JP4338756B2 - 中空糸膜モジュールの製造方法および中空糸膜束の開繊装置 - Google Patents
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Description
中空糸膜モジュールとしては、図10に示すような、円筒状のケース11と、ケース11内に収納された、複数の中空糸膜12を円柱状に集束した中空糸膜束13と、中空糸膜束13の端部をケース11内に固定する樹脂固定部14とから概略構成される中空糸膜モジュール10がある。
この中空糸膜モジュールにおいては、例えば水の濾過処理の場合、中空糸膜12を透過する前の原水と中空糸膜12を透過した浄水とが混ざり合わないように、原水側と浄水側とを樹脂固定部14によって液密に仕切る必要がある。そのため、中空糸膜モジュールの製造の際には、中空糸膜束13の端部における各中空糸膜12間に、液状の固定用樹脂をいかにして均一に流し込むかが重要となる。
しかしながら、ケース内に収納された中空糸膜束は、ケースによって規制されており、また、中空糸膜束の端部に吹き付けられた気体は、ケースの外側から内側へと吹き抜けることなく、中空糸膜束の端面にしか当たらない。
また、吹き付けられた気体が当たらないケース内部の中空糸膜は分散されることなく、偏りが大きくなっている。そのため、中空糸膜モジュールを液体や気体の濾過処理に使用した場合、流体が中空糸膜全体に均一に流れず、濾過性能を十分に発揮させることができなかった。
このような中空糸膜モジュールとしては、図11に示すような、ハウジング21と、複数の中空糸膜22が拘束糸条23によって端部を結束されてシート状に束ねられた中空糸膜束24と、ハウジング21内に開口部から挿入された中空糸膜束24の端部をハウジング21に固定する樹脂固定部25とから概略構成される中空糸膜モジュール20がある。
この中空糸膜モジュールにおいても、ハウジング21の内側と外側とを樹脂固定部25によって液密に仕切る必要があることから、その製造の際には、中空糸膜束24の端部における各中空糸膜22間に、液状の固定用樹脂をいかにして均一に流し込むかが重要となる。
しかしながら、中空糸膜束の端部に単に気体を吹き付けるだけでは、中空糸膜同士の絡みが発生し、中空糸膜束の端部に粗密が生じることがあった。そのため、中空糸膜が密となった部分に固定用樹脂が流れ込みにくくなり、この固定用樹脂の未含浸部分が原因となってリークの状態が発生することがまれにあった。
また、本発明の中空糸膜モジュールの製造方法においては、前記編織物に気体を吹き付けた後にこれを巻回してロールとし、このロールを有底円筒状のケース内に収納することが望ましい。
また、本発明の中空糸膜束の開繊装置は、中空糸膜を収束した中空糸膜束を搬送する搬送手段と、気体をコロナ放電により処理する気体処理手段と、搬送中の中空糸膜束に、コロナ放電により処理された気体を吹き付ける気体噴出手段とを具備することを特徴とするものである。
前記気体噴出手段は、先端に複数の吹き出し口がノズルの幅方向に直線状に整列して設けられたフラットノズルであり、その幅方向が中空糸膜束の幅方向と平行になるように設置されていることが好ましい。
また、本発明の中空糸膜モジュールの製造方法において、前記編織物に気体を吹き付けた後にこれを巻回してロールとし、このロールを有底円筒状のケース内に収納するようにすれば、中空糸膜が均一にかつ高密度に整列された中空糸膜モジュールを容易に製造することができる。
また、中空糸膜束に吹き付ける気体が、コロナ放電により処理された気体であれば、中空糸膜の偏りをさらに少なくすることができる。
(形態例1)
図1は、本発明の製造方法によって製造される中空糸膜モジュールの一例を示す断面図である。この中空糸膜モジュール30は、円筒状のケース31と、ケース31内に収納された、中空糸膜束32からなるロール33と、ロール33の端部をケース31内に固定する樹脂固定部34とから概略構成されるものである。ここで、ロール33は、複数の中空糸膜35をU字状に折り曲げ、折り曲げ部分を拘束糸条36によって結束した帯状の中空糸膜束32が、ストロー37を中心に巻き回された状態にあるものである。
なお、濾過膜として使用可能な中空糸膜であれば、その孔径、空孔率、膜厚、外径等は、特に限定されるものではないが、例えば、その外径は20〜2000μm、孔径は0.01〜1μm、空径率は20〜90%、膜厚は5〜300μmの範囲とされる。
まず、図2に示すような、帯状の中空糸膜束32(編織物)を作製する。この中空糸膜束32は、いわゆるラッセル編みにより作製されるものであり、複数の中空糸膜35を、中空糸膜束32の幅の長さに複数回折り返し、この折り返し部分を、中空糸膜束32の長手方向に延びるチェーンステッチの拘束糸条36にて結束させたものである。
