JP3958100B2 - 重合法トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法などに用いられるトナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法に用いられるトナーには、優れた流動性と、安定した摩擦帯電性を有し、長期にわたって感光体上のカブリや画像濃度の低下が発生せず、高品質の印字が可能であること等が求められる。トナーの流動性が悪いと現像剤の供給不良となって、画像のカスレや画像濃度の低下が発生する。また、クリーニング不良が発生し、現像剤が感光体上に残留してカブリを生じたり、トナーによるフィルミングが生じたりする。感光体上にトナーのフィルムが形成されると、画像に白抜けや黒色の汚れが発生し、画質が低下する。
【0003】
トナーが優れた流動性を示し、高品質の画像を形成するには、トナー形状が球形であって、その粒度分布がシャープであることが望ましい。
【0004】
従来、上記の目的に用いるトナーの製造方法としては、熱可塑性樹脂中に染/顔料からなる着色剤を溶融混合し均一に分散した後、微粉砕および分級工程を経ることにより所望の粒径を有するトナーを得る粉砕法が最も一般的に用いられてきた。この製造方法はかなり優れたトナーを製造し得るが、ある種の制限、すなわちトナー用材料の選択範囲に制限がある。例えば、上記トナーの材料は、経済的に妥当な製造装置で微粉砕し得るに十分な脆さを有していなければならない。
【0005】
ところが、このような要求を満たすために該材料を脆いものにした場合、微粉砕工程で形成される粒子の粒度分布がブロードになり易く、特に微粒子の形成される割合が大きくなるという問題が生じる。トナーが満足できる現像特性を示すには、その粒度分布がある程度狭いものでなければならない。そこで、粉砕して得られた粒子を分級して粗大粒子と微粒子を除去する必要がある。このため、一般に粉砕法では歩留まりが悪く、トナーの収率が低い。更に、脆性の高いトナー材料は複写機等の現像用に使用する際、更なる微粉砕または粉化が起こり易いため、現像性に悪影響を及ぼす。
【0006】
また、上述した従来の製造方法では、着色剤等の固体微粒子を樹脂中へ完全に均一に分散することは困難であり、その分散の度合いによっては、カブリの増大、画像濃度の低下や混色性/透明性の不良の原因となるので、着色剤の分散には十分に注意を払わなければならない。また、粉砕粒子の破断面に着色剤が露出することにより、現像特性の変動を引き起こす場合もある。
【0007】
また、粉砕法では球形で表面が均一なトナーを作製することができず、流動性や摩擦帯電性の点で満足のいくものを得ることが困難である。さらに、上記粉砕法においては、ワックスの如き離型剤を添加する場合に制約がある。すなわち、離型剤の分散性を十分なレベルとするために、樹脂との混練温度において、ある程度の粘性を保つ必要があること、離型剤の含有量を約5質量%以下にすることなどである。このような制約のため、粉砕法によるトナーの定着性、離型性には限界がある。
【0008】
これら粉砕法によるトナーの問題点を克服するため、特公昭36−10231号公報、同43−10799号公報及び同51−14895号公報等に開示される懸濁重合法トナーを始めとして、各種重合法トナーやその製造方法が提案されている。たとえば、懸濁重合法トナーでは、重合性単量体、着色剤、離型剤、重合開始剤、更に必要に応じて架橋剤、荷電制御剤およびその他の添加剤を均一に溶解または分散せしめて重合性単量体組成物とした後、これを分散安定剤を含有する連続相、例えば水中に適当な撹拌機を用いて分散し、同時に重合反応を行わせて所望の粒径を有するトナー粒子を得る。
【0009】
この方法は粉砕工程が全く含まれないためトナーに脆性が必要ではなく、樹脂として軟質の材料を使用することができ、また粒子表面への着色剤の露出等が生じず、均一な摩擦帯電性を有するという利点がある。また、得られるトナーの粒度分布が比較的シャープなことから分級工程が必要な場合でも高収率でトナーが得られる。さらにこの方法によれば、上記の粉砕法トナーに科せられる制約がないことに加えて、ワックス等の離型剤を確実に内包化することができ、良好な定着性及び耐オフセット性が得られる。また、この方法によって得られる重合トナーは球形で表面が均一であるため、流動性、転写性が良好で、多数回の連続現像を行っても良好な現像特性を示し、トナーへのストレスが少なく、感光体へのフィルミングの発生が少ないという特徴を有している。
【0010】
前述したように、重合法によるトナーの製造方法には重合性単量体組成物の分散液を重合させる工程(以下、重合工程と呼ぶ)が含まれるが、この重合工程には通常、加熱冷却が可能な撹拌槽が用いられる。撹拌槽を用いた場合には操作性および安全性に対する配慮から、満液状態とはせずに撹拌槽内部上方に気相部を設けるのが一般的である。このように槽内に気相部が存在すると、発生する重合性単量体蒸気が該気相部に接する部材表面で凝縮し、そのまま熱重合することによって重合体付着物となる。また、気液界面近傍では撹拌等によって飛散した液が気相部に接する部材表面に付着し、これが乾燥しさらに加熱されて融着することによりやはり強固な付着物が発生する。撹拌槽を用いた重合工程では前述のいずれか、または両者が複合して起こることにより、付着物が堆積成長する。このような付着物が撹拌槽内に脱落した場合には、通常底部に設置される撹拌槽排出弁およびそれ以降の配管の閉塞が起こる可能性がある。
【0011】
いずれの場合にも安全性および操業安定性の低下を引き起こすため付着物除去作業が必須となり生産性の低下を招く。さらに脱落した付着物が重合性単量体組成物中に混入した場合には、製品性状に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0012】
