JP4338391B2 - タイヤ用ゴム組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関し、とくに、香料が配合され、香料の効力が長時間持続するタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤは、ゴム特有の臭いを有している。その臭いのために、車内にスペアタイヤを置くことができずに、車外にスペアタイヤを置くケースがある。
【0003】
ゴム特有の臭いをなくす方法として、香料をゴム中に練りこむことがあげられる。香料は揮発性が高いため、混練り時もしくは加硫時に香料が多量に蒸発し、その量が少なくなって香料の効力がかなり少なくなるので、香料を多量に練りこむことが必要である。しかし、香料を多量に練りこんだとしても、その揮発性の高さのために、香料の効力は長続きしない。
【0004】
特許文献1には、沸点の高い香料を保持したタイヤが開示されているが、香料の蒸発速度のコントロールが不十分である。また、特許文献2には、香料封入粒子を配合したタイヤ用ゴム組成物が開示されている。しかし、タイヤ走行によって、香料封入粒子が破裂されなければ香料が排出されないので、香料の蒸発速度のコントロールが不十分である。
【0005】
このように、香料が少ないときはその効果が少ない。一方、香料を増量すると、初期のゴム特有の臭いは抑えられるが、香料の効力が長続きしないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−69003号公報
【特許文献2】
特開2002−114873号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、香料の効力が長時間持続するタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、無機多孔質粒子、とくには、粒子径が100μm以下の中空多孔質球状シリカを配合することにより、香料の効力を持続させ、ゴム特有の臭いをなくすものである。
【0009】
すなわち、本発明は、天然ゴムおよびジエン系合成ゴムの合計100重量部に対し、香料1〜10重量部およびチッ素吸着比表面積が300m 2 /g以上である無機多孔質粒子5〜30重量部を含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。前記無機多孔質粒子の配合量が、前記香料100重量部に対して、100〜1000重量部である。
【0010】
前記ゴム組成物において、無機多孔質粒子の粒子径が50μm以下であることが好ましい。また、無機多孔質粒子が中空多孔質球状シリカであることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム、香料および無機多孔質粒子からなる。
【0012】
本発明では、ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)および/またはジエン系合成ゴムが用いられる。ここで、ジエン系合成ゴムとしては、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロ二トリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴムなどがあげられる。
【0013】
香料としては、臭いを発生してタイヤのゴム特有の臭いを和らげることができるものであれば、とくに制限はないが、沸点が170℃以上、とくには180℃以上のものが好ましい。香料の沸点が170℃未満ではゴムの混練り途中、タイヤの加硫中など温度が上がるときに香料が蒸発する傾向がある。
【0014】
このような香料としては、たとえば、ヘリオトロープ系、ジャスミン系、ローズ系、オレンジフラワー系、アンバー系、ムスク系の香料があげられ、これらを単独で、または組み合わせて用いることができる。
【0015】
具体的には、パチュリ油を主成分とするオリエンタルベース(パチュリ油、ハーコリン(メチルアビエテート)、バニリン、エチルバニリン、クマリン)に、ローズ系(フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、イソ−ボルニルメトキシシクロヘキサノール)、アンバー系(テトラヒドロパラメチルキノリン)、ムスク系(ガラクソリッド、ムスクケトン)およびジャスミン系の香料成分(α−アミルシンナムアルデヒド、メチルジヒドロジャスモネート)を、溶剤としてジオクチルフタレートとともに上乗せしたタブ(TABU)タイプの香料があげられる。
【0016】
また、ヘリオトロープ系香料成分(ヘリオトロピン、ムスクケトン、クマリン、エチルバニリン、アセチルセドレン、ハーコリン(メチルアビエテート)、オイゲノール、メチルヨノン)を主香調とし、ジャスミン系香料成分(メチルジヒドロジャスモネート)、さらに高調性、拡散性を付与する目的で、ローズ系香料成分(ダマスコン−β、ダマスコン−α、イソ−ボルニルメトキシシクロヘキサノール)、またはオレンジフラワー系香料成分(メチルアンスラニレート、γ−ウンデカラクトン、γ−ノナデカラクトン)を、溶媒としてジオクチルフタレートとともに加えたアメシスト(AMETHYST)タイプの香料があげられる。
【0017】
前記の各香料は、甘くて重厚であり、ゴム臭の抑制にとくに好適である。
【0018】
香料は、前記ジエン系ゴム100重量部に対して、1〜10重量部配合される。香料の配合量が1重量部未満ではゴム臭が抑制されず、10重量部をこえるとゴム臭が消えるが、臭いが強すぎて、逆に不快な臭いとなる。
【0019】
無機多孔質粒子は、前記香料の効力を持続させ、ゴム特有の臭いをなくすために配合される。多孔質粒子の材料として有機物を使用することも考えられるが、香料を添加し、有機物からなる多孔質粒子に吸着させた際に、多孔質粒子が溶解するおそれがあるため、本発明では無機物を使用する。
【0020】
無機多孔質粒子としては、たとえばシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、ゼオライトなどの無機材料からなる多孔質粒子、とくには、中空多孔質粒子が望ましく用いられる。なかでも、中空多孔質球状シリカは、細孔が多く存在し、表面積が大きいため、香料を吸着して、その効力を長時間持続させることができる点で好ましい。
