JP4338863B2 - バリアー性積層フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は優れたガスバリアー性を有する積層フィルム及び成形体並びに積層フィルムの製造方法に関し、特にボイル処理及びレトルト処理後にも優れたガスバリアー性を有し、耐熱水性にも優れたガスバリアー性積層フィルム及び成形体並びにバリアー性積層フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
熱可塑性樹脂フィルムの中でもポリエステル系フィルムは、機械的強度、耐薬品性及び透明性に優れ、さらに価格が安価なこと等から広く用いられている。例えば、写真用ベースフィルム、磁気テープ用ベースフィルム、製図用フィルム、コンデンサー等の電気機器用フィルム、メンブレンスイッチ、タッチパネル、キーボード、ラベル等の工業用材料に用いられている。さらに食品包装用包装材としても用いられている。
【0003】
しかしポリエステル系フィルムは一般に食品包装等の包装材料に用いるにはガスバリアー性が不十分である。表1にポリエステル系フィルムとして最も汎用されているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとガスバリアー性に優れたポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルムとの酸素及び水蒸気の透過性を示す。
【0004】
【0005】
表1から明らかなように、PETフィルムは酸素ガス及び水蒸気をよく透過するためガスバリアー性が低い。
【0006】
一般に基材のガスバリアー性は、ガスの基材に対する吸着性、拡散性及び脱着性を総合した特性であり、ポリマー製基材については様々な傾向がある。
【0007】
第一に結晶性ポリマーからなるフィルム又はシートでは、ガスとの親和性及び分子間の隙間が小さく、かつガスに対する吸着性、拡散性及び脱着性の作用の大きい極性基を有するポリマーほどバリアー性が良好である。一般に高結晶化度のポリマー基材ほどガスバリアー性が良好である。
【0008】
第二に対称性のある分子構造を有するポリマーは一般に良好なガスバリアー性を有する。第三にポリマー結晶の配向性が大きいほど、またポリマー鎖の剛性が高いほどガスバリアー性が良好である。第四にポリマーの凝集エネルギー密度が高いほどポリマー鎖間の結合力が大きくガスバリアー性は良好となる。極性基を有するポリマーはこれに該当する。第二〜第四の性質は分子構造の緻密なポリマーで構成される基材ほどガスバリアー性が高いことを示している。
【0009】
上記のように極性基を有するポリマーからなるフィルムはガスバリアー性が良好であるが、水酸基やアミド基等の極性基は水分子と結合しやすいので、それらの極性基を有するポリマーからなるフィルムのガスバリアー性は湿度が高くなるにつれて低下する傾向を示す。
【0010】
そのため、このような極性基を有するフィルムはガスバリアー性が湿度に影響されないPVDCフィルムと積層され、湿度の影響を受けないガスバリアー性積層体フィルムとされている。この他のタイプのフィルムとしては、エチレン・ビニルアルコールコポリマー(商品名:エバール)、PVDCとアクリロニトリルとの共重合体等からなるフィルムがある。これらのフィルムは湿度に影響されない優れた酸素ガスバリアー性を有するため、食品包装用フィルムとして幅広く用いられている。
【0011】
しかし、これらのガスバリアー性フィルムのほとんどはエチレン・ビニルアルコールコポリマーを除いて、塩素系ポリマーを用いているため、その製造工程や焼却過程で生じる有機性塩素による発ガン性、塩素ガスによるオゾン層の破壊等の種々の問題がある。またエチレン・ビニルアルコールコポリマーのみからなるフィルムはボイル処理によりガスバリアー性が低下してしまい、レトルト食品の包装には適さない。
【0012】
このような問題を解決したガスバリアー性積層フィルムとして、特許第2,556,940号は、ポリビニルアルコールを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られる複合ポリマー層を基材フィルムに積層してなる積層フィルムを開示している。しかしこの積層フィルムは耐熱水性に劣り、レトルト食品用包装の場合に熱処理(120℃で30分間)を行うと、膜厚が減少して機械的強度等が低下するという欠点がある。そのため、上記特許のガスバリアー性積層フィルムはレトルト食品用包装材には適さない。
【0013】
特許第2,880,654号は、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物を基材フィルムに塗布し、ゾル−ゲル法により重縮合して複合ポリマー層を基材フィルムに積層することにより、ガスバリアー性に優れた積層フィルムが得られることを開示している。しかしエチレン・ビニルアルコールコポリマーはポリビニルアルコールより遥かに優れた耐水性能を有するものの、水の存在下で酸素バリアー性が約10%も低下してしまう。そのためレトルト食品やボイル食品等の水を使用する食品の包装材としては、酸素透過防止性がまだ不充分である。
【0014】
従って本発明の目的は、耐熱水性及びガスバリアー性に優れた積層フィルム及びその製造方法、並びに耐熱水性及びガスバリアー性に優れた成形体を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明らは、アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを適宜選択し、ゾル−ゲル法により重縮合して、熱可塑性樹脂の基材フィルム又は成形体の少なくとも片面に、複合ポリマー層を形成させると、耐熱水性及びガスバリアー性に優れた積層フィルム又は成形体が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0016】