重合工程中の付着物の生成を防ぐために提案されている方法として、例えば特開平10−153878号公報等がある。これには重合工程中、重合装置の気相部内壁に水または水系分散媒体を散布する方法が提示されているが、この方法では気相部内壁をまんべんなく濡らすためには散布手段を多数設置する必要があり、それ自体がまた付着部位となってしまう。また十分な効果を得るためには散布を間欠としても重合装置中の液量が大きく増加してしまうことが避けられず、必然的に生産性の低下を招くなど十分な効果を上げうるとはいえない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、重合工程を行う際に、重合装置内気相部での付着物の生成を防ぎ、生産性が高く、且つ安定した製品性状を有する重合法トナーの製造法を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、重合法によるトナーの製造方法において、重合工程の条件を特定のものとすることにより、重合装置内気相部における付着物の生成を防ぐことを見出した。
【0015】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)少なくとも重合性単量体および着色剤を含む重合性単量体組成物を水性媒体中で重合させる重合工程を有する重合法トナーの製造方法において、
該重合工程に用いる重合装置内気相部を霧状に噴出した水または水性分散媒で冷却し、
霧状に噴出した水または水性分散媒の滴径が質量基準のメジアン径で500μm以下であることを特徴とする重合法トナーの製造方法。
(2)霧状に噴出した水または水性分散媒が前述の重合装置内気相部に接する部材の表面に及ぼす単位面積当たりの衝撃力が2.0Pa未満であることを特徴とする(1)に記載の重合法トナーの製造方法。
(3)霧状に噴出した水または水性分散媒の温度が前記の重合工程における重合温度未満であることを特徴とする請求項(1)又は(2)に記載の重合法トナーの製造方法。
(4)霧状に噴出した水または水性分散媒の温度が前記の重合工程における重合温度より10℃以上低いことを特徴とする(1)〜(3)に記載の重合法トナーの製造方法。
(5)重合装置内部の気相と接する壁面の温度を、冷媒を用いて外部から冷却することにより、前記の重合工程における重合温度未満とすることを特徴とする(1)〜(4)に記載の重合法トナーの製造方法。
(6)重合装置内部の気相と接する壁面の温度を、冷媒を用いて外部から冷却することにより、前記の重合工程における重合温度より10℃以上低くすることを特徴とする(1)〜(5)に記載の重合法トナーの製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は乳化重合、分散重合、懸濁重合、シード重合などの各種重合法を用いたトナーの製造法に適用できる。乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤を用いて水溶性重合開始剤を含む水相中に分散させ、重合を行う方法である。分散重合法は、単量体は可溶で得られる重合体が不溶な有機溶剤を用い重合の進行に伴い重合体微粒子を析出させる方法である。懸濁重合は機械的撹拌などの手段を用いて単量体を水性分散媒中に分散させながら重合を行ってトナーを得る方法である。シード重合は一旦得られた重合体微粒子に更に単量体を吸着させた後、重合開始剤を用いて重合させる方法である。
【0017】
本発明の製造方法は、上記各重合法の中でも懸濁重合法に特に好適に用いることができる。以下、懸濁重合法による重合法トナーの製造方法を例に本発明のトナーの製造方法を説明する。
【0018】
まず、少なくとも重合性単量体および着色剤を含む重合性単量体組成物を調製し、これを分散相とする。
【0019】
一方、懸濁安定剤を含む水性分散媒を調製しこれを連続相とする。上記分散相をこの連続相に投入し、通常の撹拌機やT.K.ホモミクサー(特殊機化工業(株)製)、クレアミックス(エム・テクニック(株)製)などの高剪断力を有する撹拌機や超音波分散機等の分散手段により分散させ、重合性単量体組成物分散液とする。または、シラスポーラスガラスなどの多孔質体を用い、連続相中に分散相を圧入することにより重合性単量体組成物分散液を得ることもできる。
【0020】
これらの手段により得られた重合性単量体組成物分散液を引き続き重合工程に導入することにより懸濁重合体微粒子を得る。
【0021】
本発明における重合工程に用いる重合装置として撹拌槽を用いた例を図1に示す。図中符号1は撹拌槽、符号2は撹拌翼、符号3は温度調節ジャケット、符号4は分散液投入口、符号5は噴霧ノズル、符号6は排出口、符号7は液面、符号8は噴霧された水滴、符号9は撹拌軸および符号10は上部冷却ジャケットを各々示す。
【0022】
分散液投入口4より投入された重合性単量体組成物分散液は所定の時間だけ撹拌槽中で加熱撹拌され、重合が完了した後に排出口6より排出され次工程に送られる。撹拌槽に用いられる撹拌翼は重合性単量体組成物分散液中の液滴を滞留させることなく浮遊させ、かつ槽内の温度を均一に保てるようなものならばどのようなものを用いても良く、パドル翼、傾斜パドル翼、三枚後退翼、プロペラ翼、ディスクタービン翼、ヘリカルリボン翼、アンカー翼、フルゾーン(神鋼パンテック社製)、ツインスター(神鋼パンテック社製)、マックスブレンド(住友重機社製)、スーパーミックス(佐竹化学機械工業社製)、Hi−Fミキサー(綜研化学社製)などを用いることができる。
【0023】
重合工程が行われている間、噴霧ノズル5より霧状に水が噴出されることにより撹拌槽内気相部が冷却される。撹拌槽内気相部が冷却されると、重合性単量体組成物分散液より発生する重合性単量体蒸気が凝縮還流されるため、撹拌槽内気相部における重合性単量体蒸気分圧が低くなり、気相部と接する内壁面上での重合性単量体の凝縮量が著しく減少し、この部分での重合性単量体の熱重合がほとんど起こらなくなるために付着物の生成を抑制することができる。
【0024】
