JP4339539B2 - 超音波用穿刺針 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、体腔内に導入して吸引生検や注射等を行うために使用する超音波用穿刺針に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、体腔内の患部を検査診断するため、超音波内視鏡により体腔内を観察しながら、穿刺針を用いて胃や十二指腸の消化管壁等から、膵臓、肝臓、腎臓等の深部臓器の目的部位に穿刺針を穿刺して、体腔内組織や体液を採取していた。
【0003】
この方法では、穿刺量が浅すぎたり、深すぎたりすると、針先が目的部位に到達しないので所望の位置での体腔内組織や体液採取を行えなくなる。また、針先を目的部位まで穿刺するためには針先を素早く移動させる必要があった。
【0004】
しかし、従来の超音波用穿刺針では、穿刺針の表面において反射された超音波によって得られる針管の超音波画像を超音波観察画像上に描出させていたため、針先と目的部位との位置関係及び距離に関する情報を正確に得ることができなかった。これは、穿刺針の外径寸法が1mmにも満たないものであり、この穿刺針の表面からの超音波の反射エコーが十分なものではなく、つまり超音波に対する造影性が低いので、超音波観察画像下に明瞭な穿刺針の画像が描出されないためである。
【0005】
この不具合を解消するため、特開平11−076254号公報には、穿刺針の表面に複数の円環状の溝を形成することにより、様々な方向から入射した超音波をできるだけ入射した方向に反射させて、超音波観察画像上に針管の超音波画像を明瞭に描出されるようにした超音波用穿刺針が示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平11−076254号公報の超音波用穿刺針ではこの穿刺針の表面に形成した円環状の溝が格子状に配列されていたので、超音波振動子より出射された超音波が反射エコーとして超音波振動子に戻ってくる反射量が十分ではなかった。このため、より明瞭な針管の超音波画像を得て、針管と目的部位との位置関係及び距離の確認を精度良く行え、かつ針先を所望した量だけ突出させて穿刺を行える超音波用穿刺針が望まれていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、超音波画像下で、針管の先端部の位置を明瞭に描出させて、目的部位への穿刺を確実に行える超音波用穿刺針を提供することを目的にしている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の超音波用穿刺針は、超音波内視鏡の挿通チャンネルに進退自在に挿通されるシースと、このシースの基端部に位置する把持部を兼ねる操作部と、前記シース内を挿通して体腔内組織に穿刺される針管とを具備する超音波用穿刺針であって、
前記針管の先端部表面に、凸部と、側部である内側面、側部である外側面、及び底部である底面に反射エコーを得るための面部を有する円環状の溝とで構成される円環溝を、複数、配列している。
【0009】
そして、側部及び底部に面部を有する前記円環状の溝を、レーザー加工で前記針管の先端部表面に千鳥配列に形成している。
【0010】
一方、前記操作部は、シースの端部が固設される操作部本体と、この操作部本体に対して摺動自在に設けられ、穿刺の際に針管を移動させるスライダと、このスライダの摺動距離を所望の値に設定する前記操作部本体に対して摺動自在なストッパ部材及び、該ストッパ部材を所望の位置に固定するための固定ネジを備えたストッパとで構成されている。
【0011】
この構成によれば、先端部表面の略全面に高密度に設けられた面部を有する円環状の溝によって、垂直方向及び垂直方向以外から入射した超音波が入射した方向に多く反射する。
【0012】
そして、レーザー加工によって面部を有する円環状の溝を形成したことにより、円環状の溝を形成する際の加工費が安価になるとともに、反射面が増大する。
【0013】