【0021】
無機多孔質粒子の粒子径は、加硫ゴム物性への影響を少なくするために小さいほうが望ましく、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。無機多孔質粒子の粒子径が100μmより大きいと、加硫ゴム物性への影響が大きく、また香料吸着能力が落ちる傾向がある。
【0022】
また、無機多孔質粒子のチッ素吸着比表面積は、250m2/g以上、とくには300m2/g以上であることが好ましい。無機多孔質粒子のチッ素吸着比表面積が250m2/g未満では香料の吸着能力が劣る傾向がある。
【0023】
無機多孔質粒子の配合量は、前記ジエン系ゴム100重量部に対して、5〜30重量部、好ましくは8〜15重量部である。無機多孔質粒子の配合量が5重量部未満では、ほとんど香料を吸着せず、香料の効果が持続しない。逆に配合量が30重量部をこえると、香料を吸着しすぎて、香料がゴム内部に存在し続けるために、ゴムの臭いを打ち消すだけの香料が表面に出にくい傾向がある。
【0024】
また、無機多孔質粒子の配合量は、前記香料100重量部に対して、100〜1000重量部、好ましくは200〜400重量部である。中空多孔質粒子の配合量が100重量部未満では、中空多孔質粒子が香料を吸収しきれない傾向があり、1000重量部をこえると中空多孔質粒子が香料を吸着しきってしまい、ゴム臭を打ち消すだけの香料が表面に出てこない傾向がある。
【0025】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴム、香料および多孔質粒子のほかに、通常タイヤ用ゴム組成物として配合される各種薬品、たとえば、カーボンブラック、オイル、加硫剤、加硫促進剤などの添加剤を適宜配合できる。
【0026】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、通常の製造方法により製造できる。すなわち、前記ジエン系ゴム、香料、多孔質粒子および必要に応じてそのほかの各種薬品を、通常の加工装置、たとえば、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて通常の条件にて混練りすることにより得られる。
【0027】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤ各部、たとえば、トレッド、サイドウォール、クリンチエイペックスなどに使用することで、香料の効力が長時間持続し、ゴム特有の臭いのないタイヤが得られる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例および比較例で使用したゴム組成物には、以下の各材料を用いた。
【0029】
(材料)
NR:テックハービング社製のRSS#3
BR:宇部興産(株)製のBR150L
カーボンブラック(FEF):東海カーボン(株)製のシーストSO
アロマオイル:ジャパンエナジー社製のプロセスX140
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
香料:曽田香料(株)製のストロベリーオイルNo.741(主成分:プロピレングリコール、沸点:188℃)
中空多孔質球状シリカ粒子:鈴木油脂工業(株)製のゴッドボールB−6C(粒子径:0.5〜6.0μm、チッ素吸着比表面積:550〜600m2/g)
シリカVN3:デグッサ社製のウルトラジルNV3
【0030】
実施例1〜4および比較例1〜5
表1に示す配合のうち、硫黄および加硫促進剤以外を、140℃で4〜6分間、密閉型バンバリーで混練りした。そののち、硫黄および加硫促進剤を加えて、90℃で3〜5分間、オープンロールにて混練りした。つぎに、170℃で12分間プレス加硫し、厚さ2mmのゴムシートを作製した。得られたゴムシートについて、以下の試験を実施した。
【0031】
▲1▼硬度(Hs)
JIS K 6301にしたがい、25℃における硬度を測定した。
【0032】
▲2▼複素モジュラス(E*)および損失正接(tanδ)
(株)岩本製作所製のビスコエラスティック スペクトロメータを用いて、70℃、2%の動歪みの条件で測定した。
【0033】
▲3▼臭いの度合い
タイヤ製造直後(初期時)の比較例1のゴムの臭い指数を1とし、実施例1のゴムの臭い指数を3とし、臭い指数を3段階で評価した。指数が大きいほど、臭いがよいことを示す。また、6ヵ月後の臭いも同様に評価した。
【0034】
結果を表1に示す。
【0035】
表1から明らかなように、タイヤ用ゴム組成物に香料および無機多孔質粒子を特定量配合することにより(実施例1〜4)、香料の蒸発速度をコントロールすることができ、香料を配合しなかった比較例1と比べて、香料の効力を長時間持続できるゴム組成物を得ることができた。
【0036】
一方、香料は配合したものの、無機多孔質粒子を特定量配合しなかった比較例2〜5では、香料の効力を長時間持続できなかった。
【0037】
【表1】
Figure 0004338391
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、ジエン系ゴムに、香料とともに無機多孔質粒子、とくには中空多孔質球状シリカ粒子を配合することにより、香料の蒸発速度をコントロールすることができるため、多量の香料を配合することなく、香料の効力の持続性を増すことができる。

Claims (2)

  1. 天然ゴムおよびジエン系合成ゴムの合計100重量部に対し、香料1〜10重量部およびチッ素吸着比表面積が300m 2 /g以上であり、粒子径が50μm以下である無機多孔質粒子5〜30重量部を含有し、
    前記無機多孔質粒子の配合量が、前記香料100重量部に対して、100〜1000重量部である
    タイヤ用ゴム組成物。
  2. 無機多孔質粒子が中空多孔質球状シリカである請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
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