JP3943866B2 - 重合法トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット記録法などに用いられる重合法トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報及び同43−24748号公報等に記載されている如く、各種の方法が提案されているが、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、熱/圧力などにより定着し複写画像を得るものである。
【0003】
電子写真法に用いられるトナーには、優れた流動性と安定した摩擦帯電性を有し、長期にわたって感光体上のカブリや画像濃度の低下が発生せず、高品質の印字が可能であること等が求められる。トナーの流動性が悪いと現像剤の供給不良となって、画像がカスレたり画像濃度が低下する。また、クリーニング不良が発生し、現像剤が感光体上に残留し、カブリを生じたりトナーによるフィルミングが生じたりする。感光体上にトナーのフィルムが形成されると、画像に白抜けや黒色の汚れが発生し画質が低下する。トナーが優れた流動性を示し高品質の画像を形成するには、球形であってその粒度分布がシャープであることが望ましい。
【0004】
従来、これらの目的に用いるトナーは一般に熱可塑性樹脂中に染/顔料からなる着色剤を溶融混合し均一に分散した後、微粉砕装置、分級機により所望の粒径を有するトナーとして製造されてきた。
【0005】
この製造方法はかなり優れたトナーを製造し得るが、ある種の制限、すなわちトナー用材料の選択範囲に制限がある。例えば該材料は経済的に妥当な製造装置で微粉砕し得るに十分な脆さを有していなければならない。ところが、こういった要求を満たすために該材料を脆いものにした場合、実際に高速で微粉砕した場合に形成される粒子の粒度分布がブロードになり易く、特に微粒子の形成される割合が大きくなるという問題が生じる。トナーが満足できる現像特性を示すには、その粒度分布がある程度狭いものでなければならない。そこで、粉砕して得られた粒子を分級して、粗大粒子と微粒子を除去する必要がある。このため、一般に粉砕法では歩留が悪くトナーの収率が低い。
【0006】
更に、このように脆性の高い材料は、複写機等現像用に使用する際、更なる微粉砕ないしは粉化を受けやすく、現像性に対して悪影響を及ぼす。また、この方法では、着色剤等の固体微粒子を樹脂中へ完全に均一に分散することは困難であり、その分散の度合によっては、カブリの増大、画像濃度の低下や混色性/透明性の不良の原因となるので、着色剤の分散には十分に注意を払わなければならない。また、粉砕粒子の破断面に着色剤が露出することにより、現像特性の変動を引き起こす場合もある。また、粉砕法では、球形で表面が均一なトナーを作製することができず、流動性や摩擦帯電性の点で満足のいくものを得ることが困難である。
【0007】
これら粉砕法によるトナーにおいては、ワックスの如き離型剤を添加する場合に制約がある。すなわち、離型剤の分散性を十分なレベルとするためには、▲1▼樹脂との混練温度において、ある程度の粘性を保つ必要があること、▲2▼離型剤の含有量を約5質量%以下にすることなどである。このような制約のため、粉砕法によるトナーの定着性/離型性には限界がある。
【0008】
これら粉砕法によるトナーの問題点を克服するため、特公昭36−10231号公報、同43−10799号公報及び同51−14895号公報等による懸濁重合法トナーを始めとして、各種重合法トナーやその製造方法が提案されている。たとえば、懸濁重合法トナーでは、重合性単量体、着色剤、離型剤、重合開始剤、更に必要に応じて架橋剤、荷電制御剤、その他添加剤を均一に溶解または分散せしめて単量体組成物とした後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続相、例えば水中に適当な撹拌機を用いて分散し、次いで重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得る。この方法は粉砕工程が全く含まれないためトナーに脆性が必要ではなく、樹脂として軟質の材料を使用することができ、また、粒子表面への着色剤の露出等が生じず、均一な摩擦帯電性を有するという利点がある。また、得られるトナーの粒度分布が比較的シャープなことから分級工程が省略可能であり、たとえ分級が必要である場合でも高収率でトナーが得られる。さらにこの方法によれば、上記の粉砕法トナーに科せられる制約がないことに加えて、ワックス等の離型剤を確実に内包化することができ、良好な定着性及び耐オフセット性が得られる。この方法によって得られる重合トナーは球形で表面が均一であるため、流動性や転写性が良好で、多数回の連続現像を行っても良好な現像特性を示しトナーへのストレスが少なく、感光体へのフィルミングの発生が少ないという特徴を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前述の懸濁重合法によるトナーの製造において、重合工程は通常撹拌手段および加熱冷却手段を有する竪型撹拌槽(一般に撹拌速度10〜500回転/分程度)を用いて行われるが、このとき液の撹拌流動状態が不十分であると、撹拌槽壁や撹拌軸近傍に液があまり動かない滞留部が生じ、槽内に温度分布が発生する。槽内に温度分布があると部分的に高温になって重合反応が促進される領域や逆に低温になって抑制される領域が生じ、結果として得られる重合体粒子の重合度や分子量分布などの性状が不均一となる。これらの性状が不均一であると摩擦帯電性や定着性などのトナー特性が安定せず好ましくない。また、部分的に高温になる領域の温度がトナー粒子のガラス転移温度より高い場合にはトナー粒子の合一が起こる可能性がある、合一した異形粒子の存在割合が大きくなると、摩擦帯電性などのトナー特性および画像評価した場合の現像特性に悪影響が現われ、画像濃度の変動、白い筋、カブリの発生が見られるなど、製品性状の低下を招き好ましくない。
【0010】
