特殊形状のコネクタ部品等がある。また、このような上記部品供給トレイより部品1の保持取出しが行なわれる場合の特徴としては、複数の吸着ノズル3により同時に複数の部品1の取り出しが行なわれることはなく、各々の吸着ノズル3毎に、夫々の部品1の保持取出し動作が順次行なわれるということがある。従って、上記部品供給トレイよりの部品1の保持取出しにおける制御動作は、部品供給カセット7よりの部品1の保持取出しにおける制御動作に比して、より簡素化されたものとなる。このような上記部品供給トレイに対して、部品保持取出し工程を行なう場合における、MMC30、ヘッド部用分散ユニット40、及び部品供給用分散ユニット50(部品供給カセット7が装備される場合と同じ番号を付すものとする)の夫々の間における情報通信、すなわち、レシピやイベントの受け渡し状態を模式的に示す模式説明フロー図を図14に示し、この図14に基づいて以下に説明する。なお、図14においては、上記部品供給装置は、複数の部品供給トレイとして、例えば、3枚の部品供給トレイ201〜203(ただし、202は図示していない)を備えているものとし、トレイ番号として「Z=201」として夫々の部品供給トレイを表示している。
図14に示すように、まず、MMC30において、ヘッド部用分散ユニット40及び部品供給用分散ユニット50で実施されるべき複数のレシピR21〜R23が作成され、その後、作成された夫々のレシピR21〜R23が、MMC30から夫々の分散ユニット40及び50に送信される。
具体例を挙げて説明すると、図14に示すように、例えば、ヘッド部4が備える各吸着ノズル毎に部品1の部品保持取出し工程を3回行なって(すなわち、3本の吸着ノズル3について、各吸着ノズル3毎に3回の部品保持取出し工程を行なって)、夫々の部品1を吸着保持させた後に、ヘッド部4による部品実装工程を実施するような場合にあっては、MMC30にて、夫々の部品保持取出し工程毎にレシピを作成、すなわち、3つのレシピR21、R22、及びR23を作成する。
部品供給用分散ユニット50に送信されるレシピR21には、1回目に実施される部品保持取出し工程にて部品1が取り出されるべき部品供給トレイを、部品供給用分散ユニット50にて認識することができるように、トレイ番号の情報が、例えば、「Z=201」というように含まれて作成されている。同様に、レシピR22には、次の部品保持取出し工程にて部品1が取り出されるべきトレイ番号の情報が、「Z=201」と、レシピR23には、「Z=203」との情報が含まれて作成されている。
一方、ヘッド部用分散ユニット40に送信されるレシピR21には、1回目に実施される部品保持取出し工程にて部品1を吸着保持するべき吸着ノズル3を、ヘッド部用分散ユニット40にて認識することができるように、ノズル番号の情報が、例えば、「N=1」というように含まれて作成されている。同様に、レシピR22には、「N=4」との情報が、レシピR23には、「N=6」との情報が含まれて作成されている。また、ヘッド部用分散ユニット40に送信される夫々のレシピR21〜R23には、上記ノズル番号の情報に加えて、トレイ番号の情報も含まれている。
また、MMC30より、夫々の分散ユニット40及び50にレシピを送信する順序は、いずれが先の場合であっても良いが、部品実装の動作を考慮すれば、上記部品供給カセット7における部品保持取出し工程の場合と同様に、部品供給用分散ユニット50に先に送信することが好ましい。
その後、図14に示すように、夫々の分散ユニット40及び50において、受信された夫々のレシピR21〜R23のうちの1番目に実施されるべきレシピR21の実行が開始される。
具体的には、部品供給用分散ユニット50においては、レシピR21に基づいて、トレイ番号Z=201の部品供給トレイが選択されて、引き出され、機台10の上方に配置させる動作が行なわれる。
一方、ヘッド部用分散ユニット40においては、レシピR21に基づいて、ノズル番号N=1の吸着ノズル3の下降動作が開始される。当該下降により、吸着ノズル3が下降待機高さ位置H1にまで下降されると、ヘッド部用分散ユニット40から部品供給用分散ユニット50へ、イベントI21が送信される。
このイベントI21の受信を受けた部品供給用分散ユニット50においては、そのまま上記部品供給トレイの配置動作を継続して行ない、当該配置動作が完了して、部品1が取り出し可能な状態となると、その旨を伝達すべく、ヘッド部用分散ユニット40に対して、イベントI22の送信を行なう。
