JP4343349B2 - 重合トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット記録法などに用いられる重合法による重合トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報及び同43−24748号公報等に記載されている如く、多くの方法が知られているが、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、熱・圧力などにより定着し複写画像を得るものである。また、トナーを用いて現像する方法あるいはトナー画像を定着する方法としては、従来各種の方法が提案されている。
【0003】
トナーには、優れた流動性と、安定した摩擦帯電性を有し、長期にわたって感光体上のカブリや画像濃度の低下が発生せず、高品質の印字が可能であることが求められる。トナーの流動性が悪いと、現像剤の供給不良となって、画像がカスレたり、画像濃度が低下する。また、クリーニング不良が発生し、現像剤が感光体上に残留し、カブリを生じたり、トナーによるフィルミングが生じたりする。感光体上にトナーのフィルムが形成されると、画像に白抜けや黒色の汚れが発生し、画質が低下する。
【0004】
トナーが優れた流動性を示し、高品質の画像を形成するには、球形であって、その粒度分布が小さいことが望ましい。
【0005】
従来、これらの目的に用いるトナーは一般に熱可塑性樹脂中に染・顔料からなる着色剤を溶融混合し、均一に分散した後、微粉砕装置,分級機により所望の粒径を有するトナーとして製造されてきた。
【0006】
この製造方法はかなり優れたトナーを製造し得るが、ある種の制限、すなわちトナー用材料の選択範囲に制限がある。例えば樹脂着色剤分散体が十分に脆く、経済的に可能な製造装置で微粉砕し得るものでなければならない。ところが、こういった要求を満たすために樹脂着色剤分散体を脆くすると、実際に高速で微粉砕した場合に形成された粒子の粒径範囲が広くなり易く、特に比較的大きな割合の微粒子がこれに含まれるという問題が生じる。トナーが満足できる現像特性を示すには、その粒径分布がある程度狭いものでなければならない。そこで、粉砕して得られた粒子を分級して、粗大粒子と微粒子を除去する必要がある。そのため、粉砕法では、歩留が悪くトナーの収率が低い。
【0007】
更に、このように脆性の高い材料は、複写機等現像用に使用する際、更なる微粉砕ないしは粉化を受けやすく、現像性に対して悪影響を及ぼす。
【0008】
また、この方法では、着色剤等の固体微粒子を樹脂中へ完全に均一に分散することは困難であり、その分散の度合によっては、カブリの増大,画像濃度の低下や混色性・透明性の不良の原因となるので、着色剤の分散には十分に注意を払わなければならない。また、粉砕粒子の破断面に着色剤が露出することにより、現像特性の変動を引き起こす場合もある。また、粉砕法では、球形で表面が均一なトナーを作製することが困難であり、流動性や摩擦帯電性の点で満足のいくものを得ることが困難である。
【0009】
他に、これら粉砕法によるトナーにおいては、ワックスの如き離型性物質を添加する場合に制約がある。すなわち、離型性物質の分散性を十分なレベルとするためには、▲1▼樹脂との混練温度において、ある程度の粘性を保つ必要があること、▲2▼離型性物質の含有量を約5重量%以下にすることなどである。このような制約のため、粉砕法によるトナーの定着性には限界がある。
【0010】
これら粉砕法によるトナーの問題点を克服するため、特公昭36−10231号公報、同43−10799号公報及び同51−14895号公報等による懸濁重合法トナーを始めとして、各種重合法トナーやその製造方法が提案されている。たとえば、懸濁重合法トナーでは、重合性単量体,着色剤,重合開始剤、更に必要に応じて架橋剤,荷電制御剤,その他添加剤を、均一に溶解または分散せしめて単量体組成物とした後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続相、例えば水相中に適当な撹拌機を用いて分散し、同時に重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得る。この方法は、粉砕工程が全く含まれないため、トナーに脆性が必要ではなく、樹脂として軟質の材料を使用することができ、また、粒子表面への着色剤の露出等が生じず、均一な摩擦帯電性を有するという利点がある。また、得られるトナーの粒度分布が比較的シャープなことから分級工程を省略または、分級したとしても、高収率でトナーが得られる。さらにこの方法によれば、上記の粉砕法トナーに科せられる制約がないことに加えて、ワックスを確実に内包化することができ、良好な定着性及び耐オフセット性が得られる。この方法によって得られる重合トナーは、球形で表面が均一であり、良好な現像特性を示す。
【0011】
このように、懸濁重合法による重合法トナーは、一般に、球形に近い均一な形状であるため、流動性、転写性が良好で、多数回の連続現像を行っても、トナーへのストレスが少なく、感光体へのフィルミンクの発生が少ないという特徴を有している。
【0012】
しかし、重合法トナーを仔細に観察すると、不定形の形状や着色剤を含有しない無色のトナー(以下「不定形トナー」とよぶ)がわずかながら存在することが判明した。不定形トナーは、生成過程が通常の重合トナーと異なると考えられ、この存在割合が大きくなると摩擦帯電性などのトナー特性および画像評価した場合の現像特性に悪影響が現われ、画像濃度の変動、白い筋、カブリの発生などが見られる。したがって、重合トナーの製造方法において、不定形トナーの発生を防止することは、安定した性状のトナーを生産する上で重要な事項である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
前述の重合法トナー中の不定形トナーの生成原因としては、
▲1▼.未反応の重合性単量体蒸気が容器内の気相部に露出した部材の表面で凝縮し、気相部で熱せられ重合することによって、液相での通常の重合反応とは異なる組成・生成過程の重合体が生成し、付着/堆積する;