水の噴出は重合工程の間常時行っても良いが、撹拌槽内の液量の増加が問題となる場合には十分な冷却状態が達成できる程度であれば間欠的に行ってもよい。
【0025】
また上部冷却ジャケット10に冷媒を流すことにより撹拌槽内気相部に接する内壁を冷却することもできる。
【0026】
上述の重合装置を構成する各部材の材質としてはステンレス鋼、ガラス、FRP、セラミックなど通常使用されるものを用いることができる。また、これらの表面は電解研磨、フッ素樹脂コーティング、グラスライニングなどの処理が施されていてもよい。
【0027】
重合工程に用いられる撹拌槽内に設置される噴霧ノズルは、該ノズルより噴出された水または水性分散媒の滴径が500μm以下となるようなものが好ましい。水または水性分散媒の滴径が500μmより大きいと、液滴の比表面積が減少することにより、液滴と気相間での伝熱効率が小さくなるため気相部の冷却効果が著しく低減するので好ましくない。
【0028】
噴霧ノズルから液滴の噴出する際の圧力は一般に噴霧ノズルへの水または水性分散媒の供給量が多いほど大きくする必要があるが、このとき噴出された液滴が撹拌槽内気相部に接する部材の表面に及ぼす単位面積当たりの衝撃力が2.0Pa未満であるような圧力であることが好ましい。2.0Pa以上となるような圧力とした場合には液滴の有する速度が大きすぎるため、液滴と気相間の十分な熱交換が起こらないうちに各部材表面に到達するため、やはり気相部の冷却効果が低減し好ましくない。
【0029】
重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃で行われる。重合温度は終始一定でもよいが、所望の分子量分布を得る目的で重合工程後半に昇温してもよい。
【0030】
噴霧ノズルより噴出される水または水性分散媒の温度は前述の重合温度未満であることが好ましく、重合温度から10℃以上低いことが冷却効率の観点からより好ましい。
【0031】
噴霧ノズルのスプレーパターンはフルコーン、ホローコーン、フラットなど一般的ないずれのパターンを用いてもよい。その場合スプレー角度はできるだけ大きいほうが噴霧ノズルの設置位置に関わらず撹拌槽内気相部にくまなく水または水性分散媒の液滴を噴霧することができるため好ましい。
【0032】
撹拌槽内気相部に接する内壁面上での重合性単量体の熱重合をより効率よく抑制する目的で、該気相部に接する内壁を外部に設置した冷却ジャケットにより前述の重合温度未満となるよう冷却してもよい。このとき気相部に接する内壁の表面温度を重合温度から10℃以上低くすると、より効率よく熱重合を抑制することができる。
【0033】
また、未反応の重合性単量体や副生成物等の揮発性不純物を除去するために、重合工程終了後に一部水性分散媒を蒸留工程により留去してもよい。蒸留工程は常圧もしくは減圧下で行うことができる。
【0034】
重合工程または蒸留工程終了後、生成したトナー粒子を濾別し洗浄するが、この工程の前段もしくは後段で酸および/またはアルカリで処理することにより、得られた粒子表面の分散安定剤の除去を行うこともできる。最終的に液相と分離されたトナー粒子は公知の方法により乾燥される。本発明の製造方法により得られるトナーは、上述した重合法により得られるトナー粒子のみからなるものであっても良いし、必要に応じて他の添加剤をトナー粒子に外添して得られるものであっても良い。また、上記トナー粒子とキャリアとを混合して二成分現像剤としたものであっても良い。
【0035】
本発明のトナーに好適に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体または多官能性重合性単量体を使用することが出来る。単官能性重合性単量体としてはスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンの如きスチレン誘導体類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体類;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトン類などが挙げられる。
【0036】
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’-ビス(4-(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2'-ビス(4-(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
【0037】
本発明においては、上記した単官能性重合性単量体を単独、あるいは2種以上組み合わせて、または上記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用する。上述の単量体の中でもスチレンまたはスチレン誘導体を単独もしくは混合して、またはそれらとほかの単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性などの点から好ましい。
【0038】
本発明で用いられる着色剤としては、例えばカーボンブラック、鉄黒の他、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6の如き染料、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウォッチングレッドカルシウム塩、ブリリアントカーミン3B、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、キナクリドン、ローダミンレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGの如き顔料が挙げられる。
【0039】