すなわち本発明の第一のバリアー性積層フィルムは、熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも片面に積層された少なくとも1層の複合ポリマー層とを有し、前記複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とする。
【0017】
本発明の第二のバリアー性積層フィルムは、熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも片面に積層された少なくとも1層の複合ポリマー層とを有し、前記複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とする。
【0018】
本発明の第三のバリアー性積層フィルムは、熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも片面に積層された少なくとも1層の第一の複合ポリマー層と、前記第一の複合ポリマー層の上に積層された少なくとも1層の第二の複合ポリマー層とを有し、前記第一の複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びポリビニルアルコールを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られる直鎖状複合ポリマーからなり、前記第二の複合ポリマー層はアルコキシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とする。
【0019】
本発明の第一のバリアー性積層フィルムの製造方法は、(a)アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法触媒、酸、水及び低級アルコールを含む有機溶媒中で重縮合してなる直鎖状複合ポリマーを含有する塗工液を調製し、(b)熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に前記塗工液を塗布し、(c)80℃〜150℃でかつ前記熱可塑性樹脂の融点未満の温度で熱処理することにより、前記基材フィルムの表面に少なくとも1層の複合ポリマー層を形成することを特徴とする。
【0020】
本発明の第二のバリアー性積層フィルムの製造方法は、 (a)アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物を、ゾル−ゲル法触媒、酸、水及び低級アルコールを含む有機溶媒中で重縮合してなる直鎖状複合ポリマーを含有する塗工液を調製し、(b)熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に前記塗工液を塗布し、(c) 80℃〜150℃でかつ前記熱可塑性樹脂の融点未満の温度で熱処理することにより、前記基材フィルムの表面に少なくとも1層の複合ポリマー層を形成することを特徴とする。
【0021】
本発明の第三のバリアー性積層フィルムの製造方法は、(a)アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びポリビニルアルコールを含有する組成物を、ゾル−ゲル法触媒、酸、水及び低級アルコールを含む有機溶媒中で重縮合してなる直鎖状複合ポリマーを含有する第一の塗工液を調製し、(b) 熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に前記第一の塗工液を塗布して、少なくとも1層の第一の複合ポリマー層を形成し、(c) アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物を、ゾル−ゲル法触媒、酸、水及び低級アルコールを含む有機溶媒中で重縮合してなる直鎖状複合ポリマーを含有する第二の塗工液を調製し、(d)前記第一の複合ポリマー層上に前記第二の塗工液を塗布し、少なくとも1層の第二の複合ポリマー層を形成して積層体を作製し、(e)前記積層体を80℃〜150℃でかつ前記熱可塑性樹脂の融点未満の温度で熱処理することにより、前記基材フィルムの表面に前記第一及び第二の複合ポリマー層を形成することを特徴とする。
【0022】
本発明の第一の成形体は、熱可塑性樹脂からなる基体と、前記基体の少なくとも一面に積層された少なくとも1層の複合ポリマー層とを有し、前記複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とする。
【0023】
本発明の第二の成形体は、熱可塑性樹脂からなる基体と、前記基体の少なくとも一面に積層された少なくとも1層の複合ポリマー層とを有し、前記複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とする。
【0024】
本発明の第三の成形体は、熱可塑性樹脂からなる基体と、前記基材フィルムの少なくとも一面に積層された少なくとも1層の第一の複合ポリマー層と、前記第一の複合ポリマー層の上に積層された少なくとも1層の第二の複合ポリマー層とを有し、前記第一の複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びポリビニルアルコールを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得らた直鎖状複合ポリマーからなり、第二の複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の態様】
[1]バリアー性積層フィルム
(A)基材フィルム