▲2▼.懸濁重合反応液の飛沫や発泡によって、懸濁重合体微粒子が、容器内の気相部に露出した部材の表面に付着し、熱により乾燥/凝固する。該付帯機器の表面温度が、重合性単量体の重合によって生成するポリマーのガラス転移温度より高い場合は融着がおこり付着が強固になる;
▲3▼.上記▲1▼および▲2▼が複合して起こる;
などが挙げられる。生成したスケール状付着物が、剥離することによって製品に混入し、不定形トナーとして観察されることがよく知られている。
【0014】
また、上記スケール状付着物が十分な大きさに成長してから剥離/脱落した場合、重合容器または蒸留容器に接続された配管部やバルブ等で、詰まりや固着の原因となることが判明した。このようなことは、スケール状付着物の頻繁な除去作業を要し、製造装置の稼働率の低下を招き、結果として製品であるトナーのコストアップにつながるため好ましくない。
【0015】
このスケール状付着物を防止するために、例えば特開平10−153878号公報に記載のごとく、水または分散媒体を重合容器の気相部にスプレーで広角に散布するなどの方法が提案されている。しかし、この方法では該容器気相部に、撹拌機軸や邪魔板、ノズル等その他の装置部材が存在する場合には、散布が行われない部分が生じたり、散布目標に対する適切なスプレー強度の調節が困難であるため、洗浄が不十分であったり、逆に液はねを促して付着面積を拡大してしまうなど十分な効果が得られない。
【0016】
したがって、本発明の目的は、重合工程および蒸留工程において、重合装置及び蒸留装置を構成する部材のうち、重合容器および蒸留容器の気相部に露出した部分の表面に、スケール状付着物を生成させることのない重合トナーの製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、重合および蒸留工程におけるスケール状付着物の生成を抑制するべく、鋭意検討を行った結果、重合装置及び蒸留装置を構成する部材のうち、重合容器および蒸留容器の気相部に露出した部分の表面に対し、該部材各々に専用の散水手段を配置し、該表面を常に濡れた状態とすることにより、上記部材の表面に懸濁重合反応液の飛沫や発泡によって運ばれる懸濁重合体微粒子、および該部分の表面で凝縮した未反応単量体の付着を防止することができ、これらがスケール化するのを防止できることを見出した。また、適切な散水手段を講じることにより、水を静かに流下させるため、付着面積を拡大する余分な液はねも生じない。
【0018】
以上の知見をもとに、本発明者らは発明を完成するに到った。
【0019】
すなわち、本発明は、邪魔板及び撹拌機軸を備えた略円筒の重合容器内で、重合性単量体組成物を、懸濁液として水性分散媒中で重合させる重合トナーの製造方法であって、
重合操作中、該重合容器の壁内周に近接して配置された円環状配管に通水して該円環状配管の外周に沿って設けられ、該懸濁液の液面より高い位置に位置するスリットまたは多数の小孔より、該重合容器の気相部に露出した内壁へと散水し、かつ、該邪魔板及び該撹拌機軸の気相部に露出した部分には、その直近に設置され、該懸濁液の液面より高い位置に位置する散水用配管の散水口から散水することを行ないながら重合操作を行うことを特徴とする重合トナーの製造方法に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明の重合トナーの製造方法としては、重合性単量体中に離型剤,着色剤,荷電制御剤,重合開始剤,架橋剤その他の添加剤を加え、ホモジナイザーまたは超音波分散機等の通常の撹拌機によって均一に溶解または分散せしめた単量体組成物を、分散安定剤を含有する水相中にクレアミックス又はホモミキサー等の高せん断力を有する撹拌機により分散せしめ、単量体組成物からなる液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度/時間を調整し造粒する。懸濁重合法においては、通常単量体系100質量%にたいして水100〜3000質量%を分散媒として使用するのが好ましい。その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持されるため、粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃の温度に設定して重合を行う。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温しても良く、更に、未反応の重合性単量体,副生成物等を除去するために反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を蒸留操作により留去しても良い。蒸留操作は常圧もしくは減圧下で行うことができる。重合反応および/または蒸留操作終了後、生成したトナー粒子をろ過/洗浄するが、この工程の前段もしくは後段で酸および/またはアルカリ処理を行うこともできる。最終的に液相と分離されたトナー粒子は公知の方法により乾燥される。
【0023】
本発明のトナーに用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトンが挙げられる。
【0024】
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
【0025】
本発明においては、上記した単官能性重合性単量体を単独或いは、2種以上組み合わせて、又は、上記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用する。上述の単量体の中でも、スチレン又はスチレン誘導体を単独もしくは混合して、又はそれらとほかの単量体と混合して使用することが、トナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
【0026】