着色剤を選択する上で、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要がある。特に染料やカーボンブラックは重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。好ましくはこれらに表面改質、例えば重合阻害のない物質による疎水化処理を施しておいたほうが良い。染料を表面処理する方法としては、予めこれら染料の存在下に重合性単量体を重合させる方法が挙げられ、得られた着色重合体を重合性単量体組成物に添加する。さらにカーボンブラックについては上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えばポリオルガノシロキサンでグラフト処理を行ってもよい。
【0040】
本発明で用いられるトナーには離型剤が添加されてもよい。離型剤としては室温で固体状態のワックスが好ましく、特に融点40〜100℃の固体ワックスがトナーの耐ブロッキング性、多数枚耐久性、低温定着性、耐オフセット性の点でよい。
【0041】
ワックスとしてはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如きポリメチレンワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、長鎖アルコール、エステルワックス及びこれらのグラフト化合物、ブロック化合物の如き誘導体が挙げられ、これらは低分子量成分が除去されたDSC吸熱曲線の最大吸熱ピークがシャープなものが好ましい。
【0042】
好ましく用いられるワックスとしては、炭素数15〜100個の直鎖状のアルキルアルコール、直鎖状脂肪酸、直鎖状酸アミド、直鎖状エステルあるいはモンタン系誘導体が挙げられる。これらワックスから液状脂肪酸の如き不純物を予め除去してあるものはより好ましい。
【0043】
定着画像の透光性を向上させるためには特に固体エステルワックスが好適に用いられる。
【0044】
これら離型剤は重合性単量体100質量部に対して1〜40質量部、より好ましくは4〜30質量部含有されるのがよい。
【0045】
本発明により製造されるトナーは荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては公知のものが利用できるが、例えばトナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ系染料金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
【0046】
また、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、非金属カルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0047】
トナーを正荷電性に制御するものとしては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類などがあり、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもニグロシン系、4級アンモニウム塩の如き荷電制御剤が特に好ましく用いられる。
【0048】
これらの荷電制御剤は重合性単量体100質量部に対して0.01〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部使用するのがよい。
【0049】
本発明に好ましく用いることができる重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物系重合開始剤;過酸化水素、過硫酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などの無機過酸化物、4価のセリウム塩などの酸化性金属塩などの酸化性物質と2価の鉄塩、1価の銅塩、3価のクロム塩等の還元性金属塩;アンモニア、低級アミン(メチルアミン、エチルアミン等の炭素数1〜6程度のアミン)、ヒドロキシルアミン等のアミノ化合物、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の還元性硫黄化合物、低級アルコール(炭素数1〜6程度)、アスコルビン酸又はその塩、および低級アルデヒド(炭素数1〜6程度)などの還元性物質との組み合わせからなるレドックス系開始剤を挙げることができる。開始剤は10時間半減期温度を参考に選択され単独又は混合して利用される。該重合開始剤の添加量は目的とする重合度により変化するが、一般的には重合性単量体100質量部に対し0.5〜20質量部が添加される。
【0050】
架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、4,4’-ジビニルビフェニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能性化合物を挙げることができる。
【0051】
分散媒は各種重合法に使用される公知のものを用いることができ、重合性単量体や重合法などによって適宜選択され、特に限定されない。なお、懸濁重合においては水性分散媒が用いられる。
【0052】
重合性単量体組成物を水性分散媒中に良好に分散させるための分散安定剤として、例えば無機化合物であるリン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ、チタニア等が挙げられる。有機系化合物としては、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が挙げられる。分散安定剤は重合性単量体100質量部に対して0.2〜10.0質量部を使用することが好ましい。
【0053】