基材フィルムとしは熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレン等のポリエーテル系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セロファン、アセテート等のセルロース系樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で使用可能であるが、2種以上を溶融混合しても良い。機械的強度、成形性、透明性及びコストを考慮すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂が好ましい。またジカルボン酸成分としてテレフタル酸を80モル%以上、グリコール成分としてエチレングリコールを80モル%以上含有する共重合ポリエステル、又はポリエチレンテレフタレートを80重量%以上の割合で含有するポリエステルの混合物を用いてもよい。
【0026】
ポリエステルに用いるジカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族及び脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、シュウ酸等が好ましい。脂環族ジカルボン酸としては、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましい。
【0027】
グリコール成分としては、炭素数が2〜8の脂肪族グリコールや炭素数が6〜12の脂環族グリコールが好適である。このようなグリコールとしては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタクリレート、p-キシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。またポリエーテルグリコールも使用可能である。ポリエーテルグリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が好適である。また共重合成分の一部としてp-ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸も使用することができる。
【0028】
上記ジカルボン酸成分とグリコール成分を通常の方法により重合(又は共重合)させてポリエステルを調製する。
【0029】
基材フィルムは未延伸フィルムでも、1軸又は2軸延伸フィルムでも良い。またこのようなフィルムは2枚以上積層してもよい。また後述の成形体の基体にも基材フィルムと同じ熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。
【0030】
(B)複合ポリマー層
複合ポリマー層は、アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーとの重縮合物により形成する。重縮合物はアルコキシシラン以外の金属アルコキシド及び/又はポリビニルアルコールを含有しても良い。
【0031】
(1)アルコキシシラン及び他の金属アルコキシド
アルコキシシラン以外の金属アルコキシドとしては、ジルコニウムアルコキシド及びチタニウムアルコキシド等が好ましい。アルコキシシランは単独で使用可能であるが、他の金属アルコキシドと組合せる場合、好ましい組合せとしては、(イ)アルコキシシラン+ジルコニウムアルコキシド、(ロ)アルコキシシラン+チタニウムアルコキシド等が挙げられる。
【0032】
(a)アルコキシシラン
アルコキシシランとしては、Si(OR1)4(R1:炭素数1〜6の低級アルキル基)で表されるものが好ましく、特にSi(O-CH3)4、Si(O-C2H5)4等が好ましい。これらのアルコキシシランを2種以上混合しても良い。
【0033】
(b) ジルコニウムアルコキシド及びチタニウムアルコキシド
ジルコニウムアルコキシドとしては、Zr(OR2)4(R2:炭素数1〜6の低級アルキル基)で表されるものが好ましく、特にZr(O-CH3)4、Zr(O-C2H5)4、Zr(O-iso-C3H7)4、Zr(O-C4H9)4等が好ましい。これらのジルコニウムアルコキシドを2種以上混合しても良い。ジルコニウムアルコキシドを用いることにより、積層フィルムの靭性、耐熱性等が向上し、延伸時にフィルムの耐レトルト性等の低下が回避される。ジルコニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100重量部に対して50重量部以下であるのが好ましく、30重量部以下がより好ましい。ジルコニウムアルコキシドが50重量部を超えると複合ポリマーとゲル化しやすくなるので、複合ポリマー層は脆化し、基材フィルムから剥離しやすくなる。
【0034】
チタニウムアルコキシドとしては、Ti(OR3)4 (R3:炭素数1〜6の低級アルキル基)で表されるものが好ましく、特にTi(O-CH3)4、Ti(O-C2H5)4、Ti(O-C3H7)4、Ti(O-C4H9)4等が好ましい。これらのチタニウムアルコキシドを2種以上混合しても良い。チタニウムアルコキシドを用いることにより、複合ポリマー層の熱伝導率が低くなり、基材の耐熱性が著しく向上する。チタニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100重量部に対して5重量部以下であるのが好ましく、0.5〜4重量部がより好ましい。チタニウムアルコキシドが5重量部を超えると、複合ポリマーは脆化し、基材フィルムから剥離しやすくなる。
【0035】
(2)炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール
炭素数が8以上の高級アルコールとしては、n-オクチルアルコール、カプリルアルコール、n-デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられ、なかでもセチルアルコール及びステアリルアルコールが好ましい。これらの高級アルコールを2種以上混合して使用しても良い。
【0036】