本発明で用いられる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒の他、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.べーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.べーシックブルー3、C.I.べーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.べーシックグリーン4、C.I.べーシックグリーン6の如き染料;黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウォッチングレッドカルシウム塩、ブリリアントカーミン3B、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、キナクリドン、ローダミンレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGの如き顔料が挙げられる。
【0027】
本発明においては、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を施しておいたほうが良い。特に、染料系やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。染料系を表面処理する好ましい方法としては、あらかじめこれら染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられ、得られた着色重合体を単量体系に添加する。さらに、カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサンでグラフト処理を行っても良い。本発明では、磁性体を添加してもよいが、これも表面処理を行って用いるのが好ましい。
【0028】
離型剤としては、室温で固体状態のワックスが好ましく、特に融点40乃至100℃の固体ワックスがトナーの耐ブロッキング性、多数枚耐久性、低温定着性、耐オフセット性の点で良い。
【0029】
ワックスとしては、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如きポリメチレンワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、長鎖アルコール、エステルワックス及びこれらのグラフト化合物、ブロック化合物の如き誘導体が挙げられ、これらは低分子量成分が除去されたDSC吸熱曲線の最大吸熱ピークがシャープなものが好ましい。
【0030】
好ましく用いられるワックスとしては、炭素数15乃至100個の直鎖状のアルキルアルコール、直鎖状脂肪酸、直鎖状酸アミド、直鎖状エステルあるいは、モンタン系誘導体が挙げられる。これらワックスから液状脂肪酸の如き不純物を予め除去してあるものも好ましい。
【0031】
さらに、好ましく用いられるワックスは、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒又は、その他の触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;アルキレンを重合する際に副生する低分子量アルキレンポリマーを分離精製したもの;一酸化炭素及び水素からなる合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素ポリマーの蒸留残分から、あるいは、蒸留残分を水素添加して得られる合成炭化水素から、特定の成分を抽出分別したポリメチレンワックスが挙げられる。これらワックスには酸化防止剤が添加されていてもよい。
【0032】
定着画像の透光性を向上させるためには、固体エステルワックスが好ましく、該固体エステルワックスとしては、融点40乃至100℃を有するものが特に良い。
【0033】
本発明に用いられるエステル系ワックスは、下記一般式(I)乃至(VI)で示される化合物から形成され、融点40乃至100℃を有するものが用いられる。
【0034】
【化1】
(式中、a及びbは0〜4迄の整数であり、a+bは4である。R1及びR2は炭素数が1〜40の有機基であり、R1とR2との炭素数差が3以上である。m及びnは0〜25の整数であり、mとnは同時に0になることはない)
【0035】
【化2】
(式中、a及びbは0〜3の整数であり、a+bは1〜3である。R1及びR2は炭素数が1〜40の有機基であり、R1とR2との炭素数差が3以上である。R3は水素原子、炭素数が1以上の有機基である。但し、a+b=2のとき、R3のどちらか一方は、炭素数が1以上の有機基である。kは1〜3の整数である。m及びnは0〜25の整数であり、mとnが同時に0になることはない)
【0036】
【化3】
(式中、R1及びR3は炭素数6〜32を有する有機基であり、R1とR3は同じものであってもなくても良い。R2は炭素数1〜20を有する有機基を示す)
【0037】
【化4】
(式中、R1及びR2は炭素数6〜32を有する有機基であり、R1とR3は同じものであってもなくてもよい。
R2は−CH2CH2OC6H4OCH2CH2−、
【0038】
【化5】
(式中、aは0〜4の整数であり、bは1〜4の整数であり、a+bは4である。R1は炭素数が1〜40の有機基である。m及びnは0〜25の整数であり、mとnが同時に0になることはない)
【0039】
【化6】
一般式(VI)
R1−COO−R2
(式中、R1及びR2は同一又は異なる炭素数15〜45の炭化水素基を示す)。
【0040】
エステル系ワックスの融点としては40〜100℃が好ましい。融点が40℃未満ではトナーの耐ブロッキング性及び保形性が不十分であり、100℃を超えると離型効果が不十分となる。エステル化合物からなる離型剤としてのエステルワックスとして以下のものが例示される。
【0041】
【化7】
【0042】
【化8】
【0043】
該離型剤が、上記構造式を有するエステル化合物を有するエステルワックスの場合、良好な透明性を発現するとともに、トナー粒子中に含有せしめた場合には良好な定着性を示すものである。
【0044】
また、離型剤は、本発明においては、重合性単量体100質量%に対して5乃至40質量%(より好ましくは10〜30質量%)配合し、結果として、重合性単量体から生成された結着樹脂100質量%当り離型剤5乃至40質量%(より好ましくは10〜30質量%)トナー粒子に含有されるのが良い。
【0045】
本発明のトナーは荷電制御剤を含有してもよい。
【0046】
荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、例えばトナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