これら分散安定剤は市販のものをそのまま用いても良いが、分散安定剤として上記無機化合物を用いる場合、細かい均一な粒度を有する分散粒子を得るために、分散媒中撹拌下にて無機化合物を生成させることもできる。例えばリン酸三カルシウムの場合、撹拌下の水中にリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を投入混合することで懸濁重合法に好適な分散剤を得ることができる。
【0054】
懸濁重合のように水性分散媒を用いる重合法の場合には、重合性単量体組成物に極性樹脂を添加することにより離型剤の内包化の促進を図ることができる。水性分散媒に懸濁した重合性単量体組成物中に極性樹脂が存在した場合、水に対する親和性の違いから極性樹脂が水性分散媒と重合性単量体組成物の界面付近に移行しやすいため、トナー表面に極性樹脂が偏在することになる。その結果トナー粒子はコア−シェル構造を有し、多量の離型剤を含有する場合でも離型剤の内包性が良好になる。
【0055】
このような極性樹脂としては、トナー表面に偏在しシェルを形成した際に極性樹脂自身のもつ流動性が期待できることから、特に飽和または不飽和のポリエステル系樹脂が好ましい。
【0056】
ポリエステル系樹脂としては、下記に挙げる酸成分単量体とアルコール成分単量体とを縮合重合したものを用いることができる。酸成分単量体としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、しょうのう酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸等を挙げることができる。アルコール成分単量体としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等のアルキレングリコール類及びポリアルキレングリコール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0057】
本発明の製造方法では、トナーへの各種特性付与を目的として外添剤を使用することができる。外添剤はトナーに添加した時の耐久性の点から、トナー粒子の平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。外添剤としては、たとえば金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化錫、酸化亜鉛など)、窒化物(窒化ケイ素など)、炭化物(炭化ケイ素など)、無機金属塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなど)、カーボンブラック、シリカなどが用いられる。
【0058】
これら外添剤はトナー粒子100質量部に対し0.01〜10質量部が用いられ、好ましくは0.05〜5質量部が用いられる。外添剤は単独で用いても、また複数併用しても良いがそれぞれ疎水化処理を行ったものがより好ましい。
【0059】
さらに、本発明の製造方法は、磁性材料を含有する磁性トナーの製造方法にも適用できる。この場合、トナーに含有される磁性材料は着色剤の役割を兼ねることもできる。本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性材料としてはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金およびその混合物等が挙げられる。
【0060】
これらの磁性体は平均粒径が2μm以下、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものがよい。上記磁性体のトナー中への含有量は、重合性単量体100質量部に対して約20〜200質量部、特に好ましくは重合性単量体100質量部に対して40〜150質量部がよい。
【0061】
また、上記磁性体の800kA/m印加時の磁気特性が、保磁力(Hc)1.6〜24kA/m、飽和磁化(σs)50〜200Am2/kg、残留磁化(σr)2〜20Am2/kgのものが好ましい。
【0062】
また、これらの磁性体のトナー粒子中での分散性を向上させるために、磁性体の表面を疎水化処理することも好ましい。疎水化処理にはシランカップリング剤やチタンカップリング剤などのカップリング剤類が用いられるが、中でもシランカップリング剤が好ましく用いられる。シランカップリング剤としてはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0063】
本発明により製造されるトナーは、前述したように、一成分及び二成分系現像剤のいずれにも使用できる。例えば一成分系現像剤として磁性体をトナー中に含有させた磁性トナーの場合には、現像スリーブ中に内蔵されたマグネットを利用して磁性トナーを搬送したり帯電する方法が用いられる。また、磁性体を含有しない非磁性トナーを用いる場合には、ブレード及びファーブラシを用い現像スリーブにて強制的に摩擦帯電しスリーブ上にトナーを付着させることで搬送させる方法がある。
【0064】
一方、本発明の製造方法により得られるトナーを、一般的に利用されている二成分系現像剤として用いる場合には、本発明により得られるトナーと共にキャリアを用い現像剤として使用する。本発明に使用されるキャリアとしては特に限定されるものではないが、主として鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガンおよびクロム元素からなる単独または複合フェライト状態で構成される。飽和磁化、電気抵抗を広範囲にコントロールできる点からキャリア形状も重要であり、たとえば球状、扁平、不定形などを選択し、更にキャリア表面状態の微細構造たとえば表面凸凹性をもコントロールすることが好ましい。一般的には上記無機酸化物を焼成、造粒することにより、あらかじめキャリアコア粒子を生成した後、樹脂をコーティングする方法が用いられているが、キャリアのトナーへの負荷を軽減する意味合いから、無機酸化物と樹脂を混練後、粉砕、分級して低密度分散キャリアを得る方法や、さらには直接無機酸化物とモノマーとの混練物を水性媒体中にて懸濁重合させて真球状分散キャリアを得る重合キャリアを得る方法なども利用することが可能である。
