JP4346192B2 - 高耐食バルクアモルファス合金およびその製造方法 - Google Patents

高耐食バルクアモルファス合金およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、濃厚な酸の激しい腐食性環境に耐え、溶融状態から超急冷を必要とすることなく、バルク成形可能な高耐食アモルファス合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、溶融状態から急冷を行うこと、あるいはスパッターデポジションによって、激しい腐食性環境で異常な高耐食性を示す多数のアモルファス合金を見いだし特許を出願してきた。この発明は、特開昭61−210143号および特開昭62−33735号に開示されている。
【0003】
すなわち、特開昭61−210143号にて開示した発明は以下の4つの発明からなる。
(1)Taを15〜80原子%含み、残部は実質的にNiよりなる高耐食アモルファス合金。
(2)Taと、Ti、Zr、NbおよびWよりなる群がら選ばれる1種または2種以上の元素とを含み、残部は実質的にNiよりなり、含有率はTaが10原子%以上、前記群から選ばれる1種または2種以上の元素が、Taとの合計で15〜80原子%である高耐食アモルファス合金。
(3)Taと、Feおよび/またはCoとを含み、残部は実質的にNiよりなり、含有率はTaが15〜80原子%、Feおよび/またはCoが75原子%以下、Niが7原子%以上である高耐食アモルファス合金。
(4)Taと、Ti、Zr、NbおよびWよりなる群がら選ばれる1種または2種以上の元素と、Feおよび/またはCoとを含み、残部は実質的にNiよりなり、含有率はTaとTi、Zr、NbおよびWよりなる群がら選ばれる1種または2種以上とが合計で15〜80原子%であり、Feおよび/またはCoが75原子%以下、Niが7原子%以上である高耐食アモルファス合金。
【0004】
また、特開昭62−33735号に開示した発明は、以下の16の発明からなる。
(1)Taを30〜80原子%含み、残部は実質的にNiよりなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(2)12原子%以上のTaを含み、TaとNbとの合計が30〜80原子%含み残部は実質的にNiよりなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(3)12原子%以上のTaを含み、Tiおよび/またはCrとTaとの合計が30〜80原子%含み残部は実質的にNiよりなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(4)12原子%以上のTaを含み、TaとNbとの合計が25原子%以上であり、Tiおよび/またはCrとTaとNbとの合計が30〜80原子%であって残部は実質的にNiよりなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(5)30〜80原子%のTaと2原子%以上のNiを含み、残部は実質的にFeおよび/またはCoからなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(6)12原子%以上のTaを含み、TaとNbとの合計が30〜80原子%であって、2原子%以上のNiを含み、残部は実質的にFeおよび/またはCoからなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(7)25原子%以上のTaを含み、Tiおよび/またはCrとTaとの合計が25原子%以上であって、30〜80原子%であって、2原子%以上のNiを含み、残部は実質的にFeおよび/またはCoからなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(8)12原子%以上のTaを含み、TaとNbとの合計が25原子%以上であり、Tiおよび/またはGとTaとNbとの合計が30〜80原子%であってさらに2原子%以上のNiを含み、残部は実質的にFeおよび/またはCoからなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(9)20原子%以上60原子%未満のTaと7原子%以下のPを含み残部は、実質的に20原子%以上のNiよりなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(10)7原子%以上のTaを含み、TaとNbとの合計が20原子%以上80原子%未満であって、7原子%以下のPを含み、残部は実質的に20原子%以上のNiよりなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(11)15原子%以上のTaを含み、Tiおよび/またはCrとTaとの合計が20原子%以上80原子%未満であって、7原子%以下のPを含み、残部は実質的に20原子%以上のNiよりなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(12)7原子%以上のTaを含み、TaとNbとの合計が16原子%以上であり、Tiおよび/またはCrとTaとNbとの合計が20原子%以上80原子%未満であり、7原子%以下のPを含み、残部は実質的に20原子%以上のNiよりなり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(13)20原子%以上80原子%未満のTaと、2原子%以上のNiと7原子%以下のPを含み、実質的残部であるFeおよび/またはCoとNiとの合計が20原子%いじょうであり合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(14)7原子%以上のTaとNbとの合計が20原子%以上80原子%未満であって、2原子%以上のNiと7原子%以下のPを含み、実質的残部であるFeおよび/またはCoとNiとの合計が20原子%以上であり、合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(15)15原子%以上のTaを含み、Tiおよび/またはCrとTaとの合計が20原子%以上80原子%未満であって、2原子%以上のNiと7原子%以下のPを含み、実質的残部であるFeおよび/またはCoとNiとの合計が20原子%以上であり、合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
(16)7原子%以上のTaを含み、TaとNbとの合計が16原子%以上であり、Tiおよび/またはCrとTaとNbとの合計が20原子%以上80原子%未満であり、さらに2原子%以上のNiと7原子%以下のPを含み、実質的残部であるFeおよび/またはCoとNiとの合計が20原子%以上であり、合計を100原子%とする非酸化性腐食環境下で耐食性を有する高耐食アモルファス合金。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アモルファス合金の作製には、通常、液体状態から超急冷あるいはスパッターデポジションを必要とするため、大きさの制限からその応用には限界があった。
【0006】
上述のように液体急冷法あるいはスパッター法によって、結晶質合金では決して得られない高耐食性を備えたアモルファス合金が得られるが、液体急冷法では、厚さ数μmのリボン状合金、スパッター法では下地を被覆する薄膜合金となるため、その応用が限られ、バルク状のアモルファス合金の出現が待たれていた。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたもので、高耐食性を備えた元素とアモルファス形成能を向上させる元素の組み合わせによって、銅鋳型に流し込む方式によってもバルクアモルファス合金が得られるものであり、当然、種々の方法で作製する粉末あるいはフレーク状のアモルファス合金を過冷却温度において成形することによってもアモルファス合金が得られるものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
これに対し、本発明者らは、これらの合金についてさらに研究した結果、Taを含むNi−Nb系合金が特にアモルファス形成能が高く、とりわけ小量のリンを添加することによって、アモルファス形成能が高くなり、かつ強酸中において高耐食性を示すことを見いだした。
【0009】
すなわち、液体急冷Ni−40Nb合金はアモルファス単相を示すことが知られている。しかし、銅鋳型鋳造法により作製した直径1mmの円柱状試料は完全にアモルファスにならないことがX線回折により判明した。そこで、この合金にP、Si、Bなどの半金属を添加したところ、Pがアモルファス形成能を上げるのに最適であることが判明したので、Pの添加量を変えた合金を作製した。図2は液体急冷法で作製したリボン状アモルファスNi−Nb−P合金試料の示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したDSC曲線を示している。Pの添加量が2および5原子%で、約40Kの過冷却液体領域が現れており(ガラス遷移温度Tg〜結晶化温度Tx)、ガラス形成能があることが示唆されている。これらと同じ組成の合金を直径1mmの銅鋳型に鋳込んで作製した円柱状試料のX線回折図はDSC曲線に対応し、Pの添加量が2および5%でアモルファス化し、これ以外のP量では結晶が現れることを示した。さらに、直径2mmの円柱状試料で比較すると、2P合金で結晶相が明瞭に現れるのに対し、5P合金ではアモルファス単相を示した。