【0047】
また、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、ノンメタルカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0048】
トナーを正荷電性に制御するものとしては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのシオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのシオルガノスズボレート類;これらを単独で或は2種類以上組合せて用いることができる。これらの中でも、ニグロシン系、4級アンモニウム塩の如き荷電制御剤が特に好ましく用いられる。
【0049】
これらの荷電制御剤は、樹脂成分100質量%に対して、0.01〜20質量%(より好ましくは0.5〜10質量%)使用するのが良い。
【0050】
カラートナーの場合は、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。更に、重合法により得られるトナーの場合には、重合阻害性が無く水系への可溶化物の無い荷電制御剤が特に好ましい。
【0051】
重合性単量体を重合せしめる際に必要な重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤が用いられる。該重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが一般的には単量体に対し0.5〜20質量%添加され用いられる。開始剤の種類は、重合方法により若干異なるが、十時間半減期温度を参考に、単独又は混合し利用される。
【0052】
架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、4,4’−ジビニルビフェニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能性化合物を挙げることができる。
【0053】
また、重合性単量体組成物を水性媒体中に良好に分散させるための分散安定剤として、例えば無機系酸化物であるリン酸三カルシウム,リン酸マグネシウム,リン酸アルミニウム,リン酸亜鉛,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化マグネシウム,水酸化アルミニウム,メタケイ酸カルシウム,硫酸カルシウム,硫酸バリウム,ベントナイト,シリカ,アルミナ,磁性体,フェライト等が挙げられる。有機系化合物としては例えばポリビニルアルコール,ゼラチン,メチルセルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩,デンプン等が水相に分散させて使用される。これら分散安定剤は、重合性単量体100質量%に対して0.2〜10.0質量%を使用することが好ましい。
【0054】
これら分散安定剤は、市販のものをそのまま用いても良いが、細かい均一な粒度を有す分散粒子を得るために、分散媒中にて高速撹拌下にて該無機化合物を生成させることもできる。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合することで懸濁重合方法に好ましい分散剤を得ることができる。また、これら分散剤の微細化のため0.001〜0.1質量%の界面活性剤を併用しても良い。具体的には市販のノニオン,アニオン,カチオン型の界面活性剤が利用でき、例えばドデシル硫酸ナトリウム,テトラデシル硫酸ナトリウム,ペンタデシル硫酸ナトリウム,オクチル硫酸ナトリウム,オレイン酸ナトリウム,ラウリル酸ナトリウム,ステアリン酸カリウム,オレイン酸カルシウム等が好ましく用いられる。
【0055】
懸濁重合のように水系分散媒を用いる重合法の場合には、該重合性単量体組成物に極性樹脂を添加することにより、離型剤の内包化の促進を図ることができる。水系媒体中の重合性単量体組成物中に極性樹脂が存在した場合、親水性の違いから極性樹脂が水系媒体と重合性単量体組成物の界面付近に移行するため、トナー表面に極性樹脂が偏在する。その結果トナー粒子はカプセル構造を有し、多量の離型剤を含有する場合でも、離型剤の内包性が良好になる。
【0056】
該極性樹脂としては、トナー表面に偏在した際に、極性樹脂自身の流動性が期待できることから、特にポリエステル系樹脂が好ましい。
【0057】
本発明のトナーに用いることができる極性樹脂としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、しょうのう酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸の如き酸成分単量体と;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等のアルキレングリコール類及びポリアルキレングリコール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如き多価アルコール単量体とを縮合重合したものを挙げることができる。
【0058】
本発明により製造されるトナーを使用するにあたっては、各種特性付与を目的として外添剤を使用することができる。外添剤としては、トナーに添加した時の耐久性の点から、トナー粒子の重量平均径の1/10以下の粒径であることが好ましい。この添加剤の粒径とは、電子顕微鏡におけるトナー粒子の表面観察により求めたその平均粒径を意味する。外添剤としては、たとえば、以下のようなものが用いられる。
【0059】
金属酸化物(酸化アルミニウム,酸化チタン,チタン酸ストロンチウム,酸化セリウム,酸化マグネシウム,酸化クロム,酸化錫,酸化亜鉛など)・窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)・金属塩(硫酸カルシウム,硫酸バリウム,炭酸カルシウムなど)・脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウムなど)・カーボンブラック・シリカなど。