【0065】
上記キャリアの表面を樹脂等で被覆する系は特に好ましい。その方法としては樹脂等の被覆材を溶剤中に溶解または懸濁させて塗布しキャリアに付着せしめる方法、単に粉体で混合する方法等、従来公知の方法がいずれも適用できる。
【0066】
キャリア表面への固着物質としては、トナー材料により異なるが、例えばポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジ-tert-ブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料及びそのレーキ、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などを単独または複数で用いるのが適当であるが、必ずしもこれに制約されない。
【0067】
上記固着物質の使用量は、一般には総量でキャリア100質量部に対し0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部である。
【0068】
また、これらキャリアの平均粒径は10〜100μm、より好ましくは20〜50μmであることが望ましい。
【0069】
上記キャリアの特に好ましい態様はCu−Zn−Feの3元系のフェライトであり、その表面をフッ素系樹脂とスチレン系樹脂の如き樹脂の組み合わせ、例えばポリフッ化ビニリデンとスチレン−メチルメタクリレート樹脂、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メチルメタクリレート樹脂、フッ素系共重合体とスチレン系共重合体などを90:10〜20:80、好ましくは70:30〜30:70の比率の混合物としたものを0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%コーティングし、篩い分けした場合目開き63μmの篩を通過し、目開き37μmの篩上に残留するキャリア粒子が70質量%以上であり、且つ上記平均粒径を有するコートフェライトキャリアが挙げられる。該フッ素系共重合体としてはフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(10:90〜90:10)が例示され、スチレン系共重合体としてはスチレン-アクリル酸2-エチルヘキシル(20:80〜80:20)、スチレン-アクリル酸2-エチルヘキシル-メタクリル酸メチル(20〜60:5〜30:10〜50)が例示される。
【0070】
上記コートフェライトキャリアを用いれば、本発明により得られるトナーに対し好ましい摩擦帯電性が得られ、さらに電子写真特性を向上させる効果がある。
【0071】
該キャリアを本発明におけるトナーと混合して二成分現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として2〜15質量%、好ましくは4〜13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低く実用不可となり、15質量%を超えるとカブリや機内飛散を増加せしめ現像剤の耐用寿命を縮める。
【0072】
さらに、該キャリアの磁気特性は以下のものが良い。磁気的に飽和させた後の80kA/mにおける磁化の強さは30〜300Am2/kgであることが必要である。さらに高画質化を達成するために好ましくは35〜250Am2/kgであることがよい。300Am2/kgより大きい場合には高画質なトナー画像が得られにくくなる。30Am2/kg未満であると磁気的な拘束力が減少するためにキャリア付着を生じやすい。
【0073】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0074】
実施例中においては以下の各測定方法を用いた。
【0075】
(1)トナーの粒度分布および体積平均粒径の測定
1質量%塩化ナトリウム水溶液100〜150ml中に界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を0.5〜50mg加えた。この溶液を、超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行ったのち、コールターマルチサイザー(コールター社製)により、100μmアパチャーを用いて2〜40μmの粒子の粒度分布を測定しこれより体積平均粒径を得た。
【0076】
(2)変動係数の計算
トナーの粒度分布のシャープさは下記式で計算される個数変動係数により評価した。
変動係数=個数標準偏差/個数平均粒径×100
【0077】
(3)画質評価
得られたトナー粒子に対して、BET法で測定した比表面積が200m2/gである疎水性シリカ微粉体を0.7質量%となるよう外添した。この外添されたトナーが8質量%となるように、アクリル樹脂でコートされたフェライトキャリアを混合して二成分系現像剤を得た。この現像剤を変動のない環境下において、キヤノン製フルカラー複写機CLC700を用いて20000枚の連続通紙による画出し耐久試験を行い、目視にて画像濃度の変動やムラ等を評価した。
【0078】
(4)噴霧した水滴径
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて水滴の質量基準メジアン径を測定した。
【0079】
〈実施例1〉
以下の手順により重合体微粒子からなる重合法トナーを製造した。
【0080】
(重合性単量体組成物の調製)
スチレン単量体 61.8質量部
n−ブチルアクリレート単量体 14.8質量部
キナクリドン系顔料 7.0質量部
不飽和ポリエステル樹脂 4.4質量部
ジビニルベンゼン 0.3質量部
ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.9質量部