上記の問題を解決するためには液の撹拌流動状態を十分にする必要がある。撹拌翼により生じる循環流量は、一般に撹拌速度が大きいほど大きくなるが、撹拌速度を大きくし過ぎると、ボルテックスの発生や液面からの気泡の巻き込みといった問題が生じる。ボルテックスは撹拌の効率の低下を、気泡の巻き込みはトナー粒子の泡沫分離現象を引き起こし、トナー粒子が液面で凝集し合一する現象を引き起こす。また、これが撹拌槽壁気液界面近傍に付着すると融着が起こりスケール状付着物として堆積する。この堆積物が剥離して脱落し製品に混入すると、不定形の異形粒子として観察される。製品中における異形粒子の存在割合が大きくなると前述のごとく製品性状の低下を招き好ましくない。
【0011】
また、上記スケール状付着物が十分な大きさに成長してから剥離/脱落した場合、撹拌槽に接続された配管部やバルブ等で、詰まりや固着の原因となる。このため、付着物の頻繁な除去作業が必要となり、製造装置の稼働率の低下を招き、製品であるトナーのコストアップにつながる。
【0012】
したがって、本発明の目的は重合反応工程において撹拌槽内に熱的分布を生じない十分な循環流量を生じ、かつボルテックスや液表面からの気泡の巻き込みなどを生じないような最適な形状の撹拌翼を用いる重合法トナーの製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前述の課題を解決するべく、鋭意検討を行った結果、重合工程に用いる竪型撹拌槽に設置される撹拌翼として、アンカー翼及びこれと同一の回転軸上に取り付けられた板状翼を組み合わせたものを用いることにより、十分な流動状態を得、かつボルテックスの発生および気泡の巻き込みを起こさない最適な撹拌状態を達成できることを見出した。この方法によれば、アンカー翼で撹拌槽底および槽壁近傍の液を効率よく流動させ、板状翼によりその他の部分の撹拌流動を補うため、ボルテックスや気泡の巻き込みが発生しない緩やかな撹拌条件下でも滞留部のない良好な撹拌状態が得られる。
【0014】
以上の知見をもとに、本発明者らは本発明を完成するに到った。すなわち、本発明によれば、少なくとも重合性単量体および着色剤からなる重合性単量体組成物を、水性分散媒中に分散させ重合を行なうことによって得られる着色重合体粒子からなる重合法トナーを製造する方法において、
該重合工程を竪型撹拌槽を用いて行い、該撹拌槽に設置される撹拌翼がアンカー翼およびこれと同一の回転軸上に取り付けられた板状翼を組み合わせたものであり、
該撹拌翼を構成するアンカー翼が、その両翼端面が同一平面上になく、かつ回転により該撹拌槽の槽底方向への流れを生じるよう両翼端が回転軸の中心線に対して対称となるような、ひねりを有することを特徴とする重合法トナーの製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の重合法トナーの製造方法としては、重合性単量体中に少なくとも着色剤および必要であれば離型剤、荷電制御剤、重合開始剤、架橋剤その他の添加剤を加え、通常用いられる撹拌装置、ホモジナイザーまたは超音波分散機等によって均一に溶解または分散せしめた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水相中にクレアミックス(エム・テクニック(株)社製)又はホモミクサー(特殊機化工業(株)社製)等の高せん断力を有する撹拌機により分散せしめ、重合性単量体組成物からなる液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度および時間を調整し重合体粒子懸濁液を調製する。
【0017】
懸濁重合法においては、通常、重合性単量体組成物100質量部に対して水100〜3000質量部を分散媒として使用するのが好ましい。高せん断力を有する撹拌機を用いて重合体粒子懸濁液を調製した後は、分散安定剤の作用により粒子状態が維持されるため、粒子の沈降が起こらないような撹拌を行い重合工程を継続する。
【0018】
重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃の温度に設定して重合を行う。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温しても良く、更に未反応の重合性単量体,副生成物等を除去するために反応後半、又は反応終了後に一部水性媒体を蒸留操作により留去しても良い。蒸留操作は常圧もしくは減圧下で行うことができる。重合反応または引き続く蒸留操作終了後、生成したトナー粒子をろ過/洗浄するが、この工程の前段もしくは後段で酸および/またはアルカリ処理により、得られた粒子状表面の分散安定剤の除去を行うこともできる。最終的に液相と分離されたトナー粒子は公知の方法により乾燥される。
【0019】
本発明のトナーに用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。
【0020】
単官能性重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトンが挙げられる。
【0021】
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
【0022】
本発明においては、上記した単官能性重合性単量体を単独、或いは2種以上組み合わせて、又は上記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用する。上述の単量体の中でも、スチレン又はスチレン誘導体を単独もしくは混合して、又はそれらとほかの単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性などの点から好ましい。
【0023】
本発明で用いられる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒の他、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.べーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.べーシックブルー3、C.I.べーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.べーシックグリーン4、C.I.べーシックグリーン6の如き染料、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウォッチングレッドカルシウム塩、ブリリアントカーミン3B、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、キナクリドン、ローダミンレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGの如き顔料が挙げられる。