【0060】
これら外添剤は、トナー粒子100質量%に対し、0.01〜10質量%が用いられ、好ましくは、0.05〜5質量%が用いられる。これら外添剤は、単独で用いても、また、複数併用しても良い。それぞれ、疎水化処理を行ったものが、より好ましい。
【0061】
さらに本発明のトナーは、磁性材料を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或はこれらの金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物等が挙げられる。
【0062】
これらの強磁性体は平均粒子が2μm以下、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものが好ましい。トナー中に含有させる量としては樹脂成分100質量%に対し約20〜200質量%、特に好ましくは樹脂成分100質量%に対し40〜150質量%が良い。
【0063】
また、800kA/m印加での磁気特性が保磁力(Hc)1.6〜24kA/m、飽和磁化(σs)50〜200Am2/kg、残留磁化(σr)2〜20Am2/kgのものが好ましい。
【0064】
本発明に係る製造方法において、重合/蒸留装置を構成する部材のうち、重合/蒸留容器内の気相部に露出した部分を有するものとしては、容器内壁、撹拌機軸、邪魔板、原料投入口などのノズル類、各種センサー及びその保護管などが挙げられる。これら各部材の材質としては、ステンレス鋼、ガラス、FRPなど通常使用されるものを用いることができる。また、これらの表面は電解研磨、テフロンコーティング、グラスライニングなどの処理が施されていてもよい。
【0065】
散水手段は、不要な液はねを水が起こさず、静かに目的表面を流下し、付着の予想される面を常に濡らすことの可能なものの中から、該装置の構成により、適したものが選択される。例えば略円筒の容器内壁の場合には、壁内周に近接して配置された円環状配管に通水し、該配管の外周に沿って設けられたスリットまたは多数の小孔より、該容器内壁へと散水する方法が好適に用いられる。スリットの幅・長さ・間隔および小孔の径・個数・間隔は、所望の散水状態が得られるように適切に選択される。
【0066】
邪魔板、撹拌機軸などの場合は、直近に設置された散水口から、適切な圧力、流量で水を吐出させる方法を用いることができる。また、これらは目的物の大きさ、形状に合わせ同種または異種のものを複数組み合わせることもできる。
【0067】
散水は、重合操作および蒸留操作の行われている間中、連続的に行われることが望ましいが、通常は装置容積や操作条件、生産性などの都合から液量の増加を大きくしたくないことが多い。このような場合には、適当な頻度で間歇的に散水することができ、散水と散水の休止時間が1/600〜1/30の範囲内から適切に選択される比で交互に繰り返され、かつ休止時間が10分より長くならない範囲で行われることが好ましい。散水と散水の休止時間の比が1/600より小さい場合には、散水量が目的表面を常に濡らしておくには少なすぎ、1/30より大きい場合には、目的表面を常に濡らしておくための必要十分な水量より多くなってしまうため、液量の余分な増加を招き好ましくない。散水と散水の休止時間の比が上記の範囲内であっても、休止時間が10分より長い場合には、一度濡れた表面が再び乾いてしまうため好ましくない。
【0068】
散水される水の流量は、散水手段の違いにより大きく異なるが、いずれの場合においても目的表面を水が液はねを起こすことなく静かに流下し、かつ常に濡れた状態にしておくに十分な範囲に好適に調整される。
【0069】
散水される水の温度は、操作条件により適宜選択されるが、重合時には30℃〜90℃の範囲に設定することが好ましい。水温が30℃より低い場合には懸濁液温の低下を招き、90℃より高い場合には目的表面の温度が上昇し、懸濁重合体微粒子の融着が発生する可能性がある。蒸留操作時には、熱効率の観点から懸濁液温と同じ温度にすることが好ましい。
【0070】
本発明に係る重合装置には、液の撹拌手段として撹拌翼を用いることができる。ここで用いられる撹拌翼としては、懸濁液が滞留なく撹拌されるものならば特に限定されず、パドル翼、タービン翼、アンカー翼などの一般的な撹拌翼や市販のフルゾーン翼(神鋼パンテック社製)、マックスブレンド翼(住友重機社製)等を利用することができる。このうち、撹拌効率の点からフルゾーン翼、マックスブレンド翼が好ましく、特にフルゾーン翼が好ましく用いられる。
【0071】
また、本発明に係る蒸留装置においても、蒸留効率の観点から撹拌装置を用いることができるが、その際には上記重合装置で用いられるものと同様の撹拌翼が選択される。
【0072】
本発明に用いられる重合装置の好ましい様態を図を用いて説明する。図1は本発明に係る重合装置の一実施形態を示す。本重合装置は重合容器1、撹拌機軸2、撹拌翼3、撹拌モーター4、邪魔板5、加熱/冷却ジャケット6、円周にスリットもしくは多数の小孔を設けた散水用円環状配管7を有する。該配管にスリット又は小孔を設けた場合の部分拡大図を、それぞれ図2及び図3に図示する。さらに両端にそれぞれ撹拌機軸および邪魔板に近接した散水口を持つ散水用配管8、散水用配管への水の入口9、原材料投入口10、液排出口11を有する。符号12は懸濁液の液面を示す。
【0073】
次に、本発明に用いられる蒸留装置の好ましい一様態を図4を用いて説明する。本蒸留装置は蒸留容器21、撹拌機軸22、撹拌翼23、撹拌モーター24、邪魔板25、加熱ジャケット26、円周にスリットもしくは多数の小孔を設けた散水用円環状配管27を有する。該スリットおよび小孔は、図1の場合と全く同様に設けられる。さらに、両端にそれぞれ撹拌機軸および邪魔板に近接した散水口を持つ散水用配管28、散水用配管への水の入口29、原材料投入口30、液排出口31を有する。符号32は蒸留の留分の取り出し口を示し、必要ならばコンデンサーを接続し留分を凝縮させて取り出す。また、容器内の減圧が必要な場合は、留分の取り出し口32を真空ポンプなどの減圧装置に接続することができる。符号33は懸濁液の液面を示す。
【0074】