イベントI22の受信を受けたヘッド部用分散ユニット40においては、下降待機高さ位置H1からさらに吸着ノズル3を下降させて、部品供給トレイよりの部品1の保持取出しが行なわれる。
なお、図14においては、その後の動作については示してしないが、上記部品供給カセット7における部品保持取出し工程の場合(図5及び図6)と同様に、レシピR22及びR23に基づく動作が順次行われて、部品保持取出し工程が行なわれる。
なお、このように分散制御システム101において行なわれる主要な制御動作について上述のように説明したが、上記夫々の制御動作は一例であって、これらの制御動作のみに、分散制御システム101の制御動作が限定して解釈されるものではない。
例えば、部品実装工程を行なう場合における、MMC30、ヘッド部用分散ユニット40、及びXYロボット用分散ユニット60との間のレシピやイベント等の情報通信等に関しては、部品保持取出し工程を行なう場合の、MMC30、ヘッド部用分散ユニット40、及びXYロボット用分散ユニット60との間の関係を、略同様に適用することができる。すなわち、部品保持取出し工程においては、XYロボット用分散ユニット60にて、部品保持取出し工程のためのヘッド移動工程が行なわれ、MMC30、ヘッド部用分散ユニット40、部品供給用分散ユニット50、及びXYロボット用分散ユニット60との夫々の間で、レシピやイベント等の情報通信が行なわれながら、互いに関連付けられて、部品保持取出し工程が行なわれる。
また、本第1実施形態においては、部品実装を行なうことを目的とするヘッド部4を備える部品実装装置100が備える分散制御システム101において説明したが、このようなヘッド部4を備えているような場合に代えて、例えば、基板2に半田等の接合材を供給する塗布ヘッドが備えられているような場合であってよい。このような塗布ヘッドは、XYロボット8によりXY移動されながら、基板2における部品1の実装位置に、接合材を供給するという動作を行うため、実質的には、部品実装工程に類似した動作となり、そのような動作工程を行なうような場合にも適用し得るからである。
さらに、部品実装装置100における基板搬送装置9にもこのような分散ユニットを備えさせて、分散制御システムによる制御動作を適用する場合であってもよい。例えば、基板搬送装置9における基板2の供給搬送動作と排出搬送動作は、ステージ5による基板2の保持又は保持解除動作と関連付けられ、さらに、ヘッド部4による部品実装動作とも関係するからである。
また、図1に示す部品実装装置100には図示しないが、部品撮像装置にも分散ユニットを備えさせて、分散制御システムによる制御動作を適用する場合であってもよい。例えば、部品撮像装置における吸着ノズル3により吸着保持された部品1の画像の撮像は、XYロボット8によりヘッド部4の移動やヘッド部4における吸着ノズル3の昇降動作等に密接に関係しており、さらに、撮像された画像に基づいて、部品1の吸着保持姿勢が補正されて部品実装工程が行なわれるからである。
また、上記説明においては、分散制御システム101におけるMMC30がレシピ作成部33を備え、外部より入力されたNCデータ等の実装データに基づいて、レシピ作成部33にて夫々のレシピが作成される場合について説明したが、本第1実施形態の分散制御システム101は、このような場合にのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、MMC30がレシピ作成部33を備えずに、部品実装装置100の外部にて、予め作成された夫々のレシピが、MMC30に入力されて、MMC30より夫々の分散ユニットに夫々のレシピが送信されるような場合であってもよい。MMC30で作成されたレシピを送信するか、外部で作成されたレシピを送信するかの違いだけであり、実質的に同様な制御を行ない得るからである。
さらに、MMC30のレシピ作成部33にて作成された夫々のレシピは、毎回必ず作成を要するものではなく、例えば、同様な制御動作が繰り返し行なわれるような場合にあっては、一度作成されたレシピを、主メモリ34に記憶させて保持し、必要に応じて読み出して再利用するような場合であってもよい。繰り返し行なわれる同様な制御動作に対しては、上記再利用を図る方が、新たにレシピを作成する手間が省け、より効率的な制御動作を行うことができるからである。