一方、スライダを、操作部本体の所望の位置に設定配置したストッパ部材に当接させることによって、針管の先端がその設定量より多く突出することが防止されるので、突出量が深くなりすぎることを気にすることなく、スライダを素早く移動させて穿刺を行える。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1ないし図7は本発明の一実施形態に係り、図1は超音波用穿刺針を説明する図、図2は針管先端部を示す説明図、図3は図2のA−A線断面図、図4は円環溝の配列状態を説明する針管先端部の展開図、図5は超音波用穿刺針の構成を構成する図、図6は操作部の構成を説明する図、図7はストッパ部材を説明する図である。
【0015】
なお、図7(a)は切欠段部に配置されたストッパ部材近傍の拡大図、図7(b)は図6のB−B線断面図である。
【0016】
図1に示すように本実施形態の超音波用穿刺針1は、例えば内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿入されるシース2と、このシース2の基端部に配置された把持部を兼ねる操作部10と、この操作部10を介して前記シース2内に進退自在に挿通配置される先端部が鋭利な形状に形成された細長で薄肉の例えばステンレスパイプで形成された針管3とで主に構成されている。
なお、前記針管3内には先端が鋭利な形状のスタイレット4が挿脱自在に配置されるようになっている。
【0017】
図2ないし図4を参照して針管3の先端部を説明する。
図2に示すように前記針管3の先端部所定位置表面には超音波を反射させるための複数の円環状の溝である円環溝5,…,5が千鳥配列(図4の展開図参照)で設けられている。この円環溝5,…,5は、例えばYAGレーザーを使用して、所定形状の円環溝5が所定配列となるように、加工パターンを設定制御して形成したものである。
【0018】
具体的には、前記YAGレーザーから出力されるレーザー光のスポット径を例えば0.1mmに設定し、このレーザー光の照射位置を制御して図2ないし図4に示すように所定の径寸法の凸部5aを残こし、その凸部5aの周囲に所定幅寸法(w)の溝5bを円環状に形成し、このように形成される複数の円環溝5を千鳥配列にして、先端部表面に高密度に設けたものである。
そして、図3に示すように円環溝5には、浅い角度からの超音波の入射等に対して、反射エコーをより多く得られるように、略直線状の面部5cを円環溝5の底部及び側部に設けた断面形状で形成されている。
【0019】
このように、針管の先端部に円環溝を千鳥配列で設けたことによって、円環溝が先端部に高密度に配列されて、超音波振動子から出射された超音波の反射エコーを超音波振動子により多く反射させることができる。
また、円環溝に面部を設けたことによって、超音波の反射面が増大して、浅い角度で入射した超音波を、入射方向に対して多く反射させることができる。
これらのことによって、針管の円環溝を設けた先端部の超音波画像が超音波観察画像上に明瞭に描出される。このため、針管と目的部位との位置関係及び距離の測定を精度良く行える。
【0020】
さらに、面部を設けた円環溝をレーザー加工によって針管の先端部にパターン化して形成することにより、加工時間の大幅な短縮を実現して、針管の加工コストの低減を大幅に図ることができる。
このことによって、超音波用穿刺針を使い捨てタイプとして構成することが実現可能になる。
【0021】
ここで、図5ないし図7を参照して超音波用穿刺針1の構成を具体的に説明する。
なお、図5においては前記針管3及びスタイレット4の先端部が前記シース2内に配置された状態である。
【0022】
本実施形態の超音波用穿刺針1は使い捨てタイプとして構成されている。このため、前記シース2を、コスト低減が可能な、ポリエーテルサルホンやテフロン(登録商標)などの樹脂部材で形成している。なお、ポリエーテルサルホンやテフロン(登録商標)とは用途に応じて使い分けられる。
【0023】
図5及び図6に示すように前記操作部10は、前記シース2の基端部が固設される樹脂部材で形成した操作部本体11と、この操作部本体11に対して摺動自在に設けられる樹脂部材で形成したスライダ12と、このスライダ12の操作部本体11に対する摺動距離を測定結果に応じて所望の値に設定可能にする前記操作部本体11に対して摺動自在に配置される例えば樹脂製のストッパ部材13a及びこのストッパ部材13aに螺合配置されて、ストッパ部材13aを所望の位置に固定するための例えば金属製の固定ネジ13bを備えたストッパ13とで主に構成されている。
【0024】