炭素数が8以上の直鎖状高級アルコールを使用することにより、複合ポリマー層は緻密化するとともに柔軟性を有する。そのため水や酸素等に対するバリアー性が顕著に向上するとともに、耐剥離性も向上する。炭素数が8以上の直鎖状高級アルコールの使用量は、アルコキシシラン100重量部に対してO.O1〜1O重量部とするのが好ましい。10重量部を超えると形成される複合ポリマー層と基材フィルムの密着性が悪くなり、ボイル及びレトルト加工に適さなくなる。また0.01重量部未満だと直鎖状高級アルコールの添加効果が得られない。
【0037】
(3)エチレン・ビニルアルコールコポリマー及びポリビニルアルコール
複合ポリマー層用組成物は、エチレン・ビニルアルコールコポリマー又はエチレン・ビニルアルコールコポリマー+ポリビニルアルコールを含有する。
【0038】
エチレン・ビニルアルコールコポリマーとしては、エチレンとビニルアルコールとのランダムコポリマーが好ましく、エチレン/ビニルアルコールのモル比は20/80〜50/50であるのが好ましい。エチレン・ビニルアルコールコポリマーを添加することにより、複合ポリマーのガスバリアー性、耐水性、耐候性等は著しく向上する。
【0039】
エチレン・ビニルアルコールコポリマーにポリビニルアルコールを組合せると、複合ポリマー層のガスバリアー性、耐水性、耐候性、耐熱水性及び熱水処理後のガスバリアー性が向上する。ポリビニルアルコールを使用する場合、単一層とするか積層するかによらず、ポリビニルアルコール/エチレン・ビニルアルコールコポリマーの重量比を10:0.5〜10:10とするのが好ましく、10:5〜10:7とするのがより好ましく、例えば約3:2が好ましい。
【0040】
エチレン・ビニルアルコールコポリマーの含有量は、アルコキシシラン(他の金属アルコキシドも配合する場合には、アルコキシシラン+他の金属アルコキシド)100重量部に対して、10〜800重量部とするのが好ましく、20〜600重量部とするのがより好ましい。また単一の複合ポリマー層にエチレン・ビニルアルコールコポリマーとポリビニルアルコールとを併用する場合には、エチレン・ビニルアルコールコポリマー+ポリビニルアルコールの含有量を上記範囲内とする。さらにエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含む複合ポリマー層と、ポリビニルアルコールを含む複合ポリマー層とを積層する場合にも、両者の合計量を上記範囲内とする。いずれの場合も、エチレン・ビニルアルコールコポリマー又はエチレン・ビニルアルコールコポリマー+ポリビニルアルコールの含有量が10重量部未満だと複合ポリマー層の脆性が大きく、また800重量部を超えると複合ポリマー層の耐水性及び耐侯性が低下する。
【0041】
なおエチレン・ビニルアルコールコポリマー及びポリビニルアルコールは有機溶媒に溶解した溶液として組成物に混合するのが好ましい。エチレン・ビニルアルコールコポリマーの有機溶液は、例えばソアノール(商品名、日本合成化学(株)製)として市販されている。
【0042】
[2]製造方法
(1)バリアー性積層フィルムの形成方法
(a)第一の製造方法
本発明の第一の製造方法は、まずアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール、エチレン・ビニルアルコールコポリマー、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、低級アルコールを含む有機溶媒、及び必要に応じて他の金属アルコキシドを混合して、塗工液を調製する。次いで基材フィルムに常法によりこの塗工液を塗布する。塗工液が乾燥する過程で、アルコキシシラン、他の金属アルコキシド、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーの重縮合が進行し、複合ポリマー層が形成される。必要に応じて上記の操作を繰り返せば複合ポリマー層を厚肉化することができる。最後に塗工液を塗布したフィルムを80℃〜150℃でかつ基材フィルムの融点未満の温度、例えば約120℃で30秒〜10分間加熱すると、本発明のバリアー性積層フィルムが得られる。
【0043】
(b)第二の製造方法
本発明の第二の製造方法は、第一の製造方法に使用するエチレン・ビニルアルコールコポリマーの代わりにエチレン・ビニルアルコールコポリマー+ポリビニルアルコールを用いて同様に塗付・乾燥及び加熱を行うものである。ポリビニルアルコールを共存させることによりボイル処理、レトルト処理等の熱水処理後のガスバリアー性をさらに向上させることができる。
【0044】
(c)第三の製造方法
本発明の第三の製造方法は、ポリビニルアルコールを含む塗工液を基材フィルムの少なくとも片面に塗付することにより第一の複合ポリマー層を形成した後、主成分がエチレン・ビニルアルコールコポリマーからなる塗工液を塗布して第二の複合ポリマー層を形成するものである。
【0045】
アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びポリビニルアルコールを含有する組成物にゾル−ゲル法触媒、酸、水、低級アルコールを含む有機溶媒及び必要に応じて他の金属アルコキシドを混合することにより、アルコキシシラン等を重縮合させる。得られた直鎖状複合ポリマーを含有する第一の塗工液を熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に少なくとも1回塗布し、第一の複合ポリマー層を形成する。
【0046】
次いでアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物にゾル−ゲル法触媒、酸、水及び低級アルコールを含む有機溶媒を混合することにより、アルコキシシラン等を重縮合させ、直鎖状複合ポリマーを含有する第二の塗工液を調製する。この第二の塗工液を第一の複合ポリマー層上に少なくとも1回塗布し、第二の複合ポリマー層を形成する。得られた積層体を第一の製造方法と同じ条件で熱処理し、ガスバリアー性積層フィルムを得る。