本発明により製造されるトナーは、通常一成分及び二成分系現像剤として、いずれの現像剤にも使用できる。たとえば、一成分系現像剤として、磁性体をトナー中に含有せしめた磁性トナーの場合には、現像スリーブ中に内蔵せしめたマグネットを利用し、磁性トナーを搬送及び帯電せしめる方法がある。また、磁性体を含有しない非磁性トナーを用いる場合には、ブレード及びファーブラシを用い、現像スリーブにて強制的に摩擦帯電しスリーブ上にトナーを付着させることで搬送せしめる方法がある。
【0075】
一方、一般的に利用されている二成分系現像剤として用いる場合には、本発明のトナーと共に、キャリアを用い現像剤として使用する。本発明に使用されるキャリアとしては特に限定されるものではないが、主として、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム元素からなる単独及び複合フェライト状態で構成される。飽和磁化、電気抵抗を広範囲にコントロールできる点からキャリア形状も重要であり、たとえば球状、扁平、不定形などを選択し、更にキャリア表面状態の微細構造、たとえば表面凸凹性をもコントロールすることが好ましい。一般的には、上記無機酸化物を焼成・造粒することにより、あらかじめ、キャリアコア粒子を生成した後、樹脂にコーティングする方法が用いられているが、キャリアのトナーへの負荷を軽減する意味合いから、無機酸化物と樹脂を混練後、粉砕・分級して低密度分散キャリアを得る方法や、さらには、直接無機酸化物とモノマーとの混練物を水系媒体中にて懸濁重合せしめ真球状分散キャリアを得る重合キャリアを得る方法なども利用することが可能である。
【0076】
上記キャリアの表面を樹脂等で被覆する系は、特に好ましい。その方法としては、樹脂等の被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて塗布しキャリアに付着せしめる方法、単に粉体で混合する方法等、従来公知の方法がいずれも適用できる。
【0077】
キャリア表面への固着物質としてはトナー材料により異なるが、例えばポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料及びそのレーキ、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などを単独或は複数で用いるのが適当であるが、必ずしもこれに制約されない。
【0078】
上記化合物の処理量は、一般には総量でキャリア100質量%に対し0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%である。
【0079】
これらキャリアの平均粒径は10〜100μm、好ましくは20〜50μmを有することが好ましい。
【0080】
該キャリアの特に好ましい態様としては、Cu−Zn−Feの3元系のフェライトであり、その表面をフッ素系樹脂とスチレン系樹脂の如き樹脂の組み合せ、例えばポリフッ化ビニリデンとスチレン−メチルメタクリレート樹脂;ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メチルメタクリレート樹脂、フッ素系共重合体とスチレン系共重合体;などを90:10〜20:80、好ましくは70:30〜30:70の比率の混合物としたもので、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%コーティングし、250メッシュパス・100メッシュオンのキャリア粒子が70質量%以上ある上記平均粒径を有するコートフェライトキャリアであるものが挙げられる。該フッ素系共重合体としてはフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(10:90〜90:10)が例示され、スチレン系共重合体としてはスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル(20:80〜80:20)、スチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル(20〜60:5〜30:10〜50)が例示される。
【0081】
上記コートフェライトキャリアは粒径分布がシャープであり、本発明のトナーに対し好ましい摩擦帯電性が得られ、さらに電子写真特性を向上させる効果がある。
【0082】
本発明におけるトナーと混合して二成分現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2質量%〜15質量%、好ましくは4質量%〜13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低く実用不可となり、15質量%を超えるとカブリや機内飛散を増加せしめ、現像剤の耐用寿命を短める。さらに、該キャリアの磁性特性は以下のものが良い。磁気的に飽和させた後の80kA/mにおける磁化の強さは30乃至300Am2/kgであることが必要である。さらに高画質化を達成するために、好ましくは100乃至250Am2/kgであることがよい。300Am2/kgより大きい場合には、高画質なトナー画像が得られにくくなる。30Am2/kg未満であると、磁気的な拘束力も減少するためにキャリア付着を生じやすい。
【0083】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0084】
本発明で用いた各測定方法について以下に述べる。
【0085】
(1)粒度分布および体積平均粒径の測定
1%塩化ナトリウム水溶液100〜150ml中に界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を0.5〜50mg加えた。この溶液を、超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行ったのち、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)により、100μmアパチャーを用いて2〜40μmの粒子の粒度分布を測定し、体積平均分布、個数平均分布を求め、これより体積平均粒径を得た。
【0086】
(2)画質