中空糸膜束32を開繊した後、これを、ストロー37を中心にして巻き回して図3に示すような中空糸膜束32からなるロール33とする。このロール33を、図4に示すように、底部に放射状に延びる複数の溝が形成された有底筒状のケース31に収納する。次いで、底部から樹脂注入管41が下方に延び、内部に液状の固定用樹脂42が充填された、有底円筒状の樹脂ポット40を、樹脂注入管41がストロー37に挿入されるようにして、ロール33上に配置する。
固定用樹脂42を固化させて樹脂固定部34とした後、ロール33の底部側を、ケース31および樹脂固定部34ごと切断して、中空糸膜35の端部を開口させることにより、図1に示す中空糸膜モジュール30が製造される。
ノズル54の吹き出し口の内径は0.1mm〜5mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.5mm〜2mmの範囲である。内径が0.1mm未満では、中空糸膜35の間隙を気体が通過してしまうために開繊効果は著しく低下するおそれがある。一方、内径が5mmを超えると、気体の圧力に関わらず、複数本の中空糸膜35に同時に気体が吹き付けられてしまうため、中空糸膜束32を開繊するには至らないおそれがある。前述の寸法範囲であれば中空糸膜35の間に気体が入り込み、従って極めて良好な開繊効果を発現することができる。
中空糸膜束32に吹き付ける気体は、中空糸膜束32の平面に対して10〜80゜の角度で、かつ中空糸膜束32の搬送方向と同じ方向にノズル54より噴出させることが好ましい。中空糸膜束32に吹き付ける気体の角度が中空糸膜束32の平面に対して10゜未満では、気体が中空糸膜束32の外表面のみを通過してしまうために開繊効果が著しく低下するおそれがあり、一方、80゜を超えると、中空糸膜35の間隙を気体が通過してしまうために開繊効果は著しく低下するおそれがある。また、中空糸膜束32の搬送方向とは逆の方向にノズル54から気体を噴出させると、中空糸膜束32の搬送の妨げとなるおそれがある。
また、中空糸膜束32を巻回してロール33とし、このロール33をケース31内に収納しているので、中空糸膜35が均一にかつ高密度に整列された中空糸膜モジュール30を容易に製造することができる。
また、ノズルの数も特に限定はされず、中空糸膜束32の搬送方向に図示したようなフラットノズルを複数配置しても構わない。
また、図示例では、搬送中の中空糸膜束32に対し、固定されたノズル54から空気を吹き付けているが、この形態には限定されず、中空糸膜束32またはノズル54のいずれか一方を移動させればよい。
また、開繊装置における搬送手段は、図示例の巻取装置51に限定はされず、単なる巻き取りローラなどを用いても構わない。
図7は、本発明の製造方法によって製造される中空糸膜モジュールの他の例を示す斜視図である。この中空糸膜モジュール60は、ハウジング61と、複数の中空糸膜62が拘束糸条63によってシート状に束ねられた中空糸膜束64と、中空糸膜束64の端部を、中空糸膜62端部の開口状態を保ったままハウジング61に固定する樹脂固定部65とから概略構成される。
また、ハウジング61の側面には、中空糸膜束64の端部を内部路66に収納するための挿入口となるスリット状の開口部68が形成され、この開口部68の周囲を囲むように、液状の固定用樹脂の垂れ防止のための堰69がハウジング61と一体になって形成されている。そして、この堰69に囲まれた部分が、固定用樹脂を注入するための樹脂注入部70となっている。
中空糸膜62としては、上述の中空糸膜35と同じものを用いることができる。
拘束糸条63は、所定の位置でチェーンステッチにより各中空糸膜62を結束するものである。拘束糸条63を構成する繊維としては、上述の拘束糸条36と同じものを用いることができる。
ここでいう編み地を複数枚積層した中空糸膜束には、編み地を切断せずに適当な長さに折り畳み重ねたものも包含される。編み地の積層(折り畳み)枚数は、編み地の厚さ、すなわち中空糸膜62の太さや編み地を編成する際の中空糸膜62の合糸本数によっても変化するが、通常は5枚程度までがよい。
まず、複数の中空糸膜62を拘束糸条63によってシート状に束ねて、中空糸膜束64を作製する。この際、拘束糸条63は、中空糸膜束64をハウジング61の開口部68に挿入した際、開口部68の開口端部から開口部68外方2〜20mmに位置するように、かつ開口部68に対して略平行になるように、中空糸膜束64に設けられる。また、中空糸膜束64を構成している各中空糸膜62の端部をあらかじめカットして開口させておく。
中空糸膜束64の端部をハウジング61内に収納した後、図9に示すように、ハウジング61の開口部68付近の樹脂注入部70の中空糸膜62に、コンプレッサー等に接続されたノズル71から気体を吹き付け、中空糸膜束64を解すことにより、各中空糸膜62を均一に分散させる(以下、この作業を開繊ともいう)。気体の吹き付けは、ノズル71をハウジング61の開口部68のスリット長手方向に移動させながら行い、中空糸膜束64のすべての中空糸膜62に気体を吹き付ける。