【0024】
着色剤を選択するうえでは、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは表面改質、例えば重合阻害のない物質による疎水化処理を施しておいたほうが良い。特に、染料系やカーボンブラックは重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。染料系を表面処理する好ましい方法としては、あらかじめこれら染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられ、得られた着色重合体を重合性単量体組成物に添加する。さらに、カーボンブラックについては上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えばポリオルガノシロキサンでグラフト処理を行っても良い。本発明では磁性体を添加してもよいが、これも表面処理を行ったものを用いるのが好ましい。
【0025】
離型剤としては室温で固体状態のワックスが好ましく、特に融点40〜100℃の固体ワックスがトナーの耐ブロッキング性、多数枚耐久性、低温定着性、耐オフセット性の点で良い。
【0026】
ワックスとしては、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如きポリメチレンワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、長鎖アルコール、エステルワックス及びこれらのグラフト化合物、ブロック化合物の如き誘導体が挙げられ、これらは低分子量成分が除去された、DSC吸熱曲線の最大吸熱ピークがシャープなものが好ましい。
【0027】
好ましく用いられるワックスとしては、炭素数15〜100個の直鎖状のアルキルアルコール、直鎖状脂肪酸、直鎖状酸アミド、直鎖状エステルあるいは、モンタン系誘導体が挙げられる。これらワックスから液状脂肪酸の如き不純物を予め除去してあるものはより好ましい。
【0028】
定着画像の透光性を向上させるためには、特に固体エステルワックスが好ましく、該固体エステルワックスとしては、融点40〜100℃を有するものが好適に用いられる。
【0029】
離型剤は、重合性単量体100質量部に対して1〜40質量部、より好ましくは4〜30質量部含有されるのが良い。
【0030】
本発明のトナーは荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、例えばトナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ系染料金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。また、尿素誘導体、合金属サリチル酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、ノンメタルカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0031】
トナーを正荷電性に制御するものとしては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類などがあり、これらを単独で或は2種類以上組合せて用いることができる。これらの中でも、ニグロシン系、4級アンモニウム塩の如き荷電制御剤が特に好ましく用いられる。
【0032】
これらの荷電制御剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.01〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部使用するのが良い。
【0033】
重合性単量体を重合せしめる際に必要であれば重合開始剤を用いることができる。本発明においては、例えば2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤が用いられる。開始剤の種類は重合方法により若干異なるが、十時間半減期温度を参考に単独又は混合し利用される。該重合開始剤の添加量は目的とする重合度により変化するが、一般的には重合性単量体100質量部に対し0.5〜20質量部添加され用いられる。
【0034】
架橋剤としては例えば、ジビニルベンゼン、4,4’−ジビニルビフェニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能性化合物を挙げることができる。
【0035】
重合性単量体組成物を水性媒体中に良好に分散させるための分散安定剤として、例えば無機系酸化物であるリン酸三カルシウム,リン酸マグネシウム,リン酸アルミニウム,リン酸亜鉛,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化マグネシウム,水酸化アルミニウム,メタケイ酸カルシウム,硫酸カルシウム,硫酸バリウム,ベントナイト,シリカ,アルミナ,チタニア等が挙げられる。有機系化合物としては例えばポリビニルアルコール,ゼラチン,メチルセルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩,デンプン等が挙げられる。分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2〜10.0質量部を使用することが好ましい。
【0036】
これら分散安定剤は、市販のものをそのまま用いても良いが、細かい均一な粒度を有する分散粒子を得るために、分散媒中高速撹拌下にて該無機化合物を生成させることもできる。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下の水中にリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を投入混合することで懸濁重合方法に好適な分散剤を得ることができる。
【0037】