また、上記説明においては、分散制御システム101に、複数の分散ユニットが備えられているような場合について説明したが、このような場合にのみ限定されるものではない。例えば、分散制御システムが、1つの分散ユニットのみを備えるような場合であってもよい。具体的には、図3の分散制御システム101において、分散ユニットとして、ヘッド部用分散ユニット40のみが備えられ、部品供給用分散ユニット50及びXYロボット用分散ユニット60が備えられないような場合である。このような場合にあっては、MMC30により、直接的に、部品供給装置6の動作制御、及びXYロボット8の動作制御が行なわれる。
その制御動作内容の一例を説明すると、例えば、部品供給装置6は、吸着ノズル3が下降動作を開始する前に部品供給工程を完了させていればよい機構を有する部品供給カセットを備え、MMC30は、予め上記部品供給カセットの部品供給工程の動作を完了させた上で、ヘッド部用分散ユニット40にレシピを送信し、ヘッド部用分散ユニット40は、受信された上記レシピに基づいて、吸着ノズル3の下降、吸着保持、上昇の一連の部品取出し工程を完了させることができる。
また、上記説明においては、分散制御システム101において、夫々の分散ユニット間で、イベントの受渡しが行なわれることにより互いに関連付けられる制御が行なわれるような場合について説明したが、このような場合に代えて、互いの制御における関連付けがあまり重要でないような場合にあっては、夫々の分散ユニット間でイベントの受渡しが行なわれないような場合であってもよい。このような場合にあっては、夫々の分散ユニットにおいて、MMC30より送信された夫々のレシピに基づいて、個別に分散制御が行なわれることとなる。
また、分散制御システム101においては、ヘッド部用分散ユニット40がヘッド部4に備えられ、部品供給用分散ユニット50が部品供給装置6に備えられ、XYロボット用分散ユニット60がXYロボット8に備えられているような場合について説明したが、夫々の分散ユニットの設置場所はこのような場合にのみ限定されるものではなく、上述した分散制御を行ない得る限りにおいて、その設置場所を自由に決定し得る。すなわち、夫々の分散ユニットの設置場所は、その制御対象のハードにのみ限定されるものではない。
(第1実施形態による効果)
上記実施形態によれば、以下のような種々の効果を得ることができる。
まず、従来の部品実装装置における制御方式のように、1つの制御装置で、複数の構成部の動作制御を集中的に行う「集中制御方式」を採用するのではなく、夫々の構成部自体に個別に分散ユニットと呼ばれる制御装置を備えさせて、夫々の分散ユニット同士を対話(すなわち、通信)させて、互いの動作を関連付けながら夫々の動作制御を可能とさせていることにより、装置開発過程において、個々の構成部の基本動作やその動作制御性等の早期確認を行うことができ、部品実装装置全体としての制御性能の確認を効率的に行うことができる。
具体的には、夫々の分散ユニットにおいて実行させるべき動作プログラムであるレシピを作成するとともに送信するMMC30と、上記レシピに基づいて、ヘッド部4における動作の制御を行うヘッド部用分散ユニット40と、上記レシピに基づいて、部品供給装置6における動作の制御を行う部品供給用分散ユニット50と、上記レシピに基づいて、XYロボット8における動作の制御を行うXYロボット用分散ユニット60とが備えられた分散制御システム101において、上記夫々の分散ユニット40、50、及び60が、上記レシピに基づく夫々の動作制御の状態に基づいて、イベントと呼ばれるタイミング信号を、MMC30を介することなく、他の分散ユニット40、50、又は60に送信することにより、互いの分散ユニットにおける動作制御状態を認識し合いながら関連付けられた動作制御を行うことができる。
従って、MMC30に備えさせる機能や制御ソフト等を縮小化することができるとともに、これに代わって、夫々の分散ユニット40、50、及び60に、MMC30が従来担っていた機能や制御ソフトを分散させて備えさせることができる。よって、装置開発段階では、実際の構成部がなくても擬似的に作成可能であるレシピやイベントを準備すれば、各々の分散ユニット単位で、その機能や制御性能の確認を早期に行なうことができ、従来の集中制御方式に比べて格段にその開発期間の短縮化を図ることができる。
また、このように開発期間の短縮化を図ることで、その短縮された期間を利用して、部品実装装置のユーザ等よりの多様なニーズに応えた装置を、短期間で提供することも可能となり、また、制御性を十分に確証するための期間を得ることができることより、制御精度が向上された部品実装装置を提供することができる。