エステルワックス 10.8質量部
上記した成分のうちスチレン単量体の一部、キナクリドン系顔料およびジ-tert-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物を混合し、ハンディミル(三井鉱山(株)製)を用いて5時間分散させた後、これとスチレン単量体の残部および残りの成分を加熱撹拌可能な撹拌槽に投入し、撹拌を行いながら液温を60℃に昇温して十分に相溶するまで混合し重合性単量体組成物を得た。
【0081】
(水性分散媒の調製)
水 98.4質量部
Na3PO4 1.0質量部
上記の成分を高剪断力撹拌機クレアミックス(エム・テクニック(株)製)を備えた撹拌槽に投入し、60℃に加温しながらNa3PO4が完全に溶解するまで緩やかに撹拌した。
【0082】
次に、上記混合物にCaCl20.6質量部を添加してクレアミックスで30分間高速撹拌を行い、Ca3(PO4)2の微粒子の水懸濁液である水性分散媒を得た。
【0083】
(重合開始剤の添加)
重合性単量体組成物100質量部に対して2.6質量部の2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)を投入して撹拌混合し、重合開始剤を含む重合性単量体組成物を調製した。
【0084】
(重合性単量体組成物分散液の調製)
クレアミックスを備えた撹拌槽中に、前述の重合開始剤を添加した重合性単量体組成物と水性分散媒を質量比で1:4となるように投入し、7000回転/分の回転数で撹拌を行い重合性単量体組成物分散液を得た。
【0085】
(重合工程)
上述の工程により得られた重合性単量体組成物分散液を図1に示す撹拌槽に導入し、液温60℃で撹拌しながら重合を行った。5時間経過後、重合温度を80℃に昇温し加熱撹拌をさらに4時間継続して重合を完了させ重合体微粒子分散液を得た。この重合工程の間中、噴霧ノズルとして2箇所に設置された水圧一流体アトマイジングノズル(スプレーイングシステムス社製)から各々0.3L/hの流量で30℃の水を噴霧した。このとき撹拌槽内の気相部に接する壁面の温度は42℃であった。噴霧された水の滴径は330μm、撹拌槽内気相部に接する部材の表面に及ぼす単位面積当たりの衝撃力は1.5Paであった。
【0086】
重合体微粒子分散液を降温させた後、重合槽から排出された重合体微粒子分散液に塩酸を添加して、重合体微粒子表面を覆ったCa3(PO4)2を溶解し、固液分離後、水洗、ろ過、乾燥することにより重合体微粒子であるトナー粒子を得た。
【0087】
(繰り返しトナー製造)
重合性単量体組成物の調製から重合までの工程を上記と全く同様の手順で繰り返し、合計10回のトナー製造を行った。この間重合工程に用いた撹拌槽は途中で洗浄することなく繰り返し使用したが、槽内に付着物の生成はほとんど見られず、付着物の除去を行わずに再度繰り返し製造を行っても全く問題ない状態であった。
【0088】
(トナーの評価)
10回目のトナー製造により得られたトナー粒子の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径は7.1μmで変動係数が25%であり粒度分布もシャープであった。
【0089】
次に、得られたトナー粒子に疎水性シリカを外添し、アクリル樹脂で被覆したフェライトキャリアを混合することにより二成分系の現像剤を製造して画質評価を行ったところ、終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性に優れた画像が安定して得られた。
【0090】
〈比較例1〉
重合工程での水の噴霧を行わない以外は、実施例1と同様の方法により重合法トナーの繰り返し製造を行った。5回の繰り返し製造後に得られたトナー中に脱落混入した付着物と思われる塊が観察されたため繰り返し製造を中断した。重合工程に用いた撹拌槽内気相部には大量の付着物が観察され、以降付着物の除去作業なしに重合工程を行うことは好ましくない状態であった。
【0091】
また得られたトナー粒子の体積平均粒径は8.0μmで、変動係数は32%とかなりブロードな粒度分布であった。
【0092】
次にこのトナー粒子を用いて実施例1と同様に画質評価を行ったところ、かなり早い時期から白い筋や濃度ムラが発生した。
【0093】
〈比較例2〉
噴霧ノズルとしてユニジェットスプレーノズル(フルコーン)(スプレーイングシステムス社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により重合法トナーの繰り返し製造を行った。噴霧された水の滴径は1900μmであった。10回の繰り返し製造後、重合工程に用いた撹拌槽内気相部には付着物が多く観察されたが、あと数回は繰り返し製造が可能な程度であった。
【0094】
また得られたトナー粒子の体積平均粒径は7.6μmで、変動係数は29%とブロードな粒度分布であった。
【0095】
次にこのトナー粒子を用いて実施例1と同様に画質評価を行ったところ、比較的早い時期から白い筋や濃度ムラが発生した。
【0096】
〈比較例3〉
噴霧ノズルとしてユニジェットスプレーノズル(ホローコーン)(スプレーイングシステムス社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により重合法トナーの繰り返し製造を行った。噴霧された水の滴径は580μmであった。10回の繰り返し製造後、重合工程に用いた撹拌槽内気相部には付着物が比較的多く観察されたが、あと数回は繰り返し製造が可能な程度であった。
【0097】
また得られたトナー粒子の体積平均粒径は7.3μmで、変動係数は28%とブロードな粒度分布であった。
【0098】
次にこのトナー粒子を用いて実施例1と同様に画質評価を行ったところ、比較的早い時期から白い筋や濃度ムラが発生した。
【0099】
〈比較例4〉