【0047】
(2)触媒
本発明の製造方法に使用するゾル−ゲル法触媒は重縮合触媒として作用する。好ましいゾル−ゲル法触媒はアルミニウムアセチルアセトネートである。アルミニウムアセチルアセトネートを使用することにより、塗工液のポットライフを長くすることができる。
【0048】
(3)酸
本発明の方法に用いる酸は、アルコキシシラン等を加水分解する作用を有する。好ましい酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、及び酢酸、酒石酸等の有機酸が挙げられる。酸の使用量はアルコキシシラン(又はアルコキシシラン+他の金属アルコキシド)のアルコキシド分(シリケート部分)の合計1モルに対し、0.001〜0.05モルとするのが好ましく、例えば約0.01モルとするのが好ましい。
【0049】
(4)水
本発明の方法では、アルコキシシラン及び他の金属アルコキシドの合計モル量1モルに対して、0.8〜5モルの水を用いるのが好ましく、1〜3モルがより好ましい。水の量が5モルを超えるとアルコキシシランと他の金属アルコキシドから得られるポリマーが球状粒子となり、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い多孔性ポリマーとなる。多孔性ポリマーが生成すると基材フィルムのガスバリアー性を改善することができない。一方、水の量が0.8モル未満だと加水分解反応が進行しにくくなる。
【0050】
(5)有機溶媒
本発明の方法に用いることができる有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等の低級アルコールが挙げられる。エチレン・ビニルアルコールコポリマー及びポリビニルアルコールを併用する場合には、有機溶媒としてn-ブタノール又はn-プロピルアルコールを使用するのが好ましい。有機溶媒の配合量は、アルコキシシラン、他の金属アルコキシド、エチレン・ビニルアルコールコポリマー(+ポリビニルアルコール)、酸及びゾル−ゲル法触媒の合計量100重量部当り30〜500重量部であるのが好ましく、80〜300重量部がより好ましい。
【0051】
[3]バリアー性成形体
本発明の成形体は、基体の少なくとも一面に塗工液を塗付し乾燥して積層シートとし、その積層シートを必要に応じて適当な成形手段により成形することにより作製される。また予備成形した基体の少なくとも一面に塗工液を塗付し乾燥することにより作製することも可能である。このようにして得られる本発明の成形体は、ガスバリアー性及び耐熱水性に優れている。なお本発明の成形体は、熱可塑性樹脂からなる基体の少なくとも片面に、上記少なくとも1層の複合ポリマー層を有している。
【0052】
本発明の方法により、本発明の積層フィルムは以下のようにして形成されると考えられる。まずアルコキシシラン及び金属アルコキシドは、添加された水により加水分解される。この際、酸が加水分解の触媒となる。次いで反応の過程で生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。さらに反応系にはエチレン・ビニルアルコールコポリマー又はポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールが存在するため、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーの有する水酸基との反応も生じる。生成する重縮合物は、Si-O-Si,Si-O-Zr,Si-O-Ti等の結合からなる無機質部分と有機質部分とを含有する複合ポリマーである。
【0053】
上記反応においては、例えば(III)式の部分構造式に示されような構造の直鎖状ポリマーが生成する。このポリマーは、OR基(エトキシ基等のアルコキシ基)が直鎖状ポリマーから分岐した形で存在する。このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾル−ゲル法触媒(塩基触媒)の働きによりまずOH基が脱プロトン化し次いで重縮合が進行する。すなわち、このOH基が(I)式に示されるポリビニルアルコール又は(II)式に示されるエチレン・ビニルアルコールコポリマーと重縮合反応しSi−O−Si結合を有する(lV)式に示されるような複合ポリマー、あるいは(V)式に示される共重合した直鎖状複合ポリマーが生じると考えられる。
【0054】
【化1】
【0055】
【化2】
上式において、m及びnは1以上の整数を表す。
【0056】
【化3】
【0057】
【化4】
上式において、R’はH又はアルキル基を表し、m1、m2及びm3は1以上の整数を表す。
【0058】
【化5】
上式において、m4、m5及びm6はそれぞれ1以上の整数を表す。
【0059】
上記反応は常温で進行し、塗工液の粘度が増大する。この塗工液を基材フィルムに塗布し、加熱して溶媒及び重縮合反応により生成したアルコールを除去すると重縮合反応が完結し、基材フィルム上に透明な複合ポリマー層を形成する。複合ポリマー層を複数層積層した場合には層間の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間に強固な結合が生じる。さらに炭素数が8以上の直鎖状高級アルコールのOH基や加水分解により生じた水酸基が基材フィルム表面の水酸基と結合するため、基材フィルム表面と複合ポリマー層との接着性も良好となる。
【0060】