また、これら分散剤の微細化のため水に対し0.001〜0.1質量%の界面活性剤を併用しても良い。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用でき、例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が好ましく用いられる。
【0038】
懸濁重合のように水系分散媒を用いる重合法の場合には、該重合性単量体組成物に極性樹脂を添加することにより、離型剤の内包化の促進を図ることができる。水系媒体中の重合性単量体組成物中に極性樹脂が存在した場合、親水性の違いから極性樹脂が水系媒体と重合性単量体組成物の界面付近に移行しやすいため、トナー表面に極性樹脂が偏在することになる。その結果トナー粒子はコア−シェル構造を有し、多量の離型剤を含有する場合でも、離型剤の内包性が良好になる。
【0039】
該極性樹脂としては、トナー表面に偏在しシェルを形成した際に、極性樹脂自身のもつ流動性が期待できることから、特に飽和または不飽和のポリエステル系樹脂が好ましい。極性樹脂としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、しょうのう酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸の如き酸成分単量体とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等のアルキレングリコール類及びポリアルキレングリコール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如き多価アルコール単量体とを縮合重合したものを挙げることができる。
【0040】
本発明により製造されるトナーを使用するにあたっては、各種特性付与を目的として外添剤を使用することができる。外添剤は、トナーに添加した時の耐久性の点から、トナー粒子の重量平均径の1/10以下の粒径であることが好ましい。この添加剤の粒径とは、電子顕微鏡による観察から求めたその平均粒径を意味する。外添剤としては、たとえば金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化錫、酸化亜鉛など)、窒化物(窒化ケイ素など)、炭化物(炭化ケイ素など)、無機金属塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウムなど)、カーボンブラック、シリカなどが用いられる。
【0041】
これら外添剤は、トナー粒子100質量部に対し、0.01〜10質量部が用いられ、好ましくは0.05〜5質量部が用いられる。外添剤は単独で用いても、また複数併用しても良いがそれぞれ疎水化処理を行ったものがより好ましい。
【0042】
さらに本発明のトナーは、磁性材料を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性材料としてはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルのような金属或はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物等が挙げられる。
【0043】
これらの強磁性体は平均粒子径が2μm以下、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものが好ましい。トナー中に含有させる量としては重合性単量体100質量部に対し約20〜200質量部、特に好ましくは重合性単量体100質量部に対し40〜150質量部が良い。また、800kA/m印加での磁気特性が保磁力(Hc)1.6〜24kA/m、飽和磁化(σs)50〜200Am2/kg、残留磁化(σr)2〜20Am2/kgのものが好ましい。
【0044】
また、これらの磁性体のトナー粒子中での分散性を向上させるために表面を疎水化処理することも好ましい。疎水化処理にはシランカップリング剤やチタンカップリング剤などのカップリング剤類が用いられるが、中でもシランカップリング剤が好ましく用いられる。シランカップリング剤としてはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0045】
本発明のトナーは一成分及び二成分系現像剤として、いずれの現像方式にも使用できる。たとえば、一成分系現像剤として磁性体をトナー中に含有せしめた磁性トナーの場合には、現像スリーブ中に内蔵せしめたマグネットを利用し磁性トナーを搬送及び帯電せしめる方法がある。また、磁性体を含有しない非磁性トナーを用いる場合には、ブレード及びファーブラシを用い現像スリーブにて強制的に摩擦帯電しスリーブ上にトナーを付着させることで搬送せしめる方法がある。
【0046】
一方、一般的に利用されている二成分系現像剤として用いる場合には、本発明のトナーと共に、キャリアを用い現像剤として使用する。本発明に使用されるキャリアとしては特に限定されるものではないが、主として鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム元素からなる単独及び複合フェライト状態で構成される。飽和磁化、電気抵抗を広範囲にコントロールできる点からキャリア形状も重要であり、たとえば球状、扁平、不定形などを選択し、更にキャリア表面状態の微細構造たとえば表面凸凹性をもコントロールすることが好ましい。一般的には上記無機酸化物を焼成、造粒することにより、あらかじめキャリアコア粒子を生成した後、樹脂をコーティングする方法が用いられているが、キャリアのトナーへの負荷を軽減する意味合いから、無機酸化物と樹脂を混練後、粉砕、分級して低密度分散キャリアを得る方法や、さらには直接無機酸化物とモノマーとの混練物を水系媒体中にて懸濁重合せしめ真球状分散キャリアを得る重合キャリアを得る方法なども利用することが可能である。
【0047】
上記キャリアの表面を樹脂等で被覆する系は特に好ましい。その方法としては、樹脂等の被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて塗布しキャリアに付着せしめる方法、単に粉体で混合する方法等、従来公知の方法がいずれも適用できる。
【0048】