前記操作部本体11は細長で基端部にフランジ部11aを形成したパイプ形状であり、先端部には前記シース2の基端部が固設された樹脂製の接続部14が接着固定されている。この接続部14の先端側には図示しない内視鏡の処置具挿通口金に連結固定される2条ネジ14aが形成されており、基端部には前記操作部本体11の先端部が配置される凹部14bが形成されている。なお、前記シース2は前記接続部14に構成された接続部14cに対して固定されている。
【0025】
図6及び図7(a)に示すように前記フランジ部11aの内周面には後述するガイドパイプを保持するOリング16が周凹部に配置されている。また、前記フランジ部11aより先端側の外周面所定位置には前記固定ネジ13bの先端面が当接する平面部を有する切欠段部11bが形成されている。
【0026】
製造、出荷時には前記切欠段部11bの平面部には固定ネジ13bの先端面が所定のトルクで当接されるようになっており、このことによって、前記スライダ12は操作部本体11の基端側に配置される。
【0027】
この配置状態のとき、前記針管3及びスタイレット4の先端部はシース2内に配置される。万一、スライダ12が何らかの外力の影響で先端側に移動された場合でも、前記固定ネジ13bの側部が切欠段部11bの立ち上がり部に当接してスライダ12の先端側への移動が停止される。なお、前記当接状態のとき、当然、シース2の先端から前記針管3及びスタイレット4の先端部は突出しない。
【0028】
図7(b)に示すように前記操作部本体11の外周面所定位置には前記ストッパ部材13aを長手方向に摺動移動させる際の案内溝となる摺動溝11cが形成されている。また、前記図5で示すように前記操作部本体11の外周面には前記ストッパ部材13aの配置位置を設定する際の目安となる目盛り11d,…,11dが複数、設けられている。これら目盛り11dは、例えばレーザーマーキングによって所定間隔(例えば5mm間隔)に形成されている。
【0029】
なお、前記ストッパ部材13aには前記摺動溝11cに係入配置される凸部13cが形成されている。このことによって、前記ストッパ部材13aが前記操作部本体11に対して長手方向に摺動移動する。
そして、図5に示す位置までストッパ部材13aを摺動移動させて、固定ネジ13bを螺合してストッパ部材13aを固定することによって、スライダ12の摺動距離が距離Lに設定される。つまり、スライダ12の最大移動距離が距離Lになる。
【0030】
図5ないし図7(a)に示すように前記スライダ12は、基端部に細径部12aを形成した段付のパイプ形状で形成されている。
前記スライダ12の外周面所定位置には把持性を考慮した複数の凹部12bが形成されている。そして、前記スライダ12の先端部にはこのスライダ12を前記操作部本体11に対して摺動自在に配置させるための摺動配置部材21が接着固定されている。
【0031】
一方、このスライダ12の基端部開口部には樹脂製の吸引口金部材22が配置される。この吸引口金部材22の先端部には前記針管3の基端部及び前記Oリング16に先端部が保持されるガイドパイプ23の基端部が一体的に設けられている。また、前記吸引口金部材22の基端部には樹脂製のスタイレット口金部材(図中の符号24参照)との連結部が設けられている。
【0032】
前記スタイレット口金部材24には前記スタイレット4の基端部が一体的に設けられており、このスタイレット口金部材24は前記吸引口金部材22の連結部に着脱自在に取り付けられる構成になっている。
【0033】
上述のように構成された超音波用穿刺針1は各構成部材を組み立てた後、滅菌消毒して、図示しない滅菌袋に収納される。この収納状態のとき、前記ストッパ13が初期位置である切欠段部11bに配置されているので、前記シース2の先端からスタイレット4又は針管3の先端が突出して滅菌袋に不具合が生じること等が防止されている。
【0034】
上述のように構成した使い捨てタイプの超音波用穿刺針1の作用を説明する。
まず、滅菌袋に収納されている超音波用穿刺針1を取り出す。そして、図示しない内視鏡の処置具挿通用チャンネルにシース2を挿入する。すると、目的部位が表示されている超音波観察画像上に前記シース2の先端部の超音波画像が明瞭に描出される。ここで、シース2の先端と目的部位との位置関係を設定し、その後、シース2の先端と目的部位との距離の測定を行う。
【0035】
次に、前記固定ネジ13bを緩め、前記距離に対応するように前記ストッパ部材13aを前記目盛り11dを参考にして操作部本体11上を摺動移動させ、所定位置まで移動したなら固定ネジ13bを締結する。