また、現在の部品実装装置に求められる高度化・複雑化された制御に対しても、その制御処理を1箇所に集中させることなく、夫々の分散ユニット40、50、及び60に分散させて負担させていることより、その処理速度の向上を図ることができ、制御性を良好なものとすることができる。
さらに、ヘッド部4、部品供給装置6、及びXYロボット8の制御動作における互いの関連付けが、MMC30を介することなく、通信制御部35でもって、直接的に夫々の分散ユニット間でイベントの送受信により行なうことができることより、制御応答性を良好なものとすることができる。
また、夫々の分散ユニット間では、主にイベントの送受信が行なわれる程度とすることができ、夫々の動作制御は、レシピに基づいて、夫々の分散ユニットにて実施させているため、夫々の分散ユニット間の配線を低減させることができ、ハード的にも装置製作コストを低減させることができる。
また、特に、部品実装における制御においては、ヘッド部4における部品保持準備動作及び部品保持本動作と、部品供給装置6における部品供給準備動作及び部品供給本動作との互いの動作のタイミングの関係、ヘッド部4における部品実装準備動作及び部品実装本動作と、XYロボット8におけるヘッド移動工程のタイミング・ゾーン到達時及び部品実装位置到着時との動作のタイミングの関係というように、予め定められている夫々の動作や工程と、他の構成部における動作や工程とが、密接に関連付けられた制御が要求されることから、レシピに基づいて夫々の動作等の制御が行なわれながら、イベントの送信により互いの動作を関連付けるという分散制御システム101による制御動作を、より効果的に当該部品実装に適用することができるというメリットがあると言える。
(第2実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、本発明の第2の実施形態にかかる部品実装装置が備える分散制御システム301の主要な構成を示す制御ブロック図を図15に示す。
図15に示すように、分散制御システム301は、上記第1実施形態の分散制御システム101と同様に、主制御部の一例であるMMC330と、ヘッド部制御部の一例であるヘッド部用分散ユニット40と、部品供給部制御部の一例である部品供給用分散ユニット50と、MMC330と夫々の分散ユニット40及び50間の情報通信の制御を行なうインターフェースボードである通信制御部35とが備えられているものの、XYロボット用分散ユニット60が備えられていない点において、その構成が相違している。なお、分散制御システム301において、分散制御システム101と同じ構成を有する部分については、同じ符号を付している。以下、この構成が相違する部分についてのみ、説明を行なうものとする。
図15に示すように、分散制御システム301において、MMC330は、分散制御システム101におけるMMC30とXYロボット用分散ユニット60の夫々の機能及び構成を合わせて有している。具体的には、図15に示すように、MMC330は、主CPU31、入出力部32、レシピ作成部33、及び主メモリ34と同様な機能及び構成を有する、主CPU331、入出力部332、レシピ作成部333、及び主メモリ334に加えて、さらに、XYロボット用ドライバ65とセンサ部64と同様な機能及び構成を有する、XYロボット用ドライバ335及びセンサ部336を備えている。また、主CPU331は、XYロボット用ドライバ335及びセンサ部336を制御することが可能となっている。
このような構成の分散制御システム301においては、部品保持取出し工程及び部品実装工程のいずれにおいても、断続的なヘッド移動工程を行なう必要があるXYロボット8の動作制御を、MMC330において実施させながら、ヘッド部4及び部品供給装置8の動作制御に関しては、夫々の分散ユニット40及び50を用いて行なうという、集中制御方式と分散制御方式の中間的な方式とすることができる。よって、このような構成を有する分散制御システム301であっても、上記第1実施形態による効果を得ることができ、開発期間の短縮化や制御性の向上といった効果を得ることができる部品実装装置を提供することができる。
(第3実施形態)
さらに、本発明の第3の実施形態にかかる部品実装装置の一例である部品実装装置400の模式的な構成を示す模式斜視図を、図16に示す。
図16に示すように、部品実装装置400は、上記第1実施形態の部品実装装置100と比べて、2つのヘッド部、及び2つのXYロボットを備えている点において異なっており、以下にこの異なる部分についてのみ説明するものとする。なお、図16においては、部品実装装置100と同じ構成を有する部分については、同じ符号を付している。