キャリア表面への固着物質としてはトナー材料により異なるが、例えばポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジ−tert−ブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料及びそのレーキ、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などを単独或は複数で用いるのが適当であるが必ずしもこれに制約されない。
【0049】
上記化合物の処理量は一般には総量でキャリア100質量部に対し0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部である。
【0050】
これらキャリアの平均粒径は10〜100μm、好ましくは20〜50μmを有することが好ましい。
【0051】
該キャリアの特に好ましい態様としては、Cu−Zn−Feの3元系のフェライトであり、その表面をフッ素系樹脂とスチレン系樹脂の如き樹脂の組み合せ、例えばポリフッ化ビニリデンとスチレン−メチルメタクリレート樹脂、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メチルメタクリレート樹脂、フッ素系共重合体とスチレン系共重合体などを90:10〜20:80、好ましくは70:30〜30:70の比率の混合物としたもので、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%コーティングし、250メッシュパス、400メッシュオンのキャリア粒子が70質量%以上ある上記平均粒径を有するコートフェライトキャリアであるものが挙げられる。該フッ素系共重合体としてはフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(10:90〜90:10)が例示され、スチレン系共重合体としてはスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル(20:80〜80:20)、スチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル(20〜60:5〜30:10〜50)が例示される。
【0052】
上記コートラェライトキャリアは粒径分布がシャープであり、本発明のトナーに対し好ましい摩擦帯電性が得られ、さらに電子写真特性を向上させる効果がある。
【0053】
本発明におけるトナーと混合して二成分現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として2〜15質量%、好ましくは4〜13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低く実用不可となり、15質量%を超えるとカブリや機内飛散を増加せしめ現像剤の耐用寿命を縮める。
【0054】
さらに、該キャリアの磁性特性は以下のものが良い。磁気的に飽和させた後の80kA/mにおける磁化の強さは30〜300Am2/kgであることが必要である。さらに高画質化を達成するために好ましくは100〜250Am2/kgであることがよい。300Am2/kgより大きい場合には高画質なトナー画像が得られにくくなる。30Am2/kg未満であると磁気的な拘束力が減少するためにキャリア付着を生じやすい。
【0055】
本発明に係る製造方法に用いられる竪型撹拌槽としては、平底または湾曲した皿型の底を有する一般的な形状のものを選択することができる。竪型撹拌槽の材質としてはステンレス鋼、ガラス、FRPなど通常使用されるものを用いることができる。これらの表面は電解研磨、フッ素系樹脂コーティング、グラスライニングなどの処理が施されていてもよい。また、該撹拌槽には撹拌翼、撹拌翼回転軸、温度センサー、原料投入ノズルおよび邪魔板等が設置されるが、これらも撹拌槽と同様の材質かつ同様の表面処理がなされていてもよい。
【0056】
本発明に用いられる撹拌翼の好ましい様態を図を用いて説明する。図1に本発明に係る竪型撹拌槽及び撹拌翼の一実施形態を示す。図中、符号1は竪型撹拌槽、符号2はアンカー翼、符号3は板状翼、符号4は撹拌翼回転軸、符号5は液面を示す。また、アンカー翼と板状翼は、両翼面が直交するように配置されるほうが、より撹拌混合の効率の観点から好ましい。
【0057】
本発明に係る撹拌翼を構成するアンカー翼は図2の平面図に示すごとく、回転より槽底方向への流れを生じるような、ひねりを有していることがより好ましい。これにより槽底からのかき上げ効果が増大し、槽底近傍での滞留を防ぐ効果が、より顕著になる。図中、符号11は竪型撹拌槽、符号12はひねりを有するアンカー翼、符号13は板状翼、符号14は撹拌翼回転軸を示す。
【0058】
また、撹拌槽に図3に示すごとく一以上の邪魔板を設置することにより、さらに流動状態を良化することができる。図中、符号21は竪型撹拌槽、符号22はアンカー翼、符号23は板状翼、符号24は撹拌翼回転軸、符号25は邪魔板、符号26は液面を示す。また記号dはアンカー翼の翼外径を、記号d’は板状翼の翼外径を、記号bはアンカー翼の翼幅を、記号lは撹拌翼回転軸中心線から邪魔板の中心線までの距離を示す。邪魔板はd/2−b>l>d’/2を満たすように設置され、この時に邪魔板の効果を最大とすることができる。l>d/2−bでは槽壁と邪魔板の関係で滞留部が生じる可能性があり、l<d’/2では邪魔板の効果がほとんどなくなり、それぞれ好ましくない。
【0059】
本発明に係る撹拌翼を構成する板状翼は、図4(側面図)及び図5(平面図)に示すように翼面が撹拌軸の中心線に対して角度を有するように配置することができる。図中、符号31は竪型撹拌槽、符号32はアンカー翼、符号33は板状翼、符号34は撹拌翼回転軸、符号35は液面を示す。板状翼をこのように設置することにより回転によって縦方向の流れが生じ、特に撹拌翼回転軸近傍の滞留を防ぐ効果がより顕著になり好ましい。
【0060】