本発明の方法においては、添加する水の量がアルコキシシラン及びアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.8モル〜2モル、好ましくは1.5モルに調節されているため、上記直鎖状のポリマーが形成される。このような直鎖状ポリマーは結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような結晶構造は結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため、良好なガスバリアー性が示される。
【0061】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
実施例1
エチルシリケート34.13g、エタノール25.OOg,2Nの塩酸1.15g、及び水4.58gを混合し、常温で1〜2時間撹拌した。混合物中のエチルシリケートと水とのモル比は1:1.9であった。次いでソアノール30L(30重量%のエチレン・ビニルアルコールランダムコポリマーを含有するイソプロピルアルコール水溶液、日本合成化学(株)製)31.56g及びセチルアルコールO.17gを加えて30分間撹拌すると、粘性のある塗工液が得られた。
【0063】
上記塗工液を厚さ15μmのナイロンフイルムに塗布し、115℃で5分間乾燥することにより、厚さ20μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを95℃の熱水中で30分間ボイル処理したところ、表面膨潤、剥離及び亀裂は全く生じず、良好な膜面を保持した。さらに積層フィルムを120℃で30分間高圧釜内の熱水中で煮沸(以下、レトルト処理という)したところ、表面膨潤、剥離及び亀裂が全く生じず、膜面がわずかに白みがかっただけであった。
【0064】
ボイル処理の前後及びレトルト処理後の積層フィルムについて、それぞれ23℃、RH9O%で24時間の酸素ガスバリアー性を評価した。結果を表2に示す。
【0065】
表2
塗工膜厚 ボイル処理前 ボイル処理後 レトルト処理後
5μm 0.5cc/m2 1.Occ/m2 1.5cc/m2
【0066】
実施例2
ポリプロピレンフィルム(厚さ25μm)の片面に、予めアンカーコート剤として、金属アセチルアセトン錯塩のメチルクロロホルム溶液(日本合成化学(株)製、アロンポリプライマー)を塗布し、80℃で10秒間乾燥した。その塗工面に実施例1で得られた塗工液を塗布し、80℃で4分間乾燥し、得られたフィルムの塗工面と反対側の面を熱遮断して、115℃で5分間エージング処理し、厚さ30μmの積層フィルムを得た。
【0067】
この積層フィルムに、実施例1と同様のボイル処理及びレトルト処理をそれぞれ施し、乾燥した後、実施例1と同様にして酸素ガスバリアー性を評価した。結果を表3に示す。ボイル処理及びレトルト処理後でも複合ポリマー層の接着性は良好であり、膨潤、剥離及び亀裂は全く認められなかった。また積層フィルムの厚さの減少は約1〜2μmであった。
【0068】
表3
塗工膜厚 ボイル処理前 ボイル処理後 レトルト処理後
5μm 0.2cc/m2 1.0cc/m2 2.0cc/m2
【0069】
実施例3
エチルシリケート及びポリビニルアルコールを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られた主成分が直鎖状ポリマーよりなる複合ポリマーをナイロンフィルム(厚さ15μm)の片面に塗工した。得られた積層フィルム(塗工膜の厚さ5μm、乾燥条件120℃、1分)の塗工面上にさらに重ねて実施例1の塗工液を塗布し、実施例1と同様の条件で乾燥して積層フィルム(厚さ22μm)を得た。この積層フィルムに実施例1と同様のボイル処理及びレトルト処理をそれぞれ施し、実施例1と同様にして酸素ガスバリアー性を評価した。結果を表4に示す。
【0070】
表4
塗工膜厚 ボイル処理前 ボイル処理後 レトルト処理後
7μm O.2cc/m2 0.6cc/m2 1.9cc/m2
【0071】
実施例4
厚さ20μmのポリプロピレンフィルム(酸素透過率:24時間、2000〜3000cc/m2)の片面に実施例1の塗工液を塗布し、115℃で5分間乾燥して、厚さ30μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムについて実施例1と同様のボイル処理及びレトルト処理をそれぞれ施して酸素ガスバリアー性を評価した。結果を表5に示す。
【0072】
比較例1
実施例1の塗工液の代わりにエチルシリケート、エポキシシランSH6040及びポリビニルアルコールを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られる直鎖状ポリマーよりなる複合ポリマー(耐水性付与のためのアセタール処理を行っていない以外、特許第2,556,940号の実施例4に記載の複合ポリマーと同じ。)を用いた以外、実施例5と同様にして積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムに対して実施例1と同様のボイル処理及びレトルト処理をそれぞれ施し、実施例1と同様にして酸素ガスバリアー性を評価した。結果を表5に示す。ボイル処理後及びレトルト処理後にはこの積層フィルムの塗工膜の厚さは減少しており、ガスバリアー性は著しく低下していた。
【0073】
【0074】
表5から分かるように、エチレン・ビニルアルコールコポリマーを含む塗膜を有する実施例4の積層フィルムは、エチレン・ビニルアルコールコポリマーを含まずにポリビニルアルコールを含む塗膜を有する比較例1の積層フィルムに比べて、はるかに優れたガスバリアー性を有している。
【0075】
実施例5
エチルシリケー卜10.99g、エタノール18.77g、2Nの塩酸0.27g及び水1.6gを混合し、常温で30分〜1時間撹拌した。このとき混合物のエチルシリケートと水とのモル比は1:1.95であった。次いでソアノール30L(30重量%のエチレン・ビニルアルコールランダムコポリマーを含有するイソプロピルアルコール水溶液、日本合成化学(株)製)6.26g、ポリビニルアルコール水溶液(濃度:10重量%)31.37g、水17.69g、メタノール6.26g,n-ブタノール6.10g及びセチルアルコール0.02gを加えて、70℃で20〜30分間撹拌すると、粘性のある塗工液が得られた。