【0010】
そこで、Nbの一部をTaに置換した[Ni−(40−x)Nb−xTa]0.95−5Pを作製し、アモルファス形成能および耐食性の改善を試みた。図3にタンタルを10原子%まで添加したNi−Nb−Ta−5P合金の液体急冷アモルファスリボンとバルク合金の30℃、6M塩酸中での平均腐食速度を示す。図中、比較のため純ニッケルおよびニオブの結果も示した。12M塩酸中ではタンタルを5原子%添加しても、結晶構造にかかわらず比較的高い腐食速度を示し、試験後の試料表面には黒褐色の厚い腐食生成物がみられた。しかし、タンタル量が10原子%になると、アモルファス(液体急冷リボン)であれば一桁程度腐食速度が低下するので、更にタンタル量を増やし、しかもアモルファス化すればバルク状試料でも腐食速度がさらに低下することが期待される。一方、6M塩酸中では、タンタルを添加していないNi−40NbおよびNi−40Nb−5Pでも10-3mm/yのオーダの純Nbと同等の比較的低い腐食速度を示し、更にタンタルを5原子%添加すると、試験後試料表面は金属光沢が保たれ、重量変化はマイクロバランスの測定精度以下になり、優れた耐食性を示す。このように、過冷却液体域が観察されたNi−40Nb−(2,5)P合金から銅鋳込み鋳造法により円柱状試料を作成した結果、直径2mmのガラス合金を作製でき、また、Nbの一部をTaに置換した合金からもガラス合金を得ることができた。これらのバルク状試料は6M塩酸中で急冷リボン状試料と同等の高い耐食性を示すことが判明したのである。
【0011】
これらの知見から、発明者等は、バルクアモルファス合金の作製に有効な過冷却液体の温度範囲が広い種々の合金を見いだし、溶融合金を鋼鋳型に流し込む方法で、直径1mm以上の単相アモルファス合金の作製に成功し、これらが液体急冷法で作製したリボン状アモルファス合金と同様の超耐食性を備えていることを見いだし本発明に至ったのである。
【0012】
本発明は、第1に、TaおよびNbの2種の合計で25〜65原子%を含むとともに、前記TaまたはNbのいずれか1種を3原子%以上とし、さらに2〜8原子%のPを含み、残部は実質的にNiからなる高耐食バルクアモルファス合金の組成とした。
【0013】
また、第2には、TaおよびNbの合計で20原子%以上含むとともに前記TaまたはNbのいずれか1種を3原子%以上とし、TiおよびZrのいずれか1種または2種と、前記TaおよびNbの1種または2種との合計で25〜65原子%を含み、さらに2〜8原子%のPを含み、残部は実質的にNiからなる高耐食バルクアモルファス合金の組成としたのである。
これらの場合において、「実質的にNiからなる」というのは、Niの一部若しくは全部を置換してFeおよび/またはCoを含む構成にできることを意味している。
【0014】
本発明に係る高耐食バルクアモルファス合金の製造方法は、上記組成の合金の過冷却液体領域の広い温度範囲にて過冷却液体状態から急冷固化することによりバルクアモルファス合金を作製するようにしている。
【0015】
本発明に係る高耐食バルクアモルファス合金の製造方法は、TaおよびNbの2種の合計で25〜65原子%を含むとともに、前記TaまたはNbのいずれか1種を3原子%以上とし、さらに2〜8原子%のPを含み、残部は実質的にNiからなる合金母材を溶融し、形成予定のバルク形状に急冷して固化する構成としている。
【0016】
また、TaおよびNbの合計で20原子%以上含むとともに前記TaまたはNbのいずれか1種を3原子%以上とし、TiおよびZrのいずれか1種または2種と、前記TaおよびNbの1種または2種との合計で25〜65原子%を含み、さらに2〜8原子%のPを含み、残部は実質的にNiとするからなる合金を溶融し、形成予定のバルク形状に急冷して固化するして高耐食バルクアモルファス合金を製造するように構成してもよい。
【0017】
これらの製造方法において、前記組成からなるアモルファス母材をガラス遷移温度以上で結晶化温度以下の過冷却液体状態の温度範囲にて溶融し、金属鋳型により形成されたキャビティ内に充填することにより急冷固化させることによりキャビティ形状に倣ったバルク形状に成形するようにすればよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を以下詳述する。
本発明者らは長年にわたりアモルファス合金の性質の研究を行い、従来本発明者らが見いだしてきたTa、Nb、Zr、Tiのように合金に耐食性を付与する元素を含むNi基アモルファス合金が、濃厚な酸の環境において著しく高い耐食性を有すること、これに小量のPを添加することによって、さらに耐食性が向上すると共に、アモルファス形成能も向上することを組み合わせ、高耐食アモルファス合金をバルクとして作製することが可能となるに至った。