得られたトナー粒子に対して、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカを0.7質量%となるよう外添した。この外添されたトナーが8wt%となるように、アクリル樹脂でコートされたフェライトキャリアを混合し、二成分系現像剤を得た。この現像剤を変動のない環境下において、キヤノン製フルカラー複写機CLC500の改造機を用いて連続通紙による画出し耐久試験を行い、目視にて画像濃度の変動やムラ等を評価した。
【0087】
(3)カブリの測定
カブリの測定は、REFLECTOMETER MODEL TC−6DS(東京電色社製)を使用して測定し、下記式より算出した。数値が小さいほど、カブリが少ない。
【0088】
カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−サンプルの非画像部の反射率(%)
【0089】
(4)トナーの摩擦帯電量の測定
トナーの摩擦帯電量は、変動のない環境下にトナー及びキャリアを一昼夜放置した後、ブローオフ法に基づき、次の要領で摩擦帯電量を測定した。
【0090】
図5はトナーの摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。先ず、底に500メッシュのスクリーン43のある金属製の測定容器42に摩擦帯電量を測定しようとするトナーとキャリアの重量比8:92の混合物を50〜100ml容量のポリエチレン製のビンに入れ、200回手で振盪し、該混合物(現像剤)約0.2gを入れ金属製のフタ44をする。このときの測定容器42全体の重量を秤り、W1(g)とする。次に、吸引機41(測定容器42と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口47から吸引し風量調節弁46を調整して真空計45の圧力を2450Paとする。この状態で充分、好ましくは2分間吸引を行いトナーを吸引除去する。このときの電位計49が示した電位の最高値をV(ボルト)とする。ここで48はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。また、吸引後の測定容器全体の重量を秤りW2(g)とする。このトナーの摩擦帯電量(mC/kg)は下式の如く計算される。
【0091】
摩擦帯電量(mC/kg)=C×V÷(W1−W2)
【0092】
(5)不定形トナーの存在率
走査型電子顕微鏡を用いトナーを観察し、不定形トナーの存在率を算出した。不定形トナーの存在率(%)は下式のごとく計算される。
【0093】
不定形トナー存在率(%)=不定形トナーの個数÷全トナーの個数×100
【0094】
実施例1
下記のようにして、水系分散媒及び重合性単量体組成物をおのおの調製した。
【0095】
(水系分散媒の調製)
内容積160リットルの容器中で、下記の成分を混合し、60℃に加温した後、高速回転剪断撹拌機クレアミックス(エム・テクニック(株)製)を用いて回転数3700回転/分で撹拌した。
・水 98.4質量%
・Na3PO4 1.0質量%
【0096】
次に、容器内を窒素置換すると共に、これにCaCl20.6wt%を添加して反応させ、Ca3(PO4)2の微粒子を含む水系分散媒を得た。
【0097】
(重合性単量体組成物の調製)
・スチレン単量体 63.9質量%
・n−ブチルアクリレート単量体 13.1質量%
・キナクリドン系顔料 6.2質量%
・テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA 3.9質量%
・ジビニルベンセン 0.2質量%
・ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.8質量%
・エステルワックス(離型剤No.5) 9.6質量%
上記した成分のうちスチレン単量体の一部、キナクリドン系顔料、ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物を混合し、ハンディミル(三井鉱山(株)製)を用い5時間分散させた後、スチレン単量体の残部、その他の組成物を加えて60℃に加温して十分に相溶するまで混合した。その後、これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3質量%を添加して重合性単量体組成物とした。
【0098】
上記の重合性単量体組成物を、あらかじめ調製した水系分散媒中に投入して、クレアミックスの回転数を3700回転/分とし10分間撹拌し造粒を行った。
【0099】
(重合工程)
上記の工程で造粒した懸濁液を図1に示す重合装置に導入し、撹拌翼の回転数100回転/分、液温60℃で重合を行った。5時間経過後、重合温度を80℃に昇温し、加熱撹拌をさらに3時間継続して重合を完了させた。器壁に対する散水手段は円環状配管にスリットを設けたものを使用し、邪魔板及び撹拌機軸に対しては近接して設置した配管の先端に設けられたノズルを使用した。重合工程の間中、各散水手段からの一回あたりの散水量の合計が0.1kgとなるようにし、15分につき2秒間の頻度で間歇的に60℃の水を散水した。
【0100】
(トナー及び付着状況の評価)
重合装置中の懸濁液が降温した後、重合装置より懸濁液を排出させ、これに希塩酸を添加してトナー粒子表面に固着した分散剤を溶解し、固液分離後、水洗、ろ過、乾燥することにより重合トナー粒子を得た。不定形トナーの存在率は0.3%であった。トナー粒子の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径は7.6μmで、粒度分布もシャープであり、摩擦帯電量は−45mC/kgと高い値を示した。また、懸濁液排出後の重合容器内を調べたところ、壁面、撹拌機軸および邪魔板表面に乾燥重量で合計40.1gのスケール状付着物が生成していたが、付着物の除去を行わずに繰り返しトナーの製造を行っても、全く問題ないレベルであった。
【0101】
次に、得られたトナー粒子に疎水性シリカを外添し、アクリル樹脂で被覆したフェライトキャリアを混合して二成分系の現像剤とした。20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは0.3%で終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性の優れた画像が安定して得られた。