【0076】
ポリプロピレンフィルム(厚さ25μm)の片面に、予めアンカーコート剤として、金属アセチルアセトン錯塩のメチルクロロホルム溶液(日本合成化学(株)製、アロンポリプライマー)を塗布し、80℃で10秒間乾燥した後上記塗工液を塗布し、80℃で4分間乾燥した。得られたフィルムの塗工面と反対側の面を熱遮断して115℃で4分間エージング処理し、厚さ30μmの積層フィルムを得た。
【0077】
この積層フィルムに実施例1と同様のボイル処理及びレトルト処理をそれぞれ施し、乾燥した後、23℃、RH100%で24時間の酸素ガスバリアー性を評価した。結果を表6に示す。処理後の積層フィルムは膨潤、剥離及び亀裂が全くなく、良好な膜面を有していた。
【0078】
表6
塗工膜厚 ボイル処理前 ボイル処理後 レトルト処理後
5μm O.2cc/m2 4.8cc/m2 5.0cc/m2
【0079】
実施例6
エチルシリケート9.99g、エタノール18.77g,2Nの塩酸0.27g及び水1.6gを混合し、常温で1時間撹拌後、ジルコニウムプロポキシド1gを添加し、さらに20分間撹拌した。得られた混合物のエチルシリケート及びジルコニウムプロポキシドと水とのモル比は1:2.Oであった。次いでソアノール30L(30重量%のエチレン・ビニルアルコールランダムコポリマーを含有するイソプロピルアルコール水溶液、日本合成化学(株)製)6.26g、ポリビニルアルコール水溶液(濃度:10重量%)31.37g、水17.69g、メタノール6.26g、n-ブタノール6.10g及びセチルアルコール0.02gを加えて、70℃で20〜30分間撹拌すると、透明な粘性のある塗工液が得られた。
【0080】
上記塗工液をポリプロピレンシート(厚さ900μm)の片面に、実施例5と同様にして塗工した。乾燥後、厚さ960μmの積層シートを作製した。この積層シートを熱成形して厚さ320μmの成形体(外径60mm、高さ32mmの有底円筒状)を得た。
【0081】
この成形体に、実施例1と同様のボイル処理及びレトルト処理をそれぞれ施し、乾燥後、23℃、RH100%で24時間の酸素ガスバリアー性を評価した。結果を表7に示す。処理後の成形体は膨潤、剥離及び亀裂が全くなく、良好な表面を有していた。
【0082】
表7
塗工膜厚 ボイル処理前 ボイル処理後 レトルト処理後
10μm O.5cc/m2 7.05cc/m2 8.25cc/m2
【0083】
表7から明らかなように、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含む塗膜を有する本実施例の成形体は優れたガスバリアー性を有し、膨潤、剥離及び亀裂のない良好な表面を有していた。これは積層シートの複合ポリマー層中にジルコニウムイソプロポキシドを含有させたことにより、積層シートの靱性が向上し、延伸後の耐熱水性が向上したためと考えられる。
【0084】
【発明の効果】
本発明の積層フィルム及び成形体は、O2、N2、H2O、CO2等のガスに対し、従来のPVDCやエバールフィルム等に比べて優れたガスバリアー性を有するのでガスバリアー性を必要とする種々の包装材料に好適である。またガスバリアー性を利用して、N2、CO2等のガスを充填したガス充填包装に使用することもできる。
【0085】
また本発明の積層フィルム及び成形体は保香性も良好であり、内容物の香りを保持して外部からの悪臭を遮断することができる。さらに耐溶媒性及び耐薬品性にも優れ、塩素系化合物を含有していないので環境汚染の心配もない。
【0086】
また本発明の積層フィルム及び成形体は、高圧熱水処理(レトルト処理)等の熱水処理後のガスバリアー性にも優れているので、近年発展が著しいレトルト食品の包装材をはじめとする食品包装用フィルムや容器(有底筒状カップ、上方が次第に広がった有底筒状カップやボトル等)に使用することができる。
Claims (17)
- 熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも片面に積層された少なくとも1層の複合ポリマー層とを有するバリアー性積層フィルムであって、前記複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とするバリアー性積層フィルム。
- 熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも片面に積層された少なくとも1層の複合ポリマー層とを有するバリアー性積層フィルムであって、前記複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とするバリアー性積層フィルム。
- 熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも片面に積層された少なくとも1層の第一の複合ポリマー層と、前記第一の複合ポリマー層の上に積層された少なくとも1層の第二の複合ポリマー層とを有するバリアー性積層フィルムであって、前記第一の複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びポリビニルアルコールを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られる直鎖状複合ポリマーからなり、前記第二の複合ポリマー層はアルコキシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とするバリアー性積層フィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のバリアー性積層フィルムにおいて、前記組成物が1種以上の金属アルコキシドを含有していることを特徴とするバリアー性積層フィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のバリアー性積層フィルムにおいて、前記炭素数が8以上の直鎖状高級アルコールはn-オクチルアルコール、カプリルアルコール、n-デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするバリアー性積層フィルム。