【0019】
その実施形態に係る高耐食バルクアモルファス合金は、Ni、Ta、Nb、Pと最低4種類の元素を含み、また高耐食性を保証するため、TaおよびNbのいずれか1種を必須元素とすると共に、バルク合金の作製のために、NiおよびPを必須元素とするものである。
【0020】
次の表1に、これら第1および第2の発明に係る合金の構成元素および含有率を示す。
【表1】
Figure 0004346192
単位は原子%である。
(*1) TaおよびNbのいずれか1種3原子%以上でかつ両者の合計
(*2) TaおよびNbのいずれか1種3原子%以上でかつ両者の合計20原子%以上と、TiおよびZrのいずれか1種または2種との合計
(*3) 実質的にNi
【0021】
すなわち、x=3原子%以上とした場合、次のような態様を採る。数値は原子%である。
▲1▼Ta(x≧3)+Nb{(25〜65)−x}+P(2〜8)+Ni(残)
▲2▼Nb (x≧3)+Ta{(25〜65)−x}+P(2〜8)+Ni(残)
▲3▼[Ta(x≧3)+Nb[(≧20)−x]+Zr](20〜65)+P(2〜8)+Ni(残)
▲4▼[Nb(x≧3)+Ta[(≧20)−x]+Zr](20〜65)+P(2〜8)+Ni(残)
▲5▼[Ta(x≧3)+Nb[(≧20)−x]+Ti](20〜65)+P(2〜8)+Ni(残)
▲6▼[Nb(x≧3)+Ta[(≧20)−x]+Ti](20〜65)+P(2〜8)+Ni(残)
一般的に、溶融状態から1アモルファス合金を作製するには、104℃以上の高速による超急冷を必要とする。
【0022】
これに対し、上記組成の本発明のアモルファス合金は、アモルファス化能を向上する元素の組み合わせによって、過冷却液体の温度領域が大きいため、銅鋳型に流し込むことによって直径1mm以上のアモルファス合金が得られる。
【0023】
次に、本発明における各成分組成を限定する理由を述べる。Niは本発明合金触媒の基礎となる元素であって、Ta、Nb、Zr、Tiを固溶することによって、超急冷でアモルファス合金を形成する必須元素である。
【0024】
Ta、Nbは、濃厚な酸中における耐食性を合金に付与するのに必須の元素であって、第1の発明においては合計で20原子%以上を必要とする。一方、NiおよびPと共存してバルクアモルファス合金を形成するにはTaおよびNbのいずれかを最低3原子%以上含む4元合金とする必要がある。ただし、TaおよびNbの総量が多すぎるとアモルファス形成能が減少するので、最高はTaおよびNbの合計で65原子%とする必要がある。
【0025】
ZrおよびTiは、濃厚な酸中における耐食性を合金に付与する元素として、TaおよびNbに次いで優れているが、TaおよびNbなしでは十分な耐食性が得られず、さらにアモルファス形成能を向上させる元素としても、TaおよびNbには劣るため、第2の発明において、TaおよびNbのいずれか1種3原子%以上でかつ両者の合計20原子%以上とZrおよびTiのいずれか1種または2種との合計で25原子%以上とする必要がある。また、TaおよびNbの合計とZrおよびTiのいずれか1種または2種との合計が多すぎるとアモルファス形成能が減少するので、最高は65原子%とする必要がある。
【0026】
Pは耐食性を向上させると共に、アモルファス形成能を向上させ、本合金をバルクアモルファス合金とする必須元素であって、2原子%以上必要とする。ただし、過剰の添加は却ってアモルファス形成能を減少させるため、最高は8原子%とする必要がある。
なお、本合金において、Niを置換してFeおよびCoを含むことは、本合金の作製と耐食性に、なんら支障はない。
【0027】
図1に基づいて、本発明の高耐食バルクアモルファス合金製造方法の一例を詳述する。図1に示すように、製造領域は予め真空にされた後、アルゴンガス雰囲気に置かれている。表1に示した組成をもつアモルファス母材を溶融する石英管1が設けられており、これは垂直に配置され、下端部分には吹き出し口が形成されている。この石英管1の内部には未溶融のアモルファス母材が収容される。石英管1は昇降可能とされ、その昇降ラインを囲むように高周波コイル3が上部位置に配置されている。そして、前記石英管1の下降端に対向して銅鋳型4が設置され、この内部にキャビティ5が形成されている。当初未溶融の合金が、高周波コイル3内の位置に置かれるように、石英管1が引き上げられており、加熱してアモルファス合金の過冷却液体状態となる温度範囲まで昇温される。合金が溶融すると、石英管1が銅鋳型4の真上まで下げられ、アルゴンガス送入孔6からアルゴンガスを送入することによって溶融合金2は銅鋳型4に流し込まれキャビティ5の形状で凝固する。