ノズル71の寸法は、後述する気体の圧力により適宜決定することが可能である。
気体の種類は、特に限定されるものではなく、中空糸膜62に対して悪影響を与えぬものであれば適宜使用可能であるが、水分、ゴミ、油分が除去された気体が好ましい。
コンプレッサー等からノズル71に送られる気体の圧力は、前述のノズルの配置位置や直径によって適宜決定することが好ましい。
(実施例1)
図1に示すような、中空糸膜モジュールを以下のようにして製造した。
まず、三菱レイヨン(株)製のポリエチレン製中空糸膜(分画性能0.1μm、外径380μm)を5000本まとめた糸束を、65mmの長さで折り返しながら、その両側の折り返し部分を、ポリエステルフィラメント糸を用いたチェーンステッチにて結束させ、帯状の中空糸膜束とした。
次いで、この中空糸膜束を、中心にストローを配置した状態で巻取装置にて巻き取り、直径約38mmの中空糸膜束のロールを作製した。このロールを、中空糸膜束の側部がケースの底部に位置するように、有底円筒状のケース内に収納した。ここで、有底円筒状のケースとしては、内径40mm、高さ70mm、筒部の肉厚2mmのABS樹脂製の成形品を用いた。
固定用樹脂を固化させた後、ケースの底部側端部から10mmの位置でケースの軸に直交して中空糸膜束をケースおよび樹脂固定部ごと切断し、中空糸膜の端部を開口させた。
このようにして得られた中空糸膜モジュールにおいては、固定用樹脂の充填不良による樹脂固定部におけるリークの発生はなかった。また、中空糸膜は、それら間に適度な隙間が形成された状態でケースに固定されており、中空糸膜モジュールは、良好な濾過性能を示した。
中空糸膜束に気体を吹き付けない以外は、実施例1と同様にして中空糸膜モジュールを得た。
得られた中空糸膜モジュール200本のうち3本に、樹脂固定部におけるリークが発生した。これらリーク品の樹脂固定部の切断面を観察したところ、中空糸膜の分布に粗密が生じており、密の部分における、中空糸膜同士が強く接触している部分においてリークが発生していることが特定された。
また、リークが発生していない中空糸膜モジュールについて、濾過試験を行ったところ、100本のうち1本に、比較的早期に濾過性能に不具合が生じた。
31 ケース
32 中空糸膜束
33 ロール
34 樹脂固定部(固定用樹脂)
35 中空糸膜
36 拘束糸条
42 固定用樹脂
51 巻取装置(搬送手段)
54 ノズル(気体噴出手段)
60 中空糸膜モジュール
61 ハウジング
62 中空糸膜
64 中空糸膜束
65 樹脂固定部(固定用樹脂)
68 開口部
Claims (6)
- 中空糸膜を集束した中空糸膜束をケース内に収納し、中空糸膜束を固定用樹脂によってケース内に固定する中空糸膜モジュールの製造方法において、
中空糸膜束をケース内に収納する前に、中空糸膜束にコロナ放電により処理された気体を吹き付けることを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。 - 前記中空糸膜束が、帯状の編織物であり、
該編織物は、編織物の幅の長さに折り返した中空糸膜の折り返し部分を、編織物の長手方向に延びる拘束糸条にて結束させたものであることを特徴とする請求項1記載の中空糸膜モジュールの製造方法。 - 前記編織物に気体を吹き付けた後にこれを巻回してロールとし、このロールを有底円筒状のケース内に収納することを特徴とする請求項2記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
- 中空糸膜を収束した中空糸膜束の端部をハウジングの開口部からハウジング内に挿入し、開口部付近の中空糸膜束を固定用樹脂によってハウジングに固定する中空糸膜モジュールの製造方法において、
ハウジングに中空糸膜束を固定用樹脂によって固定する前に、ハウジングの開口部付近の中空糸膜束に、コロナ放電により処理された気体を吹き付けることを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。 - 中空糸膜を収束した中空糸膜束を搬送する搬送手段と、
気体をコロナ放電により処理する気体処理手段と、
搬送中の中空糸膜束に、コロナ放電により処理された気体を吹き付ける気体噴出手段とを具備することを特徴とする中空糸膜束の開繊装置。 - 前記気体噴出手段が、先端に複数の吹き出し口がノズルの幅方向に直線状に整列して設けられたフラットノズルであり、その幅方向が中空糸膜束の幅方向と平行になるように設置されていることを特徴とする請求項5記載の中空糸膜束の開繊装置。
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