JP4342091B2 - ピストン挿入治具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフトやコンロッドが一体化されたピストンをシリンダスリーブに挿入する治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば自動二輪車用エンジンの組み立て工程において、クランクシャフトやコンロッドやピストンが一体化されるピストン小組体をシリンダブロックに組付ける際、図8に示すように、シリンダスリーブSの軸線方向が縦向きになるようにシリンダブロックBを作業台にセットし、作業者がクランクシャフトCを握ってピストンPの軸線を垂直にしてシリンダスリーブS内に挿入するとともに、シリンダスリーブS内へのピストンPの挿入が終えるとクランクシャフトCを上下に数回上下動させ、ピストンリングPrを馴らすのが一般的であるが、このような方法ではピストンPの姿勢を垂直に保ったままシリンダスリーブS内に挿入するのが難しく、またピストンリングPrの径はシリンダスリーブSの径より大きめであることから、挿入時にピストンリングPrが引っ掛かったり、損傷したりし易くなるため、本出願人は特願平11−29321号のように挿入作業を自動化した装置を提案している。
【0003】
この装置は、シリンダブロックが載置される作業台を貫通して、シリンダスリーブ内を挿通するピストン受け部材が上下動自在になるようにし、ピストンのトップ部をピストン受け部材に載せた状態にしてピストンを押し下げると同時にピストン受け部材を下降させることにより、ピストンの姿勢を保持したままシリンダスリーブ内に挿入出来るようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記技術ではピストンリングの引っ掛かり防止や損傷防止にはある程度有効であるものの、作業性が悪くて工数がかかり、またピストンリングの組付け等に100%の品質保証ができないという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、ピストンリングの引っ掛かり防止や損傷防止を図りつつ、より作業性の良い挿入治具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、クランクシャフトとコンロッドとピストンが一体に結合されるピストン小組体のピストンをシリンダスリーブに挿入するためのピストン挿入治具において、ピストンをシリンダスリーブの入口に案内するガイド筒と、このガイド筒をシリンダブロックの所定の位置に位置決めするためのセットプレートを設け、ガイド筒には、ピストンをシリンダスリーブに挿入する際にピストンリングを縮径させるピストンリング縮径手段を設けるとともに、セットプレートには、シリンダスリーブの軸線とガイド筒の軸線を一致させる位置決め手段を設け、またガイド筒とセットプレートの側面には、コンロッドより幅広の切欠きを形成するようにした。
【0007】
そしてセットプレートをシリンダブロックの所定位置に位置決めして、シリンダスリーブとガイド筒の軸線を一致させ、ガイド筒に沿ってピストンを押し込むことにより、そのままピストンをシリンダスリーブ内に挿入出来るようにする。
この際、ガイド筒の縮径手段によってピストンリングを縮径させながら押し込むようにし、また押し込み中のピストンの姿勢は、ガイド筒によって一定に保持されるため円滑に挿入することが出来る。
【0008】
ここで、ガイド筒の縮径手段としては、例えばガイド筒の内面をテーパ面とし、入口側の径がピストンリングの径より僅かに大きく、出口側の径がシリンダスリーブの径に概略等しい径にする等により構成することが出来、セットプレートの位置決め手段としては、例えばシリンダブロックのノックピン等を利用し、セットプレートに設けた係合孔をノックピンに係合させる等により構成することが出来る。
【0009】
また、ガイド筒とセットプレートの側面に、コンロッドより幅広の切欠きを形成することで、シリンダスリーブにピストンを挿入した後、挿入治具を取外す際、切欠きがコンロッドの軸線を通過するようにすれば取外すことが出来る。
これに対して、切欠きが無い場合は、挿入治具とクランクシャフト等が干渉して、治具を取り除くことが出来ない。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は本ピストン挿入治具の縦断面図、図2は同平面図、図3は図2のA方向から見た部分的側面図、図4はシリンダブロックの平面視図、図5はピストン挿入状態の説明図、図6はピストンを挿入した後、治具を取り除くときの状態を示す平面視図、図7はピストン小組体の斜視図である。
【0011】
本発明に係るピストン挿入治具は、図7に示すように、クランクシャフトCとコンロッドRとピストンPが連結されたピストン小組体QのピストンPを、クランクケースの半割り体とシリンダが一体化されるシリンダブロックBのシリンダスリーブS内に挿入する補助治具として開発され、作業性の容易化が図られると同時に、ピストンリングPrの引っ掛かりや損傷等を防止出来るようにされている。
【0012】
すなわち本ピストン挿入治具1は、図1乃至図3に示すように、クランクケースの所定位置に治具1を位置決めするためのセットプレート2と、ピストンPの挿入を案内するガイド筒3を備えており、前記セットプレート2を所定位置に位置決めすると、ガイド筒3の軸線がシリンダスリーブSの軸線に一致するようにされている。
【0013】
前記セットプレート2は、中間部にガイド筒3の一端部を挿通せしめてガイド筒3と一体化されており、対角方向の二ヶ所に位置決め手段としてのセット孔2hを備えている。