【0102】
実施例2
壁面、撹拌機軸および邪魔板表面への一回あたりの散水量の合計を0.15kgとし、頻度を5分につき3秒に設定した以外は、実施例1と全く同様にしてトナーを得た。不定形トナーの存在率は0.2%であった。トナー粒子の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径は7.2μmで、粒度分布は実施例1とほぼ同様であった。摩擦帯電量は−44mC/kgであった。スケール状付着物の量は乾燥重量で合計35.5gであり、付着物の除去を行わずに繰り返しトナーの製造を行っても、問題ないレベルであった。
【0103】
次に、実施例1と同様に20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは0.2%で終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性の優れた画像が安定して得られた。
【0104】
比較例1
壁面、撹拌機軸および邪魔板表面への散水を行わないこと以外は、実施例1と全く同様にしてトナーを得た。不定形トナーの存在率は3.8%であった。トナー粒子の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径は7.8μmで、粒度分布は実施例1とほぼ同様であった。摩擦帯電量は−33mC/kgであった。スケール状付着物の量は乾燥重量で合計150.4gであり、一部剥離して脱落しており、付着物除去を行わないと繰り返し製造ができない状況であった。
【0105】
次に、実施例1と同様に20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは1.3%で比較的早い時期から白い筋やムラが発生した。また感光体上にわずかにフィルミングの発生が見られた。
【0106】
実施例3
重合工程までを実施例1と全く同様に行った後に、重合装置から懸濁液を排出させ、これを図4に示す蒸留装置(器壁への散水手段はスリット)に導入し、撹拌翼の回転数100回転/分、液温80℃、蒸留容器内圧力49.3kPa(絶対圧)で5時間蒸留を行った。器壁に対する散水手段は円環状配管にスリットを設けたものを使用し、邪魔板及び撹拌機軸に対しては近接して設置した配管の先端に設けられたノズルを使用した。蒸留工程の間中、各散水手段からの一回あたりの散水量の合計が0.1kgとなるようにし、2分につき2秒間の頻度で間歇的に80℃の温水を散布した。蒸留工程終了後、トナーの評価を行ったところ、不定形トナーの存在率は0.3%であった。トナー粒子の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径は7.5μmで、粒度分布は実施例1とほぼ同様であった。摩擦帯電量は−42mC/kgであった。蒸留工程におけるスケール状付着物の量は乾燥重量で合計42.9gであり、付着物の除去を行わずに繰り返しトナーの製造を行っても、問題ないレベルであった。
【0107】
次に、実施例1と同様に20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは0.4%で終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性の優れた画像が安定して得られた。
【0110】
【発明の効果】
本発明によれば、懸濁重合法によるトナーの製造工程において、重合/蒸留装置を構成する部材のうち、重合/蒸留容器の気相部に露出した部分上に、スケール状付着物が生成するのを抑制することができる。該付着物が剥離し、通常の粒径が揃った球形のトナーに混入すると、不定形トナーとなり、トナーの性能を低下させるが、本発明によれば、該付着物の生成が著しく減少するため、その除去作業が本質的に不要になり、かつ画像形成を行った際に、画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性の優れた画像が安定して得られるトナーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る重合装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】散水用配管にスリットを設けた場合の部分拡大図である。
【図3】散水用配管に小孔を設けた場合の部分拡大図である。
【図4】本発明に係る蒸留装置の一実施形態を示す概略図である。
【図5】トナーの摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。
【符号の説明】
1 重合容器
2,22 撹拌機軸
3,23 撹拌翼
4,24 撹拌モーター
5,25 邪魔板
6,26 加熱ジャケット
7,27 散水用環状配管
8,28 散水用配管
21 蒸留容器
Claims (2)
- 邪魔板及び撹拌機軸を備えた略円筒の重合容器内で、重合性単量体組成物を、懸濁液として水性分散媒中で重合させる重合トナーの製造方法であって、
重合操作中、該重合容器の壁内周に近接して配置された円環状配管に通水して該円環状配管の外周に沿って設けられ、該懸濁液の液面より高い位置に位置するスリットまたは多数の小孔より、該重合容器の気相部に露出した内壁へと散水し、かつ、該邪魔板及び該撹拌機軸の気相部に露出した部分には、その直近に設置され、該懸濁液の液面より高い位置に位置する散水用配管の散水口から散水することを行ないながら重合操作を行うことを特徴とする重合トナーの製造方法。 - 散水が間歇的であり、散水と散水の休止時間が1/600〜1/30の範囲内で交互に繰り返され、かつ休止時間が10分より長くならないことを特徴とする請求項1に記載の重合トナーの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27584199A JP4343349B2 (ja) | 1999-09-29 | 1999-09-29 | 重合トナーの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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