図16に示すように、部品実装装置400は、複数の部品1を取り出し可能に供給する部品供給装置6と、上記供給される夫々の部品1が実装される2枚の基板2a及び2bを、解除可能に保持する基板保持部の一例であるステージ405とを備えている。さらに、部品実装装置400は、部品供給装置6から供給される夫々の部品1を保持して取り出すとともに、ステージ405にて保持された夫々の基板2a及び2bに、当該夫々の部品1の実装を行なう2つのヘッド部である第1ヘッド部4a及び第2ヘッド部4bと、この夫々の第1ヘッド部4a及び第2ヘッド部4bのXY移動を行なう基板移動装置の一例である2つのXYロボットである第1XYロボット408a及び第2XYロボット408bとを備えている。また、夫々の第1ヘッド部4a及び第2ヘッド部4bには、部品1を解除可能に吸着保持する部品保持部材の一例である吸着ノズル3を夫々複数本ずつ備えている。
このような構成を部品実装装置400が有していることにより、第1ヘッド部4a及び第1XYロボット8aの夫々の動作を行うことにより、部品供給装置6から部品1を吸着保持して取り出し、図16におけるステージ405の図示右側に保持されている基板2aに対して、部品1の実装動作を行なうことができるとともに、第2ヘッド部4b及び第2XYロボット8bの夫々の動作を行うことにより、部品供給装置6から部品1を吸着保持して取り出し、図16におけるステージ405の図示左側に保持されている基板2bに対して、部品1の実装動作を行なうことができる。従って、部品実装装置400において、より効率的に部品実装を行なうことが可能となっている。
次に、このような部品実装装置400が備える分散制御システム401の主要な構成を示す制御ブロック図を図17に示す。
図17に示すように、分散制御システム401は、主制御部の一例であるMMC430と、ヘッド部制御部の一例であって、第1ヘッド部4aの動作制御を行う第1ヘッド部用分散ユニット440と、移動装置制御部の一例であって、第1XYロボット8aの動作制御を行う第1XYロボット用分散ユニット450と、ヘッド部制御部の一例であって、第2ヘッド部4bの動作制御を行う第2ヘッド部用分散ユニット460と、移動装置制御部の一例であって、第2XYロボット8bの動作制御を行う第2XYロボット用分散ユニット470と、部品供給部制御部の一例であって、部品供給装置6の動作制御を行う部品供給用分散ユニット480とを備えている。また、MMC430は、第1実施形態のMMC30と同様な機能及び構成を有しており、また、夫々の分散ユニットも第1実施形態の夫々の分散ユニットと同様な機能及び構成を有している。従って、MMC430にて、レシピが作成されて夫々の分散ユニットに送信され、かつ、夫々の分散ユニット間でイベントの送受信が行なわれるが、このような情報通信は、通信制御部435により制御されて行なわれる。
このような上記第3実施形態によれば、部品実装装置400が第1ヘッド部4a及び第2ヘッド部4bと、第1XYロボット8a及び第2XYロボット8bとを備えるというように、その制御対象である構成部が増加することとなるような場合であっても、分散制御システム401を採用していることにより、夫々の構成部に課される制御処理の負担量は、上記第1実施形態と比べても略同じとすることができる。従って、より複雑かつ高度化された制御にも対応することができ、上記第1実施形態と同様な効果を得ることができながら、効率的な部品実装を提供することができる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
1…部品、2…基板、3…吸着ノズル、4…ヘッド部、5…ステージ、6…部品供給装置、7…部品供給カセット、7a…部品取出し位置、8…XYロボット、9…基板搬送装置、10…機台、30…MMC、31…主CPU、32…入出力部、33…レシピ作成部、34…主メモリ部、35…通信制御部、40…ヘッド部用分散ユニット、41…ヘッド用CPU、42…入出力部、43…メモリ部、44…センサ部、45…ヘッド用ドライバ、50…部品供給用分散ユニット、51…部品供給用CPU、52…入出力部、53…メモリ部、54…センサ部、55…部品供給用ドライバ、56…レシピ統合部、60…XYロボット用分散ユニット、61…XYロボット用CPU、62…入出力部、63…メモリ部、64…センサ部、65…XYロボット用ドライバ、100…部品実装装置、101…分散制御システム、R1〜R3…レシピ、I1〜I7…イベント。