このような方法によって、本発明の高耐食バルクアモルファス合金が作製できる。
【0028】
次に本発明の実施例を示す。
【実施例1】
Ni−55原子%、Ta−25原子%、Nb−15原子%、P−5原子%の組成となるように原料金属を混合し、アルゴンアーク溶融により原料合金を作製した。この合金を図に示すアルゴン雰囲気中の石英管1の中で再溶融し、銅鋳型4に流し込むことによって、直径1mmあるいは2mm、長さ50mmの棒状合金を得た。機械的破断面を用い、微小焦点X線回折により構造を調べた結果、棒の中心部においても、単相アモルファス構造であることが確認された。同合金を30℃の12MHCl溶液に浸漬し腐食速度の測定を試みたが、1週間の浸漬では、マイクロ天秤によっても、腐食による重量減少が確認できなかった。また、同合金は30℃の12MHCl溶液において、自己不動態化していることが判明し、同合金がきわめて高い耐食性を備えていることが確認された。
【0029】
【実施例2】
表2の所定組成となるように原料金属を混合し、アルゴンアーク溶融により原料合金を作製した。これらの合金を図に示すアルゴン雰囲気中の石英管1の中で再溶融し、銅鋳型4に流し込むことによって、直径1mm、長さ50mmの棒状合金を得た。機械的破断面を用い、微小焦点X線回折により構造を調べた結果、これらの合金は棒の中心部においても、単相アモルファス構造であることが確認された。これらの合金を30℃の6MHCl溶液に浸漬し腐食速度の測定を試みたが、1週間の浸漬では、マイクロ天秤によっても、腐食による重量減少が確認できなかった。また、これらの合金は30℃の6M HCl溶液において、自己不動態化していることが判明し、これらの合金がきわめて高い耐食性を備えていることが確認された。
【0030】
【表2】
Figure 0004346192
【0031】
これらの結果、本発明のバルク合金はいずれもアモルファス単相合金であって、きわめて苛酷な濃塩酸中においても自己不動態化し、腐食速度が検出されない高耐食合金であることが判明した。
【0032】
【発明の効果】
以上のように本発明は、Ta、Nb、Zr、Tiのように合金に耐食性を付与する元素を含むNi基アモルファス合金が、濃厚な酸の環境において著しく高い耐食性を有すること、これに小量のPを添加することによって、さらに耐食性が向上すると共に、過冷却液体領域温度が広くなってアモルファス形成能も向上できるので、製造された合金は、バルクアモルファス単相合金であって、濃厚酸中において高耐食性を備えてたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高耐食バルクアモルファス合金を製造するための装置の一例を示す概要断面説明図である。なお点線で囲んだ部分はアルゴン雰囲気に置かれている。
【図2】液体急冷アモルファスNi−40Nb−xP合金のDSC曲線図である。
【図3】各種Ni−Nb−Ta−P合金の腐食速度を示す線図である。
【符号の説明】
1………吹き出し口つき石英管、2………溶融合金、3………高周波コイル、
4………銅鋳型、5………キャビティ、6………アルゴンガス送入孔

Claims (4)

  1. TaおよびNbの2種の合計で25〜65原子%を含むとともに、前記TaまたはNbのいずれか1種を3原子%以上とし、さらに2〜8原子%のPを含み、残部はiからなる高耐食バルクアモルファス合金。
  2. TaおよびNbの合計で20原子%以上含むとともに前記TaまたはNbのいずれか1種を3原子%以上とし、TiおよびZrのいずれか1種または2種と、前記TaおよびNbの1種または2種との合計で25〜65原子%を含み、さらに2〜8原子%のPを含み、残部はiからなる高耐食バルクアモルファス合金。
  3. TaおよびNbの2種の合計で25〜65原子%を含むとともに、前記TaまたはNbのいずれか1種を3原子%以上とし、さらに2〜8原子%のPを含み、残部はiからなる合金母材を溶融し、形成予定のバルク形状に急冷して固化することを特徴とする高耐食バルクアモルファス合金の製造方法。
  4. TaおよびNbの合計で20原子%以上含むとともに前記TaまたはNbのいずれか1種を3原子%以上とし、TiおよびZrのいずれか1種または2種と、前記TaおよびNbの1種または2種との合計で25〜65原子%を含み、さらに2〜8原子%のPを含み、残部はらなる合金を溶融し、形成予定のバルク形状に急冷して固化することを特徴とする高耐食バルクアモルファス合金の製造方法。
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