そしてこのセット孔2hは、図4に示すようなシリンダブロックBのクランクケースの割り面の二ヶ所のノックピンnの位置に合わせて形成されており、割り面上にセットプレート2を載置した際、このノックピンnを挿通せしめることが出来るようにされている。
【0014】
前記ガイド筒3は、セットプレート2をクランクケースの割り面上に位置決めすると、図5に示すように、ガイド筒3の下端部がシリンダスリーブSの上端部に接続されるようになっており、このためガイド筒3の下端部は、シリンダスリーブSの上端形状に合わせた接続形状にされている。
【0015】
また、ガイド筒3の上端部附近の内面には、図1に示すように、ピストンリング縮径手段としてのテーパ面3tが形成されており、このテーパ面3tは、上端開口側が大径になるとともに、下方側が小径となり、上端開口側の大径部の径は、ピストンリングPrの径より僅かに大きく、下方の小径側の径は、ピストンリングPrの径より僅かに小さい径とされている。
【0016】
また、前記セットプレート2とガイド筒3の側面には、それぞれ切欠き2k、3kが縦方向に貫通して形成されており、この切欠き2k、3kの幅は、コンロッドRの幅より幅広にされている。
そしてこの切欠き2k、3kは、後述する要領でシリンダスリーブS内にピストンPを挿入した後、治具1を引抜いて取り除く際、ピストン小組体Qに干渉するのを防止するためのものである。
【0017】
因みに、ガイド筒3の上端面は、図3に示すように、切欠き3kの位置を中心にして斜めに切断したような傾斜面vとされており、後述する要領で治具1を取出す際、コンロッドRが干渉しにくいようにしている。
【0018】
以上のようなピストン挿入治具1の作用等について説明する。
シリンダスリーブSを縦向きにし且つクランクケースの割り面を上方に向けた姿勢のシリンダブロックBをセットすると、図4の鎖線に示すようにセットプレート2のセット孔2hをノックピンnに嵌め込み、割り面上にセットプレート2をセットする。
この時、ガイド筒3の下端部は、図5に示すように、シリンダスリーブSの上端部に接続して軸線が一致する。
【0019】
次いで、作業者はピストン小組体QのクランクシャフトC等を保持してピストンPが下方に垂下する状態にし、ガイド筒3の上端開口部からピストンPを挿入する。そして図5に示すように、ピストン小組体Qを下方に押圧すれば、ピストンリングPrはテーパ部3tによって縮径し、ピストンPはそのまま下方のシリンダスリーブSに円滑に挿入される。
【0020】
シリンダスリーブS内へのピストンPの挿入が完了すると、図6に示すように、ピストン小組体QのクランクシャフトCの軸線をピストンPの軸線上から横にずらし、コンロッドRを切欠き2k、3kの上方に移動させる。
この状態で挿入治具1を真上に引抜けば、切欠き2k、3kがコンロッドRの部分を通過し、干渉することなく挿入治具1を引抜くことが出来る。
【0021】
以上のような方法により、ピストンリングPrはシリンダスリーブSに挿入される間、継続して縮径状態にあり、またピストンPの姿勢も挿入中に完全に垂直姿勢を保持出来るため、挿入作業が容易であり、しかもピストンリングPrの組付け等の品質保証が図られる。
【0022】
尚、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えばセットプレート2の位置決め手段としてのセット孔2h等は一例である。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明に係るピストン挿入治具は、ピストン小組体のピストンをシリンダスリーブに挿入する治具として、ピストンリング縮径手段を備えたガイド筒と、位置決め手段を備えたセットプレートを設け、またガイド筒とセットプレートの側面には、コンロッドより幅広の切欠きを形成するようにしたため、ピストンの姿勢を保持した状態でピストンリングを縮径させながらシリンダスリーブ内に挿入出来るようになり、作業の容易化が図られるとともに、品質保証が出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本ピストン挿入治具の縦断面図
【図2】同平面図
【図3】図2のA方向から見た側面図
【図4】シリンダブロックの平面視図
【図5】ピストン挿入状態の説明図
【図6】ピストンを挿入した後、治具を取り除くときの状態を示す平面視図
【図7】ピストン小組体の斜視図
【図8】従来のピストン挿入作業の説明図
【符号の説明】
1…ピストン挿入治具、2…セットプレート、2h…セット孔、2k…切欠き、3…ガイド筒、3t…テーパ面、3k…切欠き、B…シリンダブロック、Q…ピストン小組体、C…クランクシャフト、P…ピストン、Pr…ピストンリング、R…コンロッド。

Claims (1)

  1. クランクシャフトとコンロッドとピストンが一体に結合されるピストン小組体のピストンをシリンダスリーブに挿入するためのピストン挿入治具であって、前記ピストン挿入治具は、ピストンをシリンダスリーブの入口に案内するガイド筒と、このガイド筒をシリンダブロックの所定の位置に位置決めするためのセットプレートを備え、前記ガイド筒は、ピストンをシリンダスリーブに挿入する際にピストンリングを縮径させるピストンリング縮径手段を備えるとともに、前記セットプレートは、シリンダスリーブの軸線とガイド筒の軸線を一致させる位置決め手段を備え、また前記ガイド筒とセットプレートの側面には、コンロッドより幅広の切欠きが形成されることを特徴とするピストン挿入治具。
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