- (a)アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物を、ゾル−ゲル法触媒、酸、水及び低級アルコールを含む有機溶媒中で重縮合してなる直鎖状複合ポリマーを含有する塗工液を調製し、(b)熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に前記塗工液を塗布し、(c)80℃〜150℃でかつ前記熱可塑性樹脂の融点未満の温度で熱処理することにより、前記基材フィルムの表面に少なくとも1層の複合ポリマー層を形成することを特徴とするバリアー性積層フィルムの製造方法。
- (a)アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物を、ゾル−ゲル法触媒、酸、水及び低級アルコールを含む有機溶媒中で重縮合してなる直鎖状複合ポリマーを含有する塗工液を調製し、(b)熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に前記塗工液を塗布し、(c) 80℃〜150℃でかつ前記熱可塑性樹脂の融点未満の温度で熱処理することにより、前記基材フィルムの表面に少なくとも1層の複合ポリマー層を形成することを特徴とするバリアー性積層フィルムの製造方法。
- (a) アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びポリビニルアルコールを含有する組成物をゾル−ゲル法触媒、酸、水及び低級アルコールを含む有機溶媒中で重縮合してなる直鎖状複合ポリマーを含有する第一の塗工液を調製し、(b) 熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に前記第一の塗工液を塗布することにより、少なくとも1層の第一の複合ポリマー層を形成し、(c) アルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法触媒、酸、水及び低級アルコールを含む有機溶媒中で重縮合してなる直鎖状複合ポリマーを含有する第二の塗工液を調製し、(d) 前記第一の複合ポリマー層上に前記第二の塗工液を少なくとも1層塗布することにより第二の複合ポリマー層を形成し、(e) 得られた積層体を80℃〜150℃でかつ前記熱可塑性樹脂の融点未満の温度で熱処理することにより、前記基材フィルムの表面に前記第一及び第二の複合ポリマー層を形成することを特徴とするバリアー性積層フィルムの製造方法。
- 請求項6〜8のいずれかに記載のバリアー性積層フィルムの製造方法において、前記組成物が1種以上の金属アルコキシドを含有することを特徴とする方法。
- 請求項6〜9のいずれかに記載のバリアー性積層フィルムの製造方法において、前記炭素数が8以上の直鎖状高級アルコールはn-オクチルアルコール、カプリルアルコール、n-デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする方法。
- 請求項6〜10のいずれかに記載のバリアー性積層フィルムの製造方法において、前記ゾル−ゲル法触媒がアルミニウムアセチルアセトネートであることを特徴とする方法。
- 請求項6〜11のいずれかに記載のバリアー性積層フィルムの製造方法において、前記アルコキシシラン1モルに対して0.8〜5モルの水を使用することを特徴とする方法。
- 熱可塑性樹脂からなる基体と、前記基体の少なくとも一面に積層された少なくとも1層の複合ポリマー層とを有する成形体であって、前記複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とする成形体。
- 熱可塑性樹脂からなる基体と、前記基体の少なくとも一面に積層された少なくとも1層の複合ポリマー層とを有する成形体であって、前記複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とする成形体。
- 熱可塑性樹脂からなる基体と、前記基体の少なくとも片面に積層された少なくとも1層の第一の複合ポリマー層と、前記第一の複合ポリマー層の上に積層された少なくとも1層の第二の複合ポリマー層とを有する成形体であって、前記第一の複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びポリビニルアルコールを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られた直鎖状複合ポリマーからなり、第二の複合ポリマー層はアルコキシシラン、炭素数が8以上の直鎖状高級アルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られ、主成分がエチレン・ビニルアルコールコポリマーよりなる直鎖状複合ポリマーからなることを特徴とする成形体。
- 請求項13〜15のいずれかに記載の成形体において、前記組成物が1種以上の金属アルコキシドを含有することを特徴とする成形体。
- 請求項13〜16のいずれかに記載の成形体において、前記炭素数が8以上の直鎖状高級アルコールはn-オクチルアルコール、カプリルアルコール、n-デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする成形体。
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