噴霧スプレーに供給する水の圧力を噴霧される水が重合装置内気相部に接する部材の表面に及ぼす単位面積当たりの衝撃力が10Paとなるようにした以外は、実施例1と同様の方法により重合法トナーの繰り返し製造を行った。10回の繰り返し製造後、重合工程に用いた撹拌槽内気相部には付着物が観察されたが、付着物の除去なしに再度繰り返し製造を行っても問題ないレベルであった。
【0100】
また得られたトナー粒子の体積平均粒径は7.4μmで、変動係数は27%と比較的シャープな粒度分布であった。
【0101】
次にこのトナー粒子を用いて実施例1と同様に画質評価を行ったところ、若干の濃度ムラが発生した。
【0102】
〈比較例5〉
噴霧スプレーに供給する水の圧力を噴霧される水が重合装置内気相部に接する部材の表面に及ぼす単位面積当たりの衝撃力が3Paとなるようにした以外は、実施例1と同様の方法により重合法トナーの繰り返し製造を行った。10回の繰り返し製造後、重合工程に用いた撹拌槽内気相部にはわずかに付着物が観察されたが、付着物の除去なしに再度繰り返し製造を行っても問題ないレベルであった。
【0103】
また得られたトナー粒子の体積平均粒径は7.3μmで、変動係数は26%と比較的シャープな粒度分布であった。
【0104】
次にこのトナー粒子を用いて実施例1と同様に画質評価を行ったところ、わずかに濃度ムラが発生した。
【0105】
〈実施例2〉
噴霧スプレーに供給する水の温度を65μとした以外は、実施例1と同様の方法により重合法トナーの繰り返し製造を行った。10回の繰り返し製造後、重合工程に用いた撹拌槽内気相部には若干の付着物が観察されたが、付着物の除去をすることなしに再度繰り返し製造を行っても問題のない状態であった。
【0106】
また得られたトナー粒子の体積平均粒径は7.2μmで、変動係数は25%とシャープな粒度分布であった。
【0107】
次にこのトナー粒子を用いて実施例1と同様に画質評価を行ったところ、終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性に優れた画像が安定して得られた。
【0108】
〈比較例6〉
噴霧スプレーに供給する水の温度を85℃とした以外は、実施例1と同様の方法により重合法トナーの繰り返し製造を行った。10回の繰り返し製造後、重合工程に用いた撹拌槽内気相部には大量の付着物が観察され、以降付着物の除去作業なしに重合工程を行うことは好ましくない状態であった。
【0109】
また得られたトナー粒子の体積平均粒径は7.8μmで、変動係数は30%とブロードな粒度分布であった。
【0110】
次にこのトナー粒子を用いて実施例1と同様に画質評価を行ったところ、早い時期から白い筋や濃度ムラが発生した。
【0111】
〈実施例3〉
重合工程を行う際に上部冷却ジャケットに冷媒を供給し、撹拌槽内部の気相部に接する壁面を冷却した以外は、実施例1と同様の方法により重合法トナーの繰り返し製造を行った。このとき撹拌槽内部の気相部に接する壁面の温度は22℃であった。10回の繰り返し製造後、重合工程に用いた撹拌槽内気相部にはほとんど付着物は観察されず、付着物の除去をすることなしに再度繰り返し製造を行っても全く問題のない状態であった。
【0112】
また得られたトナー粒子の体積平均粒径は7.0μmで、変動係数は22%とシャープな粒度分布であった。
【0113】
次にこのトナー粒子を用いて実施例1と同様に画質評価を行ったところ、終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性に優れた画像が安定して得られた。
【0114】
【発明の効果】
本発明によれば、重合工程時の撹拌槽内の付着物の生成を防ぐことができるため、生産性を低下させることがなく製品性状も安定した重合法トナーの製造法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いられる重合装置を説明する図である。
【符号の説明】
1 撹拌槽
2 撹拌翼
3 温度調節ジャケット
4 分散液投入口
5 噴霧ノズル
6 排出口
7 液面
8 噴霧された水滴
9 撹拌軸
10 上部冷却ジャケット
Claims (6)
- 少なくとも重合性単量体および着色剤を含む重合性単量体組成物を水性媒体中で重合させる重合工程を有する重合法トナーの製造方法において、
該重合工程に用いる重合装置内気相部を霧状に噴出した水または水性分散媒で冷却し、
霧状に噴出した水または水性分散媒の滴径が質量基準のメジアン径で500μm以下であることを特徴とする重合法トナーの製造方法。 - 霧状に噴出した水または水性分散媒が前述の重合装置内気相部に接する部材の表面に及ぼす単位面積当たりの衝撃力が2.0Pa未満であることを特徴とする請求項1に記載の重合法トナーの製造方法。
- 霧状に噴出した水または水性分散媒の温度が前記の重合工程における重合温度未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合法トナーの製造方法。
- 霧状に噴出した水または水性分散媒の温度が前記の重合工程における重合温度より10℃以上低いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の重合法トナーの製造方法。
- 重合装置内部の気相と接する壁面の温度を、冷媒を用いて外部から冷却することにより、前記の重合工程における重合温度未満とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の重合法トナーの製造方法。
- 重合装置内部の気相と接する壁面の温度を、冷媒を用いて外部から冷却することにより、前記の重合工程における重合温度より10℃以上低くすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の重合法トナーの製造方法。
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