【0036】
この後、術者は、スライダ12を把持し、このスライダ12を前記ストッパ13に向けて素早く移動させる。このことによって、スタイレット4及び針管3の先端が目的部位に確実に穿刺される。
【0037】
そして、針管3が目的部位まで到達したことを確認したなら、スタイレット口金部材24とともにスタイレット4を吸引口金部材22から引き抜き、その後、この吸引口金部材22の連結部に図示しない注射筒等を接続して体腔内組織の吸引を行う。
【0038】
この吸引により針管3内へ体腔内組織が入り込み、深部組織部位の生検が達成される。この検査終了後、前記超音波用穿刺針1を廃棄する。
【0039】
このように、超音波観察画像上に表示されるシース先端部の超音波画像と目的部位との位置関係を設定した後、シースの先端と目的部位との距離を測定し、その測定した距離に合わせて、ストッパ部材を移動させて操作部本体の所望の位置にストッパを固定配置することによって、スライダを素早く移動させて、目的部位への穿刺を確実に行うことができる。
【0040】
なお、前記超音波用穿刺針が従来のように使用後に滅菌するタイプの場合であっても前記ストッパを設けるようにしてもよい。
【0041】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【0042】
[付記]
以上詳述したような本発明の上記実施形態によれば、以下の如き構成を得ることができる。
【0043】
(1)超音波内視鏡の挿通チャンネルに進退自在に挿通されるシースと、このシースの基端部に位置する把持部を兼ねる操作部と、前記シース内を挿通して体腔内組織に穿刺される針管とを具備する超音波用穿刺針において、
前記針管の先端部表面に、複数の円環状の溝を千鳥配列で設けた超音波用穿刺針。
【0044】
(2)前記円環状の溝をレーザー加工で形成し、この溝の底部及び側部に面部を設けた付記1に記載の超音波用穿刺針。
【0045】
(3)前記操作部を、シースの端部が固設される操作部本体と、この操作部本体に対して摺動自在に設けられ、穿刺の際に針管を移動させるスライダと、このスライダの摺動距離を所望の値に設定する前記操作部本体に対して摺動自在なストッパ部材とで構成した付記1に記載の超音波用穿刺針。
【0046】
(4)前記操作部本体、前記スライダを樹脂部材で形成した付記3記載の超音波用穿刺針。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、超音波画像下で、針管の先端部の位置が明瞭に描出させて、目的部位への穿刺を確実に行える超音波用穿刺針を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1ないし図7は本発明の一実施形態に係り、図1は超音波用穿刺針を説明する図
【図2】針管先端部を示す説明図
【図3】図2のA−A線断面図
【図4】円環溝の配列状態を説明する針管先端部の展開図
【図5】超音波用穿刺針の構成を構成する図
【図6】操作部の構成を説明する図
【図7】ストッパ部材を説明する図
【符号の説明】
1…超音波用穿刺針
2…シース
3…針管
4…スタイレット
5…円環溝
10…操作部
Claims (3)
- 超音波内視鏡の挿通チャンネルに進退自在に挿通されるシースと、このシースの基端部に位置する把持部を兼ねる操作部と、前記シース内を挿通して体腔内組織に穿刺される針管とを具備する超音波用穿刺針において、
前記針管の先端部表面に、凸部と、側部である内側面、側部である外側面、及び底部である底面に反射エコーを得るための面部を有する円環状の溝とで構成される円環溝を、複数、配列したことを特徴とする超音波用穿刺針。 - 側部及び底部に面部を有する前記円環状の溝を、レーザー加工で前記針管の先端部表面に千鳥配列に形成したことを特徴とする請求項1に記載の超音波用穿刺針。
- 前記操作部は、シースの端部が固設される操作部本体と、この操作部本体に対して摺動自在に設けられ、穿刺の際に針管を移動させるスライダと、このスライダの摺動距離を所望の値に設定する前記操作部本体に対して摺動自在なストッパ部材及び、該ストッパ部材を所望の位置に固定するための固定ネジを備えたストッパとで構成されることを特徴とする請求項1に記載の超音波用穿刺針。
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