本発明に係る撹拌翼を有する竪型撹拌槽の他の実施形態を図6(側面図)及び図7(平面図)に示す。図中、符号41は竪型撹拌槽、符号42はひねりを有するアンカー翼、符号43は逆三角形の形状を有しかつ翼面が撹拌翼の回転軸の中心線に対して角度を有するよう設置された板状翼、符号44は撹拌翼回転軸、符号45は下端に板状部をもつ円筒状邪魔板、符号46は液面を示す。ひねりを有するアンカー翼、邪魔板、翼面が撹拌軸中心線に対して角度を有するように配置された板状翼による前述のごとき効果に加えて、板状翼を逆三角形の形状とすることにより、翼径の異なる板状翼を多段に並べたごとき効果が生じ、撹拌混合の効率が高まる。また邪魔板下端に板状部を設けることにより、板状翼からの吐出流に対する邪魔板効果が高まり、より撹拌混合の効率化を図ることができる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0062】
実施例中においては以下の各測定方法を用いた。
【0063】
(1)粒度分布および体積平均粒径の測定
1質量%塩化ナトリウム水溶液100〜150ml中に、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を0.5〜50mg加えた。この溶液を、超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行ったのち、コールターマルチサイザー(コールター社製)により、100μmアパチャーを用いて2〜40μmの粒子の粒度分布を測定し、これより体積平均粒径を得た。
【0064】
(2)画質
▲1▼カラー二成分系現像剤の画質評価
得られたトナー粒子に対して、BET法で測定した比表面積が200m2/gである疎水性シリカ微粉体を0.7質量%となるよう外添した。この外添されたトナーが8質量%となるように、アクリル樹脂でコートされたフェライトキャリアを混合し、カラー二成分系現像剤を得た。この現像剤を変動のない環境下において、キヤノン製フルカラー複写機CLC700を用いて連続通紙による画出し耐久試験を行い、目視にて画像濃度の変動やムラ等を評価した。
【0065】
▲2▼モノクロ一成分系現像剤の画質評価
得られたトナー粒子に対して、BET法で測定した比表面積が250m2/gである疎水性シリカ微粉体を1.2質量%となるよう外添しモノクロ一成分系現像剤を得た。この現像剤を変動のない環境下において、キヤノン製レーザープリンターLBP−1760を用いて連続通紙による画出し耐久試験を行い、目視にて画像濃度の変動やムラ等を評価した。
【0066】
(3)カブリの測定
カブリの測定は、REFLECTROMETER MODEL TC−6DS(東京電色社製)を使用して測定し、下記式より算出した。数値が小さいほど、カブリが少ない。
カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−サンプルの非画像部の反射率(%)
【0067】
(4)トナーの摩擦帯電量の測定
トナーの摩擦帯電量は、変動のない環境下にトナー及びキャリアを一昼夜放置した後、ブローオフ法に基づき次の要領で摩擦帯電量を測定した。
【0068】
図8はトナーの摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。摩擦帯電量を測定しようとするトナーとキャリアの質量比8:92の混合物を50〜100ml容量のポリエチレン製のビンに入れ200回手で振盪し混合した。この混合物約0.2gを、底に500メッシュのスクリーン53のある金属製の測定容器52に入れ金属製のフタ54をする。このときの測定容器52全体の質量を秤りW1(g)とする。次に、吸引機51(測定容器52と接する部分は絶縁体)により吸引口57から吸引し真空計55の指示を読み、風量調節弁56により圧力が2450Paとなるよう調節する。この状態で約2分間トナーを吸引除去する。このときの電位計59が示した電位の最高値をV(ボルト)、コンデンサー58の容量をC(μF)、吸引後の測定容器全体の質量をW2(g)とすると、このトナーの摩擦帯電量(mC/kg)は下式の如く計算される。
摩擦帯電量(mC/kg)=C×V÷(W1−W2)
【0069】
(5)異形粒子の存在率
走査型電子顕微鏡を用いトナー粒子を観察し、粒子の合一や付着物の混入に由来する異形粒子の存在率を算出した。異形粒子の存在率(%)は下式のごとく計算される。
異形粒子存在率(%)=異形粒子の個数÷全粒子の個数×100
【0070】
参考例1
下記のようにして水系分散媒及び重合性単量体組成物を各々調製した。
【0071】
(水系分散媒の調製)
内容積160リットルの容器中で下記の成分を混合し60℃に加温した。
・水 98.4質量%
・Na3PO4 1.0質量%
【0072】
次に容器内に窒素ガスを導入し容器内気相部の酸素濃度を0.5%以下とした後、CaCl20.6質量%を添加して高速回転剪断撹拌機クレアミックス(エム・テクニック(株)製)を用いて回転数6000回転/分で30分間撹拌を行うことにより、Ca3(PO4)2の微粒子を含む水系分散媒を得た。
【0073】
(重合性単量体組成物懸濁液の調製)
・スチレン単量体 63.9質量%
・n−ブチルアクリレート単量体 13.1質量%
・キナクリドン系顔料 6.2質量%
・不飽和ポリエステル樹脂 3.9質量%
・ジビニルベンゼン 0.2質量%
・ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.8質量%
・エステルワックス 9.6質量%
上記した成分のうちスチレン単量体の一部、キナクリドン系顔料、ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物を混合しハンディミル(三井鉱山(株)製)を用い5時間分散させた後、スチレン単量体の残部、その他の組成物を加えて60℃に加温して十分に相溶するまで混合した。その後、これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3質量%を添加して重合性単量体組成物とした。
【0074】
上記の重合性単量体組成物を、あらかじめ調製した水系分散媒中に投入して、クレアミックスの回転数を6000回転/分とし12分間撹拌し重合性単量体組成物懸濁液を得た。
【0075】
(重合工程および付着状況)
上記の工程で得た懸濁液を図1に示す竪型撹拌槽に導入し、撹拌翼の回転数40回転/分、液温60℃で重合を行った。5時間経過後、重合温度を80℃に昇温し加熱撹拌をさらに3時間継続して重合を完了させた。懸濁液が降温した後、撹拌槽中より懸濁液を排出させ、これに希塩酸を添加してトナー粒子表面に固着した分散剤を溶解し、固液分離後、水洗、ろ過、乾燥することにより重合トナー粒子を得た。懸濁液排出後、撹拌槽内に乾燥質量で合計30.7gのスケール状付着物が認められたが、これは、付着物の除去を行わずに繰り返しトナーの製造を行っても全く問題ないレベルであった。
【0076】
(トナーの評価)
トナー粒子の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径は7.2μmで、粒度分布もシャープであり、摩擦帯電量は−43mC/kgと良好な値を示した。異形粒子の存在率は1.0%であった。
【0077】
次に、得られたトナー粒子に疎水性シリカを外添し、アクリル樹脂で被覆したフェライトキャリアを混合して二成分系の現像剤とした。20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは0.9%で終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性の優れた画像が安定して得られた。
【0078】
実施例1
図2に示すようにアンカー翼部がひねりを有する撹拌翼を設置した竪型撹拌槽を用いた他は、参考例1と全く同様にしてトナーの製造を行った。反応終了後の撹拌槽内のスケール状付着物量は乾燥質量で合計17.5gであり、付着物の除去作業なしにさらなる連続操作が可能なレベルであった。異形粒子の存在率は0.5%であった。トナー粒子の体積平均粒径は7.3μmで、粒度分布は参考例1とほぼ同様であった。摩擦帯電量は−41mC/kgであった。
【0079】
次に、参考例1と同様に20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは0.6%で終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性の優れた画像が安定して得られた。
【0080】
参考例2
図3に示す竪型撹拌槽(ここにd=470mm、b=40mm、d’=110mm、l=155mm)を用いた他は参考例1と全く同様にしてトナーの製造を行った。反応終了後の撹拌槽内のスケール状付着物量は乾燥質量で合計12.2gであり、付着物の除去作業なしにさらなる連続操作が可能なレベルであった。異形粒子の存在率は0.4%であった。トナー粒子の体積平均粒径は7.5μmで、粒度分布は参考例1とほぼ同様であった。摩擦帯電量は−45mC/kgであった。
【0081】
次に、参考例1と同様に20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは0.4%で終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性の優れた画像が安定して得られた。
【0082】
参考例3
図4(側面図)および5(平面図)で示される竪型撹拌槽を用いた他は、参考例1と全く同様にしてトナーの製造を行った。反応終了後の撹拌槽内のスケール状付着物量は乾燥質量で合計24.6gであり、付着物の除去作業なしにさらなる連続操作が可能なレベルであった。異形粒子の存在率は0.8%であった。トナー粒子の体積平均粒径は7.3μmで、粒度分布は参考例1とほぼ同様であった。摩擦帯電量は−40mC/kgであった。
【0083】
次に、参考例1と同様に20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは0.7%で終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性の優れた画像が安定して得られた。
【0084】
実施例2
図6(側面図)および図7(平面図)で示される竪型撹拌槽を用いた他は、参考例1と全く同様にしてトナーの製造を行った。反応終了後の撹拌槽内のスケール状付着物量は乾燥質量で合計8.5gであり、付着物の除去作業なしにさらなる連続操作が可能なレベルであった。異形粒子の存在率は0.2%であった。トナー粒子の体積平均粒径は7.5μmで、粒度分布は参考例1とほぼ同様であった。摩擦帯電量は−41mC/kgであった。
【0085】
次に、参考例1と同様に20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは0.2%で終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性の優れた画像が安定して得られた。
【0086】
比較例1
図9に示すような通常のアンカー翼のみを備えた竪型撹拌槽を用いたほかは、参考例1と全く同様にしてトナーを製造した。図中、符号61は竪型撹拌槽、符号62はアンカー翼、符号63は撹拌翼回転軸、符号64は液面を示す。反応終了後の撹拌槽内のスケール状付着物量は乾燥質量で合計140.4gであり、一部剥離して脱落しており、付着物除去を行わないと繰り返し製造ができない状況であった。異形粒子の存在率は3.6%であった。トナー粒子の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径は7.8μmで、粒度分布は参考例1と比べ若干ブロードであった。摩擦帯電量は−30mC/kgであった。
【0087】
次に、参考例1と同様に20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは1.9%で比較的早い時期から白い筋や濃度ムラが発生した。
【0088】
比較例2
図10に示すような通常の2枚パドル翼および一対の邪魔板を備えた竪型撹拌槽を用いたほかは、参考例1と全く同様にしてトナーを製造した。図中、符号71は竪型撹拌槽、符号72は2枚パドル翼、符号73は撹拌翼回転軸、符号74は邪魔板、符号75は液面を示す。反応終了後の撹拌槽内のスケール状付着物量は乾燥質量で合計152.3gであり、一部剥離して脱落しており、付着物除去を行わないと繰り返し製造ができない状況であった。異形粒子の存在率は3.3%であった。トナー粒子の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径は7.6μmで、粒度分布は参考例1と比べ若干ブロードであった。摩擦帯電量は−34mC/kgであった。
【0089】
次に、参考例1と同様に20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは1.7%で比較的早い時期から白い筋や濃度ムラが発生した。
【0090】
実施例3
下記のようにして水系分散媒及び重合性単量体組成物を各々調製した。
【0091】
(水系分散媒の調製)
組成を下記のようにした以外は参考例1と全く同様にして水系分散媒を調製した。
・水 98.1質量%
・Na3PO4 2質量%
・CaCl2 0.7質量%
【0092】
(重合性単量体組成物懸濁液の調製)
・スチレン単量体 38.4質量%
・n−ブチルアクリレート単量体 10.8質量%
・シランカップリング処理磁性酸化鉄粒子 44.3質量%
・不飽和ポリエステル樹脂 2.0質量%
・飽和ポリエステル樹脂 0.5質量%
・モノアゾ系染料鉄化合物 0.5質量%
・エステルワックス 2.0質量%
上記した成分のうちスチレン単量体の一部、シランカップリング処理磁性酸化鉄粒子、モノアゾ系染料鉄化合物を混合しハンディミル(三井鉱山(株)製)を用い5時間分散させた後、スチレン単量体の残部、その他の組成物を加えて60℃に加温して十分に相溶するまで混合した。その後、これに重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.5質量%を添加して重合性単量体組成物とした。
【0093】
上記の重合性単量体組成物を、あらかじめ調製した水系分散媒中に投入して、クレアミックスの回転数を6000回転/分とし12分間撹拌し重合性単量体組成物懸濁液を得た。
【0094】
(重合工程および付着状況)
上記の工程で得た懸濁液を図6(側面図)および図7(平面図)で示される竪型撹拌槽に導入し、撹拌翼の回転数40回転/分、液温60℃で重合を開始した。直後から1時間かけて重合温度を80℃に昇温し加熱撹拌をさらに5時間継続して重合を完了させた。懸濁液が降温した後、撹拌槽中より懸濁液を排出させ、これに希塩酸を添加してトナー粒子表面に固着した分散剤を溶解し、固液分離後、水洗、ろ過、乾燥することにより重合トナー粒子を得た。懸濁液排出後、撹拌槽内に乾燥質量で合計12.9gのスケール状付着物が認められたが、これは、付着物の除去を行わずに繰り返しトナーの製造を行っても全く問題ないレベルであった。
【0095】
(トナーの評価)
トナー粒子の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径は7.2μmで、粒度分布もシャープであり、摩擦帯電量は−40mC/kgと良好な値を示した。異形粒子の存在率は0.3%であった。
【0096】
次に、得られたトナー粒子に疎水性シリカを外添し、一成分系の現像剤とした。20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは0.4%で終始画像濃度に変動もムラもなく、鮮明且つ定着性の優れた画像が安定して得られた。
【0097】
比較例3
図9に示す竪型撹拌槽を用いた他は実施例3と全く同様にしてトナーの製造を行なった。反応終了後のスケール状付着物量は乾燥質量で合計167.2gであり、その一部は剥離して脱落しており付着物除去を行わないと繰り返し製造ができない状況であった。異形粒子の存在率は4.0%であった。トナー粒子の体積平均粒径は7.3μmで、粒度分布は実施例3と比べ若干ブロードであった。摩擦帯電量は−31mC/kgであった。
【0098】
次に20000枚の画出し試験を行ったところ、カブリは1.9%で比較的早い時期から白い筋や濃度ムラが発生した。また感光体上にわずかにフィルミングの発生が見られた。
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、重合法トナー製造時の懸濁重合工程において、気泡の巻き込み等のおこらない緩やかな撹拌でありながら、撹拌槽内に熱的不均一や液の滞留部を生じない十分な流動状態を作り出すことが可能であり、トナー粒子性状の均一化、スケール状付着物の防止、これらに起因する異形粒子の生成を防止することができる。このため、画像形成を行った際に画像濃度に変動や濃度ムラがなく、鮮明且つ定着性の優れたトナーを得ることができる。また、堆積した付着物による熱伝導の阻害、付着物の脱落による配管の閉塞などが起こらないため、付着物の頻繁な除去作業が本質的に不要になり生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る竪型撹拌槽及び撹拌翼の実施形態を示す概略図である。
【図2】ひねりを有するアンカー翼の説明図である。
【図3】邪魔板を設置した撹拌槽の説明図である。
【図4】板状翼の説明図である。
【図5】板状翼の説明図である。
【図6】本発明に係る竪型撹拌槽の他の実施形態を示す概略図である。
【図7】本発明に係る竪型撹拌槽の他の実施形態を示す概略図である。
【図8】トナーの摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。
【図9】比較例で用いた竪型撹拌槽の説明図である。
【図10】比較例で用いた竪型撹拌槽の説明図である。
【符号の説明】
1 竪型撹拌槽
2 アンカー翼
3 板状翼
4 撹拌翼回転軸
5 液面
Claims (3)
- 少なくとも重合性単量体および着色剤からなる重合性単量体組成物を、水性分散媒中に分散させ重合を行なうことによって得られる着色重合体粒子からなる重合法トナーを製造する方法において、
該重合工程を竪型撹拌槽を用いて行い、該撹拌槽に設置される撹拌翼がアンカー翼およびこれと同一の回転軸上に取り付けられた板状翼を組み合わせたものであり、
該撹拌翼を構成するアンカー翼が、その両翼端面が同一平面上になく、かつ回転により該撹拌槽の槽底方向への流れを生じるよう両翼端が回転軸の中心線に対して対称となるような、ひねりを有することを特徴とする重合法トナーの製造方法。 - 該撹拌翼を構成する板状翼の翼面が、撹拌翼回転軸の中心線に対して角度を有するように配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の重合法トナーの製造方法。
- 該撹拌翼を構成する板状翼が、回転により縦方向の流れを生じるような、ひねりを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の重合法トナーの製造方法。
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